説明

自発光表示装置及び自発光表示方法

【課題】色毎の劣化ばらつきを抑えて色合い変化をなくし、かつ十分な焼き付き防止を図ることができる自発光表示装置及び自発光表示方法を提供すること。
【解決手段】自発光表示装置111は、自発光表示制御装置109及び自発光ディスプレイ110からなる。自発光表示制御装置109は、有機ELの各色の劣化特性が同等となる目標色度を設定する目標色度設定部120、自発光ディスプレイ110の表示画面の固定アイコンの色度を算出する固定アイコン色度算出部121、固定アイコン色度が目標色度に近づくように入力画像信号に対して補正を行う画像処理部122とを備え、輝度低下する処理にあわせて、固定アイコン部の色度が目標色度に線形で近づくように補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイなどの自発光表示装置及び自発光表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ELディスプレイは自発光表示装置であるため、視野角が広く、応答速度が速い。また、バックライトが不要であるため、薄型軽量化が可能である。これらの理由から、近年、ELディスプレイは、液晶表示装置に代わるフラットディスプレイとして注目されている。
【0003】
ELディスプレイは、EL素子の発光特性が発光時間の経過に伴って劣化し、同じ入力電流によって得られる輝度が徐々に低下する。このため、例えば画面の一定位置に同一の表示がなされる場合には、特定の画素の発光頻度のみが高くなるため、これらの画素は他の画素に比べて発光特性が著しく劣化し、焼付きが発生する問題がある。
【0004】
図1は、ELディスプレイを有する携帯電話機の表示画面を示す図である。図1に示すように、携帯電話機は、表示画面の上部に電池,アンテナ,時刻などのアイコンが表示され、表示画面の下部に各種ソフトキーが表示される。
【0005】
自発光素子である有機ELは発光すればするほど、材料劣化などにより焼き付きが生じる。電池,アンテナなどアイコン及びソフトキーなどの表示時間が長い固定パターン部において、焼き付きが顕著に発生しやすい。
【0006】
特許文献1には、輝度制御する範囲を設定し、その範囲において輝度レベルを制御するELディスプレイの表示装置が記載されている。特許文献1記載の装置は、ディスプレイの画像表示位置に応じたゲイン制御に加え、入力画像信号の輝度レベルにも応じたゲイン制御を行う。
【0007】
特許文献2には、画面平均輝度をベースに中心輝度よりも周囲輝度を低下させるPDP(Plasma Display Panel)を備える映像表示装置が記載されている。特許文献2記載の装置は、消費電力や平均輝度レベルが設定値を超えた場合に輝度変調回路を動作させる。
【0008】
特許文献3には、画面の高輝度静止画部分を検出し、検出部分のみの輝度を低下するCRTの焼き付き防止装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−243435号公報
【特許文献2】特開2005−321664号公報
【特許文献3】特開2005−351442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来の自発光表示装置における固定パターン部の焼き付き防止方法にあっては、以下のような課題があった。
【0011】
従来の焼き付き防止方法は、画面全体や固定アイコン部を一定時間(例えば、数十秒)で輝度を低下させる処理を行っている。しかし、自発光表示素子は、赤、青、緑の色毎に輝度低下度合いが異なる。このため、輝度低下処理だけを行う従来の対策では、寿命は延びるものの、色合いが変化してしまう課題がある。以下、具体的に説明する。
【0012】
図2は、有機EL材料の赤、青、緑の色別劣化特性例を示す図である。図2に示すように、有機EL材料は、緑、赤、青の順に材料劣化度合いが異なる。
【0013】
図3は、固定アイコン部の明るさを通常表示より80%低減した場合の輝度低下処理計算表を示す図である。アイコン1は、図4の電池残量アイコン、アイコン2は、図4のアンテナアイコンである。アイコン1,2のデジタル値をγ=2.2で明るさに変換し、変換後の数値に0.2を掛け、明るさを20%にした後、デジタル値に再変換している。図3に示すように、明るさ80%低減した場合には、赤、青のデジタル値に対して緑のデジタル値が大きく乖離(2倍以上)する。これは色変化となって現われることになる。
【0014】
図4は、固定アイコン部の色変化を示す図であり、図4(a)は、通常表示の場合、図4(b)は、明るさ80%低減した場合である。図中、括弧内数値は、R,G,Bの色データ(デジタル値)である。図4に示すように、画面全体を暗くする従来の焼き付き防止方法では、固定アイコン部の色変化が発生するという課題がある。
