説明

自己点火クレードルを有するインフレータ

【課題】車両火災のような、乗り物の輸送または貯蔵の間の火災の際に、ガス生成装置/インフレータの高められた安全性を提供する。
【解決手段】ガス生成システムは、自己点火組成物を含む自己点火クレードル12を含むインフレータを含む。クレードルは、作動可能に熱力学的にインフレータの外部に連絡し、さらに弾性的に自己点火組成物を含んでおり、それにより点火の際の自己点火組成物の可燃性を最大限にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
この出願は、2006年11月22日に出願された仮出願番号60/860,701の利益を要求する。
【0002】
本発明の背景
本発明はガス生成システムに関し、特には乗り物乗員保護システムの膨張可能な要素を膨張させるためのガス生成システム、およびブースター組成物との緊密な接触下での自己点火組成物の収容のためのアセンブリーを組込むガス生成システムに関する。
【0003】
多くのインフレータが、すべての車両火災のような、たとえば乗り物の輸送または貯蔵の間の火災の際に、ガス生成装置/インフレータの高められた安全性を提供する、自己点火組成物を組込む。典型的には、自己点火組成物は、ブースター組成物および主ガス生成組成物をはじめとする、インフレータと組み合わされる他の組成物の融点以下の温度で、自動点火すいように配合される。いくつかのインフレータでは、インフレータの安全性の改善に従って、主ガス生成物質の十分な点火を保証するためにブースタープロペラントへの自己点火組成物の十分な接触を提供しないことがある。有効な自己点火メカニズムがない状態で、その溶融相中の主ガス生成物質は潜在的に過剰なエネルギーを有するシステムを提供し、それによりに安全性への関心が生ずる。
【0004】
発明の要約
自己点火組成物とブースター組成物の間の確かな接触を容易にする、自己点火アセンブリーまたはクレードルの使用により、上記の課題を解決するインフレータが提供される。自己点火クレードルは、ハウジングまたはインフレータの外部とクレードル自体との間の熱力学的関係を有利に利用するように設計されている。そのため、作動可能な状態の自己点火クレードルは、熱力学的に、インフレータのハウジングまたは直接インフレータの外部と連絡を有する。一旦、インフレータを取り囲む熱が所定のしきい値温度に達すれば、その熱との熱力学の接続を有する自己点火クレードルは自己点火組成物の確実な点火を提供し、それは迅速で実質的に均一なブースター組成物の加熱を提供する。
【0005】
本発明は、したがって、インフレータの内部に延ばされた自己点火クレードルを含むインフレータを包含する。自己点火組成物はクレードル内に収容され、クレードルのデザインによって提供されるバイアスによってそこに保持される。ブースター組成物は自己点火物質に緊密に暴露される。一旦、クレードルが加熱され、自己点火組成物を点火すると、ブースター組成物は効率的に燃焼され、それによりさらに効率的に、ガス生成組成物の任意の本質的な溶融に先立つ、主ガス生成組成物の燃焼をもたらす。
【0006】
詳細な説明
ガス生成システムは、自己点火組成物を含む自己点火クレードルを含むインフレータを含む。クレードルは、作動可能に熱力学的にインフレータの外部に連絡し、さらに弾性的に自己点火組成物を含んでおり、それにより点火の際の自己点火組成物の可燃性を最大限にする。図1−3は、本発明の自己点火クレードル12を組込むインフレータ10を示す。インフレータ10は、ドライバーサイドエアーバッグを膨張させるためのドライバーサイドインフレータとして、例えば利用されることができる。図1−3で見られるように、インフレータ10はハウジング14、環状のプロペラントチャンバー16、プロペラントチャンバー16内に配置された所定量のガス生成物質18、およびプロペラントチャンバー16を囲む環状のフィルター20を含む。インフレータハウジング14は、第1のハウジング部分22と第2のハウジング部分24を、入れ子の関係で結合するか溶接することにより形成される。第2のハウジング部分24はイグナイタアセンブリー26をその内部に受容するために開口部を有する。イグナイタアセンブリー26は溶接されるか、または他の方法で第2のハウジング部分24に適切に取り付けられる。複数のガス排出開口部28は第1のハウジング部分22を囲む周縁に間隔を置いて配置され、ハウジング10の内部とハウジングの外部の間の流体連絡を可能にする。第1のハウジング部分と第2ハウジング部分は、炭素鋼またはステンレス鋼のような固い物質から、例えば引き抜き、スタンプ、キャスティング、成形加工、押し出しまたは他の適当なプロセスによって作り上げられる。
【0007】
ガス生成物質18は、当該技術分野において公知の任意の適当なガス生成組成物、たとえば、硝酸アンモニウムのような非アジド組成物であることができる。非制限的な配合の例示は米国特許5,872,329、5,756,929および5,386,775に記載される。示された実施態様ではガス生成物質18はタブレットの形で提供されるが、ガス生成物質の顆粒のような他の形状も企図される。
