説明

自走式破砕機

【課題】排出コンベヤの姿勢を検出する検出手段の損傷を抑制し、排出コンベヤの姿勢を安定して検出することができる自走式破砕機を提供する。
【解決手段】被破砕物を破砕する自走式破砕機において、左右の走行装置2と、破砕装置20と、本体フレーム3よりも下方で左右の走行装置2の間から前方に延在した排出コンベヤ40と、本体フレーム3に対して排出コンベヤ40を昇降させる昇降シリンダ65と、この昇降シリンダ65のボトム側油室65aに接続する供給管路94の圧力を検出するボトム側圧力検出手段96と、排出コンベヤ40の下降動作時、ボトム側圧力検出手段96の検出圧力P1が予め設定したその閾値P1xを超えたら排出コンベヤ40が作業姿勢にあると判定する姿勢判定部92aと、この姿勢判定部92aにより排出コンベヤ40が作業姿勢にあると判定された場合にのみ破砕装置20の動作を許可する動作許可部92bとを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被破砕物を破砕する自走式破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
自走式破砕機は、建設現場等で発生する大小様々な岩石・建設廃材、産業廃棄物等の被破砕物を破砕装置で破砕処理し、破砕装置から排出された破砕物を排出コンベヤによって機外に搬出する。この種の自走式破砕機には、本体フレームに対して油圧シリンダを介して排出コンベヤを吊り下げ、排出コンベヤを上下動させることができるように構成されたものがある(特許文献1等参照)。こうすることで、破砕作業時には、排出コンベヤを下降させて破砕装置と排出コンベヤとの間隔を確保することで、破砕装置と排出コンベヤとの間に破砕物が詰まり難くすることができる。また、走行動作時には、排出コンベヤを上昇させて最低地上高を高くすることで、悪路等の走行にも有利となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−122014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された自走式破砕機では、排出コンベヤを下げた作業姿勢にあるときの機体の走行動作を禁止するために、排出コンベヤの姿勢をリミットスイッチで検出している。
【0005】
しかしながら、リミットスイッチのような排出コンベヤ又はその昇降用のシリンダの構成要素の結果的動作を機械的に検出する手段を設ける場合、排出コンベヤやシリンダの動作部品に接触又は近接する箇所に当該検出手段を設置しなければならない。こうした箇所は破砕装置から排出される破砕物と干渉し得るところであり、検出手段の上部にカバーを設ける等の措置を施しても検出手段を完全に保護することはできず、落下してくる破砕物との衝突等によって検出手段の損傷を招く恐れがある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みなされたものであり、排出コンベヤの姿勢を検出する検出手段の損傷を抑制し、排出コンベヤの姿勢を安定して検出することができる自走式破砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、被破砕物を破砕する自走式破砕機において、本体フレームと、この本体フレームの左右両側に設けた走行装置と、前記本体フレーム上に設けた破砕装置と、前記本体フレームよりも下方で前記左右の走行装置の間から前方に延在した排出コンベヤと、前記本体フレームに対して前記排出コンベヤを昇降させる昇降シリンダと、この昇降シリンダのボトム側油室又はこれに接続する管路の圧力を検出するボトム側圧力検出手段と、前記排出コンベヤの下降動作時、前記ボトム側圧力検出手段の検出圧力が予め設定したその閾値を超えたら前記排出コンベヤが作業姿勢にあると判定する姿勢判定手段と、この姿勢判定手段により前記排出コンベヤが作業姿勢にあると判定された場合にのみ前記破砕装置の動作を許可する動作許可手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記昇降シリンダのロッド側油室又はこれに接続する管路の圧力を検出するロッド側圧力検出手段をさらに備え、前記姿勢判定手段は、前記排出コンベヤの上昇動作時、前記ロッド側圧力検出手段の検出圧力が予め設定したその閾値を超えたら前記排出コンベヤが走行姿勢にあると判定し、前記動作許可手段は、前記姿勢判定手段により前記排出コンベヤが走行姿勢にあると