【0015】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、色毎の劣化ばらつきを抑えて色合い変化をなくし、かつ十分な焼き付き防止を図ることができる自発光表示装置及び自発光表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の自発光表示装置は、有機ELからなる自発光ディスプレイと、有機ELの各色の劣化特性が同等となる目標色度を設定する目標色度設定手段と、前記自発光ディスプレイの表示画面の焼き付き防止対象部の色度を算出する焼付き対象部色度算出手段と、前記対象部の色度が前記目標色度に近づくように入力画像信号に対して補正を行う画像処理手段と、を備える構成を採る。
【0017】
本発明の自発光表示方法は、有機ELの各色の劣化特性が同等となる目標色度を設定するステップと、有機ELからなる自発光ディスプレイの表示画面の焼き付き防止対象部の色度を算出するステップと、前記対象部の色度が前記目標色度に近づくように入力画像信号に対して補正を行うステップとを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、色毎の劣化ばらつきを抑えて色合い変化をなくし、かつ十分な焼き付き防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ELディスプレイを有する携帯電話機の表示画面を示す図
【図2】有機EL材料の赤、青、緑の色別劣化特性例を示す図
【図3】従来の携帯端末装置の固定アイコン部の明るさを通常表示より80%低減した場合の輝度低下処理計算表を示す図
【図4】従来の携帯端末装置の固定アイコン部の色変化を示す図
【図5】本発明の実施の形態1に係る自発光表示装置を備える携帯端末装置の構成を示すブロック図
【図6】上記実施の形態1に係る自発光表示装置の自発光表示制御装置の構成を示すブロック図
【図7】上記実施の形態1に係る自発光表示装置のHSV空間を説明する図
【図8】上記実施の形態1に係る自発光表示装置を備える携帯端末装置の固定パターン部の色を色シフトが発生しない目標色に近づける色度補正を説明する図
【図9】上記実施の形態1に係る自発光表示装置の固定アイコン画像データの補正処理を示すフロー図
【図10】上記実施の形態1に係る自発光表示装置の目標色度の変換結果を示す図
【図11】上記実施の形態1に係る自発光表示装置の補正前のアイコン画像データをRGBからHSV空間に変換する例を示す図
【図12】上記実施の形態1に係る自発光表示装置の固定パターン部の色を目標色に近づける色度補正を説明する図
【図13】図12の具体的数値例を表にして示す図
【図14】上記実施の形態1に係る自発光表示装置の補正後のHSV座標H,S,Vを表にして示す図
【図15】上記実施の形態1に係る自発光表示装置のHSV空間からRGB空間への変換例を表にして示す図
【図16】上記実施の形態1に係る自発光表示装置の輝度低下及び色補正後の固定アイコン部の色変化を示す図
【図17】上記実施の形態1に係る自発光表示装置の固定アイコン部の明るさを通常表示より80%低減した場合の輝度低下処理計算表を示す図
【図18】本発明の実施の形態2に係る自発光表示装置の自発光表示制御装置の構成を示すブロック図
【図19】上記実施の形態2に係る自発光表示装置の固定アイコン画像データの補正処理を示すフロー図
【図20】上記実施の形態2に係る自発光表示装置の領域分割による補正量の決定を説明する図
【図21】上記実施の形態2に係る自発光表示装置の領域分割による補正量の算出例を説明する図
【図22】上記実施の形態2に係る自発光表示装置のθによる補正量の決定を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図5は、本発明の実施の形態1に係る自発光表示装置を備える携帯端末装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、自発光表示装置として有機ELディスプレイを備える携帯電話機/PHS(Personal Handy-Phone System)を適用した例である。また、携帯電話機のほか、PDA(Personal Digital Assistants:携帯情報端末)、携帯ゲーム機などの携帯機器に適用できる。
【0022】
図5に示すように、携帯電話機100は、アンテナ101、無線送受信部102、送受話回路103、送受話器104、操作部105、撮像装置106、背面撮像装置107、表示装置108、自発光表示制御装置109、自発光ディスプレイ110、メモリ112、及び制御部113を備えて構成される。上記自発光表示制御装置109及び自発光ディスプレイ110は、自発光表示装置111を構成する。
