説明

自律移動中継装置および無線通信中継システム

【課題】無線通信装置間の情報伝達を中継する自律移動中継装置が両無線通信装置間で無線ネットワークが連鎖的に接続していない場合にも安全かつ確実に情報の中継を行う。
【解決手段】自立的に移動して互いに直接無線通信を行うことができない無線通信装置間の情報伝達を行う自律移動中継装置は、安全対策を行いながら、無線通信装置から情報伝達要求命令を受け取ると位置把握手段および制御手段の制御により無線通信装置の通信エリアを越えて情報伝達要求命令のターゲットとなる無線通信装置の方向に移動して情報伝達要求命令を実行した後に無線通信装置の通信エリア内に戻ってくる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに直接無線通信を行うことができない無線通信装置間の情報伝達技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信技術の発達に伴い、さまざまな情報端末において無線通信機能が搭載されてきており、無線通信装置間での無線ネットワークの形成が可能となっている。
但し、無線ネットワークは無線通信装置が出す電波の届く通信エリアに限定される。そのため、ある無線ネットワークの無線通信装置が自身の通信エリア外にある無線通信装置と直接通信を行うことは不可能である。
この対策として、目的とする無線通信装置に達するまで他の通信端末を中継器として経由しながらバケツリレー式に情報の伝達を行っていくメッシュネットワークを形成する技術が考えられ既に知られている。
【0003】
特許文献1には、2つの通信装置が互いの通信圏内に存在しない状況においても通信を行う目的で、自律移動装置について開示され、他の装置と通信を行う通信手段により目的とする通信装置と通信できるか否かを判定し、否の場合に通信対象の情報を記憶してから目的とする通信装置方向に移動することにより、目的とする通信装置に情報を伝達する構成などが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、今までのメッシュネットワークを用いた無線通信中継システムでは、当然のことながら情報の送信元である無線通信装置から情報の送信先である無線通信装置までを中継器となる固定端末の各通信端末による無線ネットワークが連鎖的に接続している必要があり、無線ネットワークが連鎖的に接続していない場合は通信が不可能であるという問題があった。
また、形成したメッシュネットワーク内の中継器として外部の第三者が含まれる可能性もあり、情報漏えいというセキュリティーの問題もあった。
【0005】
特許文献1では、自律移動装置が情報を記憶してから目的とする通信装置方向に移動することで情報を送信することは可能であるが、無線通信環境は空間電波情報の影響を受ける為送信した情報を受信側で正常に受信できない場合もあり、この場合情報を伝達したことにはならない。
また、通信装置が、目的とする通信装置が持つ情報を受信したい場合、自律移動装置が目的とする通信装置方向に移動後に元の通信装置の通信エリア内に戻ることがないため、情報を受信できない。
また、自律移動装置が情報を記憶してから目的とする通信装置方向に移動中に悪意のある第3者に自律移動装置もしくは装置内の情報を盗まれる場合の対策が施されていない。
以上の様に上記の安全かつ確実に情報の中継を行うという問題は解消できていない。
【0006】
本発明は、互いに直接無線通信を行うことができない無線通信装置間の情報伝達を中継する自律移動中継装置において、両無線通信装置間で無線ネットワークが連鎖的に接続していない場合にも安全かつ確実に情報の中継を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、自立的に移動して互いに直接無線通信を行うことができない無線通信装置間の情報伝達を行う自律移動中継装置において、暗号化プロトコルおよび自動再送要求プロトコルを用いる無線通信手段と、第3者による自律移動中継装置の不正使用を避ける安全対策手段と、自律移動中継装置の移動機構を目標物の方向に移動するように制御する制御手段と、自律移動中継装置の地図上の位置を把握する位置把握手段とを備え、無線通信手段による無線通信と安全対策手段による安全対策とを行いながら、無線通信装置から情報伝達要求命令を受け取ると位置把握手段および制御手段の制御により無線通信装置の通信エリアを越えて情報伝達要求命令のターゲットとなる無線通信装置の方向に移動して情報伝達要求命令を実行した後に無線通信装置の通信エリア内に戻ってくることを特徴とする自律移動中継装置である。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の自律移動中継装置において、安全対策手段は、第3者による不正使用を検出する不正使用検出手段と自律移動中継装置の使用者を認証する認証手段とを備え、
