説明

舗装材の切削粉粒の除去装置、並びにこれを具えた舗装材切断装置

【課題】 切断方式として優位性の有るダウンカット方式を採用しながら、環境設定として優位性のあるドライ環境での作業を可能とした新規な舗装材の切削粉粒の除去装置、並びにこれを具えた舗装材切断装置の開発を試みたものである。
【解決手段】 本発明の切削粉粒除去装置Mは、回転するカッターブレード30をダウンカット状態に舗装面Pに作用させて切削溝Psを形成し、これによって発生する舗装材の切削粉粒P0 を除去する装置であって、この装置は前記カッターブレード30を覆うブレードカバー52と、その後方に設けられる溝部処理機構53とを具え、前記ブレードカバー52の後方には、負圧吸引が行われる排除ダクトが設けられ、一方前記溝部処理機構53は、切削溝Psを深さ方向に塞ぐように入り込み、切削粉粒P0 の除去のための負圧吸引を確実にする閉鎖ノズル54を具えていることを特徴として成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装材の切断や切削をする装置に関するものであって、特に切断作業時に発生する舗装材の切削粉粒の除去装置、並びにこれを具えた舗装材切断装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
舗装面の切断作業を行うにあたり、作業支援媒体として水を用いるウェット環境での作業と、これを用いないドライ環境での作業との二つの手法が選択されている。
一方、切断処理を行う作業方式としては、カッターブレードの作用方向を舗装面の下から上に向けて行うアッパーカット方式と、逆に上から下に向けて行うダウンカット方式とが選択されている。
これらそれぞれの環境設定、切断方式ともに長短を有するものであり、概略的には、環境設定の面ではドライ環境での作業の方が作業時に発生する切削粉粒の処理が行い易く優れている。因みに、ウェット環境の作業処理では、切断粉粒は水と混ざり合い、これらは汚泥、汚水として処理されるべきものであり、当然処理コストを要するという問題がある。
一方切断方式でみると、ダウンカット方式の方が安定した作業を行うことができ、結果的に切断ないし切削深さを大きくとるときでも、技術上の問題が少なく優れている。因みにアッパーカット方式の場合には、ブレードの切断作用時に生ずる反作用のベクトルは、切断装置の進行方向の逆となっていることから、ブレードに負荷が掛かったときに、衝撃的に切断装置の全体が後退し、作業者にとって大きな危険をもたらす。このためアッパーカット方式の場合、比較的負荷の少ない、例えば浅溝切削等に限られることが多かった。
【0003】
ところで、環境対策が重視されている状況の下では、切削粉粒の処理が行い易いドライ環境を選択することが好ましいが、現状ではドライ環境では、切断方式の面で優位性のあるダウンカット方式が適用できず、もっぱらアッパーカット方式に限られていた。その理由は、発生した切削粉粒が、アッパーカット方式では、ブレードカバー前方に集中するものであり、ここで容易に捕捉できるのに対し、ダウンカット方式では、ブレード後方に切削粉粒が飛散し、少なくともブレードカバー内では、一部切削粉粒を捕捉できるものの、切断済みの切削溝からも切削粉粒が激しく舞い散らかる状態を呈してしまうからである。結果的にこのような切削粉粒の飛散を防ぐためにダウンカット方式の装置の場合、ウェット環境での作業を選択せざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−236599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの種々の背景を考慮してなされたものであって、切断方式として優位性の有るダウンカット方式を採用しながら、環境設定として優位性のあるドライ環境での作業を可能とした新規な舗装材の切削粉粒の除去装置、並びにこれを具えた舗装材切断装置の開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の切削粉粒除去装置は、回転するカッターブレードをダウンカット状態に舗装面に作用させて切削溝を形成し、これによって発生する舗装材の切削粉粒を除去する装置であって、この装置は前記カッターブレードを覆うブレードカバーと、その後方に設けられる溝部処理機構とを具え、前記ブレードカバーの後方には、負圧吸引が行われる排除ダクトが設けられ、一方前記溝部処理機構は、切削溝を深さ方向に塞ぐように入り込み、切削粉粒の除去のための負圧吸引を確実にする閉鎖ノズルを具えていることを特徴として成るものである。
【0007】
請求項2記載の切削粉粒除去装置は、前記請求項1記載の要件に加えて、前記溝部処理機構については、ブレードカバー後方に配置したノズル支持ボックスによって前記閉鎖ノズルが支持されるものであり、且つこのノズル支持ボックスに負圧吸引が行われる排除ダクトが設けられていることを特徴として成るものである。
【0008】
請求項3記載の切削粉粒除去装置は、前記請求項1または2記載の要件に加えて、前記閉鎖ノズルについては、帯板状であって、平面視で設定姿勢を切削溝に沿った状態と、斜めになった状態とに設定できることを特徴として成るものである。
【0009】
請求項4記載の切削粉粒除去装置は、前記請求項1、2または3記載の要件に加えて、前記ブレードカバーの前方には、舗装面を覆う前覆板と、その上部に設けられた負圧吸引ダクトとを具えた多段作業用除塵装置が設けられていることを特徴として成るものである。
【0010】
請求項5記載の舗装材切断装置は、本体ボディに対し、その下方に車輪装置を設け、また本体ボディ側方にカッター装置を設け、更に本体ボディ内にカッター装置の駆動源装置を具え、カッター装置におけるカッターブレードをダウンカット状態に舗装面に作用させて、舗装面に切削溝を形成する装置であって、
この装置には前記カッターブレードによる舗装面の切削により生じる切削粉を除去するための切削粉粒除去装置が具えられており、この切削粉除去装置は、前記カッターブレードを覆うブレードカバーと、その後方に設けられる溝部処理機構とを具え、前記ブレードカバーの後方には、負圧吸引が行われる排除ダクトが設けられ、一方前記溝部処理機構は、切削溝を深さ方向に塞ぐように入り込み、切削粉粒の除去のための負圧吸引を確実にする閉鎖ノズルを具えていることを特徴として成るものである。
【0011】
請求項6記載の舗装材切断装置は、前記請求項5記載の要件に加えて、前記切削粉除去装置における溝部処理機構については、ブレードカバー後方に配置したノズル支持ボックスによって前記閉鎖ノズルが支持されるものであり、且つこのノズル支持ボックスに負圧吸引が行われる排除ダクトが設けられていることことを特徴として成るものである。
【0012】
請求項7記載の舗装材切断装置は、前記請求項5または6記載の要件に加えて、前記切削粉除去装置における前記閉鎖ノズルについては、帯板状であって、平面視で設定姿勢を切削溝に沿った状態と、斜めになった状態とに設定できることを特徴として成るものである。