【0023】
自発光表示制御装置109は、自発光ディスプレイ110の表示画面に違和感を与えることなく、かつ低消費電力化及び焼き付き防止を図る自発光表示制御を行う。自発光表示制御装置109の詳細については、後述する。
【0024】
自発光ディスプレイ110は、例えば有機ELディスプレイである。ここでは、自発光ディスプレイ110は、携帯電話機100の主表示装置として用いている。携帯電話機100の背面表示装置としては、LCDディスプレイ等からなる表示装置108であるが、表示装置108が自発光ディスプレイ、又は共に自発光ディスプレイであってもよい。また、自発光ディスプレイ110は、携帯端末の場合は、軽量化・薄型化の観点からELディスプレイが適しているが自発光ディスプレイであればよく、例えばPDP(Plasma Display Panel)であってもよい。
【0025】
制御部113は、CPU等により構成され、携帯電話機100全体の制御を行うとともに、自発光表示装置111の表示制御を行う。制御部113は、自発光ディスプレイ110に表示する画像データを入力画像信号として出力する。また、制御部113は、携帯電話機100のアプリケーションを実行する。アプリケーションは、ゲームやブラウザなどのアプリケーションソフトのみならず、携帯電話機100の携帯機器制御ソフト(電源ON/OFF、表示装置ON/OFF、横画面/縦画面使用など)を含む。
【0026】
図6は、上記自発光表示制御装置109の構成を示すブロック図である。
【0027】
図6に示すように、自発光表示制御装置109は、マイクロプロセッサ等により構成され、目標色度設定部120と、固定アイコン色度算出部121と、画像処理部122とを備える。
【0028】
目標色度設定部120は、有機ELの各色の劣化特性が同等となる目標色度を設定する。目標色度設定の詳細については、後述する。
【0029】
固定アイコン色度算出部121は、自発光ディスプレイ110の表示画面の焼き付き防止対象部(例えば、固定アイコン)の色度を算出する。
【0030】
画像処理部122は、固定アイコン色度が目標色度に近づくように入力画像信号に対して補正を行う。
【0031】
以下、上述のように構成された自発光表示装置111の動作について説明する。
【0032】
まず、本発明の基本的な考え方について説明する。
【0033】
図2の色別劣化特性に示すように、有機EL材料は、赤、青、緑の各材料で劣化係数が異なる。本発明者は、各材料で劣化特性が異なることに着目し、焼き付き対策をする場合に輝度低下のみならず、劣化特性が異なることにより発生するカラーシフト対策を採る。
【0034】
本実施の形態では、焼き付き対策である一定時間経過後に輝度を低下する処理にあわせて、固定パターン部の色を、色シフトが発生しない目標色に近づける画像補正を施す。このとき目標色に近づける割合は一定値である。具体的には、輝度を低下させるとともに、各色の劣化度合いが同じになるような目標色度に近づけるように固定アイコン部の色を変化させる。ここで、上記目標色度とは、有機EL材料において、各R,G,Bの劣化特性が同等となるような色のことをいう。但し、かなり無彩色に近いため、目標色度を無彩色としてもよい。
【0035】
〔HSV処理と目標色〕
固定パターン部のアイコン画像の補正のため、HSV空間で明るさと色とに分離してそれぞれ補正を行う。
【0036】
図7は、HSV空間を説明する図である。図7に示すように、HSV空間は、色相(Hue)、彩度(Saturetion)及び明度(Value)から構成される色空間である。HSV空間は、明るさと色を別々に演算したい場合などに用いられる。HSV空間に限らず、HSI空間、YUV空間など、明るさと色を分離する色空間であれば使用可能である。
【0037】
図8は、固定パターン部の色を色シフトが発生しない目標色に近づける色度補正を説明する図である。
【0038】
図8に示すように、HSV空間のHSを用いて、xy直交座標系に変換後、固定アイコン色度Sが目標色度S0に近づくように色度を補正する。
【0039】
図8では、固定アイコン色度Sは、HSV空間のHS値で示され、xy直交座標の第2象限にある。また、目標色度S0は、HSV空間のHS値で示され、xy直交座標の第1象限にある。本実施の形態では、固定アイコン色度Sが目標色度S0に線形(図8破線参照)で近づくように色度を補正する。補正後のアイコン色度は、図8●印で示される。
【0040】
