説明

航空機タービン騒音の減衰に用いられる多孔質金属体

航空機タービン騒音を減衰するために用いられる構造要素に、タービンハウジング内部の第1端部で開放しその対向端部で閉じる円筒状チャネルの形で実施される孔(1、2)が設けられ、各チャネルの直径(D)は約0.1〜0.3mmの範囲であり、各チャネルは、その長さの少なくとも一部が最も近い隣から最小約0.02〜0.3mmの範囲の距離であり、チャネルの長さとその直径の比は10程度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質金属体の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
市場で用いられる航空機による主としてエンジンに起因して発生する騒音は、離陸時に装置の直近で155dBに達することがある。このレベルは、聴覚上の苦痛と考えられる120dBを超え、音源から400mmの距離でまだ90dBである。したがって、この騒音発生レベルを低減することが望まれる。この問題を解決する一つの試みは、その発生点の1つ、すなわちエンジンで騒音を吸収することである。解決はエンジンの「冷たい」部品において実施されているが、「熱い」部品は、現在、何の音響的処理も施されていない。したがって、航空機エンジンの熱い部品のための音響的吸収機能を有する材料の開発が望まれる。これを行うためには、考えられる一つの方法はエンジンの内部で発生される騒音を部分的に吸収する能力のある膨張ノズルを開発することである。
【0003】
航空機分野で周知のハニカム構造は音響吸収に採用することができる。さらにこれらの構造には構成セルを部分的に閉じる穿孔された外板が付属する。これによって、直径1mmを超える構成セルは穿孔を通る波を捕捉する共鳴音響空洞を形成する。これらの構造は、それが非常に特定された周波数だけを吸収することのできるヘルムホルツ型共鳴器であるので、十分満足できる音響特性を与えない。作用する現象は四半波長共鳴に基づく。構成セルの深さの約4倍の波長を有する周波数およびその高調波だけが効率的に吸収される。
【0004】
実際に、燃焼チャンバおよびタービンの異なる翼および高圧圧縮機によって発生する騒音のための膨張ノズルでの有効な音響吸収は広範囲の周波数での効果を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、公知の構造と比較して改善された音響特性を有する多孔質構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、詳細には、2つの対向する主面を有し、第1の主面上を掃引するガスの流れによって発生または伝達される騒音を減衰するようにした多孔質金属体であって、前記本体は、その軸が前記第1面に実質上垂直な直線に沿って延び、その端部の第1端部で前記第1面に開きその対向する端部で閉じる円筒状チャネルの形の孔(1、2)を有し、各チャネルは約0.1〜0.3mmの直径を有し、その長さの少なくとも一部がその最も近い隣からの最小距離(e)0.02〜0.3mmの間に位置し、前記チャネルの長さと直径との間の比が10以上であり、好ましくは10程度である。
【0007】
上述の金属構造は70%を超える多孔質を有し、したがって、容積対質量は航空機用途に適合性がある。
【0008】
本構造は、音響吸収の従来の解析モデル(1857年のキルