説明

致命傷の検出方法

【課題】研磨傷などのように規則性のある模様の方向が分からない場合であってもその模様を消去して致命傷のみを抽出する。
【解決手段】画像取得手段3によって取得された画像の微小検査領域SQ内で第一の検査方向D1に並ぶ画素の輝度情報を取得し、この第一の検査方向D1を変化させることによって当該第一の検査方向D1と直交する方向における輝度変化値が所定値よりも大きな方向を検出する。そして、この検出された方向と直交する方向における輝度に基づいて前記取得された輝度を平坦化させるようにしたので、研磨傷21の方向と輝度情報を取得する第一の検査方向D1とが一致した場合に、その方向と直交する方向における輝度が最も大きく変化するため、研磨傷21の方向を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の表面に研磨傷などのような規則性のある模様が存在している場合であっても、その規則性のある模様を有効に除去して致命的な傷(以下、「致命傷」という)を抽出することのできる致命傷の検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、形成された物品の状態を検査する場合、その表面の画像を取得し、その取得された画像から得られた検査データとあらかじめ記憶部に記憶されている基準データと比較することによって物品の形成状態を判定する。
【0003】
これをプリント基板の検査の場合について説明すると、まず、プリント基板の形成状態を検査する場合は、製造されたプリント基板から表面の画像を取得し、所定の輝度値から配線パターンやパッドなどの金属領域や、ソルダーレジストの塗布されたレジスト領域、シルク印刷されたシルク領域を抽出する。そして、このように抽出された領域内における微小検査領域の輝度とその画素数からなる輝度分布グラフを生成し、その輝度分布グラフと基準データとを比較することによってその領域における形成状態の良否を判定する。そして、この領域を順次ずらしながら全領域にわたって検査していくことによって、プリント基板の形成状態の良否を判断する。
【0004】
ところで、このような物品の表面画像を取得して順次検査していく場合、次のような問題がある。
【0005】
すなわち、一般的に、物品を製造する工程においては、その表面をきれいにするために研磨処理を行うことがある。しかしながら、このように物品の表面を研磨すると、検査工程において、その研磨によって生じた傷(以下、研磨傷という)を致命傷と判断してしまう可能性がある。このため、従来では、自動検査装置によって致命傷であると判断されてしまった場合は、事後的に目視検査で品質上問題があるか否かを検査し、品質上問題がなければ良品としていたが、これでは、検査の効率が悪くなるという問題があった。
【0006】
一方、物品の表面に研磨傷が存在している場合に、その研磨によるノイズを低減させて検査できるようにした検査方法も提案されている。
【0007】
例えば、下記の特許文献には、研磨傷の方向が事前に分かっている場合に、その研磨傷の方向に沿って光を照射させ、これによって研磨傷による乱反射を防止して検査対象物から致命傷の画像のみを取得できるようにした方法が開示されている。
【特許文献1】特開平08−304300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような方法では、研磨傷の方向が分からなければ光の照射方向を設定することができず、却って時間がかかるという問題を生ずる。また、光の照射方向と研磨傷の方向を正確に一致させることは非常に難しく、また、ドリルによって回転研磨する場合は、同心円状の研磨傷が生ずるため、傷の方向を特定することができなくなって、研磨傷による乱反射を防止することができないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に着目してなされたもので、研磨傷などのように規則性のある模様の方向が分からない場合であってもその模様を消去して致命傷のみを抽出することのできる致命傷の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の検査方法は、上記課題を解決するために、まず、検査対象物から表面画像を取得し、その取得された画像の微小検査領域で検査方向に並んだ画素の輝度情報を取得し、その検査方向を変化させることによって当該検査方向と直交する方向における所定値よりも輝度変化値の大きな方向を検出し、その検出された方向と直交する方向における輝度に基づいて前記取得された画像の輝度を修正するようにしたものである。
【0011】
具体的には、カメラによって取得された画像の微小検査領域内で第一の検査方向に並ぶ画素の輝度情報を取得し、この第一の検査方向を変化させることによって当該第一の検査方向と直交する方向における輝度変化値が所定値よりも大きな方向を検出する。そして、この検出された方向と直交する方向における輝度に基づいて前記取得された輝度変化を平坦化させるようにする。
【0012】
このようにすれば、研磨傷の方向と輝度情報を取得する第一の検査方向とが一致した場合に、その方向と直交する方向における輝度が最も大きく変化するため、研磨傷の方向を検出することができる。そして、このように検出された第一の検査方向と直交する方向における輝度に基づいて輝度変化を平坦化させることによって研磨傷を消去させて致命傷のみを抽出することができるようになる。
【0013】
また、別の実施の態様では、前記微小検査領域において第二の検査方向に並ぶ画素の輝度情報を取得するとともに、その第二の検査方向を変化させることによって当該第二の検査方向と直交する方向における輝度変化の最も大きな方向を検出する。そして、この検出された方向と直交する方向における輝度に基づいて輝度変化を増幅させるようにする。
【0014】
このようにすれば、致命傷の方向と輝度情報を取得する第二の検査方向とが一致した場合に、その第二の検査方向と直交する方向における輝度変化が最も大きくなり、これによって致命傷の方向を検出することができる。そして、この致命傷を有する画素の輝度を増幅させることによって致命傷を強調させて検査することができる。
【0015】
さらに、第一の検査方向に並んだ画素を所定画素数ごとに輝度値を取得して、輝度値を合計する。
【0016】
このようにすれば、すべての画素の輝度値を取得して合計する場合に比べて演算数を少なくすることができ、高速に演算処理をすることができるようになる。
【0017】
また、第一の検査方向を変化させる場合、第一の角度毎に前記第一の検査方向を変化させて輝度変化の最も大きい方向を検出し、当該検出された方向を基準として前記第一の角度よりも小さな角度で第一の検査方向を変化させて輝度変化値が所定の基準値よりも大きな位置の角度を検出する。
【0018】
このようにすれば、まず大まかに輝度変化の大きな角度を検出し、その前後できめ細かく輝度変化の最も大きな角度を検出することで、演算処理を少なくして高速に最も輝度変化の大きな角度を検出することができるようになる。
【0019】
加えて、新たな微小検査領域を検査する場合、すでに隣接する微小検査検査領域で求められた第一の検査方向を用いるようにする。
【0020】
このようにすれば、すでに求められている研磨傷の方向を用いて研磨傷を消去することができるため、隣接する検査領域で高速に致命傷を抽出することができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の検査方法によれば、規則性のある模様の方向と輝度情報を取得する第一の検査方向とが一致した場合に、その第一の検査方向と直交する方向における輝度が最も大きく変化するため、模様の方向を検出することができる。そして、このように検出された方向と直交する方向における輝度に基づいて輝度変化を平坦化させることによって模様を消去させて致命傷のみを抽出することができるようになる。また、模様の方向と輝度情報と取得する第二の検査方向とが一致した場合に、その第二の検査方向と直交する方向における輝度変化が最も大きくなり、これによって致命傷の方向を検出することができる。そして、この致命傷を有する画素の輝度を増幅させることによって致命傷を強調させてその長さなどを検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態における検査装置1の機能ブロック図であり、図2は、検査対象物2から取得された画像と微小検査領域SQとの関係を示したものである。また、図3や図4は、微小検査領域SQにおける研磨傷21の検出方法や致命傷22の検出方法とその輝度分布グラフを示したものである。
【0023】
この実施の形態における検査装置1は、画像取得手段3によって取得された検査対象物2の表面の画像を矩形状の微小検査領域SQに分割し、その微小検査領域SQ内で画素の輝度情報を取得することによって研磨傷21と致命傷22の方向を検出できるようにしたものである。なお、ここで微小検査領域SQとしては、例えば、ドリルによって回転しながら研磨した場合であっても、その研磨傷21をほぼ直線状の傷とみなすことができる程度の微小領域を示す。そして、この検査装置1では、具体的には、各微小検査領域SQの画像から図3に示すような第一の検査方向D1に沿った画素の輝度情報を収集し、その方向と直交する検査位置を横軸とする輝度分布グラフを生成する。なお、図4において、破線で示されたものは研磨傷21を示し、太い実線で示されたものは致命傷22を示す。このとき、第一の検査方向D1と研磨傷21の方向が一致していない場合は、図3(a)に示すように、ほぼ平坦な輝度分布グラフが形成される。一方、その第一の検査方向D1を変化させることによって研磨傷21の方向と第一の検査方向D1とが一致した場合は、図3(b)に示すように櫛形の輝度分布グラフが形成される。そして、この第一の検査方向D1を変化させることによって櫛形形状をなす輝度分布グラフの形成される検査方向を検出する。次に、その研磨傷21を微小検査領域SQの画像から消去すべく、図5に示すように、輝度分布グラフにおける輝度を平坦化し、研磨傷21を消去する。一方、これらの工程とは別に、致命傷22の方向を特定すべく、あらかじめ設定された第二の検査方向D2に沿った微小検査領域SQの画素を積算した輝度分布グラフを生成し、この第二の検査方向D2を変化させていく。このとき、第二の検査方向D2と致命傷22の方向が一致していない場合は、図4(a)に示すように平坦な輝度分布グラフが生成され、一方、致命傷22と一致した場合は、図4(b)に示すように、突出したピークを有する輝度分布グラフが生成される。そして、この第二の検査方向D2を変化させることによって致命傷22の方向を検出するとともに、その致命傷22を強調すべく、その致命傷22の存在する座標の輝度を増幅する。その後、その致命傷22の長さが基準値よりも長いか否かなどを検出することによって、良品・不良品を検出するようにしたものである。以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
【0024】
画像取得手段3は、検査対象物2からその表面の画像を取得する。この表面から取得する画像は、研磨傷21の方向とは関係なく、斜めから光を照射し、検査対象物2の上方に設けられたラインセンサやエリアカメラなどによって画像を取得する。このように取得された画像は、所定の輝度毎の領域、あるいは、カラーで画像を取得する場合はRGB毎の領域に分割される。これによって、例えば、プリント基板の形成状態を検査する場合は、露出パッドや配線パターン、シルク、レジストなどの領域に分離された画像を抽出する。
【0025】
このように取得された画像は、検査領域抽出手段4によって微小検査領域SQに分割される。この微小検査領域SQは、図2に示すように、格子状の領域からなり、ドリルによって同心円状に研磨された場合であってもその研磨傷21をほぼ直線と近似できるような領域に設定される。この抽出された微小検査領域SQは、各領域ごとに識別番号が付され、例えば、取得画像の左上を原点として右側にX軸、下方にY軸をとった座標番号が付与される。これによって、一番左端の微小検査領域SQは(1,0)の識別番号が付され、順次右側に(2,0)(3,0)…と識別番号が付与される。
【0026】
第一の輝度情報抽出手段51は、このように抽出された微小検査領域SQにおける研磨傷21の方向を検出する。第一の輝度情報抽出手段51では、まず、この研磨傷21の方向を検出するために、微小検査領域SQ内であらかじめ設定された直線方向である第一の検査方向D1に沿った画素の輝度情報を取得する。図3においては、右斜め45度方向にこの第一の検査方向D1を設定し、この方向に並ぶ画素の輝度を加算していく。そして、その加算された輝度値をその方向と直交する方向に並べ、横軸が位置、縦軸が輝度合計値となる輝度分布グラフを生成する。このとき、第一の検査方向D1に沿って各画素の輝度値を加算すると、演算量が大きくなってしまう可能性があるため、あらかじめ設定された間欠的な画素毎に輝度値を抽出し、これを合計する。このように輝度分布グラフを生成すると、第一の検査方向D1の方向と研磨傷21の方向とが一致していない場合は、図3(a)に示すような平坦な輝度分布グラフが生成され、一方、第一の検査方向D1の方向に研磨傷21が存在している場合は、図3(b)に示すように、櫛形をなす輝度分布グラフが生成される。そこで、この第一の輝度情報抽出手段51は、第一の検出方向を変化させて複数の検査方向における輝度分布グラフを生成し、最も櫛形状に近い輝度分布グラフを生成する検査方向を検出する。この第一の検出方向を変化させる際、微小検査領域SQの画像を固定した状態で第一の検出方向を回転させるようにしてもよく、あるいは、第一の検出方向を固定して微小検査領域SQの画像を回転させるようにしてもよいが、本実施の形態では、後者の方法を採用することとし、正方形状をなす微小検査領域SQを所定角度毎に回転させて輝度分布グラフを生成するようにしている。この輝度分布グラフを生成する場合、あらかじめ定められた大まかに設定された角度θ1ごとに微小検査領域SQを回転させて輝度分布グラフを生成し、その後、研磨傷の方向がほぼ特定できた場合に、その角度θ1の近傍でさらに細かい角度θ12で輝度分布グラフの生成し、研磨傷の方向を特定する。
【0027】
第一の検査方向検出手段52は、このように生成された各角度毎の輝度分布グラフに基づいて、最も櫛形状に近い輝度分布グラフを生成する検査方向を検出する。輝度分布グラフが櫛形状であるか否かを検出するには、種々の方法を用いることができるが、例えば、輝度値合計の分散値を求め、その値の中で最も大きいものを櫛形状であると判断する方法を用いることができる。但し、研磨傷21の存在しない場合も考えられるため、既定値よりも大きい分散が存在する場合は、その中で最も分散の大きい輝度分布グラフを生成する検査方向を研磨傷21の方向と特定する。
【0028】
そして、第一の画像処理手段53は、このように研磨傷21の方向が特定された後に、その研磨傷21を微小検査領域SQの画像から消去するための処理を行う。この研磨傷21の画像を消去する場合、研磨傷21の方向に沿って生成された輝度分布グラフから、その方向に沿った各画素の平均輝度を求め、輝度分布グラフ上で突出していると検出された方向に並ぶ画素からその平均輝度を減算する。あるいは、輝度分布グラフ上で輝度が凹んでいる場合は、その輝度値が凹んでいると判断された方向及び場所に並ぶ画素からその平均輝度を加算する。これにより、研磨傷21の画素が周囲の画素と同化して研磨傷21を消去することができ、図5の最下図に示すような平坦な輝度分布グラフを得ることができるようになる。
【0029】
一方、このように研磨傷21の画素の輝度を修正すると、致命傷22の画素の輝度も修正されてしまう可能性もある。このため、微小検査領域SQから致命傷22の方向を検出し、この検出された方向に沿って致命傷22の画素の輝度を強調するような修正処理を行う。
【0030】
第二の輝度情報抽出手段61は、この致命傷22の方向を検出するために、あらかじめ設定された直線方向である第二の検査方向D2に沿った画素の輝度情報を取得する。この第二の検査方向D2は第一の検査方向D1と同一であってもよく、異なっていてもよい。図4においては、左斜め45度方向にこの第二の検査方向D2を設定している。そして、第二の輝度情報抽出手段61は、研磨傷21の消去された微小検査領域SQの画像からこの第二の検査方向D2に並ぶ画素の輝度を加算する。このとき、その加算された輝度値をその方向と直交する方向に並べ、横軸が位置、縦軸が輝度合計値となる輝度分布グラフを図4のように生成する。この場合においても、第二の検査方向D2に沿って各画素の輝度値を加算すると、演算量が大きくなってしまう可能性があるため、あらかじめ設定された間欠的な画素毎に輝度値を抽出し、これを合計する。このように輝度分布グラフを生成すると、その方向に致命傷22が存在する場合は、図4(b)に示すように、突出した輝度値を有する輝度分布グラフが生成され、一方、致命傷22の方向と一致しない場合は、図4(a)に示すようなほぼ平坦な輝度分布グラフが生成される。そして、この第二の輝度情報検出手段によって、第二の検出方向を変化させて複数の方向における輝度分布グラフを生成し、最も高いピークを有する輝度分布グラフを生成する第二の検査方向を検出する。この第二の検出方向を変化させる際は、同様に、微小検査領域SQの画像を固定した状態で第二の検出方向を回転させるようにしてもよいが、本実施の形態では、第二の検出方向を固定して微小検査領域SQの画像を回転させるようにしている。