図9は、固定アイコン画像データの補正処理を示すフローチャートであり、補正後のアイコン画像データ(RGB)を算出する。図中、Sはフローの各ステップを示す。本フローは、自発光表示制御装置109により所定タイミングで繰返し実行される。
【0041】
自発光表示制御装置109は、画像データを色と明るさを分離できる色空間に変換し、それぞれに対して補正処理を実施する。<色度補正>と<明るさ補正>である。本実施の形態では、画像処理によく用いられるHSV空間を使用している。
【0042】
<色度補正>
ステップS1では、目標色度設定部120は、目標色度を算出する。具体的には、目標色度設定部120は、有機ELの各色劣化特性から劣化量が同じとなる色のHSV座標(H0,S0,V0)を算出する。
【0043】
ステップS2では、固定アイコン色度算出部121は、補正前アイコン画像データのHSV値を算出する。固定アイコン色度算出部121は、補正前のアイコン画像データをRGB⇒HSV座標(Hi,Si,Vi)に変換する。
【0044】
ステップS3では、固定アイコン色度算出部121は、色補正係数を設定する。色補正係数は、画像の見栄えなどにより決定する。例えば、色補正係数は、33%に設定する。なお、色補正係数を動的に変える例については、実施の形態2により後述する。
【0045】
ステップS4では、画像処理部122は、補正後アイコン画像データのHSV値を算出する。具体的には、画像処理部122は、Hi,Si及びH0,S0を用いて補正後のアイコン画像のH,S値を算出する。
【0046】
<明るさ補正>
ステップS5では、固定アイコン色度算出部121は、補正前アイコン画像データのHSV値を算出する。具体的には、固定アイコン色度算出部121は、補正前のアイコン画像データをRGB⇒HSV座標(Hi,Si,Vi)に変換する。
【0047】
ステップS6では、固定アイコン色度算出部121は、輝度補正係数を設定する。輝度補正係数は、画像の見栄えなどにより決定する。例えば、輝度補正係数は、20%に設定する。
【0048】
ステップS7では、画像処理部122は、補正後アイコン画像データのHSV値を算出する。具体的には、画像処理部122は、Viに輝度補正係数を掛け、V値を算出する。
【0049】
ステップS8では、画像処理部122は、補正後のアイコン画像データHSV値をRGBへ変換し、補正後のアイコン画像データRGB値を出力する。
【0050】
上記フローを実施することにより、補正後のアイコン画像データ(RGB)を算出することができる。以下、固定アイコン画像データの補正方法について更に具体的に説明する。
【0051】
〔補正に必要なパラメータ〕
補正に必要なパラメータには、有機EL各色における劣化特性、γ特性、輝度補正係数、及び色補正係数がある。
【0052】
有機EL各色における劣化特性(白ベタ表示)は、Gの劣化特性を1とした場合における劣化のし易さである。例えば、図2に示すように、R:1.15 G:1.00 B:1.25である。
【0053】
γ特性は、ディスプレイ表示の入力データ−ディスプレイ表示明るさ特性である。例えば、γ:2.2である。
【0054】
輝度補正係数は、輝度低下補正時における輝度低下率である。例えば、輝度補正係数は、20%とする。
【0055】
色補正係数は、目標の色に対してどの程度色を近づけるかを示す係数である。例えば、色補正係数は、33%とする。
【0056】
〔目標色度の算出〕
目標色度の計算の過程は、以下となる。
【0057】
有機EL材料の輝度劣化は明るさが2倍になれば、劣化も2倍の特性となる反比例と想定している。これと異なる特性である場合は、その輝度−材料劣化特性を用いて計算する。
【0058】
有機EL各色の輝度劣化特性は、R:1.15 G:1.00 B:1.25である。劣化特性が同じになるような色(デジタル座標)は、次式(1)で求められる。
【0059】
R0=(1/1.15)(1/γ)*255=239
G0=(1/1.00)(1/γ)*255=255
B0=(1/1.25)(1/γ)*255=230
γ=2.2 …(1)
【0060】
明るさと色を別に計算するため、上記式(1)をHSV空間に次式(2)の計算方式を用いて変換する。
RGBからHSV空間への変換;
R=(R0/255)γ=(239/255)2.2=0.870
G=(G0/255)γ=(255/255)2.2=1.000
B=(B0/255)γ=(230/255)2.2=0.800 …(2)
【0061】
HSV値のMAXを(R,G,B)値の最大値と等しく、MINをその最小値と等しいする。次式(3)で示される。
【数1】

【0062】
図10は、目標色度の変換結果を示す図である。
【0063】
図10において、目標とするH,SをそれぞれH0,S0とすると、H0=99.13、S0=0.20となる。
【0064】