【0013】
請求項8記載の舗装材切断装置は、前記請求項5、6または7記載の要件に加えて、前記切削粉除去装置における前記ブレードカバーの前方には、舗装面を覆う前覆板と、その上部に設けられた負圧吸引ダクトとを具えた多段作業用除塵装置が設けられていることを特徴として成るものである。
【0014】
請求項9記載の舗装材切断装置は、前記請求項5、6、7または8要件に加えて、前記本体ボディと切削粉粒除去装置との間には、ノズル.上げロッドが設けられるものであり、該ノズル引上げロッドは、中間の引上げ支点を本体ボディ側に設けるとともに、一方の端部をブレードカバーに設けたリンクピボットに係止させて力点とし、他端を閉鎖ノズルの引き上げ作用部に係止させて作用端とし、カッターブレードの引き上げ時には、ブレードカバーが舗装面上に残留する相対移動により、ノズル引上げロッドの作用端が閉鎖ノズルを切削溝から上方に抜き出すように構成したことを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0015】
まず請求項1または5記載の発明によれば、溝部処理機構における閉鎖ノズルが切削済みの切削溝に入り込み、カッターブレードから閉鎖ノズルの間を閉鎖環境に保つことから、まず後方への切削粉粒の飛散が防止されるとともに、負圧吸引の際の閉鎖環境を維持し、確実な負圧吸引による切削粉粒の除去ができる。
【0016】
また請求項2または6記載の発明によれば、閉鎖ノズルはノズル支持ボックスにより支持され、且つノズル支持ボックスに負圧吸引が行われる排除ダクトが設けられていることから、更に確実な切削粉粒の負圧吸引が達成される。
【0017】
また請求項3または7記載の発明によれば、閉鎖ノズルは帯板状であって、平面視で設定姿勢を切削溝に沿った状態と斜めになった状態とに設定することができるから、切削溝の溝幅に応じて、閉鎖ノズルを斜めに配設ことにより、切削溝の閉鎖状態を確保でき、結果的に切削粉粒を確実に吸引排除することができる。
更にまた請求項1、2、3、4について共通するものであるが、このような切削粉粒の除去装置は、単独で既存のダウンカットタイプの舗装材切断装置に後付け状態に取り付けることができるもので、既存ウェットタイプの装置であっても、ドライ環境での作業を可能とする。
【0018】
また請求項4または8記載の発明によれば、予め浅く予備切削をした後、本切削をする場合等において、前方に噴出することがある切削粉粒をも効果的に吸収し、作業環境を良好に保つことができる。
【0019】
また請求項9記載の発明によれば、非作業時においてカッターブレードを切削溝から引き上げた際に自動的に後方の閉鎖ノズルも切削溝から引き上げられ、装置の移動等に対し、支障を来たさない状態が確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る装置の斜視図であり、併せて作動状態を示すものである。
【図2】同上側面図である。
【図3】同上装置において切削粉除去装置を除いて示す側面図である。
【図4】同上正面図であり、併せてカッターブレードの諸部材を拡大して示すものである。
【図5】本発明の切削粉粒除去装置と舗装材切断装置の本体ボディとを分解して示す斜視図である。
【図6】切削粉粒除去装置の分解斜視図である。
【図7】同上水平断面図である。
【図8】切削粉粒除去装置の側面図である。
【図9】分離捕集装置の側面図である。
【図10】分離捕集装置と、本体ボディとの接続構造を示す説明図である。
【図11】他の実施例を示す側面図である。
【図12】同上作動状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態は、以下述べる実施例をその一つとするものであるとともに、この技術思想に基づく種々の改良した実施例をも含むものである。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。
まず符号Mは、舗装材切断装置であって、このものは、舗装面Pに作用し、切削溝Psを形成する。なお装置の名称としては、切断装置としたが切削溝等の場合もあり、必ずしも切断しない場合も生ずるが装置名称として慣用されていることから、舗装材切断装置Mとする。このものの概略は、まず直接切断作用を担う本体装置1を構成する本体ボディ10に対し車輪装置2が設けられ、適宜エンジン駆動あるいは作業者の押し引きによる移動が可能となっている。そして、本体ボディ10の側方部位にカッター装置3を設けるとともに、カッター装置3を囲みながら更にその後方に配置されるように切削粉粒除去装置5が付設され、更にこの本体装置1と別体の台車状の分離捕集装置6を具えている。そして、前記カッター装置3を舗装面Pに作用させ、切削溝Psを形成することに伴い切削粉粒P0 が発生するものである。
【0023】
以下、更に舗装材切断装置Mについて具体的に説明する。
まず本体ボディ10は、シャーシフレーム100に対し、内部機構を覆うシュラウドカバー11が設けられ、この内部に図示を省略したが、原動機や、原動機から前記カッター装置3への駆動系統の諸装置や、操作伝達系の諸装置が設けられている。
そして本体ボディ10の前方に伸びるように倒伏自在のゲージロッド12を具えるものであり、このゲージロッド12は、先端にゲージ片121と舗装面P上を円滑に移動させるためのローラ122具えている。
また本体ボディ10には、その後方に延びる進行操作ハンドル13が具えられるとともに昇降操作ハンドル14を具える。
【0024】
次にこの本体ボディ10の下方に設けられる車輪装置2について説明する。
車輪装置2としては、装置後方に主輪21が設けられる。なお以下、本実施例では、作業者が前記進行操作ハンドル13を操舵した状態で舗装材切断装置Mを押し進めるものであり、その方向を前方と定義する。この主輪21は、自由転動するものであってもよいし、適宜操作の負荷等を考慮して駆動するものであってもよい。
更に主輪21の前方には、副輪22が設けられる。この副輪22は、副輪アーム23の先端に設けられるとともに、副輪アーム23の基部はアームピボット231において支持され、図示を省略するが、アームピボット231から延長するリンク部材等が副輪アーム23を一定角度回動させ、本体ボディ10を前上がり状態からほぼ水平状態に適宜の角度になるように設定できるものである。
因みに通常の舗装面Pの切断作業を行う際には、本体ボディ10はその下面をほぼ水平にした状態で作業がなされる。
【0025】
次にカッター装置3について説明する。
