説明

自律分散制御型蓄電システム

【課題】 複数の蓄電装置及び個別電源を分散的かつ効率的に制御することが出来、柔軟に変更することが出来る自律分散制御型蓄電システムを提供する。
【解決手段】 所定領域に分散させた蓄電装置群から複数の負荷へ給電する蓄熱システムにおいて、それぞれ外部の個別電源30から主入力部4を介して蓄電装置6に蓄えた電力を主出力部8より外部負荷へ供給する複数の蓄電ユニット2から成り、更に各蓄電ユニット2の蓄電装置6は、該ユニットと直結した少なくとも一つの蓄電ユニットの蓄電装置を経由して全ての蓄電ユニットの蓄電装置6と接続しており、又各蓄電ユニット2は、その蓄電装置と上記直結蓄電ユニットの蓄電装置とのうち供給可能な蓄電量が多い方から少ない方へ送電するように制御した副入出力部16を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律分散制御型蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの進歩・小型化に伴い、無線通信・保安・設備制御などの制御装置やセンサーなどコンピュータを内蔵する電子機器が大量に使用され、生活環境のあらゆるところにコンピュータ・チップが遍在する社会(ユビキタス・コンピューティング社会)が実現しつつある。こうした社会では、広い範囲に分散した負荷に対してどのように電力を供給するかが問題となる。
【0003】
外部からの電力供給なしに内蔵電池で作動するユビキタス電子機器は、従来から存在するが、電池の寿命は通常2〜3年であり、その度に様々な場所に分散する大量のセンサーなどの電池を交換するには、大きなメンテナンスコストが発生する。又、商業電源を利用する場合には、個々の電子機器の消費電力が小さくても、機器の数が膨大となれば全体としてかなりの電力を常時消費することになる。
【0004】
こうした趣旨から太陽光や風力などの自然エネルギーを利用することが要望されている。自然エネルギーを利用した発電方法は一日のうちで時間帯により発電量にバラツキがあるため、これを平均化するためには蓄電手段が不可欠であり、例えば多数の太陽電池などの発電機から集めた電力を一旦蓄電施設に蓄えてインバータにより交流変換して、分電盤を介して各家庭・建物の電力系統に供給するなどの工夫が必要である。しかしながら、太陽エネルギーのような自然エネルギーはエネルギー密度が低く空間に広く遍在しているという特徴があるため、太陽電池であればその受光面積を広くとらなければならない。従ってこうして薄く広く集めたエネルギーを一カ所に蓄電して再び多数の負荷に給電するという方法をとると、個々の発電機の発電量に比較して発電機と蓄電施設との間及び蓄電施設と負荷との間の送電ロスが大き過ぎ、全体としてひどく効率の悪いシステムとなってしまう。
【0005】
そこで発電源と負荷とをバランスよく分散するために、直流電流配線に対して、太陽電池等の直流電源(分散電源装置)と、直流/交流変換器付き商用交流電源と、複数の負荷とを並列的に接続したシステムが提案されている(特許文献1、特許文献2)。尚、商用電源を併用するのは自然エネルギーの供給の不安定性を補うためである。
【0006】
又、一般住宅に大きな蓄電装置のスペースをとるのは困難であるため、商用電源から各部屋に配置した蓄電装置を介して複数の負荷へ給電するように構成した住宅用蓄電システム(特許文献3)も知られている。更には、蓄電装置を分散した類似の構成において各蓄電装置をネットワーク用サーバーを介して統括制御するもの(特許文献4)が存在している。
【特許文献1】特開2002−271997号
【特許文献2】特開2003−339118号
【特許文献3】特開2001−16805号
【特許文献4】特開2003−299251号
【特許文献5】特開平6−108762号
【特許文献6】特開平10−248174号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2のシステムは、太陽電池などの直流電源と負荷とを分散して配置したものであるが、これに対してどのように蓄電装置を組み込むのかが問題となる。例えば特許文献1の図6には直流の電源装置自体に蓄電装置を組み込んだ構成が示されており、これでは供給電力の平均化という目的は果たせるが、例えば商用電源が停電した場合の各負荷への電力供給のバックアップ電源としての機能に問題が生ずる。即ち、それらの蓄電装置はシステム全体に対して電力を供給するものであるが、こうした配電システムでは利用者が後から負荷を増設するというケースが想定され、そうなると個々の負荷(特にコンピュータチップ)の消費電力量に応じて蓄電量を設定することができず、所定時間停電になってもチップの機能を保全できるという保証をすることが全く出来なくなってしまう。
【0008】
他方、特許文献3のシステムでは、一つの電源から蓄電装置を介して複数の負荷へ接続されており、負荷と蓄電装置とが一対一で接続されているためにバックアップ機能はとり易いが、各蓄電装置がバラバラで運用されているので、停電時に特定場所で電力を消費された場合に、折角他の場所で貯蔵された電力を有効に利用できない。
【0009】
更に特許文献4の如く複数の蓄電装置を一カ所で統括的に管理・制御する場合に、後から蓄電装置などを追加しようとするとプログラムやデータの書き換えをしなければならず、手間がかかるとともにミスを生ずる可能性がある。
【0010】
そこで本発明は、複数の蓄電装置及び個別電源を分散的かつ効率的に制御することが出来、柔軟に変更することが出来る蓄電システムとして、個別電源から蓄電装置に蓄えた電力を電力供給口から外部負荷へ供給するように設けた複数の蓄電ユニットから成り、各蓄電ユニットの蓄電装置は、該装置と直接接続した直結蓄電ユニットの蓄電装置を経て全ての蓄電ユニットの蓄電装置と電気的に接続した蓄電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の手段は、所定領域に分散させた蓄電装置群から複数の負荷へ給電する蓄熱システムにおいて、それぞれ外部の個別電源30から主入力部4を介して蓄電装置6に蓄えた電力を主出力部8より外部負荷へ供給する複数の蓄電ユニット2から成り、更に各蓄電ユニット2の蓄電装置6は、該ユニットと直結した少なくとも一つの蓄電ユニットの蓄電装置を経由して全ての蓄電ユニットの蓄電装置6と接続しており、又各蓄電ユニット2は、その蓄電装置と上記直結蓄電ユニットの蓄電装置とのうち供給可能な蓄電量が多い方から少ない方へ送電するように制御した副入出力部16を有している。
