説明

航空機のための水素貯蔵装置および方法

本発明は航空機のための水素貯蔵タンク装置に関する。タンク装置は、外側タンク(1)と内側タンク(7)と、を備える。内側タンク(7)は、外側タンク(1)内に保持される。外側タンク(1)は、第1の物理的特性を有する水素を貯蔵できるように構成される。内側タンク(7)は、第2の物理的特性を有する水素を貯蔵できるように構成される。外側タンク(1)は、水素を外側タンク(1)から内側タンク(7)に供給できるように内側タンク(7)に接続されている。内側タンク(7)は、第1の物理的特性を有する水素を第2の物理的特性を有する水素に変換できるように構成されている。内側タンク(7)は、第2の物理的特性を有する水素を消費者に供給できるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のための水素貯蔵タンク装置、航空機のための水素貯蔵方法、水素貯蔵タンク装置の航空機における使用、および水素貯蔵タンク装置を備えた航空機に関する。
【0002】
尚、本願は、2005年5月31日出願の米国仮出願第60/932,789号、および2007年5月31日出願のドイツ特許出願第10 2007 025 217.1号の優先権を主張し、これらの開示はここに引用によって本願に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
現代の航空機において、水素は、エネルギー担体としてますます魅力的になっている。特に、高度なシステム・インテグレーションを有する燃料電池によるAPUシステムの使用は、航空機への搭載に関して特に興味深い。この趣旨で、航空機のための水素タンク設備は、航空機の厳しい安全基準を満たすために必要になる。
【発明の概要】
【0004】
水素タンク・システムにおいては、高度に断熱された圧力タンクが用いられる。大量の水素を急速に動的に取り出す場合、圧力タンクを、加熱する必要がある。しかしながら、大きな高度に断熱された圧力タンクは、取り出しの間むしろ受動的に反応し、その結果、加えて、水素の一部を収容し動的な方法で水素を提供する貯留タンクが用いられる。しかしながら、各種タンク要素の使用は、搭載容積および重量の両方を増加させる。
【0005】
水素を貯蔵するための効率的なタンク・システムを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的実施形態によれば、この必要は、独立項に基づいた、水素貯蔵タンク装置、航空機のための水素貯蔵方法、水素貯蔵タンク装置の航空機における使用、および水素貯蔵タンク装置を備えた航空機によって達成される。
【0007】
本発明の例示的実施形態によれば、航空機のための水素貯蔵タンク装置が提供される。タンク装置は、外側タンクと内側タンクとを備える。内側タンクは、外側タンク内に保持される。更に、外側タンクは、第1の物理的特性を有する水素を貯蔵できるように構成される。内側タンクは、第2の物理的特性を有する水素を貯蔵できるように構成される。外側タンクは、水素を内側タンクに供給できるように、内側タンクに接続されている。更に、内側タンクは、第1の物理的特性を有する水素を第2の物理的特性を有する水素に変換できるように構成される。更に、内側タンクは、第2の物理的特性を有する水素を消費者に供給できるように構成される。
【0008】
本発明の更なる例示的実施形態によれば、航空機のための水素貯蔵方法が提供される。最初に、第1の物理的特性を有する水素が、外側タンクに貯蔵される。第1の物理的特性を有する水素は、外側タンクから内側タンクに供給される。この構成において、第1の物理的特性を有する水素は、第2の物理的特性を有する水素に変換される。第2の物理的特性を有する水素は、その後消費者に供給される。この構成において、内側タンクは、外側タンク内に保持される。
【0009】
更なる例示的実施形態によれば、上記のタンク装置は、航空機において水素を貯蔵するために用いられる。
【0010】
更なる例示的実施形態によれば、上記の水素貯蔵タンク装置を備えた航空機が提供される。
【0011】
以下、「水素の物理的特性」という用語は、例えば、水素の温度、圧力、凝集状態および水素濃度に関連する。
【0012】
更に、水素は、高純度の形で、または、水素化合物、例えば金属水素化物で存在できる。
【0013】