【0008】
フィルター20は、環状に形成された細かい編み目のワイヤーメッシュまたは他の好適な材料を含み、これは半径方向に配置され、第1のハウジング部分22の内側の壁と外側の壁の間で弾性的に圧縮される。
【0009】
ブースターチューブ32は一般に円筒状で、所定量のブースター組成物38を含み、これは公知の方法でイグナイタ36によって点火可能であり、ガス生成物質18の燃焼特性を高める。ブースター組成物38とガス生成物質18の間の流体連絡を可能にするために、複数のガス排出開口部42がチューブ32のまわりの周辺に間隔を置いて配置される。ブースターチューブ32は、炭素鋼またはステンレス鋼のような固い物質から、スタンプ、キャスティング、成形加工、押し出し、または他の適当な方法により、作りられる。
【0010】
当該技術分野において公知のようにして、イグナイタ36を形成することができる。1つの例示的なイグナイタ構造は参照され本明細書の一部として組み込まれる、米国特許6,009,809に記載されている。イグナイタアセンブリーは、ハウジング14内に配置される場合、イグナイタ36とブースター組成物38の間の流体連絡が可能になる。
【0011】
図2−5を参照する。自己点火クレードル12はベース部分12a、ベース部分に形成された開口12b、および所定量の公知の自己点火物質29との接触を維持し、それに対して力を加えるために、ベース部分から延ばされた少なくとも1つの弾性要素12cを含んでいる。開口12bはクレードルの「A」側からの自己点火物質29の挿入を許容するサイズにされる。要素12cは物質29に力を加え、物質を要素12cとインフレータの他の部分、たとえばブースターチューブ32、ハウジング14または他の弾性要素との間に配置する。図4および5の中で示される特定の実施態様では、弾性要素の対12cおよび12dがベース部分12aから伸び、それらの間に物質29を配置し、保持する。
【0012】
インフレータのアセンブリー中に、クレードル12と、インフレータ外部と熱連絡を有するインフレータの熱伝導性の部分(例えばハウジング部分22)の間の十分な熱接触が達成され、インフレータの外部からクレードルまで、およびそこから自己点火物質29までの適時な熱伝導を容易にすることを支援する。インフレータが高い外部温度に暴露される場合、これは物質29の適時の点火を容易にする。自己点火物質29と弾性要素12c、12dの間の接地面積および保持力のような設計基準は、クレードル12から自己点火物質29までの効率的な熱伝導を容易にするために最適化される。これらの要因は、クレードル物質の規格によって、およびクレードル物質の厚さ、弾性要素の寸法、自己点火物質の構造および他の要因の制御によって公知の方法で制御されることができる。ここに示された実施態様では、クレードル12はブースターチューブ32の端部分の上に据え付けるように形作られる。しかしながら、インフレータへクレードルをマウントする他の方法も企図される。自己点火クレードル12はスタンプおよび成形加工のような公知の技術を使用して、金属のような熱伝導性の物質から作られる。
【0013】
所定量の公知の自己点火化合物29はインフレータ10内に配置され、インフレータ10の起動に際して、ブースタープロペラント38と自己点火化合物29の間の流体連絡を可能にする。好ましい実施態様では、自己点火組成物29を含み、これはブースター組成物38と流体連絡を有するだけではなく、物理的な接触も有することは認識されるだろう。ブースター組成物38および主ガス生成組成物18は実際には1つの組成物でありうることが、参照され本明細書の一部として組み込まれる、本出願人により所有され、同時係属する出願番号11/497,149、11/656,319および11/809,356に記載される事項からさらに認識されるだろう。
【0014】
当該技術分野において公知の方法で、物質29がインフレータの外部で生じる高温に暴露される場合、ブースタープロペラント38の点火は自己点火物質29の点火によって生じる。次にガス生成物質18の点火が、ブースタープロペラント38の点火によって生じる。自己点火物質29は、ガス生成物質22の点火温度より低い温度への暴露によって点火される火工品物質である。点火された時、自己点火物質29は熱いガス/微粒子流出物を生産する。適当な自己点火物質は当業者に公知である。適当な自己点火物質の例としては、ニトロセルロースに基づく組成物および黒色火薬があげられる。
【0015】
