説明

自律神経平衡を制御する神経刺激システム

自律神経平衡を制御するために、神経刺激システムが自律神経活動を検知し、交感神経と副交感神経に神経刺激を加える。神経刺激システムは、交感神経の興奮、交感神経の抑制、副交感神経の興奮と副交感神経の抑制のため、神経刺激パルスを送ることができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
(優先権のクレーム)
2005年5月9日出願の米国特許出願第11/124,791号に基づき、優先権を主張するものであり、この出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、一般に医学機器に関し、詳しくは自律神経平衡を制御する神経刺激システムに関する。
【背景技術】
【0003】
心臓は、人の循環系の中心である。心臓の左部分は、肺から酸素を豊富に含んだ血液を引き込み、それを体の組織に送って、酸素を代謝のために必要とする組織に供給する。心臓の右部分は、体の組織から酸素が減少した血液を引き込み、血液に酸素を送り込む肺にそれを送る。このようなポンプ機能は、心筋(心臓の筋肉)の周期的収縮によって行われる。正常な心臓では、洞房結節が、活動電位と呼ばれる電気インパルスを生成する。電気インパルスは、電気伝導系を介して心臓の様々な領域に伝播し、これらの領域の心筋組織を興奮させる。正常な電気伝導系において、活動電位がよく調整された遅れを有して伝搬すると、心臓の様々な部分は、同調して収縮し、正常な血流力学的機能によって示されるポンプ機能が十分に行われることになる。障害がある、またはそうでなければ異常な電気伝導系、および/または悪化した心筋組織では、心臓や残りの体への血液供給が縮小することを含め、血流力学的機能が正常に機能しないことになる。
【0004】
血流力学的機能は、自律神経系の部分中の神経信号によって調節される。たとえば、心筋は、交感神経と副交感神経によって刺激される。これらの神経に対する神経活動は、とりわけ心拍数、血圧、心筋収縮能を調整することが知られている。自律神経の機能障害は、心機能異常や血流力学的機能の低下と関連する。たとえば、心不全患者において、自律神経平衡の低下(交感神経の緊張の高まりと副交感神経の緊張の低下)は、左心室の機能障害と死亡率の増加に関連することが知られている。総称的に自律神経障害と言われる自律神経の機能障害の他の症状の例には、姿勢の起立性頻脈シンドローム(POTS)、神経心臓性失神(NCS)、真性の自律神経機能障害(PAF)、多系統の衰弱(MSA)が含まれる。自律神経の機能障害とそれに関連した心機能異常の患者は、自律神経平衡の制御から潜在的に利益を得ることができる。たとえば、心筋梗塞後、逆リモデリングを抑制し、不整脈を防止することによって、副交感神経の緊張を高め、交感神経の緊張を静めると、心筋を保護することができる。遅いおよび早い心拍数の期間が交互になることが特徴である、徐脈頻脈シンドローム、すなわち洞不全シンドロームの変異型の患者も、自律機能の調整から利益を得ることができる。これらや他の理由から、自律神経平衡を制御することによる、自律神経の機能障害や心機能異常を処置する手段が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
神経刺激システムが、自律神経活動を検知し、交感神経と副交感神経に神経刺激を加えて、自律神経平衡を制御する。神経刺激システムは、交感神経の興奮、交感神経の抑制、副交感神経の興奮、副交感神経の抑制に対して神経刺激パルスを送ることができる。
【0006】
一実施態様では、神経刺激システムは、刺激出力回路と、自律神経平衡監視回路と、刺激制御回路とを含む。刺激出力回路は、交感神経刺激パルスと副交感神経刺激パルスを送る。自律神経平衡監視回路は、自律神経活動を表す、1つまたは複数の信号を検知する。刺激制御回路は、交感神経刺激制御器と副交感神経刺激制御器とを含む。交感神経刺激制御器は、交感神経の興奮と交感神経の抑制のために、交感神経刺激パルスの送出を制御する。副交感神経刺激制御器は、副交感神経の興奮と副交感神経の抑制のため、副交感神経刺激パルスの送出を制御する。
【0007】
一実施態様では、神経刺激の方法によって、交感神経の興奮、交感神経の抑制、副交感神経の興奮、および/または副交感神経の抑制を実施する。自律神経活動を表す、1つまたは複数の信号が検知される。交感神経刺激と副交感神経刺激のパルスを送ることが、フィードバック制御を用いて、自律神経活動を表す1つまたは複数の信号を含む、1つまたは複数の入力によって制御される。これは、交感神経の興奮と交感神経の抑制のための交感神経刺激パルスの送出の制御と、副交感神経の興奮と副交感神経の抑制のための副交感神経刺激パルスの送出の制御とを含む。
【0008】
この要旨は、本出願の教示のいくつかの概略を示すものであり、本発明の主題を排他的、または完全に扱うと企図したものではない。本発明の主題についての更な細部は、詳細な説明と添付の特許請求の範囲によって示される。発明の他の態様は、以下の詳細な説明を読んで理解し、その一部をなす図面を参照すると、当業者には明らかになる。本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲およびその法的な同等物によって規定される。
【0009】
図面は、必ずしも一定の縮尺で製図されたものではなく、同じ番号は、いくつかの図面を通して類似の構成要素を示す。図面は、一般に例として、本明細書に議論する様々な実施形態を例示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下の詳しい説明では、その一部をなし、本発明を実施することができる具体的な実施形態を例示だけのために示した添付の図面を参照する。これらの実施形態は、十分詳細に説明しているので、当業者は、本発明を実施することが可能になる。本実施形態は、組み合わせることができ、または他の実施形態を利用することができ、本発明の範囲から逸脱することなく、構造上、論理的または電気的な変更を実施することができることを理解すべきである。本開示で、「ある」、「1つの」または「様々な実施形態と言及しているものは、必ずしも同じ実施形態であることはなく、それらへの言及は、複数の実施形態を意図している。以下の詳細な説明は、例を提示しており、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその法的な同等物によって規定される。
【0011】
本明細書は、自律神経平衡を検知し制御する神経刺激システムについて議論する。埋め込み型神経リードは、交感神経と副交感神経の中またはそのまわりに配置され、そこから神経活動を検知し、これらの神経に神経刺激パルスを送る電極を含む。神経刺激パルスは、1つまたは複数の神経を刺激する電気パルスを含む。埋め込み型神経刺激機器が、神経刺激パルスを交感神経と副交感神経に送り、交感神経の興奮(交感神経系の興奮性刺激)、交感神経の抑制(交感神経系の抑制性刺激)、副交感神経の興奮(副交感神経系の興奮性刺激)と、副交感神経の抑制(副交感神経系の抑制性刺激)を選択的に組み合わせて使用することにより、自律神経平衡を制御する。そのような機器は、広範囲な治療効果および/または全体的な刺激強さによって治療を施すことができる。たとえば、交感神経の抑制と副交感神経の興奮を同時に施すと、交感神経の抑制または副交感神経の興奮いずれかだけを施す場合に比べて、実質的により強い効果および/または追加の治療効果をもたらすポテンシャルが得られる。交感神経系と副交感神経系の一方に、興奮性の刺激と抑制性の刺激を同時に加えると、広範囲な全身ならびに限局的な生理機能の制御が得られる。たとえば、交感神経系または副交感神経系の2つの遠心性神経に、興奮性と抑制性の刺激を同時に加えると、それぞれがこれらの遠心性神経の一方によって刺激される、2つの組織または組織の2つの部分の個々の制御が可能になる。同じ神経系において、求心性神経へ興奮性刺激と遠心性神経へ抑制性刺激を同時に施す、あるいは求心性神経へ抑制性刺激と遠心性神経へ興奮性刺激を同時に施すと、全身的な活動(たとえば、中枢神経系の活動)の同時の全体的な制御、および限局的な活動(たとえば、末梢器官の活動)の特定の制御が可能になる。
【0012】
