説明

自転車用自動変速システム

【課題】騎乗者の体調をパラメータ情報とし、当該パラメータ情報の変化に応じてギヤ機構のギヤ比を切り換える自動変速システムを提供する。
【解決手段】複数のギヤ比を有するギヤ機構をそなえている自転車用自動変速システムであって、騎乗者の体調を生理的なパラメータとして検出するためのパラメータ検出機構(2)と、前記パラメータ検出機構(2)に接続され、パラメータ検出機構(2)から得られる生理的なパラメータに基づいて、騎乗者の生理的なパラメータデータを計算するように構成されているパラメータ処理機構(4)と、前記パラメータ処理機構(4)に接続され、前記パラメータ処理機構(4)によって計算される生理的なパラメータデータに応じて駆動信号を生成するように構成されている信号生成機構(6)と、前記信号生成機構(6)に接続され、前記信号生成機構(6)からの駆動信号に応じて前記自転車(1)のギヤ機構を操作し、一のギヤ比を選択切換える自動シフト機構(7)と、からなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車の走行速度を設定するための自動変速システムに関し、特に、騎乗者の身体状況をパラメータ情報とし、当該パラメータ情報に応じてギヤ機構のギヤ比を自動的に切り換えることができる自転車用自動変速システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自転車の走行速度を設定するための自動変速システムとして、例えば道路状況や走行速度に基づいて複数ギヤ比を有するギヤ機構のギヤ比を自動切り換えすることができる自動変速システムがある。この自動変速システムにおいては、ギヤ機構のギヤ比が個別に所定の走行速度範囲に割当てられており、走行速度に応じて適当なギヤ比が切り換わるような構成となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記自動変速システムにおいては、騎乗者のからだのコンディションに対する配慮がなされていないので、体調の変化例えば高速走行中に脈拍数が高まり減速しようと思っているとき、速さに応じてギヤ比が勝手に上がってしまったり、普通の走行状態において速度が下がったのにギヤ比も低速走行に切り換えられている際、意のままペタルをこいで走行速度を高めることができないなどの問題点がある。
【0004】
本発明は、上記問題点を解消しようとするもので、騎乗者の体調をパラメータ情報とし、当該パラメータ情報の変化に応じてギヤ機構のギヤ比を切り換える自動変速システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、複数のギヤ比を有するギヤ機構をそなえている自転車用自動変速システムであって、騎乗者の体調を生理的なパラメータとして検出するためのパラメータ検出機構と、前記パラメータ検出機構に接続され、パラメータ検出機構から得られる生理的なパラメータに基づいて、騎乗者の生理的なパラメータデータを計算するように構成されているパラメータ処理機構と、前記パラメータ処理機構に接続され、前記パラメータ処理機構によって計算される生理的なパラメータデータに応じて駆動信号を生成するように構成されている信号生成機構と、前記信号生成機構に接続され、前記信号生成機構からの駆動信号に応じて前記自転車のギヤ機構を操作し、一のギヤ比を選択切換える自動シフト機構と、から構成されていることを特徴とする自転車用自動変速システムを提供する。
【0006】
前記システム中、前記パラメータ検出機構は、サイクリストの身体と接触できるように配置されているハウジングと、前記ハウジングに設けられ、騎乗者の生理的なパラメータを検出するパラメータ検出部と、前記パラメータ検出部と前記パラメータ処理機構とに接続され、前記パラメータ検出部からのパラメータを前記パラメータ処理機構に与えるパラメータ出力部と、からなる。
【0007】
前記システム中、前記信号生成機構は、前記自動シフト機構に接続されている信号生成部と、前記信号生成部と前記パラメータ処理機構に接続され、前記信号生成部から駆動信号を生成して前記自動シフト機構へ送信するように制御する制御部とからなる。
【0008】
