説明

自然色、加水分解安定度及び溶融安定度を良好に兼備する耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物

本発明は、A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート(成分A+B+Cの合計量に基づいて10〜99重量部)、B)次の成分B.1とグラフト基材B.2を乳化重合によって反応させて得られるゴム変性グラフトポリマー(成分A+B+Cの合計量に基づいて1〜35重量部):B.1;少なくとも1種のビニルモノマー(5wt%〜95wt%)、B.2;10℃未満のガラス転移温度を示す1種または複数種のグラフト基材(95wt%〜5wt%)、C)ビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレート(成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜40重量部)、D)リン含有防炎加工剤(成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜50重量部)、E)酸性添加剤(成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜1.0重量部)、およびF)添加剤(成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜50重量部)を含有するポリカーボネート組成物であって(但し、成分D)および成分E)を含有しない該組成物の場合、グラフトポリマー分散体は噴霧乾燥または沈殿に際して、7未満のpH値を示す。)、10〜50個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のアルカリ塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩およびホスホニウム塩から成る群から選択される少なくとも1種の乳化剤を、使用するモノマーB.1とグラフト基材B.2の重量部単位の合計量(100重量部)に基づき、0.1重量部〜5重量部の割合でグラフト反応において使用すること、および成分B中に1種または複数種の該乳化剤が残存する該ポリカーボネート組成物に関する。また、本発明は、該ポリカーボネート組成物の調製方法と、成形体を製造するための該ポリカーボネート組成物の使用と、該成形体にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化重合法によって製造される特定のゴム含有グラフトポリマーを耐衝撃性改良剤として含有するポリカーボネート組成物、該ポリカーボネート組成物の調製方法と、成形体の製造における該ポリカーボネート組成物の使用、及び該成形体自体に関する。
【背景技術】
【0002】
耐衝撃性改良剤としてグラフトポリマーを含有するポリカーボネート組成物は、耐衝撃性改良剤、例えばABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマー)における純度と添加剤に応じて、加水分解および熱応力に対して種々の安定度を示す。例えば、B.S.パティー、L.ノバークおよびH.ファン著「ポリカーボネート/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンを基材とする混合物の熱安定度と加水分解安定度」ソサエティ・オブ・オートモーティブ・エンジニアズ(臨時増刊)SP(2005年)、SP-1960(プラスチック成分、加工および技術の発達)、第145頁〜第151頁において、改質剤としてエマルションABSを含有する場合に比べて、塊状ABSを含有する場合には顕著に優れた加水分解安定度と熱安定度を示すポリカーボネート組成物が記載されている。ポリカーボネート/エマルションABS組成物の挙動と、ポリカーボネート/塊状ABS組成物が示す挙動を比較した場合の違いは、塊状ABSと比べて、エマルションABSの調製工程には補助剤(例えば乳化剤、流動性改良剤、安定剤、塩など)として多数の化学物質(これらの化学物質にはポリカーボネートの分解を引き起こし得る化学物質も含まれる)を必要とするという事実に起因する。ポリカーボネート/塊状ABS組成物の更なる利点は、該組成物から成る成形品の着色において特に好ましい効果をもたらす格別に明るい固有色(自然色)を示すことである。しかしながら、耐衝撃性改良剤として塊状ABSを含有する組成物は、高温(例えば280℃〜300℃)において、加工安定度の低下を伴溶融粘度の大きな変動を示す場合が多い。
【0003】
耐衝撃性改良剤としてエマルジョングラフトポリマーを含有する特定のポリカーボネート組成物は、塊状ABSを含有するポリカーボネート組成物を上回るいくつかの技術的優位性、例えば表面品質(光沢)に関する技術的優位性を示すので、特定の用途においてエマルショングラフトポリマーを使用することが有利である。高い加水分解安定度と熱安定度を必要とする場合、使用するエマルショングラフトポリマーは、例えば、該ポリマー純度、該ポリマーの調製において使用する後処理(working-up process)、および該ポリマーの調製において幾らかの助剤を省略すること等の観点に関して、高い要求が満たされなければならない。
【0004】
例えば、欧州特許出願公開第0900827号明細書において、エマルショングラフトポリマーを含有すると共に、ポリカーボネートを分解する成分を実質的に含有しない、改良された熱安定度を示す耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物が開示されている。ポリカーボネートを分解する成分を実質的に含まないエマルジョングラフトポリマーを得るためには、乳化工程の各段階でこのような成分を完全に除去する必要か、あるいは、適当な後処理、例えばグラフト分散液の凝固後の洗浄によって、調製されたエマルショングラフトポリマーからこのような成分を完全に除去する必要がある。特に、カルボン酸塩を含有する助剤(例えば、乳化剤、緩衝液など)はポリカーボネートを分解するので、これらの助剤は使用しないことが必要である。欧州特許出願公開第0900827号明細書において開示されているポリカーボネート組成物は、硫酸塩および/またはスルホン酸塩含有乳化剤を使用して調製されるABS型およびMBS型のエマルショングラフトポリマーを含有する。これらの乳化剤は、得られる成形組成物の望ましくない変色を頻繁に引き起す。
【0005】
多種多様の乳化剤を用いて調製されたABS型のエマルショングラフトポリマーが、国際特許出願公開第99/01489号明細書に開示されている。これらを調製するために、特にカルボン酸塩を含有する常套の乳化剤が使用可能な乳化剤として記載されている。また、この特許明細書において特に明るいABS成形材料の調製方法が開示されており、該方法において、グラフトポリマーとマトリックス成分(SAN樹脂)中のアクリロニトリル含有量と加工方法が特に重要な役割を果たすとされている。該国際特許出願公開第99/01489号明細書は、特に黄変または茶変することもある傾向を示すエマルションABSを含有する組成物をとりわけ開示する。この黄変または茶変は、30より大きい値から、50を越えるまでの黄色度によって識別される。黄色度は種々の要因、とりわけ、ABS中のゴムおよびアクリロニトリルの含有量、乳化重合および後処理における添加剤、および成形組成物の処理条件と成形品の製造条件、並びに必要に応じて行われるグラフトポリマーの精製によって左右される。黄変または茶変は、例えば、射出成形を用いて加工する場合、または押出機で配合しながら添加剤を混合する場合などで生じる高温によって促進される。
【0006】
DSMによる技術パンフレット(インターネットサイト上で公開されている:www.dsm.com/en_US/downloads/dep/Xantar_brochure_01.pdf参照)において、以下の改良された特性を有するポリカーボネート/ABS組成物が記載されている:例えば、高強度と高い流動性の兼備、射出成形の間の金型への被覆物を減少させる改良された加工性、改良された表面品質、より安定な表面光沢、および、例えば、常套のポリカーボネート/ABS組成物の場合に比べてより明るい自然色。同じパンフレットにおいて、これらの改良ポリカーボネート/ABS組成物中に、特別に開発された高純度ABSを使用することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0900827号明細書
【特許文献2】国際特許出願公開第99/01489号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】B.S.パティー、L.ノバークおよびH.ファン著「ポリカーボネート/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンを基材とする混合物の熱安定度と加水分解安定度」ソサエティ・オブ・オートモーティブ・エンジニアズ(臨時出版)SP(2005年)、SP-1960(プラスチックの成分、加工および技術の発達)、第145頁〜第151頁
【非特許文献2】DSMによる技術パンフレット:www.dsm.com/en_US/downloads/dep/Xantar_brochure_01.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、耐衝撃性改良剤として少なくとも1種のエマルショングラフトポリマーを含有する耐衝撃性改良ポリカーボネート成形組成物を提供することであり、該組成物は、明るい自然色、高い加水分解安定度および優れた加工安定度を兼備することを特徴とし、さらに、該組成物は、耐衝撃性改良ポリカーボネート成形組成物が、効率的で環境に対して有利な調製方法で調製されたエマルショングラフトポリマーを含有するという条件を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くベキことに、以下の成分A)〜F)を含有する組成物が、上記の所望の緒特性を示すことが見出された:
A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート:
成分A+B+Cの合計量に基づいて10〜99重量部、好ましくは40〜95重量部、特に好ましくは50〜73重量部、
B)以下の成分B.1およびB.2から成るゴム変性グラフトポリマー:
成分A+B+Cの合計量に基づいて1〜35重量部、好ましくは4〜30重量部、特に好ましくは12〜20重量部、
B.1 少なくとも1種のビニルモノマー:5wt%〜95wt%、好ましくは30wt%〜90wt%、
B.2 10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満のガラス転移温度を示す1種または複数種のグラフト基材:95wt%〜5wt%、好ましくは70wt%〜10wt%、
C)ビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレート:
成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜40重量部、好ましくは1〜30重量部、特に好ましくは15〜25重量部、
D)リン含有防炎加工剤:
成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜50重量部、好ましくは1〜40重量部、特に好ましくは2〜30重量部、
E)酸性添加剤:
成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜1.0重量部、好ましくは0.01〜1.0重量部、特に好ましくは0.02〜0.5重量部、および
F)添加剤:
成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜50重量部、好ましくは0.5〜25重量部。
上記の成分Bは、乳化重合によって成分B.1とグラフト基材B.2とを反応させることにより得られる。成分D)および成分E)を含有しない組成物の場合、噴霧乾燥工程または沈殿に際して、得られるグラフトポリマー分散液は7未満のpH値を示す。上記組成物の特徴は、10〜50の個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のアルカリ塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩およびホスホニウム塩から成る群から選択される少なくとも1種の乳化剤を、使用されるモノマーB.1の重量部とグラフト基材B.2の重量部の合計(即ち100重量部)に基づき、0.1重量部〜5重量部、好ましくは0.3重量部〜2.5重量部、特に0.5重量部〜2.5重量部、特に好ましくは1.0重量部〜2.5重量部、最も好ましくは1.5重量部〜2.5重量部の割合でグラフト反応において使用すること、および成分B中に1種または複数種の該乳化剤が残存することである。本発明による上記組成物の成分の配合量は、A+B+Cの全成分の重量部合計が100となるように調整される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による上記成形組成物は、特に、成分Bの調製においてエマルショングラフトポリマーの精製工程(例えば、凝固したグラフトポリマーを、100倍量までの量の水で洗浄する工程)を省略できるので、エマルショングラフトポリマー(成分B)の調製方法を効率的に、しかも環境に対して有利に行なえるという点で、先行技術と相違する。驚くべきことに、得られるグラフトポリマー中に乳化剤が残存するにも拘わらず、本発明によるグラフトポリマー含有耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物が、良好な自然色と、高い加水分解安定度と優れた加工安定度を示すことが見出された。
【0012】
従って、本発明は、改良された特性を有する耐衝撃性改良ポリカーボネート成形組成物を製造するために高純度の衝撃改良剤を使用しなければならず、しかも、特に、該組成物からカルボキシレート含有助剤を完全に除去しなければならないという上記先行技術の技術的な不都合を克服する。
【0013】
また、本発明は、以下の成分A)〜F)を既知の方法により、逐次的または同時、約20℃(室温)または該温度よりも高温で混合し、次いで常套の装置(例えば内部ニーダー、押出機および二軸スクリューなど)を使用して260℃〜300℃の温度で溶融配合した後で溶融押出することによって、改良された自然色を示すと共に、良好な加水分解安定度と加工安定度を保持する耐衝撃性改良ポリカーボネート成形組成物の調製方法を提供する:
A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート:
10〜99重量部、好ましくは40〜95重量部、特に好ましくは50〜73重量部、
B)以下の成分B.1およびB.2から成るゴム変性グラフトポリマー:
1〜35重量部、好ましくは4〜30重量部、特に好ましくは12〜20重量部、
B.1 少なくとも1種のビニルモノマー:5wt%〜95wt%、好ましくは30wt%〜90wt%、
B.2 10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは-20℃未満のガラス転移温度を示す1種または複数種のグラフト基材:95wt%〜5wt%、好ましくは70wt%〜10wt%、
C)ビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレート:
0〜40重量部、好ましくは1〜30重量部、特に好ましくは15〜25重量部、
D)リン含有防炎加工剤:
成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜50重量部、好ましくは1〜40重量部、特に好ましくは2〜30重量部、
E)酸性添加剤:
成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜1.0重量部、好ましくは0.01〜1.0重量部、特に好ましくは0.02〜0.5重量部、および
F)添加剤:
成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜50重量部、好ましくは0.5〜25重量部。
該方法は、以下の第1工程(i)および第2工程(ii)を含む乳化重合によって成分B.1とグラフト基材B.2とを反応させることにより、耐衝撃性改良剤として使用されるゴム変性グラフトポリマー(成分B)を調製すること、および得られる湿潤グラフトポリマーを追加的な水で洗浄しないことを特徴とする:
(i) ゴムベースB.2をラジカル乳化重合によって水性分散液状態で直接調製するか、または水中に分散させ、
(ii)成分B.1とグラフト基材B.2の反応(以下「グラフト反応」という)を、以下の工程1)〜工程3)を含む乳化重合によっておこなう(ただし、成分D)および成分E)を含有しない組成物の場合、噴霧乾燥工程(3.1)または沈殿過程(3.2.1)で得られるグラフトポリマー分散液は7未満のpH値を示す。);
1)成分B.2を水中に分散させ、
2)10〜50個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のアルカリ塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩およびホスホニウム塩から成る群から選択される少なくとも1種の乳化剤:グラフトポリマーBの調製において使用されるモノマーB.1とグラフト基材B.2の重量部単位の合計量(即ち100重量部)に基づいて、0.1重量部〜5重量部、好ましくは0.3重量部〜2.5重量部、特に0.5重量部〜2.5重量部、特に好ましくは1.0重量部〜2.5重量部、最も好ましくは1.5重量部〜2.5重量部と、成分B.1によるモノマーおよびラジカル形成剤と、所望による分子量調整剤とを、工程(1)で得られたゴム基材分散液へ添加し、次いで、
3)以下の工程によって後処理をおこなう
3.1)噴霧乾燥工程または、
3.2)以下の過程を含む工程
3.2.1)沈殿および
3.2.2)分散水の分離。
本発明に係る上記組成物の成分の配合量は、A+B+Cの全成分の重量部合計が100となるように調整される。
【0014】
成分A
本発明における成分Aとして適当な芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは文献において既知であり、また、以下の文献に記載の既知の方法によって調製できる(芳香族ポリカーボネートの調製に関しては、例えば、シュネル著、「ポリカーボネートの化学および物理」インターサイエンスパブリッシャーズ謝発行、1964年並びに、独国特許公告第1495626号明細書、独国特許出願公開第2232877号明細書、同2703376号明細書、同2714544号明細書、同3000610号明細書および同3832396号明細書を参照されたい。また、芳香族ポリエステルカーボネートの調製に関しては、例えば、独国特許出願公開第3077934号明細書を参照されたい)。
【0015】
芳香族ポリカーボネートの調製は、例えば、ジフェノールと、炭酸ハロゲン化物(好ましくはホスゲン)および/または芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物(好ましくはベンゼンジカルボン酸二ハロゲン化物)とを、必要に応じて連鎖停止剤(例えばモノフェノール)を使用し、さらに、必要に応じて三官能性以上の分枝剤(例えばトリフェノールまたはテトラフェノール)を使用する界面法によって行われる。ジフェノールと、例えば、ジフェニルカーボネートとの反応による溶融重合法によって調製することも可能である。
【0016】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを調製するためのジフェノールは、好ましくは以下の化学式(I)で表されるジフェノールである:
【0017】
【化1】