不正使用検出手段により不正使用を検出すると命令の通常実行動作とは異なるロックモードに設定し、認証手段による認証を通った場合のみロックモードを解除することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の自律移動中継装置において、制御手段は、安全対策手段によりロックモードに設定されると安全対策手段によりロックモードが解除されるまで、命令元の無線通信装置の通信エリア内に戻るように移動機構部を制御し、その間認証以外の操作を拒否し、ロックモード解除後は命令を継続して実行することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の自律移動中継装置において、制御手段は、命令元の無線通信装置から命令を受け取ると情報伝達中継時間用のタイマーを設定し、タイムアウトになると命令元の無線通信装置の通信エリア内に戻るように移動機構部を制御し、中継時間タイムアウト通知を命令元の無線通信装置に送信することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の自律移動中継装置および自律移動中継装置を介して情報伝達を行う無線通信装置を備えた無線通信中継システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、互いに直接無線通信を行うことができない無線通信装置間の情報伝達を中継する自律移動中継装置において、両無線通信装置間で無線ネットワークが連鎖的に接続していない場合にも安全かつ確実に情報の中継を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る自律移動中継装置のブロック図である。
【図2】本発明に係る自律移動中継装置を用いた無線通信中継システムについて説明する図である。
【図3】本発明に係る自律移動中継装置と無線通信装置との間の無線通信で用いる自動再送要求のフローを示す図である。
【図4】本発明に係る自律移動中継装置を用いた無線通信システムによるイニシエータ無線通信装置がターゲット無線通信装置に情報書き込みを行う場合の全体フローについて説明する図である。
【図5】本発明に係る自律移動中継装置を用いた無線通信システムによるイニシエータ無線通信装置がターゲット無線通信装置から情報読み出しを行う場合の全体フローを示す図である。
【図6】本発明に係る自律移動中継装置が命令を受信した場合に行う安全対策処理のフローを示す図である。
【図7】本発明に係る中継時間タイマー設定割り込み発生時の処理フローを示す図である。
【図8】本発明に係る自律移動中継装置における不正使用検出割り込み発生時の安全対策処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は、互いに直接無線通信を行うことができない無線通信装置間の情報伝達を中継する自律移動中継装置における情報伝達中継方法に際して、以下の特徴を有する。
要するに、無線通信装置との無線通信方式として、暗号化技術および自動再送要求プロトコルを用いた無線通信を行い、さらには自律移動中継装置がイニシエータ無線通信装置の通信エリアを越えて、ターゲット無線通信装置の通信エリアに自律的に移動し、その後またイニシエータ無線通信装置の通信エリアに自律的に戻ってくるのであるが、その移動中に不正使用されそうな状況を検出するとロックモードに入り、認証に成功しない限り、自律移動中継装置を使用できない、ということが特徴になっている。
上記の本発明の特徴について、以下、図面を用いて詳細に解説する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る自律移動中継装置のブロック図である。
自律移動中継装置1は、制御部2と、移動機構部3と、無線通信部4と、安全対策部5と、位置把握部6と、カメラ7と、タッチパネル8と、スピーカ9と、マイク10と、LED11と、電池12などから構成される。
カメラ7は周囲の状況を撮影し、認証や目標物の方向を捕らえるなどの目的で使用する。
タッチパネル8は自律移動中継装置1への命令を含む情報の入力や、自律移動中継装置1内の状態などを示す出力となり、認証のためにも使用される。
スピーカ9による音声の出力や、マイク10による音声の入力、LED11による状態表示の機能も備えるものとする。
電池12は、自律移動中継装置1が有線での電力供給を行わずとも動作できるようにするためのもので、太陽電池であってもよい。
位置把握部6は、地図と自律移動中継装置1の位置を特定する機能、例えばGPS受信器からなり、地図内での自律移動中継装置1の位置を把握する。
