説明

自発光表示装置および電子機器

【課題】 長時間にわたって同じ画像を表示する常時発光領域と、その周囲の領域との間で輝度ムラが生じることを防止する。
【解決手段】 自発光表示装置200は、自発光素子ELを含む画素PXが複数配置されると共に、劣化モニター対象となる第1領域120と、第1領域120の周囲に位置する第2領域123とが設定されている画素部110と、第1領域120の発光輝度の経時変動を検出するためのダミー画素130を含む輝度センサー部135と、輝度センサー部135の検出信号に基づいて、第1領域120に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度と、第2領域123に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度との差が縮小するように、第1領域120に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度および第2領域123に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度の少なくとも一方を補正する経時劣化補償部14と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光表示装置および電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子の経時劣化の対策例としては、例えば、特許文献1および特許文献2に記載されている。特許文献1の技術では、表示パネルの実際の総電流をモニターし、その総電流が目標の電流に近づくように画像補正を実行する。特許文献2の技術では、画素部に設けた複数のダミー画素の各々の発光量を調整し、表示パネルの発光面の温度分布を均一化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−271755号公報
【特許文献2】特開2006−18170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自発光素子である有機EL素子は、例えば長時間発光し続けると、電流−電圧(I−V)特性が変化して輝度が上昇し、焼き付き等による表示画像の画質劣化の原因となる。例えば、画素部(表示領域)のうちの一部の領域だけに、長時間にわたって同じ画像を表示(点灯)する場合、その一部の領域において焼き付きが生じる。その焼き付きが生じた部分と、その周囲の部分との間で表示画像の輝度に差が生じて輝度ムラが発生する。
【0005】
例えば、車両に備え付けられた有機EL表示パネルが、車両の走行時には計器類を表示し、非走行時には、ナビゲーション画像やテレビ画像を表示する場合がある。計器類の外周、目盛りあるいは数字等の表示領域は常に発光しており、かつその表示データはめったに変更されない。したがって、車両の走行が長時間にわたる場合、計器類の外周、目盛りならびに数字等を表示している部分の有機EL素子の特性変動(特性劣化)が激しくなり、焼き付きが発生する可能性がある。焼き付きが生じた後、表示画像が計器類の画像からナビゲーション画像やテレビ画像に切り換えられた場合、計器類の表示によって焼き付きが生じた部分の輝度は正確な輝度から許容範囲を超えて変動し、本来、高精細な画像であるべきナビゲーション画像やテレビ画像等の画質を低下させる可能性がある。
【0006】
特許文献1および特許文献2に記載される技術は、表示パネル上の画像の全体の補正を行う技術であり、その補正制御システムの構成がかなり複雑化するのは否めない。また、それらの技術は、上記のような、長時間の発光等に伴う、局所的(部分的)な領域における焼き付き等に起因する画質劣化については何ら考慮されておらず、したがって、効率的かつ効果的な対策を行うという点では不十分である。
【0007】
本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、長時間にわたって同じ画像を表示する常時発光領域と、その周囲の領域との間で輝度ムラが生じることを効率的かつ効果的に防止することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の自発光表示装置の一態様は、自発光素子を含む画素が複数配置されており、かつ、劣化モニター対象となる第1領域と、前記第1領域の周囲に位置する第2領域とが設定されている画素部と、前記画素部における前記第1領域の発光輝度の経時変動を検出するための、前記第1領域に含まれる少なくとも一つの画素と同じ発光条件で発光するダミー画素を含む輝度センサー部と、前記輝度センサー部の検出信号に基づいて、前記第1領域に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度と、前記第2領域に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度との差が縮小するように、前記第1領域に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度および前記第2領域に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度の少なくとも一方を補正する経時劣化補償部と、を含む。
【0009】
本態様では、画素部(表示領域)において、予め劣化モニター対象となる第1領域が設定される。上述の例でいえば、例えば、計器類の外周、目盛りならびに数字等を表示している部分が第1領域(劣化モニター領域)として設定される。また、予め第1領域の周囲に位置する第2領域(周囲領域)が設定される。この第2領域は、例えば、第1領域に含まれる画素の発光輝度の経時変動によって輝度ムラが生じると予測される部分の中から、予め選択される。第2領域としては、上述の例でいえば、例えば計器類の針を表示している部分(例えば必要なときにのみ表示される)や背景部分(例えば発光輝度が極めて弱く劣化が少ない部分)が該当する。輝度センサー部は、第1領域に含まれる少なくとも一つの画素と同じ発光条件(例えば、表示色、表示輝度ならびに表示タイミング等)で発光するダミー画素を含む。第1領域は、複数の画素から構成されるため、例えば、そのうちの代表的な画素(例えば、最も劣化が激しいと予想される画素)の発光条件をダミー画素の発光条件とすることができる。具体的には、例えば、ダミー画素は、第1領域の代表画素の駆動信号に同期した駆動信号によって同時に駆動され、かつ、代表画素用の表示データ電圧と同一の表示データ電圧によって発光する(但し、一例であり、これに限定されるものではない)。輝度センサーは、例えば、ダミー画素の消費電流を検出して、輝度変動の程度(つまり、発光素子の特性劣化の程度)をモニターする。あるいは、ダミー画素の発光を受光素子によって受光し、受光量を電気信号に変換することによって輝度変動をモニターすることもできる。