(式中、Aは、単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデン、C〜C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、必要に応じてヘテロ原子を含有する別の芳香族環と縮合することもあるC〜C12−アリーレン、または以下の化学式(II)または(III)で表される基を示し、
【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

【0020】
Bは、それぞれ独立してC〜C12−アルキル(好ましくはメチル)、ハロゲン(好ましくは塩素および/または臭素)を示し、
xは、それぞれ相互に独立して、0、1または2を示し、
pは、1または0を示し、
また、式(II)において、
およびRは、各Xに応じてそれぞれ選択され、相互に独立して、水素またはC〜C−アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルを示し、
は、炭素を示し、および、
mは、4〜7の整数、好ましくは4または5を示す(但し、少なくとも一つの原子Xにおいて、RおよびRは共にアルキルを示す)。
【0021】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C〜C−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C〜C−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホンおよびα,α−ビス-(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン、ならびに環が臭素化および/または塩素化されたこれらの誘導体である。
【0022】
特に好ましいジフェノールには以下のものが含まれる:4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ-ジフェニルスルホンおよびこれらの二−および四臭素化または塩素化誘導体、例えば2,2−ビス−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンまたは2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン。2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0023】
ジフェノールは単独で用いてもよく、または任意の所望の混合物として使用してもよい。ジフェノールは、文献において既知であり、また文献において既知の方法によって調製できる。
【0024】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの調製に適当な連鎖停止剤は、例えば、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert−ブチルフェノール若しくは2,4,6−トリブロモフェノール、および長鎖アルキルフェノール、例えば4−[2−(2,4,4−トリメチルペンチル)]−フェノール、独国特許出願公開第2842005号明細書に記載の4−(1,3−テトラメチルブチル)−フェノール、またはアルキル置換基中に合計で8〜20個の炭素原子を有するジアルキルフェノール若しくはモノアルキルフェノール、例えば3,5−ジ−tert−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノールおよび2−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールである。使用される連鎖停止剤の量は、具体的に使用されるジフェノールのモル数の合計に基づき、一般的に0.5モル%〜10モル%である。
【0025】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw;例えば、GPC、超遠心法または散乱光測定によって測定される値)は、10000〜200000g/モル、好ましくは15000〜80000g/モル、特に好ましくは24000〜32000g/モルである。
【0026】
既知の方法によって、好ましくは3官能性以上の化合物(例えば、3以上のフェノール性基を有する化合物)を、使用するジフェノールの合計量に基づいて0.05〜2.0モル%の割合で組み込むことにより、熱可塑性芳香族ポリカーボネートを分枝化させてもよい。
【0027】
ホモポリカーボネートとコポリカーボネートが適当である。本発明による成分Aとしてのコポリカーボネートを調製するために、ヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを、使用するジフェノールの総量に基づいて1〜25wt%、好ましくは2.5〜25wt%の量で使用することも可能である。この種の化合物は既知であり(米国特許第3419634号明細書参照)、また、該文献に記載の方法によって調製することができる。ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートの調製は、独国特許出願公開第3334782号明細書に記載されている。
【0028】
ビスフェノールAのホモポリカーボネート以外の、好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAと、先に言及した好ましいか、若しくは特に好ましいジフェノール以外のジフェノール(含有量:全ジフェノールのモル数の合計に基づいて15モル%以下)、特に、2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとのコポリカーボネートである。
【0029】
芳香族ポリエステルカーボネートを調製するための芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物は、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。
【0030】
1:20〜20:1の割合で、イソフタル酸二酸二塩化物とテレフタル酸二酸二塩化物の混合物を使用する態様が特に好ましい。
【0031】
また、ポリエステルカーボネートの調製において、炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲンを二官能性酸誘導体として付随的に使用する。
【0032】
上述のモノフェノールの他に、芳香族ポリエステルカーボネートを調製するための連鎖停止剤として、脂肪族C〜C22−モノカルボン酸塩化物、必要に応じてC〜C22−アルキル基またはハロゲン原子によって置換された芳香族モノカルボン酸の酸塩化物、および上述のモノフェノールのクロロ炭酸エステルも使用できる。
【0033】
連鎖停止剤の量は、フェノール性連鎖停止剤の場合、ジフェノールのモル数に基づき0.1〜10mol%であり、モノカルボン酸塩化物連鎖停止剤の場合、ジカルボン酸二塩化物のモル数に基づき0.1〜10mol%である。
【0034】
芳香族ポリエステルカーボネートは、該カーボネートに組み込まれた芳香族ヒドロキシカルボン酸も含有することができる。
【0035】
芳香族ポリエステルカーボネートは、直鎖であってもよく既知の方法で分枝させてもよい(これに関しては、独国特許出願公開第2940024号明細書および同3007934号明細書を参照されたい)。
【0036】
ここで使用できる分岐剤は、使用するジカルボン酸二塩化物に基づいて0.01〜1.0mol%量の、3官能性以上のカルボン酸塩化物、例えばトリメシン酸三塩化物、シアヌル酸三塩化物、3,3’-4,4’−ベンゾフェノン−テトラカルボン酸四塩化物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸四塩化物またはピロメリット酸四塩化物等である。あるいは、使用するジフェノールに基づいて0.01〜1.0mol%量の、3官能性以上のフェノール、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノール、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチル−ベンジル)−4−メチル−フェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル]−フェノキシ)−メタンおよび1,4−ビス[4,4’−(ジヒドロキシトリフェニル)−メチル]−ベンゼン等である。フェノール性分枝剤はジフェノールと共に最初から使用でき、酸塩化物分枝剤は酸二塩化物と共に導入できる。
【0037】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中のカーボネート構造単位の含量は、所望通りに変化できる。カーボネート基の含量は、エステル基とカーボネート基との合計量に基づいて、好ましくは100モル%以下、特に80モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。芳香族ポリエステルカーボネート中に含有されるエステルとカーボネートは、ブロック状またはランダム状に分布した状態で、重縮合生成物中に存在できる。
【0038】
芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートの相対溶液粘度(ηrel)は、1.18〜1.4、好ましくは1.20〜1.32の範囲である(塩化メチレン溶液100ml中に0.5gのポリカーボネートまたは0.5gのポリエステルカーボネートを溶解させた溶液を使用し、25℃で測定した)。
【0039】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは単独で使用してもよく、所望の混合物として使用してもよい。
【0040】
成分B
成分Bは、以下の成分B.1およびB.2から成る1種または複数種のグラフトポリマーを含有する:
B.1 少なくとも1種のビニルモノマー、5wt%〜95wt%、好ましくは30wt%〜90wt%、
B.2 10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは-20℃未満のガラス転移温度を示す1種または複数種のグラフト基材、95wt%〜5wt%、好ましくは70wt%〜10wt%。
この場合、10〜50の個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のアルカリ塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩およびホスホニウム塩から成る群から選択される乳化剤を使用して、成分B.1(以下において「グラフト担体」とも称する)とグラフト基材B.2との反応を乳化重合(「グラフト反応」)によって行うことを特徴とする。
【0041】
グラフト基材B.2は、一般に0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.2〜0.8μmの平均粒径(d50値)を有する。
【0042】
モノマーB.1は、好ましくは以下の成分B.1.1およびB.1.2の混合物である:
B.1.1 ビニル芳香族化合物および/または環置換ビニル芳香族化合物(例えばスチレン、αメチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン等)および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等):50〜99重量部、
B.1.2
ビニルシアニド(不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート)および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)、例えば無水マレイン酸およびN−フェニル−マレイミド:1〜50重量部。