【0012】
「蓄電ユニット」は、本システムを構成する単位であって、少なくとも主入力部と蓄電装置と制御部と主出力部との各要素で構成されている。もっとも後述の如くこれら諸要素に個別電源を加えたもので蓄電ユニットを構成することもできる。各蓄電ユニットの蓄電装置の蓄電量(及び該装置に接続する個別電源の給電量)は負荷の消費電力や性質に応じて変更することができるが、基本的に各蓄電システムは同一の機能を有し、各蓄電ユニットを随時継ぎ足して可変性の高い蓄電システムを構成している。尚、各蓄電ユニットは直列的に接続しても良いが、既述ユビキタス・コンピューティングに対応するためには、各蓄電ユニットが3つ以上の蓄電ユニットに接続した蓄電・給電ネットワークを構成すると良い。
【0013】
「個別電源」に関しては、商用交流電源でも良いが、自然エネルギーを利用した発電手段(太陽電池などの光電池、風力発電・熱電変換・圧電変換など)、更には人工エネルギーを2次利用した発電手段(建物からの廃熱を利用した熱電変換や照明光を利用した光発電)、燃料電池・マイクロガスタービンなどの分散型発電装置、鉛蓄電池・リチウムイオン電池外部大容量バッテリーとすることができる。
【0014】
又、太陽電池などの各種発電機は、屋上などに設置された専用設備とすることができるが、既述の如くエネルギーを「広く薄く」集めるという趣旨から、各種建材と太陽電池とを一体化することもできる。太陽電池と一体化できる建材の例としては、窓ガラス・ブラインド・屋根材、外壁の外装材、内壁の内装材、床材、カーテンウォール、パーティション、シャッター、インテリア・エクステリア用建材などである。又、可視光を吸収して発電する色素増感太陽電池を利用して建物全体の意匠に適合した建材一体型太陽電池モジュールを構成することもできる。
【0015】
又、個別電源は蓄電器に入力するという趣旨から、基本的に直流で出力することが望ましい。商用交流電源を使用することもできるが、この場合には整流器(ACアダプタ)を利用して交流を直流に変換する必要がある。
【0016】
「主入力部」と「主出力部」とは、単なる入出力用の端子であってもよいが、蓄電装置の状態をモニターして過放電、過充電、或いは過電流を阻止するように設けると良い。
【0017】
「蓄電装置」は、各蓄電ユニット内で個別電源から出力された電力を貯蔵して、随時外部の負荷へ給電するとともに、直結した蓄電ユニットの蓄電装置を介して他の全ての蓄電ユニットの蓄電装置に電気的に接続されており、これにより、一つの蓄電ユニットの個別電源が破損しても、システム全体でバックアップできるように構成されている。尚、直結蓄電ユニットは、必ずしも空間的に隣接した蓄電ユニットに限る必要はないが、送電ロスを少なくするためには近隣の蓄電ユニットに接続した方が有利である。
【0018】
蓄電装置の蓄電許容量は、その蓄電ユニットに接続される負荷に対して所要時間バックアップ電源として電力を供給できる最小蓄電量の他、他の蓄電ユニットに対して電力を供給できる余剰蓄電量を蓄電できるように設定することが望ましい。
【0019】
更に蓄電装置の基本特性として、充放電サイクルを繰り返して長期間使用することに対する耐久性、重金属イオンなどの環境負荷物質を含まないこと、残量蓄電量の計測が容易であることである。こうした観点から蓄電装置として最も好ましいのは電気二重層コンデンサである。もっともリチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、鉛蓄電池、ニッケル水素電池などの充放電可能な二次電池を用いることもできる。
【0020】
「副入出力部」は、他の蓄電ユニットの蓄電装置との間での電力の授受を制御する機能を有している。その制御は、蓄電装置の上限蓄電量及び下限蓄電量の範囲で蓄電量が増減するようにすると良い。副入出力部は、当該蓄電ユニットと直結された他の蓄電ユニットごとに設けることができる。
【0021】
尚、「供給可能な蓄電量が多い方から少ない方へ送電する」とは、単に蓄電装置内の総蓄電量の多い方から少ない方へ送電しても良く、又、各蓄電装置の蓄電量のうち該蓄電装置と接続された負荷への停電時バックアップ用の最低蓄電量を除いて余剰蓄電量の多い方から少ない方へ送電しても良い。
【0022】
「負荷」に関しては、本システムは広く薄く電力を貯蔵するシステムであり、小電力を継続して供給するのに適しているため、その負荷も、センサーや電子端末や、LED照明、小型PCなどの小電力の電子機器が適している。しかし一般の電気機器に対しても、例えば商用交流電源の一時的な代用として電力を供給することができる。
【0023】
第2の手段は、上記第1の手段を有し、かつ上記各蓄電ユニット2は、更に少なくとも該蓄電ユニットの蓄電装置6の蓄電量を監視して制御するための制御部10を具備し、かつ、その蓄電量の情報を、電力の授受を行なう他の蓄電ユニットとの間で情報通信手段18によって交換し、自他の蓄電量に基づいて各蓄電ユニットの制御部10が副入出力部16に送電指令を発するように設けている。
【0024】
「制御部」は、蓄電装置の性能(下限蓄電量・上限蓄電量・許容通電量など)を有する記憶手段、少なくとも副入出力部への指令を行なうための演算処理手段、及び蓄電装置の状態(蓄電装置における電流量及び蓄電量)を測定するための状態測定手段を有するものとすればよい。該制御部は制御ICなどで形成することができる。
【0025】
尚、蓄電装置内でのエネルギー損失(電流値の2乗と内部抵抗の積)を少なくするためには、各蓄電ユニット間の電力の移動を出来るだけ経時的に平均化することが望ましい。そのために蓄電装置の蓄電量の測定及び各蓄電ユニット間の蓄電量情報の交換は随時行ない、常に各蓄電ユニット間の蓄電量(或いは余剰蓄電量)がほぼ等しい状態を保つことが望ましい。
【0026】