【0010】
経時劣化補償部は、輝度センサー部の検出信号に基づいて、第1領域(劣化モニター領域)に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度と、第2領域(周囲領域)に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度との差が縮小するように、第1領域に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度および第2領域に含まれる少なくとも一つの画素の少なくとも一方の発光輝度を補正する。第1領域は、例えば設計段階で予め特定することができるため、第1領域の位置情報(画素部における座標、フレームメモリーにおけるアドレス等)は予め特定することができ、同様に、第2領域の位置情報も予め特定することができる。よって、その位置情報を、例えばROM等に格納しておけば、経時劣化補償の際に、各領域を区別することは可能である。
【0011】
例えば、計器類の外周、目盛りならびに数字等を表示している部分を第1領域とし、その周囲に配置される針の部分や計器類の背景部分を第2領域とし、長時間の計器類の表示によって第1領域に焼き付きが生じているような場合においては、例えば、第1領域の発光輝度を下げて、第2領域の発光輝度との差を小さくして、輝度ムラが目立たないようにすることができる。また、例えば、第2領域の輝度を上昇させて、第1領域の発光輝度との差を縮小して輝度ムラを抑制することもできる。また、第1領域の輝度を下げ、これと並行して第2領域の発光輝度を上げ、これによって輝度ムラを抑制してもよい。このとき、第2領域において、例えば、計器類の背景部分は人の視覚に与える影響が小さいのであれば、針の部分のみの発光輝度を上昇させるという方法を採用し、輝度補正の対象領域を最小限化することもできる。
【0012】
本態様では、経時劣化が激しい部分に着目して、その部分と周囲との境界付近の領域の輝度を、集中的に補正するため、補正対象となる画素の規模を小さく抑えることができ、補正回路の負担も軽減される。経時劣化補償によって、例えば、長時間にわたって同じ画像を表示する常時発光領域と、その周囲の領域との間で輝度ムラが生じることを効率的かつ効果的に防止することができる。
【0013】
(2)本発明の自発光表示装置の他の態様では、前記経時劣化補償部は、前記第1領域に含まれる全画素の発光輝度の平均値と、前記第2領域に含まれる全画素の発光輝度の平均値との差が縮小するように、前記第1領域に含まれる全画素の発光輝度および前記第2領域に含まれる全画素の発光輝度の少なくとも一方を補正する。
【0014】
本態様では、第1領域および第2領域に含まれる全画素が、経時劣化補償処理(画像補正処理)の対象となる。経時劣化補償部は、第1領域に含まれる全画素の発光輝度の平均値と、前記第2領域に含まれる全画素の発光輝度の平均値との差が縮小するように、第1領域に含まれる全画素の発光輝度および第2領域に含まれる全画素の発光輝度の少なくとも一方を補正する。これによって、第1領域の全体の輝度レベルと第2領域の全体の輝度レベルとの差が縮小されるため、第1領域に含まれる画素の発光特性が、画素回路等の特性の経時劣化に伴って変動したとしても輝度ムラが抑制され、したがって、画質の低下が防止される。
【0015】
(3)本発明の自発光表示装置の他の態様では、前記経時劣化補償部は、前記第1領域に含まれる、一または複数の特定画素の発光輝度と、前記第2領域に含まれる、一または複数の特定画素の発光輝度との差が縮小するように、前記第1領域に含まれる前記特定画素の発光輝度および前記第2領域に含まれる前記特定画素の発光輝度の少なくとも一方を補正する。
【0016】
本態様では、第1領域および第2領域に含まれる全画素のうちの特定画素(1または複数の画素)が、経時劣化補償処理(画像補正処理)の対象となる。経時劣化補償部は、第1領域に含まれる、一または複数の特定画素の発光輝度と、第2領域に含まれる、一または複数の特定画素の発光輝度との差が縮小するように、第1領域に含まれる特定画素の発光輝度および第2領域に含まれる特定画素の発光輝度の少なくとも一方を補正する。本態様では、例えば、特定画素の個数を制限して、経時劣化補償部の負担を軽減することができる。本態様では、どの位置にある画素を特定画素として選択するかを慎重に検討し、例えば、最小限度の数の画素の発光輝度の補正で、最大限の輝度ムラ抑制効果を得るようにすることが望ましい。
【0017】
(4)本発明の自発光表示装置の他の態様では、前記第1領域の位置情報および前記第2領域の位置情報のうちの少なくとも一方を記憶している位置情報記憶部をさらに有し、前記経時劣化補償部は、前記位置情報記憶部に記憶されている前記第1領域の位置情報および前記第2領域の位置情報の少なくとも一方を参照して、前記画素部に供給される画像データの中から、前記第1領域に含まれる少なくとも一つの画素用の第1の画像データおよび前記第2領域に含まれる少なくとも一つの画素用の第2の画像データの少なくとも一方を認識し、前記第1の画像データおよび前記第2の画像データの少なくとも一方を、前記輝度センサー部の検出信号に基づいて補正する。
【0018】
第1領域は、例えば設計段階で予め特定することができるため、第1領域の位置情報(画素部における座標、フレームメモリーにおけるアドレス等)は予め特定することができ、同様に、第2領域の位置情報も予め特定することができる。本態様では、その位置情報を、例えばROM等(位置情報記憶部)に格納しておき、経時劣化補償の際に、経時劣化補償部が、第1領域の位置情報および第2領域の位置情報のうちの少なくとも一方を参照して、前記画素部に供給される画像データの中から、前記第1領域に含まれる少なくとも一つの画素用の第1の画像データおよび前記第2領域に含まれる少なくとも一つの画素用の第2の画像データの少なくとも一方を認識し(つまり、両者を区別して認識し)、第1の画像データおよび第2の画像データの少なくとも一方を、輝度センサー部の検出信号に基づいて補正する。