本発明によって、タンク・イン・タンクの概念が、タンク容積のどの部分が第2のタンク容器、すなわち内側タンクに提供されるかということから生まれ、そこにおいて、2タンク構造における内側タンクは、大きな外側タンクの中に空間的に統合されている。この構造において、大きな外側タンクは、第1の物理的特性を有する水素を有し、その水素は、ポンプまたは弁によって保持タンクまたは内側タンクを補充するために搬送される。内側タンクに貯蔵される水素は、第2の物理的特性を有し、消費者に供給される。
【0014】
ユーザまたは消費者に水素を供給するために、水素の特定の物理的特性は、消費者が水素を効率的に変換できるように調整されていなければならない。これとは反対に、他の物理的特性を有する水素は、タンク内の貯蔵に適している。本発明によれば、水素は、タンク内の貯蔵に効率的な物理的特性を有すると同時に、消費者のために効率的な物理的条件に設定される。すなわち、第1の物理的特性を有する水素は外側タンク内に存在し、その水素は、水素を貯蔵するために効率的である第1の物理的特性を有する。内側タンク内には、第2の物理的特性を有する水素が存在し、その物理的特性は、消費者に効率的に提供できる物理的特性に調整されてよい。例えば、水素は、高い貯蔵圧力および低温で外側タンク内に貯蔵され、一方、水素は内側タンク内で、例えば消費者によって要求される低圧およびより高い温度で貯蔵される。
【0015】
加えて、本発明によるタンク・イン・タンク構造によって、より少ない断熱努力で充分になると共に、特に、構成および構造空間をより有利に利用することが可能である。更に、内側タンクは、それが外側タンクによって保護されるので、特に外部の影響からよく保護されている。内側タンク内の第2の物理的特性を有する水素を供給することによって、外側タンクおよび内側タンク間の短い接続経路によって、極めて短い時間に連続的にかつ急速に第2の物理的特性を有する水素を供給することが可能であるため、動的応答挙動を改善することができる。更に、安全面は悪化せず、内側タンクがより保護されるため、むしろ改善されている。
【0016】
内側タンクが外側タンク内に形成されているため、加えて、内側タンクから蒸発した水素は、自動的に外側タンクによって捕集され、そのため、もはや重い断熱体重量を有する2つのタンクを用意する必要がない。タンク・イン・タンク・システムによって、更に、例えば、内側タンクが破損した場合に対する冗長性を持たせることができる。この構成において、不具合があった場合、外側タンクは、内側タンクに収容された水を捕集することができる。更に、緊急投下措置の場合、外側タンクに貯蔵された水素は、目標とする方法で環境に放出され、緊急事態の場合緊急運転特性を提供するために少なくとも水素の少量部分が利用できるように、第2の物理的特性を有する水素の少量の所定量は内側タンク内に貯蔵され続けることができる。さらに、衝突安全は、このようにして改善される。
【0017】
消費者によって効率的に変換される第2の物理的特性を有する水素は、その第2の物理的特性のためにタンク内に貯蔵することが非常に困難である。低圧および高温における水素の蒸発特性のため、蒸発前に第2の物理的特性を有する水素を貯留することがかろうじて可能である重い断熱装置が、しばしば必要とされる。本発明のタンク・イン・タンク構造によって、第2の物理的特性を有する水素の内側タンクからの蒸発は、追加の断熱特性を提供する必要なく、外側タンクを用いて捕集できる。蒸発による水素の損失は、このように減縮され、安全面は高価、且つ重い断熱装置を必要とすることなく改善される。
【0018】
更なる例示的実施形態によれば、外側タンクは、第1の断熱層を備える。この第1の断熱層は、第1の物理的特性を有する水素の浮上を防止するように構成される。水素は、揮発特性を有し、容器から蒸発する傾向がある。強固に構成された第1の断熱層によって、この種の蒸発を削減できる。更に、水素を、例えば第1の物理的特性に保つことができる。従って、水素のそれらの第1の物理的特性を、水素を貯蔵するのに適するように提供できる。例えば、第1の断熱層によって、水素を限定された低温、高圧、または定められた凝集状態に保つことができる。
【0019】