又、制御部は、主入力部及び主出力部における過放電・過充電・過電流を阻止するためにこれら主入力部での入力及び主出力部での出力を制御することが望ましい。制御部は、主入力部、主出力部、及び各副入出力部ごとに設けてもよいが、これら全てを制御する単一の制御部として蓄電ユニット内の全ての入出力を統括的に管理するものとすることが望ましい。
【0027】
「情報通信手段」は、各蓄電ユニットと該蓄電ユニットと電力の交換を行うために接続された他の蓄電ユニットとの間ごとにそれぞれ形成している。該情報通信手段は、各蓄電ユニットとを結ぶ通信回線と、各蓄電ユニットの適所(好ましくは副入出力部内)に設置した通信機とを備え、更に該通信機と制御部との間で情報を送受信するように形成している。情報通信手段が伝達する情報としては、相互に接続された蓄電ユニット内の蓄電量の情報の他、各蓄電ユニット内の蓄電量が適正値でなくなった場合にその蓄電ユニットの制御部が発する警報信号を含むことができる。
【0028】
第3の手段は、上記第2の手段を有し、かつ各蓄電ユニット2の副入出力部16は、1の動作サイクル毎に該蓄電ユニットと直結された他の蓄電ユニット2との間で移送電力量を定めて送受電するように設けられており、かつ各蓄電ユニットの制御部10は、その蓄電装置6の蓄電量を監視する状態測定手段12を有し、該状態測定手段から得た自己の蓄電装置6の蓄電量情報と、上記情報通信手段18を介して他の蓄電ユニット2から得た蓄電量情報とに基づいて、自他の蓄電装置が供給可能な蓄電量の差分をとり、移送電気量をその差分の半分以下に設定するように構成している。
【0029】
移送電力量を、蓄電量の差分の半分以下とするのは、後述の如く移送後の蓄電量の差の相対的な変化が移送電力量の2倍となるからである。尚、各蓄電ユニットにおける動作サイクルは、少なくとも相互に接続された蓄電ユニット間で同期させることが望ましい。
【0030】
第4の手段は、第1の手段乃至第3の手段の何れかを有し、かつ上記各蓄電ユニット2は、上記外部の個別電源に接続する代わりに、それぞれユニット内蔵の個別電源を有し、これら個別電源の一部は、商用電源とし、残りを太陽電池などの発電装置としている。
【0031】
本手段において、ユニット内蔵の個別電源といっても、第1の手段に係る外部個別電源と内容的に異なるものではなく、各蓄電ユニットを、個別電源を含んだ電源兼蓄電ユニットとして構築するということである。
【0032】
この場合に、商用電源を個別電源とする蓄電ユニットの制御部は、第1の手段で述べた如く「供給可能な蓄電量が多い方から少ない方へ送電する」という制御方式に代えて、該ユニットと接続された他の蓄電ユニットの蓄電装置に蓄電量の余剰があるときには、該装置からの送電を受け、蓄電量の余剰がないときに限って自己の商用電源から電力を供給させるように制御することもできる。更に商用電源を個別電源とする蓄電ユニットには、負荷を接続せずに、該蓄電ユニットと接続された他の蓄電ユニットからの送電指令に応じて電力を供給する送電専用のユニットとすることもできる。
【0033】
商用電源は、他のユニットの蓄電装置をバックアップするためのものであるので、システム全体に分散して配置することが望ましい。
【0034】
第5の手段は、第2の手段乃至第4の手段の何れかを有し、かつ各蓄電ユニット2の副入出力部16は、その蓄電ユニットの蓄電装置における電流量或いは蓄電量が上限値を超えたときには他の蓄電ユニットからの電力の受入れを、又蓄電量が下限値を下回ったときに他の蓄電ユニットへの送電をそれぞれ制限するように構成している。
【0035】
蓄電量を監視するのは、外部負荷への電力の安定供給ということだけでなく、蓄電装置の種類によっては、蓄電量が適正でないと蓄電装置の機能を損なうからである。例えば鉛蓄電池は、下限蓄電量を超えて放電を生ずるとサルフェーションを生じて寿命が著しく短くなる。又、リチウムイオン電池では過放電・過充電は故障の原因となる。本発明では、ユビキタスな電子機器に対応して蓄電装置をさまざまな場所に分散配置することになるので、蓄電装置の交換は出来るだけ避ける必要がある。尚、本手段において「上限値」、「下限値」という用語は、適正な蓄電量の範囲の上限、下限という意味であり、蓄電装置の故障を生ずる蓄電量の限界から多少余裕をもって設定することが望ましい。
【0036】
もっとも屋上などに設置した一群の太陽電池をそれぞれ蓄電ユニットに接続したような場合には、その設置場所全体が日向になったり、或いは日陰になったりして、隣接する蓄電装置の蓄電量が一斉に下限値乃至上限値に近づくことがあり、こうなると隣接ユニット間の電力の授受だけでは蓄電装置の破損を回避できない。このようにシステム全体としての蓄電量が上限乃至下限に近づいた非常時用の予備蓄電手段として、非常時にのみ電力を入力して常時は出力のみを行うように制御された非常時入力専用の蓄電ユニットや、商用電源に接続され、非常時にのみ出力するように制御された非常時出力専用の蓄電ユニットをシステムの一部に接続しておくことができる。
【0037】
第6の手段は、第2の手段、第3の手段又は第5の手段の何れかを有し、かつ各蓄電ユニット2の副入出力部16は、電圧コンバータを利用して、通常時には直結した他の蓄電ユニットとの間で小電流が流れるようにするとともに、上記情報通信手段18を通じて得られた他の蓄電ユニットの蓄電装置6の蓄電量の下降の程度に応じて該蓄電ユニットに対して大電流を供給することが可能に構成している。
【0038】
「蓄電量の下降の程度に応じて」とは、他の蓄電ユニットの蓄電装置6の蓄電量に下限値に近づいた場合、或いは蓄電量の下降の速度が予め定めた基準値に比べて大きい場合に、という意味であるものとする。
【0039】
第7の手段は、第1の手段乃至第6の手段のいずれかを有し、かつ各蓄電ユニット2の副入出力部16は、他の蓄電ユニットとの電気的接続の良否を監視し、接続不良と判定したときにはその蓄電ユニットへの送電を停止するように構成している。
【0040】
接続の良否を判定する方法は、公知のものでよく、例えば出力端子の電圧を測定して接続の良否を判定するもの(特許文献6)が知られている。
【0041】
第8の手段は、第1の手段乃至第7の手段の何れかを有し、かつ各蓄電ユニット2は、少なくとも3つの副入出力部16…を有し、これら副入出力部を介して蓄電ユニット間での電力授受用のネットワークを構成することが可能としている。