固定アイコンのRGBからHSV空間への変換;
図11は、補正前のアイコン画像データをRGBからHSV空間に変換する例を示す図である。
【0065】
上述の計算方法を用いて、固定アイコン部のRGBをHSV空間へ変換すると、図11に示すようになる。
【0066】
〔補正後のアイコン色度の算出〕
補正後のHSV空間の座標を(H,S,V)、RGB空間の座標を(R’,G’,B’)とする。
【0067】
明度Vの計算;
目標としている輝度補正係数は、20%であるため、明度Vは次式(4)となる。
V=固定アイコンの明度Vi×0.2=0.875×0.2=0.175…(4)
【0068】
色相(H)、色彩(S)計算;
図12は、固定パターン部の色を目標色に近づける色度補正を説明する図である。図12(a)は、極座標系をxy直交座標系に変換した場合を、図12(b)は、xy直交座標系を極座標系に再度変換した場合を示す。図13は、図12の具体的数値例を表にして示す図である。図13(a)は、図12(a)に対応し、図13(b)は、図12(b)に対応する。
【0069】
図12(a)に示すように、HSV空間のHSを用いて、xy直交座標系に変換後、固定アイコン色度Siが目標色度S0に近づくように色度を補正する。
【0070】
図12(a)では、固定アイコン色度Siは、HSV空間のHS値で示され、xy直交座標の第2象限にある。また、目標色度S0は、HSV空間のHS値で示され、xy直交座標の第2象限にある。本実施の形態では、固定アイコン色度Sが目標色度S0に線形(図12(a)破線参照)で近づくように色度を補正する。補正後のアイコン色度は、図12●印で示される。
【0071】
HSV空間は、極座標系であるため、目標の色度であるH0,S0と固定アイコン部の明度であるH’,S’を直交座標系に変換する。そして、図12(a)に示すように、H0,S0とH’,S’の2点を直線で結び、その直線上において、固定アイコン部から色補正係数33%分、目標色度に近づけた点を補正後のアイコン色度とする。その後、図12(b)に示すように、再度極座標系に変換し、HとSを得る。
【0072】
図14は、補正後のHSV座標H,S,Vを表にして示す図である。
【0073】
上記演算により補正後のHSV座標H,S,Vは、図14に示すようになる。
【0074】
HSV空間からRGB空間への変換;
算出したHSVを、下記変換式(5)を用いてRGB空間へ変換する。
【数2】

【0075】
図15は、HSV空間からRGB空間への変換例を表にして示す図である。図15(a)は、HSV空間の変換式(5)に代入するパラメータを示し、図15(b)は、算出したRGB値を示す。
【0076】
上記算出したRGB値を、次式(6)を用いてデジタル値に変換し、RGBデジタル値を得る。
RGB値からRGBデジタル値への変換;
R’=R(1/γ)*255=0.08893(1/2.2)*255=85
G’=G(1/γ)*255=0.17503(1/2.2)*255=115
B’=B(1/γ)*255=0.04671(1/2.2)*255=63 …(6)
【0077】
図16は、輝度低下及び色補正後の固定アイコン部の色変化を示す図であり、図16(a)は、通常表示の場合、図16(b)は、明るさ80%低減のみの場合、図16(c)は、明るさ80%低減及び色補正した場合である。図中、括弧内数値は、R,G,Bの色データ(デジタル値)である。R,G,Bの色データ(デジタル値)である。
【0078】
図16(b)に示すように、明るさ80%低減のみの場合は、焼き付き防止効果を得ることはできるものの、固定アイコン部の色変化が発生する。すなわち、赤、青のデジタル値に対して緑のデジタル値が大きく乖離(2倍以上)し、色変化となって現われている。
【0079】
これに対して、本実施の形態では、図16(c)に示すように、明るさ80%低減と同時に、上述した色補正を実施する。図16(c)では、目標色に33%近づけた場合の例である。赤、青のデジタル値と緑のデジタル値との差は小さく、色変化は目立たない。
【0080】
図17は、固定アイコン部の明るさを通常表示より80%低減した場合の輝度低下処理計算表を示す図である。アイコン1は、図4の電池残量アイコン、アイコン2は、図4のアンテナアイコンである。アイコン1,2のデジタル値をγ=2.2で明るさに変換し、変換後の数値に0.2を掛け、明るさを20%にした後、デジタル値に再変換している。また、Gの劣化係数で規格化している。
【0081】
図17の「輝度低下」に示すように、明るさ80%低減のみの場合には、R,G,Bの色データ(デジタル値)は、(0.380,1,0.005)であり、赤、青のデジタル値(特に、青)が大きく乖離する。これに対して、本実施の形態では、図17の「輝度低下彩度低下」に示すように、R,G,Bの色データ(デジタル値)は、(0.584,1,0.334)であり、赤、青のデジタル値(特に、青)が緑のデジタル値に近づいている。