【0019】
(5)本発明の自発光表示装置の他の態様では、前記経時劣化補償部は、前記輝度センサー部の検出信号に基づいて補正データを算出し、算出された補正データを用いた演算処理によって、前記第1の画像データおよび前記第2の画像データの少なくとも一方を補正する。
【0020】
本態様では、経時劣化補償処理の一例が示される。すなわち、経時劣化補償部は、輝度センサー部の検出信号に基づいて補正データを算出し、算出された補正データを用いた演算処理によって、第1の画像データおよび第2の画像データの少なくとも一方を補正する。例えば、経時劣化補償処理部は、輝度センサー部の検出信号に基づいて、長時間の発光によって上昇した第1領域における画素の輝度を低下させるための補正データΔCDを生成し、その補正データΔCD(負データ)を、第1領域用の画像データに、加算器を用いて加算するというような処理を実行することができる。また、例えば、輝度センサー部から出力される検出信号に基づいて補正係数を生成し、その補正係数を第1領域用の画像データに乗算するというような補正方法を採用することもでき、また、算出された補正データを利用した、所定の演算式による補正演算によって画像データを補正することもできる。これらの補正方法は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0021】
(6)本発明の自発光表示装置の他の態様では、前記自発光表示装置は複数の種類の画像を表示することができ、前記経時劣化補償部は、前記画素部における表示画像を第1の画像から第2の画像に切り換える場合に、前記第2の画像の表示期間において前記経時劣化補償を実行する。
【0022】
本態様では、表示画像が、異なる種類の画像に切り換えられた場合に、経時劣化補償を実行する。例えば、車両に備え付けられた有機EL表示パネルが、車両の走行時には計器類を表示し、非走行時には、ナビゲーション画像やテレビ画像を表示する場合がある。計器類の外周、目盛りあるいは数字等の表示領域は常に発光しており、かつその表示データはめったに変更されないことから、焼き付きが発生する可能性がある。焼き付きが生じた後、表示画像が計器類の画像からナビゲーション画像やテレビ画像に切り換えられた場合、計器類の表示によって焼き付きが生じた部分の輝度は正確な輝度から許容範囲を超えて変動し、本来、高精細な画像であるべきナビゲーション画像やテレビ画像等の画質を低下させるおそれがある。そこで、本態様では、画素部における表示画像を第1の画像(上記の例における計器類の表示画像)から第2の画像(上記の例のナビ画像やテレビ画像)に切り換える場合に、第2の画像(ナビ画像やテレビ画像)の表示期間において経時劣化補償を実行する。例えば、ナビ画像等を表示する際に、第1領域(計器類の目盛り等の表示領域)における焼き付きによって上昇した輝度を補正するための補正データを、そのナビ画像等の画像データに加算(あるいは減算)して、第1領域に対応する画像データを補正する、という方法を採用することができる。これによって、焼き付き等による表示輝度の変動を抑制することができ、画質の低下の程度を最小限にとどめることができる。
【0023】
なお、例えば、計器類を表示している最中においても、目盛りの一部が間欠的に点滅し、数字の色が経時的に変化するという場合等もあり得るが、このような画像の変化は、第1の画像の変化であり、第2の画像への切り換えではない。異なる画像への切り換えの場合には、切り換え前の画像と切り換え後の画像との間に何らの関連性がなく、したがって、画像の切り換え前に生じた、一部の領域における輝度特性の大きな変動が、切り換え後の画像に影響を及ぼした場合には、切り換え後の画像において、不自然な画質の変動が生じる。したがって、本態様では、このような問題が生じないように、異なる画像への切り換えの際に、経時劣化補償処理を実行する。
【0024】
(7)本発明の自発光表示装置の他の態様では、前記経時劣化補償部は、前記自発光表示装置が画像を継続的に表示している期間において、前記経時劣化補償を実行する。
【0025】
本態様では、画像を継続的に表示しているときに経時劣化補償処理が行われる。本態様では、画像の切り換えを前提としない。経時劣化補償部は、例えば、計器類を表示しているときに、第1領域(例えば、常に発光している計器類の周囲部分、目盛りや数字部分)の輝度と、その周囲の領域(例えば計器類の針部分)の輝度との差を縮小するように、常に、経時劣化処理を実行することができる。また、常に経時劣化処理を実行するのではなく、第1領域の劣化が許容レベルを超えた場合(例えば、ダミー画素の輝度レベルを示すダミー画素の消費電流量がしきい値を超えた場合)にのみ、経時劣化補償を実行することもできる。この場合、経時劣化補償が行われる期間が短くなるため、経時劣化補償部の負担が軽減され、回路の消費電力も削減することが可能である。
【0026】
(8)本発明の自発光表示装置の他の態様では、前記第1領域は、前記自発光表示装置の電源がオンされている期間において、常に発光する常時発光領域である。
【0027】
本態様では、第1領域は、表示装置の電源がオンされている期間(すなわち、動作状態である期間)において常時発光する領域であることを明確化した。特に、常時発光し、かつ同一の画像データに基づく表示が長時間(例えば、画素の特性劣化が許容範囲を超えて生じる時間)以上継続する場合には、その常時発光領域において焼き付きが生じるおそれが高くなるため、その部分(ならびに、その第2領域の少なくとも一部の領域)について集中的に輝度補正を行って輝度ムラを見えなくすることが、画質の低下防止に有効となる。
【0028】
(9)本発明の自発光表示装置の他の態様では、前記第1領域は、測定された物理量を指示する計器の表示領域である計器表示領域の少なくとも一部である。
【0029】
計器類(測定された物理量を指示する器械であり、物理量を記録する機能をさらに有する場合もある)の表示は、例えば、車両や航空機等の乗り物の安全運行、運転規則の遵守等のためには必須である一方、長時間にわたって常に発光表示される可能性が高く、その常時発光部の画素特性の劣化が激しい場合が想定される。よって、本発明を適用して劣化補償を実行することが有効となる。
【0030】
(10)本発明の自発光表示装置の他の態様では、前記自発光素子は、有機EL素子である。
【0031】