カッター装置3は、カッターブレード30を主要部材とするものであり、このものは本体ボディ10の下面に取り付けられた軸受31によって支持される主軸32に取り付けられている。即ちこの主軸32に対して、図示を省略した原動機からプーリ33に回転が伝達され、主軸32が駆動され、カッターブレード30もそれに伴い回転するものである。この主軸32とカッターブレード30との固定構造は、カッターブレード30を押えボス35によって挟み込み、ロックナット36の締め込みにより固定するものであり、さらにこの押えボス35は、前記カッターブレード30を冷却する機構を具えている。即ちこの押えボス35は、カッターブレード30をその中心付近で充分保持することができる強度を有する部材であって、一対の押えボス35と、カッターブレード30とは、奥側の押えボス35に植設されたノックピン351により互いに位置決めされる。そして押えボス35には、カッターブレード30の冷却手段を設けるものであって、これは多数の冷却孔352と、その間におけるブリッジ状部を実質とする冷却ファン353とにより構成される。この冷却孔352は、押えボス35の外側面から、カッターブレード30の支持面まで貫いており、穴形状はカッターブレード30の挟み面(支持面)側が、絞られ、且つ外側端側に設けられる吹出しスリット354に連なっている。
【0026】
更に押えボス35におけるカッターブレード30の冷却手段は、空冷方式を主とするものであり、このための効果的な構成を採る。即ち、冷却孔352に効果的に冷却空気を採り入れる条件として、図4(e)に示すように、冷却孔352のほぼ中央部における冷却孔幅は、その部位における冷却ファン353の有する冷却ファン幅より、寸法を大きく形成する。これによって冷却ファン353は、回転した際に充分冷却風を生起させ、冷却孔352からカッターブレード30へ冷却風を供給する。
因みに水冷のみを前提とした冷却機構の先行技術があるが、このような形状設定となっておらず、冷却孔からの冷却風の導入作用は、全くない。
なお本発明の実施例においても水冷方式を兼用し得るよう、主軸32の導入孔32aに連通する冷却水供給スリット35aを軸心寄りに環状に形成してもよい。
【0027】
次に切削粉粒除去装置5について説明する。まず概略的に説明すると、このものは、後部サブフレーム51をブレードカバー52の後方に延長させて形成し骨格部材とするものであり、ブレードカバー52の後方の後部サブフレーム51の部位に溝部処理機構53が設けられる。この溝部処理機構53は、閉鎖ノズル54を主要部材とするものであり、この閉鎖ノズル54は、前記後部サブフレーム51に支持されるノズル支持ボックス55によってほぼ直立しながら上下に移動できるように構成されるものであり、実質的に上下移動は、ノズルガイド56によって確保される。そして、前記ノズル支持ボックス55は、溝部用排除ダクト57を具える。また閉鎖ノズル54は、非作業時において自動的に切削溝Psから引き上げられるように、ノズル引上げロッド58と連繋する。
【0028】
以下、これらを詳細に説明する。
まず後部サブフレーム51は、その後方に取付フック511を設けるものであり、このものは、本体ボディ10におけるシャーシフレーム100の後方の支持ロッド102に対し、係止するように取り付けられる。更に、後部サブフレーム51は、前記ブレードカバー52の直後方に中間閉塞板512を具えるものであり、舗装面Pの直上部においてブレードカバー52の後端と、ノズル支持ボックス55との間を塞ぐような形態となっている。この中間閉塞板512の両側にコロブラケット513が設けられており、ここに移動用コロ513aが取り付けられている。
【0029】
一方ブレードカバー52は、表パネル520と裏パネル521とを具えるものであり、それぞれほぼ同様の半円形状に近い側面形状を有し、その両者は、周縁板522によって一体の覆体状に形成される。そしてこのブレードカバー52内に、前記カッターブレード30を収めながら作業するものである。
前記表パネル520には、点検蓋520aを具えるとともに、裏パネル521に対し、カッターブレード30の主軸32が干渉しないように、軸抜けスリット521aが形成される。また裏パネル521には、前記ノズル引上げロッド58の力点となるリンクピボット521bをピン状に突出させる。
更に前記裏パネル521の部位には、取付枠523が設けられるものであり、このものは、上方を自由端とするように本体ボディ10から立設状態に設けられたブレードカバー支持板15に外嵌状態に嵌る枠体である。またブレードカバー52の前方には、コロブラケット524が設けられており、ここに移動用コロ524aが設けられている。一方その後方側には、一部膨らんだ形状の吸引導流部525を形成し、この上方に排除ダクト526を延長形成する。
更にブレードカバー52は、その下端にはフランジ状の下部スカート527を設け、舗装面Pとの間の密閉状態を維持するものである。またブレードカバー52における周縁板522の上方には、取り扱いの便に供するハンドル522aが設けられる。
【0030】
次にブレードカバー52の後方に設けられる溝部処理機構53について説明する。
この溝部処理機構53の主要部材は、閉鎖ノズル54であって、このものは、前記ノズルガイド56に係止する案内受けピン541と、閉鎖ノズル54を上方に位置させたときにその状態を維持するための固定ハンドル542とを具える。この閉鎖ノズル54を支持するノズル支持ボックス55とノズルガイド56について更に説明する。ノズル支持ボックス55は、前記ブレードカバー52の後方において舗装面Pに近接するように設けられた扁平な箱状のものであり、その上面に上部開口551を具えるとともに、下方に吸込スリット552を有する。この吸込スリット552は、切削溝Psにおける切削粉粒P0 を吸入するためのものであって、一例として、前後方向に長い溝線用スリット552aと、これと直交する溝脇用スリット552bとにより平面視で十字状に形成されている。
【0031】
更にノズル支持ボックス55には、後部サブフレーム51における当接受部514に当接する当接突起553が形成されている。因みに当接受部514は、一例として、平面視でやや斜めに受け縁を設定している。また、このノズル支持ボックス55に対して、ノズルガイド56がその上方に設けられるものであって、ノズルガイド56は、まずベースプレート560を具え、その上方に案内筒561を上方に伸びるように形成している。
案内筒561は、前記閉鎖ノズル54をほぼ鞘状に収めるような形態を有するものであり、案内筒561はその一側面を更に立ち上げて立上げガイド562を形成する。この立上げガイド562は、その中央に上下に案内スリット563を設けるものであり、ここに前記閉鎖ノズル54における案内受けピン541を差込み、その上下方向の移動案内を担う構造とする。
【0032】
更に案内筒561の基部には、レベル設定ブラケット564が設けられるものであり、このものは、適宜の雌ネジを具えるとともに、このレベル設定ブラケット564に対し、レベル設定板565をボルト566により固定するものである。そしてレベル設定板565は、前記ボルト566の受孔を上下に長い長孔565aとして形成している。これによって、レベル設定板565のレベル設定ブラケット564に対する固定位置を選択できるようにする。即ち、レベル設定板565は、前記後部サブフレーム51に対し、上端縁に乗るような設定になっており、レベル設定板565の高さ方向の設定によって結果的にノズル支持ボックス55の上下方向の設定位置を調節し得るように構成している。
