説明

自己注射装置

患者の皮膚内へのまたは皮膚を貫く注射により医薬品を患者の体内に送達するための装置(100)であって、頂部エンクロージャ(116)および底部エンクロージャ(104)を有する本体と、本体内に配置された、医薬品を収容するためのリザーバ(160)と、患者の皮膚に貫入するための注射針(152)であって、管腔を有し、リザーバ(160)と選択的に連通する注射針(152)とを含む、装置。本装置は、リザーバ(160)を選択的に加圧するための加圧システム(600、140)も含む。起動前位置において、加圧システム(600、140)は、リザーバ(160)に接触してこれを圧縮し、リザーバ(160)の初期容積を低減させ、それによりリザーバ(160)の部分的な充填を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、患者にとっての利便性が改善され、使い易く、かつ改善された加圧機構および起動機構を有する、物質送達装置に関する。本発明はまた、患者に様々な物質または医薬品を送達するために用いることができるパッチ様自給式物質注入装置または自己注射装置に関する。より具体的には、本発明は、部分的に充填可能なリザーバを備えた注入装置または自己注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば糖尿病などの症状に苦しんでいる多くの人々が、インスリン注入のような何らかの形態の注入療法を用いて、そのグルコース・レベルの厳密な調節を維持している。現在、インスリン注入治療の例には、日々のインスリン療法の2つの主要な方式がある。第1の方式は、注射器およびインスリンペンを含む。これらの装置は、使用するのが簡単であり、費用は比較的低いが、典型的には1日当たり3回から4回の注射のたびに針刺しを必要とする。第2の方式は、注入ポンプ療法を含み、これは、約3年間保つ高価なポンプの購入を必要とする。高費用(注射器療法の1日の費用のおよそ8倍から10倍)およびポンプの限られた寿命が、このタイプの療法に対する高い障壁である。インスリンポンプはまた、比較的旧式の技術に相当し、扱いにくい。さらに、ライフスタイルの観点からみると、ポンプを患者の腹部上の送達部位に繋ぐ管類(「輸液セット」として知られる)は非常に不便であり、またポンプは比較的重いため、ポンプを身につけることは負担になる。しかしながら、患者の見地からすると、ポンプを使用したことのある患者のうちの圧倒的多数は、生涯ポンプを使い続けることを好む。なぜなら、注入ポンプは、注射器およびペンより複雑ではあるが、連続的なインスリン注入、正確な用量、およびプログラム可能な送達スケジュールという利点を提供するからである。この結果、より厳密なグルコースの調節および健康状態の感覚の改善がもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,569,143号明細書
【特許文献2】国際公開第02/083214号パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Biochem Biophs Acta、1989年、第67巻、p.1007
【非特許文献2】Rubins他、Microbial Pathogenesis、第25巻、p.337−342
【発明の概要】
【0005】
観察されるポンプ療法の増大および日々の注射の数が増加していることを考慮すると、より優れた療法に対する関心が高まっている。この注入の例および同様の注入の例において、この高まる関心を十分に満たすために必要とされるのは、日々の注射療法の最も優れた特徴(低費用および使いやすさ)をインスリンポンプの最も優れた特徴(連続的な注入および正確な用量)と組み合わせ、そしてまたそれぞれの欠点を回避する、インスリンの送達または注入の形態である。
【0006】
費用が低く使いやすい、携行式または「着用式」の薬物注入装置を提供するために幾つもの試みがなされてきた。これらの装置のうちのあるものは、部分的にまたは全体が使い捨てであることが意図されている。理論上は、このタイプの装置は、付随する費用および不便さを伴うことなく、注入ポンプの利点のうちの多くを提供することができる。しかし、残念なことに、これらの装置の多くは、患者の不快感(用いられる注射針のゲージおよび/または長さに起因する)、送達される物質と注入装置の構築に用いられる材料との間の適合性および相互作用、ならびに患者が適切に起動させなかった場合に発生する可能性がある誤動作(例えば、装置の早すぎる起動の結果生じる「濡れた」注射)を含む欠点がある。特に、短いおよび/または細いゲージの注射針が用いられる場合には、製造における困難、および、針の貫入の深さの制御における困難にも直面する。使用済装置と接触した人の針刺し事故の可能性も問題である。
【0007】
したがって、製造における簡易さ、ならびに、インスリンおよび非インスリン用途のための使用の改善をさらに提供する、インスリン用の注入ポンプのような現在の注入装置の代替品が必要とされている。
【0008】
本発明の態様は、所望の物質の注入を提供し、かつ、1つまたは複数の極微針を用いることによって不快感を最小にする一方で、皮膚上に都合良く装着することができる、パッチ様の注入装置または自己注射装置を提供することである。本発明の付加的な態様は、部分的に充填可能なリザーバを備えた注入装置または自己注射装置を提供することである。
【0009】
本発明の上記の態様および/またはその他の態様は、患者の皮膚内へのまたは皮膚を貫く注射により医薬品を患者の体内に送達するための装置であって、頂部エンクロージャおよび底部エンクロージャを有する本体と、本体内に配置された、医薬品を収容するためのリザーバと、患者の皮膚に貫入するための注射針であって、管腔を有し、リザーバと選択的に連通する注射針とを含む装置を提供することにより達成される。本装置は、リザーバを選択的に加圧するための加圧システムも含む。起動前位置において、加圧システムは、リザーバに接触してこれを圧縮し、リザーバの初期容積を低減させる。
【0010】
本発明の上記の態様および/またはその他の態様はまた、患者の皮膚内へのまたは皮膚を貫く注射により所定容積の医薬品を患者の体内に送達するための装置であって、頂部エンクロージャおよび底部エンクロージャを含む本体と、本体内に配置された、医薬品を収容するためのリザーバと、患者の皮膚に貫入するための注射針であって、管腔を有し、リザーバと選択的に連通する注射針とを含む装置を提供することによっても達成される。本装置は、リザーバを選択的に加圧するための加圧システムも含む。起動前位置において、加圧システムは、リザーバに接触してこれを撓ませ、リザーバの初期容積を実質的に所定容積まで低減させる。
【0011】
本発明の上記の態様および/またはその他の態様はまた、患者の皮膚内へのまたは皮膚を貫く注射により医薬品を患者の体内に送達するための装置であって、頂部エンクロージャ、および円筒形ハウジングを含む底部エンクロージャを含む本体と、本体内に配置された、医薬品を収容するためのリザーバと、患者の皮膚に貫入するための注射針であって、管腔を有し、リザーバと選択的に連通する注射針とを含む装置を提供することによっても達成される。本装置は、リザーバを選択的に加圧するための加圧システムも含む。起動前位置において、加圧システムは、円筒形ハウジング内に保持され、かつ、加圧システムは、リザーバに接触してこれを変形させ、リザーバの初期容積を低減させる。
【0012】
本発明の上記の態様および/またはその他の態様はまた、患者の皮膚内へのまたは皮膚を貫く注射により医薬品を患者の体内に送達するための装置であって、頂部エンクロージャ、および円筒形ハウジングを含む底部エンクロージャを含む本体と、本体内に配置された、医薬品を収容するためのリザーバと、患者の皮膚に貫入するための注射針であって、管腔を有し、リザーバと選択的に連通する注射針とを含む装置を提供することによっても達成される。本装置は、リザーバを選択的に加圧するための加圧システムも含む。加圧システムは、リザーバの初期容積を低減させるための手段を含む。
【0013】
本発明の付加的なおよび/またはその他の態様および利点は、一部は以下の説明において述べられ、一部は説明から明らかとなり、または、本発明の実施により学ことができる。
【0014】
本発明の実施形態の上述のおよび/またはその他の態様および利点は、添付図面と併せた、以下の詳細な説明から、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】起動の前の起動前状態におけるパッチ様注入装置の実施形態の斜視図である。
【図2】起動前状態における図1の注入装置の部分分解図である。
【図3】起動用ボタンを遠ざかるように回転させて、詳細をより明らかにした、起動前位置における図1の注入装置の部分分解図である。
【図4】起動前状態における図1の注入装置のより完全な分解図である。
【図5】起動前状態における図1の注入装置の断面図である。
【図6】起動用ボタンを遠ざかるように回転させた、起動前状態における図1の注入装置の断面図である。
【図7】安全機構の取り付け中の、図1の注入装置の部分分解図である。
【図8】起動後の図1の注入装置の部分分解図である。
【図9】起動後の図1の注入装置のより完全な分解図である。
【図10】起動後の図1の注入装置の断面図である。
【図11】安全機構の展開後の図1の注入装置の部分分解図である。
【図12】安全機構の展開後の図1の注入装置の断面図である。
【図13】安全機構の底面を示す図である。
【図14】安全機構の構造をさらに示す図である。
【図15A】投与終了インジケータ、および図1の注入装置におけるその動作を示す図である。
【図15B】投与終了インジケータ、および図1の注入装置におけるその動作を示す図である。
【図15C】投与終了インジケータ、および図1の注入装置におけるその動作を示す図である。
【図15D】投与終了インジケータ、および図1の注入装置におけるその動作を示す図である。
【図16】注射ポートを備えた注入装置の実施形態を示す図である。
【図17】図1の注入装置を起動させるのに必要な力を低減させる保持アセンブリの実施形態の分解図である。
【図18A】図17のアセンブリにおけるスプロケットの平面図である。
【図18B】図17のアセンブリにおける対応するスプロケット開口部の平面図である。
【図19】起動前位置における図17のアセンブリの断面図である。
【図20A】保持アセンブリの実施形態の自由体図である。
【図20B】保持アセンブリの実施形態の自由体図である。
【図21】図1の注入装置を起動させるのに必要な力を低減させる保持アセンブリの別の実施形態を示す図である。
【図22】図1の注入装置を起動させるのに必要な力を低減させる保持アセンブリの別の実施形態を示す図である。
【図23A】図4のプランジャを装填して起動前状態にするため工具を示す図である。
【図23B】図4のプランジャを装填して起動前状態にするための工具を示す図である。
【図24】図17のプランジャを装填して起動前状態にするための工具を示す図である。
【図25】起動前状態における図1の注入装置の断面図である。
【図26】起動後の図1の注入装置の断面図である。
【図27】図4のプランジャを示す図である。
【図28】図27に示されるプランジャの改造版の実施形態を示す図である。
【図29】起動前状態における、図28の改造されたプランジャを使用した注入装置の断面図である。
【図30】起動後の図29の注入装置の断面図である。
【図31】図21に示されたプランジャの改造版の実施形態を示す図である。
【図32】起動前状態における、図31の改造されたプランジャを使用した注入装置の断面図である。
【図33】起動後の図32の注入装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、本発明の実施形態を詳細に参照するが、その例は添付の図面に示されており、図中、同様の参照符号は、全体を通して同様の要素を指す。説明される実施形態は、図面を参照することにより本発明を例示する。
【0017】
以下で説明される本発明の実施形態は、予め計量された用量の、液状の薬物または医薬品などの物質を、ある期間にわたりまたは一度に患者に送達するための、便利なパッチ様注入装置または自己注射装置100として用いることができる。装置は、好ましくは、予め充填された状態で、すなわち、薬物または医薬品が既に装置のリザーバに収容されている状態でエンドユーザに与えられる。本明細書で説明されるパッチ様注入装置または自己注射装置100(例えば、図1に示される)は、患者および/または介護者が使用することができるが、便宜上、装置のユーザをこれ以降「患者」と称する。さらに、便宜上、「垂直」および「水平」並びに「頂部」および「底部」のような用語は、水平面上に配置された注入装置100に対する相対的な方向を表わすために使用される。しかしながら、注入装置100はそのような向きに限定されるものではないこと、および、注入装置100は任意の向きで使用することができることが理解されるであろう。さらに、本発明を具体化する装置を説明するための「注入装置」および「自己注射装置」という用語の二者択一的な使用は、限定的な意味を意図するものではない。自己注射能力をもたない注入装置は、連続的な注入を行わない自己注射装置と同様に、本発明の範囲内である。限定を目的とするのではないが、便宜上、「注入装置」という用語を以下の説明において用いる。
【0018】
図1のパッチ様注入装置100は、自給式であり、注入装置100の底面に配置された接着剤によって患者の皮膚表面に取り付けられる(以下でより詳細に説明される)。ひとたび患者によって適切に位置決めされ、起動させられると、解放されたばねの、装置内の可撓性リザーバに対する圧力を用いて、針マニホルドを介した1つまたは複数の患者用針(例えば、極微針)を通じて、リザーバ内容物を空にすることができる。リザーバ内の物質は次に、皮膚内へと打ち込まれた極微針によって患者の皮膚を通して送達される。ばねを、機械的、電気的および/または化学的な性質であり得る異なるタイプの蓄積エネルギー装置で置き換えた、その他の実施形態も可能であることが理解されるであろう。
【0019】
当業者には理解されるように、本明細書で開示されるパッチ様注入装置100を構築し、用いる、多数の方法がある。図面内および以下の説明で描写される実施形態を参照するが、本明細書で開示される実施形態は、開示された発明に包含される種々の代替的な設計および実施形態に尽きることを意味するものではない。各々の開示された実施形態において、装置は、注入装置と称されるが、装置は、典型的な注入装置が通常達成するよりもはるかに速い(ボーラス)速度で物質を注入することもできる。例えば、短くは数秒程度または長くは数日程度の期間で内容物を送達することができる。
【0020】
図1から図12に示される装置の実施形態において、単一多機能/ステップ・プロセスで、装置の起動および付勢が達成される、パッチ様注入装置100のプッシュボタンの設計が示される。図1は、起動前状態における注入装置100の組み立てられた実施形態を示す。図2−図6は、起動前状態における注入装置100の部分分解図および断面図を示し、図7は、安全機構の取り付け中の注入装置100の部分分解図を示し、図8−図10は、起動後の注入装置100の分解図および断面図を示し、図11および図12は、安全機構の展開後の注入装置100の分解図および断面図を示す。注入装置100は、起動前状態(例えば、図1、図2、および図5に示される)と、起動された状態または発射状態(例えば、図8−図10に示される)と、引っ込められた状態または安全状態(例えば、図11および図12に示される)との間で動作するように構成される。
【0021】
図1に示されるように、パッチ上注入装置100の実施形態は、底部エンクロージャ104と、安全機構108と、可撓性針カバー112と、頂部エンクロージャ116と、リザーバ・サブアセンブリ120と、投与終了インジケータ(EDI)124と、起動用ボタン128とを含み、起動用ボタン128は、患者インターフェース面132を含む。さらに、図2−図6に示されるように、注入装置100は、ロータまたは起動リング136と、加圧ばね140と、ドーム状金属プランジャ144と、駆動ばね148とをさらに含む。
【0022】
可撓性針カバー112は、少なくとも1つの針152(以下でより詳細に説明される)を保護し、滅菌バリアを与えることにより、患者および装置の安全性を提供する。針カバー112は、装置の製造中に針152を保護し、使用前に患者を保護し、取り外し前のいかなる時点でも滅菌バリアを提供する。1つの実施形態によれば、針カバー112は、少なくとも1つの針152が配置された針マニホルドに、圧入により取り付けられる。さらに、1つの実施形態によれば、安全機構108の針開口部156(以下でより詳細に説明される)は、針カバー112の外周にぴったりと対応するような形状にされる。
【0023】
例えば、図2、図3、図5、図6、図8、図10および図12に示されるように、リザーバ・サブアセンブリ120は、リザーバ・ドーム・シール164と、弁168と、少なくとも1つの針152と、弁168と針152との間に配置され、それらの間に流路を形成する少なくとも1つのチャネル172(例えば、図8参照)と、ドーム176とを含む。さらに、リザーバ・サブアセンブリ120は、少なくとも1つの針152を選択的に覆うための取り外し可能な針カバー112を含む。1つの実施形態によれば、リザーバ・サブアセンブリ120は、チャネル172を覆うリザーバ・アーム・シール180をさらに含む。好ましくは、針152は、針マニホルドおよび複数の極微針152を含む。
【0024】
リザーバ・サブアセンブリ120のリザーバ・ドーム・シール(可撓性フィルム)164は、例えば、図5に示されるように、プランジャ144とドーム176との間に配置される。注入装置100のためのリザーバ内容物(例えば、医薬材料)は、リザーバ・ドーム・シール164とドーム176との間の空間内に配置される。リザーバ・ドーム・シール164と、ドーム176と、それらの間の空間との組合せが、リザーバ160を画定する。ドーム176は、リザーバ内容物を見ることができるように、好ましくは透明である。リザーバ・ドーム・シール164は、金属被覆フィルムまたはその他の同様の物質のような、非膨張性材料または積層体で作ることができる。例えば、リザーバ・ドーム・シール164に用いることができる1つの可能な可撓性積層フィルムは、第1のポリエチレン層と、バリア特性に基づいて選択される第3の金属層に対する付着機構を与える当業者に公知の第2の化学層と、ポリエステルおよび/またはナイロンを含む第4の層とを含む。金属被覆フィルムまたは金属化フィルムを剛性部分(例えば、ドーム176)と共に利用することにより、リザーバ160のバリア特性が改善され、それにより、中に収容される内容物の貯蔵寿命が延長されまたは改善される。例えば、リザーバ内容物がインスリンを含む場合、リザーバ160内の主接触材料は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、環状オレフィン共重合体(COC)およびテフロンを含む。以下により詳細に説明されるように、リザーバ内容物の、残りの流路における主接触材料もまたCOCおよびLLDPEを含むことができ、ならびに、熱可塑性エラストマー(TPE)、医用グレード・アクリル、ステンレス鋼、および針接着剤(例えば、UV硬化型接着剤)を含むことができる。リザーバ160の内容物と長期間接触したままとなるこのような材料は、好ましくは、ISO 10−933およびその他の適用可能な生体適合性試験に合格するものである。
【0025】
リザーバ・サブアセンブリ120は、さらに好ましくは、内容物に悪影響を与えることなく、リザーバ内容物の規定された貯蔵寿命にわたって、適用可能な制御された環境において保管することが可能であり、様々な環境条件に適用することが可能である。さらに、リザーバ・サブアセンブリ120の構成部品により与えられるバリアは、所望の貯蔵寿命に適合するために許容され得る速度を上回る速度で気体、液体および/または固形材料が内容物の中へまたは内容物から外へ輸送されることを可能にしない。上で示した実施形態においては、リザーバ材料は、華氏およそ34度から120度の温度範囲で保管および動作が可能であり、2年またはそれ以上の貯蔵寿命を有することができる。
【0026】
安定性要件を満たすことに加えて、リザーバ・サブアセンブリ120は、30psiのサンプルを20分間、漏出なしで保持することなどの、いくつもの漏出試験に首尾よく合格することにより、動作をさらに保証することができる。リザーバの構成によりもたらされる、充填、保管、および送達のさらなる利点には、以下で詳細に説明されるように、最小にされたヘッドスペースおよび適応性が含まれる。
【0027】
1つの実施形態において、リザーバ160は、充填前に排気される。充填前にリザーバ160を排気し、ドーム176内にわずかな凹みしか有さないようにすることにより、リザーバ160内のヘッドスペースおよび過剰の廃棄物を最小にすることができる。さらに、以下でより詳細に論じられるように、リザーバの形状は、用いられる付勢機構または加圧システム(例えば、加圧ばね140およびプランジャ144)のタイプに適応するように構成することができる。さらに、充填の際に排気された可撓性リザーバ160を用いることにより、充填されたリザーバ160内のいかなる空気または気泡も最小にすることができる。しかしながら、本発明の幾つかの実施形態は、排気されたリザーバを使用しなくてもよいことが理解されるであろう。可撓性リザーバ160の使用は、注入装置100が、リザーバの内圧の増大をもたらすことがある外圧または温度の変動を受ける場合にも非常に有益である。そのような場合には、可撓性リザーバ160は、リザーバ内容物と共に伸張および収縮することにより、伸張力および収縮力に起因して生じる可能性がある漏出を防ぐ。
【0028】
リザーバ160のさらに別の特徴は、充填時の自動化された粒子の点検または使用時の患者による粒子の点検を可能にする能力を含む。1つまたは複数のリザーバのバリア、例えばドーム176は、透明でクリアなプラスチック材料で成形することができ、これが、リザーバ内に収容された物質の点検を可能にする。透明でクリアなプラスチック材料は、好ましくは、高い透明度および清澄性、抽出物が少ないこと、ならびにリザーバ160に収容される物質との生体適合性により特徴付けられる環状オレフィン共重合体である。適切な材料は、ケンタッキー州、ルイスビルのZeon Chemicals,L.Pから「BD CCP Resin」という名称で入手可能であり、米国食品医薬品局によりリストアップされており、DMF番号16368である。このような用途において、リザーバ160は、場合によっては点検を妨げることがある最小限の特徴を含む(すなわち、点検中の回転が許可される)。
【0029】
チャネル・アーム172は、弁168から針マニホルドまたは極微針152まで延びる少なくとも1つの可撓性の弓形アームの形態で設けられる。弓形アームは、その内部に形成された溝174(例えば、図2参照)を有する。弁168と針マニホルドまたは極微針152との間に流路を設けるために、リザーバ・アーム・シール180が、溝174を覆う。リザーバ160と極微針152との間の流路(チャネル・アーム172内に配置される−例えば図8に示される)は、リザーバ160について上述された材料と同様のまたは同一の材料で構築される。例えば、チャネル・アーム172をドーム160と同じ材料で構築することができ、リザーバ・アーム・シール180をリザーバ・ドーム・シール164と同じ材料で構築することができる。1つの実施形態によれば、両方のチャネル・アーム172が、弁168と針マニホルドまたは極微針152との間の流路として使用される。別の実施形態によれば、一方のチャネル・アーム172だけが流路として使用され、残りのチャネル・アーム172は構造的支持を与える。そのような実施形態においては、溝174は、流路として使用されるチャネル・アーム174の中でのみ、弁168から針マニホルドまたは極微針152まで完全に延びる。
【0030】
チャネル・アーム172は、起動の力に耐えるのに十分に可撓性でなければならない。図2および図8におけるチャネル・アーム172の位置を対比すると、チャネル・アーム172(図2においてはリザーバ・アーム・シール180により覆われており、図8においては分かり易くするためにリザーバ・アーム・シール180は除去されている)は、極微針152が患者の皮膚の中に打ち込まれたときに弾性変形する(以下でより詳細に説明される)。そのように変形している間、チャネル・アーム172は、弁168と針マニホルドまたは極微針152との間の流路の完全性を維持しなければならない。さらに、チャネル・アーム172のための材料は、多くの生体適合性試験および保存試験に適合する。例えば、以下の表1に示されるように、注入装置の内容物がインスリンを含む場合、リザーバ160における主接触材料は、直鎖低密度ポリエチレン、環状オレフィン共重合体およびテフロンを含み、そしてまた透明でクリアなプラスチックも含むことができる。リザーバ160と針マニホルドの極微針152との間の残りの流路(チャネル62)における主接触材料は、COCおよび/または医用グレード・アクリル、LLDPE、TPEおよびステンレス鋼、ならびに針接着剤を含む。
【0031】
【表1】

【0032】
より具体的には、極微針152をステンレス鋼で構築することができ、針マニホルドをポリエチレンおよび/または医用グレード・アクリルで構築することができる。このような材料は、リザーバ内容物と長期間接触する場合には、好ましくは、ISO 10−993生体適合性試験に合格するものである。
【0033】
弁168は、リザーバ160とチャネル172との間に配置され、リザーバ160とチャネル172との間の流体の流れを選択的に可能にし、かつ、制限する。弁168は、起動前位置(例えば、図2、図3および図6に示される)と起動位置(例えば、図8−図10に示される)との間で移動する。起動位置にあるとき、弁は、リザーバ160とチャネル172との間の流体の流れ、したがって、針マニホルドおよび極微針152への流体の流れを可能にする。
【0034】
使用時には、弁168は、起動用ボタン128の移動によって起動位置に最終的に押し込まれ、これは、図5と図10との間での弁168の移動により最もよく示される。図10に示されるように、弁168の移動は、弁168の拡大した末端部を前進させ、それにより、薬物がリザーバ160からチャネル172内に流入し、そして流路を下って針マニホルドまで流れることを可能にする。
【0035】
上述の実施形態は、少なくとも1つの針152または極微針152を含むが、幾つかの、例えば2つの、例証された極微針152を含むこともできる。各々の極微針152は、好ましくは、少なくとも31ゲージまたはそれ以下、例えば34ゲージであり、リザーバ160と流体連通するように配置することができる患者用針マニホルド内に固定される。極微針152は、1つより多くが注入装置100内に含まれる場合には、異なる長さもしくはゲージのものとすることもでき、または長さおよびゲージの両方が異なるものの組み合わせとすることもでき、そして、本体長に沿って、好ましくは、極微針152の先端近くに、または極微針152のいずれかが1つを含む場合には先端の斜端近くに配置される、1つまたは複数のポートを含むことができる。
【0036】
1つの実施形態によれば、極微針152のゲージは、注入装置100のリザーバ内容物の送達速度を支配する。典型的にははるかに大きいカニューレまたは針を必要とする、注射器による即時注射に関連づけられるよりも長い期間にわたって注入が行われる場合には、多数の34ゲージの極微針152を用いてリザーバ内容物を送達することが実用的である。開示される実施形態においては、皮内または皮下の空間のいずれかを対象にする任意の極微針152を用いることができるが、例証される実施形態は、長さが1mmと7mmとの間(すなわち、4mm)の皮内極微針152を含む。極微針152の配置は、直線状または非直線状の配列とすることができ、特定の用途によって必要とされる任意の数の極微針152を含むことができる。
【0037】
上述のように、極微針152は、針マニホルド内に位置決めされる。針マニホルド内には、少なくとも1つの流体連通路、またはチャネル172が、各々の極微針152に対して設けられる。マニホルドは、1つまたは複数の極微針152に対して単純に単一経路を有してもよく、または、リザーバ内容物を各々の極微針152に別々に送り届ける複数の流路またはチャネルを設けてもよい。これらの流路またはチャネルは、内容物を走行させるための蛇行した経路をさらに含むことができ、これにより流体圧および送達の速度に影響を与え、流量調整器として機能する。針マニホルド内のチャネルまたは経路は、用途に応じて様々な幅、深さおよび構成とすることができ、チャネル幅は、典型的には約0.015と0.04インチとの間、好ましくは0.02インチであり、マニホルド内のデッドスペースを最小にするように構築される。
【0038】
1つの実施形態によれば、リザーバ・サブアセンブリ120は、底部エンクロージャ104に対するリザーバアセンブリ120の位置合わせを補助する一対の穴184および188を有する。底部エンクロージャ104の第1のポスト192および第2のポスト196(以下でより詳細に説明される)が、それぞれの穴184および188を貫通して挿入される。
【0039】
リザーバ・サブアセンブリ120が除去された分解図において、図4、図7および図9は、底部エンクロージャ104が、加圧ばね140およびプランジャ144が中に配置される実質的に円筒形のハウジング200を含むことを示す。1つの実施形態によれば、円筒形ハウジング200は、複数の凹状チャネル204を含み、プランジャ144がハウジング200内で並進するときに、プランジャ144のそれぞれの複数の脚部208および足部212をガイドする。集合的に、脚部208および足部212は、プランジャ・タブ214を構成する。図4、図7および図9に示されるように、例えば、凹状チャネル204は、円筒形ハウジング200の頂部から下方に途中まで延びる。凹状チャネル204の下には、プランジャ144の足部212がそこを通って円筒形ハウジング200の外側に延びることができる開口部216がある。開口部216は、実質的にL字形であり、水平部は円筒形ハウジング200の基部にあり、垂直部は凹状チャネル204に実質的に整列する。
【0040】
注入装置100が起動前状態にあるとき、加圧ばね140は、プランジャ144により圧縮され(例えば、図4−図6に示されるように)、プランジャ144の足部212は、開口部216の水平部内に実質的に配置される。加圧ばね140の力は、プランジャ144の足部212を、開口部216の水平部の頂部(すなわち、円筒形ハウジングのレッジ)に向かって偏らせる。以下でより詳細に説明されるように、加圧ばね140およびプランジャ144が一緒になって、注入装置100が起動されたときにリザーバ160を加圧する加圧システムを形成する。
【0041】
以下でより詳細に説明されるように、ロータ136は、円筒形ハウジング200の基部の周りを、起動前位置(例えば、図2−図4に示される)と起動位置(例えば、図8−図10に示される)との間で回転する。ロータ136が起動前位置から起動位置まで回転すると、ロータ136の少なくとも1つの足部係合面217(例えば、図4に示される)が、プランジャ144の足部212の少なくとも1つと係合し、プランジャ144を回転させ、足部212は、開口部216の垂直部および凹状チャネル204に整列する。この時点で、加圧ばね140が、プランジャ144を上方に移動させ、足部212は立ち上がったチャネル204によりガイドされる。
【0042】
加圧ばね140は、注入装置100に含まれており、本質的に一様な力をリザーバ160に印加し、内容物をリザーバ160から出るようにさせる。加圧ばね140は、エネルギーを蓄積するために用いられ、使用時に、解放されると、リザーバ160を加圧する。加圧ばね140は、プランジャ144の足部212と円筒形ハウジング200との間の係合により、圧縮状態で保持される。この係合は、保管中に、加圧ばね140が、リザーバ160のフィルム(後述される)、またはそれ以外のいずれかの装置構成部品(底部エンクロージャ104及びプランジャ144以外)に対して応力をかけることを防ぐ。プランジャ144は、ばねの張力および変形に抵抗するのに十分な剛性があり、正常な負荷の下では損なわれるべきではない。
【0043】
上述のように、ロータ136が起動前位置から起動位置に回転すると、ロータ136は、プランジャ144の足部212の少なくとも1つと係合し、プランジャを回転させて、足部212を開口部216の垂直部および凹状チャネル204に整列させる。圧縮された加圧ばね140は、次いで、プランジャ144を上方に移動させ、その際、リザーバ160のフィルムに力を及ぼす。加圧ばね140は、リザーバ内容物の皮内送達のためには、好ましくは約1psiから50psi、より好ましくは約2psiから約25psiの圧力をリザーバ116内に生成するように構成することができる。皮下注射または注入のためには、約2psiから5psiの範囲で十分であり得る。
【0044】
プランジャ144および加圧ばね140を起動前位置にするために、例えばその端部から突出する四角い突出部222を有する工具200(例えば、図23Aおよび図23B参照)が、突出部222がプランジャ144の工具開口部224(例えば、図4および図27参照)を通るように挿入される。そして工具220を用いて、プランジャ144に対する下向きの圧力によって加圧ばね140を圧縮する。工具220は、凹状チャネル204内の(円筒形ハウジング200の)足部係合面218の高さを足部212が垂直方向で下回るまで、プランジャ144の下方移動および加圧ばね140の圧縮を続ける。引き続き、工具220を回転して、プランジャ144を回転させ、足部212が足部係合面218の下に配置されるようにする。この時点で、工具220を取り外すことができ、それにより、足部212を円筒形ハウジング200の足部係合面218に係合させ、加圧ばね140の圧縮を維持する。
【0045】
1つの実施形態によれば、起動用ボタン128は、患者が注入装置100を起動させるために押す患者インターフェース面132を含む。起動用ボタン128はまた、ヒンジ・アーム226および起動アーム228(両方とも、例えば図3に示される)も含む。起動用ボタン128のヒンジ・アーム226は、開口部を備えた円筒形部分を含む。起動アーム228は、タブ230(例えば、図3参照)を含む。1つの実施形態によれば、タブ230は、支持面232と、支持面232の片持ち端部(cantilevered end)に隣接して配置されたロック面234とを含む。1つの実施形態によれば、タブ230は、起動アーム228の主要部と鋭角を成す。
【0046】
底部エンクロージャ104上に配置された第1のポスト192は、底部エンクロージャ104から上方に延びる。1つの実施形態によれば(例えば、図4および図7に示されるように)、第1のポスト192の基部は、一対の平坦な側部236および一対の丸みを帯びた側部240を含む。さらに、例えば図4および図7に示されるように、第2のポスト196、ならびに第1の駆動ばね基部244および第2の駆動ばね基部248が、底部エンクロージャ104から上方に延びる。以下でより詳細に説明されるように、第1の駆動ばね基部244および第2の駆動ばね基部248は、駆動ばね148のそれぞれの端部を固定する。第1の駆動ばね基部244は、第2のポスト196と離間して、第2のポスト196に隣接して配置される。
【0047】
1つの実施形態によれば、図3および図6は、起動用ボタン128の組立体に関して、底部エンクロージャ104に対する起動用ボタン128の位置決めを示す。この位置において、ヒンジ・アーム226の円筒形部分の開口部は、起動用ボタン128が(平らな側部236を通過して)水平に摺動し、第1のポスト192と係合することを可能にする。ヒンジ・アーム226は(したがって起動用ボタン128は)、その後、第1のポスト192の周りで回転することができる。起動アーム228が、第2のポスト196と第1の駆動ばね基部244との間の空間の中へと通行するにつれて、タブ230および起動アーム228のうちの少なくとも一方が、タブ230の支持面232の片持ち端部が第2のポスト196の保持面252を通過するまで弾性変形する。タブ230の支持面232の片持ち端部が第2のポスト196の保持面252(例えば、図4参照)を通過すること、およびタブ230のロック面234と保持面252との係合により、起動用ボタン128が起動前位置にあることを伝える可聴のクリック音および触覚的なフィードバックがもたらされる。
【0048】
図2−図4および図7−図9を再び参照すると、ロータ136は、起動突出部256および駆動ばねホルダ260をさらに含む。起動ボタン128の駆動アーム228は、患者が起動ボタン128を押し下げたときに起動突出部256と係合し、それにより、ロータ136を起動前位置から起動位置に回転させる。
【0049】
駆動ばねホルダ260は、ロータ136が起動前位置にあるときには、駆動ばね148を起動前位置に維持する。前述したように、第1の駆動ばね基部244および第2の駆動ばね基部248が、駆動ばね148の両端を固定する。駆動ばね148のほぼ中間点に、ロータ136の駆動ばねホルダ260と係合するための、例えば図2および図3において示されるような、実質的にU字形の突出部がある。したがって、ロータ136が起動前位置にあり、駆動ばね148が駆動ばねホルダ260と係合しているときには、駆動ばね148は引張り状態で維持される。そして、駆動ばねホルダ260が駆動ばね148を解放したとき(すなわち、例えば図8−図10に示されるように、ロータが起動前位置から起動位置に回転したとき)、駆動ばね148は、極微針152を駆動させて、これが底部エンクロージャ104の開口部300を通って(および、以下でより詳細に説明される安全機構108の開口部を通って)注入装置100の外側に延びるようにさせる。
【0050】
このようにして、以下でより詳細に説明されるように、単一多機能/ステップ・プロセスで達成される注入装置100の起動および付勢は、患者による起動用ボタン128の押し下げと、起動用ボタン128の起動アーム228とロータ136の起動突出部256との間での係合によるロータ136の回転とを含む。上述のように、ロータ136の回転は、プランジャ144を回転させて解放し、リザーバ160内の流体を加圧する。さらに、ロータ136の回転は、駆動ばね148を駆動ばねホルダ260から解放し、それにより、極微針152を駆動させて、これを注入装置100の外側に延びるようにさせる。単一多機能/ステップ・プロセスは、起動用ボタン128が押し下げられたときに起動用ボタン128が弁168と係合しこれを移動させることによる、弁168の起動前位置から起動位置への移動を含み、これにより、チャネル172を介したリザーバと極微針152との間の流体の流れが開始される。
【0051】
上述のように、パッチ様注入装置100はまた、安全機構108も含む。故意ではないまたは偶発的な針刺し事故を防ぐため、装置の意図的な再利用を防ぐため、および露出した針を遮蔽するために、ロック針安全機構108が設けられる。安全機構108は、注入装置100が患者の皮膚表面から取り外されるとすぐに自動的に起動する。以下により詳細に説明される1つの実施形態によれば、可撓性接着パッド264が、底部エンクロージャ104の底部および安全機構108の底部に接着されている。接着パッド264は、患者の皮膚に接触し、使用中、注入装置100を皮膚表面上の所定位置に保持する。例えば、図11および図12に示されるように、注入装置100を皮膚表面から取り外すと、安全機構108は、極微針152を遮蔽する位置まで伸展する。完全に伸展すると、安全機構108は、所定の場所にロックし、偶発的な傷害または患者用針152の露出を防ぐ。
【0052】
一般に、受動的な安全システムが最も望ましい。これは、偶発的に外れた場合、または、安全ステップがあることを患者が忘れた場合に、装置が自己防衛的となることを可能にする。この注入装置100の1つの典型的な用途は、ヒト成長ホルモンを投与することであり、これは通常は夜間に与えられるので、この装置を装用する患者(例えば、小児)は、たとえ送達は10分に満たない時間しかかからないと見込まれるとしても、実際にはこの装置を終夜装用するであろうことが予想され得る。受動的システムがなければ、注入システム100が脱落した場合に、極微針152が、患者または介護者に再び刺さることがあるかもしれない。その解決法は、使用中には活動を控えるか、または受動的な安全システムを組み入れるかのいずれかである。
【0053】
安全システムに関しては、典型的には3つの選択肢がある。第1の選択肢は、針152を装置の中に引っ込めることである。第2の選択肢は、アクセスできないように針152を遮蔽することであり、第3の選択肢は、針刺し事故を防ぐように針152を破壊することである。その他のシステム、例えば能動的なシステムは、手動による遮蔽および/もしくは破壊を利用するか、または、付加的なボタンの押し下げもしくは同様な動作による安全機能の手動での解放を利用する。本発明の受動的安全性の実施形態の詳細な説明を、以下に記載する。
【0054】
本発明の1つの安全性の実施形態は、安全機構108のような受動的で完全に囲まれた引き出し式の設計の実施形態である。図5、図10および図12は、起動前、起動後、および安全機構108展開後のそれぞれの安全機構108を示す注入装置100の切取斜視図である。
【0055】