【0016】
制御部2は、CPU21、タイマー22、記憶部23、IF部24から構成され、CPU21は自律移動中継装置1の処理動作を制御するプログラムを実行する。
タイマー22は、時間のカウントを行い、ある所定の時間に達した場合のイベントを発生させるトリガとなり、制御部2にタイムアウト割込みを発生させる。
記憶部23は、自律移動中継装置1の処理動作に関わる情報やプログラムを記憶する。
IF部24は、制御部2以外の各構成要素と制御部2との情報のやりとりの中継を行う。そして、カメラ7からの目標物に関する視覚情報をもとにフィードバックをかけて目標物の方向に向かって移動するように移動機構部3を制御する。または、予め目標物の位置がわかっている場合は、位置把握部6による自律移動中継装置1の位置と目標物の位置情報をもとに目標物の方向に移動するように移動機構部3を制御する。ここで、自律移動中継装置1がイニシエータ無線通信装置aから受信する情報伝達命令には、命令のターゲットとなるターゲット無線通信装置bを認識するための視覚情報か、もしくは位置情報が含まれているものとする。
また、制御部2は割込みが発生すると通常の情報伝達処理を中断し、割込みの内容に応じた処理を優先して実行する。
【0017】
移動機構部3は、制御部2からの指示に基づき、自律移動中継装置1を移動させるためのモータとモータにより動く機構であり、例えば車輪などが考えられる。
【0018】
無線通信部4は、電波を通してパケット通信を行い、そのプロトコルとして自動再送要求プロトコル41および暗号化プロトコル42を用いる。
自動再送要求プロトコル41は、送信パケットに対して誤りを検出するための冗長ビットを付加して送信を行い、一方、受信側はパケットを受信すると確認応答を送信側に返す。その際、受信したパケットに誤りを検出した場合に否定応答(NACK:Negative ACKnowledgments。以下、NACK)を返し、誤りがなかった場合に肯定応答(ACK:ACKnowledgments。以下、ACK)を返す。そして、送信側はNACKが返ってきた場合には、同じパケットの再送を行う。また、受信側からの確認応答がある所定時間経過後も返って来ない場合は、タイムアウトとみなし、同じパケットの再送を行うことにより、信頼性の高い通信を行う。
暗号化プロトコル42は、暗号鍵を用いて情報の暗号化と復号を行うものであり、暗号鍵を持たない第3者への情報漏えいを防ぐ。
【0019】
安全対策部5は、不正使用検出部51と認証部52から構成され、不正使用検出部51は自律移動中継装置1が命令実行中に他の命令を入力しようとした場合に不正使用として検出し、ロックモードに設定する。
認証部52は、無線通信部4またはタッチパネル8経由でのパスワードの入力またはカメラ7を用いた顔認識による自律移動中継装置1のユーザ認証を行い、自律移動中継装置1への命令が発行された場合や不正使用検出部51によりロックモードに設定された場合に使用し、ユーザ認証を通るとロックモードの解除を行う。
【0020】
図2は、本発明に係る自律移動中継装置を用いた無線通信中継システムについて説明する図である。
無線通信中継システムは、自律移動中継装置1と自律移動中継装置1と同じ方式の無線通信手段を持つ無線通信装置2つ(aおよびb)をその構成要素として含むものとする。そして、情報伝達の命令を発行する無線通信装置をイニシエータ無線通信装置aと、情報伝達命令のターゲットとなる無線通信装置をターゲット無線通信装置bと以下呼ぶこととする。
ここで、イニシエータ無線通信装置aの通信エリアとターゲット無線通信装置bの通信エリアが重複せず、さらには、自律移動中継装置1がそれらの無線通信装置の間にあるが、自律移動中継装置1の通信エリアがイニシエータ無線通信装置aの通信エリアとターゲット無線通信装置bの通信エリアの両方とに同時に重複することがない状況においても、本発明の無線通信システムにより情報伝達を行う場合の自律移動中継装置1および無線通信装置(a及びb)の動作をフローチャートを用いながら説明する。
【0021】
図3は、本発明に係る自律移動中継装置と無線通信装置との間の無線通信で用いる自動再送要求のフローを示す図である。
【0022】
自律移動中継装置1の無線通信部4および無線通信装置(a又はb)の無線通信部によるパケット送受信で使用される自動再送要求プロトコルのフローのうち、パケット送信側の装置のフローを図3の(1)に、パケット受信側のフローを図3の(2)に示す。ここで補足すると、例えばパケット送信側の装置が無線通信装置(a又はb)の場合はパケット受信側の装置は自律移動中継装置1となる。逆に、パケット送信側の装置が自律移動中継装置1の場合はパケット受信側の装置は無線通信装置(a又はb)となる。