更なる例示的実施形態によれば、内側タンクは、第2の断熱層を備え、この第2の断熱層は第1の断熱層と異なる。内側タンク内に、第2の物理的特性を有する水素を貯蔵でき、ここにおいて、第2の物理的特性はそれらがユーザにおいて効率的に変換されるものである。これらの第2の物理的特性は、しかしながら、例えば、より高い温度または降下した圧力のため、より高い蒸発挙動を示し、貯蔵特性に劣る。それにもかかわらず、タンク・イン・タンク構造は、内側タンクの第2の断熱層を、外側タンクの第1の断熱層より薄く、または外側タンクの第1の断熱層と異なるように設計する選択権を提供する。この方法において第2の物理的特性を有する水素は内側タンクからより容易に蒸発するが、この水素は、外側タンクによって捕集される。
【0020】
本発明の更なる例示的実施形態によれば、第2の断熱層は、第2の断熱層はより厚く且つより強く構成されている第1の断熱層に比べより薄く且つ弱く構成されている点で、第1の断熱層と異なる。外側タンクの強い第1の断熱層のため、内側タンクから蒸発した水素は、それにもかかわらず、環境に蒸発することを防止される。外側タンク内において、蒸発した水素は、第1の物理的特性に再調整される。その結果、等しく強く且つ厚い、従って重量が重い2枚の断熱層を使用する必要がないため、断熱層における軽量化が達成される。
【0021】
更なる例示的実施形態によれば、更に、変換装置が用いられる。変換装置は、第1の物理的特性を有する水素を第2の物理的特性を有する水素に変換できるように構成される。変換装置は、少なくとも1つの加熱要素、1つの冷却要素および1つの圧力制御要素を備えてよい。変換装置は、更に、加熱要素、冷却要素および圧力制御要素を含む群によって、構成されていてよい。例えば、第1の物理的特性を有する水素が外側タンクから内側タンクまで搬送される場合、変換装置によって、水素は第2の物理的特性を有する水素に変換される。水素が、例えば、外側タンクに極めて高圧且つ低温で貯蔵される場合、加熱要素または圧力制御要素によって、水素は、第2の物理的特性を有する水素が内側タンクに生じるように、加熱および減圧される。変換装置によって、第2の物理的特性を有する水素は、効率的な物理的特性を有する水素が消費者に供給できるように、恒久的に供給され、補給される。
【0022】
更なる例示的実施形態によれば、タンク装置は、外側タンク制御装置を更に備える。外側タンク制御装置は、外側タンクにおいて第1の物理的特性を有する水素が調製されるように構成される。外側タンク制御装置は、少なくとも1つの加熱要素、1つの冷却要素および1つの圧力制御要素を備える。更に、外側タンク制御装置は、加熱要素、冷却要素および圧力制御要素を含む群から選択されてもよい。外側タンク制御装置によって、物理的特性が水素の貯蔵に適しているように水素の第1の物理的特性を調整することができる。従って、外側タンク制御装置によって、例えば、水素温度の低下または上昇、または特定圧力への調整が可能である。従って、水素が第1の物理的特性に調整され、その特性において水素は低い蒸発特性を有するため、水素の蒸発は低減される。
【0023】
更なる例示的実施形態によれば、タンク装置は、圧縮機を更に備える。圧縮機は、外側タンクにおける水素の第1の圧力および内側タンクにおける水素の第2の圧力の違いによって、水素の内側タンクへの外側タンクからの充填を更に急速に行うことができるように、水素を外側タンクから内側タンクに搬送するように構成されている。換言すれば、一方では、水素は内側タンクおよび外側タンクの間の圧力差によって搬送されるが、他方、圧縮機は内側タンクのより急速な充填のために用いられる。従って、内側タンクから消費者によって急速に水素が消費されても十分な量の水素が連続的に供給されるように、水素は内側タンクに急速に供給される。
【0024】
更なる例示的実施形態によれば、タンク装置は、内側タンク安全弁を更に備える。内側タンク安全弁は、内側タンクから水素を外側タンクに放出するように構成されている。内側タンク内の水素の物理的特性が臨界状態になった場合、内側タンク安全弁によって、この水素は外側タンクに放出される。従って、水素の物理的特性が臨界的になり、内側タンクが破損されることを防止できる。
【0025】
更なる例示的実施形態によれば、タンク装置は、外側タンク安全弁を更に備える。外側タンク安全弁は、水素を外側タンクから目標とする方法で環境に放出するように構成されてよい。水素が臨界的な特性になった場合、外側タンク安全弁を経由して、水素は目標とする方法で放出される。更に、外側タンク安全弁によって、水素は、特定の位置において、例えば航空機から環境に対して放出されてよい。従って、航空機の安全は、改善される。
【0026】