図1は、自律神経平衡を制御する神経刺激システム100の実施形態、およびシステム100が使用される環境の部分の説明図である。システム100は、リード106、108を介して神経刺激パルスを送る埋め込み型医療機器110と外部システム120とを含み、さらに埋め込み型医療機器110と外部システム120の間の通信を行うテレメトリ・リンク125を含む。
【0013】
システム100は、交感神経と副交感神経に神経刺激パルスを送ることによって、自律神経平衡を制御する。説明する目的だけで、図1に、リード106は、交感神経系の神経102に結合された電極107を含み、リード108は、副交感神経系の神経104に結合された電極109を含んでいることを示す。神経102、104は、心臓101を刺激する。様々な実施形態では、埋め込み型医療機器110は、1つまたは複数の神経のいずれかに、1つまたは複数の埋め込み型神経リードを介して神経刺激を供給し、自律神経平衡を制御する。そのような埋め込み型神経リードは、それぞれが神経活動を検知し神経刺激パルスを送るための電極を少なくとも1つ含む。そのような埋め込み型神経リードの例には、圧受容器が多数集合した近傍で肺動脈中に配置される電極を有する拡張型刺激リードと、心臓の脂肪体に近接して配置される電極を有する血管横断リードと、心臓の脂肪体中に配置される電極を有する心外膜リードと、大動脈、頚動脈、または迷走神経のまわりに配置されるカフ電極を有するリードと、大動脈、頚動脈、または迷走神経に近接して配置され、その神経に血管横断的に神経刺激パルスを送る電極を有する血管内に送り込まれたリードと、脊髄中に、脊髄の背部の神経または腹部の神経上に、または交感神経節または交感神経中に配置される電極を有するリードとが含まれる。
【0014】
埋め込み型医療機器110は、神経刺激回路130を含む。神経刺激回路130は、交感神経刺激パルス(1つまたは複数の交感神経を刺激する電気パルス)と副交感神経刺激パルス(1つまたは複数の副交感神経を刺激する電気パルス)を送る。交感神経刺激パルスの送出と副交感神経刺激パルスの送出は、個々に制御可能であり、よく協調させられる。刺激パラメータを制御することによって、交感神経刺激パルスは、送られると、交感神経の緊張を高めるまたは静め、副交感神経刺激パルスは、送られると、副交感神経の緊張を高めまたは静める。様々な実施形態では、埋め込み型医療機器110は、生理信号を検知する、および/または神経刺激に加えて治療を施すことができる。そのような追加の治療の例には、心臓のペーシング治療、電気的除細動/除細動治療、心臓再同期治療(CRT)、心臓リモデリング制御治療(RCT)、薬物治療、細胞治療、遺伝子治療が含まれる。様々な実施形態では、埋め込み型医療機器110は、1つまたは複数のそのような追加の治療と協調して神経刺激を施す。
【0015】
外部システム120は、埋め込み型医療機器110と通信して、医師または他の介護士が、埋め込み型医療機器110にアクセスできるようにする。一実施形態では、外部システム120は、プログラマーを含む。他の実施形態では、外部システム120は、埋め込み型医療機器110とテレメトリ・リンク125を介して通信する外部機器と、比較的離れた位置にある遠隔機器と、外部機器と遠隔機器をリンクする電気通信網とを含む患者管理システムである。患者管理システムによって、患者の状況を監視し治療を調整するなどの目的のため、遠隔位置からの埋め込み型医療機器110へのアクセスが可能になる。一実施形態では、テレメトリ・リンク125は、誘導型テレメトリ・リンクである。代替の実施形態では、テレメトリ・リンク125は、遠距離無線周波(RF)テレメトリ・リンクである。テレメトリ・リンク125は、埋め込み型医療機器110から外部システム120へデータを送信する。これには、たとえば、埋め込み型医療機器110が獲得したリアルタイムの生理データの送信、埋め込み型医療機器110が獲得し、そこに記憶した生理データの抽出、埋め込み型医療機器110中に記録された不整脈の発生や治療実施などの患者の病歴データの抽出、および/または埋め込み型医療機器110の作動状況(たとえば、バッテリの状況やリード・インピーダンス)を示すデータの抽出が含まれる。テレメトリ・リンク125は、また、外部システム120から埋め込み型医療機器110へデータを送信する。これには、たとえば、生理データを獲得するようにさせる埋め込み型医療機器110のプログラミング、少なくとも1つの自己診断テスト(機器の作動状況についてなど)を実施するようにさせる埋め込み型医療機器110のプログラミング、および/または1つまたは複数の治療を施す、および/または1つまたは複数の治療の実施の調整をするようにさせる埋め込み型医療機器110のプログラミングが含まれる。
【0016】
図2は、神経刺激による自律神経平衡の制御の方法の実施形態の説明図である。釣り合い梁が自律神経平衡を表し、それは、図2では、釣り合い位置にある場合が示されている。釣り合い梁が反時計回りに回転したときは、自律神経平衡が、比較的高い交感神経の緊張と比較的低い副交感神経の緊張の状態である交感神経系側に移ることを示す。釣り合い梁が時計回りに回転したときは、自律神経平衡が、比較的低い交感神経の緊張と比較的高い副交感神経の緊張の状態である副交感神経系側に移ることを示す。図2に示すように、梁の釣り合い、すなわち自律神経平衡は、交感神経の興奮、交感神経の抑制、副交感神経の興奮、副交感神経の抑制の1つまたは複数を加えることによって、制御される。交感神経の緊張を高める交感神経の興奮、または交感神経の緊張を静める交感神経の抑制のいずれかのため、刺激パラメータを制御して交感神経刺激パルスを送る。副交感神経の緊張を高める副交感神経の興奮、または副交感神経の緊張を静める副交感神経の抑制のいずれかのため、副交感神経刺激パルスを送る。交感神経の興奮、交感神経の抑制、副交感神経の興奮、副交感神経の抑制を組み合わせて、釣り合い梁を釣り合い位置、または所望のずらした位置に移す。
【0017】
図3は、神経刺激回路330の実施形態を示すブロック図であり、それは、神経刺激回路130の具体的な実施形態である。神経刺激回路330は、刺激出力回路332と、自律神経平衡監視回路334と、刺激制御回路336とを含む。刺激出力回路332は、本明細書で議論されたものなどの1つまたは複数の神経リードを介して、交感神経刺激パルスと副交感神経刺激パルスを送る。自律神経平衡監視回路334は、自律神経系の1つまたは複数の神経中の神経連絡などの自律神経活動、あるいは自律神経活動によって作用される生理活動を表す1つまたは複数の信号を検知する。様々な実施形態では、自律神経活動を表す1つまたは複数の信号には、自律神経の状態を表す1つまたは複数の信号が含まれる。刺激制御回路336は、自律神経活動を表す1つまたは複数の信号に基づき、神経刺激パルスの送出を制御する。刺激制御回路336は、交感神経刺激制御器338と、副交感神経刺激制御器340とを含む。交感神経刺激制御器338は、交感神経の興奮および交感神経の抑制のため、交感神経刺激パルスの送出を制御する。副交感神経刺激制御器340は、副交感神経の興奮と副交感神経の抑制のため、副交感神経刺激パルスの送出を制御する。交感神経刺激制御器338と副交感神経刺激制御器340によって、交感神経刺激パルスの送出と副交感神経刺激パルスの送出を個々に制御することが可能になる。一実施形態では、刺激出力回路332、自律神経平衡監視回路334、刺激制御回路336は、密閉された埋め込み型ハウジング中に収容されて、埋め込み型医療機器を形成する。
【0018】
図4は、刺激制御回路436の実施形態を示すブロック図であり、それは、刺激制御回路336の具体的な実施形態である。刺激制御回路436は、自律神経平衡監視回路334が検知した自律神経活動を表す1つまたは複数の信号と、自律神経平衡監視回路334のプログラムされた目標とに基づき、交感神経刺激パルスと副交感神経刺激パルスの送出を制御する。刺激制御回路436は、パルス送出制御回路442と刺激パラメータ調整回路444とを含む。
【0019】