有機EL素子は、長時間の発光に伴って、電流−電圧特性が変化して輝度が上昇するという特性がある。また、温度上昇に比例して輝度値が上昇するという特性もあり、長時間の発光による自己発熱によって、画素特性の劣化が促進される場合もある。よって、本発明を適用して劣化補償を行うことが有効である。
【0032】
(11)本発明の電子機器は、上記いずれかの自発光表示装置を有する。
本発明のいくつかの態様の自発光表示装置は、画素部(画像表示領域)の一部に、長時間にわたって同じ画像を表示する常時発光部分が存在する場合でも、その常時発光部分に生じる焼き付き等による輝度ムラが生じず、常に高品質の表示が可能であり、かつ、劣化補償回路の構成も簡素化でき、消費電力の増大を抑制することも可能であるという特徴を有する。したがって、本発明の自発光表示装置を搭載する電子機器も、同様に、常に高画質表示が可能であり、小型かつ低消費電力であるという利益を享受する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の自発光表示装置の構成の一例を示す図
【図2】図2(A)および図2(B)は、経時劣化補償部の構成および動作の一例を説明するための図
【図3】図3(A)〜図3(D)は、画像が切り換わった後に、経時劣化補償を実行する例を示す図
【図4】図4(A)〜図4(C)は、画像を継続的に表示している期間に、経時劣化補償を実行する例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが、本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0035】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の自発光表示装置の構成の一例を示す図である。自発光表示装置200は、有機EL素子を用いた自発光表示パネル100と、自発光表示パネルの駆動部150と、を有する。
【0036】
(自発光表示パネルの構成)
自発光表示パネル100は、複数の画素PXがマトリクス状に配置されてなる画素部110と、ダミー画素130を含む輝度センサー部135と、を有する。
【0037】
画素PXは、複数の走査線(具体的には第1走査線WL1)の各々と複数のデータ線(DL1)の各々との交差に設けられる。画素PXは、書き込みトランジスタM1と、駆動トランジスタM2と、発光制御トランジスタM3と、保持容量C1と、有機EL素子ELと、を含む。駆動トランジスタM2のソースは高レベルの画素電源電位VDDに接続され、有機EL素子ELのカソードは低レベルの画素電源電位VCTに接続される。書き込みトランジスタM1のゲートは、第1走査線WL1に接続されており、書き込みトランジスタM1のオン/オフは、書き込み制御信号GWRTによって制御される。また、発光制御トランジスタM3のゲートは、第2走査線WL2に接続されており、発光制御トランジスタM3のオン/オフは、発光制御信号GELによって制御される。
【0038】
書き込みトランジスタM1がオンすると、データ線DL1から、表示データ電圧VDATAが駆動トランジスタM2のゲートに供給され、その表示データ電圧VDATAが保持容量C1に保持される。駆動トランジスタM2のゲート・ソース間には、表示データ電圧VDATAに応じた電圧が印加されることから、駆動トランジスタM2は、表示データ電圧VDATAに対応した駆動電流Iを出力する。
【0039】
発光制御トランジスタM3は、有機EL素子ELの発光タイミングの調整ならびに画素部110の全体の輝度の調整等のために設けられる。発光制御信号GELはPWM(パルス幅変調)信号であり、発光制御信号GELがアクティブレベル(H)の期間において、発光制御トランジスタM3がオンして、電流駆動型の自発光素子である有機EL素子ELが発光する。発光制御信号GELのデューティ(1画素の発光可能期間におけるオン期間とオフ期間との比を表わす)を適宜、変更することによって、例えば、画素部110の全体の表示輝度を微調整することができる。
【0040】
画素部110には、劣化モニター対象となる第1領域(劣化モニター領域)120と、その周囲に位置する第2領域(周囲領域)と、が予め設定されている。第1領域120は、例えば、自発光表示装置200の電源がオンされている期間(動作状態である期間)において常時発光し、かつ、同一の表示データによって長時間にわたって発光する常時発光領域であり、例えば、計器類の外周部分、目盛り部分や数字部分が該当する。第1領域120には、複数の画素(PX(1,1)〜PX(n,m))が含まれる。本実施形態では、この第1領域120における、長時間発光等による輝度変動を輝度センサー部135にて監視(モニター)し、輝度センサー部135から出力される検出信号IXに基づいて、第1領域120(例えば、計器類の外周部分、目盛り部分や数字部分)と、その周囲に位置する第2領域123(例えば、計器類の針の部分)との間の輝度差を縮小するように、少なくとも一方の領域における画像データの補正等を実行する。
【0041】
輝度センサー部135は、第1領域120に含まれる少なくとも一つの画素と同じ発光条件(例えば、表示色、表示輝度ならびに表示タイミング等)で発光する、少なくとも1つのダミー画素130を含む。第1領域120は、複数の画素(PX(1,1)〜PX(n,m))から構成されるため、例えば、そのうちの代表的な画素(例えば、最も劣化が激しいと予想される画素:例えばPX(1,m)とする)の発光条件をダミー画素130の発光条件とすることができる。
【0042】
具体的には、例えば、ダミー画素130は、第1領域120の代表画素(PX(1,m))の駆動信号に同期した駆動信号によって同時に駆動され、代表画素用の表示データ電圧と同一の表示データ電圧に基づいて発光する(但し、一例であり、これに限定されるものではなく、例えば発光条件に若干の相違があってもよい)。輝度センサー部135は、例えば、ダミー画素130の消費電流IXを検出して、輝度変動の程度(つまり、発光素子の特性劣化の程度)をモニターする。あるいは、ダミー画素130の発光を受光素子(自発光パネル内に設けられたPINダイオード等)によって受光し、受光量を電気信号に変換して得られる信号を検出信号IXとすることもできる。
【0043】
(駆動部の構成)