更にノズルガイド56の一例として前方には、溝部用排除ダクト57を設けるものであり、この下端は前記ノズル支持ボックス55内に連通するとともに、その側部にノズル引上げロッド58を遊持するロッドガイド571を形成する。ノズル引上げロッド58は、その中間部位を本体ボディ10における引上げ支点101に支持させるとともに、その一方の端部をブレードカバー52に設けたリンクピボット521bに係止させて力点とし、他端を閉鎖ノズル54の引上げ作用部581に係止させて、作用端とする。
【0033】
舗装材切断装置Mとしては、以上述べた本体装置1を切断作用を行う主要部材として成るものであるが、補機として分離捕集装置6を具える。このものは本体ボディ10と一体に形成することも可能であるが、以下述べる実施例では、分離捕集装置6を別途台車状に構成し本体装置1と併走させる形態のものについて説明する。
【0034】
分離捕集装置6と本体装置1との中間に介在するブレード側吸込ホース61は、前記ブレードカバー52における排除ダクト526に一端を接続され、また溝側吸込ホース62は、溝部処理機構53における溝部用排除ダクト57に接続されている。そしてブレード側吸込ホース61と溝側吸込ホース62とは、ジョイント63を介して合流し、集合吸込ホース64として第一の分離捕集ユニット65に至る。
更にこのジョイント63には、温度センサ63Sを設ける。これによって、切削粉粒P0 の大よその温度を検知し、カッターブレード30の発熱状態を知り、そのもののいわゆる焼き付きを防ぎ、安定した運転操作を行うようにする。温度センサ63Sの具体例としては、ジョイント63側面に取り付けられたデジタル表示ができる薄型のものや、取付面の温度を感知して、その温度に応じて発色状態を変化させるシールタイプのもの等が適用できる。
【0035】
本実施例の分離捕集装置6は一例として台車60上に第一の分離捕集ユニット65と、第二の分離捕集ユニット66と、吸込ブロワー装置67とを搭載している。そして、この台車60と舗装材切断装置Mの本体装置1との関係は、両者は別体であるものの、作業中において、一体的に組み合わせることができるように構成されている。この結果、舗装面の切断作業にあたり、本体装置1を一人の作業者が押して切断を進めていく際に、切削粉粒P0 を回収している分離捕集装置6も側車状に一体となって併走し、いわゆるワンマン操作ができるように構成されている。このため別途、分離捕集装置6を操作するための作業者を必要としない。そして、本体装置1と台車60とが一体となりながらも、本体装置1の先端を扛上させた場合、即ち、切削線を変更したり, あるいはカッターブレード30を付け替えする場合であっても、台車60は、その姿勢変化を伴うことなく、車輪600が接地したままの通常の状態を維持する。
以下、このためのトロリー機構Tについて説明する。
【0036】
まず本体装置1と台車60との接続部位(接続点)は、本体ボディ10の下方の主輪21の中心線上である。即ち、本体ボディ10におけるカッター装置3が取り付けられている側面と反対側の側面であって主輪21の側脇部に、台車60を取り付け牽引するためのTの一部を構成するトロリーブラケット16を設ける。このトロリーブラケット16は、側面視で逆へ字状に形成された保持板161を有するものであり、その中央部に直接台車60の係止作用を担うピン受孔162が形成されている。因みこのピン受孔162は、主輪21の中心延長点を少なくとも含む上下に伸びる長孔状の形状に構成されている。この保持板161は、本体ボディ10におけるシャーシフレーム100に対し、トロリーブラケット16が取り付けられるように固定枠163を有する。この固定枠163は、前記主輪21の上面を覆うような半円筒状の部材であって、下方の前方端にボルト孔163aを具えるとともに、その中央上部に上部フック163bを有し、更にボルト孔163aと反対側の部位に下部フック163cを形成している。そして、固定枠163と、前記保持板161とは、水平方向に伸びる接続ステー164によって一体に構成されている。
このトロリーブラケット16は、このものは単独では、シャーシフレーム100に完全に取り付けられず、ロックブラケット17を介して最終的な固定が図られる。即ちこのロックブラケット17は、フレーム係止部171を奥部上向きに延長形成し、その反対側の端部に、前記下部フック163cと係止するフレーム係合部172が設けられる。そして、その中間部位には、ロックボルト173を設けている。このような取り付け構造の結果、トロリーブラケット16は、シャーシフレーム100に対し、溶接等の直付け状態ではなく、常時取り外し自在な構成を保っている。もちろんトロリーブラケット16は常時固定して具えられるように溶接固定がされてもよい。
【0037】
このトロリーブラケット16の固定状態について述べると、図9、図10に示すようにまずロックブラケット17は、フレーム係止部171が例えばチャンネル状断面のシャーシフレーム100の奥側の底板に懸垂状態に取り付けられる。一方、トロリーブラケット16の固定枠163におけるボルト孔163aは、例えば、主輪21の直前に設けられている前記副輪22を支持する副輪アーム23のアームピボット231たるピローブロックの固定ボルト等を利用して、共締め状態に固定される。
一方固定枠163における上部フック163bは、シャーシフレーム100の上部メンバに載るような形状で係止している。そして、下部フック163cの上方に前記ロックブラケット17におけるフレーム係合部172を位置させるとともに、ロックボルト173を締め込み、その上端をシャーシフレーム100の下部メンバに押し当て、突っ張り状態とする。これによって、フレーム係合部172は、固定枠163における下部フック163cを下方に押し下げるようにし、結果的にトロリーブラケット16をシャーシフレーム100にロック状態に固定する。
【0038】
このようなトロリーブラケット16が取り付けられた状態では、前記保持板161におけるピン受孔162が主輪21の中心を通り、上下に幾分か可動範囲を確保した状態で設けられる。なお保持板161には、当接リブ161aを形成し、前記台車60における台車シャーシ601に摺接するような状態とする。そして、台車60と、本体装置1とを組み合わせるにあたっては、台車60側においてトロリー機構Tの一部を構成するトロリーピン602をピン受孔162の位置に合致させ、台車60の車輪600がキャスター状で自在に全方向移動することを利用して、これを差し込むようにする。