判定された場合にのみ前記走行装置の動作を許可することを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記排出コンベヤは、前記本体フレームよりも下方で前記走行手段間に位置する上流側フレーム、及びこの上流側フレームの下流側に回動可能に連結された上り傾斜の下流側フレームを有しており、前記下流側フレームは、前記本体フレーム側に支持部材を介して固定的に支持されており、前記上流側フレームは、前記昇降シリンダを介して前記本体フレームに連結されていて、前記昇降シリンダの昇降動作に伴って前記下流側フレームに対して俯仰動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排出コンベヤの姿勢を検出する検出手段の損傷を抑制し、排出コンベヤの姿勢を安定して検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る自走式破砕機の全体構造を表す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る自走式破砕機の全体構造を表す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る自走式破砕機の全体構造を表す背面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る自走式破砕機に備えられた排出コンベヤとその周辺部位を抜き出して表した側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る自走式破砕機に備えられた排出コンベヤの上流側部分及び下流側部分の連結部の拡大斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る自走式破砕機に備えられた排出コンベヤの上流側端部近傍の拡大側面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る自走式破砕機に備えられた排出コンベヤの上流側部分の上下動の様子を表す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る自走式破砕機に備えられた油圧駆動装置の要部を抜き出して表した油圧回路図を表す。
【図9】本発明の一実施形態に係る自走式破砕機に備えられた制御装置による走行動作及び作業動作のインターロック制御の手順を表したフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態に係る自走式破砕機の他の適用例の全体構造を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
本実施形態の自走式破砕機は、例えばビル解体時に搬出されるコンクリート塊や道路補修時に排出されるアスファルト塊等の建設現場で発生する大小様々な建設廃材、産業廃棄物、若しくは岩石採掘現場や切羽で採掘される岩石・自然石等を処理対象とし、これらを被破砕物として受け入れ破砕処理することで破砕物とするものである。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る自走式破砕機の全体構造を表す側面図、図2はその平面図、図3は図1中左側から見た背面図である。図1及び図2中の右左を機体の前後とする。
【0015】
図1−図3に示した自走式破砕機は、機体の自力走行を可能とする走行体1、被破砕物を受入れるホッパ12、ホッパ12で受け入れた被破砕物を搬送するフィーダ15、フィーダ15により供給された被破砕物を破砕処理する破砕装置20、破砕装置20から排出された破砕物を搬出する排出コンベヤ40、及び搭載した各作動装置の動力源を内蔵した動力装置(パワーユニット)25を備えている。
【0016】
走行体1は、本体フレーム3と、この本体フレーム3下方の両側に設けた左右の走行装置2とで構成されている。左右の走行装置2のトラックフレーム4の前後両端にはそれぞれ従動輪5及び駆動輪6が設けられていて、これら従動輪5及び駆動輪6には無限軌道履帯7が巻回され、駆動輪6には駆動装置(走行装置用油圧モータ)8が連結されている。また、本体フレーム3は前後方向に延在し、左右のトラックフレーム4の上部に各1本取り付けられている。左右の本体フレーム3の後部にはそれぞれ支持ポスト9,10が立設されており、支持ポスト9,10には前後に延びる支持バー11が掛け渡されている。