パルス送出制御回路442は、刺激パラメータ調整回路444から受け取った複数の刺激パラメータを使用して、交感神経刺激パルスと副交感神経刺激パルスの送出を制御する。パルス送出制御回路442は、交感神経刺激制御器438と副交感神経刺激制御器440とを含む。交感神経刺激制御器438は、交感神経の興奮と交感神経の抑制のため、交感神経刺激パルスの送出を制御する。副交感神経刺激制御器440は、副交感神経の興奮と副交感神経の抑制のため、副交感神経刺激パルスの送出を制御する。一実施形態では、神経に送られる電気刺激パルスがその神経を興奮させる、または抑制することになるかどうかは、刺激周波数によって決定される。刺激周波数は、電気刺激パルスが送られる周波数(たとえば、パルス数/秒)を指定する刺激パラメータによって、制御される。あるいは、刺激周波数は、2つの連続する電気刺激パルス間の間隔(たとえば、ミリ秒)を指定する刺激パラメータによって、制御される。刺激周波数が一定レベルより低いとき、神経に送られる電気刺激パルスは、その神経を興奮させ、神経連絡が増加する。刺激周波数が別の一定レベルを超えるとき、神経に送られる電気刺激パルスは、その神経を抑制し、神経連絡を減少させる。他の実施形態では、神経に送られる電気刺激パルスがその神経を興奮させる、または抑制することになるかどうかは、刺激の極性によって決定される。軸索の活動電位が、軸索を消極させる電流によって、励磁され、軸索を過分極化させる電流によって遮断される。したがって、カソード電流による刺激は、軸索の活動電位を励磁することによって、神経を興奮させ、アノード電流による刺激は、軸索の活動電位を遮断することによって、神経を抑制する。具体的な実施形態では、刺激極性は、神経上に双極電極構成を使用し、2つの電極間で刺激電流の流れ方向を制御して、制御される。別の実施形態では、刺激の極性と強さによって、神経刺激の結果として、神経連絡の方向が決定される。電気刺激パルスが、双極構成の2つの電極を使用して神経に送られたとき、誘発された軸索の活動電位は、刺激強さが一定範囲内であるとき、軸索の求心性方向と遠心性方向の両方向に伝播する。刺激強さが一定レベルを超えるとき、「アノード・ブロック」が起きる。活動電位は、カソードからアノードへの方向で遮断され、一方アノードからカソードへの方向では、なお伝播する。これによって、たとえば、刺激の極性と強さを制御することによって、組織を刺激する神経の興奮性刺激または抑制性刺激の選択が可能になる。興奮性(遠心性)刺激は、中枢神経系により近い電極をアノードとして指定し、アノード・ブロックが発生するレベルに刺激強さを設定することによって、選択する。抑制性(求心性)刺激は、組織により近い電極をアノードとして指定し、アノード・ブロックが発生するレベルに刺激強さを設定することによって、選択する。刺激は、負フィードバック反射回路のため、抑制性作用を有する。
【0020】
刺激パラメータ調整回路444は、自律神経活動を表す1つまたは複数の信号と治療対象とに基づき、パルス送出制御回路442が使用する複数の刺激パラメータを調整する。治療対象は、フィードバック制御を使用して検知された自律神経の状態を所望の自律神経の状態に移すように、刺激パラメータ(出力)に自律神経の状態(入力)をマッピングすることによって、プログラムされる。一実施形態では、刺激パラメータ調整回路444は、自律神経活動を表す1つまたは複数の信号を含む1つまたは複数の入力によるフィードバック制御をダイナミックに使用して、複数の刺激パラメータを動的に調整する。自律神経活動を示すそのような信号の例には、神経信号、代理信号、生理機能信号が含まれる。一実施形態では、刺激パラメータ調整回路444は、1つまたは複数の神経信号に基づき、複数の刺激パラメータを調整する。1つまたは複数の神経信号が示す神経活動によって、自律神経の状態が直接測定できる。他の実施形態では、刺激パラメータ調整回路444は、1つまたは複数の代理信号に基づき、複数の刺激パラメータを調整する。代理信号は、自律神経平衡の測定値または指標として検知された信号である。他の実施形態では、刺激パラメータ調整回路444は、1つまたは複数の生理機能信号に基づき、複数の刺激パラメータを調整する。そのような生理機能信号は、それぞれが自律神経平衡の効果の測定値または指標である。他の様々な実施形態では、刺激パラメータ調整回路444は、神経信号、代理信号、生理機能信号の複数のものの組合せに基づき、複数の刺激パラメータを調整する。これによって、自律神経活動と選択された生理機能におけるそれらの効果の両方に基づき、刺激パラメータの調整が可能になる。一実施形態では、刺激パラメータ調整回路444は、1つまたは複数の神経信号、1つまたは複数の生理機能信号に基づき、複数の刺激パラメータを調整する。他の実施形態では、刺激パラメータ調整回路444は、1つまたは複数の代理信号と、1つまたは複数の生理機能信号とに基づき、複数の刺激パラメータを調整する。神経、代理と生理の信号、およびそれらの検知については、以下で図5〜8を参照して、さらに議論する。
【0021】
一実施形態では、複数の刺激パラメータには、1つまたは複数の交感神経刺激パラメータと、1つまたは複数の副交感神経刺激パラメータとが含まれる。1つまたは複数の交感神経刺激パラメータは、交感神経の興奮と交感神経の抑制のため、交感神経刺激パルスの送出を制御する。1つまたは複数の副交感神経刺激パラメータは、副交感神経の興奮と副交感神経の抑制のため、副交感神経刺激パルスの送出を制御する。この実施形態では、図4に示すように、刺激パラメータ調整回路444は、交感神経刺激パラメータ調整モジュール446と、副交感神経刺激パラメータ調整モジュール448とを含む。交感神経刺激パラメータ調整モジュール446は、1つまたは複数の交感神経刺激パラメータを調整する。副交感神経刺激パラメータ調整モジュール448は、1つまたは複数の副交感神経刺激パラメータを調整する。
【0022】
一実施形態では、刺激パラメータ調整回路444は、自律神経活動を表す1つまたは複数の信号に加えて所定の時間表に基づき、複数の刺激パラメータを調整する。たとえば、心不全患者は、血行動態の低下や逆心筋リモデリングを患う。血行動態を改善するために、自律神経平衡が交感神経の緊張を高める、および/または副交感神経の緊張を静めるようにずらされる。心筋リモデリングを制御するために、自律神経平衡が交感神経の緊張を静める、および/または副交感神経の緊張を高めるようにずらされる。治療方法の一例は、予想される患者の日々の行動に合わせて作成された時間表に基づき、刺激パラメータを調整することである。たとえば、日中は交感神経の緊張を高める、および/または副交感神経の緊張を静めるように、ならびに夜は交感神経の緊張を静める、および/または副交感神経の緊張を高めるように、刺激パラメータを調整することである。他の実施形態では、刺激パラメータ調整回路444は、自律神経活動を表す1つまたは複数の信号に加えて、自律神経平衡を移す必要を示す信号に基づき、複数の刺激パラメータを調整する。たとえば、同じ心不全患者に対して、患者の全体の身体活動レベルを表すために活動レベル信号を使用し、それは、次いで血行動態を高める必要を表す。活動レベル信号は、埋め込み型加速度計または圧電性結晶などの活動センサを使用して検知する。活動レベル信号が所定のしきい値を超えたとき、交感神経の緊張を高める、および/または副交感神経の緊張を静めるように、刺激パラメータを調整する。これによって、患者の活動のための代謝要求を満たすように、患者の血行動態が改善されるが、心筋リモデリング中に望ましくない効果がもたらされる恐れがある。活動レベル信号が、別の所定のしきい値より低くなったとき、交感神経の緊張を静める、および/または副交感神経の緊張を高めるように、刺激パラメータを調整する。代謝要求が低いとき、これによって心筋リモデリングが制御される。他の実施例では、徐頻シンドローム(brady-tachy syndrome)を患う患者は、徐脈と頻脈の間で心臓律動が動揺する。心拍数を調整することによって患者を治療するために、心拍数が徐脈速度ウインドウ、または頻脈速度ウインドウに入ったとき、自律神経平衡をずらす。心拍数が所定のしきい値より低くなったとき、交感神経の緊張を高める、および/または副交感神経の緊張を静めるように、刺激パラメータを調整し、それによって患者の心拍数を増加させる。心拍数が所定のしきい値を超えたとき、交感神経の緊張を静める、および/または副交感神経の緊張を高めるように、刺激パラメータを調整し、それによって患者の心拍数を低下させる。
【0023】