更なる例示的実施形態によれば、タンク装置は、供給装置を更に備える。供給装置は、外側タンクに水素を充填する充填装置を接続できるような方法で外側タンクの上に設けられる。充填装置は、例えば、外側からタンク設備に接続できるように航空機胴体に接続されるように方法で、外側タンクに配置されてよい。更に、この供給装置は、タンクに水素を充填する多数の異なる充填装置を接続できるように、標準化された継手を備えていてよい。従って、外側タンクは、簡単な方法で水素を充填される。
【0027】
更なる例示的実施形態によれば、供給装置は、標準化された、互換性のある継手を供える。継手は、多数の異なる充填装置を接続できるように構成される。従って、タンク装置は、大きな組み付け対応を必要とすることなく、各種のタンク設備に接続される。標準化された継手によって、水素は、多数の異なる充填装置から供給されてよい。従って、組み付け時間、および燃料補給時間を短縮できる。
【0028】
更なる例示的実施形態によれば、外側タンクは、破裂ディスク要素を備える。破裂ディスク要素は、水素の物理的特性が臨界的になった場合に破裂ディスク要素が変形し、臨界的な物理的特性を有する水素が目標とする方法で環境に放出されるように構成されている。従って、緊急事態の場合に、目標とする位置で水素を環境に放出できるように、破裂ディスク要素は、目標とする方法で変形する。環境は、航空機キャビンまたは航空機の環境そのものであってよい。従って、タンク装置のシステム安全は、改善される。更なる例示的実施形態において、内側タンクは、水素を外側タンクに流出できる破裂ディスク要素を備えてよい。
【0029】
環境は、航空機キャビンまたは航空機の環境そのものであってよい。これは、破裂ディスク要素または弁によって、水素がタンク装置から航空機キャビンまたは航空機キャビンの外側の航空機環境に放出され得ることを意味する。
【0030】
更なる例示的実施形態によれば、内側タンクは、更なる破裂ディスク要素を備える。更なる破裂ディスク要素は、水素が臨界的な物理的特性になった場合、更なる破裂ディスク要素が変形され、臨界的な物理的特性を有する水素が目標とする方法で外側タンクに放出されるように構成される。従って、臨界的な物理的特性を有する水素は、急速に、且つ間断なく外側タンクに回される。従って、例えば、内側タンクの破損を防ぐことができる。加えて、臨界的な物理的特性を有する外側タンク内の水素は、第1の物理的特性を有する水素に変換される。
【0031】
更なる例示的実施形態によれば、タンク装置は、制御装置および内側タンク・センサを更に備える。内側タンク・センサは、水素の第2の物理的特性を測定できるように内側タンク内に配置される。制御装置は、制御装置が内側タンク・センサからの測定データに応じて変換装置を制御するように構成される。内側タンク・センサは、水素の物理量、例えば温度または圧力を測定することができて、制御装置にこれらの値を伝達する。所定の目標値データまたは入力データに基づき、制御装置は、変換装置を自動制御することができ、このようにして温度を低下または上昇させ、または圧力を上昇または低下させることができる。従って、内側タンク内の水素の第2の物理的特性は永続的に確保される。外側タンク・センサを設けることによって、外側タンクにおいても同様に実装することができる
【0032】
更なる例示的実施形態によれば、内側タンクは、外側タンクと一体になるように構成される。従って、外側タンクおよび内側タンクは、1つの設備、すなわち統合された1要素として構成され、その結果、安定性の改善が得られる。更に、統合された構成のため、重量も低減される。「統合」という用語は、例えば、統合設計によって、外側タンクが内側タンクを有する1つの設備として構成されていてよいことを示す。
【0033】
更なる例示的実施形態によれば、タンク装置は、固定装置を更に備える。固定装置は、後半が外側タンクから距離を置くように内側タンクを保持するように構成される。従って、固定装置によって、内側タンクは、内側タンクおよび外側タンクの接触が防止されるように外側タンクから距離を置いて保持される。更に、固定装置は、振動および衝撃に対して内側タンクを保護できる減衰要素を備えてよい。内側タンクおよび外側タンク間の間隔によって、内側タンクが外側タンクに接触せずに保持されるので、改善された断熱特性が得られる。
【0034】
更なる例示的実施形態によれば、固定装置は、減衰要素を備える。減衰要素は、内側タンクおよび外側タンクの間の衝撃および振動を吸収するように構成されている。減衰要素は、衝撃吸収性の制振材、または油圧式または圧縮気体式のショックアブソーバを備えてよい。従って、内側タンクの振動は、特に第2の物理的特性を有する水素がより容易に引火する状態のまま、防止される。