【0043】
好ましいB.1.1モノマーは、スチレン、α-メチルスチレンおよびメチルメタクリレートモノマーの少なくとも1種から選択され、好ましいB.1.2モノマーは、アクリロニトリル、無水マレイン酸およびメチルメタクリレートモノマーの少なくとも1種から選択される。特に好ましいモノマーは、B.1.1の場合スチレンであり、B1.2の場合アクリロニトリルである。
【0044】
グラフトポリマーBの調製に適するグラフト基材B.2は、例えばジエンゴム、EP(D)Mゴム(すなわちエチレン/プロピレンおよび所望によるジエンに基づくゴム)、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレン、およびエチレン/ビニルアセテートゴムである。
【0045】
好ましいグラフト基材B.2は、例えばブタジエンおよびイソプレンに基づくジエンゴム、またはジエンゴムの混合物若しくはジエンゴムのコポリマー若しくはこれらと別の共重合性モノマー(例えば、B.1.1およびB.1.2によるモノマー)の混合物である。なお、成分B.2のガラス転移温度は、10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−10℃未満である。純粋なポリブタジエンゴムが特に好ましい。
【0046】
グラフト基材B.2のゲル含有量は、少なくとも30wt%、好ましくは少なくとも40wt%である(25℃のトルエン中で測定した値)。
【0047】
グラフト基材B.2は、重合、例えば乳化重合、懸濁重合、溶液重合または塊重合によって調製され、好ましくは乳化重合によって調製される。
【0048】
既知のように、グラフトモノマーは、グラフト反応中にグラフト基材上に必ずしも完全にグラフト化される訳ではないので、本発明によるグラフトポリマーBは、グラフト基材の存在下でグラフトモノマーを(共)重合させて得られる生成物、および後処理の間に付随して得られる生成物も意味する。
【0049】
ポリマーBを調製するためのB.2に適するアクリレートゴムは、好ましくは、アクリル酸アルキルエステルのポリマー(該ポリマーは、所望により、B.2に基づき40wt%以下の別の重合性エチレン性不飽和モノマーとのコポリマーであってもよい)である。好ましい重合性アクリル酸エステルとしては以下のものが含まれる:C〜C−アルキルエステル、例えばメチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロ−C〜C−アルキルエステル、例えばクロロエチルアクリレート、およびこれらのモノマーの混合物。
【0050】
架橋するために、2個以上の重合性二重結合を有するモノマーを共重合させることができる。架橋モノマーの好ましい例は、3個〜8個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸および3個〜12個の炭素原子を有する不飽和一価アルコールのエステル、または2個〜4個のOH基と2個〜20個の炭素原子を有する飽和ポリオール、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレート;ポリ不飽和複素環化合物、例えばトリビニルおよびトリアリルシアヌレート;多官能性ビニル化合物、例えばジ−およびトリビニルベンゼン;ならびにトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。好ましい架橋モノマーは、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、および少なくとも三つのエチレン性不飽和基を含有する複素環化合物である。特に好ましい架橋モノマーは、環状モノマーであるトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジンおよびトリビニルベンゼンである。架橋モノマーは単独で使用してもよく、混合物で使用してもよい。架橋モノマーの量は、グラフト基材B.2に基づいて、好ましくは0.02〜5wt.%、特に0.05〜2wt.%である。少なくとも三つのエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合、該モノマー量をグラフト基材B.2の1wt%未満に制限することが有効である。
【0051】
グラフト基材B.2の調製において、アクリル酸エステルに加えて、必要に応じて使用できる好ましい「別の」重合性エチレン性不飽和モノマーは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリルアミド、ビニルC〜C−アルキルエーテル、メチルメタクリレートおよびブタジエンである。グラフト基材B.2として好ましいアクリレートゴムは、ゲル含量が少なくとも40wt%(25℃のトルエン中で測定した値)のエマルジョンポリマーである。
【0052】
B.2による別の適当なグラフト基材は、グラフト活性部位を有するシリコーンゴムであり、これらは、例えば独国特許(DE-OS)3704657号明細書、同3704655号明細書、同3631540号明細書および同3631539号明細書に記載されている。
【0053】
グラフト基材B.2のゲル含量は、適当な溶媒(例えばトルエン)中において25℃で測定される(M.ホフマン、H.クレマー,R.クーン著、「ポリマー分析IおよびII」、ゲオルク・ティーメ出版社、シュトゥットゥガルト、1977年)。
【0054】
平均粒度d50は、該値の上下に50wt%の粒子が存在するときの直径である。この値は、超遠心測定によって測定できる(W.ショルタン、H.ランゲ著「コロイダルZ.およびZ.ポリメーレ、第250巻」(1972年)、第782頁−第796頁)。
【0055】
成分Bは、以下の方法によって得ることができる:
第1工程:ゴム基材B.2の調製
グラフト基材B.2を乳化重合法によって調製できることが、先行技術から、当業者に知られている。重合は、通常20℃〜100℃、好ましくは30℃〜80℃でおこなわれる。常套のアニオン性乳化剤、例えば、アルキル−もしくはアルキルアリール−スルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルスルフェート、脂肪アルコールスルフェート、10〜50個の炭素原子を有する高級カルボン酸の塩、スルホサクシネート、エーテル−スルホネートまたはレジネートが一般的に使用される。アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、スルホサクシネート、脂肪酸または10個〜30個の炭素原子を有するカルボン酸のアルカリ金属塩、特にNa塩およびK塩が一般的に使用される。
【0056】
本発明において、ゴム基材(成分B.2)を調製するための乳化剤の選択は、当業者に既知の基準、例えばラテックスの剪断安定度およびラテックス粒子の性質、粒度、粒度分布、粘度、残留モノマー含量およびゲル含量等に依存する。従って、欧州特許出願公開第0900827号明細書の教示とは対照的に、本発明における該選択は、ポリカーボネートを分解する成分の排除に依存しない。本発明によれば、イオン性乳化剤、好ましくはアルキル−若しくはアルキルアリール−スルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルスルフェート、脂肪アルコールスルホネート、10〜50個の炭素原子を有する高級カルボン酸の塩、スルホサクシネート、エーテル−スルホネートまたはレジネート、特に好ましくは樹脂酸のアルカリ金属塩、10個〜30個の炭素原子を有する高級脂肪酸のアルカリ金属塩、(例えば独国特許出願公開第3639904号明細書に記載の)特定のジカルボン酸のアルカリ金属塩、またはイオン性乳化剤および非イオン性乳化剤の混合物を使用して、当業者に既知の方法によって成分B.2が調製される。通常、ゴム基材の調製に使用されるモノマーの重量部単位の合計量に基づき、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、特に好ましくは0.3〜2.5重量部の乳化剤が用いられる。
【0057】
第2工程:成分B.1およびB.2から成分Bを調製するためのグラフト反応
本発明によるポリカーボネート組成物に使用するエマルショングラフトポリマーBの調製において、グラフト反応に用いる乳化剤の選択は重要である。驚くべきことに、例えば国際特許出願公開第99/01489号A1明細書に記載の特に明色のABS成形組成物用のグラフトポリマーを調製するための全ての常套の乳化剤が該グラフト反応において使用できるわけではないことが判明した。本発明による目的を達成するためには、10〜50個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のアルカリ塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩およびホスホニウム塩から成る群から選択される、少なくとも1種の乳化剤のみが該グラフト反応において使用される。もちろん、これらの乳化剤は、グラフト基材(上記第1工程参照)の調製における開始段階から使用できるので、グラフト重合工程において、これらの添加を必要に応じて省略してもよい。
【0058】
本発明によるポリカーボネート組成物の成分Bを調製するための好ましい実施態様において、グラフト反応における乳化剤として、10個〜30個の炭素原子を有する飽和モノカルボン脂肪酸のアルカリ金属塩を少なくとも1種使用し、特に好ましくは以下の酸のアルカリ金属塩を使用する:カプリン酸(C19COOH)、ラウリン酸(C1123COOH)、ミリスチン酸(C1327COOH)、パルミチン酸(C1531COOH)、マルガリン酸(C1633COOH)、ステアリン酸(C1735COOH)、アラキン酸(C1939COOH)、ベヘン酸(C2143COOH)、リグノセリン酸(C2347COOH)、またはセロチン酸(C2551COOH)。上記乳化剤を混合物として使用してもよい。特に好ましい実施態様において、12個〜18個の炭素原子を有する飽和モノカルボン脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩、好ましくはC1735COONaまたはC1735COOKがグラフト反応において使用される。
【0059】
分散液を良好に安定させるために、上記乳化剤を単独で使用してもよく、相互に混合して使用してもよく、あるいは、当業者に既知の別の非イオン性乳化剤と併用してもよい。
【0060】
グラフト反応のための乳化剤は、グラフトポリマーBの調製において使用されるモノマーB.1とグラフト基材B.2の重量部単位合計量に基づいて、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜2.5重量部、特に0.5〜2.5重量部、特に好ましくは1.0〜2.5重量部、最も好ましくは1.5〜2.5重量部の量で使用される。
【0061】
重合反応を開始するための適当なラジカル生成剤(以下、重合開始剤ともいう)は、選択した反応温度で分解する全てのラジカル生成剤である。すなわち、単に熱的に分解するラジカル生成剤および酸化還元系の存在下で分解するラジカル生成剤である。好ましくは、ラジカル生成剤として例えば過酸化物、好ましくはペルオキソ硫酸塩(例えばペルオキソ二硫酸ナトリウムまたはペルオキソ二硫酸カリウム)または酸化還元系、特にヒドロペルオキシド、例えばクメンヒドロペルオキシドまたはtert−ブチルヒドロペルオキシドに基づくものを使用する。一般的に、重合開始剤は、グラフト担持モノマー(B.1)に基づいて0.05wt%〜1wt%の量で使用する。
【0062】
分子量調節剤として、例えばエチルヘキシルチオグリコレート、n−もしくはtert−ドデシルメルカプタンおよび/または別のメルカプタン、テルピノールおよび/またはα−メチルスチレン二量体および/または分子量を調節するのに適する別の化合物などを使用できる。
【0063】