【0031】
第二の検査方向検出手段62は、このように所定角度毎に生成された輝度分布グラフから所定の基準値よりも大きなピークを有する輝度分布グラフを生成する第二の検査方向D2を検出する。この方向を検出する場合、あらかじめ記憶手段8に閾値となる輝度値合計を記憶させておき、これよりも大きなピークを有する輝度分布グラフを生成する第二の検査方向D2を検出する。この場合、致命傷22は一つとは限らないため、第二の検査方向D2が複数検出される場合もある。
【0032】
第二の画像処理手段63は、このように検出された第二の検査方向D2におけるピークを形成した部分の画素の輝度を強調するような輝度修正を行う。この輝度修正においては、ピークを形成した第二の検査方向に並ぶ各画素の輝度の分散を求め、その方向の画素の輝度値を定数倍して輝度を強調する。もしくは、その画素の輝度値に所定の輝度値を加算することなどによって輝度を強調する。
【0033】
次に、検査手段7は、このようにして研磨傷21の消去と致命傷22の強調が行われた画像に基づいて致命傷22の良否を判断する。この検査を行う場合、致命傷22と判断された画素の長さを検出し、図5に示すように、この長さが基準値よりも長いか否かによって判断する。また、長さだけの判断だけではなく、致命傷22と判断された画素の幅寸法も検出し、この幅寸法が規定値よりも太いか否か、もしくは、致命傷22の面積などによっても判断する。そして、致命傷22と判断された場合は、この微小検査領域SQの識別番号とともに出力する。
【0034】
このように構成された検査装置1における検査のフローチャートについて図7から図9を用いて説明する。
【0035】
まず、検査対象物2の形成状態を検査する場合、検査対象物2から画像を取得し(ステップS1)、その画像を輝度毎もしくはRGB毎の画像に分けた後に、微小検査領域SQに分割する。そして、この微小検査領域SQのうち、すでに求めた微小検査領域SQを抽出して(ステップS2)、第一の検査方向D1に沿った画素を間欠的に収集して輝度情報を収集し、その輝度値を合計してその方向における輝度値合計を演算する。そして、この演算値を、前記第一の検査方向D1と垂直な方向を横軸とした検査方向位置に輝度値合計を並べて輝度分布グラフを生成する(ステップS3)。また、この輝度分布グラフを生成した後に、各検査方向位置における輝度値合計の分散を求めて(ステップS4)、これを記憶手段8に格納する。次に、同様の処理を行うべく、先の検査角度からθ1を足した角度で(ステップS5)、第一の検査方向D1に沿った輝度値情報の収集と輝度分布グラフの生成し、分散の演算などを行う。そして、これらの処理を180度行った後(ステップS6)、記憶手段8に記憶されていた分散のうち、所定の基準値よりも大きい分散であって最も大きい値を有する分散を読み出して、この分散を生成した検査方向を仮の研磨傷21の方向(角度α’)とみなす(ステップS7)。次に、更に細かく研磨傷21の方向を検査すべく、α’を基準として更に細かい角度θ12ごとに検査方向を変化させて輝度分布グラフの生成や分散の演算を行い(ステップS8)、所定の基準値よりも大きい分散であって最も大きい分散を読み出して、その検査方向を研磨傷21の方向(角度α)とみなす(ステップS9)。
【0036】
次に、この研磨傷21の方向(角度α)に沿って生成された輝度分布グラフから研磨傷21の存在によって輝度値の高くなった画素の輝度を平坦化すべく、所定の閾値よりも大きな輝度値合計を有する部分における輝度値合計から全体領域における輝度値合計平均値を減算し、その減算値からその方向に並ぶ各画素の輝度平均値を演算してその方向の各画素の輝度値から減算する(ステップS10)。すると、輝度分布グラフが平坦化され、その研磨傷21を有する場所および方向におけるノイズを消去することができる。
【0037】