【0035】
更なる例示的実施形態によれば、タンク装置は、複数の内側タンクを備える。複数の内側タンクは、外側タンク内に保持され、上記の内側タンクと同じ特性を有する。従って、内側タンクの各々は、第2の物理的特性を有する水素を保有できる。このようにして、タンク装置は、内側タンクが空になると、水素は更なる内タンクから急速に、且つ、間断なく取得されるため、より動的な方法でユーザに水素を供給できる。同時に、空の内側タンクは、再び水素を取得する。加えて、内側タンクの各々は、異なる物理的特性を有する水素を保有でき、異なる消費者に水素を供給できる。従って、各々の内側タンク内の水素の物理的特性は、特定の消費者の要求事項に調整できる。従って、システム有効性が改善できる。
【0036】
方法の更なる例示的実施形態によれば、第1の水素は第1の圧力および第1の温度を有し、第2の水素は第2の圧力および第2の温度を有する。第1の圧力は第2の圧力より高く、第1の温度は第2の温度より低い。従って、外側タンク内の水素は、タンク内の貯蔵に適した第1の物理的特性を有する。水素は、例えば、気体状態または液体状態にて高圧および低温で貯蔵することができる。その結果として、同時に、外側タンクからの水素の蒸発が低減される。内側タンクにおいて、水素はより低圧およびより高温の物理的特性を有し、そこにおいて、これらの第2の物理的特性を有するこの水素は消費者によって高効率で変換される。このようにして、第2の物理的特性を有する水素の蒸発特性が増加するが、蒸発した水素は、外側タンクによって捕集される。従って、軽量化および水素消費に関するタンク装置全体の効率が改善されるように、水素の第1および第2の物理的特性は、使用目的、すなわち、貯蔵または燃焼に従って常に調整される。
【0037】
タンク装置の例示的実施形態は、方法、使用、および航空機に適用され、逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
以下、更なる説明および本発明のより良好な理解のため、例示的実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【図1】本発明の例示的実施形態に基づくタンク装置の基本原理を示す線図である。
【図2】本発明の例示的実施形態に基づく追加構成要素を備えたタンク装置を示す線図である。
【図3】本発明の例示的実施形態に基づき外側タンク内に内側タンクを保持する方法を示す線図である。
【0039】
異なる図の同一または類似の構成要素には、同じ参照符号を付すものとする。図の中の説明図は、線図であり、原寸に比例するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、本発明の第1の例示的実施形態を示す。航空機のための水素貯蔵用タンク装置を示す。タンク装置は、外側タンク1および内側タンク7を備える。この構成において、内側タンク7は、外側タンク1内に保持される。この構成において、外側タンク1は、第1の物理的特性を有する水素が貯蔵できるように、構成されている。内側タンク7は、第2の物理的特性を有する水素が貯蔵できるように、構成されている。外側タンクは、水素が内側タンク7に供給されるように、内側タンク7に接続されている。内側タンク7は、第1の物理的特性を有する水素が第2の物理的特性を有する水素に変換されるように、構成されている。内側タンク7は、第2の物理的特性を有する水素が消費者に供給されるように、構成されている。
【0041】
外側タンク1またはクリオ・タンクは、厚い断熱体15を備え、そこにおいて、内側タンク7は薄い断熱体16を備えていてよい。この構成において、外側タンクは、例えば圧力P1および温度T1である、第1の物理的特性を有する水素を貯蔵する。この水素は内側タンクに供給され、そこにおいて、同時に、第1の物理的特性を有する水素は第2の物理的特性を有する水素に変換される。これらの第2の物理的特性は、例えば、より低い圧力P2またはより高い温度T2を含む。この内側タンク7から、除去装置11を経由して、第2の物理的特性をする水素は、消費者に供給される。
【0042】
第1の物理的特性において、第1の温度T1および第1の圧力P1が割り付けられていてよい。第2の物理的特性において、第2の温度T2および第2の圧力P2が割り付けられていてよい。