グラフト反応の第1工程において、調製後の成分B.2が水性分散液形態で存在しない場合には成分B.2を水中に分散させ、あるいは成分B.2を水で希釈する。グラフトポリマー分散液を調製するために使用する水の量は、好ましくは、グラフト反応が完結したときに20〜50wt%の固形分を含有する分散液が得られるように調整される。
【0064】
第2工程において、ラジカル生成剤、乳化剤および必要に応じた分子量調節剤をグラフトポリマー分散液に添加する。これらの助剤(すなわち、ラジカル生成剤、乳化剤および分子量調節剤)は、反応開始時にその全量を不連続的に添加してもよく、あるいは複数回に分けてその一部を反応開始時に添加した後、1または複数のその後の段階で残部を添加してもよく、または一定の時間をおいて逐次的に添加してもよい。助剤の逐次的添加は、経時的な勾配に沿って、例えば添加量を増加させながら若しくは減少させながら、直線的若しくは指数関数的、または段階的におこなってもよい。
【0065】
重合において分子量調節剤を使用する場合、これらを、グラフト基材B.2の調製において記載した方法、グラフト担体B.1の調製において記載した方法、またはグラフト基材B.2およびグラフト担体B.1の調製において記載した方法、例えば、反応開始時にその全量を不連続的に添加する方法、該分子量調節剤を複数回に分けてその一部を反応開始時に添加した後、1または複数のその後の段階で残部を添加する方法、または一定の時間をおいて逐次的に添加する方法で添加することができる。助剤の逐次的添加は、経時的な勾配、例えば添加量を増加させながら若しくは減少させながら、直線的若しくは指数関数的、または段階的におこなってもよい。
【0066】
一定のpH値(好ましくは3〜11)を維持するために、緩衝物質、例えばNHHPOP/NaHPO、炭酸水素ナトリウム、単純な酸(例えば酢酸、クエン酸)、または苛性アルカリ溶液(例えばNaOH、KOH)等を併用することができる。
【0067】
第3工程:後処理
後処理は噴霧乾燥、または沈殿と分散水の分離によっておこなわれる。
【0068】
3.1)噴霧乾燥による後処理
噴霧乾燥の場合、分散液を事前に凝固させることなく、空気中または不活性ガス中で微細液滴に変換させる。次いで、これらを空気または不活性ガスの対向流中で乾燥させて、粉末を得る。その結果、全助剤の100%が最終生成物中に残留する。
【0069】
3.2)沈殿と分散水の分離による後処理
グラフト反応工程において得られたエマルショングラフトポリマーBの分散液の後処理は、後処理したグラフトポリマー純度に対して特別な考慮を払うことなく、当業者に既知の方法によっておこなわれる。
【0070】
3.2.1)沈殿
例えば、グラフトポリマーBを、先ず分散液から沈殿させる。該沈殿操作は、例えば、塩溶液(例えば塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、ミョウバン)の添加、沈殿作用を有する酸(例えば酢酸、塩酸、リン酸または硫酸)の添加、凍結(凍結凝固)、または例えば回転子/固定子系によってもたらされる高剪断力若しくは狭い間隙から分散液を押出すことによってもたらされる高剪断力による凝固(いわゆる剪断沈殿)によっておこなわれる。好ましい態様においては、沈殿作用を有する添加剤として、硫酸マグネシウム、特に好ましくは硫酸マグネシウム/酢酸溶液を添加することによって、グラフトポリマーBを分散液から沈殿させる。
【0071】
3.2.2)分散水の分離
得られた水相を、常套の方法、例えば篩分け、濾過、デカンテーションまたは遠心分離により分離する。分散水を分離した後、通常60wt%までの残留水を有する湿潤グラフトポリマーが得られる。
【0072】
先行技術と異なり、本発明による湿潤グラフトポリマーは水で洗浄されない。本発明方法によると、助剤(例えば、乳化剤、ラジカル形成剤の分解生成物、緩衝物質など)を除去しないか、またはこれらの一部を分離するだけであるので、助剤の大部分(100%まで)がグラフトポリマー中に残存し、その結果として最終生成物(すなわち湿潤グラフトポリマー)中に該助剤が残存する。
【0073】
噴霧乾燥過程(3.1)または沈殿過程(3.2.1)において、グラフトポリマー分散液を後処理する間のpH値は、当業者に既知の方法、例えば緩衝液または鉱酸の添加、好ましくは、硫酸、リン酸、硝酸およびC〜Cカルボン酸(例えば酢酸)からなる群から選択される1種または複数種の酸を添加することによって調整できる。本発明による組成物が成分Eによる酸性添加剤を含有しなければならないかどうかは、噴霧乾燥過程または沈殿過程においてグラフトポリマー分散液を後処理する間のpH値に左右される:
a)沈殿または噴霧乾燥が酸性媒体中(すなわちpH値が7未満)で行われる場合、本発明による組成物は、成分Dによるリン含有防炎加工剤および/または成分Eによる酸性添加剤を含有することができる。
b)沈殿または噴霧乾燥が中性または塩基性条件下(即ちpH値が7以上)で行われる場合、成分Dによるリン含有防炎加工剤および/または成分Eによる酸性添加剤を含有しなければならない。
【0074】
成分C
成分Cは、一種または複数種の熱可塑性ビニル(コ)ポリマーC.1および/またはポリアルキレンテレフタレートC.2を含有する。
【0075】
適当なビニル(コ)ポリマーC.1は、ビニル芳香族化合物、ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーのポリマーである。以下のC.1.1とC.1.2の(コ)ポリマーが特に適当である:
C.1.1 ビニル芳香族化合物および/または環置換ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p−クロロスチレンおよび/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレートおよびエチルメタクリレート、50〜99重量部、好ましくは60〜80重量部と、
C.1.2 ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよびtert−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸、例えばマレイン酸、および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)、例えば無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド、1〜50重量部、好ましくは20〜40重量部。
【0076】
ビニル(コ)ポリマーC.1は、樹脂状であり、熱可塑性を示し、ゴムを含有しない。C.1.1スチレンとC.1.2アクリロニトリルとのコポリマーが特に好ましい。
【0077】
C.1による(コ)ポリマーは既知であり、ラジカル重合、特に乳化重合、懸濁重合、溶液重合または塊重合によって調製できる。好ましくは、該(コ)ポリマーは15000〜200000の平均分子量Mw(光散乱または沈降によって決定される重量平均分子量)を有する。
【0078】
成分C.2のポリアルキレンテレフタレートは、芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘導体(例えばジメチルエステルもしくは無水物)と、脂肪族、脂環式または芳香族-脂肪族ジオールとの反応生成物、並びにこれらの反応生成物の混合物である。
【0079】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基を、ジカルボン酸成分に基づいて少なくとも80wt%、好ましくは少なくとも90wt%含有し、エチレングリコール基および/または1,4-ブタンジオール基を、ジオール成分に基づいて少なくとも80wt%、好ましくは少なくとも90wt%含有する。
【0080】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基に加えて、8個〜14個の炭素原子を有する別の芳香族もしくは脂環式ジカルボン酸基、または4個〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸基、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸もしくはシクロヘキサン二酢酸基を、20mol%まで、好ましくは10mol%まで含有することができる。
【0081】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、エチレングリコール基または1,4-ブタンジオール基に加えて、3個〜12個の炭素原子を有する別の脂肪族ジオール基または6個〜21個の炭素原子を有する脂環式ジオール基、例えば、1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−エチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,4−ジ−(β−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル-シクロブタン、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシエトキシ-フェニル)−プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシ-プロポキシフェニル)−プロパンの残基を、20mol%まで、好ましくは10mol%まで含有してもよい(独国特許出願公開第2407674号明細書、同2407776号明細書および同2715932号明細書参照)。
【0082】
比較的少量の3−もしくは4−価アルコールまたは3−もしくは4−塩基性カルボン酸を組み込むことにより、ポリアルキレンテレフタレートを分枝させてもよい(例えば独国特許出願公開第1900270号明細書および米国特許(US-PS)第3692744号公報に記載されている)。好ましい分枝剤の例は、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールである。
【0083】
テレフタル酸およびこれらの反応性誘導体(例えば、これらのジアルキルエステル)とエチレングリコールおよび/または1,4−ブタンジオールのみから調製されるポリアルキレンテレフタレート、およびこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物が特に好ましい。
【0084】
ポリアルキレンテレフタレートの混合物は、1〜50wt%、好ましくは1〜30wt%のポリエチレンテレフタレートと、50〜99wt%、好ましくは70〜99wt%のポリブチレンテレフタレートとを含有する。
【0085】
一般的に、好ましく使用されるポリアルキレンテレフタレートの極限粘度は、ウッベローデ粘度計を用いて、25℃においてフェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1重量部)中で測定した場合、0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.2dl/gである。
【0086】
該ポリアルキレンテレフタレートは、既知の方法で調製できる(例えば、プラスチックハンドブック、第VIII巻、第695頁以降、カール−ハンサー出版社、ミュンヘン、1973年参照)。
【0087】
成分D
好ましくは、本発明の範囲に含まれるリン含有防炎加工剤(D)は、モノマー性およびオリゴマー性のリン酸エステルおよびホスホン酸エステル、ホスホネートアミンおよびホスファゼンからなる群から選択されるが、これらの群の一種類以上から選択される複数種の成分の混合物を、防炎加工剤として使用してもよい。ハロゲン不含リン化合物(詳細は省略)を、単独で使用してもよく、または所望により、別のハロゲン不含リン化合物と組合せて使用してもよい。
【0088】
好ましいモノマー性およびオリゴマー性のリン酸エステルおよびホスホン酸エステルは、下記の一般式(IV)で表される含リン化合物である:
【0089】
【化4】