【0023】
パケット送信側装置は、パケット送信を行うにあたり、無線通信部および制御部により自動再送要求用のタイマーを設定してから誤り検出ビットを付加してパケットの送信を行う(ステップS311)。
無線通信部によりパケット受信側装置からACKを受信すると(ステップS312でYes)、制御部の制御によりパケットの再送を行わず送信処理を完了する。
無線通信部によりパケット受信側装置からNACKを受信すると(ステップS312でNo,ステップS313でYes)、制御部により自動再送要求用のタイマーを設定し直し、同じパケットを再送する(ステップS311)。
無線通信部によりACK及びNACKを受信しない場合(ステップS312でNo,ステップS313でNo)、自動再送要求用タイマーがタイムアウトかを確認し、タイムアウトの場合(ステップS314でYes)、制御部により自動再送要求用のタイマーを設定し直し、同じパケットを再送する(ステップS311)。
タイムアウトでない場合(ステップS314でNo)、ステップS312に戻る。
パケット受信側装置は、無線通信部よりパケットを受信する(ステップS321)。
パケット誤りが検出されなかった場合(ステップS322でYes)、無線通信部よりパケット送信側装置へACKを送信し(ステップS324)、制御部の制御により受信を完了する。
パケット誤りが検出された場合(ステップS322でNo)、無線通信部よりパケット送信側装置へNACKを送信し(ステップS323)、再度パケットを受信するフローへ戻る。
以下、無線通信でのパケット送受信では、この自動再送要求が使われるものとする。
【0024】
図4は、本発明に係る自律移動中継装置を用いた無線通信システムによるイニシエータ無線通信装置がターゲット無線通信装置に情報書き込みを行う場合の全体フローについて説明する図である。
【0025】
ユーザからイニシエータ無線通信装置aにターゲット無線通信装置bへの情報書き込みの指示があると、イニシエータ無線通信装置aが自律移動中継装置1にターゲット無線通信装置bへの情報書き込み命令を無線通信部より送信する(ステップS401)。
自律移動中継装置1がイニシエータ無線通信装置aからの情報書き込み命令を無線通信部4により受信する(ステップS402)。
自律移動中継装置1が所定の値を情報伝達中継時間のタイムアウト値として制御部2により中継時間用タイマー22を設定する(ステップS403)。
自律移動中継装置1が、制御部2による制御に基づき移動機構部3を目標物であるターゲット無線通信装置b方向に移動する(ステップS404)。
ステップS401からステップS404までの無線通信システム内の各装置の位置関係を図2の(1)に示す。
自律移動中継装置1はターゲット無線通信装置bの通信エリアに入るまで移動する(ステップS405でNo)。
自律移動中継装置1がターゲット無線通信装置bの通信エリアに入ると(ステップS405でYes)、自律移動中継装置1は停止し、イニシエータ無線通信装置aから送信された情報書き込み命令内の情報を無線通信部4よりターゲット無線通信装置bに送信する(ステップS406)。
ターゲット無線通信装置bは、自律移動中継装置1からの情報を無線通信部より受信する(ステップS407)。
ステップS405からステップS407までの無線通信システム内の各装置の位置関係を図2の(2)に示す。
自律移動中継装置1は、制御部2による制御に基づき移動機構部3を目標物であるイニシエータ無線通信装置a方向に移動する(ステップS408)。
自律移動中継装置1はイニシエータ無線通信装置aの通信エリアに入るまで移動する(ステップS409でNo)。
自律移動中継装置1がイニシエータ無線通信装置aの通信エリアに入ると(ステップS409でYes)、自律移動中継装置1は停止し、情報書き込み完了通知を無線通信部4よりイニシエータ無線通信装置aに送信する(ステップS410)。
ステップS408からステップS410までの無線通信システム内の各装置の位置関係を図2の(3)に示す。
【0026】
図5は、本発明に係る自律移動中継装置を用いた無線通信システムによるイニシエータ無線通信装置がターゲット無線通信装置から情報読み出しを行う場合の全体フローを示す図である。
【0027】
ユーザからイニシエータ無線通信装置aにターゲット無線通信装置bからの情報読み出しの指示があると、イニシエータ無線通信装置aが自律移動中継装置1にターゲット無線通信装置bからの情報読み出し命令を無線通信部より送信する(ステップS501)。
自律移動中継装置1がイニシエータ無線通信装置aからの情報読み出し命令を無線通信部4により受信する(ステップS502)。
自律移動中継装置1が所定の値を情報伝達中継時間のタイムアウト値として制御部2により中継時間用タイマー22を設定する(ステップS503)。