注入装置100が皮膚から取り外されると、可撓性接着パッド264(底部エンクロージャ104の底面および安全機構108の底面の両方に付着している)は、安全機構108を引き出し、接着パッド264が皮膚表面を解放する前に安全機構108を所定の場所にロックする。換言すれば、接着パッドを皮膚表面からはがすのに必要な力は、安全機構108を展開させるのに必要な力より大きい。1つの実施形態によれば、例えば図13に示されるような安全機構108は、患者の皮膚に接触する平面部分268を含む。平面268は、接着パッド264の一部(図13において点線で示される)が安全機構108に取り付けられる場所であり、注入装置100が患者によって皮膚から取り外されたときに、接着パッド264は、安全機構108を注入装置100から展開させるように働き、それより極微針152を遮蔽するが、極微針152は、さもなければ、注入装置100が患者から取り外されると露出することになろう。安全機構108が完全に伸展されると、安全機構108は所定の場所でロックし、偶発的な傷害または極微針152の露出を防ぐ。
【0056】
1つの実施形態によれば、接着剤パッド264は、実質的に2つの部分で設けられ、1つは、底部エンクロージャ104の底面の大部分の上に、もう1つは安全機構108の底面上に設けられ得る。注入装置100が取り外されたとき、2つのパッチは独立して移動し、安全機構108は底部エンクロージャ104に対して回転可能である。別の実施形態によれば、2つの部分は、単一の可撓性接着パッド263として形成され、一部が底部エンクロージャ104の底面の大部分の上に配置され、一部が安全機構108の底面上に配置される。
【0057】
1つの実施形態によれば、安全機構108は、打抜金属部品である。別の実施形態によれば、安全機構108は、底部エンクロージャ104と実質的に同じ材料で製造される。図14に示されるように、安全機構108は、前面シールド272と、安全機構108の後部に配置された一対の挿入タブ276と、安全機構108のリム部284の上方後端部にそれぞれ配置された一対のピボットタブ280と、安全機構108の実質的に平らな底部内面から上方に延びるガイドポスト288と、やはり安全機構108の底部内面から上方に延びるロックポスト292とを含む。前面シールド272は、リム部284の上に延びており、安全機構108が展開されたときに患者を極微針152から遮蔽する。ガイドポスト288はその内部に、ロータ136が起動前位置にあるときにロータ136の安全保持突出部296(例えば、図7および図9に示される)と係合する切欠き部を含んでおり、安全機構108が注入装置100の起動前に展開されることを防ぐ。
【0058】
さらに、上述のように、安全機構108は、針開口部156を含む。安全機構108の展開前には、針開口部156は、底部エンクロージャの開口部300に少なくとも部分的に重なり、極微針152の移動のための空間を与える。ロックポスト292は、それぞれ、針開口部156の前側縁に隣接して配置される。底部エンクロージャ104は、ガイドポスト開口部304(例えば、図7および図9に示される)と、底部エンクロージャ104の対向する側縁に隣接して配置される一対の挿入タブ開口部308(その1つが例えば図4に示される)と、底部エンクロージャ104の対向する側部上に配置される一対のピボット台312(例えば、図7および図9に示される)とを含む。
【0059】
再び図14を参照すると、挿入タブ276の各々は、接続部316および延長部320を含む。1つの実施形態によれば、接続部316は、安全機構108の底部内面から注入装置100の後方に向かって、安全機構108の底部内面に対して垂直ではない角度で延びる。延長部320は各々、延長部320から安全機構108のそれぞれの外側側方に向かって実質的に垂直に延びる。安全機構108を底部エンクロージャ104に対して組み立てるために、安全機構108は、底部エンクロージャ104に対しておよそ45°の角度で保持され、挿入タブ276が挿入タブ開口部308を通して挿入される。安全機構108は次に、ガイドポスト288がガイドポスト開口部304を通して挿入され、安全機構108の底部内面が底部エンクロージャ104の底面と実質的に平行になり、これと接触する位置になるように、回転される。
【0060】
再び図7および図9を参照すると、これらの図は、起動位置にあるロータ136を示してはいるが、図7および図9が分解図であることで、安全機構108を底部エンクロージャ104に対して組み立てるこの段階を示すのに便利である。しかしながら、安全機構108は、起動前に、底部エンクロージャに組み合わせられるべきであることが理解されるであろう。安全機構108の上向き回転に引き続き、図4に示されるように、安全機構108は、底部エンクロージャ104に対して後方に向かって並進し、ピボットタブ280がピボット台312のそれぞれの前縁部を通過してピボット台312の上に配置され、ロックポスト292が底部エンクロージャ104の開口部300の側縁部に隣接して配置され、ロータ136の安全保持突出部296がガイドポスト288と係合するようにされる。
【0061】
図14に戻ると、ロックポスト292の各々は、安全機構108の平らな底部内面から実質的に垂直に延びるポスト延長部324と、ポスト延長部324の端部に配置されたくさび部328とを含む。くさび部328の高さが安全機構108の底部内面に対して高くなるにつれて、くさび部328の幅も広くなる。
【0062】
安全機構108が展開され、底部エンクロージャ104に対して下方に回転すると、くさび部328は、底部エンクロージャ104の開口部180のそれぞれの側縁部に押し当たって作用し、ロックポスト192を互いに向かう方向に弾性変形させる。安全機構108が完全に展開されると、タブ280はピボット台312の中に着座する。さらに、くさび部328の上縁部が開口部300の下縁部を通過し、ロックポスト292がその実質的に未変形の状態にカチッと戻り、安全機構108が完全に展開されたこと、したがって、極微針152が覆われたことを伝える可聴のクリック音および触覚的なフィードバックがもたらされる。図11および図12に戻ると、ひとたび安全機構108が完全に展開され、ロックポスト292がその実質的に未変形の状態にカチッと戻ると、くさび部328の上縁部が、開口部300に隣接する底部エンクロージャ104の底面と係合し、それにより、安全機構108が底部エンクロージャ104に対して上方に回転すること、および、極微針152を露出させることを防ぐ。さらに、上述のように、前面シールド272が、患者を極微針152から遮蔽する。
【0063】
したがって、安全機構108は、単一部品として設けられる受動的安全性の実施形態であり、人間による負荷の下では押しつぶされることのない優れたロックを提供する。この受動的安全機構を用いると、注射中には付加的な力が皮膚にかかることはなく、そして使用後は、極微針152は、注入装置100内に安全に保持される。
【0064】
注入装置100の使用後、患者は、装置をもう一度点検して、全用量が送達されたかどうか確認することができる。この点に関して、図15A−図15Dに示されるように、注入装置100は、投与終了インジケータ(EDI)124を含む。EDI124は、本体332、ならびに本体332の頂部に対して実質的に水平に延びる第1のアーム336および第2のアーム340を含む。
【0065】
EDI124は、本体332の頂部から上方に湾曲するばねアーム344も含む。1つの実施形態によれば、ばねアーム344は、リザーバ・サブアセンブリ120の下側を押し付けつけ、EDI124を底部エンクロージャ104に向かって弾性的に偏らせ、EDI124が、例えば注入装置100の輸送および取扱中に、注入装置100から外れて自由に移動しないことを保証する。
【0066】
図4に戻ると、本体332は、EDIチャネル348内に配置され、その中で実質的に垂直に並進する。EDIチャネルは、プランジャ144の脚部208および足部212をガイドする凹状チャネル204の1つに隣接する。第1のアーム336は、この凹状チャネル204の頂部を横断して延びる。
【0067】
図15Aに戻ると、垂直突きだし部352が、第2のアーム340の端部から上方に延びる。リザーバ内容物が送達されてしまうと、垂直突き出し部は、頂部エンクロージャ116内のEDI開口部356(例えば、図15C参照)を通って延びて、用量の最後まで達したことを伝える。1つの実施形態によれば、EDI124は、一体式の構造体として形成される。
【0068】
図15Bに示されるように、起動後にプランジャ144が加圧ばね140により円筒形ハウジング200内を上方に移動すると、プランジャ144の足部212の1つがEDI124の第1のアームと接触する。足部212は、EDI124を上方に持ち上げ、ばねアーム344の偏倚に打ち勝ち、垂直突き出し部352が、リザーバ内容物の送達中にEDI開口部356を通って次第に延びるようにさせる。図10に戻って参照すると、垂直突き出し部352は、一部が注入装置100から延びている。ひとたびリザーバ内容物の送達が完了し、プランジャがその全行程を達成すると、垂直突き出し部352は、図15Dに示されるように完全に延びる。このようにして、EDI124は、プランジャ144の直線運動を使用して、注入装置100の外側から見ることができるEDI124の直線運動を作り出し、それによりリザーバ内容物の送達を伝える。
【0069】
図16は、注射ポート404を備えた注入装置400の実施形態を示す。注射ポートは、排気された、または部分的に充填されたリザーバ408へのアクセスを与えるので、患者は、物質または物質の組み合わせを起動前にリザーバに注入することができる。あるいは、製薬業者または薬剤師は、注射ポート404を使用して、物質または物質の組み合わせを販売前に注入装置400に充填することができる。その他の実質的に全ての点に関しては、注入装置400は前述の注入装置100と同様である。
【0070】
ここで注入装置100の動作を説明する。上述の本発明の実施形態は、好ましくは押しボタン(起動用ボタン128)設計を含み、注入装置100を皮膚表面に対して位置決めし、取り付けることができ、そして、起動用ボタン128を押し下げることにより、付勢および/または起動させることができる。より具体的には、第1のステップにおいて、患者は、装置を滅菌パッケージ(図示せず)から取り出し、接着パッド264のカバー(図示せず)を除去する。患者は、針カバー112も外す。注入装置100をパッケージから取り出して使用する前に(例えば、図1、図2、図4および図5参照)、起動前位置の注入装置100は、患者が装置およびその中の内容物の両方を点検することを可能にし、この点検には、足りない構成部品または損傷している構成部品、有効期限、濁りを帯びたまたは変色した薬物、などの点検が含まれる。
【0071】
次のステップは、患者の皮膚表面に対する注入装置100の位置決めおよび適用である。薬用パッチと同様に、患者は、注入装置100を皮膚上にしっかりと押し付ける。接着パッド264の片側は底部エンクロージャ104の底面および安全機構108の底面に接着されており、接着パッド264の反対側は注入装置100を患者の皮膚に固定する。これらの(底部エンクロージャ104および安全機構108の)底面は、平坦であってもよく、または任意の適切な様式で形作られてもよく、接着パッド264がその上に固定される。1つの実施形態によれば、輸送前に、接着パッド264のカバー、例えばフィルムが接着パッド264の患者の側に貼付され、輸送の間、接着剤を保護する。上述のように、使用前に、患者は、接着カバーを剥がし、それにより、皮膚に対して配置するために接着パッド264を露出させる。
【0072】
接着カバーを剥がした後、患者は、注入装置100を皮膚に当てて配置し、適切な接着を保証するように押し付けることができる。上述のように、ひとたび適切に位置決めされると、装置は、起動用ボタン128を押し下げることにより起動される。この起動ステップは、プランジャ144および加圧ばね140を解放し、プランジャ144がリザーバ160の可撓性フィルム(リザーバ・ドーム・シール164)に押し当たることを可能にし、それによりリザーバが加圧される。この起動ステップはまた、駆動ばね148をロータ136の駆動ばねホルダ260から解放する役割も果たし、それにより、極微針152を(底部エンクロージャ104内の開口部300および安全機構108の針開口部156を通って)注入装置100の外側に延びるように駆動させ、極微針152を患者内に着座させる。さらに、起動ステップは、弁168を開き、リザーバ160と極微針152との間にチャネル172(例えば、図8−図10参照)を介した流体連通経路を確立する。顕著な利点は、これらの動作の各々を単一の押しボタン動作で達成する能力に由来する。さらに、別の顕著な利点は、リザーバ・サブアセンブリ120内に全体が含まれる連続流体連通経路の使用を含む。
【0073】
ひとたび起動されると、患者は、典型的には、リザーバ内容物の完全な送達のための所定期間(例えば、10分間から72時間)にわたって、注入装置100を所定位置に置いたままにするか、または装置を装用する。患者はその後、下にある皮膚または組織に損傷を与えることなく、装置を取り外し、廃棄する。意図的または偶発的な取り外しの際には、1つまたは複数の安全機能が展開し、露出した極微針152を遮蔽する。より具体的には、注入装置100が患者によって皮膚から取り外されたときに、接着パッド264は、安全機構108を注入装置100から展開させるように働き、それにより極微針152を遮蔽するが、極微針152は、さもなければ、注入装置100が患者から取り外されると露出することになろう。安全機構108が完全に伸展されると、安全機構108は所定の場所でロックし、偶発的な傷害または極微針152の露出を防ぐ。しかしながら、安全機能は、起動用ボタン128がまだ押し下げておらず極微針152がまだ延ばされていないときには展開しないように構成することができ、それにより、使用前の安全機構の展開を防ぐことができる。使用後に、患者は、再び装置を点検して、全用量が送達されたことを保証することができる。例えば、患者は、透明なドーム176を通してリザーバの内部を目視し、および/または、EDI124を点検することができる。
【0074】
上述の実施形態において、金属製プランジャ・タブ214がプラスチック製円筒形ハウジング200の足部係合面218に当たって上向きに支持されて起動前位置における加圧ばね140の圧縮を維持する場合には、プラスチック製底部エンクロージャ104に高い応力が及ぼされることがあり、底部エンクロージャ104内でクリープが誘起されることがある。