【0043】
図2は、本発明の例示的実施形態に基づいた、可能な追加構成要素を備えた本発明に基づくタンク装置の線図を示す。この構成において、外側タンク1は、厚い外側断熱体15を備える。外側タンク1内の水素の第1の物理的特性は、例えば、外側タンク制御装置18、例えば加熱装置または外側タンク圧縮機または弁4を介して設定されてもよい。供給装置3を経由して、水素は、外側タンク1に供給されてよい。従って、ヒーター2によって特定の圧力P1および特定の温度T1を提供する選択が可能である。
【0044】
更に、図2は、薄い内側断熱体16を備えた内側タンク7を示す。内側タンク7の中で、例えば圧力P2または温度T2である第2の物理的特性を有する水素が提供されてよい。例えば、加熱要素10’または圧力制御要素8を備えた変換装置10によって、第2の内部圧力P2または第2の温度T2が設定されてよい。この構成において、これらの物理的特性を有する水素が消費者において良好な効率を発揮するように、第2の圧力P2および第2の温度T2が設定される。供給ライン11を経由して、水素は内側タンク7から消費者に供給される。
【0045】
更に、内側タンク7は、内側タンク安全弁9を備える。この構成により、例えば過大圧力または過度温度など臨界的な物理的特性を有する水素は、外側タンク内に放出される。
【0046】
水素の外側タンク1から内側タンク7へのより急速な充填のために、内側タンク7に水素の迅速な搬送を提供する圧縮機8を用いてよい。
【0047】
外側タンク1は、水素が臨界的な第1の物理的特性の場合に変形可能であって、水素を急速に、且つ間断なく外側タンク1からPaの周囲圧を有する航空機環境に搬送する破裂ディスク5、6を更に備える。同様に、内側タンク7は、水素が臨界的な物理的特性の場合に変形可能であって、水素を外側タンク1に放出できる破裂ディスク要素12、13を備えてよい。
【0048】
外側タンク1は、目標とする方法で水素の第1の物理的特性を、例えば第1の圧力P1および第1の温度T1に設定するために、ヒーター2または真空弁14を制御する外側タンク制御装置18を更に備えてよい。
【0049】
内側タンク7は、水素の第2の物理的特性を永続的に測定し、それらを、例えば、制御装置に発信できる内側タンク・センサ20を更に備えてよい。測定されたセンサ・データに基づいて、制御装置は、定められた第2の物理的特性を有する水素が永続的に発生するように目標とする方法で変換装置10を制御できる。
【0050】
図3は、外側タンク1内に内側タンク7を保持する典型的な構成を示す。この構成において、外側タンク1は、厚く強い外部断熱体15を備える。この構成において、内側タンク7は、距離をおいて置かれるように固定装置21によって保持される。加えて、内側タンク7は、断熱体を備えてなくても、また薄く軽量の第2の断熱層16を備えてもよい。固定装置21は、例えば棒装置によって、内側タンク7を、距離を置くように保持できる。更に、減衰要素19は、内側タンク7が外側タンク1から受ける衝撃および振動を少なくするために、この棒装置に配置されていてよい。内側タンク7は消費者のために好ましい燃焼特性を有する水素を頻繁に保有し、そのような水素は非常に慎重を期した方法で貯蔵されなければならないので、この構成は、安全性を改善することができる。
【0051】
内側タンク7は、第2の物理的特性を有する水素を消費者に供給できる除去装置11を更に備える。外側タンク1から内側タンク7に水素を充填するために、圧縮機8が充填速度を増加するために用いられてよい。
【0052】
ここで、「備える」は、他の要素または工程を排除するものでなく、単数は、複数を排除するものでない。また、上記の例示的実施形態のうちの1つに関して述べた特徴または工程は、他の例示的実施形態の特徴または工程と組み合わせて用いることができる。また、請求項中の参照符号は、限定と解釈されないものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のための水素貯蔵装置であって、
タンク装置は、
外側タンク(1)と、
内側タンク(7)と、を備え、
前記内側タンク(7)は、前記外側タンク(1)内に保持されていて、
前記外側タンク(1)は、第1の物理的特性を有する水素を貯蔵できるように構成され、
前記内側タンク(7)は、第2の物理的特性を有する水素を貯蔵できるように構成され、