【0042】
このネットワークは、特別の集中管理制御機構を持たずに、蓄電量の多い方から少ない方へ随時電力を交換するように制御された多数の蓄電ユニットで構成されている。このネットワークの機能は、各底部を通水管で連結した多数の水槽からなる貯水槽モデルに置き換えると理解し易い。このモデルは、一つの水槽に多量の雨水が流れ込んで水位が上昇すると、該水槽の水が通水管を介して隣接する水槽へ流れ込み、やがて全ての水槽の水位が平均化されるように構成されたシステムである。これと同様に、本発明の蓄電システムも、蓄電ユニット間の電力の授受により、蓄電システム全体として蓄電量が平均化した状態へ向かうように制御されている。この制御方式に最低限必要な情報は、各蓄電ユニットの自己の蓄電量と該蓄電ユニットに直接接続された隣接蓄電ユニットの蓄電量の情報だけであり、各蓄電ユニットは、それらの情報に基づいて局所的、分散的な制御を行なうように構成されているから、既存の蓄電ユニットの一群に新たな蓄電ユニットを増設するだけで、蓄電ユニットのネットワークを自由に構築することができる。尚、このネットワークの好ましい使用状態は、各個別電源からの電力の入力により、システム全体の蓄電量が徐々に増大し、各外部負荷への出力によりシステム全体の蓄電量が徐々に減少することである。従って、このネットワークは、特に個々の消費電力が比較的小さい多数の電子機器(マイクロコンピュータなど)に電力を供給するのに適している。
【0043】
第9の手段は、第2の手段、第3の手段、第5の手段、第6の手段、第7の手段又は第8の手段の何れかを有し、かつ各蓄電ユニット2の蓄電装置6は、2つ以上の副入出力部16を有するとともに、これら副入出力部のうち少なくとも任意の一対の間に、自己の蓄電装置6を経由せずに制御部10の指令によって導通するバイパス回線20を配線し、かつ上記各蓄電ユニット2の制御部10は、それら両副入出力部に接続された他の2つの蓄電ユニット2の一方の制御部10から送電指令を受信したときに、自己の蓄電装置6から送電する代わりに、その送電指令を他の蓄電ユニット2の制御部10へ転送するとともに、当該他の蓄電ユニット2の蓄電装置6から上記バイパス回線20を介して上記一方の蓄電ユニット2の蓄電装置6へ送電することが可能に構成している。
【0044】
「バイパス回線」は、一つの蓄電ユニットに対して近隣の蓄電ユニットの蓄電装置を経由せずに、該近隣蓄電ユニットのバイパス回線を介して遠方の蓄電ユニットから少ない送電ロスで電力を供給する手段である。例えば個別電源として並置した一群の太陽電池がそっくり日陰になったりして、システムのかなり広い範囲で電力不足を生じて、遠方の蓄電ユニットから短時間に電力を供給せざるをえない場合に有効である。
【0045】
制御部は、上記直結した蓄電装置間で徐々に送電する本来の作動状態と、バイパス回線を経由したショートカット状態との間の切り替えを行う。切替の条件としては、他の蓄電ユニットが発する切替信号を受け取ったこととすることができる。その信号は、例えば蓄電量が基準値を下回った蓄電ユニットが発する送信指令(警告信号)、或いはこの指令に応答して電力を供給する他の蓄電ユニットからの送電信号とすることができる。又、本来の作動状態とショートカット状態との間で完全に切替を行なうのではなく、送電された電力の一部を自己の蓄電装置へ供給し、残りをバイパス回線を経由して他の蓄電ユニットへ送電するように構成することもできる。
【0046】
本手段は、既述の如く蓄電ユニットの一部を商用電源としてシステムの適所に分散させて配置した場合に有利であり、太陽電池など自然エネルギー利用型の電源が同時に発電を停止した場合に商用電源から効率的な電力供給が可能である。更に又、本手段は、蓄電ユニットをネットワーク状に接続した構成において導入すると有利である。例えば一つの蓄電ユニットに対して2つの蓄電ユニットを接続した場合には、或る蓄電ユニットに対して2つの直結ユニットを介して2次的、3次的…に接続された蓄電ユニットの数は膨大となるので、停電時においても電力不足を生じたシステム部分に対して周辺から迅速に電力を供給できる。
【発明の効果】
【0047】
第1の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○各蓄電ユニットごとに基本的に負荷に対して個別電源と蓄電装置とがそれぞれ1対1で対応しているので、負荷の消費電力に応じて個別電源の発電量及び蓄電装置の蓄電量を設計でき、従ってエネルギーを効率的に供給できるとともに、停電時のバックアップ電力を担保できる。
○蓄電ユニット間で電力の授受を行うので、一つの蓄電ユニットの個別電源が故障しとしてもシステム全体でバックアップすることができ、故障による影響を受け難い(ロバスト性の高い)システムを構成できる。
○相互に同格・同等の複数の蓄電ユニットから成る分散制御型のシステムとしたから、負荷を増やしたいときには、その負荷に対応する蓄電ユニットをシステムに継ぎ足せば良く、全体を統括する制御装置のデータを書き換えるなどの必要がないので、システムの拡大が容易である。
○又、太陽電池などの蓄電ユニットは比較的高価であるため、当初は少ないユニット数でシステムを稼働させ、必要により随時拡大することが容易であるため、経済的にも導入し易い。
【0048】
第2の手段に係る発明によれば、制御部10が自他の蓄電ユニットの蓄電量情報に基づいて充放電を行なうので、蓄電量を的確にコントロールすることができる。
【0049】
第3の手段に係る発明によれば、自他の蓄電装置が供給可能な蓄電量の差分をとり、その差分の半分以下で1動作サイクルごとの移送電気量として決定するように構成したから、1動作サイクルごとに自他の蓄電装置の間で蓄電量が交互に逆転して電力のキャッチボール現象を生ずることを防止できる。
【0050】
第4の手段に係る発明によれば、上記各蓄電ユニット2の個別電源の一部は、商用電源とし、残りを太陽電池などの発電装置としたから、供給の不安定な太陽電池などを商用電源によって補完して両者を有効利用することができる。
【0051】
第5の手段に係る発明によれば、過剰な放充電及び過電流を防止するように設けたから、蓄電装置の破損を回避してメンテナンスの労力を最小限とするようにしている。