【0075】
図17は、注入装置(例えば、100)を起動させるのに必要な力を低減させる保持アセンブリ500の実施形態の分解図を示す。保持アセンブリ500は、注入装置100に関して示されているが、保持アセンブリ500は、注入装置100との使用に限定されるものではなく、注入装置400または別の注入装置もしくは自己注射装置と共に使用することもできることが理解されるであろう。図17に示されるように、保持アセンブリ500は、保持板504、加圧ばね140、およびプランジャ508を含む。加圧ばね140は、保持板504上に、保持板504とプランジャ508との間に配置される。保持板504は、円筒形ハウジング200内の、底部エンクロージャ104の頂面の凹部内に配置される。1つの実施形態によれば、保持板504は、円筒形エンクロージャ200の実質的に中心に配置される。1つの実施形態によれば、保持板504は、円筒形ハウジング200内での保持板504の回転を防ぐ安定化タブ512を含む。安定化タブ512は、底部エンクロージャ104の頂面内の対応する凹部と係合する。
【0076】
図17に示されるように、保持板504は、ポスト516と、ポスト516の末端部に配置されたスプロケット520とを含む。1つの実施形態によれば、ポスト516は、保持板504の実質的に中心に配置される。1つの実施形態によれば、ポスト516およびスプロケット520は、単一の金属構造体として一体に形成される。さらに、1つの実施形態によれば、ポスト516は、保持板504にスポット溶接で取り付けられる。別の実施形態によれば、ポスト516は、保持板504にねじ留めされる。さらに別の実施形態によれば、ポスト516は、保持板504に摩擦嵌めで取り付けられる。さらに別の実施形態によれば、ポスト516は、フランジおよびねじ付き端部を有し、ねじ付き端部は、保持板504内の開口部を通して挿入され、フランジが保持板504に対して固定されるまで締められるナットを用いて、保持板504に取り付けられる。代替的な実施形態によれば、ポスト516および保持板504は、単一の金属構造体として一体に形成される。
【0077】
1つの実施形態によれば、保持板504は、例えば、めっき鋼または302ステンレス鋼のような鋼で作られる。そのような材料の選択は、一般に、プラスチック(例えば、底部エンクロージャ104の円筒形ハウジング200に用いられる)と比較して、より優れたクリープ特性およびより高い剛性率を与える。さらに、そのような材料の選択は、より強い加圧ばね140を使用する能力を与える。例えば、1つの実施形態によれば、50ポンド加圧ばね140を保持アセンブリ500内で使用することができる。
【0078】
プランジャ508は、スプロケット520に対応する形状を有するスプロケット開口部524を含む。以下でより詳細に説明されるように、プランジャ508は、保持アセンブリ500を起動前位置に組み立てるための少なくとも1つの工具開口部528も含む。別の言い方をすると、プランジャ508は、実質的にその中心に打ち抜かれたスプロケット開口部524を有し、ポスト516は、その末端部に配置された対応する歯付き外形を備えたスプロケット520を有する。
【0079】
図18Aおよび図18Bにおいてより詳細に示されるように、スプロケット520は、複数のスプロケット歯532を含み、スプロケット開口部524は、プランジャ508の複数のフィンガ540に挟まれた複数のスロット536を含む。1つの実施形態によれば、複数のスロット536および複数のフィンガ540は、それぞれ、複数のスプロケット歯532に対応する。
【0080】
保持アセンブリ500が起動前位置にあるとき、図19に示されるように、スプロケット歯532は、プランジャ508のフィンガ540と整列して係合して、加圧ばね140の圧縮を維持する。さらに、上述の実施形態とは対照的に、保持アセンブリ500が起動前位置にあるとき、プランジャ・タブは、円筒形ハウジング200の足部係合面218上に支持されない。その代わり、加圧ばね140を圧縮された起動前位置に維持する力は、スプロケット歯532とプランジャ508のフィンガ540との間の係合により支持される。しかしながら、そのような実施形態においても、円筒形ハウジング200の足部係合面218は、プランジャ508の過度の揺れを防ぐことにより、やはり有用な機能を果たすことができる。
【0081】
注入装置100が起動すると、プランジャ508が回転させられて(例えば、上述のように、起動用ボタン128の移動により円筒形ハウジング200の周りを回転するロータ136によって)、スプロケット歯532がスプロケット開口部524のスロット536と整列するようにされ(かつ、プランジャ・タブが円筒形ハウジング200の凹状チャネル204と整列するようにされ)、プランジャ508を解放して、加圧ばね140の力の下で円筒形ハウジング200内を上方に並進させ、リザーバ160を加圧させる。
【0082】
保持アセンブリ500を起動前位置に組み立てるために、例えばその端部から突出する一対の突出部548を有する、工具544(例えば、図24参照)が、突出部548がプランジャ508の工具開口部528(例えば、図17参照)を通るように挿入される。次に工具544を用いて、プランジャ508に対する下向きの圧力により、加圧ばね140を圧縮する。工具544は、スプロケット520がスプロケット開口部524を通過するまで、プランジャ508の下向きの移動および加圧ばね140の圧縮を続ける。スプロケット520がスプロケット開口部524を通過するためには、スプロケット歯532を、スプロケット開口部524のスロット536と整列させなければならない。スプロケット開口部524のスロット536がスプロケット歯532と整列したならば、工具544を回転させて、プランジャ508を回転させ、所望のアラインメントにすることができる。スプロケット520がスプロケット開口部524を通過した後、工具544は、工具突出部548が工具開口部528の側部と係合してプランジャ508を回転させるように回転し、スプロケット歯532がプランジャ508のフィンガ540と整列するようにさせる。この時点で、工具544を取り外すことができ、それにより、スプロケット歯532をプランジャ508のフィンガ540と係合させて、加圧ばね140の圧縮を維持することができる。
【0083】
図20Aは、プランジャ144を使用している保持アセンブリの実施形態の自由体図を示す。図20Bは、保持アセンブリ500の自由体図を示す。図20Aにおいて、μは、プランジャ・タブ214と円筒形ハウジング200の足部係合面218との間の摩擦係数を表わし、μは、加圧ばね140が上向きに押すことによるプランジャ・タブ214と円筒形ハウジング200の足部係合面218との間の係合により誘導される摩擦力を表わす。さらに、注入装置100の起動時のプランジャ144の回転に関して、力μは、距離(半径)Lにわたって作用し、摩擦モーメントμを生じさせる。
【0084】
対照的に、図20Bに示されるように、μは、加圧ばね140が上向きに押すことによるスプロケット歯532とプランジャ508のフィンガ540との間の係合により誘導される摩擦力を表わす。同じ加圧ばね140が両方の実施形態において使用されているので、力μは、力μに実質的に等しい。しかし、μがそれをわたって作用する距離(半径)L(摩擦モーメントμを生じさせる)は、距離Lより実質的に小さい。それゆえ、摩擦モーメントμは、摩擦モーメントμより実質的に小さい。したがって、摩擦モーメントμ(保持アセンブリ500を使用することによる)に打ち勝つのに必要な起動用ボタン128からの力は、摩擦モーメントμに打ち勝つのに必要な起動用ボタンからの力(上述のプランジャ144を使用する実施形態における)より実質的に小さい。換言すれば、加圧ばね140を起動前位置に保持することによる摩擦モーメントは、負荷がかかるところのモーメントの減少により、実質的に小さくなる。したがって、プランジャ144を使用する注入装置と比較すると、保持アセンブリ500を使用する実施形態は、注入装置100を起動させるために患者が印加することが必要な力が軽減される。
【0085】
しかしながら、保持アセンブリ500を使用する実施形態においては、加圧ばね140は鋼の保持板504に対して支持されるのに対し、プランジャ144を使用する実施形態においては、上述のように、加圧ばね140はプラスチックの底部エンクロージャ104に対して支持されることに注目されたい。しかし、鋼対鋼の摩擦係数は鋼とプラスチックとの摩擦係数よりもいくぶん高いとはいえ、距離が短くなった分(L対L)は、摩擦係数が高くなった分を補うにとどまらない。例えば、プランジャ144を使用する実施形態を用いた実験においては、注入装置を起動させるために平均で4 lb超が必要とされた。対照的に、保持アセンブリ500を使用する実施形態を用いた実験においては、注入装置を起動させるために平均で約1.5 lbが必要とされた。
【0086】
スプロケット520は、起動前位置においてプランジャ508の頂面の上に着座するので(例えば、図19に示されるように)、注入装置100の全高を低減するための1つの選択肢は、プランジャ内にポケットを作り、起動前位置においてスプロケット520がプランジャ508の頂部と同一平面になるようにすることである。しかしながら、そのような実施形態は、リザーバ160の死容積または使用不能容積を増大させることがある。しかしながら、そのようなポケットを持たない実施形態の起動時には、プランジャ508は、リザーバ・ドーム・シール164に衝突する前に、円筒形ハウジング200内でより長い距離を移動することになる。それゆえ、そのような衝突の前に、より大きい運動エネルギーが存在する。プランジャ508とリザーバ・ドーム・シールとの間のこの衝突は、大きい音を生じさせることがある。この運動エネルギーを低減するための1つの方法は、スプロケット歯532とプランジャ508のフィンガ540とが係合する領域に非常に粘稠な減衰ゲルを注入することである。
【0087】
そのような問題に対処するための別の方法は、図21および図22に示されるような保持アセンブリ560の代替的な実施形態を使用することである。図21は、ポスト568がその上に配置されたプランジャ564を示す。スプロケット572がポスト568の末端部に配置され、スプロケットは複数のスプロケット歯576を含む。1つの実施形態によれば、ポスト568は、プランジャ564の実質的に中心に配置される。それゆえ、ポスト568は、プランジャ564から、スプロケット572がリザーバ・ドーム・シール164から遠ざかる方向を指して傘状の様式で延びており、スプロケット572とリザーバ・ドーム・シール164との間の意図しない接触を防ぐ。
【0088】
さらに、1つの実施形態によれば、ポスト568は、保持板580との係合を容易にするための小直径部分578を有する(以下により詳細に説明される)。さらに、1つの実施形態によれば、ポスト568およびスプロケット572は、単一の金属構造体として一体に形成される。さらに、1つの実施形態によれば、ポスト568は、プランジャ564にスポット溶接で取り付けられる。別の実施形態によれば、ポスト568は、プランジャ564にねじ留めされる。さらに別の実施形態によれば、ポスト568は、プランジャ564に摩擦嵌めで取り付けられる。さらに別の実施形態によれば、ポスト586は、フランジおよびねじ付き端部を有し、ねじ付き端部は、プランジャ564内の開口部を通して挿入され、フランジがプランジャ564に対して固定されるまで締められるナットを用いて、プランジャ564に取り付けられる。別の代替的な実施形態によれば、ポスト568およびプランジャ564は、単一の金属構造体として一体に形成される。さらに、以下でより詳細に説明されるように、プランジャ564は、保持アセンブリ560を動作前位置に組み立てるための少なくとも1つの開口部580も含む。
【0089】
したがって、図22に示されるように、動作前位置における保持アセンブリ560の断面図において、保持板582は、スプロケット572に対応する形状を有するスプロケット開口部584を含む。別の言い方をすると、保持板582は、実質的にその中心に打ち抜かれたスプロケット開口部584を有し、ポスト568は、その末端部に配置された対応する歯付き外形を備えたスプロケット572を有する。1つの実施形態によれば、上述の保持板504と同様に、保持板582は、底部エンクロージャ104に対して不動であり、これに対して割出しされる。したがって、保持板582は、プランジャ564が起動時に回転するときに、回転することはない。
【0090】
図18Bと同様に、スプロケットのスプロケット開口部584は、保持板582の複数のフィンガ592に挟まれた複数のスロット588を含む。1つの実施形態によれば、複数のスロット588および複数のフィンガ592の各々は、それぞれ、複数のスプロケット歯576に対応する。
【0091】
保持アセンブリ560が起動前位置にあるとき、図22に示されるように、スプロケット歯576は、保持板582のフィンガ592と整列して係合し、加圧ばね140の圧縮を維持する。さらに、保持アセンブリ500と同様に、保持アセンブリ560が起動前位置にあるとき、プランジャ564のプランジャ・タブは、円筒形ハウジング200の足部係合面218上に支持されない。その代わり、加圧ばね140を圧縮された起動前位置に維持する力は、スプロケット歯576と保持板582のフィンガ592との間の係合により支持される。しかしながら、そのような実施形態においても、円筒形ハウジング200の足部係合面218は、やはりプランジャ564の過度の揺れを防ぐことができる。
【0092】
注入装置100が起動すると、プランジャ564が回転させられて(例えば、上述のように、起動用ボタン128の移動により円筒形ハウジング200の周りを回転するロータ136によって)、スプロケット歯576がスプロケット開口部584のスロット588と整列するようにされ(かつ、プランジャ・タブが円筒形ハウジング200の凹状チャネル204と整合するようにされ)、プランジャ564を解放して、加圧ばね140の力の下で円筒形ハウジング200内を並進させ、リザーバ160を加圧させる。