【0082】
このように、本実施の形態では、輝度低下のみの場合と比較し、R,B共に、G=1に近づいている。色毎の劣化ばらつきを抑えることができる。
【0083】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、自発光表示装置111は、自発光表示制御装置109及び自発光ディスプレイ110からなる。自発光表示制御装置109は、有機ELの各色の劣化特性が同等となる目標色度を設定する目標色度設定部120、自発光ディスプレイ110の表示画面の固定アイコンの色度を算出する固定アイコン色度算出部121、固定アイコン色度が目標色度に近づくように入力画像信号に対して補正を行う画像処理部122とを備え、輝度低下する処理にあわせて、固定アイコン部の色度が目標色度に線形で近づくように補正する。色毎の劣化ばらつきを抑えて色合い変化をなくし、かつ十分な焼き付き防止を図ることができる。
【0084】
(実施の形態2)
実施の形態1は、焼き付き対策の輝度低下処理にあわせて、固定パターン部の色を、色シフトが発生しない目標色に近づける画像補正を施している。このとき目標色に近づける割合は一定値である。これにより、色毎の劣化ばらつきを抑えて色合い変化をなくし、かつ十分な焼き付き防止を図ることができる。
【0085】
目標色に近づける割合を一定の割合として補正することで、信号処理負荷を軽減することができる。しかし、補正量を一定にしてしまうと、固定パターン部の色度と目標色度の色座標配置によっては、補正時に固定パターン部の色度が大幅に変わりユーザに強い違和感を与えてしまうおそれがある。
【0086】
実施の形態2では、固定パターン部の色度と目標色度の色座標から、補正すると固定パターン部の色度が大幅に変わってしまう場合には補正量を少なく、また、補正しても固定パターン部の色度が少ししか変化しない場合は補正量を大きくするような処理を追加する。すなわち、固定パターン部の色度と目標色度の色座標配置によって、色補正係数を動的に変化させる。
【0087】
図18は、本発明の実施の形態2に係る自発光表示装置111Aの自発光表示制御装置の構成を示すブロック図である。図6と同一構成部分には同一符号を付している。本実施の形態の自発光表示装置111Aは、図5の自発光表示装置111に代えて適用される。
【0088】
図18に示すように、自発光表示制御装置130は、マイクロプロセッサ等により構成され、目標色度設定部120と、色補正係数設定部131と、画像処理部122とを備える。
【0089】
自発光表示制御装置130は、画像データを色と明るさを分離できる色空間に変換し、それぞれに対して補正処理を実施する。本実施の形態では、実施の形態1と同様にHSV空間を使用している。
【0090】
色補正係数設定部131は、画像データを色と明るさに分離するHSV空間に変換し、HSV空間における固定アイコン色度と目標色度の色座標に基づいて、固定アイコン色度の色度を補正する色補正係数を動的に設定する。
【0091】
画像処理部122は、動的設定された色補正係数を基に、固定アイコン色度が目標色度に近づくように入力画像信号に対して補正を行う。
【0092】
図19は、自発光表示装置111Aを備える携帯端末装置の固定アイコン画像データの補正処理を示すフローチャートであり、図9と同一ステップには同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0093】
<色度補正>
ステップS1では、目標色度設定部120は、有機ELの各色劣化特性から劣化量が同じとなる色のHSV座標(H0,S0,V0)を算出する。
【0094】
ステップS2では、色補正係数設定部131は、補正前アイコン画像データのHSV値を算出する。色補正係数設定部131は、補正前のアイコン画像データをRGB⇒HSV座標(Hi,Si,Vi)に変換する。
【0095】
ステップS11では、色補正係数設定部131は、色補正係数を動的設定する。具体的には、色補正係数設定部131は、H0,S0値及びHi,Si値から補正量を算出する。
【0096】
ステップS12では、色補正係数設定部131は、補正後アイコン画像データのHSV値を算出する。具体的には、色補正係数設定部131は、Hi,SiとH0,S0及び、算出した補正量を用いてアイコン画像データを補正し、補正後のアイコン画像のH,S値を算出する。
【0097】
<明るさ補正>
ステップS5では、色補正係数設定部131は、補正前のアイコン画像データをRGB⇒HSV座標(Hi,Si,Vi)に変換する。