(式中、R、R、RおよびRは、相互に独立して、所望によりハロゲン化したC〜C−アルキル−、C〜C−シクロアルキル、C〜C20−アリールまたはC〜C12−アラルキルを示し(いずれの場合も所望によりアルキル(好ましくはC〜C−アルキル)および/またはハロゲン(好ましくは塩素または臭素)で置換されていてもよい)、
nは、相互に独立して0または1を示し、
qは、0〜30を示し、および、
Xは、6個〜30個の炭素原子を有する単核もしくは多核芳香族基、またはOH置換されていてもよく、また、8個までのエーテル結合を含有してもよい2個〜30個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状脂肪族基を示す。
【0090】
好ましくは、R、R、RおよびRは、相互に独立して、C〜C−アルキル、フェニル、ナフチルまたはフェニル−C〜C−アルキルを示す。芳香族基R、R、RおよびRは、それぞれ、ハロゲンおよび/またはアルキル基、好ましくは塩素、臭素および/またはC〜C−アルキルで同様に置換されていてもよい。特に好ましいアリール基は、クレシル、フェニル、キシレニル、プロピルフェニルまたはブチルフェニル、およびこれらの対応する臭素化および塩素化誘導体である。
【0091】
Xは、式(IV)において、好ましくは6個〜30個の炭素原子を有する単核もしくは多核芳香族基を示す。好ましくは、該基は、式(I)で表されるジフェノールから誘導される。この場合、式(IV)におけるnは、相互に独立して、0または1であり、好ましくは、nは1である。
【0092】
qは、0〜30、好ましくは0.3〜20、特に好ましくは0.5〜10、特に0.5〜6、最も特に好ましくは1.0〜1.6の値を示す。
【0093】
Xは、特に好ましくは、以下の式で表される化合物、またはこれらの塩素化または臭素化誘導体である。特に、Xは、レソルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールAまたはジフェニルフェノールから誘導される。Xは、特に好ましくはビスフェノールAから誘導される。
【0094】
【化5】