【0093】
保持アセンブリ560を起動前位置に組み立てるために、例えばその端部から突出する一対の突出部548を有する工具544(例えば、図24参照)が、突出部548がプランジャ564の工具開口部580(例えば、図21参照)を通るように挿入される。次に工具544を用いて、プランジャ564に対する下向きの圧力により、加圧ばね140を圧縮する。工具544は、スプロケット572がスプロケット開口部584を通過するまで、プランジャ564の下向きの移動および加圧ばね140の圧縮を続ける。スプロケット572がスプロケット開口部584を通過するためには、スプロケット歯576を、スプロケット開口部584のスロット588と整列させなければならない。スプロケット開口部584のスロット588がスプロケット歯576と整列したならば、工具544を回転させて、プランジャ564を回転させ、所望のアラインメントにすることができる。スプロケット572がスプロケット開口部584を通過した後、工具544は、工具突出部548が工具開口部580の側部と係合してプランジャ564を回転させるように回転し、スプロケット歯576が保持板582のフィンガ592と整列するようにさせる。この時点で、工具544を取り外すことができ、それにより、スプロケット歯576を保持板582のフィンガ592と係合させて、加圧ばね140の圧縮を維持することができる。
【0094】
保持アセンブリ560の説明された実施形態は、プランジャ内の開口部を排除し、したがって、リザーバ160の死容積の問題を軽減または排除する。そして、スプロケット572は、保持板582の底部により保持され、起動前状態においては底部エンクロージャの厚み内にあるので、それゆえ、スプロケット572の高さが注入装置100の全高を増大させることはない。
【0095】
別の実施形態によれば、保持板582は、底部エンクロージャ104に対して不動ではなく、むしろ回転自在に配置され、プランジャ564は起動時に回転しない。換言すれば、本実施形態においては、少なくとも保持アセンブリ560に関しては、保持板がロータ136に取って代わる。別の言い方をすると、この実施形態においては、保持板582は係合タブを有し、この係合タブは、起動用ボタン128が押し下げられたときに起動用ボタン128と係合し、それにより、保持板582を底部エンクロージャ104に対して回転させる。この回転が、スロット588をスプロケット歯576と整列させ、それにより、プランジャ564を解放して、加圧ばね140の力により円筒形エンクロージャ200内で並進させる。
【0096】
図5および図10と同様に、それぞれ、図25および図26は、起動前状態および起動後における、プランジャ144を使用した注入装置100の断面図を示す。図25に示されるように、リザーバ160は、医薬品で満たされており、ロータ136および極微針152はそれぞれのその起動前位置にあり、針カバー112は極微針152を覆っている。さらに、プランジャ144は、圧縮ばね140を圧縮する起動前位置にあり、プランジャ・タブ214の足部212は、円筒形ハウジング200と係合している。
【0097】
図26においては、極微針152は注入装置100の外側に延びており、リザーバ160は、加圧ばね140の力によりリザーバ・ドーム・シール164をドーム176の下側に実質的に適合するように押し付けるプランジャ144によって、実質的に空にされている。図示されるように、プランジャ144およびドーム176は、実質的に同じサイズおよび形状であり、プランジャ144はドーム176よりわずかに小さく、2つはドーム176に完全に押し当たって着座し、製造公差、ならびに、プランジャ144とドーム176との間に挟まれるリザーバ・ドーム・シール164を見越すようになっている。換言すれば、プランジャ144およびドーム176の形状およびサイズは相補的であり、リザーバ160における死容積または使用不能空間の量を最小にする。このようにして、注入装置100は、リザーバが充填されたときに所定容積の医薬品(例えば、3mlまたは5ml)を収容し、かつ、実質的に医薬品の全容積を送達するように設計される。しかし、リザーバ160が一部しか充填されていない場合(例えば、製薬業者が3ml注入装置に2mlしか医薬品を充填しない場合、または5ml注入装置に3mlの医薬品しか充填しない場合)には、困難が生じ得る。
【0098】
リザーバ160の容積(ドーム176と、可撓性ではあるが非膨張性の、またはドーム・シール164との間に規定される)が予め定められているので、満杯の設計容積より少ない容積で注入装置100を充填すると、気体のような何らかの種類の流体で充填しなければならない空隙が残ることになる。この気体はその後、患者の皮膚内に薬物を排出するために注入装置100から放出されなければならない。
【0099】
1つの解決法は、投与される医薬品の容積に合わせてカスタムメイドされたプランジャ/ドームの組合せを作ることである。例えば、ドームの湾曲、および対応するプランジャの湾曲を小さくし(すなわち、ドームおよびプランジャを扁平にする)、それによりリザーバ160の容積を小さくすることができる。しかし、この解決法のためには、所定容積の医薬品ごとに、独自製造部品、すなわちプランジャおよびリザーバ・ドームが存在することになる。
【0100】
別の解決法は、プランジャ144を部分的にリザーバ・ドーム・シール164の中へと押し込むようにさせて、可撓性ではあるが非膨張性のリザーバ・ドーム・シール164を撓ませ、リザーバ160の容積を小さくすることである。この解決法を実施するための1つの手法は、底部エンクロージャを改造することである。より具体的には、円筒形ハウジング200の足部係合面218を、円筒形ハウジング200上で垂直方向により高く配置することができ、したがって、起動前位置において、プランジャ144がリザーバ・ドーム・シール164を部分的に撓ませることができることになろう。この実施は、底部エンクロージャの変更を必要とする。
【0101】
解決法を実施するための別の手法は図28に示されており、図28は、プランジャ・タブ604が、プランジャ144のプランジャ・タブ214(例えば、図27に示される)と比べて長い、注入装置100のためのプランジャ600の実施形態を示す。より具体的には、プランジャ・タブ604の足部612およびプランジャ・タブ214の足部212は、実質的に同様である。しかし、プランジャ・タブ604の脚部608の長さは、プランジャ・タブ214の脚部208の長さと比べて有意に長くされている。それゆえ、起動前位置においては、図29に示されるように、プランジャ600は、円筒形ハウジング200内で垂直方向により高く配置され(例えば、図25に示されるプランジャ144の位置と比較して)、リザーバ・ドーム・シール164と接触してこれを非膨張的に圧縮し、これにより、リザーバ160の容積を小さくする。したがって、医薬品の各々の所定用量の容積ごとに脚部608の長さを変えて、リザーバ・ドーム・シール164と接触してこれを非膨張的に撓ませ、リザーバ160の容積を実質的に所定用量の容積まで小さくすることができる。
【0102】
その他の点では、プランジャ600を使用する注入装置100は、プランジャ144を使用する注入装置100と実質的に同様に動作する。例えば、図30に示されるように、図26と同様に、極微針152は、起動後には注入装置100の外側に延びており、リザーバ160は、加圧ばね140の力によりリザーバ・ドーム・シール164をドーム176の下側に実質的に適合するように押し付けるプランジャ144によって、実質的に空にされている。したがって、プランジャ144を使用した注入装置100と比較すると、この手法では、注入装置100が起動前位置にあるときにリザーバ160の容積を小さくするために必要とされるのは、単独の独自製造部品(すなわち、プランジャ600)のみである。
【0103】
部分的に撓んだリザーバ・ドーム・シールの解決法を実施するためのさらに別の手法は、図31に示されるプランジャ640を設けることである。図21のプランジャ564と同様に、プランジャ640は、スプロケット648がその末端部に配置されたポスト644を含む。スプロケット648はスプロケット歯652を含み、ポスト644は小直径部分656を含む。しかしながら、プランジャ564と比較すると、ポスト644の長さは、ポスト568の長さに対して有意に長くされている。図32は、起動前位置に配置された、プランジャ640を使用した注入装置100を示す。図32において、スプロケット歯648は、保持板582のフィンガ592と係合して、起動前位置におけるプランジャ640を加圧ばね140の力に抗して維持する。それゆえ、ポスト644の長くされた長さにより、図32に示される起動前位置におけるプランジャ640は、円筒形ハウジング200内で垂直方向により高く配置され(例えば、図22には円筒形ハウジングは示されていないが、図22に示されるプランジャ564の位置と比較して)、リザーバ・ドーム・シール164と接触してこれを非膨張的に撓ませて、リザーバ160の容積を小さくする。したがって、医薬品の各々の所定用量の容積ごとに、ポスト644の長さを変えて、リザーバ・ドーム・シール164と接触してこれを非膨張的に撓ませ、リザーバ160の容積を実質的に所定用量の容積まで小さくすることができる。
【0104】
その他の点では、プランジャ640を使用する注入装置100は、プランジャ564を使用する注入装置100と実質的に同様に動作する。例えば、図32に示されるように、極微針152は起動後には注入装置100の外側に延びており、リザーバ160は、加圧ばね140の力によりリザーバ・ドーム・シール164をドーム176の下側に実質的に適合するように押し付けるプランジャ144によって、実質的に空にされている。したがって、プランジャ564を使用した注入装置100と比較すると、この手法では、注入装置100が起動前位置にあるときにリザーバ160の容積を小さくするために必要とされるのは、単独の独自製造部品(すなわち、プランジャ640)のみである。本実施形態はプランジャ564との比較で説明したが、この手法は、ポスト516を長くすることにより、図17−図20の実施形態(そこでは、スプロケット520はプランジャ508と係合する)に適用することもまた可能であることを、当業者は理解するであろう。
【0105】
従って、図28から図33は、加圧システムの実施形態を示し、この加圧システムは、起動前位置において、円筒形ハウジング200内に保持されており、加圧システムがリザーバ・ドーム・シール164と接触してこれを非膨張的に撓ませ、リザーバ160の初期容積を小さくするようになっている。換言すれば、図28から図33の実施形態は、リザーバ160を選択的に加圧するための加圧システムを示し、ここで、加圧システムは、リザーバ160の初期容積を非膨張的に小さくするための手段を含む。
【0106】
説明された実施形態は、医薬品および薬剤を含む種々の物質を患者、特に人間の患者に投与する際の使用に適切である。本明細書において用いられる場合、薬剤は、身体の膜および表面、特に皮膚を通して送達することができる、生物学的活性を有する物質を含む。以下でより詳細に列挙される例は、抗生物質、抗ウィルス剤、鎮痛剤、麻酔薬、食欲抑制薬、抗関節炎薬、抗うつ剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗新生物薬、DNAワクチンを含むワクチン、などを含む。患者に対して皮内または皮下送達することができるその他の物質は、ヒト成長ホルモン、インスリン、タンパク質、ペプチドおよびその断片を含む。タンパク質およびペプチドは、天然由来のものでも、合成されたものでも、または組換え的に産生されたものでもよい。さらに、本装置は、樹状細胞の皮内注入の際に、細胞治療において用いることができる。本発明の方法により送達することができるさらに他の物質は、その内容全体が引用により本明細書に明示的に組み入れられる「Method of Intradermally Injecting Substances」と題された特許文献1に記載されるように、疾患の予防、診断、緩和、処置、または治療に用いられる薬物、ワクチンおよびその他のものからなる群から選択することができ、薬物は、アルファ1−アンチトリプシン、血管新生抑制剤、アンチセンス、ブトルファノール、カルシトニンおよび類似体、セレデース、COX−II抑制剤、皮膚科薬剤、ジヒドロエルゴタミン、ドーパミン起動薬および拮抗薬、エンケファリンおよびその他のオピオイドペプチド、上皮成長因子、エリスロポイエチンおよび類似体、卵胞刺激ホルモン、G−CSF、グルカゴン、GM−CSF、グラニセトロン、成長ホルモンおよび類似体(成長ホルモン放出ホルモンを含む)、成長ホルモン拮抗薬、ヒルジン、およびヒルログなどのヒルジン類似体、IgEサプレッサ、インスリン、インスリノトロピンおよび類似体、インスリン様成長因子、インターフェロン、インターロイキン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモンおよび類似体、低分子量ヘパリン、M−CSF、メトクロプラミド、ミダゾラム、モノクローナル抗体、麻薬性鎮痛薬、ニコチン、非ステロイド性抗炎症薬、オリゴ糖、オンダンセトロン、副甲状腺ホルモンおよび類似体、副甲状腺ホルモン拮抗薬、プロスタグランジン拮抗薬、プラスタグランジン、組換え可溶性受容体、スコポラミン、セロトニン起動薬および拮抗薬、シルデナフィル、テルブタリン、血栓溶解剤、組織プラスミノーゲン活性化因子、TNF−−、およびTNF−−拮抗薬を含み、ワクチンは、担体/アジュバントとともに、または担体/アジュバントを伴わずに、予防薬および治療用抗原(サブユニット・タンパク質、ペプチドおよび多糖類、多糖コンジュゲート、トキソイド、遺伝子に基づくワクチン、弱毒化、再集合体、不活化、全細胞、ウィルスおよび細菌のベクターを含むが、それらに限定されない)を含み、中毒、関節炎、コレラ、コカイン中毒、ジフテリア、破傷風、HIB、ライム病、髄膜炎菌、麻疹、おたふくかぜ、風疹、水疱瘡、黄熱病、呼吸器合胞体ウィルス、ダニ媒介日本脳炎、肺炎球菌、連鎖球菌、腸チフス、インフルエンザ、A型、B型、C型およびE型肝炎を含む肝炎、中耳炎、狂犬病、ポリオ、HIV、パラインフルエンザ、ロタウウィルス、エプスタインバーウィルス、CMV、クラミジア、莢膜非保有ヘモフィルス、モラクセラ・カタラーリス、ヒトパピローマウィルス、BCGを含む結核、淋病、喘息、アテローム性動脈硬化症マラリア(atheroschlerosis malaria)、大腸菌、アルツハイマー、ピロリ菌、サルモネラ菌、糖尿病、癌、単純ヘルペス、ヒトパピローマなどに関連し、その他の物質は、一般的な風邪薬、抗中毒薬、抗アレルギー薬、鎮吐薬、抗肥満薬、抗骨粗鬆症薬、抗感染薬、鎮痛剤、麻酔薬、摂食障害薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗けいれん薬、抗うつ薬、抗糖尿病剤、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗片頭痛製剤、乗り物酔い止め製剤、制嘔吐剤、抗新生物薬、抗パーキンソン薬、かゆみ止め、統合失調症治療薬、解熱剤、抗コリン作用薬、ベンゾジアゼピン拮抗薬、一般血管、冠状血管、末梢血管および大脳血管を含む血管拡張薬、骨刺激薬、中枢神経系刺激薬、ホルモン、催眠薬、免疫抑制剤、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、副交感神経興奮薬、プロスタグランジン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチドおよびその他の高分子、神経刺激薬、鎮静剤、性的機能低下症および精神安定剤のような主要な治療薬、ならびに、ツベルクリンおよびその他の過敏症薬のような主要な診断薬のすべてを含む。