【0017】
ホッパ12は、下方に縮径するよう形成されたあおり状の部材であり、上記支持バー11上に複数の支持部材13を介して支持されている。
【0018】
フィーダ15は、本実施形態ではいわゆるグリズリフィーダを採用しており、ホッパ12の直下に位置し、ホッパ12とは別個に複数のばね18を介して支持バー11上に振動可能に支持されている。フィーダ15の枠型の本体16の内法空間には、左右方向に列設した複数のグリズリバーをパンデッキの前部に設けて構成した篩部材17が複数(この例では2枚)階段状に固定されており、加振装置(フィーダ用油圧モータ)19でフィーダ15を振動させると、投入された篩部材17上の被破砕物が前方に送られるようになっている。なお、加振装置19の構成は特に限定されないが、例えば偏芯軸を回転駆動させる振動モータ等が挙げられる。篩部材17のグリズリバーの下方位置にはシュート14の入口が開口して設けられている。このシュート14は、排出コンベヤ40の搬送面に対向する出口を有している。
【0019】
破砕装置20は、本実施形態ではジョークラッシャで構成されており、ホッパ12及びフィーダ15よりも前方に位置し、図1に示すように、本体フレーム3の前後方向中央付近に搭載されている。この破砕装置20は、公知の構成のものであり、互いの間隙空間が下方に向かって縮径するよう対向した一対の動歯及び固定歯(共に図示せず)を備えている。図2に示した駆動装置(破砕用油圧モータ)21を駆動すると、フライホイール22が回転駆動し、このフライホイール22の回転運動が変換機構を介して動歯(図示せず)に伝達され、静止した固定歯に対して概ね前後方向に動歯が揺動するようになっている。
【0020】
動力装置25は、図1に示したように、破砕装置20の前側に位置し、支持部材26を介し本体フレーム3の前端部に支持されている。繁雑防止のため特に図示しないが、動力装置25内には、動力源となるエンジン(原動機)、エンジンによって駆動される油圧ポンプ、油圧ポンプから各油圧駆動装置への圧油を制御する制御弁、燃料タンク(図2に給油口30を図示)、作動油タンク(図2に給油口31を図示)等を内蔵している。また、動力装置25の上面にはプレクリーナ32が突出しており、このプレクリーナ32によって、エンジンへの吸気中の塵埃を動力装置25内のエアクリーナ(図示せず)の上流側で予め捕集するようになっている。また、動力装置25の後部の区画には、操作者が搭乗する運転席35が設けられている。運転席35には、走行装置2の操作用の操作レバー36が設けられている。
【0021】
排出コンベヤ40の排出コンベヤ40の上流側部分(後側部分)は、本体フレーム3よりも下方で左右の走行装置2の間に位置し、ほぼ水平な姿勢で本体フレーム3から吊り支持されている。また、排出コンベヤ40の下流側部分(前側部分)は、アーム部材43及び支持部材41,42を介して動力装置25から吊り支持されており、下流側に斜めに立ち上がる姿勢で固定されている。排出コンベヤ40のコンベヤフレーム45の前後両端に設けた従動輪46及び駆動輪47には搬送ベルト50が巻回されており、駆動輪47に直結した駆動装置(排出コンベヤ用油圧モータ)48を駆動すると、搬送ベルト50が駆動輪47と従動輪46との間で循環駆動するようになっている。
【0022】
上記アーム部材43には、支持部材56を介して磁選機55が吊り支持されている。この磁選機55は、排出コンベヤ40で搬送される破砕物中の鉄筋等の異物(磁性物)を除去する装置である。磁選機55の駆動輪57及び従動輪58に巻回した磁選機ベルト59は、排出コンベヤ40の搬送ベルト50の搬送面に対向し、当該搬送ベルト50にほぼ直交している。磁選機ベルト59の軌道の内側には磁力発生手段(図示せず)が設けられており、搬送ベルト50上の鉄筋等の異物は、磁選機ベルト59越しに作用する磁力発生手段からの磁力により磁選機ベルト59に吸着され、駆動輪57に直結した駆動装置(磁選機用油圧モータ)60によって磁選機ベルト59が循環駆動すると、磁選機ベルト59に吸着された異物が排出コンベヤ40の側方に搬送され除去される。ここで、本実施形態の排出コンベヤ40は、破砕装置20の下方に位置する搬送方向上流側部分が下流側部分に対して上下に揺動するようになっている。
【0023】
図4は排出コンベヤ20とその周辺部位を抜き出して表した側面図、図5は排出コンベヤ20の上流側部分及び下流側部分の連結部の拡大斜視図、図6は排出コンベヤ20の上流側端部近傍の拡大側面図、図7は排出コンベヤ20の上流側部分の上下動の様子を表す図である。なお、図5においては、上記搬送ベルト50を図示省略してある。