【0098】
ステップS6では、色補正係数設定部131は、輝度補正係数を設定する。輝度補正係数は、画像の見栄えなどにより決定する。例えば、輝度補正係数は、20%に設定する。
【0099】
ステップS7では、画像処理部122は、補正後アイコン画像データのHSV値を算出する。具体的には、画像処理部122は、Viに輝度補正係数を掛け、V値を算出する。
【0100】
ステップS8では、画像処理部122は、補正後のアイコン画像データHSV値をRGBへ変換し、補正後のアイコン画像データRGB値を出力する。
【0101】
上記フローを実施することにより、補正後のアイコン画像データ(RGB)を算出することができる。
【0102】
本実施の形態は、色補正係数を動的に変化させる。以下、色補正係数を動的に変化させる補正方法について具体的に説明する。
【0103】
〔具体例1〕
色領域を6分割し、それぞれのエリアで補正量を設定しておく。目標色度と固定アイコン色度が入るエリアにより補正量を決定する。
【0104】
図20は、領域分割による補正量の決定を説明する図である。図21は、領域分割による補正量の算出例を説明する図である。
【0105】
図20に示すように、座標領域を大きな色のくくりで6分割し、それぞれの領域において予め補正量を決定しておく。
【0106】
図21(a)に示すように、目標色度が黄エリアで、固定アイコン色度が水色エリアの場合、補正後のアイコン色度は大きく色が変化することが予想されるため、比較的小さめな補正量とする。
【0107】
図21(b)に示すように、目標色度が黄エリアで、固定アイコン色度が青エリアの場合、補正後のアイコン色度は大きく色が変化しないことが予想されるため、比較的大きな補正量とする。
【0108】
本発明者は、図21(a)に示すように、目標色度と固定アイコン色度が大きい角度を水色エリアの場合、補正後のアイコン色度は大きく色が変化することが予想されるため、比較的小さめな補正量とする。
【0109】
色補正係数設定部131は、固定アイコン色度がどの領域に位置するかを算出し、その領域に設定されている補正量を用いて色度補正をする。
【0110】
これにより、補正による色変化が大きすぎてしまうおそれをなくすことができ、かつ計算量などを削減することができる。
【0111】
〔具体例2〕
固定アイコン色度と補正後のアイコン色度のなす角をθとしたときに、許容できるθの値を予め設定しておき、θを基に補正量を算出する。
【0112】
図22は、θによる補正量の決定を説明する図である。
【0113】
図22(a)に示すように、固定アイコン色度と補正後の色度がなす角をθとしたときに、θがある一定値になるように補正量dを算出する。図22(a)は、θが大きい場合、図22(b)は、θが小さい場合である。
【0114】
θが大きければ大きいほど、固定アイコン色度と補正後の色度の色合いが異なる。本実施の形態では、許容できるθを予め決定しておき、そのθの値から補正量を算出する。また、θが小さい場合であっても補正量が大きすぎる結果となる場合も存在するため、事前に補正量の最大値も決定しておく。
【0115】
これにより、補正による色変化が大きすぎてしまうおそれをなくすことができ、かつ計算量などを削減することができる。
【0116】
このように、本実施の形態によれば、固定アイコン色度の領域、又は固定アイコン部の色度と補正後の色度とがなす角により、色補正係数を動的に変化させているので、より最適な補正量を設定することができる。これにより、実施の形態1の効果、すなわち色毎の劣化ばらつきを抑えて色合い変化をなくし、かつ十分な焼き付き防止効果をより一層高めることができる。
【0117】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0118】
上記各実施の形態では、自発光表示装置として有機ELディスプレイに適用した場合について説明しているが、自発光表示装置であればどのような表示装置あってもよい。例えば、PDPを備える映像表示装置であってもよく、PDPを備える映像表示装置においても、同様に低消費電力化及び焼き付きに対する長寿命化を図ることができる。
【0119】
上記各実施の形態では、自発光表示装置を備える電子機器として携帯電話機などの携帯端末に適用した例について説明しているが、携帯電話機に限らずPDA等の携帯情報端末、パーソナルコンピュータ又はその融合された装置、さらにはMP3プレーヤー、HDDプレーヤー、携帯型ゲーム機などの携帯機器に適用可能である。
【0120】
また、上記各実施の形態では、自発光表示装置及び自発光表示方法という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、装置は映像表示装置、ディスプレイ表示装置等、また方法は表示方法等であってもよい。