前記外側タンク(1)は、前記水素を前記外側タンクから前記内側タンク(7)に供給できるように前記内側タンク(7)に接続され、
前記内側タンク(7)は、前記第1の物理的特性を有する水素が前記第2の物理的特性を有する水素に変換されるように構成され、
前記内側タンク(7)は、前記第2の物理的特性を有する水素を前記第2のタンクから取得し、消費者に供給できるように構成され、
前記外側タンク(1)は、第1の断熱層(15)を備え、
前記内側タンク(7)は、第2の断熱層(16)を備えた、
航空機のための水素貯蔵装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタンク装置であって、
前記第2の断熱層(16)は、前記第1の断熱層(15)と異なる、タンク装置。
【請求項3】
請求項2に記載のタンク装置であって、
前記第2の断熱層(16)が、より厚く且つ強く構成されている前記第1の断熱層(15)に比べて、より薄く且つ弱く構成されている点で、前記第2の断熱層(16)は前記第1の断熱層(15)と異なる、タンク装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタンク装置であって、
変換装置(10)を更に備え、
前記変換装置(10)は、前記第1の物理的特性を有する水素を前記第2の物理的特性を有する水素に変換できるように構成された、タンク装置。
【請求項5】
請求項4に記載のタンク装置であって、
前記変換装置(10)は、少なくとも1つの加熱要素(10’)、1つの冷却要素および1つの圧力制御要素を備えた、タンク装置。
【請求項6】
請求項4に記載のタンク装置であって、
前記変換装置(10)は、加熱要素、冷却要素および圧力制御要素を含む群から選択される、タンク装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のタンク装置であって、
外側タンク制御装置(18)を更に備え、
前記外側タンク制御装置(18)は、前記外側タンク(1)内で第1の物理的特性を有する水素が調製されるように構成され、
前記外側タンク制御装置(18)は、加熱要素、冷却要素および圧力制御要素を含む群から選択される、タンク装置。
【請求項8】
請求項7に記載のタンク装置であって、
前記外側タンク制御装置(18)は、少なくとも1つの加熱要素(2)、1つの冷却要素および1つの圧力制御要素を備えた、タンク装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のタンク装置であって、
圧縮機(8)を更に備え、
前記圧縮機(8)は、前記外側タンク(1)内の水素の第1の圧力(P1)および前記内側タンク(7)内の水素の異なる第2の圧力(P1)によって、水素の前記内側タンク(7)への外側タンク(1)からの充填を更に急速に行うことができるように、水素を前記外側タンク(1)から前記内側タンク(7)に搬送するように構成された、
タンク装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のタンク装置であって、
内側タンク安全弁(9)を更に備え、
前記内側タンク安全弁(9)は、前記内側タンク(7)から水素を前記外側タンク(1)に放出するように構成された、タンク装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のタンク装置であって、
外側タンク安全弁(4)を更に備え、
外側タンク安全弁(4)は、水素を前記外側タンク(1)から目標とする方法で環境に放出するように構成された、タンク装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のタンク装置であって、
供給装置(3)を更に備え、
前記供給装置(3)は、前記外側タンク(1)に水素を装填する充填装置を接続できるように前記外側タンク(1)の上に設けられた、タンク装置。
【請求項13】
請求項12に記載のタンク装置であって、
前記供給装置(3)は、標準化された可換性継手を備え、
前記継手は、多数の異なる充填装置を接続できるように構成された、タンク装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載のタンク装置であって、
前記外側タンク(1)は、破裂ディスク要素(5、6)を備え、