次に、このように研磨傷21によるノイズを消去した後、致命傷22の検査を行う。致命傷22の検査を行う場合、研磨傷21の消去された微小検査領域SQの画像を抽出して(ステップT1)、あらかじめ定められた第二の方向の画素情報を取得する(ステップT2)。そして、第二の検査方向D2に沿った画素を間欠的に収集して輝度情報を収集し、その輝度値を合計してその方向における輝度値合計を演算するとともに、その演算値を、前記第二の検査方向D2と垂直な方向を横軸とした検査方向位置に輝度値合計を並べて輝度分布グラフを生成する。そして、このように輝度分布グラフを生成した後に、所定の閾値よりも輝度値合計の大きい検査方向位置を検出し(ステップT3)、その方向を記憶手段8に記憶して次の検査角度での致命傷22の検査を行う。この次の角度で検査を行う場合、最初の角度からθ2の角度を足して検査していく(ステップT4)。そして、180度すべてにわたって検査した後(ステップT5)、記憶手段8から前記所定の閾値よりも輝度値合計よりも大きなピークを有する輝度分布グラフを生成した角度を抽出して致命傷22の方向(角度β)とし(ステップT6)、その角度毎に、その致命傷22の強調処理を行う(ステップT7)。この強調処理においては、その致命傷22の存在する角度βとその輝度値合計のピークを有する位置における画素の輝度情報を抽出し、各画素の輝度値の分散を求める。そして、所定の基準値よりも輝度値の大きい画素の輝度値を定数倍することなどによって増幅し、これによって致命傷22を強調する。そして、各致命傷22について同様の処理を行った後、次の検査工程で、その致命傷22の長さ、太さ、面積などを求め、基準値と比較することによって不良品であるか否かを判断する(ステップT8)。
【0038】
以下、順次、隣接した微小検査領域SQの検査を行っていく。この隣接する微小検査領域SQの検査を行う場合、すでに微小検査領域SQで検出された研磨傷21の方向を利用して高速に検査する。図9にその検査方法について説明する。
【0039】
次の微小検査領域SQを検査する場合、まず、隣接する第一の微小検査領域SQで抽出された研磨傷21の方向(角度α)を基準とし(ステップU1)、図7に示すように、その方向や、その方向からθ1よりも小さな角度(θ12)で前後所定の角度θaだけ輝度情報の収集する(ステップU2)。そして分散の演算(ステップU3)を行い、その値を記憶させておく。次に、同様に、θ12の角度回転させてθaの範囲内で画素情報の取得や分散の演算処理を行い(ステップU2〜U3)、記憶された分散のうち、所定の基準値よりも大きな分散であって最も大きい値を有する分散を読み出して、その分散を生成した検査方向をその微小検査領域SQにおける研磨傷21の方向(角度α)とみなす(ステップU6)。そして、この研磨傷21の方向に沿って生成された輝度分布グラフから研磨傷21の存在によって輝度値の高くなった画素の輝度を平坦化すべく、所定の閾値よりも大きな輝度値合計を有する部分における輝度値合計から全体領域における輝度値合計平均値を減算し、その減算値からその方向に並ぶ各画素の輝度平均値を演算してその方向の各画素の輝度値から減算する(ステップU7)。
【0040】
そして、このように研磨傷21を消去した後、その第二の微小検査領域SQについて致命傷22の検査を行うべく図8に示す処理と同様の処理を行う。
【0041】
このように上記実施の形態によれば、画像取得手段3によって取得された画像の微小検査領域SQ内で第一の検査方向D1に並ぶ画素の輝度情報を取得し、この第一の検査方向D1を変化させることによって当該第一の検査方向D1と直交する方向における輝度変化値が所定値よりも大きな方向を検出する。そして、この検出された方向と直交する方向における輝度に基づいて前記取得された輝度を平坦化させるようにしたので、研磨傷21の方向と輝度情報を取得する第一の検査方向D1とが一致した場合に、その方向と直交する方向における輝度が最も大きく変化するため、研磨傷21の方向を検出することができる。そして、このように検出された第一の検査方向D1と直交する方向における輝度に基づいて輝度変化を平坦化させることによって研磨傷21を消去させて致命傷22のみを抽出することができるようになる。
【0042】
また、その微小検査領域SQにおいて第二の検査方向D2に並ぶ画素の輝度情報を取得するとともに、その第二の検査方向D2を変化させることによって当該第二の検査方向D2と直交する方向における輝度変化の最も大きな方向を検出する。そして、この検出された方向と直交する方向における輝度に基づいて輝度変化を増幅させるようにしたので、致命傷22の方向と輝度情報と取得する第二の検査方向D2とが一致した場合に、その第二の検査方向D2と直交する方向における輝度変化が最も大きくなり、これによって致命傷22の方向を検出することができる。そして、この致命傷22を有する画素の輝度を増幅させることによって致命傷22を強調させてその長さなどを検査することができる。