【0024】
これら図4−図7に示すように、上記コンベヤフレーム45は、搬送方向上流側の部分であって本体フレーム3よりも下方で左右の走行装置2の間に位置する上流側フレーム45a、及び搬送方向下流側の部分であって上流側フレーム45aの下流側に回動可能に連結された上り傾斜の下流側フレーム45bからなっている。これら上流側及び下流側フレーム45a,45bは、互いの対向端部にそれぞれ設けたブラケット61,62が支軸63で連結され、これにより回動可能に連結されている。下流側フレーム45bは、前述した支持部材41,42及び支持アーム43を介して本体フレーム3上の動力装置積載フレーム25aに固定的に支持されている。それに対し、上流側フレーム45aは、油圧駆動式の昇降シリンダ65の伸縮動作に伴って、下流側フレーム45bに対し支軸63を支点として上下方向に回動(俯仰動)するようになっている。
【0025】
昇降シリンダ65の両端は、上流側フレーム45aの後端部及び本体フレーム3にそれぞれ設けたブラケット66,67(図6参照)に対して回動可能に連結されている。この昇降シリンダ65は、上流側フレーム45aの姿勢を変える姿勢変更手段の役割を果たし、図7に示すように、昇降シリンダ65をストロークエンドまで伸ばして上流側フレーム45aをほぼ水平なポジションAまで下降させると、排出コンベヤ40は作業姿勢に移行する。また、昇降シリンダ65をストロークエンドまで縮めて上流側フレーム45aを下流側に下り傾斜となるポジションBまで上昇させると、排出コンベヤ40は走行姿勢に移行する。
【0026】
このとき、上流側フレーム45aは、ストッパ73によって本体フレーム3に対して上記ポジションA又はBのいずれかの位置で係止することができるようになっている。このストッパ73は、上端部がピン74を介して本体フレーム3に連結されており、ピン74を支点に前後に揺動可能な構成となっている。一方、ストッパ73の下端にはフック77が設けられており、上流側フレーム45aの後端部の上下段に設けたストッパピン75又は76に対してフック77が掛けられるようになっている。例えば上流側フレーム45aがポジションAにあるとき、上段のストッパピン75にフック77を係止することで、排出コンベヤ40を作業姿勢で機械的に保持する。また、上流側フレーム45aがポジションBにあるとき、下段のストッパピン76にフック77を係止することで、排出コンベヤ40を走行姿勢で機械的に保持する。
【0027】
図8に本実施形態に係る自走式破砕機の油圧駆動装置の要部を抜き出して表した油圧回路図を表す。
【0028】
図8に示した油圧駆動装置は、エンジン(図示せず)で駆動される第1及び第2の油圧ポンプ81,82と、第1及び第2の油圧ポンプ81,82の吐出管路83,84に設けたリリーフ弁81a,82aと、第1の油圧ポンプ81の吐出管路83に設けた2位置切換式の走行許可用切換弁85と、第2の油圧ポンプ82の吐出管路84に設けた作業許可用切換弁86と、第1の油圧ポンプ81から左右の走行装置用油圧モータ8L,8Rへの圧油の流れを制御する走行装置用制御弁87,88と、第2の油圧ポンプ82から破砕装置用油圧モータ89への圧油の流れを制御する破砕装置用制御弁90と、第1の油圧ポンプ81から昇降シリンダ65への圧油の流れを制御する昇降シリンダ用制御弁91と、走行許可用切換弁85及び作業許可用切換弁86を制御する制御装置92とを備えている。
【0029】
左走行装置用の走行装置用制御弁87は、両側のばねの付勢力によって通常はニュートラルポジション87Cにあり、第1の油圧ポンプ81と左走行装置用駆動装置8Lとの間の油路を遮断している。この走行装置用制御弁87は、操作レバー36(図1参照)の操作に応じたパイロット圧をパイロット駆動部87a又は87bに受けるとポジション87A又は87Bに切り換わり、第1の油圧ポンプ81から左走行装置用駆動装置8Lへの圧油の供給方向を切り換え、左走行装置用駆動装置8Lを正転駆動又は逆転駆動させるようになっている。なお、走行装置用制御弁87は、ソレノイド駆動式のものとしても良い。
【0030】