また、前記システムは、さらに前記パラメータ出力部と前記パラメータ処理機構とに接続されている受信機構を有し、生理的なパラメータを前記パラメータ検出機構から前記パラメータ処理機構へ中継し、且つ、前記自転車から補助信号としての道路のスロープと、前記ギヤ機構のカレントギヤ比と、ペタルトルクと、走行速度のいずかのデータを受信するように構成されている。
【0009】
なお、前記パラメータ処理機構によって計算される生理的なパラメータには、生理的なパラメータの現在状態分析と、生理的なパラメータ範囲分析、生理的なパラメータ変化及び酸素消費量分析と、生理的なパラメータ経時的変化の分析とがあることが好ましい。
【0010】
前記システム中、前記受信機構には、前記生理的なパラメータと前記補助信号を受信する信号処理部と、前記生理的なパラメータと前記補助信号を前記パラメータ処理機構に中継する送信部とから構成されている。
【0011】
前記システムは、さらに、前記パラメータ処理機構と前記信号生成機構に接続され、前記生理的なパラメータと前記補助信号の1つ以上のデータを示す表示機構を有している。
【0012】
なお、前記表示機構には、騎乗者の心拍数、心電図、現在走行速度、走行距離、走行時間、現在ペタルトルク、ギヤ機構の現在ギヤ比などのデータを表示できることが好ましい。
【0013】
また、本発明のシステムは、さらに、前記パラメータ処理機構に接続され、生理的なパラメータデータを表示する表示機構を有している。
【0014】
前記システム中、前記自動シフト機構は、選ばれた前記ギヤ比に応じて前記ギヤ機構を操作する駆動部と、前記駆動部に接続され、前記自転車のギヤ機構に連動させるように構成されている減速部とからなっている。
【0015】
なお、前記駆動部としては、モータを用いることが好ましい。
【0016】
前記システム中、前記パラメータ検出機構はまた、前記騎乗者の心拍数又は脈拍数を検出するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パラメータ検出機構とパラメータ処理機構とにより騎乗者の体調の変化に応じて計算されるパラメータ情報に基づいてギヤ機構のギヤ比を切り換えることができるので、生理的なパラメータ情報によって、体調に見合うギヤ比に変えて、走行速度をうまく調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の自転車用の実施の形態の自動変速システムの構成を示すブロック、図2は、自転車に取付けられた構成例を示す。この実施の形態の自動変速システムは、自転車に取付けられており、含まれた複数のギヤ比を切り換えることができるものである。
【0020】
該自動変速システムには、パラメータ検出機構2と、パラメータ処理機構4と、表示機構5と、信号生成機構6と、自動シフト機構7とからなっている。この例においては、自動変速システムは、図2に示されているように、さらに、自転車1のハンドルバー11に取付けられているシフタ12をそなえる。シフタ12は、自動変速システムのターンオン・ターンオフの切り換え、且ついくつかの自動変速モードの切り換えを制御するためのスイッチである。騎乗者は例えば、シフタ12を操作して自動変速システムをオン・オフにさせ、自動変速モードに切り換えるようにすることができる。
【0021】
パラメータ検出機構2は、騎乗者の体調に応じて例えば心拍数又は脈拍数を生理的なパラメータとして検出するためのものである。具体的には、パラメータ検出機構2は、騎乗者と接触できるように配置されているハウジング21と、ハウジング21に設けられ、騎乗者の生理的なパラメータを検出するパラメータ検出部22と、パラメータ検出部22とパラメータ処理機構4とに接続され、検出部22からのパラメータをパラメータ処理機構4に与えるパラメータ出力部23とからなる。
【0022】
この例においては、自動変速システムはさらに受信機構3を有し、該受信機構3はパラメータ出力部23とパラメータ処理機構4とに接続されている。ここで、受信機構3はパラメータ出力部23とパラメータ処理機構4との間に直接接続されず、且つ、生理的なパラメータをパラメータ検出機構2からパラメータ処理機構4へ中継する。また、受信機構3は、自転車から補助信号としての道路のスロープと、ギヤ機構のカレントギヤ比と、ペタルトルクと、走行速度などのデータを受信するように、生理的なパラメータと補助信号を受信する信号処理部31と、生理的なパラメータと補助信号をパラメータ処理機構4に中継する送信部32とから構成されている。