【0043】
さらに、第一の検査方向D1に並んだ画素を所定画素数ごとに輝度値を取得して、輝度値を合計するようにしたので、すべての画素の輝度値を取得して合計する場合に比べて演算数を少なくすることができ、高速に演算処理をすることができるようになる。
【0044】
また、隣接する微小検査領域SQで研磨傷21の方向を検出する場合、すでに求められた第一の検査方向D1を基準として隣接する微小検査領域SQで間欠的に検査された角度よりも小さな角度で第一の検査方向D1を変化させて研磨傷21の方向を検査するようにしたので、すでに求められている研磨傷21の方向を用いて研磨傷21を消去することができるため、隣接する検査領域で高速に致命傷22を抽出することができるようになる。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0046】
例えば、上記実施の形態では、微小検査領域SQから研磨傷21を消去した後に致命傷22を抽出するようにしたが、致命傷22のみを抽出して検査することもできる。
【0047】
また、上記実施の形態では、隣接する第二の微小検査領域SQを検査する場合、すでに求めた微小検査領域SQの研磨傷21の角度αを用いて検査するようにしたが、その角度αをそのまま用いるようにし、微小検査領域SQで致命傷22と判断された数が基準値以上になった場合に、再度研磨傷21を同様の方法で消去するようにしてもよい。
【0048】
さらに、上記実施の形態では、プリント基板を検査する場合を例に挙げて説明したが、プリント基板に限らず、半導体ウエハや半導体チップの検査、フィルム表面の検査、セラミック表面の検査、ガラス表面の検査、金属加工物の検査にも適用することができる。
【0049】
また、上記実施の形態では、規則性のある模様として研磨傷21を例に挙げて説明したが、研磨傷21だけでなくデザイン的な模様、物品の形成時に発生した筋模様などにも適用することができる。
【0050】
また、上記実施の形態では、櫛形形状の輝度分布グラフから研磨傷21の方向を検出する場合、分散の演算などを行って櫛形形状であるかどうかを判断するようにしているが、自己相関関数を求めて規則性のある輝度分布グラフであるか否かを判断するようにしてもよく、あるいは、他の方法を用いるようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、研磨傷を消去する場合、検出された検査方向の角度αに並ぶ輝度平均値を求め、その方向における画素からその平均値を減算してすべての画素の輝度を揃えるようにしてもよい。もしくは、すべての画素の輝度を小数倍して輝度分布グラフの凹凸をなくすようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施の形態でカラー画像で検査する場合、RGBに分離して検査することとしているが、RGBのそれぞれの画像の同じ箇所で致命傷が存在すると判断された場合に、その致命傷の良否を判断するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、格子状の微小検査領域SQ内に致命傷が存在するか否かを検出する場合、すべての微小検査領域SQについて検査方向の回転を行って致命傷の有無やその方向などを検査するようにしたが、この方法では、致命傷が全く存在しない場合にも多くの演算処理が必要となる。そこで、各微小検査領域SQもしくは、所定個まとめた微小検査領域SQ毎に輝度の分散を求め、分散の大きな微小検査領域SQについてのみ致命傷の有無やその方向などを検査するようにしてもよい。また、この分散を求めるとき、平均値からの二乗による場合のみならず、1/2乗(標準偏差)、四乗、六乗…であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態を示す検査装置の機能ブロック図
【図2】同形態における取得画像と微小検査領域の関係を示す図
【図3】同形態における微小検査領域内の研磨傷の方向を検出する方法を示す図
【図4】同形態における微小検査領域内の致命傷の方向を検出する方法を示す図
【図5】同形態における研磨傷の消去方法を示す図
【図6】同形態における致命傷の強調処理を示す図
【図7】同形態における検査の処理を示すフローチャート
【図8】同形態における隣接する微小検査領域の研磨傷の消去方法を示すフローチャート