インフレータのアセンブリー中に、クレードル12は、図1−3の中で示されるようにブースターチューブ32の端部分上に置かれる。自己点火物質29は、クレードルベース部分12aの開口12bを通って差し込まれる。挿入された自己点火物質29は弾性要素12c、12dの間におかれ、またブースターチューブ32中のブースター組成物38と流体連絡にある。熱伝導性材料から形成されたフレーム40は、示されるようにフィルター20上およびクレードル12の上に置かれる。フレーム40はクレードル12との密接な熱接触にあり、その間の熱伝導を容易にする。図2および3を参照する。フレーム40がインフレータアセンブリーに適用されると、フレームは自己点火物質29に対して圧力を及ぼし、弾性要素12c、12dの間のインフレータの内部へより深く物質29を押し込み、さらに弾性要素をそらし、それにより物質29と弾性要素の間の接触力を増加させる。したがって、フレーム40によって、および弾性要素12c、12dによって自己点火物質29に及ぼされた力は、示されるような所定位置に自己点火物質29をしっかりと取り付けるように作用する。ハウジング部分22は次いでハウジング部分24にしっかりと取り付けられ、ハウジング部分22とフレーム40との間の緊密な熱接触を確実にする。あるいは、自己点火物質29に対する圧力は、インフレータアセンブリー中にハウジング部分24にしっかりと取り付けられる、ハウジング部分22との直接の接触によって印加されることができる。
【0016】
インフレータの操作中に、乗り物衝突検知システムから信号を受信するに際して、イグナイタ36は活性化し、ブースター組成物38およびガス生成物質18の燃焼を起こす。燃焼ガスは、プロペラントチャンバー16から半径方向外側に流れ、次いでフィルター20を通り、インフレータハウジング14中の複数の開口部28を通ってインフレータを出る。インフレータの外部が、乗り物火災または他の高温源に暴露される場合、熱は自己点火クレードル12を介して自己点火物質29に伝えられ、その結果物質29を点火させ、当該技術分野において公知の方法でブースター組成物38およびガス生成物質18の点火および燃焼に帰着させる。
【0017】
図7の中で示される異なる実施態様では、少なくとも1つの開口23をハウジング部分22の内に形成することができ、クレードル12の部分12cまたは複数の部分12cおよび12dをハウジングを通って伸ばすかまたは他の方法で、インフレータの外部に直接クレードル12を暴露することができる。これは、クレードル12、ハウジング14、およびハウジング14とクレードル12の間に配置される任意の中間要素(たとえばフレーム40)の間の密接な熱の接触を保証する必要を回避する。別の言い方をすれば、いずれの設計でも、自己点火クレードル12はインフレータ10の外部11またはハウジング14と操作可能に連絡し、インフレータ10の外部11の周囲の熱が増加すると、外部温度が所定のしきい温度に達すると自己点火組成物は熱力学的に点火される。
【0018】
図6を参照する。本明細書に記載された自己点火クレードルを含むインフレータは、インフレータ10、およびエアバッグの内部と流体連絡を可能にするようにインフレータに連結された少なくとも1つのエアバッグ116を含むエアバッグシステム100に組み入れられることができる。
【0019】
エアバッグシステム100または上記の任意のインフレータの実施態様は、たとえば安全ベルトアセンブリー150のような追加の要素を含む、より広範な、より包括的な乗り物乗員拘束システム180に組み入れられることができる。図6は、そのような拘束システムの1つの典型的な実施態様の概略図を示す。エアバッグモジュール100は、衝突の際にたとえば、イグナイタ36(図1−3)の起動によって、エアバッグモジュール100の起動の信号を発生する既知のクラッシュセンサーアルゴリズムと接続される衝突センサー210と接続されることができる。
【0020】
安全ベルトアセンブリー150は、安全ベルトハウジング152および、ハウジング152から伸びる本発明の安全ベルト225を含む。安全ベルトリトラクタメカニズム154(例えば、ばね式のメカニズム)は、ベルトの端部分に連結されることができる。さらに、衝突の際にリトラクタメカニズムを始動させるために、安全ベルトプリテンショナー156はベルトリトラクターメカニズム154に連結されることができる。本発明の安全ベルト実施態様と共に使用されることができる典型的なシートベルトリトラクタメカニズムは、米国特許番号5,743,480、5,553,803、5,667,161、5,451,008、4,558,832および4,597,546に開示されている。これらの特許は参照され、本明細書の一部として組み込まれる。本発明の安全ベルトの実施態様が組み合わされることができる典型的なプリテンショナーの例は、米国特許番号6,505,790および6,419,177に開示されている。これらの特許は参照され、本明細書の一部として組み込まれる。
【0021】
安全ベルトシステム150は、例えばプリテンショナーに組み入れられた火工品イグナイタ(図示せず)の起動によって、ベルトプリテンショナー156の起動の信号を発生する既知の衝突センサーアルゴリズムを含む、衝突センサ158(例えば慣性センサあるいは加速度計)と接続されることができる。先に参照され、本明細書の一部として組み込まれた米国特許番号6,505,790および6,419,177は、そのような方法で始動するプリテンショナーの例を提供する。