一実施形態では、刺激パラメータ調整回路444は、医師または他の介護士が設定した治療対象に従って、パルス送出制御回路442が使用する複数の刺激パラメータを調整するために、テレメトリを介してプログラム可能である。自律神経活動を表す1つまたは複数の信号と刺激パラメータの間のマッピングは、フィードバック制御の応答性を指定するプログラム可能なパラメータによって、プログラム可能である。そのようなパラメータは、たとえば、自律神経の状態の検知された変化に応答してどれぐらい早く刺激パラメータを調整するか、フィードバック制御の感度、自律神経の状態が調整されるまたは維持されるその限界、出力レベルの限界(たとえば、刺激強さ)に影響する。
【0024】
図5は、自律神経平衡監視回路534の実施形態を示すブロック図であり、それは、自律神経平衡監視回路334の具体的な実施形態である。自律神経平衡監視回路534は、刺激制御回路336(または436)に自律神経活動を表す1つまたは複数の信号を供給する。
【0025】
一実施形態では、図5に示すように、自律神経平衡監視回路534は、神経連絡検知回路550と、代理信号検知回路552と、生理機能検知回路554とを含む。様々な実施形態では、自律神経活動を表す1つまたは複数の信号のどれが、刺激制御回路336(または436)に使用されるかに依存して、自律神経平衡監視回路534は、神経連絡検知回路550、代理信号検知回路552、生理機能検知回路554のいずれか1つ、いずれの2つの組合せ、または3つすべての組合せを含む。
【0026】
図6は、神経連絡検知回路650の実施形態を示すブロック図であり、それは、神経連絡検知回路550の具体的な実施形態である。神経連絡検知回路650は、自律神経の状態を直接表す1つまたは複数の神経信号を検知する。神経連絡検知回路650は、交感神経連絡検知回路656と副交感神経連絡検知回路658を含む。交感神経連絡検知回路656は、交感神経連絡を表す少なくとも1つの交感神経信号を検知する。副交感神経連絡検知回路658は、副交感神経連絡を表す少なくとも1つの副交感神経信号を検知する。
【0027】
図7は、代理信号検知回路752の実施形態を示すブロック図であり、それは、代理信号検知回路552の具体的な実施形態である。代理信号検知回路752は、それぞれが自律神経活動を表し、自律神経の状態の測定値として使用される1つまたは複数の代理信号を検知する。代理信号検知回路752は、心拍数変動(HRV)検知回路760を含み、HRVを検知しHRV信号を生成する。HRVは、一定時間にわたる心臓周期長の脈拍毎の変動である。HRV信号は、一定時間にわたる心臓周期長の脈拍毎の変動のどのような定性的表現も含め、HRVの測定値であるどんなパラメータも含むHRVパラメータを表す信号である。HRVパラメータには、一定時間にわたる心臓周期長の脈拍毎の変動のどのような定性的表現も含め、HRVの測定値であるいずれのパラメータも含まれる。具体的な実施形態では、HRVパラメータには、低周波数(LF)HRVの高周波数(HF)HRVに対する比(LF/HF比)が含まれる。LF HRVは、約0.04Hzから0.15Hzの範囲の周波数を有するHRVの成分を含む。HF HRVは、約0.15Hzから0.40Hzの範囲の周波数を有するHRVの成分を含む。LF/HF比は、自律神経平衡の動きの傾向を追跡するために使用される。たとえば、LF/HF比の実質的な変化は、交感神経系が過度に刺激されている程度を示す、全身のストレスの変化を表す。
【0028】
図8は、生理機能検知回路854の実施形態を示すブロック図であり、それは、生理機能検知回路554の具体的な実施形態である。生理機能検知回路854は、それぞれが自律神経活動に影響される1つまたは複数の生理機能信号を検知する。そのような生理機能信号は、生理機能を望ましいように変化させる、または回復させることになるように自律神経平衡を制御する必要を表す。生理機能検知回路854は、心拍数と心臓の鼓動を検知する1つまたは複数の心拍数検知回路862と、身体の活動レベルを検知する活動検知回路864と、呼吸数、周期換気量、臓排出量を表す呼吸信号を検知する呼吸検知回路866と、心臓インピーダンスや経胸腔インピーダンスなど、排出量を表す信号を検知するインピーダンス検知回路868と、心臓の収縮期および拡張期のタイミング、心室収縮力、充満圧を表す信号を検知する心音検知回路870と、血圧を表す信号を検知する圧検知回路872とを含む。
【0029】
図9は、神経リード903と心臓リード905に結合された埋め込み型医療機器910の実施形態を示すブロック図である。埋め込み型医療機器910は、埋め込み型医療機器110の具体的な実施形態であり、統合的な心臓と神経の刺激機器であり、神経刺激回路930と、心臓刺激回路980と、埋め込みテレメトリ回路974とを含む。神経リード903は、それぞれが神経活動を検知し神経刺激パルスを送るように構成された、少なくとも1つの電極を含む、1つまたは複数の埋め込み型神経リードを含む。心臓リード905は、それぞれが心臓活動を検知し心臓刺激パルスを送るように構成された、少なくとも1つの心内膜または心外膜の電極を含む、1つまたは複数の埋め込み型心臓刺激リードを含む。神経刺激回路930は、よく調整された心臓と神経の刺激のため、心臓刺激回路980と通信する神経刺激回路130の具体的な実施形態である。心臓刺激回路980の例には、ペーシング回路と、電気的除細動/除細動回路と、CRT機器と、および/またはRCT機器とが含まれる。心臓刺激回路980は、また、電気記録図を含め、1つまたは複数の心臓信号を検知する。一実施形態では、心臓刺激回路980は、自律神経活動を表す1つまたは複数の信号を提供する。様々な実施形態では、埋め込み型医療機器910は、1つまたは複数の薬物投与機器と、生物療法機器と、神経刺激回路930と心臓刺激回路980の機能を補完する他の任意の機器とをさらに含む。埋め込みテレメトリ回路974は、テレメトリ・リンク125を介して外部システム120と通信する。
【0030】
一実施形態では、1つまたは複数のセンサ990は、1つまたは複数の電気的接続および/またはテレメトリ・リンクを介して埋め込み型医療機器910に結合される。センサ990は、埋め込み型医療機器910の外にあり、たとえば、心拍数検知回路862、活動検知回路864、呼吸検知回路866、インピーダンス検知回路868、心音検知回路870、圧検知回路872の1つまたは複数の機能を行う。一般に、システム100の様々な具体的な実施形態では、埋め込み型医療機器110の外部にあり、電気的接続および/またはテレメトリ・リンクを介して埋め込み型医療機器110と通信する生理センサが使用される。そのような生理センサには、埋め込み型センサや外部センサまたはその両方が含まれる。
【0031】
図10は、外部システム1020の実施形態を示すブロック図であり、それは、外部システム120の具体的な実施形態である。図10に示すように、外部システム1020は、外部機器982と、電気通信網984と、遠隔機器986とを含む患者管理システムである。外部機器982は、埋め込み型医療機器110または910の近辺内に配置され、テレメトリ・リンク125を介して埋め込み型医療機器と通信する外部テレメトリ・システム988を含む。遠隔機器986は、遠隔位置にあり、ネットワーク984を介して外部機器982と通信し、したがって医師または他の介護士が遠隔位置から患者を監視し治療することが可能になる、および/または遠隔位置から様々な治療源へのアクセスが可能になる。
【0032】
本発明の主題によれば、神経刺激パルスが、1つまたは複数の神経リードを介して、交感神経系と副交感神経系に送られる。様々な実施形態では、神経信号が、1つまたは複数の神経リードを介して、交感神経系と副交感神経系から検知される。神経刺激パルスが送られ、神経信号が検知される部位の例には、多数集まった圧受容器の近傍中の肺動脈中の部位、心臓の脂肪体、大動脈神経、頚動脈神経、迷走神経、大動脈、頚動脈、または迷走神経に近接した血管部位が含まれ、さらに脊髄中、脊髄の背部の神経または腹部の神経上、または交感神経節または交感神経中の部位が含まれる。1つまたは複数の神経リードの電極は、神経の検知と刺激のため、1つまたは複数のそのような部位中に配置される。
【0033】