【0107】
本発明のシステムおよび方法により送達することができるワクチン製剤は、ヒトの病原体に対抗する免疫反応を誘発することが可能な抗原または抗原組成物からなる群から選択することができ、その抗原または抗原組成物は、その内容全体が引用により本明細書に明示的に組み入れられる「Vaccine Delivery system」と題された特許文献2に記載されるように、HIV−1由来のもの(tat、nef、gp120またはgp160など)、gDもしくはその誘導体またはHSVIもしくはHSV2由来のICP27のような最初期タンパク質などのヒトヘルペスウィルス(HSV)由来のもの、サイトメガロウィルス(CMV(特にヒト)由来のもの(gBまたはその誘導体など)、ロタウィルス由来のもの(生きた弱毒化ウィルスを含む)、エプスタインバーウィルス由来のもの(gp350またはその誘導体など)、水痘帯状疱疹ウィルス(VZV)由来のもの(gp1、IIおよびIE63など)、または、B型肝炎ウィルス由来のもの(例えば、B型肝炎表面抗原またはその誘導体)、A型肝炎ウィルス(HAV)由来のもの、C型肝炎ウィルス由来のものおよびE型肝炎ウィルスのような肝炎ウィルス由来のもの、または、パラミクソウィルス由来のもの、すなわち、呼吸器合胞体ウィルス(RSV)由来のもの(Fタンパク質およびGタンパク質またはその誘導体)、パラインフルエンザウィルス由来のもの、麻疹ウィルス由来のもの、おたふくかぜウィルス由来のもの、ヒトパピローマウィルス(HPV)由来のもの(例えば、HPV6、11、16、18)、フラビウィルス(例えば、黄熱病ウィルス、デング熱ウィルス、ダニ媒介脳炎ウィルス、日本脳炎ウィルス)由来のもの、または、インフルエンザウィルス由来のもの(卵もしくはMDCK細胞で培養された、全粒子の生存ウィルスもしくは不活化ウィルス、スプリット・インフルエンザ・ウィルス、もしくは全粒子インフルエンザビロゾーム、またはHA、NP、NAもしくはMタンパク質などのその精製タンパク質もしくは組換タンパク質、またはこれらの組み合わせ)などの、その他のウィルス性病原体に由来するもの、または、淋菌および髄膜炎菌を含むナイセリア属由来のもの(例えば、莢膜多糖類およびそれらのコンジュゲート、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、アドヘシン);化膿性連鎖球菌由来のもの(例えば、Mタンパク質またはその断片、C5Aプロテアーゼ、リポテイコ酸)、ストレプトコッカス・アガラクチア由来のもの、ミュータンス菌由来のもの;軟性下疳菌由来のもの;カタル球菌としても知られるM.カタラーリス(M catarrhalis)を含むモラクセラ属由来のもの(例えば、高分子量および低分子量のアドヘシン及びインベイシン);百日咳菌由来のもの(例えば、パータクチン、百日咳毒素またはその誘導体、繊維状赤血球凝集素、アデニル酸シクラーゼ、線毛)、パラ百日咳菌由来のもの、および気管支敗血症菌由来のものを含むボルデテラ属由来のもの;結核菌由来のもの(例えば、ESAT6、抗原85A、抗原85Bまたは抗原85C)、ウシ型結核菌由来のもの、らい菌由来のもの、鳥型結核菌由来のもの、ヨーネ菌由来のもの、スメグマ菌由来のものを含むマイコバクテリウム属由来のもの;在郷軍人病菌由来のものを含むレジオネラ属由来のもの;腸毒性大腸菌由来のもの(例えば、定着因子、易熱性毒素またはその誘導体、耐熱性毒素またはその誘導体)、腸管出血性大腸菌由来のもの、腸病原性大腸菌由来のもの(例えば、志賀毒素様毒素またはその誘導体)を含むエシュリヒア属由来のもの;コレラ菌由来のもの(例えば、コレラ毒素またはその誘導体)を含むビブリオ属由来のもの;ソンネ赤痢菌由来のもの、志賀赤痢菌由来のもの、フレックスネリ赤痢菌由来のものを含む赤痢菌属由来のもの;エンテロコリチカ菌由来のもの(例えば、Yopタンパク質)、ペスト菌由来のもの、仮性結核菌由来のものを含むエルシニア属由来のもの;ジェジュニ菌由来のもの(例えば、毒素、アドヘシン、インベイシン)およびカンピロバクター・コリ由来のものを含むカンピロバクター属由来のもの;チフス菌由来のもの、パラチフス菌由来のもの、豚コレラ菌由来のもの、腸炎菌由来のものを含む、サルモネラ属由来のもの;リステリア菌由来のものを含むリステリア属由来のもの;ピロリ菌由来のもの(例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素)を含むヘリコバクター属由来のもの;緑膿菌由来のものを含むシュードモナス属由来のもの;黄色ブドウ球菌由来のもの、表皮ブドウ球菌由来のものを含む、ブドウ球菌属由来のもの;フェカリス菌由来のもの、フェシウム菌由来のものを含む腸球菌属由来のもの;破傷風菌由来のもの(例えば、破傷風毒素およびその誘導体)、ボツリヌス菌由来のもの(例えば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)、ディフィシル菌由来のもの(例えば、クロストリジウム毒素AまたはBおよびその誘導体)を含むクロストリジウム属由来のもの;炭疽菌(例えば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)を含む桿菌属由来のもの;ジフテリア菌由来のもの(例えば、ジフテリア毒素およびその誘導体)を含むコリネバクテリウム属由来のもの;ライム病菌由来のもの(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリア・ガリニ由来のもの(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリア・アフゼリ由来のもの(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリア・アンダーソニー(B. andersonii)由来のもの(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、ボレリア・ヘルムシー(B. Hermsii)を含むボレリア属由来のもの;エーリキア・エクイ由来のもの、およびヒト顆粒球エリーキア症病原体由来のものを含むエリーキア属由来のもの;斑点熱リケッチア由来のものを含むリケッチア属由来のもの;トラコーマ病原体由来のもの(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、肺炎クラミジア由来のもの(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク)、オウム病クラミジア由来のものを含むクラミジア属由来のもの;レプトスピラ・インテロガンス由来のものを含むレプトスピラ属由来のもの;梅毒トレポネーマ由来のもの(例えば、希少(rare)外膜タンパク質)、トレポネーマ・デンティコラ由来のもの、トレポネーマ・ハイオディセンテリー由来のものを含むトレポネーマ属由来のものなどの細菌性病原体に由来するもの、または、熱帯熱マラリア原虫に由来するものを含むプラスモジウム属に由来するもの;トキソプラズマ原虫に由来するもの(例えば、SAG2、SAG3、Tg34)を含むトキソプラズマ属に由来するもの;赤痢アメーバに由来するものを含むエントアメーバ属に由来するもの;ネズミバベシアに由来するものを含むバベシア属に由来するもの;クルーズ・トリパノソーマに由来するものを含むトリパノソーマ属に由来するもの;ランブル鞭毛虫に由来するものを含むジアルジア属に由来するもの;森林型熱帯リーシュマニア由来のものを含むリーシュマニア属(Leshmania spp)由来のもの;ニューモシスチス・カリニに由来するものを含むニューモシスチス属に由来するもの;膣トリコモナスに由来するものを含むトリコモナス属に由来するもの;マンソン住血吸虫に由来するものを含む住血吸虫属に由来するものなどの寄生虫に由来するもの、または、鵞口瘡カンジダに由来するものを含むカンジダ属に由来するもの;クリプトコックス・ネオフォルマンスに由来するものを含むクリプトコックス属に由来するものなどの酵母菌に由来するものである。
【0108】
これらには、例えば、Tb Ral2、Tb H9、Tb Ra35、Tb38−1、Erd 14、DPV、MTI、MSL、mTTC2、およびnTCC1など、結核菌に対するその他の好ましい特異的抗原も含まれる。結核菌に対するタンパク質には、結核菌の少なくとも2つ、好ましくは3つのポリペプチドが融合してより大きいタンパク質になった融合タンパク質およびその変異体も含まれる。好ましい融合体には、Ra12−TbH9−Ra35、Erd14−DPV−MTI、DPV−MTI−MSL、Erd14−DPV−MTI−MSL−mTCC2、Erd14−DPV−MTI−MSL、DPV−MTI−MSL−mTCC2、TbH9−DPV−MTIが含まれる。クラミジアに対する最も好ましい抗原には、例えば、高分子量タンパク質(HWMP)、ORF3、および推定膜タンパク質(Pmps)が含まれる。好ましい細菌性ワクチンには、肺炎球菌を含む連鎖球菌に由来する抗原(例えば、莢膜多糖類およびそのコンジュゲート、PsaA、PspA、ストレプトリシン、コリン結合タンパク質)、およびタンパク質抗原ニューモリシン(非特許文献1、非特許文献2)、およびその突然変異無毒化誘導体が含まれる。その他の好ましい細菌性ワクチンは、B型インフルエンザ菌(「Hib」、例えば、PRPおよびそのコンジュゲート)、莢膜非保有インフルエンザ、例えばOMP26、高分子量アドヘシン、P5、P6、タンパク質D及びリポタンパク質D、ならびにフィンブリンおよびフィンブリン由来ペプチド、またはその多数の複製変異体もしくは融合タンパク質を含めて、ヘモフィルス属由来の抗原を含む。B型肝炎表面抗原の誘導体は当該技術分野において周知であり、とりわけ、PreS1、PreS2抗原を含む。1つの好ましい態様においては、本発明のワクチン製剤は、特にCHO細胞内で発現させる場合に、HIV抗原、gp120を含む。さらなる実施形態において、本発明のワクチン製剤は、上で定義したようなgD2tを含む。
【0109】
上に挙げた物質の送達に加えて、注入装置100は、患者から物質を抜き取るため、または患者内の物質のレベルを監視するために用いることもできる。監視し、または抜き取ることができる物質の例には、血液、組織液、または血漿が含まれる。抜き取った物質をその後、分析物、グルコース、薬物などについて分析することができる。
【0110】
ごく少数の本発明の例示的な実施形態を上記で詳細に説明したが、当業者であれば、本発明の新規な教示および利点から著しく逸脱することなく、例示的な実施形態における多くの変更を行うことができることを容易に理解するであろう。したがって、そのようなすべての変更は、添付の請求項およびその均等の範囲内に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達装置であって、
頂部エンクロージャおよび底部エンクロージャを含む本体と、
前記本体内に配置された、医薬品を収容するためのリザーバと、
患者の皮膚に貫入するための注射針であって、管腔を有し、前記リザーバと選択的に連通する注射針と、
前記リザーバを選択的に加圧するための加圧システムと
を備え、
起動前位置において、前記加圧システムが、前記リザーバに接触してこれを圧縮し、前記リザーバの初期容積を低減させることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記底部エンクロージャは、円筒形ハウジングを備え、
前記加圧システムは、前記円筒形ハウジング内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記加圧システムは、
前記円筒形ハウジング内で可動のプランジャと、
前記加圧システムが前記起動前位置にあるときに前記プランジャにより圧縮される加圧ばねと
を備えることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記プランジャは、その外縁部から延びる少なくとも1つのタブを備え、
前記円筒形ハウジングは、少なくとも1つの凹状チャネルを含み、前記少なくとも1つのプランジャ・タブを前記プランジャの移動中にガイドすることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプランジャ・タブは、前記プランジャの前記外縁部から延びる脚部、および前記脚部から延びる足部を備え、