同様に、右走行装置用の走行装置用制御弁88は、両側のばねの付勢力によって通常はニュートラルポジション88Cにあり、第1の油圧ポンプ81と右走行装置用駆動装置8Rとの間の油路を遮断している。この走行装置用制御弁88は、操作レバー36(図1参照)の操作に応じたパイロット圧をパイロット駆動部88a又は88bに受けるとポジション88A又は88Bに切り換わり、第1の油圧ポンプ81から右走行装置用駆動装置8Rへの圧油の供給方向を切り換え、右走行装置用駆動装置8Rを正転駆動又は逆転駆動させるようになっている。なお、走行装置用制御弁88は、ソレノイド駆動式のものとしても良い。
【0031】
破砕装置用制御弁90は、両側のばねの付勢力によって通常はニュートラルポジション90Cにあり、第2の油圧ポンプ82と破砕装置用駆動装置89との間の油路を遮断している。この破砕装置用制御弁90は、操作盤(図示せず)の操作に応じた指令信号をソレノイド駆動部90a又は90bに受けるとポジション90A又は90Bに切り換わり、第2の油圧ポンプ82から破砕装置用駆動装置89への圧油の供給方向を切り換え、破砕装置用駆動装置89を正転駆動又は逆転駆動させるようになっている。なお、破砕装置用制御弁90は、パイロット駆動式のものとしても良い。
【0032】
昇降シリンダ用制御弁91は、両端のばねの付勢力によって通常はニュートラルポジション91Cにあり、第1の油圧ポンプ81と昇降シリンダ65との間の油路を遮断している。この昇降シリンダ用制御弁91は、昇降シリンダ操作用の操作装置93の操作に応じた指令信号をソレノイド駆動部91a又は91bに受けるとポジション91A又は91Bに切り換わり、第1の油圧ポンプ81から昇降シリンダ65への圧油の供給方向を切り換え、昇降シリンダ65を伸縮させるようになっている。具体的には、図8でニュートラル位置にある操作装置93の切換スイッチ93aを「上」位置に入れると、昇降シリンダ用制御弁91のソレノイド駆動部91aが励磁され、昇降シリンダ用制御弁91がポジション91Aに切り換わって昇降シリンダ65が縮まる。反対に、切換スイッチ93aを「下」位置に入れると、昇降シリンダ用制御弁91のソレノイド駆動部91bが励磁され、昇降シリンダ用制御弁91がポジション91Bに切り換わって昇降シリンダ65が伸びる。なお、昇降シリンダ用制御弁91は、パイロット駆動式のものとしても良い。なお、特に図示していないが、操作装置93は、制御装置92と電気的に接続しており、切換スイッチ93aが「上」位置又は「下」位置に入ると、それに応じた信号が制御装置92に入力される。
【0033】
なお、本実施形態では、破砕作業中や走行動作中に昇降シリンダ65の伸縮動作を禁止するようなインターロックが備わっている。
【0034】
昇降シリンダ65のボトム側油室65aに接続する圧油の供給管路94には、この供給管路94内の圧油の圧力を検出するボトム側圧力検出手段96が設けられている。また、昇降シリンダ65のロッド側油室65bに接続する圧油の供給管路95には、この供給管路95内の圧油の圧力を検出するロッド側圧力検出手段97が設けられている。これらボトム側圧力検出手段96及びロッド側圧力検出手段97の検出信号は制御装置92に出力される。なお、ボトム側圧力検出手段96及びロッド側圧力検出手段97で供給管路94,95の圧力を検出する構成としたが、昇降シリンダ65のボトム側油室65a及びロッド側油室65bの圧力を検出する構成としても良い。
【0035】
制御装置92は、ボトム側圧力検出手段96及びロッド側圧力検出手段97の検出信号を基に排出コンベヤ40の姿勢を判定する姿勢判定部92a、及び姿勢判定部92aの判定結果を基に走行許可用切換弁85及び作業許可用切換弁86を切換制御する動作許可部92bを有している。
【0036】
ここで、昇降シリンダ65の伸縮動作時、ストロークエンドに達するとシリンダチューブにロッドが拘束されることで、シリンダが伸びきったとき(作業姿勢時)にはボトム側油室65aや供給管路94の圧力が上昇し、シリンダが縮みきったとき(走行姿勢時)にはロッド側油室65bや供給管路95の圧力が上昇する。このことを利用して、本実施形態において、姿勢判定部92aは、排出コンベヤの下降動作時(例えば切換スイッチ93aが「下」位置にある旨の信号が操作装置93から入力されている時)、ボトム側圧力検出手段96の検出圧力P1が予め設定したその閾値P1xを超えたら排出コンベヤが作業姿勢(図7のポジションA)にあると判定する。反対に、排出コンベヤ40の上昇動作時(例えば切換スイッチ93aが「上」位置にある旨の信号が操作装置93から入力されている時)、ロッド側圧力検出手段97の検出圧力P2が予め設定したその閾値P2xを超えたら排出コンベヤ40が走行姿勢(図7のポジションB)にあると判定する。閾値P1X,P2xは同値に設定しても良いが、異なる値に設定しても良い。