【0023】
パラメータ処理機構4は、パラメータ検出機構2から得られる生理的なパラメータに基づいて、騎乗者の生理的なパラメータデータを計算するように構成されている。ここで、生理的なパラメータデータは、生理的なパラメータ及び補助信号を参考にパラメータ処理機構4によって計算される。具体的は、パラメータ処理機構4によって計算される生理的なパラメータには、少なくとも生理的なパラメータの現在状態分析と、生理的なパラメータ範囲分析、生理的なパラメータ変動及び酸素消費量分析と、生理的なパラメータ経時的変化の分析とがある。生理的なパラメータ範囲分析の一例として、例えば騎乗者の最高心拍数を計算するとき、最高心拍数=220−年齢とある。
【0024】
表示機構5は、パラメータ処理機構4と信号生成機構6とに接続されており、生理的なパラメータ及び補助信号のいずれかのデータにかかるデータを表示するディスプレースクリーン51をそなえて、生理的なパラメータ処理機構4によって制御され、または信号生成機構6によって送信されてくる信号を用いて、騎乗者の心拍数、心電図、現在走行速度、走行距離、走行時間、現在ペタルトルク、ギヤ機構の現在ギヤ比などのデータを表示するように構成されている。
【0025】
信号生成機構6は、パラメータ処理機構4に接続されており、パラメータ処理機構4によって計算される生理的なパラメータデータに応じて駆動信号を生成するように構成されている。この例においては、信号生成機構6は、生理的なパラメータ処理機構4に接続されている制御部61と、制御部61と自動シフト機構7に接続されている信号生成部62と、制御部61に接続されている送信部64とからなる。制御部61は、信号生成部62から駆動信号を生成して自動シフト機構7へ送信し、また、送信部64から表示機構6へ駆動信号に応じる表示信号を送信するように制御する。
【0026】
自動シフト機構7は、信号生成機構6に接続されており、信号生成機構6から受信される駆動信号に応じて自転車1のギヤ機構を操作して一つのギヤ比を選択する。この例においては、自動シフト機構7は、選ばれたギヤ比にてギヤ機構を操作する駆動部72と、自転車1のギヤ機構と駆動部72とに連動させている減速部73とからなる。なお、駆動部72としてモータが用いられる。
【0027】
変速操作において、まずパラメータ検出機構2は、騎乗者の心拍数を検出する。心拍数がかなり低いとき、ギヤ機構のギヤ比を制御してギヤ比をシフトさせて高いギヤ比にセットし、また、騎乗者の心拍数が予定のしきい値になるとき、ギヤ比を制御して低いギヤ比にセットする。
【産業上の利用可能性】
【0028】
このように本発明の自動変速システムによれば、騎乗者の体調に応じてギヤ機構のギヤ比を自動的に切換えすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の自転車用の実施の形態の自動変速システムの構成を示すブロック図である。
【図2】自転車に取付けられた構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1...自転車、11...ハンドルバー、12...シフター
2...パラメータ検出機構、21...ハウジング、22...パラメータ検出部
23...パラメータ出力部、3...受信機構、31...信号処理部
32...送信部、4...パラメータ処理機構、5...表示機構
51...ディスプレースクリーン、6...信号生成機構、61...制御部
62...信号生成部、64...送信部、7...自動シフト機構
72...駆動部、73...減速部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のギヤ比を有するギヤ機構をそなえている自転車用自動変速システムであって、
騎乗者の体調を生理的なパラメータとして検出するためのパラメータ検出機構(2)と、
前記パラメータ検出機構(2)に接続され、パラメータ検出機構(2)から得られる生理的なパラメータに基づいて、騎乗者の生理的なパラメータデータを計算するように構成されているパラメータ処理機構(4)と、
前記パラメータ処理機構(4)に接続され、前記パラメータ処理機構(4)によって計算される生理的なパラメータデータに応じて駆動信号を生成するように構成されている信号生成機構(6)と、
