説明

舗装用アスファルト組成物、舗装用アスファルト混合物及びアスファルト舗装方法

【課題】本発明は、本発明は、アスファルト舗装廃材から回収されたアスファルトを再利用して舗装作業を効率よく行うことができる舗装用アスファルト組成物、舗装用アスファルト混合物及びアスファルト舗装方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】アスファルト舗装廃材から回収されたアスファルト分を含むとともに骨材及びアスファルトを主とする混合物に、回収されたアスファルト分に木タールを添加して針入度を40〜100(1/100cm)に設定することにより、添加しない場合に比べて低い温度で混合処理及び締固め処理を行うことが可能なアスファルト混合物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道、空港の滑走路、歩道、公園等の舗装に用いる舗装用アスファルト組成物、舗装用アスファルト混合物及びアスファルト舗方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路舗装材としては、従来よりストレートアスファルトが使用されてきているが、アスファルトを長期間使用していると、経年変化により劣化して固くなり、ひび割れが生じるようになる。そのため、劣化したアスファルトを剥がして新しいアスファルトを舗設することになるが、その際に劣化アスファルトが廃棄物として発生する。劣化アスファルトは産業廃棄物として処分しなければならず、昨今の最終処分場の不足や環境問題がクローズアップされる中ではその処分が次第に困難となってきている。
【0003】
したがって、劣化アスファルトの再生利用が検討されてきており、例えば、特許文献1では、木材のリサイクルシステムの一環として、木材を乾留して木炭及び木タールを生成し、木炭から作成した流動状木炭を燃料にして砂利や砂等の骨材を加熱し、加熱骨材に木タールとアスファルトを混入して舗装材を生成する点が記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、多環芳香族含有量が3重量%未満であり、かつ温度40℃における動粘度が250〜800mm2/secであり、かつアニリン点が70〜100℃であり、かつ芳香族分(%CA)が12〜22重量%の鉱油を再生アスファルト用添加剤として、アスファルト舗装廃材に対し、その中のアスファルト分の重量に基づき、1〜30重量%の割合で配合してなる再生アスファルト舗装材が記載されている。
【特許文献1】特開2001−335787号公報
【特許文献2】特許第4028949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
劣化したアスファルトは固化しているため、アスファルト舗装廃材を再生利用する場合には、機械粉砕した後加熱処理により軟化させるが、骨材等と混合する際に十分な混合処理を行うためには、混合温度において軟化させた状態を維持する必要がある。また、混合処理した後車道等の路面に舗設する際においても軟化した状態でないと、締固め等の作業性が悪くなる。
【0006】
アスファルト舗装を行う場合、一般に砕石などの骨材及びアスファルトを高温加熱して混合処理し、路面等の舗装面に所定の厚さで舗設して締固め処理を行うが、例えば、ストレートアスファルト60/80をバインダとして使用した場合、混合温度は150℃〜160℃に設定して混合処理を行い、生成された混合物を140℃〜150℃の締固め温度で締固め処理を行われていた。アスファルトは温度が上昇するにしたがい粘度が低下するため、それぞれの処理作業を効率よく行うのに適した粘度となるようにこうした温度範囲に設定する必要がある。
【0007】
アスファルト舗装廃材から回収したアスファルトを再生利用した場合、混合処理及び締固め処理の際の粘度がストレートアスファルトよりも高くなるため混合温度及び締固め温度を高く設定せざるを得ず、そのため専用のプラント設備や従来のプラント設備の改造が必要になり、また設定温度が高くなると温度管理が難しくなることから、現場施工が難しくなるといった課題がある。
【0008】
なお、特許文献2では、劣化したアスファルトを再生利用するための再生アスファルト用添加剤として鉱油を用いて軟化させるようにしているが、鉱油が石油精製工程から得られることを考えると、環境に十分配慮した再生利用とはいえない。特許文献1では、木材のリサイクルシステムの一環として精製された木タールを用いている点で環境に配慮しているが、上述した実際の舗装作業における作業性の面及び材料の性状に関して検討されておらず実用的なアスファルト舗装材が得られていない。
【0009】
そこで、本発明は、アスファルト舗装廃材から回収されたアスファルトを再利用して舗装作業を効率よく行うことができる舗装用アスファルト組成物、舗装用アスファルト混合物及びアスファルト舗装方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る舗装用アスファルト組成物は、アスファルト舗装廃材から回収されたアスファルト及び木タールを含み、針入度が40〜100(1/100cm)であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る舗装用アスファルト混合物は、アスファルト舗装廃材から回収されたアスファルト分及び木タールを含むとともに骨材及びアスファルトを主とする混合物であって、アスファルトの針入度が40〜100(1/100cm)であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るアスファルト舗装方法は、アスファルト舗装廃材から回収されたアスファルト分を含むとともに骨材及びアスファルトを主とする混合物に、木タールを添加してアスファルトの針入度を40〜100(1/100cm)に設定することにより、添加しない場合に比べて低い温度で混合処理及び締固め処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、木材から得られた木タールを使用することで環境に配慮したアスファルト組成物及びアスファルト舗装材を得ることができる。