圧受容器と化学受容器に関連する生理学上の簡単な議論を以下に提示する。この簡単な議論では、自律神経系、圧反射、化学受容器を紹介して、神経リードの電極(また、神経連絡センサと呼ばれる)の配置についての理解を得る。
【0034】
自律神経系(ANS)は、「不随意」組織を調整し、一方随意筋(骨格筋)の収縮は、体性運動神経によって制御される。不随意組織の例には、呼吸器官や消化器官が含まれ、血管と心臓も含まれる。しばしば、自律神経系(ANS)は、たとえば、腺を調整する、皮膚、眼、胃、腸、膀胱中の筋肉を調整する、また、心筋と血管のまわりの筋肉を調整するために、不随意的、反射的な形で機能する。
【0035】
自律神経系(ANS)には、ただしこれには限定されないが、交感神経系と副交感神経系が含まれる。交感神経系は、緊急事態へのストレスや「攻撃・逃避反応」と関連する。なかんずく他の効果の中で、「攻撃・逃避反応」は、血圧と心拍数を高めて骨格筋の血流量を増加し、消化力を低下させて、「攻撃・逃走」のためにエネルギーを供給する。副交感神経系は、弛緩や「休養・消化反応」と関連し、それは、他の効果の中で、血圧と心拍数を低下させ、消化力を高めてエネルギーを保存する。ANSは、内部機能を正常に維持し、体性神経系と協力する。
【0036】
様々な実施形態では、神経刺激を加えて心拍数、血圧、血管拡張、血管収縮に作用する。興奮性刺激が交感神経系に加えられ、抑制性刺激が副交感神経系に加えられたとき、心拍数が上がり収縮強さが高められ、抑制性刺激が交感神経系に加えられたとき、または興奮性刺激が副交感神経系に加えられたとき、低下する。様々な実施形態では、心拍数、血圧など、他の生理パラメータのための代理パラメータを提供するために、神経連絡も検知される。図11A、11Bに、末梢血管の制御のための神経機構を示す。図11Aに、血管運動神経中枢への求心性神経を全体的に示す。求心性神経は、インパルスを神経中枢に伝達する。血管運動神経中枢は、血管を拡張させ、収縮させて血管のサイズを制御する神経とかかわる。図11Bに、血管運動神経中枢からの遠心性神経を全体的に示す。遠心性神経は、神経中枢からインパルスを伝達する。
【0037】
交感神経系と副交感神経系の刺激は、心拍数、収縮強さ、血圧のほかにも効果を有すると知られている。たとえば、交感神経系の興奮性刺激は、瞳孔を拡張させ、唾液や粘液の生成を減少させ、気管支筋を弛緩させ、胃の不随意収縮(蠕動)の連続する波動と胃の運動性を低下させ、肝臓によるグリコーゲンからブドウ糖への変換を高め、腎臓の尿分泌を減少させ、壁を弛緩させ、膀胱の括約筋を閉じさせる。副交感神経系の興奮性刺激および/または交感神経系の抑制性刺激は、瞳孔を収縮させ、唾液や粘液の生成を増加し、気管支筋を収縮させ、胃や大腸の分泌と運動性を高め、小腸における消化を高め、尿分泌を増加し、壁を収縮し、膀胱の括約筋を弛緩させる。交感神経系や副交感神経系と関連する機能は、多くあり、複雑に互いに絡み合っている。したがって、一生理系中で血管拡張など所望の反応を得るために、交感神経系および/または副交感神経系を無差別に刺激すると、他の生理系中で望ましくない反応が起きる恐れもある。さらに、生理パラメータの代理パラメータとして使用するために神経連絡を検知することは、多くの生理パラメータに依存することになる。本発明の主題の様々な実施形態では、正確に限局された神経刺激によって生理系を動揺させ、その刺激への神経連絡応答を監視する。
【0038】
圧受容部位または領域は、血圧の変化など、圧力の変化を検知することができる。圧受容器部位は、本明細書では、圧受容器と呼ばれ、それは、一般に圧力変化のどのようなセンサも含む。たとえば、圧受容器には、求心性神経が含まれ、また、内部からの血圧の上昇から生じる壁の伸びに敏感であり、どちらかというと圧力を下げるようにする中枢弛緩機構の受容器として機能する、圧受容器領域となる知覚神経終末がさらに含まれる。圧反射は、負フィードバック・システムとして機能し、圧受容器の刺激によって始動される反射機構に関連する。圧力が増すと、血管が伸ばされ、次いで血管壁中の圧受容器が活性化される。内部圧力と動脈壁の伸長から圧受容器が自然に活性化され、それによって副交感神経系を興奮させ、交感神経活動(ANA)の圧反射抑制と全身の動脈圧の低下が起きる。圧受容器の活動の高まりによって、交感神経活動(ANA)の低下が誘導され、それによって末梢血管抵抗が減少して血圧が低下する。中枢を介した反射経路によって、心拍数、収縮性と興奮性が調節される。心臓、大血管、肺の中の圧受容器と化学受容器は、求心性迷走神経線維を介して、心臓活動を反射した神経信号を中枢神経系に送信する。したがって、全身の動脈圧などの生理パラメータは、神経連絡に基づき、決定することができる。そのような圧力情報は、たとえば、有益なフィードバック情報を提供して、神経治療またはCRTなどの心臓刺激治療など、治療の指針になる。
【0039】
圧反射は、圧受容器の刺激によって始動される反射作用である。圧受容器には、心耳、大静脈、大動脈弓、頚動脈洞の壁中の知覚神経終末など、圧力変化のどのようなセンサも含まれ、それは、内部からの圧力の増加による壁の伸びに敏感であり、どちらかと言うとその圧力を減少させるようにする中枢弛緩機構の受容器として機能する。求心性神経は、電気的に刺激して圧反射を誘起することもでき、それによって交感神経活動が抑制され、副交感神経活動が刺激される。迷走神経、大動脈、頚動脈の神経など、求心性神経の幹は、知覚神経終末から伸びて、圧反射経路も形成する。圧反射経路および/または圧受容器を刺激すると、交感神経活動を抑制し、副交感神経系を刺激し、末梢血管抵抗と心筋収縮能が低下して、全身の動脈圧が低下する。圧受容器は、内部圧力と血管の壁(たとえば、動脈の壁)の伸びによって自然に刺激される。
【0040】
本発明の主題のいくつかの態様は、むしろ求心性および/または遠心性の神経幹ではなく、またはそれに加えて、血管の壁中の特定の神経終末を局所的に検知する。たとえば、いくつかの実施形態では、肺動脈中の圧受容器部位または領域を検知する。本発明の主題のいくつかの実施形態には、大動脈、心臓の心室中の圧受容器部位または神経終末の検知が含まれる。本発明の主題のいくつかの実施形態には、心臓の脂肪体などの遠心性経路の検知が含まれる。本発明主題のいくつかの実施形態には、迷走神経、大動脈および頚動脈の神経など、求心性神経の幹の刺激が含まれる。様々な実施形態には、神経終末の検知、遠心性神経経路の検知、求心性神経経路の検知の組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、カフ電極を使用して神経幹を検知する。いくつかの実施形態では、その神経に近接する血管中に配置された血管内リードを使用して、神経幹を検知する。求心性神経幹の例には、迷走神経、大動脈、頚動脈の神経が含まれる。遠心性神経幹の例には、迷走神経の心臓の枝が含まれる。これらの心臓の枝などの遠心性神経、または心臓の脂肪体中の神経を刺激すると、神経インパルスをエフェクターに伝達し、そのようにして中枢神経系の圧反射負フィードバックを使用せず、それは、遠心性神経上の神経活動によって、求心性神経上の神経活動に応答する。いくつかの実施形態では、上記に同定された神経刺激部位のいずれにおいても神経連絡を検知する。
【0041】
図12A〜12Cに、心臓を示す。図12Aに示すように、心臓1201は、上大動脈1202、大動脈弓1203、肺動脈1204を含む。以下でより詳しく議論するように、肺動脈1204は圧受容器を含む。リードは、心臓のペーシング・リードと同様に、末梢静脈を通り、三尖弁を通って心臓の右心室(図に明確には示さず)中に、さらに進んで右心室から肺動脈弁を通って肺動脈中に、血管内に挿入されることがある。肺動脈の一部分と大動脈は、互いに接近している。様々な実施形態では、肺動脈中に血管内に配置されたリードを使用する、大動脈中の圧受容器によって神経活動を検知する。いくつかの実施形態では、大動脈中の圧受容器も刺激する。本発明の主題の態様では、圧受容器刺激器とともに、または伴わず神経連絡センサを肺動脈中に血管内に埋め込む、比較的非侵襲性の外科技術が提供される。
【0042】