具体的には、前記トロリーピン602は、台車60の台車シャーシ601の側面から突出するものであって、途中にロック溝603を有するとともに、このロック溝603に上から外閂状に挿入されるキープレート604を別途用意しておくものである。前記トロリーピン602がピン受孔162に挿入されたのち、保持板161の内側に出現したロック溝603に対し、上方からキープレート604を嵌め込み、その抜け外れを防止する。なお台車60の後方には、ジェネレータ68を同時に牽引するための牽引フック605を設けている。
【0039】
更に本実施例の分離捕集装置6は、直接切削粉粒P0 の分離捕集作用を担うため、第一の分離捕集ユニット65と、これに直列的に接続される第二の分離捕集ユニット66とを具えている。因みに第一の分離捕集ユニット65は、サイクロン機構を有するものであり、第二の分離捕集ユニット66は、フィルタタイプのものである。そして、第二の分離捕集ユニット66の出口側空気は、吸込ブロワー装置67によって吸い込まれ、実質的にこのものが、吸込み源となる。この吸込ブロワー装置67は、モータ駆動されるものであってその電源としてジェネレータ68を具えるものである。
もちろんジェネレータ68のみは、別途設置状態とすることが可能である。
【0040】
以下これら分離捕集装置6における直接分離捕集作用を担う各部材について詳細に説明する。
まず第一の分離捕集ユニット65としてのサイクロン機構は、サイクロン本体651に対し、吸引口651aが設けられ、ここに前記集合吸込ホース64が接続される。そしてサイクロン本体651の排気口651bには、排気ホース657の一端を接続するとともに排気ホース657は、前記第二の分離捕集ユニット66に接続される。
サイクロン本体651は、その常法に従い固形物としての切削粉粒P0 をその重力差により下方に集中させて捕集し、排出する。サイクロン本体651の下方には、第一の捕集チャンバ652が設けられ、更に第一の捕集チャンバ652の下方には、籠状の第一の網目ボックス653が一例として二基設けられ、この各第一の網目ボックス653に対し、第一の集塵袋654が外被せ状態に取り付けられている。この第一の集塵袋654の上部開口部は、第一の捕集チャンバ652の下方に形成されている第一の袋掛けフランジ655に対し、第一の袋止めクランプ656により密着状態に固定される。
【0041】
一方、第一の分離捕集ユニット65に直列的に接続される第二の分離捕集ユニット66は、フィルタタイプのものであって、フィルタ装置ユニット661を上方に具え、吸込口661aに対し、前記排気ホース657が接続される。このフィルタ装置ユニット661は、更に上方近くに排気口661bを具えるとともに、内部室にフィルタエレメント661cがバグフィルター状に設けられる。具体的な形状としては、多数のヒダ状セグメントが放射状に、云わば菊花状断面となるように構成されている。そして、外部からの操作により、フィルタエレメント661c周辺に捕集された切削粉粒P0 を叩き落とすような操作を行い得るように構成されている。即ち符号661dは、フィルタ装置ユニット661の上方に設けられるふるい落としのための操作ハンドルであって、これを回すことによりフィルタエレメント661cを回転させ、この際その周囲に固定されるゴム板等の柔軟なふるい落とし板661eと接させてフィルタエレメント661cの除塵を図る。
そしてその下方は、第一の分離捕集ユニット65と同様に第二の捕集チャンバ662、第二の網目ボックス663、第二の集塵袋664、第二の袋掛けフランジ665、第二の袋止めクランプ666が形成されている。なおこれらの構成は、第一の分離捕集ユニット65と同様であるのでその詳細な説明を省略する。
そして前記フィルタ装置ユニット661の排気口661bに接続されたブロワーホース667は、吸込ブロワー装置67に接続される。
【0042】
なおこの実施例では、それぞれの吸込ブロワー装置67は、ブロワー筐体671内に3基のブロワーユニット672を積層状態に設け、前記フィルタ装置ユニット661からの排気口661bは3つ開口し、ブロワーホース667も各別に引き出されて各ブロワーユニット672に至るように構成されている。
ブロワーユニット672に至った気流は、前記第一の分離捕集ユニット65と、第二の分離捕集ユニット66とにより、充分切削粉粒P0 が除去されているので、ほぼ清浄な気体となっている。そして、ブロワー筐体671の下面等に設けられた排気面673から排気される。また前記ジェネレータ68は、ジェネレータ台車680に搭載された状態で取り扱われるものであって、ジェネレータ台車680は、前記分離捕集装置6の台車60と連結して作業に供し得るように、倒伏自在であって前記牽引フック605に係合する連結バー681をその前方に具える。
【0043】
本発明は、以上述べたような具体的な構成を有するものであり、次のような作動のもとに舗装材の切断作業および切削粉粒の除去作業および切削粉粒の分離捕集作業を行う。
【0044】
<1.準備>
現場作業では、切断すべき場所を案内する罫引き線等が付設される。一方装置等の準備としては、通常、現場までの搬送の際は、カッターブレード30は舗装材切断装置Mには取り付けられずに搬送するものであり、現場で取り付け準備をされる。
〈カッター装置3の取り付け〉
まずカッターブレード30を取り付けるにあたっては、本体装置1における前方を充分上昇させ、カッターブレード30が舗装面Pと干渉しない状態とする。具体的には、この操作は本体ボディ10における昇降操作ハンドル14を操作し、適宜のリンク機構等に接続されている車輪装置2における副輪22の副輪アーム23を立ち上げてゆき、主輪21を接地したまま本体ボディ10の前方を浮き上がらせるようにする。もちろんこのとき後部サブフレーム51と一体となったブレードカバー52、即ち実質的に見れば切削粉粒除去装置5は、取り付けられていない状態での作業である。
カッターブレード30を取り付けるにあたっては、主軸32に対し一対の押えボス35を用いてカッターブレード30を挟み込むようにして固定し、これを主軸32の先端のロックナット36を締め込みことによりカッターブレード30を固定する。
【0045】
〈1−i.切削粉粒除去装置5の取り付け〉
このようにしてカッターブレード30の取り付けが完了した後に、切削粉粒除去装置5が本体ボディ10に取り付けられる。
即ち、切削粉粒除去装置5の後部サブフレーム51における取付フック511をシャーシフレーム100の後方に設けられているロッド状の支持ロッド102に対し係止させ、一方前記本体ボディ10の側部に立ち上がるように設けられているブレードカバー支持板15に対し、ブレードカバー52の取付枠523を外嵌するようにして嵌込むものである。この嵌め込み自体は、本体ボディ10の前方が持ち上げられた状態であっても、ブレードカバー52の裏パネル521に設けられた軸抜けスリット521aにより主軸32あるいはカッターブレード30に干渉しないでブレードカバー52を被せられる。
【0046】