【0052】
第6の手段に係る発明によれば、通常時は、各蓄電ユニット間で電流を徐々に流すから、送電ロスを最小限に抑えて、広く薄く集めた電力を最も有効に利用することができるとともに、隣接する他の蓄電ユニットが電力不足に陥ったときには柔軟に供給電力量を増大することができる。
【0053】
第7の手段に係る発明によれば、各蓄電ユニット2の副入出力部16は、他の蓄電ユニットとの電気的接続の良否を監視し、接続不良と判定したときにはその蓄電ユニットへの送電を停止するように構成したから、電力の漏電を防いで無用の電力の損失を回避することができる。
【0054】
第8の手段に係る発明によれば、蓄電ユニット間の配電ネットワークを構成することが可能としたから、蓄電ユニットを直線的に接続した場合に比べて、一つの蓄電ユニットで電力が不足したときにその周囲のあるより蓄電ユニットでバックアップ態勢をとることができ、システムの安全性を高めることができる。
【0055】
第9の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○2つ以上の副入出力部16のうち少なくとも任意の一対の間に、自己の蓄電装置6を経由せずに制御部10の指令によって導通するバイパス回線20を配線したから、一つの蓄電ユニットに対して、遠方の蓄電ユニットから電力を供給するときに、中間の蓄電ユニットの蓄電装置を経由することで生ずる送電ロスを回避して直接電力を送電することができ、送電効率が良い。
○上記各蓄電ユニット2の制御部10は、それら両副入出力部に接続された他の2つの蓄電ユニット2の一方の制御部10から送電指令を受信したときに、自己の蓄電装置6から送電する代わりに、その送電指令を他の蓄電ユニット2の制御部10へ転送するとともに、当該他の蓄電ユニット2の蓄電装置6から上記バイパス回線20を介して上記一方の蓄電ユニット2の蓄電装置6へ送電することが可能に構成したから、システム全体を統括する制御装置を置くことなく、分散制御方式において遠方からの電力供給を適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
図1乃至図6は、本システムの第1実施形態を示している。
【0057】
本システムは、図1の如く同等の機能を有する複数の蓄電ユニット2…からなり、各蓄電ユニット2は、図2に示す如く、主入力部4と、蓄電装置6と、主出力部8と、副入出力部16と、制御部10とで形成している。蓄電ユニットには、それぞれ1つの個別電源30及び1つの外部負荷32が接続されている。まず各蓄電ユニットの構成のうち、従来公知の部分を説明する。
【0058】
主入力部4は、制御部10からの指令により蓄電装置を流れる電流量及び蓄電量に応じて個別電源30からの電力を制御して過充電・過放電・過電流を生じないようにしている。又、主入力部4は、最大の充電効率を得るために蓄電池での充電電圧と充電電流とを、又電力の最大の引出し効率を得るために電源での入力電圧と入力電流とをそれぞれ制御している。又主入力部4は逆電流・逆電圧防止手段を有することが望ましい。
【0059】
蓄電装置6は、個別電源30から主入力部4を経て供給された電力を蓄え、主出力部8より外部負荷を給電する。電気2重層コンデンサを蓄電装置として用いると、鉛蓄電池やリチウムイオン電池に比べて繰返し使用に対する耐久性が良く、好適である。
【0060】
主出力部8は、制御部からの指令により外部負荷への供給電力を制御しており、負荷の仕様に合わせて定電圧直流安定化電源として機能するように構成している。又主出力部8は蓄電装置から負荷への過電流及び負荷から蓄電装置への逆電流を阻止するように構成する。更に又主出力部8は、従来公知の如く出力端子の電圧を測定することで、該接続端子への外部負荷への接続の適否を監視する手段を設け、接続不良の場合には電力を出力しないように形成すると良い。主出力部が有する出力端子は一つでも複数でも良く、各出力端子の出力電圧は可変式でも固定式でも良い。
【0061】
制御部10は、蓄電装置6における電流量及び蓄電量を監視する状態測定手段12を有し、その測定値に応じて、主入力部4及び主出力部8に対して制御指令を発する。
【0062】
本発明においては、各蓄電ユニット毎に副入出力部16を設けている。
【0063】
副入出力部16は、隣接する他の蓄電ユニットとの間で電力の授受を行なうためのもので、上記状態測定手段12により得た自己蓄電ユニット内の蓄電量及び電流量の情報を、隣接する他の蓄電ユニットとの間で交換するための情報通信手段18と、昇圧チョッパやスイッチドキャパシタなどの昇圧DC−DCコンバータを用いた電圧・電流制御手段とを有し、これらの手段を用いて隣接蓄電ユニットとの間で蓄電量の多い方から少ない方へ電力を供給することができる。尚、蓄電量の総量の多少に代えて、この総量から、外部負荷毎のバックアップ用の蓄電量を差し引いて、その余剰蓄電量の多少に応じて電力を授受するように構成しても良い。又、副入出力部16は、後述の動作サイクル毎の送電量を、制御部からの指令に基づき増減できるように形成するものとする。両上記情報通信手段18は、当該蓄電ユニットと直結された他の蓄電ユニットと有線乃至無線によって接続するものとする。
【0064】
又、上記副入出力部16は、他の蓄電ユニットと接続端子を有する。各蓄電ユニットの接続端子の規格は一定とし、任意のどの蓄電ユニットとの接続端子との間でも直接乃至間接に接続可能とすると良い。又、副入出力部16は、上記主入力部4及び主出力部8と同様に、両ユニット間の接続端子の接続が正しいかどうかを監視し、又、上述の接続端子の接続が自他の蓄電ユニットの間で過放電・過充電・過電流が起こらないように送電量を制御する機能を有するものとすると良い。
【0065】
又、制御部10は、その記憶手段に、蓄電装置の種別に応じて定めた上限蓄電量、下限蓄電量を記憶させておき、かつ上記状態測定手段12を通じて蓄電量を監視して、蓄電量が上限に近づいたら、主入力部4乃至副入出力部16に対して入力を制限するように、又、蓄電量が下限に近づいたら、主出力部8乃至副入出力部16に対して出力を制限するようにそれぞれ構成することが望ましい。又、蓄電量が下限に近づいたときには、蓄電ユニット2の適所(例えば主出力部)に設置したアラームが、警報音・光・表示などで警報を発するように構成することが望ましい。