【0095】
また、種々のホスフェート混合物を本発明による成分Dとして使用できる。
【0096】
式(IV)で表される含リン化合物は、特に、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、ジフェニルクレシルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、ジフェニル−2−エチルクレシルホスフェート、トリ−(イソプロピルフェニル)ホスフェート、レソルシノール架橋オリゴホスフェート、およびビスフェノールA架橋オリゴホスフェートである。ビスフェノールAから誘導され、式(IV)で表されるオリゴマーのリン酸エステルを使用することが特に好ましい。
【0097】
成分Dとして最も好ましいものは、式(IVa)で表される、ビスフェノールAに基づくオリゴホスフェートである。
【0098】
【化6】

【0099】
成分Dによ含リン化合物は、既知であり(例えば欧州特許出願公開第0363608号明細書、同0640655号明細書参照)、または既知の方法と類似した方法で調製してもよい(例えば、ウルマンズ工業化学百科事典、第18巻、第301頁以降、1979年;ホウベン・ヴェイル、有機化学研究法、第12巻第1号、第43頁;バイルシュタイン、第6巻、第177頁参照)。
【0100】
異なる含リン化合物の混合物を使用する場合、およびオリゴマー性含リン化合物を使用する場合、示されるq値は、q値の平均値である。q値の平均値は、適当な方法(ガスクロマトグラフィー(GC)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC))を用いて含リン化合物の組成(分子量分布)を測定し、得られた結果からqの平均値を算出することにより決定される。
【0101】
ホスホネートアミンおよびホスファゼン(国際特許出願第00/00541号明細書および同01/18105号明細書に記載されている)も、防炎加工剤として使用できる。
【0102】
防炎加工剤は、単独で用いてもよく、また、所望の混合物として用いてもよく、あるいは別の防炎加工剤と混合して用いてもよい。
【0103】
成分Dによるリン含有防炎加工剤は、痕跡量の酸(例えばリン酸、酸性のリン酸エステル)を含有し、KOHで滴定して得られる酸価(物質1g当りのKOH濃度(mg))によって定量化でき、該値は、一般的に、0.01〜1mg KOH/物質1g、好ましくは0.01〜0.5mg KOH/物質1g、特に好ましくは0.03mg KOH/物質1g〜0.3mg KOH/物質1gの範囲である。
【0104】
成分E
好ましくは、成分Eによる酸性添加剤は、以下の群から選択される少なくとも1種の酸である:脂肪族モノカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸、芳香族モノカルボン酸および芳香族ジカルボン酸、ヒドロキシ官能化ジカルボン酸、リン酸、酸性のリン酸塩、およびカリウム塩。クエン酸、シュウ酸、テレフタル酸、若しくはこれらの化合物の混合物が好ましい。クエン酸が特に好ましい。
【0105】
本発明による組成物は、成分Fとして別の市販の添加剤、例えば防炎相乗剤、成分B以外のゴム変性グラフトポリマー、防滴剤(例えばフッ素化ポリオレフィン類、シリコーン類およびアラミド繊維類)、滑剤および離型剤(例えば、ペンタエリトリトールテトラステアレート)、成核剤、安定剤、帯電防止剤(例えば導電性ブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、有機帯電防止剤、例えばポリアルキレンエーテル、アルキルスルホネートまたはポリアミド含有ポリマー)、酸、充填剤および強化物質(例えば、グラスファイバーまたはカーボンファイバー、マイカ、カオリン、タルク、CaCOおよびガラスフレーク)並びに着色剤および顔料等を含有してもよい。
【0106】
好ましくは、成分B以外のグラフトポリマーは、ラジカル重合、例えば乳化重合、懸濁重合、溶液重合または塊重合によって調製され、乳化重合の場合、飽和脂肪酸のアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩以外の乳化剤が使用される。溶液重合若しくは塊重合によって調製される成分B以外のグラフトポリマーが好ましい。
【0107】
成形組成物および成形体の調製
本発明による熱可塑性成形組成物は、本発明による成分を既知の方法で混合した後、常套の装置(例えば内部ニーダー、押出機および二軸押出機など)を用いて該混合物を260℃〜300℃の温度で溶融配合し、次いで該配合物を溶融押出することによって調製される。
【0108】
個々の成分は、約20℃(室温)またはこれよりも高い温度で、既知の方法により逐次的に若しくは同時に混合できる。
【0109】
また、本発明は、該成形組成物の調製方法と、成形体の製造における該成形組成物の使用と、成形体自体も提供する。
【0110】
本発明による成形組成物は、任意の種類の成形体の製造に使用できる。該成形体は、射出成形法、押出成型法およびブロー成形法によって製造することができ。別の加工態様は、予め成形したシートまたはフィルムから深絞りによって成形体を製造する態様である。
【0111】
このような成形体の例としては以下のものが含まれる:フィルム、異形材、任意の種類の流延成形部品、例えば家庭電化製品(例えば、テレビ、果汁圧搾機、コーヒーマシーンおよびミキサーなど)、事務機器(例えば、モニター、フラットスクリーン、ノートパソコン、プリンターおよびコピー機など)、建築領域(内部建具および外装)用のシート、パイプ、電気設備用ダクト、窓、ドア、および電気部品および電子部品(例えば、スイッチ、プラグおよびソケット)、並びに市販の車両(特に自動車)の車体および内部部品。
【0112】
また、本発明による成形組成物は、特に、例えば、以下の成形体または成形品の製造において使用することができる:鉄道車両、船舶、航空機、バスおよびその他の動力車用の内装部材、小型変圧器を含む電気装置の外装、情報の処理および伝達用装置の外装、医療機器、マッサージ機器およびこれらの外装用の外装および被覆材、子供用乗物玩具、組立壁板、安全装置用およびテレビ用の外装、断熱性輸送用コンテナ、衛生用装備品および浴室用装備品、換気口用格子および園芸用具用の外装。
【0113】
以下の実施例により、本発明を更に例示的に説明する。
【実施例】
【0114】
成分A
A.1:重量平均分子量Mが27500g/モル(25℃、CHCl溶液中でGPCによって測定した値)である、ビスフェノールAに基づく線状ポリカーボネート。
A.2:重量平均分子量Mが28500g/モル(25℃、CHCl溶液中でGPCによって測定した値)である、ビスフェノールAに基づく線状ポリカーボネート。
【0115】
成分B
B型のエマルショングラフトポリマー
下記のグラフトポリマーの実施例における全ての重量部単位は、下記の各グラフトポリマーおいて、グラフト基材(ポリブタジエン)の重量部とグラフトモノマー(スチレンおよびアクリロニトリル)の重量部の合計が100重量部となるように標準化されている。水、乳化剤、開始剤およびその他の助剤の量は、グラフト基材とグラフトモノマーとの重量部単位の合計量(=100重量部)に基づく。
【0116】
基本手順(I):
第1工程:ゴム基材B2の調製:
独国特許3913509号A1明細書(実施例1)に記載されている特定のTCDのナトリウム塩乳化剤の存在下で、ブタジエンをラジカル乳化重合させることによって、成分B(エマルショングラフトポリマー)を調製するために使用する粒子状の架橋ゴム基材を調製した。このようにして得られたポリブタジエン基材B2は、350nmの平均重量平均粒度d50を示し、該基材は、25wt%の固形分を含有するポリマーラテックス形態で次の反応工程に使用される。
【0117】
第2工程:成分Bの調製
60重量部のB2と、0重量部〜3重量部の特定の乳化剤(後述の特定のグラフトポリマー欄を参照)とを、窒素条件下で65℃まで加熱し、次いで、20重量部の水に溶解させた0.5重量部のペルオキソ二硫酸カリウムと、20重量部の水に溶解させた0.3重量部の水酸化ナトリウムとを添加する。その後、30重量部のスチレンと10重量部のアクリロニトリルとの混合物を、4時間に亘って計量供給することによってグラフト反応を行う。計量供給が完了した後、1時間かけて系の温度を80℃まで上昇させ、次いで、混合物を80℃で更に3時間かけて攪拌する。その後、調製したグラフトポリマー分散体を後処理に付す(第3工程)。
【0118】
第3工程:後処理:
2重量部の硫酸マグネシウムと100重量部の水から成る沈殿溶液、または2重量部の硫酸マグネシウムと1重量部の酢酸と100重量部の水から成る沈殿溶液中において、95℃でグラフトポリマー分散体を沈殿させる。次いで、該分散体を濾取した後、必要に応じて洗浄し(すなわち、比較例の場合)、得られた粉末を、残留水分含量が0.5未満になるまで、真空条件下、70℃で乾燥させる。
【0119】
基本手順(II):
第1工程:ゴム基材B2の調製:
基本手順(I)における上記工程1と同様にして行う。
【0120】
第2工程:成分Bの調製
60重量部のB2と、0重量部〜3重量部の特定な乳化剤(後述の特定のグラフトポリマー欄を参照)とを、窒素条件下、65℃まで加熱し、次いで、20重量部の水に溶解させた0.4重量部のtert-ブチルヒドロペルオキシドと、20重量部の水に溶解させた0.5重量部のアスコルビン酸ナトリウムとを4時間に亘って計量供給する。これと同時に、30重量部のスチレンと10重量部のアクリロニトリルとの混合物を、4時間に亘って計量供給することによってグラフト反応を行う。スチレンとアクリロニトリルの計量供給が完了した後、5重量部の水に溶解させた0.1重量部のtert-ブチルヒドロペルオキシドと、5重量部の水に溶解させた0.125重量部アスコルビン酸ナトリウムとを1時間に亘って計量供給し、次いで、系の温度を1時間かけて80℃まで上昇させる。混合物を80℃で更に3時間かけて攪拌する。その後、調製したグラフトポリマー分散体を後処理に付す(第3工程)。
【0121】
第3工程:後処理:
2重量部の硫酸マグネシウムと100重量部の水から成る沈殿溶液、または2重量部の硫酸マグネシウムと1重量部の酢酸と100重量部の水から成る沈殿溶液中において、95℃でグラフトポリマー分散体を沈殿させる。次いで、該分散体を濾取した後、必要に応じて洗浄し(すなわち、比較例の場合)、得られた粉末を、残留水分含量が0.5未満になるまで、真空条件下、70℃で乾燥させる。
【0122】
グラフトポリマーB(1)〜B(30)の調製:
【0123】
グラフトポリマーB(1):
基本手順(I)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/水から成る
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、洗浄は行わない。
【0124】
グラフトポリマーB(2):
基本手順(I)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、洗浄は行わない。
【0125】
グラフトポリマーB(3):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、洗浄は行わない。
【0126】
グラフトポリマーB(4):
基本手順(II)に従い調製する。
第2段階:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3段階:
(a)沈殿:凝固と凝固物の後処理:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、洗浄は行わない。
【0127】
グラフトポリマーB(5):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)1.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該凝固物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0128】
グラフトポリマーB(6):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該凝固物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0129】
グラフトポリマーB(7):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)3.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該凝固物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0130】
グラフトポリマーB(8):
基本手順(I)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、次いで、該凝固物を多量の蒸留水(すなわち、ポリマー1kgあたり約20リットルの蒸留水)で1回洗浄する。
【0131】
グラフトポリマーB(9):
基本手順(I)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、次いで、該凝固物を多量の蒸留水(すなわち、ポリマー1kgあたり約20リットルの蒸留水)で1回洗浄する。
【0132】
グラフトポリマーB(10):
基本手順(I)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該凝固物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0133】
グラフトポリマーB(11):
基本手順(I)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該凝固物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0134】
グラフトポリマーB(12):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、多量の蒸留水(すなわち、ポリマー1kgあたり約20リットルの蒸留水)で1回洗浄する。
【0135】
グラフトポリマーB(13):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾過溶液が生成)、多量の蒸留水(すなわち、ポリマー1kgあたり約20リットルの蒸留水)で1回洗浄する。
【0136】
グラフトポリマーB(14):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該固形物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0137】
グラフトポリマーB(15):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ステアリン酸のカリウム塩(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該固形物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0138】
グラフトポリマーB(16)(比較):
基本手順(I)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:乳化剤を使用せずにグラフト重合をおこなった。
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該凝固物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0139】
グラフトポリマーB(17)(比較):
基本手順(I)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:不均化樹脂酸のナトリウム塩乳化剤(アビエータ・ケミ社製のドレシネート731)1重量部を使用して、グラフト重合をおこなった。
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、洗浄は行わない。
【0140】
グラフトポリマーB(18)(比較):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:不均化樹脂酸のナトリウム塩乳化剤(アビエータ・ケミ社製のドレシネート731)1重量部を使用して、グラフト重合をおこなった。
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、洗浄は行わない。
【0141】
グラフトポリマーB(19)(比較):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:不均化樹脂酸のナトリウム塩乳化剤(アビエータ・ケミ社製のドレシネート731)2重量部を使用して、グラフト重合をおこなった。
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、洗浄は行わない。
【0142】
グラフトポリマーB(20)(比較):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ドデシル硫酸ナトリウム(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、洗浄は行わない。
【0143】
グラフトポリマーB(21)(比較):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ドデシル硫酸ナトリウム(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、洗浄は行わない。
【0144】
グラフトポリマーB(22)(比較):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ドデシル硫酸ナトリウム(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、多量の蒸留水(すなわち、ポリマー1kgあたり約20リットルの蒸留水)で1回洗浄する。
【0145】
グラフトポリマーB(23)(比較):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ドデシル硫酸ナトリウム(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、多量の蒸留水(すなわち、ポリマー1kgあたり約20リットルの蒸留水)で1回洗浄する。
【0146】
グラフトポリマーB(24)(比較):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ドデシル硫酸ナトリウム(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該凝固物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0147】
グラフトポリマーB(25)(比較):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ドデシル硫酸ナトリウム(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該凝固物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0148】
グラフトポリマーB(26)(比較):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ドデシル硫酸ナトリウム(シグマ-アルドリッチ社製)1.5重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該凝固物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0149】
グラフトポリマーB(27)(比較):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ダウファックス2A1(スルホン化ジフェニルエーテル誘導体のナトリウム塩)(シグマ-アルドリッチ社製)1.5重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該凝固物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0150】
グラフトポリマーB(28)(比較):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ダウファックス2A1(スルホン化ジフェニルエーテル誘導体のナトリウム塩)(シグマ-アルドリッチ社製)2.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水からなる。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該凝固物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0151】
グラフトポリマーB(29)(比較):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ダウファックス3B2(スルホン化ジフェニルエーテル誘導体のナトリウム塩)(シグマ-アルドリッチ社製)1.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該凝固物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0152】
グラフトポリマーB(30)(比較):
基本手順(II)に従い調製する。
第2工程:乳化剤:ドデシル硫酸ナトリウム(シグマ-アルドリッチ社製)1.0重量部
第3工程:
(a)沈殿:沈殿溶液は硫酸マグネシウム/酢酸/水から成る。
(b)分離:沈殿後に得られる凝固物を濾取し(約20リットルの濾液が生成)、入念に洗浄する(すなわち、該凝固物を蒸留水中に4回懸濁させ、その後濾取し、多量の蒸留水(ポリマー1kgあたり合計で約80リットルの蒸留水)で洗浄する)。
【0153】
成分C.1
130kg/モル(GPCで測定)の重量平均分子量Mを有する、75wt%のスチレンと25wt%のアクリロニトリルから成るコポリマーを、塊重合法で調製した。
【0154】
成分D.1
ビスフェノールAジフェニルジホスフェート:グレートレイク社製のレオホスBAPP(成分Eの範囲に該当する酸を痕跡量含有する。酸価:当該物質1g当り0.06mgKOH)
【0155】
成分E
クエン酸(無水物)(DSM社製)
【0156】
成分F
F.1 滑剤/離型剤としてのペンタエリトリトールテトラステアレート
F.2 ホスファイト安定剤、「イルガノックス(登録商標)B 900」(チバ・スペシャリティーケミカル社製)
F.3 滑剤/離型剤としてのステアリン酸マグネシウム、(シグマ-アルドリッチ社製)
F.4 ポリ(ペルフルオロエチレン)PTFE、「ポリフロンFA-500」(ダイキン社製)
F.5 ベーマイト「プラール(Pural) 200」(サソール社製)
F.6 「サンタック(登録商標)AT08」(日本エイアンドエル社製(塊重合法で調製したABS))
F.7 「マグナム(登録商標)3904」(ダウケミカル社製(塊重合法で調製したABS))
【0157】
成形組成物の調製および試験
表1〜3に記載した組成物を、1.5リットルの内部ニーダー内で調製する。
【0158】
【表1】