【図9】同形態における隣接する微小検査領域の検査方法を示す図
【符号の説明】
【0055】
1・・・検査装置
2・・・検査対象物
21・・・研磨傷
22・・・致命傷
3・・・画像取得手段
4・・・検査領域抽出手段
51・・・第一の輝度情報抽出手段
52・・・第一の検査方向検出手段
53・・・第一の画像処理手段
61・・・第二の輝度情報抽出手段
62・・・第二の検査方向検出手段
63・・・第二の画像処理手段
7・・・検査手段
8・・・記憶手段
α・・・研磨傷の方向
β・・・致命傷の方向
D1・・・第一の検査方向
D2・・・第二の検査方向
P1・・・取得画像
SQ・・・微小検査領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板の表面から画像を取得し、当該取得された画像からプリント基板の表面に存在する規則性のある模様を前記取得された画像から消去して他の傷を検出する致命傷の検出方法において、
取得されたプリント基板の画像から分割された微小検査領域の画像を抽出するステップと、
当該抽出された微小検査領域において、あらかじめ定められた検査方向に並ぶ画素の輝度情報を取得するステップと、
前記輝度情報を取得する検査方向を変化させることによって当該検査方向と直交する方向における所定値よりも輝度変化値の大きな検出方向を検出するステップと、
当該検出方向における輝度情報を用いて当該検出方向の画素の輝度を修正するステップと、
を備えたことを特徴とする致命傷の検出方法。
【請求項2】
プリント基板の表面から画像を取得し、当該取得された画像からプリント基板の表面に存在する規則性のある模様を前記取得された画像から消去して他の傷を検出する致命傷の検出方法において、
取得されたプリント基板の画像から分割された微小検査領域の画像を抽出するステップと、
当該抽出された微小検査領域において第一の検査方向に並ぶ画素の輝度情報を取得するステップと、
当該第一の検査方向を変化させることによって当該第一の検査方向と直交する方向における輝度変化値が所定値よりも大きな方向を検出するステップと、
当該検出された方向と直交する方向における輝度情報に基づいて前記取得された輝度変化を平坦化させるステップと、
を備えたことを特徴とする致命傷の検出方法。
【請求項3】
プリント基板の表面から画像を取得し、当該取得された画像からプリント基板の表面に存在する規則性のある模様をプリント基板の画像から消去して他の傷を検出する致命傷の検出方法において、
取得されたプリント基板の画像から分割された微小検査領域の画像を抽出するステップと、
当該抽出された微小検査領域において第二の検査方向に並ぶ画素の輝度情報を取得するステップと、
当該第二の検査方向を変化させることによって所定の輝度値よりも大きな輝度値を有する方向を検出するステップと、
当該検出された方向と直交する方向における輝度情報に基づいて前記所定の輝度値よりも大きな輝度値を増幅させるステップと、
を備えたことを特徴とする致命傷の検出方法。
【請求項4】
請求項1乃至3における検査方向に並ぶ画素の輝度情報を取得するステップが、前記検査方向に並んだ画素を所定画素数ごとに輝度値を取得して、輝度値を合計するものである致命傷の検出方法。
【請求項5】
請求項1乃至3における検査方向と直交する方向における輝度変化が所定値よりも大きな方向を検出するステップ、第一の角度毎に前記検査方向を変化させて輝度変化の最も大きい方向を検出し、当該検出された方向を基準として前記第一の角度よりも小さな角度で検査方向を変化させて輝度変化値が所定の基準値よりも最も大きな位置の角度を検出するものである致命傷の検出方法。
【請求項6】
請求項2における致命傷の検出方法において、新たな微小検査領域を検査する場合、隣接する微小検査領域で求められた第一の検査方向を用いるようにした致命傷の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−19730(P2010−19730A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181373(P2008−181373)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(597028081)株式会社メガトレード (27)
【Fターム(参考)】