【0066】
又、制御部10として制御ICを用いた場合には、1の動作サイクル毎に蓄電量の多い方の蓄電ユニットにおいて制御部からの指令で所要量の電力を移送するデジタル制御が行われる。この場合に、図3(1)に示す如く自他の蓄電ユニット2A、2B間の蓄電量が2aである場合に、1動作当たりの電力の移送量を2aとすると、1動作後には図3(2)に想像線で示す如く両ユニット間の蓄電量が逆転し、次の動作サイクルでは逆方向に電力が移送されるという電力のキャッチボール現象が起きて送電ロスを生ずる。これを避けるために、制御部10は、図3に示す如く、各動作サイクル毎に自他の蓄電量の差を計算し、その差の半分以下において1動作当たりの移送電力量を決定して副入出力部に伝達するように構成することが望ましい。即ち、次の次式の如くである。但し、aは1動作サイクル毎の移送電力量、ΔEは連結された一対の蓄電装置の蓄電量の差である。
【0067】
a≦ΔE/2
もっとも、図4(1)の如く一つの蓄電ユニット2Aに複数の他の蓄電ユニット2B、2Cを接続した場合に、ユニット2A、2B間の蓄電量の差をΔEab,ユニット2A、2C間の蓄電量の差をΔEacとしたときに、これら両ユニットに対してa1=ΔEab/2,a2=ΔEac/2の電力を移送すると、図4(2)に想像線で示すように蓄電ユニット2Aと、蓄電ユニット2B、2Cとの間で蓄電量が逆転してしまうことがある。こうした過剰送電を防ぐためには、送電側の蓄電ユニット2A毎に、1より大きな正の数nを定めて、該蓄電ユニットから受電側の各蓄電ユニット2B、2Cへ移送するそれぞれの電力量を、a≦ΔE/(2n)として決定することができる。このとき、そのnは送電側の蓄電ユニットに直結した受電側の蓄電ユニットの数とすることができ、これにより、各動作サイクルごとに1つの蓄電ユニットが増減を繰り返すことを防止できる。図4(1)及び(2)に実線で示した蓄電量の推移は、n=2とした場合のものである。
【0068】
図5は、副入出力部16の作用のフローチャートを示している。いま直接接続された2つの蓄電ユニット2A及び2Bを考えて、それぞれの蓄電量をX、Yで表す。X_max、Y_maxは、過充電防止のための蓄電上限値、X_min、Y_minは、過放電防止のための蓄電下限値の設定値である。aは、フローの1サイクルにおける移動電力量を表す。
【0069】
両蓄電ユニット間の情報通信は、両ユニットが接続されたことを自動感知するか、接続後に手動でボタンを押すなどのスイッチング動作をきっかけに開始する。続いて機械の種類や端子の極性などが正しく接続されているかをチェックし、正しくなければ通信を終了し、正しければ次のステップへ移る。
【0070】
続くステップでは、両蓄電ユニットの制御部10は、自他のユニットの蓄電量を比較し、自己の蓄電量が他方の蓄電量に対して2aより大きければ、電力aを移送する。このとき、電力量aの移送によって、送電側の蓄電ユニットの蓄電装置で蓄電量が下限設定値を下回ったり、受電側の蓄電量で蓄電量が上限設定値を上回ったりしないように制御部が判断するステップを設ける。電力の移送量aを蓄電量差2aの半分とするのは、電力量aの移送により送電側の蓄電量が−aとなり、かつ受電側の蓄電量が+aとなるからである。又、フローの一サイクルにおける移送電力量をaと設定して制御することは、接続された外部のシステムに対して過電流が流れることを防止することを防止する効果もある。外部システムに流れる電流は、サイクルの周期と1サイクル当たりの移送電力量aとで決まる。1サイクル当たりの移送電力量aは、一定の値でも良いし、蓄電システムの状態により、電力移送効率が最適になるようにアクティブに変化させても良い。
【0071】
本実施形態では、各蓄電ユニット2を直線的に接続して蓄電システムを構成している。しかしながら、該構成は随時変更することができ、例えば一つの蓄電ユニットに対して、これに電力を供給するための他の蓄電ユニットを放射状に配置しても良く、又、後述の如く蓄電ユニットをネットワーク状に接続しても良い。
【0072】
又、個別電源30は、図示例では太陽電池としているが、自然エネルギーを利用するものであればなんでも良い。又、図では省略しているが、自然エネルギー利用型の電源の間に適宜商用電源を介在させることが望ましい。
【0073】
外部負荷32は、ガスセンサー・警備用センサーなどのコンピュータチップ内蔵の電子機器が主であるが、図面上はあえてラジオ・蛍光灯などの家電も描いている。もっとも電力消費量の小さい電子機器と電力消費量の大きい家電には電気容量の大きい蓄電装置を接続しなければならず、この蓄電装置を、電気容量の小さい電子機器用の蓄電装置に直接接続すると、小容量の蓄電装置は直ぐに蓄電量が零になってしまう。これを避けるためには、実際には後述のバイパス回路を設けるなどの緩衝手段を設ける工夫が必要となる。
【0074】
以上の構成において、図1に示す如く個別電源30である太陽電池に太陽光線が当たると、該個別電源から出力された電力が主入力部4を介して蓄電装置6へ蓄電され、該蓄電装置から随時外部負荷30へ供給されている。隣接する蓄電装置の蓄電量の間に差がないときには、各蓄電ユニット2は相互に独立の蓄電・給電システムとして働く。次に一部の蓄電ユニット2において個別電源30が日陰になるなどして蓄電装置6の蓄電量に差を生じたときには、図6に示す如く蓄電量の多い方から少ない方へ電流が流れ、日陰になった蓄電ユニット2においても外部負荷への電力供給が確保される。
【0075】
仮に図11の如く各蓄電ユニットが分離した構成とすると、日陰となった蓄電ユニットでは、同図に黒塗りで示す如く自己の蓄電装置の蓄電量が零となったときには外部負荷への給電が停止してしまうことになる。これに対して、本システムでは、システム全体として蓄電装置6が相互に電力を授受しているため、システムの一部で電力不足に陥っても他の蓄電ユニットがカバーするためユビキタス電子装置群に対して安定して電力を供給できる。これとともに、単一の容量の大きな蓄電装置に多数の個別電源と多数の外部負荷とを接続した場合と比較すると、様々な場所で発電される自然電力を広く薄く集めて多数の負荷に供給することができる。