【0022】
安全ベルトアセンブリ150、エアバッグシステム200、およびより広範な乗り物乗員保護システム180が例示されるが、本発明により意図されるガス生成システムはこれらに限定されるものではない。
【0023】
ドライバーサイドインフレータとして適用される本発明の自己点火クレードルおよび他の原理を組み込むことにより、乗客側インフレータ、およびサイドインフレータのような他のインフレータも、本発明の自己点火クレードルを使用して構成することができることが理解されるであろう。
【0024】
本発明の実施態様の先の記述が例示の目的だけのためにあり、本発明の範囲を何ら制限しないことはさらに理解されるだろう。そのため、ここに示された様々な構造操作上の特徴は、当該技術分野における当業者により、特許請求の範囲により規定される本発明の技術範囲を逸脱することなく多くの改良を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の自己点火クレードルを組込むインフレータの横断面の側面図である;
【図2】図2は、本発明の自己点火クレードルを組込むインフレータの横断面の側面図である;
【図3】図3は、本発明の自己点火クレードルを組込むインフレータの横断面の側面図である;
【図4】図4は、本発明の自己点火クレードルの1つの実施態様の平面図である;
【図5】図5は、図4の中で示される自己点火クレードルの実施態様の横断面の側面図である;
【図6】図6は、本発明の自己点火クレードルを有するインフレータを組込む例示的な乗り物乗員拘束システムの概要図である。
【図7】図7は、本発明のインフレータの別の実施態様であり、自己点火クレードルはインフレータの外部に熱力学的に連絡する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを有するインフレータであつて、その内部は該ハウジングにより画定され、該ハウジングは該インフレータの周囲の外部も画定する;
前記の内部の内のガス生成組成物;
前記の内部の内のブースター組成物;
前記のブースター組成物を点火するための自己点火組成物;および
前記の内部内に固定され、前記の外部と操作可能に連絡を有し、自己点火組成物を含む自己点火クレードルを含むガス生成システムであって、
該自己点火組成物は前記自己点火クレードルから伝えられた熱によって点火される、ガス生成システム。
【請求項2】
自己点火クレードルが該ハウジングと物理的に接触し、その間に熱力学的接続を提供する、請求項1記載のガス生成システム。
【請求項3】
自己点火クレードルが前記ハウジングを通って前記の外部に伸び、前記のクレードルと前記の外部との間の熱力学的接続を容易にする、請求項1記載のガス生成システム。
【請求項4】
請求項1記載のガス生成システムを含む乗り物乗員保護システム。
【請求項5】
以下を含むインフレータ;
内部を画定するハウジングであって、該ハウジングは該インフレータの周囲の外部も画定する;
前記の内部の内のガス生成組成物;
前記の内部の内のブースター組成物;
前記のブースター組成物に点火するための自己点火組成物;および
前記の内部の内に固定され、前記の外部と操作可能に連絡を有し、自己点火組成物を含む自己点火クレードル;
ここで該自己点火組成物は前記自己点火クレードルから伝えられた熱によって点火される。
【請求項6】
自己点火クレードルが該ハウジングと物理的に接触し、その間に熱力学的接続を提供する、請求項6記載のインフレータ。
【請求項7】
自己点火クレードルが前記ハウジングを通って前記の外部に伸び、前記のクレードルと前記の外部との間の熱力学的接続を容易にする、請求項6記載のインフレータ。
【請求項8】
請求項6記載のインフレータを含む乗り物乗員保護システム。
【請求項9】
前記のクレードルが第1の弾性要素および第2の弾性要素を含み、前記の自己点火組成物は第1の弾性要素および第2の弾性要素の間で拘束される、請求項6記載のインフレータ。
【請求項10】
前記のハウジングが前述のクレードルの近傍に少なくとも1つの開口部を含み、クレードルは前記の少なくとも1つの開口を通って伸び、それによりインフレータの外部との熱力学的接続を提供する、請求項6記載のインフレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−213820(P2008−213820A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−302804(P2007−302804)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(507000143)ティー ケー ホールディングス インク (18)
【Fターム(参考)】