切削粉粒除去装置5自体は、本体ボディ10に対しこのような係止状態であるから、本体ボディ10の先端が、上方に持ち上げられた状態であっても、後部サブフレーム51における取付フック511を中心にブレードカバー52は格別規制されておらず、下部スカート527が舗装面Pに接地している。即ち、常にブレードカバー52は、カッターブレード30を囲むとともに、舗装面Pとの間でも密着状態を保ち、切削粉粒P0 の外部への飛散を防止しているのである。
【0047】
このとき切削粉粒除去装置5における閉鎖ノズル54は、ノズル引上げロッド58により上方に引き上げられた状態を維持する。もちろん実際の作業では、固定ハンドル542を閉め込むことにより、閉鎖ノズル54をノズルガイド56における立上げガイド562と共締めするような形となり、下方への自由な移動を阻止した状態で取り扱われている。
このような固定ハンドル542が取り外されると、閉鎖ノズル54の案内受けピン541は、立上げガイド562における案内スリット563内を自由に動き得るので、下方に落下することになるが、実際にはノズル引上げロッド58の作用により上方に引き上げられた状態を維持する。
即ちノズル引上げロッド58は、本体ボディ10における引上げ支点101を支点とし、一方この本体ボディ10と相対的に降下した状態のブレードカバー52におけるリンクピボット521bによって一端が押し下げられ、結果的に他の作用端たる引上げ作用部581は、閉鎖ノズル54の案内受けピン541を下方から上方に押し上げるような形態となっており、閉鎖ノズル54の下方への移動を阻止している。
【0048】
〈1−ii.ノズル支持ボックス55の調整〉
なお作業中にノズル支持ボックス55の下端面は、舗装面Pを無用に傷つけないように舗装面Pよりも僅かに浮いた状態に設定する必要がある。このため具体的には、ノズルガイド56の下方にあるレベル設定ブラケット564とレベル設定板565との固定位置を設定することによりその操作を行う。即ち、レベル設定板565の長孔565aを利用し、レベル設定板565をレベル設定ブラケット564に対し相対的に低く設定すれば、レベル設定板565が後部サブフレーム51の上縁に乗ることから、全体的にノズル支持ボックス55が上方に設定されることとなる。
【0049】
〈1−iii .分離捕集装置の取り付け〉
更に分離捕集装置6についても、本体装置1に組み付けワンマン作業ができる状態とする。まず、作業開始前であり、舗装材切断装置Mは、本体装置1が、カッターブレード30の取り付けのためにその前方が扛上した姿勢である。この状態で接地して且つその基準位置が変わらない主輪21の側脇部に設けられているトロリーブラケット16に対し、台車60のトロリーピン602を係止させ、分離捕集装置6を側車状に本体装置1と連結させる。具体的には、トロリーピン602をトロリーブラケット16の保持板161に開口したピン受孔162に側方から嵌め込み、更に外閂状にキープレート604をトロリーピン602におけるロック溝603に差込み、その抜け出しを阻止する。この状態では、トロリーブラケット16の保持板161の当接リブ161aと、台車シャーシ601とが緩当接し、本体装置1に台車シャーシ601がほぼ沿った状態での取り付けが図られ、本体装置1の移動に従い、分離捕集装置6も従動する。なおこの状態から本体装置1の先端が降下して作業姿勢となっても、台車60には影響しない。また、分離捕集装置6の台車60の後方には、牽引フック605を利用して、ジェネレータ台車680の連結バー681を係止させ、これを牽引する。
【0050】
<2.切断開始>
切断作業の開始にあたっては、全てのエンジン等の起動を行う。即ちジェネレータ68を起動し、吸込ブロワー装置67を起動させ、更に舗装材切断装置Mにおける原動機を起動させる。
一方、作業現場に据え付けた舗装材切断装置Mは、ゲージロッド12を前方に倒伏させてゲージ片121を適宜の罫引き線等に合わせて準備をする。このようにして始発点に設置された舗装材切断装置Mは、昇降操作ハンドル14を操作することにより扛起していた副輪アーム23を格納するようにし、副輪22の仕舞い込みにより前方を下げる状態に姿勢を変化させてゆく。このとき必要な舗装面Pの切り込み高さを設定できるような位置で昇降操作ハンドル14の操作を停止する。このような状態で、舗装面Pの切断をカッターブレード30によって行う。
このカッターブレード30による切断形態は、舗装材切断装置Mを前進させながら、カッターブレード30の作用方向を、舗装面Pの上方から切り込み溝に向けて回転させるダウンカットの態様である。このようなカッターブレード30による切断作業は、ドライ環境で行われることから、ウェット環境のような水による冷却が期待できず、切削作業による熱の影響を受け易い。しかしながら、この実施例では、カッターブレード30を支持する押えボス35には、冷却孔352及び冷却ファン353が形成されており、これがタービン状に冷却風を生起させ、冷却孔352の先端の吹出しスリット354からカッターブレード30に指向するように供給する。これによって、カッターブレード30は、常に強制空冷状態となり、安定した作動がなされる。
【0051】
<3.切削粉粒の除去>
このようなカッターブレード30による切削作業が進行すると、切削粉粒P0 が生じるものであるが、このものは、次のように除去される。
まず切削粉粒P0 の挙動としては、ダウンカットであるから、当然ながらカッターブレード30の外周部の接線方向に従って導かれるものであり、舗装材切断装置Mの後方に切削粉粒P0 が案内されて飛ばされてくる。このとき、ドライ環境であると切削粉粒P0 が飛ばされた部位は、既に切削溝Psが形成されており、そこからの切削粉粒P0 の飛散が激しいのであるが、本発明では、切削粉粒除去装置5によりその飛散が完全に防止される。
具体的には、まずカッターブレード30を囲む周辺のブレードカバー52は、その後方に吸引導流部525として幾分かチャンバー状に広げた部分を具えており、この部位において切削粉粒P0 は、排除ダクト526からブレード側吸込ホース61によって吸い出されていく。そして、このとき前記切削溝Psに対しては、上下方向に自由状態に動き得る閉鎖ノズル54が嵌り込むようになり、後端部の空間を閉鎖したような状態を呈する。
この結果切削溝Psから切削粉粒P0 の飛散は防止されるとともに、ここからの外気吸入が阻止されることから、吸込ブロワー装置67による負圧吸引もより効果的になされている。
【0052】
そして更にブレードカバー52の後方の溝部処理機構53においても、閉鎖ノズル54の前方において、ノズル支持ボックス55の吸込スリット552からブレードカバー52側で除去し切れなかった残留切削粉粒P1 を確実に除去する。具体的には切削溝Psに残った残留切削粉粒P1 については、吸込スリット552のうち溝線用スリット552aから吸込まれて除去される。それとともに、一部前段のブレードカバー52の部位で除去し切れなかった例えば切削溝Psの両側舗装面上に残留した残留切削粉粒P1 については、溝脇用スリット552bが開口していることから、その部位から確実に吸い取りが図られ、これらを溝部用排除ダクト57から溝側吸込ホース62を介して除去してゆくのである。