【0076】
図7は、本発明の第2の実施形態を示すものである。このシステムでは、蓄電ユニット2を、3つ以上の他の蓄電ユニット2に接続可能に形成して、ネットワークとして構築したものである。こうした構成では、隣接する2つの蓄電ユニット間の配線が切れても他の蓄電ユニットを経由して電力を供給することができるので、一部の故障による影響の少ないロバストなシステムとすることができる。図示例のネットワークは、説明の都合上、1つの蓄電ユニットに最大4つの他の蓄電ユニットを接続した規則正しい格子状のネットワークとしているが、個別電源30及び外部負荷32の場所に合わせて柔軟に不規則なネットワークを構築すれば良い。
【0077】
又、図示例では、符号2Aで示す蓄電ユニットには個別電源30と外部負荷32とを接続し、符号2Bで示す蓄電ユニットには個別電源30のみを、又、符号2Cで示す蓄電ユニットには外部負荷32のみを接続している。各蓄電ユニット間接続による送電ロスを考慮すると、全ての蓄電装置に個別電源30と外部電源32とを接続することが理想であるが、太陽電池などの個別電源30の設置場所と、センサーなどの外部負荷32の設置場所とが一致するとは限らない。例えば建物の屋上や外壁など太陽の日射量が豊富であるが、接続すべき外部負荷が存在しない場所では、蓄電ユニット2Bの如く外部負荷を接続するには及ばず、又、天井裏や床下の如く常時暗闇である場所では蓄電ユニット2Cの如く太陽電池などを接続する意味がない。もっとも電力を消費する一方の蓄電ユニット2Cを設置すると、その周囲で電力不足に陥る可能性があるので、これに隣接して電力供給専用の蓄熱ユニット2Bを設置することが望ましい。天井裏や床下の近くでも、例えば室内へ差し込む日射や室内照明を光源として、光電池(例えば建物の内装材と一体化した色素増感発電素子)から電力を供給することができる。又、一つの外部負荷の消費電力が大きいときには、図示のシステムの下側に示す負荷32Aの如く複数の蓄電装置に接続することもできる。
【0078】
図8及び図9は、本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態では各蓄電ユニット2に、その蓄電装置6を経由せずに、隣接する他の蓄電ユニット2から他の一の蓄電ユニット2へ通電するバイパス回線20を設けている。図示例では簡単のため4つの副入出力部16の間にバイパス回線を配線して、副入出力部内に設けた切替装置により蓄電装置を含む通常の回線とバイパス回線との切替をすることができるように構成しているが、その構成は適宜変更することができる。尚、一つの副入出力部16から入力された電力の一部を自己の蓄電ユニットの蓄電装置に入力し、残りをバイパス回線を通じて他の副入出力部16より他の蓄電ユニットに供給することができる。
【0079】
該構成とした理由は次の通りである。ある蓄電装置6Aの蓄電量が下限値を下回り、その電力の需要を周辺の蓄電装置で賄うことができないときには、図9に矢示する如く最も近い商用電源付きの蓄電装置6Dから複数の蓄電装置6B、6Cを経由してバケツリレー式に電力を伝達する必要があるが、経由する各蓄電装置で送電量の1〜2割程度の送電ロスを生ずるので、全体として大きな無駄を生ずる。予め蓄電装置6A、6Dを直結する回線を設ければそうした問題は生じないが、システムの任意の一対の蓄電装置を全て接続するのは配線が多過ぎて通常は不可能である。そこで各蓄電ユニット内に蓄電装置6を迂回して電力を伝達するバイパス回線20を設けたのである。
【0080】
各蓄電ユニット内において、蓄電装置を通る通常の回線と、バイパス回線とを切り替える手順としては、次の如くである。図9に点線で示す如くシステムの一部が日陰Sとなると、その日陰部分では各蓄電ユニットの蓄電量が減少していくが、日陰の外側のシステムから電力が徐々に供給されるため、日陰Sの外周部分に比べて中心部分の方が蓄電量の減少傾向が大きい。日陰Sの中心部分で蓄電装置6Aの蓄電量が下限に近づいたときに、該装置を監視している制御部10は、周囲の蓄電ユニットに対して、自己のユニットへの送電量を増加させるために警報信号を発する。その警報信号には、外部負荷の消費電力などに応じて次の1動作サイクルに送電されるべき電力量を含めることが望ましい。周囲の蓄電ユニット(例えば蓄電装置6Bのユニット)では、要請された電力量を送電するだけの蓄電量の余剰があればその要請に答えるが、余剰がなければ、その警報信号を更に遠方の蓄電装置6Cのユニットへ転送し、該ユニットでも同様の操作が繰り返される。信号が経由された蓄電装置6B、6C…の蓄電ユニットの制御部では、元の蓄電装置6Aへの道筋を特定するために予め当該ユニットに付与された識別番号等のルート情報を順次上記警報信号に追加して転送するようにすると良い。その信号が商用電源に接続された蓄電装置6Dのユニットに到達したときには、該ユニットの制御部は、商用電源からの入力を増やすとともに、自己の蓄電装置6Dから警報信号を送信した蓄電ユニットに対して、元の蓄電装置6Aへの道筋を示す送電指令とともに、要請された電力量を加えた電力を出力し、その送信指令を受けた途中の蓄電装置6B、6Cのユニットは加増された電力分をバイパス回線を経由して蓄電装置6Aへ送電する。こうすることで電力の最も不足する日陰Sの中心部分に直接電力を供給することができ、更に蓄電装置6Aから日陰外周部分の蓄電装置へ給電できるから、システムの一部における電力不足を迅速かつ無駄なく補うことができる。
【0081】
尚、図示例ではシステムの一部が日陰となった場合を示しているが、例えばシステムの一部に周囲の電子機器に比べて比較的消費電力の大きい家庭電気製品を接続した場合にも、上記バイパス回線の許容電流量の範囲において給電をすることが可能である。
【実施例】
【0082】
図11は、既知のブラインド一体型の太陽電池(例えば特許文献5)を示しており、こうした電池を本発明に使用することもできる。尚、図示のものは、窓側に並置した各ブラインドの各羽根の表裏両面にアモルファスシリコン電池30を配置し、かつブラインド格納部の上方に、上記電池30と接続した蓄電池内蔵の蓄電ユニット2を設け、これら蓄電ユニット2を連結して蓄電システムを構築している。尚、32は外部負荷として設置されたLED照明である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシステムの全体図である。