図12B、12Cに、心臓の右側と左側をそれぞれ示し、さらに心臓の脂肪体を示す。図12Bに、右心房1267、右心室1268、洞房結節1269、上大動脈1202、下大動脈1270、大動脈1271、右肺静脈1272、右肺動脈1273を示す。図12Bに、上大動脈1202と大動脈1271の間の心臓の脂肪体1274も示す。心臓の脂肪体1274中の自律神経節が刺激される、および/または、脂肪体中にねじで取り付けられた、または別の方法で挿入された電極を使用するいくつかの実施形態では、神経連絡が検知され、刺激される、および/または、たとえば、右肺動脈または上大動脈などの血管中の脂肪体に近接して配置され、静脈内に送り込まれたリードを使用するいくつかの実施形態では、神経連絡が検知される。図12Cに、左心房1275、左心室1276、右心房1267、右心室1268、上大動脈1202、下大動脈1270、大動脈1271、右肺静脈1272、左肺静脈1277、右肺動脈1273、冠状静脈洞1278を示す。図12Cに、右心静脈に近接して位置する心臓の脂肪体1279を示し、かつ下大動脈1270と左心房1275に近接して位置する心臓の脂肪体1280も示す。心臓の脂肪体1279中の自律神経節が刺激される、および/または、脂肪体1279中にねじで取り付けられた、または別の方法で挿入された電極を使用するいくつかの実施形態では、神経連絡が検知され、刺激される、および/または、たとえば、右肺動脈1273または右肺静脈1272などの血管中の脂肪体に近接して配置され、静脈内に送り込まれたリードを使用するいくつかの実施形態では、神経連絡が検知される。心臓の脂肪体1280中の自律神経節が刺激される、および/または脂肪体中にねじで取り付けられた、または別の方法で挿入された電極を使用するいくつかの実施形態では、神経連絡が検知され、刺激される、および/または、たとえば、下大動脈1270または冠状静脈洞1278などの血管中の脂肪体に近接して配置され、静脈内に送り込まれたリード、または左心房1275中のリードを使用するいくつかの実施形態では、神経連絡が検知される。
【0043】
図13に、頚動脈洞1305、大動脈弓1303、肺動脈1304の領域中の圧受容器を示す。大動脈弓1303と肺動脈1304は、図12Aに心臓に関して以前に示した。図13に示すように、迷走神経1306が伸びて、大動脈弓1303中、頚動脈洞1305中、総頚動脈1310中の圧受容器として機能する知覚神経終末1307となる。舌咽神経1308が、頚動脈洞1305中の圧受容器として機能する神経終末1309となる。これらの神経終末1307、1309は、たとえば、内部からの圧力の増加から生じる壁の伸びに敏感である。これらの神経終末の始動によって、圧力が低下する。図には示していないが、脂肪体も、心房や心室の腔も圧受容器を含む。カフが、圧反射を刺激するために、圧受容器から血管運動神経中枢に通じる迷走神経などの求心性神経幹のまわりに、配置されている。様々な実施形態では、求心性神経に近接した血管中に配置されたカフまたは血管内に送り込まれたリードを使用して、求心性神経幹が刺激される、および/または求心性神経幹からの神経連絡が検知される。
【0044】
図14に、肺動脈1404中やそのまわりの圧受容器を示す。上大動脈1402と大動脈弓1403も示す。図示するように、肺動脈1404は、多くの圧受容器1411を含む。さらに、密集した圧受容器の集団が、動脈管索1412の付着部近くに位置する。図14に、心臓の右心室1413と、肺動脈1404から右心室1413を隔離する肺動脈弁1414も示す。本発明の主題の様々な実施形態によれば、リードが、末梢静脈を通して挿入され、三尖弁を通して右心室中に、右心室1413から肺動脈弁1414を通り、肺動脈1404中にねじで取り付けられ、肺動脈中および/またはそのまわりの圧受容器を刺激する、および/またはその圧受容器から神経連絡を検知する。様々な実施形態では、たとえば、リードは、圧受容器の集団を刺激する、および/または動脈管索1412近くの神経連絡を検知するように、配置される。
【0045】
図15に、大動脈弓1503中で、肺動脈1504の動脈管索と幹近くの圧受容器領域1512を示す。いくつかの実施形態では、図12B、12Cに示したように、肺動脈中にリードを配置して、圧受容器部位を刺激する、および/または大動脈および/または心臓の脂肪体中の神経連絡を検知する。
【0046】
図16に、生理系を動揺させた後の神経応答の例を示す。この例では、圧力が、生理系の指標として働く。圧力は、実験的に起こされて、交感神経の反射抑制につながる。生理系は、第1の低圧状態1615と第2の高圧状態1616で示す。神経活動は、波形1617、1618で示され、2つの状態間で変化する。変化は、神経系が第1の状態から第2の状態に迅速に適応した場合、むしろ事実上一時的であることもあり、または、神経系が状態の変化に迅速に適応しない場合、より持続的であることもある。とにかく、検知された神経連絡信号の解析によって、応答を表す信号の特徴を抽出する、またはさもなければ決定することができる。示した例では、総合的な交感神経活動に関連する波形1617は、第1の状態から第2の状態に変化する(たとえば、波形の勾配や周期の変化)。さらに、平均の交感神経活動に関連する波形1618は、第1の状態から第2の状態に変化する(たとえば、第1の神経活動レベルから第2の神経活動レベル)。総合的な交感神経活動と平均の交感神経活動の波形は、例として提示してある。神経連絡信号の変化を検知する他の方法を使用することができる。
【0047】
本発明の主題の様々な実施形態では、化学受容器に対応する神経連絡を検知する。頚動脈小体と大動脈体は、心臓血管の化学受容器の集合である。頚動脈小体は、総頚動脈の分岐点に深くまたは2つの枝の間にいくらか位置する。頚動脈小体は、小さい扁平な長円形の構造で、直径が2〜5mmであり、類上皮細胞からなる特性構造を有している。それは、洞様毛細血管と多数の神経線維に密着している。繊細な繊維性被膜が頚動脈小体を囲繞する。それは、体の内臓の求心性神経系の一部であり、血液中の低酸素レベル、または血液の高二酸化酸素レベルと低PHに応答する化学受容器終末を含む。それは、舌咽神経と迷走神経の両方から神経線維によって供給される。
【0048】
大動脈体(大動脈の糸球体)は、頚動脈小体と類似の化学受容器である。大動脈体からの求心性神経線維は、右迷走神経中を走り、下神経節中に細胞体を有する。主静脈の背側の体(大動脈の傍神経節)も左迷走神経中に求心性神経線維と下神経節中に細胞体を有する化学受容器である。
【0049】
本発明の主題の様々な実施形態では、埋め込み型神経刺激機器または統合型心臓・神経刺激機器など、埋め込み型医療機器を含む埋め込み型システムによって、神経信号が検知され、神経治療が施される。埋め込み型システムが示されて議論されたが、本発明の主題の様々な態様や実施形態は、外部機器中に実装することができる。たとえば、埋め込み型リード、外部電極、経皮リード、またはそれらの任意の組合せを使用して、神経信号を検知することができ、神経刺激を施すことができる。
【0050】
図17は、自律神経平衡制御のための神経刺激の方法の実施形態を表すフローチャート図である。一実施形態では、方法は、システム100によって実施される。
【0051】
自律神経活動を表す1つまたは複数の信号を1710で検知する。そのような信号の例には、神経信号、代理信号、生理機能信号が含まれる。神経信号は、自律神経の状態を直接表す。一実施形態では、神経信号は、交感神経連絡を表す少なくとも1つの交感神経信号と、副交感神経連絡を表す少なくとも1つの副交感神経信号とを含む。代理信号は、それぞれが自律神経活動を表すと知られた信号である。一実施形態では、LF/HF比は、自律神経の状態を代理する代理信号として使用される。生理機能信号は、それぞれが自律神経活動によって制御される、または作用される生理機能を表す。一実施形態では、生理機能信号は、心拍数、活動レベル、呼吸活動、経胸腔的なインピーダンス、心音、血圧を表す、1つまたは複数の信号を含む。
【0052】