【0121】
さらに、上記自発光表示装置を構成する各部、例えば画像処理部、目標色度設定部の種類・機能、その数及び接続方法などはどのようなものでもよい。また、焼き付き防止対象部を固定アイコン部として説明したが、一例を示したものでありこれに限定されないことは勿論である。
【0122】
以上説明した自発光表示方法は、この自発光表示方法を機能させるためのプログラムでも実現される。このプログラムはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納されている。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明に係る自発光表示装置及び自発光表示方法は、入力画像信号に応じた画像を表示するディスプレイ表示装置、特に有機ELディスプレイ表示装置に有用である。
【符号の説明】
【0124】
100 携帯電話機
101 アンテナ
102 無線送受信部
103 送受話回路
104 送受話器
105 操作部
106 撮像装置
107 背面撮像装置
108 表示装置
109,130 自発光表示制御装置
110 自発光ディスプレイ
111,111A 自発光表示装置
112 メモリ
113 制御部
120 目標色度設定部
121 固定アイコン色度算出部
122 画像処理部
131 色補正係数設定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ELからなる自発光ディスプレイと、
有機ELの各色の劣化特性が同等となる目標色度を設定する目標色度設定手段と、
前記自発光ディスプレイの表示画面の焼き付き防止対象部の色度を算出する焼付き対象部色度算出手段と、
前記対象部の色度が前記目標色度に近づくように入力画像信号に対して補正を行う画像処理手段と、
を備える自発光表示装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、前記対象部の色度の補正とともに、輝度を低下させる補正を行う請求項1記載の自発光表示装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、前記対象部の色度が前記目標色度に線形で近づくように補正する請求項1記載の自発光表示装置。
【請求項4】
画像データを色と明るさに分離する色空間に変換し、
前記画像処理手段は、前記色空間の色度に基づいて補正する請求項1記載の自発光表示装置。
【請求項5】
画像データを色と明るさに分離する色空間に変換し、
前記色空間における前記対象部の色度と前記目標色度の色座標に基づいて、前記対象部の色度を補正する色補正係数を動的に設定する色補正係数設定手段とを備え、
前記画像処理手段は、前記動的設定された色補正係数を基に、前記対象部の色度が前記目標色度に近づくように補正する請求項1記載の自発光表示装置。
【請求項6】
前記色補正係数設定手段は、
前記色空間における前記対象部の色度と補正後の色度とがなす角θが一定値又は所定値以下となる前記色補正係数を設定する請求項5記載の自発光表示装置。
【請求項7】
前記色補正係数設定手段は、
前記θの最大許容値、及び/又は最小許容値の範囲で前記色補正係数を設定する請求項5記載の自発光表示装置。
【請求項8】
前記色補正係数設定手段は、
前記色空間を複数の領域に分割し、各領域において前記色補正係数を予め決定するとともに、
前記対象部の色度と前記目標色度とが位置する、前記領域に基づいて、前記色補正係数を設定する請求項5記載の自発光表示装置。
【請求項9】
前記色補正係数設定手段は、
前記色空間を複数の領域に分割し、各領域において前記色補正係数を予め決定するとともに、
前記色空間における前記対象部の色度と前記目標色度とがなす角が180°に近いとき、前記色補正係数を大きく設定する請求項5記載の自発光表示装置。
【請求項10】
有機ELの各色の劣化特性が同等となる目標色度を設定するステップと、
有機ELからなる自発光ディスプレイの表示画面の焼き付き防止対象部の色度を算出するステップと、
前記対象部の色度が前記目標色度に近づくように入力画像信号に対して補正を行うステップと
を有する自発光表示方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−286783(P2010−286783A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142510(P2009−142510)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】