【図2】図1のシステムを構成する蓄電ユニットの概念図である。
【図3】図2の蓄電ユニットの1対の間での蓄電量の変化を示す説明図である。
【図4】同様に3つの蓄電ユニットの間での蓄電量の変化を示す説明図である。
【図5】図2の蓄電ユニットにおける動作のフローチャートである。
【図6】図1の蓄電システムの動作の説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るシステムの全体図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るシステムの要部拡大図である。
【図9】同実施形態に係るシステムの全体図である。
【図10】本発明の一つの実施例である。
【図11】本発明のシステムの動作を説明するために、同システムから蓄電ユニット相互の接続を除去して描いたものの図である。
【符号の説明】
【0084】
2…蓄電ユニット 4…主入力部 6…蓄電装置 8…主出力部 10…制御部
12…状態測定手段 16…副入出力部 18…情報通信手段 20…バイパス回線
30…個別電源 32…外部負荷
S…日陰

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域に分散させた蓄電装置群から複数の負荷へ給電する蓄熱システムにおいて、それぞれ外部の個別電源30から主入力部4を介して蓄電装置6に蓄えた電力を主出力部8より外部負荷へ供給する複数の蓄電ユニット2から成り、更に各蓄電ユニット2の蓄電装置6は、該ユニットと直結した少なくとも一つの蓄電ユニットの蓄電装置を経由して全ての蓄電ユニットの蓄電装置6と接続しており、又各蓄電ユニット2は、その蓄電装置と上記直結蓄電ユニットの蓄電装置とのうち供給可能な蓄電量が多い方から少ない方へ送電するように制御した副入出力部16を有することを特徴とする自律分散制御型蓄電システム。
【請求項2】
上記各蓄電ユニット2は、更に少なくとも該蓄電ユニットの蓄電装置6の蓄電量を監視して制御するための制御部10を具備し、かつ、その蓄電量の情報を、電力の授受を行なう他の蓄電ユニットとの間で情報通信手段18によって交換し、自他の蓄電量に基づいて各蓄電ユニットの制御部10が副入出力部16に送電指令を発するように設けたことを特徴とする、請求項1記載の自律分散制御型蓄電システム。
【請求項3】
各蓄電ユニット2の副入出力部16は、1の動作サイクル毎に該蓄電ユニットと直結された他の蓄電ユニット2との間で移送電力量を定めて送受電するように設けられており、かつ各蓄電ユニットの制御部10は、その蓄電装置6の蓄電量を監視する状態測定手段12を有し、該状態測定手段から得た自己の蓄電装置6の蓄電量情報と、上記情報通信手段18を介して他の蓄電ユニット2から得た蓄電量情報とに基づいて、自他の蓄電装置が供給可能な蓄電量の差分をとり、移送電気量をその差分の半分以下に設定するように構成したことを特徴とする、請求項2記載の自律分散型蓄電システム。
【請求項4】
上記各蓄電ユニット2は、上記外部の個別電源に接続する代わりに、それぞれユニット内蔵の個別電源を有し、これら個別電源の一部は、商用電源とし、残りを太陽電池などの発電装置としたことを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の自律分散制御型蓄電システム。
【請求項5】
各蓄電ユニット2の副入出力部16は、その蓄電ユニットの蓄電装置における電流量或いは蓄電量が上限値を超えたときには他の蓄電ユニットからの電力の受入れを、又蓄電量が下限値を下回ったときに他の蓄電ユニットへの送電をそれぞれ制限するように構成したことを特徴とする、請求項2乃至請求項4の何れかに記載の自律分散制御型蓄電システム。
【請求項6】
各蓄電ユニット2の副入出力部16は、電圧コンバータを利用して、通常時には直結した他の蓄電ユニットとの間で小電流が流れるようにするとともに、上記情報通信手段18を通じて得られた他の蓄電ユニットの蓄電装置6の蓄電量の下降の程度に応じて該蓄電ユニットに対して大電流を供給することが可能に構成したことを特徴とする、請求項2、請求項3又は請求項5の何れかに記載の自律分散型蓄電システム。
【請求項7】
各蓄電ユニット2の副入出力部16は、他の蓄電ユニットとの電気的接続の良否を監視し、接続不良と判定したときにはその蓄電ユニットへの送電を停止することを特徴とする、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の自律分散制御型蓄電システム。
【請求項8】
各蓄電ユニット2は、少なくとも3つの副入出力部16…を有し、これら副入出力部を介して蓄電ユニット間の配電ネットワークを構成することが可能としたことを特徴とする、請求項1乃至請求項7の何れかに記載の自律分散制御型蓄電システム。
【請求項9】
各蓄電ユニット2の蓄電装置6は、2つ以上の副入出力部16を有するとともに、これら副入出力部のうち少なくとも任意の一対の間に、自己の蓄電装置6を経由せずに制御部10の指令によって導通するバイパス回線20を配線し、かつ上記各蓄電ユニット2の制御部10は、それら両副入出力部に接続された他の2つの蓄電ユニット2の一方の制御部10から送電指令を受信したときに、自己の蓄電装置6から送電する代わりに、その送電指令を他の蓄電ユニット2の制御部10へ転送するとともに、当該他の蓄電ユニット2の蓄電装置6から上記バイパス回線20を介して上記一方の蓄電ユニット2の蓄電装置6へ送電することが可能に構成したことを特徴とする、請求項2、請求項3、請求項5、請求項6、請求項7又は請求項8に記載の自律分散制御型蓄電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−174540(P2006−174540A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360258(P2004−360258)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】