【0037】
そして、動作許可部92bは、姿勢判定手段92aにより排出コンベヤ40が作業姿勢にあると判定された場合にのみ破砕装置20の動作を許可し、排出コンベヤ40が走行姿勢にあると判定された場合にのみ走行装置2の動作を許可する。言い換えれば、動作許可部92bは、排出コンベヤ40が作業姿勢にあると判定された場合を含め、排出コンベヤ40が走行位置以外にある場合には、走行装置2の動作を禁止する。排出コンベヤ40が走行姿勢にあると判定された場合を含め、排出コンベヤ40が作業位置以外あると場合には、破砕装置20の動作を禁止する。
【0038】
なお、破砕装置20の動作を禁止するに当たって、グリズリフィーダ15の加振機19や排出コンベヤ40の駆動装置48の動作を併せて禁止するようにすることもできる。
【0039】
走行許可用切換弁85は、ばねの付勢力によって通常はポジション85Bにあり、第1の油圧ポンプ81の吐出管路83をタンクTに接続し、走行動作を不能としている。それに対し、排出コンベヤ40の姿勢が走行位置にあって動作許可部92bからの信号Sc2がソレノイド駆動部85aに入力された場合には、走行許可用切換弁85はポジション85Aに切り換わり、第1の油圧ポンプ81の吐出管路83と走行装置用制御弁87,88とを接続して走行動作を可能とする。
【0040】
作業許可用切換弁86は、ばねの付勢力によって通常はポジション86Bにあり、第2の油圧ポンプ82の吐出管路84をタンクTに接続し、破砕動作を不能としている。それに対し、排出コンベヤ40の姿勢が作業位置にあって動作許可部92bからの信号Sc1がソレノイド駆動部86aに入力された場合には、作業許可用切換弁86はポジション86Aに切り換わり、第2の油圧ポンプ82の吐出管路84と破砕装置用制御弁89とを接続して破砕動作を可能とする。
【0041】
次に、上記構成の本実施の形態の自走式破砕機の動作を説明する。
【0042】
図9は制御装置92による走行動作及び作業動作のインターロック制御の手順を表したフローチャートである。
【0043】
(S100)
制御装置92は、操作装置93から昇降シリンダ65を駆動する旨の信号が入力されたら(切換スイッチ93aが「上」又は「下」のポジションに入ったら)図9の手順を開始する。まず、S100では、操作装置93から入力された信号が、排出コンベヤ40を上昇させる信号(すなわち走行姿勢に向かわせる信号)であるか否かを判定する。操作装置93の切換スイッチ93aが「上」位置に入って操作装置93から上昇を指示する指令信号が入力された場合(排出コンベヤ40の走行姿勢への移行が指示された場合)には、手順をS110に移す。操作装置93の切換スイッチ93aが「下」位置に入って操作装置93から下降を指示する指令信号が入力された場合(排出コンベヤ40の作業姿勢への移行が指示された場合)には、手順をS120に移す。
【0044】
(S110,S111)
操作装置93の切換スイッチ93aが「上」位置に入ったら、ソレノイド駆動部91aが励磁されて昇降シリンダ用制御弁91がポジション91Aに切り換わり、第1の油圧ポンプ81からの圧油が昇降シリンダ65のロッド側油室65bに供給され、昇降シリンダ65が縮む(S110)。S111においては、制御装置92は、姿勢判定部92aにおいて、ロッド側圧力検出手段97から入力される検出圧力P2をこれに対して予め設定した閾値P2xと比較し、検出圧力P2が閾値P2xを超えたか否かを判定する。P2≦P2xであれば、姿勢判定部92aにおいて排出コンベヤ40の走行姿勢への移行が完了していないものと判定され、制御装置92は手順をS100に戻す。P2>P2xであれば、姿勢判定部92aにおいて排出コンベヤ40の走行姿勢への移行が完了したものと判定され、制御装置92は手順をS112に進める。
【0045】
(S112)
姿勢判定部92aで排出コンベヤ40が走行姿勢に到達したものと判定されたら、制御装置92は、動作許可部92bで生成された指令信号Sc2を走行許可用切換弁85のソレノイド駆動部85aに出力する。これによってソレノイド駆動部85aが励磁されて、走行許可用切換弁85がポジション85Aに切り換わる。その結果、走行装置用制御弁87,88が第1の油圧ポンプ81に接続し、走行装置用制御弁87,88を駆動することによって走行装置用駆動装置8L,8Rに対して圧油を切換供給することができるようになり、走行動作が可能となる。なお、排出コンベヤ40が作業姿勢にないときは、動作許可部92bから作業許可用切換弁86への指令信号Sc1の出力が停止しているので、作業許可用切換弁86はポジション86Bに付勢されており、破砕動作は禁止された状態にある。制御装置92は、こうして走行動作を許可したら図9の手順を終了する。