また、木タールを添加して針入度が40〜100(1/100cm)とすることで舗装作業の際の加熱混合処理及び締固め処理において効率よく作業を行うのに必要な粘度特性を備えることができ、さらに木タールを添加しない場合比べて低い温度で加熱混合処理及び締固め処理を行うことができるので、舗装現場において混合処理及び締固め処理といった舗装作業を容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る舗装用アスファルト組成物に用いられる木タールは、スギ、ヒノキ等の木材を公知の方法で乾留して得られるもので、粘度(60℃)50〜50,000mPa・Sで引火点が230℃以上のものが好ましい。こうした粘度特性及び温度特性の木タールは、アスファルトとの混合性がよく、アスファルト舗装作業の際の骨材との混合処理及び舗装面での締固め処理において処理作業に必要な粘度を得ることができる。特に、木タールを添加することで、添加しない場合に比べて混合処理及び締固め処理の温度を低下しても処理作業に必要な粘度を実現できるので、添加しない場合に比べて温度管理が容易になり、処理作業の効率化を図ることができる。また、引火点が混合温度及び締固め温度よりも高く設定されているため、安全に処理作業を行うことができる。
【0015】
舗装用アスファルト組成物に使用するアスファルトとしては、アスファルト舗装廃材を加熱処理して回収したアスファルトを用いる。回収したアスファルトのみを使用してもよいが、ストレートアスファルト等の未使用のものと適当な配合割合で混合して使用してもよい。
【0016】
木タールをアスファルトに添加する場合、針入度が40〜100(1/100cm)となるような配合割合で添加すればよい。より好ましくは、60〜80(1/100cm)とすればよい。針入度が40よりも小さいと粘度が低くなり、十分な強度を得ることができない。また、針入度が100を超えると粘度が高くなり、骨材と混合する場合等舗設の際に取り扱いが困難となる。
【0017】
本発明に係る舗装用アスファルト混合物は、アスファルト舗装廃材を加熱処理して回収したアスファルト、ストレートアスファルト等の未使用のアスファルト及び砕石等の骨材を準備し、これらのアスファルト及び骨材を加熱しながら混合して十分練り合わせた後木タールを適量添加して混合処理することで製造される。回収されたアスファルトに予め木タールを添加して生成したアスファルト組成物と未使用のアスファルト及び骨材を混合して舗装用アスファルト混合物を製造するようにしてもよい。
【0018】
木タールの添加割合は、予め回収されたアスファルト分に添加して針入度が40〜100(1/100cm)となるような割合を決定すればよい。より好ましくは、針入度が60〜80(1/100cm)となるような割合を決定すればよい。
【0019】
混合処理する際の混合温度は、ストレートアスファルトの場合155℃〜165℃とされているが、木タールを添加することで混合温度が10℃程度低い温度でも混合処理を効率よく行える粘度に設定することができる。
【0020】
こうして製造された舗装用アスファルト混合物を舗装面に舗設する場合には、混合物を均一な厚さになるように均した後表面を転圧機等により締固め処理を行う。締固め処理を行う際に処理作業を効率よく行うためには混合物のアスファルトの粘度を所定の範囲に保つ必要がある。ストレートアスファルトの場合には、締固め温度が145℃〜155℃とされているが、木タールを添加することで締固め温度が10℃程度低い温度でも締固め処理を効率よく行える粘度に設定することができる。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
アスファルト舗装廃材から、舗装調査・試験方法便覧(256頁〜265頁、平成19年6月、社団法人日本道路協会)に記載されたアスファルト回収試験方法によりアスファルトを回収した。木タールは、果樹の剪定枝、間伐材、流木等を粉砕した木チップ60tを原料として公知の方法で乾留して約4tを得た。粘度(60℃)は、4,340mPa・Sで、引火点は250℃以上であった。
【0022】
回収したアスファルト2.5kg±0.02gに木タールを添加して、150℃〜160℃で加熱しながら十分練り合わせてアスファルト組成物の供試体を作成した。添加率(重量%)を、0%、10%、20%、30%、40%、60%に変化させて6つの供試体を作成した。作成した供試体について針入度(JIS K2207準拠)を測定した。測定結果を図1に示す。
【0023】
舗装用アスファルトの品質規格では、針入度(25℃;1/100cm)は40〜100であるが、福井県等の地域では60〜80が望ましく、60より小さいと当該地域では硬くて供用後ひび割れを起こしやすく、80を超えると当該地域では柔かくて供用後流動を起こしやすい。実施例1では、針入度60〜80に対応する木タールの添加率は21〜31重量%となるから、添加率を26重量%に設定した。
【0024】
(実施例2)
次に、実施例1で使用した回収アスファルト、未使用のストレートアスファルト(60/80)及び実施例1で使用した木タールを加熱しながら十分練り合わせてアスファルト組成物の供試体を作成した。回収アスファルト43.6重量%、ストレートアスファルト45.1重量%、木タール11.3重量%とした(回収アスファルト分に対しては木タールの添加率が26%に設定されている)。
【0025】