【0159】
【表2】

【0160】
【表3】

【0161】
ASTM規格E-313-96(光の種類:C、観測器:2°、測定開口部:大面積値)に従って、60×40×2mmのカラーサンプルシート上の黄色度指数(YI)を、式 YI=(128X−106Z)/Y [式中、X、YおよびZはDIN5033による色座標を示す。]によって決定することにより、固有色/自然色を評価した。
【0162】
調製した組成物の加水分解安定度の尺度として、95℃で相対湿度100%の条件下での7日間の貯蔵(FWL貯蔵)に付した粒体について、荷重5kgで260℃(防炎加工剤を含有するPC/ABS組成物の場合240℃)の条件下で、ISO1133に従って測定した溶融体積流量(MVR)の変化率を使用する。対応する貯蔵前のMVR値と比較したMVR値の増加率を、以下の式で定義されるΔMVR(hydr.)として算出する:
【0163】
【数1】

【0164】
調製した組成物の加工安定度の尺度として、温度300℃空気を遮断した条件下において、荷重5kgで15分間滞留させた溶融物について、防炎加工剤を含有しないPC/ABS組成物の場合は260℃において、また、防炎加工剤を含有するPC/ABS組成物の場合は240℃において、ISO1133に従って測定した溶融体積流量(MVR)の変化率を使用する。得られるパラメータΔMVR(prc.)は、以下の式によって算出される:
【0165】
【数2】

【0166】
湿潤状態で貯蔵した後で得られた結果(加水分解安定度)と、300℃で貯蔵した後で得られた結果(加工安定度)を、表4および表5に集約した(この場合、表1および表2に従って調製したポリカーボネート組成物、すなわち、防炎加工剤を含有しない該組成物を使用した)。
【0167】
本発明による全ての組成物2、3および5〜17は、260℃で射出成形した成形体について測定した場合、例外なく、黄色度指数が30未満の良好な固有色を示す。これらの組成物2、3および5〜17を、組成物18(該組成物中の成分B16は乳化剤を使用せずに調製した)と比較した場合、本発明によるポリカーボネート組成物の固有色に対する、脂肪酸乳化剤(ステアリン酸カリウム)のプラスの効果は明白であり、該組成物18に関して測定した黄色度指数は、著しく高い33を示す(260℃/80℃で射出成形した成形体についての値)。本発明による組成物2、3および5〜17の黄色度指数を、樹脂酸に基づく乳化剤で調製した成分Bを含有する比較組成物19〜22の黄色度指数(260℃/80℃で射出成形した成形体のYIは30より大きい)と比較した場合、この場合においても、本発明による組成物は良好な未加工色を示す。このことは、一般的なカルボン酸塩含有乳化剤(樹脂酸誘導体も含む)から、飽和脂肪酸に基づく乳化剤を選択することが、耐衝撃性改良成分としてエマルショングラフトポリマーを含有するポリカーボネート組成物において、良好な自然色を得るために重要であることを意味する。組成物23のみが黄色度指数28を示す(このことは、ステアリン酸マグネシウムを添加したことに起因すると説明できる)が、該組成物は、加水分解安定度と溶融安定度または加工安定度の著しい低下を引き起している。
【0168】
本発明による組成物2、3および5〜17を、先行技術において既知である組成物24〜36(これらの組成物は、欧州特許出願公開第0900827号明細書によれば、塩基性不純物を実質的に含有せず、ポリカーボネートを分解させない)と比較した場合、全ての比較組成物から260℃/80℃での射出成形によって調製された成形体は30よりも著しく大きい黄色度指数(最大で56)を示すことが観察される。また、比較例による組成物は、後処理工程でエマルショングラフトコポリマーBを洗浄した場合においてのみ、良好な加水分解粘度および溶融粘度を示すことが判明した。本発明による組成物2、3および5〜17は、組成物24〜36と比較した場合、全ての場合においては顕著に優れた自然色を示し、また、いくつかの場合においては比較的良好な加水分解安定度と著しく優れた溶融安定度若しくは加工安定度を示す。
【0169】
本発明による組成物の自然色は、300℃の高い加工温度(該温度は、ポリカーボネート成形組成物の加工においては珍しいことではない)でさえ、自然色の劣化は極めて小さい。例えば、組成物3のYI値は26(260℃/80℃で射出成形した場合)から32に増加し、別の例、例えば組成物6の場合、YI値は22から24に増加した。
【0170】
耐衝撃性改良成分として純粋な塊状グラフトポリマーのみを含有するポリカーボネート組成物37および38(表5参照)だけが、260℃と300℃のいずれの温度においても非常に明るい自然色(8>黄色度指数>4)を示し、同時に、6から10%へのMVR値の増加により特徴づけられる優れた加水分解安定度を示す。しかしながら、これらの組成物は比較的低い溶融安定度若しくは加工安定度を示しており、いくつかの場合においては、該安定度は、本発明による組成物の対応する安定度と比べて著しく劣っている。
【0171】
組成物1および4の場合には、酸性条件下(pH<7)で成分Bのエマルショングラフトポリマーを後処理すること、または溶融配合によってポリカーボネート成形組成物を調製する際に酸含有添加剤を使用することを必要とする。例えば、組成物2および4は、260℃で射出成形した場合に黄色度指数が30未満である良好な自然色を示すが、より高い温度では著しく茶色に変色し、該組成物を300℃で射出成形した場合、60以上のYI値を示す。また、組成物2および4の加水分解安定度と溶融安定度は、本発明による組成物の該安定度と比べて著しく低く、乳化重合体を酸で後処理するか、または成形組成物に酸性添加剤が添加された。
【0172】
成分BによるABSエマルションの後処理においてマグネシウム塩を使用する場合、該マグネシウム塩はカルボン酸塩含有乳化剤と結合する。本願の実施例においては、乳化剤としてステアリン酸カリウムを使用するので、沈殿中にステアリン酸マグネシウムが形成される。一方、飽和脂肪酸のマグネシウム塩は、プラスチック加工における滑剤として頻繁に使用されている。比較組成物22および23の場合、溶融混合物中に0.4重量部のステアリン酸マグネシウムを使用した。該量は、実施例B(1)〜B(15)のグラフトエマルションの凝固に際し形成されるステアリン酸マグネシウム量に対応する。組成物23の場合、塩基性成分を中和させる酸を更に使用した。得られた結果によると、組成物22は、自然色がより劣ると共に、加水分解安定度、溶融安定度および加工安定度が極めて低いという点で、本発明による全組成物2、3および5〜17と異なることが判明した。比較組成物23に関して、使用した酸の中和作用を示す。260℃および300℃で射出成形した場合、該組成物の自然色は悪影響を受けず、非常に明るい色が保持された(28以上で30以下のYI値を示す)。しかしながら、加水分解安定度と、溶融安定度若しくは加工安定度は非常に低い。このことは、明らかに次の相違を示す。即ち、飽和脂肪酸に基づく乳化剤を含有する本発明による組成物は、良好な固有色(自然色)と、良好な加水分解安定度と、良好な溶融安定度若しくは加工安定度を示すが、添加剤として飽和脂肪酸のマグネシウム塩を含有する組成物は、著しく低い加水分解安定度、溶融安定度若しくは加工安定度とを示し、一部の組成物に係る固有色は劣る。
【0173】
表6に、防炎加工剤を含有するPC/ABS組成物の性質を集約する。実施例による組成物の場合、成分Bとして、ABS塊状重合体(F.6)に加えて、ごく少量のエマルショングラフトポリマーを使用した。防炎加工剤(D.1)が酸性基(当該物質1gあたり0.06mgの酸価)を有するので、付加的な酸性添加剤を添加する必要がない。これらの実施例は、本発明による組成物39〜42が良好な固有色と共に、良好な加水分解安定度と、優れた溶融安定度若しくは加工安定度をもたらすことを示す。少量のエマルショングラフトポリマーと比べて、成分B中に樹脂酸乳化剤を含有する比較組成物43は、300℃で著しく劣る自然色(黄色度指数は31である)を示す。比較組成物44にステアリン酸マグネシウムを添加した結果、自然色は改善されたが、該組成物の加水分解安定度は著しく低下したが、溶融安定度および加工安定度は、優れたレベルに維持された。
【0174】
これら全ての実施例は、耐衝撃性改良剤として少なくとも1種のエマルショングラフトポリマーを含有する新規なポリカーボネート成形組成物を提供するという本発明の目的を満たす。該組成物は、明るい自然色、高い加水分解安定度および優れた加工安定度を併せ持つことを特徴とする。更に、該組成物は、耐衝撃性が改良されたポリカーボネート成形組成物が、効率的かつ環境に対して有利な調製方法で調製されるエマルショングラフトポリマーを含有するという条件もさらに満たしている。
【0175】
【表4】