【0046】
排出コンベヤ40が走行姿勢に移行したら、作業者は、ストッパ73をストッパピン76に係止して上流側フレーム45aを固定し、排出コンベヤ40を走行姿勢で機械的に固定する。この状態で走行操作をすることにより、自走式破砕機が走行する。
【0047】
(S120,S121)
一方、操作装置93の切換スイッチ93aが「下」位置に入ったら、ソレノイド駆動部91bが励磁されて昇降シリンダ用制御弁91がポジション91Bに切り換わり、第1の油圧ポンプ81からの圧油が昇降シリンダ65のボトム側油室65aに供給され、昇降シリンダ65が伸びる(S120)。S121においては、制御装置92は、姿勢判定部92aにおいて、ボトム側圧力検出手段96から入力される検出圧力P1をこれに対して予め設定した閾値P1xと比較し、検出圧力P1が閾値P1xを超えたか否かを判定する。P1≦P1xであれば、姿勢判定部92aにおいて排出コンベヤ40の作業姿勢への移行が完了していないものと判定され、制御装置92は手順をS100に戻す。P1>P1xであれば、姿勢判定部92aにおいて排出コンベヤ40の作業姿勢への移行が完了したものと判定され、制御装置92は手順をS122に進める。
【0048】
(S122)
姿勢判定部92aで排出コンベヤ40が作業姿勢に到達したものと判定されたら、制御装置92は、動作許可部92bで生成された指令信号Sc1を作業許可用切換弁86のソレノイド駆動部86aに出力する。これによってソレノイド駆動部86aが励磁されて、作業許可用切換弁86がポジション86Aに切り換わる。その結果、破砕装置用制御弁90が第2の油圧ポンプ82に接続し、破砕装置用制御弁90を駆動することによって破砕装置用駆動装置89に対して圧油を切換供給することができるようになり、破砕動作が可能となる。なお、排出コンベヤ40が走行姿勢にないときは、動作許可部92bから走行許可用切換弁85への指令信号Sc2の出力が停止しているので、走行許可用切換弁85はポジション85Bに付勢されており、走行動作は禁止された状態にある。制御装置92は、こうして破砕動作を許可したら図9の手順を終了する。
【0049】
排出コンベヤ40が作業姿勢に移行したら、作業者は、ストッパ73をストッパピン75に掛けて排出コンベヤ40を作業姿勢で固定する。この状態で、排出コンベヤ40、破砕装置20、フィーダ15を駆動し、例えば油圧ショベル等によりホッパ12に被破砕物を投入する。すると、ホッパ12で受け入れられた被破砕物はフィーダ15によって破砕装置20に供給される。このとき、グリズリバーの間隙よりも小さな成分(ズリ等)は、グリズリバーの隙間から落下してシュート14を介して排出コンベヤ40上に導かれる。一方、破砕装置20に搬送された被破砕物は、固定歯及び動歯により所定の粒度に砕かれ、下方の排出コンベヤ40上に落下する。排出コンベヤ40上に導かれた破砕物は、シュート14を介して導かれたズリ等とともに排出コンベヤ40によって前方に搬送され、途中で磁選機55によって鉄筋等の異物を吸着除去された上で、最終的に機体前方に搬出される。
【0050】
本実施形態の作用効果を次に説明する。
【0051】
本実施形態では、昇降シリンダ65のロッド側及びボトム側の検出圧力を基に排出コンベヤ40の姿勢を判定している。ボトム側圧力検出手段96及びロッド側圧力検出手段97は、排出コンベヤ40や昇降シリンダ65の構成部品の機械的動作を検出するものではないので、カバーで包囲してしまってもセンサとしても機能を果たし得る。また、例えば昇降シリンダ65に接続する供給管路94,95に設けることができるので、破砕装置20から落下する破砕物等と干渉し得る領域を避けて設置することもできる。したがって、破砕装置20から落下してくる破砕物との衝突等によるボトム側圧力検出手段96及びロッド側圧力検出手段97の損傷を抑制することができ、排出コンベヤ20の姿勢を安定して検出することができる。
【0052】