前記信号生成機構(6)に接続され、前記信号生成機構(6)からの駆動信号に応じて前記自転車(1)のギヤ機構を操作し、一のギヤ比を選択切換える自動シフト機構(7)と、
からなっていることを特徴とする自転車用自動変速システム。
【請求項2】
前記パラメータ検出機構(2)は、
騎乗者の体と接触できるように配置されているハウジング(21)と、
前記ハウジング(21)に設けられ、騎乗者の生理的なパラメータを検出するパラメータ検出部(22)と、
前記パラメータ検出部(22)と前記パラメータ処理機構(4)とに接続され、前記パラメータ検出部(22)からのパラメータを前記パラメータ処理機構(4)に与えるパラメータ出力部(23)と
からなっていることを特徴とする請求項1に記載の自転車用自動変速システム。
【請求項3】
前記信号生成機構(6)は、
前記自動シフト機構(7)に接続されている信号生成部(62)と、
前記信号生成部(62)と前記パラメータ処理機構(4)に接続され、前記信号生成部(62)から駆動信号を生成して前記自動シフト機構(7)へ送信するように制御する制御部(61)と
からなっていることを特徴とする請求項1に記載の自転車用自動変速システム。
【請求項4】
さらに前記パラメータ出力部(23)と前記パラメータ処理機構(4)とに接続されている受信機構(3)を有し、
生理的なパラメータを前記パラメータ検出機構(2)から前記パラメータ処理機構(4)へ中継し、且つ、前記自転車から補助信号としての道路のスロープと、前記ギヤ機構のカレントギヤ比と、ペタルトルクと、走行速度のいずかのデータを受信するように構成されている請求項1に記載の自転車用自動変速システム。
【請求項5】
前記パラメータ処理機構(4)によって計算される生理的なパラメータには、生理的なパラメータの現在状態分析と、生理的なパラメータ範囲分析、生理的なパラメータ変化及び酸素消費量分析と、生理的なパラメータ経時的変化の分析とがあることを特徴とする請求項4に記載の自転車用自動変速システム。
【請求項6】
前記受信機構(3)には、
前記生理的なパラメータと前記補助信号を受信する信号処理部(31)と、
前記生理的なパラメータと前記補助信号を前記パラメータ処理機構(4)に中継する送信部(32)とから構成されていることを特徴とする請求項4に記載の自転車用自動変速システム。
【請求項7】
さらに、前記パラメータ処理機構(4)と前記信号生成機構(6)に接続され、前記生理的なパラメータと前記補助信号の1以上のデータを示す表示機構(5)を有していることを特徴とする請求項4に記載の自転車用自動変速システム。
【請求項8】
前記表示機構(5)には、騎乗者の心拍数、心電図、現在走行速度、走行距離、走行時間、現在ペタルトルク及びギヤ機構の現在ギヤ比の1以上のデータを表示できることを特徴とする請求項7に記載の自転車用自動変速システム。
【請求項9】
さらに、前記パラメータ処理機構(4)に接続され、生理的なパラメータデータを表示する表示機構(5)を有していることを特徴とする請求項1に記載の自転車用自動変速システム。
【請求項10】
前記自動シフト機構(7)は、
選ばれた前記ギヤ比に応じて前記ギヤ機構を操作する駆動部(72)と、
前記駆動部(72)に接続され、前記自転車(1)のギヤ機構に連動させるように構成されている減速部(73)とからなっていることを特徴とする請求項1に記載の自転車用自動変速システム。
【請求項11】
前記駆動部(72)としてはモータを用いることを特徴とする請求項10に記載の自転車用自動変速システム。
【請求項12】
前記パラメータ検出機構(2)は、前記騎乗者の心拍数又は脈拍数を検出するように構成していることを特徴とする請求項1に記載の自転車用自動変速システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−313940(P2007−313940A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142937(P2006−142937)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(594046167)巨大機械工業股▲分▼有限公司 (25)