前記少なくとも1つの凹状チャネルは、保持部を含み、
前記足部と前記保持部との間の抵抗が、前記加圧システムを前記加圧ばねの力に抗して前記起動前位置に保持することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記脚部の長さが、前記リザーバの前記初期容積の低減の量を定めることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記リザーバは、ドームおよび可撓性リザーバ・ドーム・シールを備え、
前記加圧システムが前記起動前位置にあるとき、前記プランジャの表面は、前記リザーバ・ドーム・シールに接触してこれを圧縮し、前記リザーバの前記初期容積を低減させ、
前記リザーバ・ドーム・シールに接触する前記プランジャの表面の形状は、前記ドームの形状に対応することを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記本体上に可動に配置された、起動前位置から起動位置に可動な起動用ボタンをさらに備え、
前記起動用ボタンの前記起動前位置から前記起動位置への移動が、前記プランジャの回転を生じさせて、前記足部が、前記保持位置から自由になり、前記プランジャが、前記加圧ばねの力により前記円筒形ハウジング内を移動し、前記リザーバを加圧することを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記加圧システムは、
前記底部エンクロージャ上に配置された保持板と、
前記円筒形ハウジングの実質的に中心に配置され、前記保持板および前記プランジャのうちの一方の上にあるポストであって、その末端部に配置されたスプロケットを有するポストと
をさらに備え、
前記加圧ばねは、前記保持板と前記プランジャとの間に配置され、
前記保持板および前記プランジャのうちの残りの一方は、前記スプロケットに対応する形状の開口部を含み、前記開口部は、前記保持板および前記プランジャのうちの残りの一方のフィンガの間に挟まれたスロットを有し、
前記起動前位置において、前記スプロケットの歯は、前記フィンガと整列し、前記加圧ばねの圧縮を維持することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項10】
前記ポスト、および、前記ポストが配置された前記保持板および前記プランジャのうちの一方が、単一の構造体として一体に形成されることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記プランジャは、その外縁部から延びる少なくとも1つのタブを備え、
前記円筒形ハウジングは、少なくとも1つの凹状チャネルを含み、前記少なくとも1つのプランジャ・タブを前記プランジャの移動中にガイドすることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記ポストの長さが、前記リザーバの前記初期容積の低減の量を定めることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記リザーバは、ドームおよび可撓性リザーバ・ドーム・シールを備え、
前記加圧システムが前記起動前位置にあるとき、前記プランジャの表面は、前記リザーバ・ドーム・シールに接触してこれを圧縮し、前記リザーバの前記初期容積を低減させ、
前記リザーバ・ドーム・シールに接触する前記プランジャの表面の形状は、前記ドームの形状に対応することを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記本体上に可動に配置された、起動前位置から起動位置に可動な起動用ボタンをさらに備え、
前記起動用ボタンの前記起動前位置から前記起動位置への移動が、前記保持板および前記プランジャのうちの一方の、前記保持板および前記プランジャのうちの回転しない一方に対する回転を生じさせて、前記スプロケットの歯が、前記開口部の前記スロットと整列し、前記プランジャが解放されて、前記加圧ばねの力の下で前記円筒形ハウジング内を移動し、前記リザーバを加圧することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記ポストは、前記保持板上に配置されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ポストは、前記プランジャ上に配置されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記起動用ボタンの前記起動前位置から前記起動位置への移動が、前記保持板の回転を生じさせて、前記スプロケットの歯を前記開口部の前記スロットに整列させることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記起動用ボタンの前記起動前位置から前記起動位置への移動が、前記プランジャの回転を生じさせて、前記スプロケットの歯を前記開口部の前記スロットに整列させることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項19】
患者の皮膚内へのまたは皮膚を貫く注射により所定容積の医薬品を前記患者の体内に送達するための装置であって、
頂部エンクロージャおよび底部エンクロージャを含む本体と、
前記本体内に配置された、前記医薬品を収容するためのリザーバと、
前記患者の皮膚に貫入するための注射針であって、管腔を有し、前記リザーバと選択的に連通する注射針と、
前記リザーバを選択的に加圧するための加圧システムと
を備え、
起動前位置において、前記加圧システムが、前記リザーバに接触してこれを撓ませ、前記リザーバの初期容積を実質的に前記所定容積まで低減させることを特徴とする装置。
【請求項20】
前記加圧システムは、
前記本体内で可動のプランジャと、
前記加圧システムが前記起動前位置にあるときに前記プランジャにより圧縮される加圧ばねと
を備えることを特徴とする請求項19に記載の装置
【請求項21】
前記リザーバは、ドームおよび可撓性リザーバ・ドーム・シールを備え、
前記加圧システムが前記起動前位置にあるとき、前記プランジャの表面は、前記リザーバ・ドーム・シールに接触してこれを撓ませ、前記リザーバの前記初期容積を低減させ、
前記リザーバ・ドーム・シールに接触する前記プランジャの表面の形状は、前記ドームの形状に対応することを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記プランジャは、前記プランジャの外縁部から延びる少なくとも1つの脚部、および前記脚部から延びる足部を備え、
前記底部エンクロージャは、保持部を備え、
前記足部と前記保持部との間の摩擦抵抗が、前記加圧システムを前記加圧ばねの力に抗して前記起動前位置に保持し、
前記脚部の長さが、前記リザーバの前記初期容積の低減の量を定めることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記加圧システムは、
前記底部エンクロージャ上に配置された保持板と、
前記プランジャおよび前記保持板のうちの一方の実質的に中心に配置されたポストであって、その末端部に配置されたスプロケットを有するポストと
をさらに備え、
前記加圧ばねは、前記保持板と前記プランジャとの間に配置され、
前記保持板および前記プランジャのうちの残りの一方は、前記スプロケットに対応する形状の開口部を含み、前記開口部は、前記保持板および前記プランジャのうちの残りの一方のフィンガの間に挟まれたスロットを有し、
前記起動前位置において、前記スプロケットの歯は、前記フィンガと整合し、前記加圧ばねの圧縮を維持し、
前記ポストの長さが、前記リザーバの前記初期容積の低減の量を定めることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記ポストは、前記保持板上に配置されることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記ポストは、前記プランジャ上に配置されることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記起動用ボタンの前記起動前位置から前記起動位置への移動が、前記保持板の回転を生じさせ、前記スプロケットの歯を前記開口部の前記スロットに整列させることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項27】
前記起動用ボタンの前記起動前位置から前記起動位置への移動が、前記プランジャの回転を生じさせて、前記スプロケットの歯を前記開口部の前記スロットに整列させることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項28】
患者の皮膚内へのまたは皮膚を貫く注射により医薬品を前記患者の体内に送達するための装置であって、
頂部エンクロージャ、および円筒形ハウジングを含む底部エンクロージャを含む本体と、
前記本体内に配置された、前記医薬品を収容するためのリザーバと、
前記患者の皮膚に貫入するための注射針であって、管腔を有し、前記リザーバと選択的に連通する注射針と、
前記リザーバを選択的に加圧するための加圧システムと
を備え、
起動前位置において、前記加圧システムは、前記円筒形ハウジング内に保持され、かつ、前記加圧システムは、前記リザーバに接触してこれを変形させ、前記リザーバの初期容積を低減させることを特徴とする装置。
【請求項29】
患者の皮膚内へのまたは皮膚を貫く注射により医薬品を前記患者の体内に送達するための装置であって、
頂部エンクロージャおよび底部エンクロージャを含む本体と、
前記本体内に配置された、医薬品を収容するためのリザーバと、
前記患者の皮膚に貫入するための注射針であって、管腔を有し、前記リザーバと選択的に連通する注射針と、
前記リザーバを選択的に加圧するための加圧システムであって、前記リザーバの初期容積を低減させるための手段を備えた加圧システムと
を備えることを特徴とする装置。
【請求項30】
前記リザーバの前記初期容積を低減させるための前記手段は、
前記本体内で可動のプランジャと、
前記加圧システムが前記起動前位置にあるときに前記プランジャにより圧縮される加圧ばねと
を備えることを特徴とする請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記リザーバは、ドームおよび可撓性リザーバ・ドーム・シールを備え、
前記加圧システムが前記起動前位置にあるとき、前記プランジャの表面は、前記リザーバ・ドーム・シールに接触してこれを部分的に圧縮し、前記リザーバの前記初期容積を低減させ、
前記リザーバ・ドーム・シールに接触する前記プランジャの前記表面の形状は、前記ドームの形状に対応することを特徴とする請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記プランジャは、前記プランジャの外縁部から延びる少なくとも1つの脚部、および前記脚部から延びる足部を備え、
前記底部エンクロージャは、保持部を備え、
前記足部と前記保持部との間の摩擦抵抗が、前記加圧システムを前記加圧ばねの力に抗して前記起動前位置に保持し、
前記脚部の長さが、前記リザーバの容積の低減の量を定めることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項33】
前記リザーバの前記初期容積を非膨張的に低減させるための前記手段は、
前記底部エンクロージャ上に配置された保持板と、
前記プランジャおよび前記保持板のうちの一方の実質的に中心に配置されたポストであって、その末端部に配置されたスプロケットを有するポストと
をさらに備え、
前記加圧ばねは、前記保持板と前記プランジャとの間に配置され、
前記保持板および前記プランジャのうちの残りの一方は、前記スプロケットに対応する形状の開口部を含み、前記開口部は、前記保持板および前記プランジャのうちの残りの一方のフィンガの間に配置されるスロットを有し、
前記起動前位置において、前記スプロケットの歯は、前記フィンガと整合し、前記加圧ばねの圧縮を維持し、
前記ポストの長さが、前記リザーバの前記初期容積の低減の量を定めることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項34】
前記ポストは、前記保持板上に配置されることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記ポストは、前記プランジャ上に配置されることを特徴とする請求項33に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図15C】
image rotate

【図15D】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18A】
image rotate

【図18B】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20A】
image rotate

【図20B】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23A】
image rotate

【図23B】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate


【公表番号】特表2013−514131(P2013−514131A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544448(P2012−544448)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/006572
【国際公開番号】WO2011/075100
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】