駆動150は、ホスト等から送られてくる画像データが入力されるデータI/O10と、RAM(フレームメモリーやラインメモリー)12と、経時劣化補償部(画像補正部)14と、第1領域120および第2領域123の位置情報を記憶している位置情報記憶部16と、輝度センサー部135から出力されるアナログの検出信号(モニター信号)IXをデジタル信号に変換するA/D変換回路18と、ホスト等から送られてくる表示制御信号が入力される制御信号I/O22と、表示制御部24と、D/A変換回路およびアンプ26と、データ線ドライバー28と、走査線(第1走査線WL1,第2走査線WL2)の駆動を制御する走査制御部30と、レベルシフト回路32と、走査線ドライバー34と、を有する。
【0044】
データ線ドライバー28は、データ線WL1を経由して、画素部110に表示データ電圧(表示データ信号,画像信号)VDATA(1)を供給し、また、ダミー画素130に、ダミー画素用の表示データ電圧(上述のとおり、第1領域120における代表画素(注目画素)用の表示データ電圧に一致する)VDATA(2)を供給する。また、走査線ドライバー34は、書き込み制御信号GWRTおよび発光制御信号GELの各々を、第1走査線WL1および第2走査線WL2の各々に出力する。
【0045】
経時劣化補償部(劣化補償部という場合もある)14は、輝度センサー部135の検出信号IXに基づいて、第1領域120における発光輝度と、第1領域120の周囲に位置する第2領域123の発光輝度との差が縮小するように、少なくとも一方の領域(第1領域120または第2領域123、あるいは双方の領域)の発光輝度を補正する。
【0046】
第1領域120は、設計段階で予め特定することができるため、第1領域120の位置情報(例えば、画素部110における座標情報、フレームメモリー12におけるアドレス等)は予め特定することができ、同様に、第2領域123の位置情報も予め特定することができる。それらの位置情報は、ROM等で構成される位置情報記憶部16に記憶されている。位置情報記憶部16に記憶されている位置情報と、画像データ(DATA)の位置情報(アドレス)とを比較する等の処理を行うことによって、経時劣化補償の際に、各領域を区別することが可能である。
【0047】
例えば、計器類の外周、目盛りならびに数字等を表示している部分を第1領域120とし、その周囲に配置される針の部分や計器類の背景部分を第2領域123とし、長時間の計器類の表示によって第1領域120に焼き付きが生じているような場合においては、例えば、第1領域120の発光輝度を下げて、第2領域123の発光輝度との差を小さくして、輝度ムラが目立たないようにすることができる。また、例えば、第2領域123(例えば針の部分)の輝度を上昇させて、第1領域120の発光輝度との差を縮小して輝度ムラを抑制することもできる。また、第1領域120の輝度を下げ、これと並行して第2領域123の発光輝度を上げ、これによって輝度ムラを抑制することもできる。第2領域123の設定に際しては、人の資格に与える影響等を十分に考慮するのが好ましい。例えば、計器類の背景部分は人の視覚に与える影響が小さいのであれば、針の部分のみの発光輝度を上昇させるという方法を採用し(つまり、背景部分は第2領域には含めないで針の部分のみを第2領域とし)、これによって、発光輝度の補正の対象となる領域を最小限化することもできる。これによって、経時劣化補償処理部14の処理の負担が軽減される。
【0048】
経時劣化補償部14は、画素部110における第1領域120用の画像信号QD(1)と、第2領域123用の画像信号QD(2)と、ダミー画素130用の画像信号QD(3)とを含む画像信号を出力し、出力された画像信号は表示制御部24に入力される。表示制御部24は、画素部用の表示データおよびダミー画素用の表示データを生成して出力し、また、輝度デューティ(発光制御信号GELのデューティ)を決定して、決定されたデューティを走査制御部30に供給する。通常は、デューティ100%に設定される。
【0049】
また、制御信号I/O22を経由してホスト等から送られてきた表示制御信号CQ(1)は、表示制御部CQ1に供給される。また、表示制御信号CQ(2)(例えば、CQ(1)をコピーして得られる)が、経時劣化補償部14に送られる。これによって、経時劣化補償部14は、画像表示の状態や、種類の異なる画像への切り換えタイミング等を常時、知ることができる。
【0050】
図1の自発光表示装置200では、経時劣化が激しいと予想される部分に着目して、その部分と周囲との境界付近の領域の輝度を集中的に補正するため、補正対象となる画素の規模を小さく抑えることができ、補正回路の負担も軽減される。経時劣化補償によって、例えば、長時間にわたって同じ画像を表示する常時発光領域と、その周囲の領域との間で輝度ムラが生じることを効率的かつ効果的に防止することができる。
【0051】
(経時劣化補償制御について)
図2(A)及び図2(B)は、経時劣化補償部の構成および動作の一例を説明するための図である。図2(A)では、経時劣化補償部14は、輝度センサー部135の検出信号IXに基づいて、第1領域120についての発光輝度を補正して(すなわち、発光時間の経過と共に上昇した輝度値を低下させる補正を実行して)、第2領域123の発光輝度との差を縮小させ、輝度ムラが生じないようにする。
【0052】
図2(A)の経時劣化補償部14は、データ振り分け部15と、第1領域補正部19と、を有している。また、図2(A)では、RAM12としてフレームメモリーを使用している(ラインメモリーを使用することもできる)。経時劣化補償処理に際して、データ振分け部15は、ROM等で構成される位置情報記憶部16に記憶されている位置情報AD(第1領域120の位置情報(PX(1,1)〜PX(n,m)を含む)と、画像データ(DATA)の位置情報(フレームメモリー12のアドレス情報)とを比較することによって、第1領域120を第2領域123と区別して認識し、第1領域120用の画像データ(表示データ:DATA)を、第1領域補正部19に振り分ける。一方、第2領域123用の画像データ(DATA)は、第2領域用の画像信号QD(2)としてそのまま出力される。
【0053】
第1領域補正部19は、例えば、輝度センサー部135から出力される検出信号IXに基づいて、長時間の発光によって上昇した画素の輝度を低下させるための補正データΔCDを生成し、その補正データΔCD(負データ)を、第1領域120用の画像データ(DATA)に、加算器を用いて加算する。これによって、輝度を低下させるための画像データの補正が実行される。以上の補正方法は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、第1領域補正部19が、輝度センサー部135から出力される検出信号IXに基づいて補正係数KCを生成し、その補正係数KCを第1領域120用の画像データ(DATA)に乗算するというような補正方法を採用することもできる。また、算出された補正データを用いた、所定の演算式による補正演算によって補正後の画像データを得ることもできる。第1領域補正部19は、第1領域120用の画像信号QD(1)と、ダミー画素130用の画像信号QD(3)と、を生成して出力する。ダミー画素130用の画像信号QD(3)は、上述のとおり、第1領域120における代表画素(注目画素)用の画像信号QD(1)と同じ画像信号とすることができる。