自律移動中継装置1が、制御部2による制御に基づき移動機構部3を目標物であるターゲット無線通信装置b方向に移動する(ステップS504)。
ステップS501からステップS504までの無線通信システム内の各装置の位置関係を図2の(1)に示す。
自律移動中継装置1はターゲット無線通信装置bの通信エリアに入るまで移動する(ステップS505でNo)。
自律移動中継装置1がターゲット無線通信装置bの通信エリアに入ると(ステップS505でYes)、自律移動中継装置1は停止し、イニシエータ無線通信装置aから送信された情報読み出し命令を無線通信部4よりターゲット無線通信装置bに送信する(ステップS506)。
ターゲット無線通信装置bは、自律移動中継装置1からの情報読み出し命令を無線通信部より受信する(ステップS507)。
ターゲット無線通信装置bは、記憶部に格納されている情報を無線通信部より自律移動中継装置1に送信する(ステップS508)。
自律移動中継装置1は、ターゲット無線通信装置bからの情報を無線通信部4より受信する(ステップS509)。
ステップS505からステップS509までの無線通信システム内の各装置の位置関係を図2の(2)に示す。
自律移動中継装置1は、制御部2による制御に基づき移動機構部3を目標物であるイニシエータ無線通信装置a方向に移動する(ステップS510)。
自律移動中継装置1はイニシエータ無線通信装置aの通信エリアに入るまで移動する(ステップS511でNo)。
自律移動中継装置1がイニシエータ無線通信装置aの通信エリアに入ると(ステップS511でYes)、自律移動中継装置1は停止し、ターゲット無線通信装置bから受信した情報を無線通信部4よりイニシエータ無線通信装置aに送信する(ステップS512)。
イニシエータ無線通信装置aが自律移動中継装置1からの情報を無線通信部より受信する(ステップS513)。
ステップS510からステップS513までの無線通信システム内の各装置の位置関係を図2の(3)に示す。
【0028】
図6は、本発明に係る自律移動中継装置が命令を受信した場合に行う安全対策処理のフローを示す図である。
【0029】
自律移動中継装置1が無線通信部4またはタッチパネル8より命令を受信すると、無線通信部4またはタッチパネル8より認証情報の入力要求を通知する(ステップS601)。
無線通信部4またはタッチパネル8より認証情報が入力され認証部52での認証を通らなかった場合(ステップS602でNo)、再度認証情報の入力要求を通知する(ステップS601)
認証を通った場合(ステップS602でYes)、受信した命令を受理する(ステップS603)。そしてこの後、受理した命令の実行に移っていく。
【0030】
図7は、本発明に係る中継時間タイマー設定割り込み発生時の処理フローを示す図である。
【0031】
自律移動中継装置1が情報伝達命令の実行により中継時間用タイマー22設定後、所定の時間が経過しタイムアウトになり中継時間タイムアウト割込みが発生すると、制御部2は情報伝達命令の処理フローを中止する(ステップS701)
制御部2による制御に基づき移動機構部3を目標物であるイニシエータ無線通信装置a方向に移動する(ステップS702)。
自律移動中継装置1はイニシエータ無線通信装置aの通信エリアに入るまで移動する(ステップS703でNo)。
自律移動中継装置1がイニシエータ無線通信装置aの通信エリアに入ると(ステップS703でYes)、自律移動中継装置1は停止し、中継時間タイムアウト通知を無線通信部4よりイニシエータ無線通信装置aに送信する(ステップS704)。
イニシエータ無線通信装置aが無線通信部より中継時間タイムアウト通知を受信する(ステップS705)。
イニシエータ無線通信装置aが要求命令の再実行を開始する(ステップS706)。
【0032】
図8は、本発明に係る自律移動中継装置における不正使用検出割り込み発生時の安全対策処理フローを示す図である。
【0033】
自律移動中継装置1が受理した命令の実行中に他の命令を受信し不正使用検出部51により不正使用検出割り込みが発生すると、制御部2は情報伝達命令の処理フローを中止する(ステップS801)
安全対策部5は、自律移動中継装置1をロックモードに設定する(ステップS802)。
ロックモードが設定されると、制御部2は中継時間用タイマー22を中止する(ステップS803)。
認証部52により認証を通らない場合(ステップS804でNo)で、かつ、自律移動中継装置1がイニシエータ無線通信装置aの通信エリアに達していない場合(ステップS808でNo)、制御部2による制御に基づき移動機構部3を目標物であるイニシエータ無線通信装置a方向に移動し(ステップS810)、ステップS803に戻る。