交感神経と副交感神経の刺激パルスの送出は、1720でフィードバック制御を使用して制御する。1710で検知する1つまたは複数の信号は、フィードバック制御のための入力として働く。図17に示すように、フィードバック制御は、1722で交感神経の興奮と交感神経の抑制のための交感神経刺激パルスの送出を制御するように、1724で副交感神経の興奮と副交感神経の抑制のための副交感神経刺激パルスの送出を制御するように実施する。一実施形態では、交感神経と副交感神経の刺激パルスの送出は、所望の自律神経平衡を達成するように、実施する。一実施形態では、交感神経と副交感神経の刺激パルスの送出は、所定の時間の間、自律神経平衡をずらすように、制御する。自律神経平衡は、交感神経の緊張を高める、および/または副交感神経の緊張を静めることによって、一方向にずらし、または交感神経の緊張を静める、および/または副交感神経の緊張を高めることによって、他方向にずらす。一実施形態では、交感神経と副交感神経の刺激パルスの送出は、所定の時間表に従って自律神経平衡を制御するように、制御する。たとえば、自律神経平衡は、生理機能が1日の一定の時間の間に使用されると予想されるとき、その機能が望ましく動作するように、ずらす。
【0053】
交感神経と副交感神経の刺激パルスの送出は、自律神経活動を表す1つまたは複数の信号に基づき、複数の刺激パラメータを調整して制御する。これには、交感神経の興奮と交感神経の抑制を制御する1つまたは複数の交感神経刺激パラメータと、副交感神経の興奮と副交感神経の抑制を制御する1つまたは複数の副交感神経刺激パラメータとを調整することが含まれる。一実施形態では、刺激パラメータは、1710で検知した1つまたは複数の神経信号に基づき、調整する。他の実施形態では、刺激パラメータは、1710で検知した1つまたは複数の代理信号に基づき、調整する。他の実施形態では、刺激パラメータは、1710で検知した1つまたは複数の生理機能信号に基づき、調整する。他の実施形態では、刺激パラメータは、1つまたは複数の神経信号と、1つまたは複数の生理機能信号とに基づき、調整する。他の実施形態では、刺激パラメータは、1つまたは複数の代理信号と、1つまたは複数の生理機能信号とに基づき、調整する。
【0054】
上記の詳細な記述は、例示を企図し限定するものではないことを理解されるはずである。他の実施形態は、上記の記述を読み理解すると、当業者に明らかになる。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を、それが受ける権利のある法的な同等物の全範囲とともに参照して決定すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】自律神経平衡を制御する神経刺激システムの実施形態、およびその神経刺激システムが使用される環境の部分の説明図である。
【図2】神経刺激による自律神経平衡の制御の方法の実施形態に関する説明図である。
【図3】神経刺激システムの神経刺激回路の実施形態を示すブロック図である。
【図4】神経刺激回路の刺激制御回路の実施形態を示すブロック図である。
【図5】神経刺激回路の自律神経平衡監視回路の実施形態を示すブロック図である。
【図6】自律神経平衡監視回路の神経連絡検知回路の実施形態を示すブロック図である。
【図7】自律神経平衡監視回路の代理信号検知回路の実施形態を示すブロック図である。
【図8】自律神経平衡監視回路の生理機能検知回路の実施形態を示すブロック図である。
【図9】神経刺激回路および心臓刺激回路を含む埋め込み型医療機器の実施形態を示すブロック図である。
【図10】埋め込み型医療機器と通信する外部システムの実施形態を示すブロック図である。
【図11】末梢血管制御のための神経機構の説明図である。
【図12A】心臓の説明図である。
【図12B】心臓の説明図である。
【図12C】心臓の説明図である。
【図13】頚動脈洞と大動脈弓の領域中の圧受容器および求心性神経の説明図である。
【図14】肺動脈の中やそのまわりの圧受容器の説明図である。
【図15】大動脈弓、動脈管索、肺動脈の幹の中の圧受容器領域の説明図である。
【図16】生理系を動揺させた後の神経応答例の説明図である。
【図17】自律神経平衡制御のための神経刺激の方法の例を表すフローチャート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交感神経刺激パルスと副交感神経刺激パルスを送るようにされた刺激出力回路と、
自律神経活動を表す1つまたは複数の信号を検知するようにされた自律神経平衡監視回路と、
前記刺激出力回路と前記自律神経平衡監視回路に結合された刺激制御回路であって、
交感神経の興奮と交感神経の抑制のため、前記交感神経刺激パルスの前記送出を制御するようにされた交感神経刺激制御器と、
副交感神経の興奮と副交感神経の抑制のため、前記副交感神経刺激パルスの前記送出を制御するようにされた副交感神経刺激制御器とを含む、刺激制御回路と
を含む、神経刺激システム。
【請求項2】
前記刺激制御回路は、前記自律神経活動を表す1つまたは複数の信号に基づき、前記交感神経刺激パルスと前記副交感神経刺激パルスの前記送出を制御する複数の刺激パラメータを調整するようにされた刺激パラメータ調整回路を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記刺激パラメータ調整回路は、プログラム可能で、前記自律神経活動を表す1つまたは複数の信号を前記刺激パラメータにマッピングするプログラム可能なパラメータを使用して、前記複数の刺激パラメータを調整するようにされた請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記刺激パラメータ調整回路は、
前記複数の刺激パラメータの1つまたは複数の交感神経刺激パラメータを調整するようにされた交感神経刺激パラメータ調整モジュールと、
前記複数の刺激パラメータの1つまたは複数の副交感神経刺激パラメータを調整するようにされた副交感神経刺激パラメータ調整モジュールとを含み、
前記交感神経刺激制御器は、前記1つまたは複数の交感神経刺激パラメータを使用して、前記交感神経の興奮と前記交感神経の抑制のため、前記交感神経刺激パルスの前記送出を制御するようになされ、
前記副交感神経刺激制御器は、前記1つまたは複数の副交感神経刺激パラメータを使用して、前記副交感神経の興奮と前記副交感神経の抑制のため、前記副交感神経刺激パルスの前記送出を制御するようにされた請求項2または3に記載のシステム。
【請求項5】
前記刺激パラメータ調整回路は、前記自律神経活動を表す1つまたは複数の信号を含む1つまたは複数の入力によるフィードバック制御をダイナミックに使用して、前記複数の刺激パラメータを動的に調整するようにされた請求項2から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記刺激パラメータ調整回路は、所定の時間表に基づき、前記複数の刺激パラメータをさらに調整するようにされた請求項2から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記自律神経平衡監視回路は、前記自律神経活動を表す1つまたは複数の神経信号を検知するようにされた神経連絡検知回路を含み、
前記刺激パラメータ調整回路は、前記1つまたは複数の神経信号に基づき、前記複数の刺激パラメータを調整するようにされた請求項2から6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記神経連絡検知回路は、
交感神経連絡を表す少なくとも1つの交感神経信号を検知するようにされた交感神経連絡検知回路と、
副交感神経連絡を表す少なくとも1つの副交感神経信号を検知するようにされた副交感神経連絡検知回路とを含む請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記自律神経平衡監視回路は、前記自律神経活動を表す1つまたは複数の代理信号を検知するようにされた代理信号検知回路を含み、
前記刺激パラメータ調整回路は、前記1つまたは複数の代理信号に基づき、前記複数の刺激パラメータを調整するようにされた請求項2から8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記代理信号検知回路は、心拍数変動(HRV)を検知し、前記検知されたHRVに基づき、前記1つまたは複数の代理信号の代理信号を生成する心拍数変動(HRV)検知回路を含む請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記自律神経平衡監視回路は、それぞれが前記自律神経活動に関連する1つまたは複数の生理機能を表す、1つまたは複数の生理機能信号を検知する生理機能検知回路を含み、