【0054】
図2(B)では、経時劣化補償部14は、データ振り分け部15と、第2領域補正部21と、を有する。なお、モニター外領域には第2領域123が含まれる。経時劣化補償処理に際して、データ振分け部15は、位置情報記憶部16に記憶されている位置情報AD(第1領域の位置情報(PX(1,1)〜PX(n,m)に加えて、第2領域123の位置情報PZ(1,1)〜PZ(n,m)をさらに含む)と、画像データ(DATA)の位置情報(フレームメモリー12のアドレス情報)とを比較することによって、第2領域123を、第1領域120と区別して認識し、第2領域123用の画像データ(表示データ:DATA)を、第2領域補正部21に振り分ける。第1領域120用の画像データ(DATA)およびダミー画素130用の画像データ(DATA)は各々、劣化補償領域用の画像信号QD(1)およびダミー画素用の画像信号QD(3)としてそのまま出力される。
【0055】
第2領域補正部21は、例えば、輝度センサー部135から出力される検出信号IXに基づいて、第2領域123用の画像データ(DATA)を補正して、画素の発光輝度を上昇させ、長時間の発光によって上昇した第1領域120の画素の発光輝度との差を縮小させる。第2領域123用の画像データ(DATA)の補正は、例えば、輝度センサー部135から出力される検出信号IXに基づいて発光輝度を上昇させるための補正データΔCDを生成し、その補正データΔCD(正データ)を、第2領域123用の画像データ(DATA)に、加算器を用いて加算することによって実現することができる。この結果、第2領域補正部21から、補正された第2領域用の画像信号QD(2)が出力される。上述したとおり、補正係数を用いた演算や、所定の演算式を用いた演算等によって、第2領域123用の画像データを補正することもできる。
【0056】
また、第1領域120および第2領域123には複数の画素が含まれるが、全画素を発光輝度の補正対象とすることができ、また、全画素中の一部の特定画素(1または複数の画素)のみを発光輝度の補正対象とすることもできる。以上の点を考慮すると、経時劣化補償部14は、輝度センサー部135の検出信号(ダミー画素130の検出出力信号)IXに基づいて、第1領域(劣化モニター領域)120に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度と、第2領域(周囲領域)123に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度との差が縮小するように、第1領域120に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度および第2領域123に含まれる少なくとも一つの画素の少なくとも一方の発光輝度を補正する、ということができる。
【0057】
また、経時劣化補償部14は、第1領域120に含まれる全画素(図1のPX(1,1)〜PX(n,m)の全部)および第2領域123に含まれる全画素を、経時劣化補償処理(画像補正処理)の対象とすることもできる。この場合、経時劣化補償部14は、例えば、第1領域120に含まれる全画素の発光輝度の平均値と、第2領域123に含まれる全画素の発光輝度の平均値との差が縮小するように、第1領域20に含まれる全画素の発光輝度および第2領域123に含まれる全画素の発光輝度の少なくとも一方を補正することができる。これによって、第1領域120の全体の輝度レベルと第2領域123の全体の輝度レベルとの差が縮小されるため、第1領域120に含まれる画素の発光特性が、画素回路等の特性の経時劣化に伴って変動したとしても輝度ムラが抑制され、したがって、画質の低下が防止される。
【0058】
また、上述のとおり、経時劣化補償部14は、第1領域120および第2領域123に含まれる全画素のうちの特定画素(1または複数の画素)を、経時劣化補償処理(画像補正処理)の対象とすることもできる。この場合、経時劣化補償部14は、第1領域120に含まれる、一または複数の特定画素の発光輝度と、第2領域123に含まれる、一または複数の特定画素の発光輝度との差が縮小するように、第1領域120に含まれる特定画素の発光輝度および第2領域123に含まれる特定画素の発光輝度の少なくとも一方を補正することができる。この場合、例えば、特定画素の個数を制限して、経時劣化補償部14の負担を軽減することができる。どの位置にある画素を特定画素として選択するかを慎重に検討し、例えば、最小限度の数の画素の発光輝度の補正で、最大限の輝度ムラ抑制効果を得るようにすることが好ましい。
【0059】
(第2の実施形態)
本実施形態では、画素部110における表示画像を第1の画像から第2の画像に切り換える場合に、第2の画像の表示期間において経時劣化補償処理を実行する。
【0060】
図3(A)〜図3(D)は、画像が切り換わった後に経時劣化補償を実行する例を示す図である。なお、ここでは、車両に備え付けられた有機EL表示パネルが、車両の走行時には計器類を表示し、非走行時には、ナビゲーション画像やテレビ画像を表示する場合を想定する。図3(A)において、画面Aは、車両走行時の画面であり、第1領域120は、例えば、計器類の外周、目盛りあるいは数字等を表示する領域である。第1領域120における画素は常に発光しており、かつその表示データはめったに変更されないことから、焼き付きが発生する可能性がある。
【0061】
図3(B)に示すように、第1領域(劣化モニター領域)120において焼き付きが生じた後、表示画像が計器類の画像(画像A)からナビゲーション画像やテレビ画像(画像B)に切り換えられた場合、計器類の表示によって焼き付きが生じた部分120の輝度は正確な輝度から許容範囲を超えて変動し、第2領域(周囲領域,周辺領域)123の発光輝度との差が拡大して輝度ムラが生じる。この場合、本来、高精細な画像であるべきナビゲーション画像やテレビ画像(画面B)の画質を低下させることになる。