認証部52により認証を通らない場合(ステップS804でNo)で、かつ、自律移動中継装置1がイニシエータ無線通信装置aの通信エリアに達した場合(ステップS808でYes)、自律移動中継装置1は制御部2による制御に基づき移動機構部3を用いた移動を停止し(ステップS809)、ステップS804に戻る。
認証部52により認証を通ると(ステップS804でYes)、安全対策部5はロックモードを解除する(ステップS805)。
ロックモードが解除されると、制御部2は中継時間用タイマー22を再設定する(ステップS806)。
そして、情報伝達要求命令を継続して実行する(ステップS807)。
不正使用検出割込みの処理は、前述した中継時間タイムアウト割込みの処理より優先するものとする。
【0034】
以下、各請求項ごとの効果を記載する。
請求項2では、認証に基づいた安全な情報伝達命令の実行が行えるという効果がある。
請求項3では、不正使用が検出された場合は認証を通らない限り自律移動中継装置が命令元の無線通信装置エリア内に戻るため、情報伝達命令実行の際の安全性がより高まるという効果がある。
請求項4では、自律移動中継装置による情報伝達命令の実行時間を区切ることにより、命令を発行した無線通信装置が自律移動中継装置の管理を行いやすいという効果がある。
請求項5は、上記の各請求項と同様である。
【0035】
なお、上述する実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 自律移動中継装置
2 制御部
3 移動機構部
4 無線通信部
5 安全対策部
6 位置把握部
7 カメラ
8 タッチパネル
9 スピーカ
10 マイク
11 LED
12 電池
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】特開2007−233751号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立的に移動して互いに直接無線通信を行うことができない無線通信装置間の情報伝達を行う自律移動中継装置において、
暗号化プロトコルおよび自動再送要求プロトコルを用いる無線通信手段と、
第3者による自律移動中継装置の不正使用を避ける安全対策手段と、
自律移動中継装置の移動機構を目標物の方向に移動するように制御する制御手段と、
自律移動中継装置の地図上の位置を把握する位置把握手段とを備え、
前記無線通信手段による無線通信と前記安全対策手段による安全対策とを行いながら、前記無線通信装置から情報伝達要求命令を受け取ると前記位置把握手段および前記制御手段の制御により前記無線通信装置の通信エリアを越えて前記情報伝達要求命令のターゲットとなる無線通信装置の方向に移動して前記情報伝達要求命令を実行した後に前記無線通信装置の通信エリア内に戻ってくることを特徴とする自律移動中継装置。
【請求項2】
前記安全対策手段は、第3者による不正使用を検出する不正使用検出手段と自律移動中継装置の使用者を認証する認証手段とを備え、
前記不正使用検出手段により不正使用を検出すると命令の通常実行動作とは異なるロックモードに設定し、前記認証手段による認証を通った場合のみロックモードを解除することを特徴とする請求項1記載の自律移動中継装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記安全対策手段によりロックモードに設定されると前記安全対策手段によりロックモードが解除されるまで、命令元の無線通信装置の通信エリア内に戻るように移動機構部を制御し、その間認証以外の操作を拒否し、ロックモード解除後は命令を継続して実行することを特徴とする請求項1または2記載の自律移動中継装置。
【請求項4】
前記制御手段は、命令元の無線通信装置から命令を受け取ると情報伝達中継時間用のタイマーを設定し、タイムアウトになると命令元の無線通信装置の通信エリア内に戻るように移動機構部を制御し、中継時間タイムアウト通知を命令元の無線通信装置に送信することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の自律移動中継装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の自律移動中継装置および自律移動中継装置を介して情報伝達を行う無線通信装置を備えた無線通信中継システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−54676(P2012−54676A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194023(P2010−194023)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】