【0053】
なお切削溝Psの幅に応じて、適切な厚さの閉鎖ノズル54を選択して用いるものであるが、仮に適切なものがない場合であっても、例えばノズル支持ボックス55の設定状態を平面視で幾分か斜めにすることにより、図7(b)に示すように閉鎖ノズル54が確実に切削溝Psを塞ぐ形態とすることができる。このため、ノズル支持ボックス55の幅は、前記後部サブフレーム51の幅寸法より幾分か狭い寸法にして、斜めの姿勢を採り得るような状態とする。
この状態は、格別固定するわけではなく、閉鎖ノズル54の自由な動きを確保するためには、ノズル支持ボックス55は、単に斜めに置かれた状態とされる。しかしながら、ノズル支持ボックス55における後部ほぼ中心に設けられた当接突起553が、後部サブフレーム51における当接受部514に当接する際に、前記当接受部514が幾分か斜めに形成されていることから、これらを当接した状態でセットするだけで、ノズル支持ボックス55は斜めの姿勢がそのまま維持される。その理由は、閉鎖ノズル54が切削溝Ps内を進行する際、幾分かその側壁面に摺接してノズル支持ボックス55は、常に後方に戻されがちになり、一方当接受部514が斜めに形成されていることから、これに抗してノズル支持ボックス55の姿勢を変えることは、当接突起553が当接受部514の傾斜面を動く力に抗してせり上がる状態となり、このような動きは殆んど生じない。これによって実質的には比較的ルーズな状態でノズル支持ボックス55をセットした状態であっても斜めの姿勢が維持される。
【0054】
<4.切削粉粒P0 の分離捕集>
このようにして、切削粉粒除去装置5から除去されてきた切削粉粒P0 は、分離捕集装置6によって搬送気体から外れ個体として回収される。
まず、ブレード側吸込ホース61と溝側吸込ホース62とは、ジョイント63により合流し、集合吸込ホース64によって第一の分離捕集ユニット65に案内される。なおこのときジョイント63に温度センサ63Sを設けておくときには、切削粉粒P0 の温度状態が検出でき、結果的にカッターブレード30の熱負荷を知ることができる。当然この負荷状態に応じて作業状況を変え、不具合の発生を未然に防止する。そして第一の分離捕集ユニット65は、サイクロン作用によりその分離を行うものであり、サイクロン装置の作動常法にしたがいその下方に切削粉粒P0 が捕集され、第一の捕集チャンバ652を経て、第一の網目ボックス653に取り付けられていた第一の集塵袋654内に順次固粒状の切削粉粒P0 が集められる。そして、かなりの確立で切削粉粒P0 が除去された搬送気体は、排気ホース657から第二の分離捕集ユニット66たるフィルタ装置ユニット661に至る。
この装置では、吸込ブロワー装置67により吸込まれているブロワーホース667によりフィルタエレメント661cが吸引状態となり、その外面側にフィルタエレメント661cを通過しない切削粉粒P0 が付着して捕捉される。このような状態で適宜フィルタエレメント661cの表面に切削粉粒P0 が溜まり、且つ作業中断して吸込ブロワー装置67による吸込みを解除した状態で、ふるい落とし用の操作ハンドル661dを操作し、フィルタエレメント661cの表面をふるい落とし板661eでたたくような操作して、その表面に付着した切削粉粒P0 を下方に落下させる。この切削粉粒P0 は、第二の分離捕集ユニット66の第二の捕集チャンバ662から第二の網目ボックス663を通り、第二の集塵袋664に捕集される。このように集塵袋654、664を用いて切削粉粒を捕集した後には、この集塵袋654、664ごと、切削粉粒P0 の廃棄ができ、その取り扱いが容易である。
なおこの集塵袋654、664ともに設定状態では、吸込ブロワー装置67の作動により内側が負圧状態となり、それぞれの網目ボックス653、663に外側から密着した状態を呈する。この結果切削粉粒P0 が外に漏洩することが防止されている。
【0055】
なお切削粉粒P0 の分離捕集装置6は、本体装置1に対し、その側面に配置して作業できることが特徴の一つであるが、作業現場の状況によっては、分離捕集装置6の存在が邪魔になる場合も予想される。このような状況では、分離捕集装置6は、本体装置1の側面から外して作業が行われる。
この場合、本体装置1の後方に、作業者の操作の邪魔にならないように分離捕集装置6を連結して、両機を共動させながらワンマン操作で作業を行ってもよいし、或いは全く別途に両機を切り離して吸引ホースのみ接続させた状態で接続作業を行ってもよい。
【0056】
〔他の実施の形態〕
本発明は以上述べた実施の形態を一つの基本的な技術思想とするものであるが、必ずしも上述の実施例に限定されるものではなく、次のような改変が考えられる。
例えば、切削粉粒除去装置5は、ブレードカバー52と溝部処理機構53とでそれぞれに切削粉粒P0 の回収用のダクトを設けており、このような構成により確実に切削粉粒P0 を回収する点では好ましいが、分離捕集装置6や吸込ブロワー装置67の性能仕様等に応じて、ブレードカバー52と溝部処理機構53との中間位置に一本の排除ダクトを設ける形態としても、もとより差し支えない。
なお本発明によれば、従来の既存の装置のブレードカバーに変えて、後部サブフレーム51を延長した本発明の切削粉粒除去装置5に単純に付け替えることにより、ドライ環境での舗装材切断作業が可能となるものである。
また本発明の要旨とは外れるが、分離捕集装置6についても直列状に2段に亘って分離捕集装置6を設けているが、2段以上としてもよいし、1段のみとすることも差し支えない。
【0057】
〔多段作業対応の実施例〕
更に図11、12に示すものは、多段作業を考慮した実施例である。
即ち実際の作業において、予め浅く予備切削をした後、更に深く切り込むような場合、図12に示すように進行方向前方に予備の切削溝Psが既に幅D0 と幅狭に形成される。この後、次の作業で深く切り込む場合、多くはカッターブレード30の刃幅は広く(例えばD1 )、従って切削粉粒P0 の一部は、前方に噴出する。これを効果的に捕捉すべく、前記ブレードカバー52の前方に前覆板52Aを延長形成し、その上方に吸引を行うダクト52Bを設け、ここに前方吸引ホース61Aを設けるものである
【符号の説明】
【0058】
M 舗装材切断装置
P 舗装面
Ps 切削溝
0 切削粉粒
1 残留切削粉粒
0 (予備の切削溝の)幅
1 (切削溝の)幅
T トロリー機構
1 本体装置
2 車輪装置
3 カッター装置
5 切削粉粒除去装置
6 分離捕集装置
1 本体装置
10 本体ボディ
100 シャーシフレーム
101 引上げ支点
102 支持ロッド
11 シュラウドカバー
12 ゲージロッド
121 ゲージ片
122 ローラ
13 進行操作ハンドル
14 昇降操作ハンドル
15 ブレードカバー支持板
16 トロリーブラケット
161 保持板
161a 当接リブ
162 ピン受孔
163 固定枠
163a ボルト孔
163b 上部フック