【0062】
そこで、前掲の実施形態で説明した経時劣化補償処理を実行する。図3(C)では、第1領域120の輝度を低下させる補正が実行される。図3(C)において、参照符号120’は、輝度が補正された第1領域(劣化モニター領域)を示している。図3(D)では、第2領域(周囲領域あるいは周辺領域)123の輝度を上昇させる補正が実行される。図3(D)において、参照符号123’は、輝度が補正された第2領域(周囲領域)を示している。図3(C),図3(D)に示されるような画像データ(表示データ)の補正が実行されることによって、焼き付き等による表示輝度の変動を抑制することができ、画質の低下の程度を最小限にとどめることができる。なお、第1領域120の輝度を低下させる補正と、第2領域(周囲領域)123の輝度を上昇させる補正とを、並行的に行うこともできる。
【0063】
なお、例えば、計器類を表示している最中においても、目盛りの一部が間欠的に点滅し、数字の色が経時的に変化するという場合等もあり得るが、このような画像の変化は、同一の画像の変化であり、異なる画像への切り換えではない。異なる画像への切り換えの場合には、切り換え前の画像と切り換え後の画像との間に何らの関連性がなく、したがって、画像の切り換え前に生じた、一部の領域における輝度特性の大きな変動が、切り換え後の画像に影響を及ぼした場合には、切り換え後の画像において、不自然な画質の変動が生じる。したがって、本実施形態では、このような問題が生じないように、異なる画像への切り換えがあった場合(つまり、第1の画像から第2の画像への切り換えがあった場合)に、切り換え後の画像に対して、経時劣化補償処理が実行される。
【0064】
なお、図3(A)の状態(画面Aを表示している状態)において、常時、劣化補償処理を実行してもよく、また、図3(A)の場合には劣化補償処理は実行せず、画面Bに切り換わった時(図3(C)または図3(D)の状態)から、劣化補償処理を行うこともできる。後者の場合、図3(A)の段階では劣化補償を実行しないため、劣化補償部14の負担が軽減される。また、例えば、図3(A)の状態から図3(C)あるいは図3(D)の状態に切り換わる際には、所定の切り換え時間が設定されるのが一般的であり、この期間に画像補正用の補正データを用意しておけば、画像Bに切り換わった直後から、リアルタイムで画像補正を実行することができる。
【0065】
(第3の実施形態)
本実施形態では、自発光表示装置200が、画像を継続的に表示しているときに、経時劣化補償を実行する。図4(A)〜図4(C)は、画像を継続的に表示しているときに、経時劣化補償を実行する例を示す図である。
【0066】
図4(A)〜図4(C)では、自発光表示パネルには計器類が表示されている。計器類の表示は、例えば、車両や航空機等の乗り物の安全運行、運転規則の遵守等のためには必須である一方、長時間にわたって常に発光表示される可能性が高く、その常時発光部の画素特性の劣化が激しい場合が想定される。よって、本発明による劣化補償を実行することが有効となる。
【0067】
図4(A)において、第1領域120は、計器類の外周、目盛りあるいは数字等を表示する領域(図4(A)において、説明の便宜上、黒で塗りつぶされて示される)である。針部の領域123aおよび背景部の領域123bは、共に第2領域123として設定することが可能な領域であるが、背景部分は視覚的に目立たないこと等を考慮して、ここでは、針部の領域123aのみが、第2領域123として予め設定されているものとする。
【0068】
図4(B)において、経時劣化補償部14は、第1領域120の輝度を低下させる補正を実行する。図4(B)において、参照符号120’は、輝度が補正された第1領域120を示している。また、図4(C)では、第2領域(周囲領域)123の輝度を低下させる補正が実行される。図4(C)において、参照符号123a’は、輝度が補正された第2領域(周囲領域)を示している。図4(B),図4(C)のような画像データの補正が実行されることによって、第1領域120(常に発光している計器類の周囲部分、目盛りや数字部分)の輝度と、その周囲に位置する第2領域123(例えば、必要な場合にしか表示されない計器類の針部分123a)の輝度との差が縮小され、輝度ムラが生じず、視覚的に自然な画像が常に得られる。図4(C)においては、背景部123bについても画像補正を実行してもよい。但し、背景部123bの、人と視覚に与える影響が小さいときは、針部123aの画像補正のみを実行しても、特に問題は生じない。この場合、画像補正の対象画素が少なくなるため、経時劣化補償部14の処理負担が軽減されるという効果がある。なお、第1領域120の輝度を低下させる補正と、第2領域123(具体的には123aであり、必要に応じて123bも含めることができる)の輝度を上昇させる補正とを、並行的に行うこともできる。
【0069】
また、経時劣化補償処理は、表示パネルが動作状態である期間において常時、行うことができる。また、常に経時劣化処理を実行するのではなく、第1領域120の劣化が許容レベルを超えた場合(例えば、ダミー画素130の輝度レベルを示すダミー画素の消費電流量がしきい値を超えた場合)にのみ、経時劣化補償を実行することもできる。この場合、経時劣化補償が行われる期間が短くなるため、経時劣化補償部の負担が軽減され、回路の消費電力も削減することが可能である。
【0070】
以上説明したように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、長時間にわたって同じ画像を表示する常時発光領域と、その周囲の領域との間で輝度ムラが生じることを効率的かつ効果的に防止することができる。また、本発明の少なくとも一つの実施形態の自発光表示装置は、例えば、画素部(画像表示領域)の一部に、長時間にわたって同じ画像を表示する常時発光部分が存在する場合でも、その常時発光部分に生じる焼き付き等による輝度ムラが生じず、常に高品質の表示が可能であり、かつ、劣化補償回路の構成も簡素化でき、消費電力の増大を抑制することも可能であるという特徴を有する。本発明の自発光表示装置を搭載する電子機器も、同様に、常に高画質表示が可能であり、小型かつ低消費電力であるという利益を享受する。
【0071】