前記破裂ディスク要素(5、6)は、水素の物理的特性が臨界的になった場合に前記破裂ディスク要素(5、6)が変形し、臨界的な物理的特性を有する水素を目標とする方法で環境に放出するように構成された、
タンク装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のタンク装置であって、
前記内側タンク(7)は、更なる破裂ディスク要素(12、13)を備え、
前記更なる破裂ディスク要素(12、13)は、水素が臨界的な物理的特性になった場合、前記更なる破裂ディスク要素(12、13)が変形され、臨界的な物理的特性を有する水素を目標とする方法で前記外側タンク(1)に放出するように構成された、
タンク装置。
【請求項16】
請求項4乃至15のいずれか1項に記載のタンク装置であって、
制御装置と、
内側タンク・センサ(20)と、を更に備え、
前記内側タンク・センサ(20)は、水素の前記第2の物理的特性を測定できるように前記内側タンク(7)内に配置され、
前記制御装置は、前記制御装置が前記内側タンク・センサ(20)の測定データに応じて前記変換装置を制御するように構成された、タンク装置。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載のタンク装置であって、
前記内側タンク(7)は、前記外側タンク(1)と一体に構成された、タンク装置。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載のタンク装置であって、
固定装置(21)を更に備え、
前記固定装置(21)は、後半が前記外側タンク(1)から距離を置くように前記内側タンク(7)を保持するように構成された、タンク装置。
【請求項19】
請求項18に記載のタンク装置であって、
前記固定装置は、減衰要素(19)を備え、前記減衰要素(19)は、前記内側タンク(7)および前記外側タンク(1)の間の衝撃および振動を吸収するように構成された、タンク装置。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか1項に記載のタンク装置であって、
複数の内側タンク(7)を更に備え、
前記複数の内側タンク(7)は、前記外側タンク(1)内に格納された、タンク装置。
【請求項21】
航空機のための水素貯蔵方法であって、
外側タンク(1)内に第1の物理的特性を有する水素を貯蔵する工程と、
前記第1の物理的特性を有する水素を前記外側タンク(1)から内側タンク(7)に供給する工程と、
前記第1の物理的特性を有する水素を第2の物理的特性を有する水素に変換する工程と、
前記第2の物理的特性を有する水素を前記内側タンク(7)から取得する工程と、
前記第2の物理的特性を有する水素を消費者に供給する工程と、を含み、
前記内側タンク(7)は、前記外側タンク(1)内に保持されていて、
前記外側タンク(1)は、第1の断熱層(15)を備えていて、
前記内側タンク(7)は、第2の断熱層(16)を備えている、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、
前記第1の水素は、第1の圧力(P1)および第1の温度(T1)を有し、
前記第2の水素は、第2の圧力(P2)および第2の温度(T2)を有し、
前記第1の圧力(P1)は前記第2の圧力(P2)より高く、
前記第1の温度(T1)は前記第2の温度(T2)より低い、方法。
【請求項23】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の水素貯蔵タンク装置の航空機における使用。
【請求項24】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の水素貯蔵タンク装置を備えた、航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−528238(P2010−528238A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509793(P2010−509793)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056264
【国際公開番号】WO2008/145584
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(504467484)エアバス・オペレーションズ・ゲーエムベーハー (268)
【Fターム(参考)】