163c 下部フック
164 接続ステー
17 ロックブラケット
171 フレーム係止部
172 フレーム係合部
173 ロックボルト
2 車輪装置
21 主輪
22 副輪
23 副輪アーム
231 アームピボット
3 カッター装置
30 カッターブレード
31 軸受
32 主軸
32a 導入孔
33 プーリ
35 押えボス
35a 冷却水供給スリット
351 ノックピン
352 冷却孔
353 冷却ファン
354 吹出しスリット
36 ロックナット
5 切削粉粒除去装置
51 後部サブフレーム
511 取付フック
512 中間閉塞板
513 コロブラケット
513a 移動用コロ
514 当接受部
52 ブレードカバー
52A 前覆板
52B ダクト
520 表パネル
520a 点検蓋
521 裏パネル
521a 軸抜けスリット
521b リンクピボット
522 周縁板
522a ハンドル
523 取付枠
524 コロブラケット
524a 移動用コロ
525 吸引導流部
526 排除ダクト
527 下部スカート
53 溝部処理機構
54 閉鎖ノズル
541 案内受けピン
542 固定ハンドル
55 ノズル支持ボックス
551 上部開口
552 吸込スリット
552a 溝線用スリット
552b 溝脇用スリット
553 当接突起
56 ノズルガイド
560 ベースプレート
561 案内筒
562 立上げガイド
563 案内スリット
564 レベル設定ブラケット
565 レベル設定板
565a 長孔
566 ボルト
57 溝部用排除ダクト
571 ロッドガイド
58 ノズル引上げロッド
581 引上げ作用部
6 分離捕集装置
60 台車
600 車輪
601 台車シャーシ
602 トロリーピン
603 ロック溝
604 キープレート
605 牽引フック
61 ブレード側吸込ホース
61A 前方吸引ホース
62 溝側吸込ホース
63 ジョイント
63S 温度センサ
64 集合吸込ホース
65 第一の分離捕集ユニット
651 サイクロン本体
651a 吸引口
651b 排気口
652 第一の捕集チャンバ
653 第一の網目ボックス
654 第一の集塵袋
655 第一の袋掛けフランジ
656 第一の袋止めクランプ
657 排気ホース
66 第二の分離捕集ユニット
661 フィルタ装置ユニット
661a 吸込口
661b 排気口
661c フィルタエレメント
661d 操作ハンドル
661e ふるい落とし板
662 第二の捕集チャンバ
663 第二の網目ボックス
664 第二の集塵袋
665 第二の袋掛けフランジ
666 第二の袋止めクランプ
667 ブロワーホース
67 吸込ブロワー装置
671 ブロワー筐体
672 ブロワーユニット
673 排気面
68 ジェネレータ
680 ジェネレータ台車
681 連結バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するカッターブレードをダウンカット状態に舗装面に作用させて切削溝を形成し、これによって発生する舗装材の切削粉粒を除去する装置であって、
この装置は前記カッターブレードを覆うブレードカバーと、その後方に設けられる溝部処理機構とを具え、前記ブレードカバーの後方には、負圧吸引が行われる排除ダクトが設けられ、一方前記溝部処理機構は、切削溝を深さ方向に塞ぐように入り込み、切削粉粒の除去のための負圧吸引を確実にする閉鎖ノズルを具えていることを特徴とする切削粉粒除去装置。
【請求項2】
前記溝部処理機構は、ブレードカバー後方に配置したノズル支持ボックスによって前記閉鎖ノズルが支持されるものであり、且つこのノズル支持ボックスに負圧吸引が行われる排除ダクトが設けられていることを特徴とする前記請求項1記載の切削粉粒除去装置。
【請求項3】
前記閉鎖ノズルは、帯板状であって、平面視で設定姿勢を切削溝に沿った状態と、斜めになった状態とに設定できることを特徴とする前記請求項1または2記載の切削粉粒除去装置。
【請求項4】
前記ブレードカバーの前方には、舗装面を覆う前覆板と、その上部に設けられた負圧吸引ダクトとを具えた多段作業用除塵装置が設けられていることを特徴とする前記請求項1、2または3記載の切削粉粒除去装置。
【請求項5】
(舗装材切断装置)
本体ボディに対し、その下方に車輪装置を設け、また本体ボディ側方にカッター装置を設け、更に本体ボディ内にカッター装置の駆動源装置を具え、カッター装置におけるカッターブレードをダウンカット状態に舗装面に作用させて、舗装面に切削溝を形成する装置であって、
この装置には前記カッターブレードによる舗装面の切削により生じる切削粉を除去するための切削粉粒除去装置が具えられており、この切削粉除去装置は、前記カッターブレードを覆うブレードカバーと、その後方に設けられる溝部処理機構とを具え、前記ブレードカバーの後方には、負圧吸引が行われる排除ダクトが設けられ、一方前記溝部処理機構は、切削溝を深さ方向に塞ぐように入り込み、切削粉粒の除去のための負圧吸引を確実にする閉鎖ノズルを具えていることを特徴とする舗装材切断装置。
【請求項6】
前記切削粉除去装置における溝部処理機構は、ブレードカバー後方に配置したノズル支持ボックスによって前記閉鎖ノズルが支持されるものであり、且つこのノズル支持ボックスに負圧吸引が行われる排除ダクトが設けられていることを特徴とする前記請求項5記載の舗装材切断装置。
【請求項7】
前記切削粉除去装置における前記閉鎖ノズルは、帯板状であって、平面視で設定姿勢を切削溝に沿った状態と、斜めになった状態とに設定できることを特徴とする前記請求項5または6記載の舗装材切断装置。
【請求項8】
前記切削粉除去装置における前記ブレードカバーの前方には、舗装面を覆う前覆板と、その上部に設けられた負圧吸引ダクトとを具えた多段作業用除塵装置が設けられていることを特徴とする前記請求項5、6または7記載の舗装材切断装置。
【請求項9】
前記本体ボディと切削粉粒除去装置との間には、ノズル引上げロッドが設けられるものであり、該ノズル引上げロッドは、中間の引上げ支点を本体ボディ側に設けるとともに、一方の端部をブレードカバーに設けたリンクピボットに係止させて力点とし、他端を閉鎖ノズルの引き上げ作用部に係止させて作用端とし、カッターブレードの引き上げ時には、ブレードカバーが舗装面上に残留する相対移動により、ノズル引上げロッドの作用端が閉鎖ノズルを切削溝から上方に抜き出すように構成したことを特徴とする前記請求項5、6、7または8記載舗装材切断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−2023(P2012−2023A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139872(P2010−139872)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(592207142)仲山鉄工株式会社 (6)
【Fターム(参考)】