【0176】
【表5】

【0177】
【表6】

【0178】
【表7】

【0179】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分A)〜F)を含有する組成物であって(但し、成分D)および成分E)を含有しない組成物の場合、噴霧乾燥または沈殿に際して、グラフトポリマー分散液は7未満のpH値を示す。)、
10〜50個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のアルカリ塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩およびホスホニウム塩から成る群から選択される少なくとも1種の乳化剤を、使用するモノマーB.1とグラフト基材B.2の重量部単位の合計量(100重量部)に基づき、0.1重量部〜5重量部の割合でグラフト反応において使用すること、および成分B中に1種または複数種の該乳化剤が残存することを特徴とする該組成物:
A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート:
成分A+B+Cの合計量に基づいて10〜99重量部、
B)次の成分B.1およびグラフト基材B.2を乳化重合によって反応させて得られるゴム変性グラフトポリマー:
成分A+B+Cの合計量に基づいて1〜35重量部;
B.1 少なくとも1種のビニルモノマー:5wt%〜95wt%、
B.2 10℃未満のガラス転移温度を示す1種または複数種のグラフト基材:95wt%〜5wt%、
C)ビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレート:
成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜40重量部
D)リン含有防炎加工剤:
成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜50重量部、
E)酸性添加剤:
成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜1.0重量部、および
F)添加剤:
成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜50重量部。
【請求項2】
10〜50の個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のアルカリ塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩およびホスホニウム塩から成る群から選択される少なくとも1種の乳化剤を、使用するモノマーB.1とグラフト基材B.2の重量部単位の合計量(100重量部)に基づき、0.3重量部〜2.5重量部の割合でグラフト反応において使用することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
10〜50の個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のアルカリ塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩およびホスホニウム塩から成る群から選択される少なくとも1種の乳化剤を、使用するモノマーB.1とグラフト基材B.2の重量部単位の合計量(100重量部)に基づき、1.5重量部〜2.5重量部の割合でグラフト反応において使用することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
以下の酸のアルカリ金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、グラフト反応において乳化剤として使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組成物:
カプリン酸(C19COOH)、ラウリン酸(C1123COOH)、ミリスチン酸(C1327COOH)、パルミチン酸(C1531COOH)、マルガリン酸(C1633COOH)、ステアリン酸(C1735COOH)、アラキン酸(C1939COOH)、ベヘン酸(C2143COOH)、リグノセリン酸(C2347COOH)、またはセロチン酸(C2551COOH)。
【請求項5】
A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート:
10〜99重量部、
B)以下の成分B.1およびB.2から得られるゴム変性グラフトポリマー:
1〜35重量部:
B.1 少なくとも1種のビニルモノマー:5wt%〜95wt%、
B.2 10℃未満のガラス転移温度を示す1種または複数種のグラフト基材:95wt%〜5wt%、
C)ビニル(コ)ポリマーおよび/またはポリアルキレンテレフタレート:
0〜40重量部、
D)リン含有防炎加工剤:
成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜50重量部、
E)酸性添加剤:
成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜1.0重量部、および
F)添加剤:
成分A+B+Cの合計量に基づいて0〜50重量部
を既知の方法により、逐次的または同時に、約20℃(室温)または該温度よりも高温で混合し、次いで、内部ニーダー、押出機および二軸スクリューのような常套の装置を使用して260℃〜300℃の温度で溶融配合した後に溶融押出することにより、
改良された自然色を示すと共に、更に、良好な加水分解安定度と加工安定度を保持する耐衝撃性が改良されたポリカーボネート成形組成物の調製方法であって、
(1)
以下の第1工程(i)および第2工程(ii)を含む乳化重合によって、成分B.1とグラフト基材B.2とを反応させることにより調製される該ゴム変性グラフトポリマー(成分B)を衝撃性改良剤として使用すること:
(i) ゴム基材B.2をラジカル乳化重合で水性分散液の状態で直接的に調製するか、またはゴム基材B.2を水中に分散させ、次いで、
(ii)成分B.1とグラフト基材B.2の反応(以下「グラフト反応」という)を、以下の工程1)〜工程3)を含む乳化重合によっておこなう(ただし、成分D)および成分E)を含有しない組成物の場合、噴霧乾燥工程(3.1)または沈殿過程(3.2.1)において、グラフトポリマー分散液は、7未満のpH値を示す。);
1)成分B.2を水中に分散させ、
2)グラフトポリマーBの調製において使用されるモノマーB.1とグラフト基材B.2の重量部単位の合計量(100重量部)に基づいて、0.1重量部〜5重量部の乳化剤であって、10〜50個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のアルカリ塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩およびホスホニウム塩から成る群から選択される少なくとも1種の該乳化剤と、成分B.1によるモノマーと、ラジカル形成剤と、所望による分子量調整剤とを、工程1)で得られたゴム基材分散液へ添加し、次いで、
3)以下の工程によって後処理工程をおこなう;
3.1)噴霧乾燥工程または、
3.2)以下の過程を含む工程
3.2.1)沈殿および
3.2.2)分散水の分離、ならびに
(2)
得られる湿潤グラフトポリマーを追加的な水で洗浄しないことを特徴とする該調製方法。
【請求項6】
10〜50個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のアルカリ塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩およびホスホニウム塩から成る群から選択される少なくとも1種の乳化剤を、使用するモノマーB.1とグラフト基材B.2の重量部単位の合計量(100重量部)に基づき、0.2重量部〜2.5重量部の割合でグラフト反応において使用することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
10〜50個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のアルカリ塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩およびホスホニウム塩から成る群から選択される少なくとも1種の乳化剤を、使用するモノマーB.1とグラフト基材B.2の重量部単位の合計量(100重量部)に基づき、1.5重量部〜2.5重量部の割合でグラフト反応において使用することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
以下の酸のアルカリ金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、グラフト反応において乳化剤として使用することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の方法:
カプリン酸(C19COOH)、ラウリン酸(C1123COOH)、ミリスチン酸(C1327COOH)、パルミチン酸(C1531COOH)、マルガリン酸(C1633COOH)、ステアリン酸(C1735COOH)、アラキン酸(C1939COOH)、ベヘン酸(C2143COOH)、リグノセリン酸(C2347COOH)、またはセロチン酸(C2551COOH)。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の方法によって得ることができる成形品および/または半製品。
【請求項10】
成形品または半製品の製造における請求項1〜4のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物または請求項9によって得られる成形品および/または半製品を含有する成形体。

【公表番号】特表2011−515545(P2011−515545A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501129(P2011−501129)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001896
【国際公開番号】WO2009/118114
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】