作成された供試体について温度変化に伴う粘度の変化を測定した。測定方法は、舗装調査・試験法便覧(第2分冊、203頁〜208頁)A052に掲載の二重円筒回転粘度計による粘度試験方法(JPI−5S−54−99準拠)に基づいて行った。比較のため、ストレートアスファルト(60/80)のみについて同様に測定を行った、測定結果を図2に示す。
【0026】
いずれのアスファルトの場合にも温度が上昇すると粘度が低下する傾向がみられるが、供試体の方がストレートアスファルトに比べていずれの温度でも粘度が低くなっている。
【0027】
舗装用アスファルトとしては、舗装作業を行う場合、混合処理の際の動粘度は、152〜200mm2/sとされており、アスファルトの密度に基づいて換算すると、粘度範囲を152〜191mPa・Sに設定すれば、効率よく処理作業を行うことができる。また、締固め処理の際の動粘度は、270〜330mm2/sとされており、アスファルトの密度に基づいて換算すると、粘度範囲を260〜318mPa・Sに設定すれば、効率よく処理作業を行うことができる。
【0028】
したがって、各処理に適する粘度範囲に対応した温度をみると、供試体では、混合温度148℃〜155℃、締固め温度134℃〜140℃となり、ストレートアスファルトでは、混合温度158℃〜165℃、締固め温度144℃〜150℃となり、同じ粘度範囲で供試体の方がストレートアスファルトに比べて10℃低い温度となる。
【0029】
(実施例3)
次に、実施例1で使用した回収アスファルト、ストレートアスファルト及び木タールの配合割合で作成したアスファルト組成物の量を全体の5.9重量%、骨材を94.1重量%の配合割合でアスファルト混合物の供試体を作成した。この場合も回収アスファルト分に対して木タールの添加率は26重量%に設定されている。
【0030】
回収アスファルト、ストレートアスファルト、木タール及び骨材を混合温度155℃で加熱しながら十分練り合わせてアスファルト混合物の供試体を得た。
【0031】
得られた供試体について、締固め温度140℃でマーシャルオートランマを用いて両面で50回突き固めて締固め処理を行い、マーシャル安定度試験を実施した。その結果、フロー値(1/100cm)については平均26、安定度(kN)については平均13.48であった。いずれの数値もアスファルト舗装材の規格に合致しており、アスファルト混合物により実用的なアスファルト舗装材が得られることがわかった。
【0032】
(実施例4)
別のアスファルト舗装廃材を用いて実施例1から実施例3と同様のアスファルト組成物及び混合物を作成した。
【0033】
この場合の木タールの添加率及び針入度の関係を図3に示す。針入度60〜80に対応する木タールの添加率は40重量%〜50重量%となるから、添加率を45重量%とした。
【0034】
次に、回収アスファルト33.1重量%、ストレートアスファルト52.0重量%及び木タール14.9重量%(回収アスファルト分に対して45重量%)として、実施例2と同様にアスファルト組成物の供試体を作成した。
【0035】
次に、実施例3と同様に、作成したアスファルト組成物6.1重量%、骨材を93.9重量%の配合割合で、舗装プラントの混合機を用いてアスファルト混合物を製造した。この場合も回収アスファルト分に対して木タールの添加率は45重量%に設定されている。
【0036】
上記の製造時の混合温度は150℃で、ストレートアスファルトに比べて8〜15℃低下した。締固め温度は135℃で、ストレートアスファルトに比べて9〜15℃低下した。
【0037】
製造したアスファルト混合物で実施例3と同様に、マーシャル安定度試験を実施した。その結果、フロー値(1/100cm)については平均30、安定度(kN)については平均12.19であった。いずれの数値もアスファルト舗装材の規格に合致しており、アスファルト混合物により実用的なアスファルト舗装材が得られることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】回収アスファルトに対する木タールの添加率及び針入度の関係を示すグラフである。
【図2】アスファルトの粘度及び温度の関係を示すグラフである。
【図3】別の回収アスファルトに対する木タールの添加率及び針入度の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト舗装廃材から回収されたアスファルト及び木タールを含み、針入度が40〜100(1/100cm)であることを特徴とする舗装用アスファルト組成物。
【請求項2】
アスファルト舗装廃材から回収されたアスファルト分及び木タールを含むとともに骨材及びアスファルトを主とする混合物であって、アスファルトの針入度が40〜100(1/100cm)であることを特徴とする舗装用アスファルト混合物。
【請求項3】
アスファルト舗装廃材から回収されたアスファルト分を含むとともに骨材及びアスファルトを主とする混合物に、木タールを添加してアスファルトの針入度を40〜100(1/100cm)に設定することにより、添加しない場合に比べて低い温度で混合処理及び締固め処理を行うことを特徴とするアスファルト舗装方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−235227(P2009−235227A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82620(P2008−82620)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(508092842)
【出願人】(000201515)前田道路株式会社 (61)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【Fターム(参考)】