なお、本実施形態について詳述したが、本発明の新規事項および効果から逸脱しない範囲で、多くの変形が可能であることは、当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、すべて本発明に含まれるものとする。例えば、経時劣化補償を行うタイミングや回数等については、回路の負担や消費電力、あるいは表示パネルの特性等を考慮して、適宜、決定することができる。劣化モニターの対象となる第1領域やその大きさ等も、表示画像の種類や特性等を考慮して、適宜、決定することができる。第2領域に関しても同様である。また、自発光素子としては、電流駆動型の自発光素子である有機EL素子の他、例えば、LED(発光ダイオード)を使用することもでき、また、その他の自発光素子を採用することもできる。
【符号の説明】
【0072】
10 データI/O、12 RAM(フレームメモリー、ラインメモリー)、
14 経時劣化補償部(画像補正部)、16 位置情報記憶部、18 A/D変換部、
22 制御信号I/O、24 表示制御部、26 D/Aおよびアンプ、
28 データ線ドライバー、30 走査制御部、32 レベルシフト回路、
34 走査線ドライバー、 100 自発光表示パネル、 110 画素部、
120 第1領域(劣化モニター領域)、123 第2領域(周囲領域,周辺領域)、
130 ダミー画素、135 輝度センサー部、 150 駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発光素子を含む画素が複数配置されており、かつ、劣化モニター対象となる第1領域と、前記第1領域の周囲に位置する第2領域とが設定されている画素部と、
前記画素部における前記第1領域の発光輝度の経時変動を検出するための、前記第1領域に含まれる少なくとも一つの画素と同じ発光条件で発光するダミー画素を含む輝度センサー部と、
前記輝度センサー部の検出信号に基づいて、前記第1領域に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度と、前記第2領域に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度との差が縮小するように、前記第1領域に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度および前記第2領域に含まれる少なくとも一つの画素の発光輝度の少なくとも一方を補正する経時劣化補償部と、
を含むことを特徴とする自発光表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の自発光表示装置であって、
前記経時劣化補償部は、
前記第1領域に含まれる全画素の発光輝度の平均値と、前記第2領域に含まれる全画素の発光輝度の平均値との差が縮小するように、前記第1領域に含まれる全画素の発光輝度および前記第2領域に含まれる全画素の発光輝度の少なくとも一方を補正することを特徴とする自発光表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の自発光表示装置であって、
前記経時劣化補償部は、
前記第1領域に含まれる、一または複数の特定画素の発光輝度と、前記第2領域に含まれる、一または複数の特定画素の発光輝度との差が縮小するように、前記第1領域に含まれる前記特定画素の発光輝度および前記第2領域に含まれる前記特定画素の発光輝度の少なくとも一方を補正することを特徴とする自発光表示装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の自発光表示装置であって、
前記第1領域の位置情報および前記第2領域の位置情報のうちの少なくとも一方を記憶している位置情報記憶部をさらに有し、
前記経時劣化補償部は、
前記位置情報記憶部に記憶されている前記第1領域の位置情報および前記第2領域の位置情報の少なくとも一方を参照して、前記画素部に供給される画像データの中から、前記第1領域に含まれる少なくとも一つの画素用の第1の画像データおよび前記第2領域に含まれる少なくとも一つの画素用の第2の画像データの少なくとも一方を認識し、前記第1の画像データおよび前記第2の画像データの少なくとも一方を、前記輝度センサー部の検出信号に基づいて補正することを特徴とする自発光表示装置。
【請求項5】
請求項4記載の自発光表示装置であって、
前記経時劣化補償部は、
前記輝度センサー部の検出信号に基づいて補正データを算出し、算出された補正データを用いた演算処理によって、前記第1の画像データおよび前記第2の画像データの少なくとも一方を補正することを特徴とする自発光表示装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の自発光表示装置であって、
前記自発光表示装置は複数の種類の画像を表示することができ、
前記経時劣化補償部は、前記画素部における表示画像を第1の画像から第2の画像に切り換える場合に、前記第2の画像の表示期間において前記経時劣化補償を実行することを特徴とする自発光表示装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の自発光表示装置であって、
前記経時劣化補償部は、前記自発光表示装置が画像を継続的に表示している期間において、前記経時劣化補償を実行することを特徴とする自発光表示装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の自発光表示装置であって、
前記第1領域は、前記自発光表示装置の電源がオンされている期間において、常に発光する常時発光領域であることを特徴とする自発光表示装置。
【請求項9】
請求項8記載の自発光表示装置であって、
前記第1領域は、測定された物理量を指示する計器の表示領域である計器表示領域の少なくとも一部であることを特徴とする自発光表示装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれかに記載の自発光表示装置であって、
前記自発光素子は、有機EL素子であることを特徴とする自発光表示装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載の自発光表示装置を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−243895(P2010−243895A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94006(P2009−94006)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】