なお、以上は、ジョークラッシャを破砕装置20として備えた自走式破砕機を例に挙げて説明したが、本発明はその技術的思想を逸脱しない範囲で種々の自走式破砕機に適用可能である。例えば、図10に示すように、破砕装置として、カッタを有する平行な複数の軸を互いに逆回転させることにより建設廃材等をせん断するシュレッダ(せん断機)を破砕装置20として備えた自走式破砕機に適用しても同様の効果を得ることができる。この場合、破砕装置20は2軸せん断機であっても更に多数軸のせん断機であっても構わない。なお、図10において既出図面と同様の部分又は実質的に同様の役割を果たす部分には既出図面と同符号を付し説明を省略する。
【0053】
また、更に他の破砕装置、例えば、ロール状の回転体に破砕用の刃を取り付けたものを一対としてそれら一対を互いに逆方向へ回転させ、それら回転体の間に岩石・建設廃材等を挟み込んで破砕を行う回転式破砕装置(いわゆるロールクラッシャ)や、複数個の刃物を備えた打撃板を高速回転させ、この打撃板からの打撃及び反発板との衝突を用いて岩石・建設廃材等を衝撃的に破砕する破砕装置(いわゆるインパクトクラッシャ)や、カッタやビット等を備えたロータで木材、枝木材、建設廃木等の木材を投入することにより細片にする木材破砕装置を備えた自走式破砕機にも適用可能である。
【0054】
また、排出コンベヤ40を破砕装置20の下側からホッパ12と反対の動力装置25側に延ばした自走式破砕機を例に挙げて説明したが、これに限られず、例えば、排出コンベヤを破砕装置20の下側からホッパ12側に延ばした自走式破砕機にも本発明は適用可能である。
【0055】
また、上流側フレーム45aのみが俯仰動し下流側フレーム45bは変位しない型の排出コンベヤ40を備えた自走式破砕機に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、排出コンベヤ全体が上下に昇降する構成の自走式破砕機についても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
2 走行装置
3 本体フレーム
20 破砕装置
40 排出コンベヤ
41,42 支持部材
45a 上流側フレーム
45b 下流側フレーム
65 昇降シリンダ
65a ボトム側油室
65b ロッド側油室
94 管路
92a 姿勢判定部(姿勢判定手段)
92b 動作許可部(動作許可手段)
95 管路
96 ボトム側圧力検出手段
P1 検出圧力
P1x 閾値
P2 検出圧力
P2x 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被破砕物を破砕する自走式破砕機において、
本体フレームと、
この本体フレームの左右両側に設けた走行装置と、
前記本体フレーム上に設けた破砕装置と、
前記本体フレームよりも下方で前記左右の走行装置の間から前方に延在した排出コンベヤと、
前記本体フレームに対して前記排出コンベヤを昇降させる昇降シリンダと、
この昇降シリンダのボトム側油室又はこれに接続する管路の圧力を検出するボトム側圧力検出手段と、
前記排出コンベヤの下降動作時、前記ボトム側圧力検出手段の検出圧力が予め設定したその閾値を超えたら前記排出コンベヤが作業姿勢にあると判定する姿勢判定手段と、
この姿勢判定手段により前記排出コンベヤが作業姿勢にあると判定された場合にのみ前記破砕装置の動作を許可する動作許可手段と
を備えたことを特徴とする自走式破砕機。
【請求項2】
前記昇降シリンダのロッド側油室又はこれに接続する管路の圧力を検出するロッド側圧力検出手段をさらに備え、
前記姿勢判定手段は、前記排出コンベヤの上昇動作時、前記ロッド側圧力検出手段の検出圧力が予め設定したその閾値を超えたら前記排出コンベヤが走行姿勢にあると判定し、
前記動作許可手段は、前記姿勢判定手段により前記排出コンベヤが走行姿勢にあると判定された場合にのみ前記走行装置の動作を許可する
ことを特徴とする請求項1に記載の自走式破砕機。
【請求項3】
前記排出コンベヤは、前記本体フレームよりも下方で前記走行手段間に位置する上流側フレーム、及びこの上流側フレームの下流側に回動可能に連結された上り傾斜の下流側フレームを有しており、
前記下流側フレームは、前記本体フレーム側に支持部材を介して固定的に支持されており、
前記上流側フレームは、前記昇降シリンダを介して前記本体フレームに連結されていて、前記昇降シリンダの昇降動作に伴って前記下流側フレームに対して俯仰動する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自走式破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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