前記刺激パラメータ調整回路は、前記1つまたは複数の生理機能信号に基づき、前記複数の刺激パラメータを調整するようにされた請求項2から10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記生理機能検知回路は、
心拍数を表す信号を検知する心拍数検知回路と、
身体活動レベルを表す信号を検知する活動検知回路と、
呼吸信号を検知する呼吸検知回路と、
経胸腔的インピーダンスまたは心臓インピーダンスを表す信号を検知するインピーダンス検知回路と、
心音を表す信号を検知する心音検知回路と、
血圧を表す信号を検知する圧検知回路と、
の1つまたは複数含む請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記刺激出力回路、前記自律神経平衡監視回路と前記刺激制御回路を収容する埋め込み型ハウジングをさらに含む請求項1から12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記刺激出力回路に結合された、1つまたは複数の埋め込み型神経リードをさらに含み、
前記1つまたは複数の神経リードは、前記交感神経刺激パルスと前記副交感神経刺激パルスを送るように構成された請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記刺激制御回路に結合され、前記埋め込み型ハウジング内に収容された心臓刺激回路をさらに含み、
前記心臓刺激回路は、心臓刺激パルスを送るようにされた請求項13、14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
外部システムをさらに含み、
その外部システムが、
テレメトリを介して、前記刺激制御回路と結合して通信する外部機器と、
遠隔機器と、
前記外部機器と前記遠隔機器の間に結合された電気通信網とを含む請求項13から15のいずれかに記載のシステム。
【請求項17】
自律神経活動を表す1つまたは複数の信号を検知するステップと、
前記自律神経活動を表す1つまたは複数の信号を含む、1つまたは複数の入力によるフィードバック制御を使用して、交感神経と副交感神経の刺激パルスの送出を制御するステップとを含み、
前記交感神経と副交感神経の刺激パルスの送出を制御するステップは、
交感神経の興奮と交感神経の抑制のため、前記交感神経刺激パルスの前記送出を制御するステップと、
副交感神経の興奮と副交感神経の抑制のため、前記副交感神経刺激パルスの前記送出を制御するステップと
を含む、方法。
【請求項18】
前記交感神経と副交感神経の刺激パルスの送出を制御するステップは、選択された自律神経平衡を達成するように、交感神経と副交感神経の刺激パルスの前記送出を制御するステップを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記交感神経と副交感神経の刺激パルスの送出を制御するステップは、所定の期間、自律神経平衡をずらすように、交感神経と副交感神経の刺激パルスの前記送出を制御するステップを含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記交感神経と副交感神経の刺激パルスの送出を制御するステップは、所定の時間表に従って自律神経平衡を制御するように、交感神経と副交感神経の刺激パルスの前記送出を制御するステップを含む請求項17から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記交感神経と副交感神経の刺激パルスの送出を制御するステップは、交感神経の緊張を高め、副交感神経の緊張を静めるように、交感神経と副交感神経の刺激パルスの前記送出を制御するステップを含む請求項17から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記交感神経と副交感神経の刺激パルスの送出を制御するステップは、交感神経の緊張を静め、副交感神経の緊張を高めるように、交感神経と副交感神経の刺激パルスの前記送出を制御するステップを含む請求項17から20のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記交感神経と副交感神経の刺激パルスの送出を制御するステップは、前記自律神経活動を表す1つまたは複数の信号に基づき、交感神経と副交感神経の刺激パルスの前記送出を制御する、複数の刺激パラメータを調整するステップを含む請求項17から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記自律神経活動を表す1つまたは複数の信号を前記刺激パラメータにマッピングするパラメータをプログラミングするステップをさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の刺激パラメータを調整するステップは、
前記交感神経の興奮と前記交感神経の抑制を制御する、1つまたは複数の交感神経刺激パラメータを調整するステップと、
前記副交感神経の興奮と前記副交感神経の抑制を制御する、1つまたは複数の副交感神経刺激パラメータを調整するステップとを含む請求項23と24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記自律神経活動を表す1つまたは複数の信号を検知するステップは、前記自律神経活動を表す1つまたは複数の神経信号を検知するステップを含み、
前記複数の刺激パラメータを調整するステップは、前記1つまたは複数の神経信号に基づき、前記複数の刺激パラメータを調整するステップを含む請求項23から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記1つまたは複数の神経信号を検知するステップは、交感神経連絡を表す少なくとも1つの交感神経信号と、副交感神経連絡を表す少なくとも1つの副交感神経信号とを検知するステップを含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記自律神経活動を表す1つまたは複数の信号を検知するステップは、前記自律神経活動を表す1つまたは複数の代理信号を検知するステップを含み、
前記複数の刺激パラメータを調整するステップは、前記1つまたは複数の代理信号に基づき、前記複数の刺激パラメータを調整するステップを含む請求項23から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記1つまたは複数の代理信号を検知するステップは、心拍数変動(HRV)を表す信号を検知するステップを含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記自律神経活動を表す1つまたは複数の信号を検知するステップは、それぞれが前記自律神経活動に関連する1つまたは複数の生理機能を表す、1つまたは複数の生理機能信号を検知するステップを含み、
前記複数の刺激パラメータを調整するステップは、前記1つまたは複数の生理機能信号に基づき、前記複数の刺激パラメータを調整するステップを含む請求項23から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記1つまたは複数の生理機能信号を検知するステップは、心拍数を表す信号、活動レベルを表す信号、呼吸活動を表す信号、経胸腔的インピーダンスまたは心臓インピーダンスを表す信号、心音を表す信号、血圧を表す信号の1つまたは複数を検知するステップを含む請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2008−539961(P2008−539961A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511286(P2008−511286)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/017971
【国際公開番号】WO2006/122148
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(505003528)カーディアック・ペースメーカーズ・インコーポレーテッド (466)
【Fターム(参考)】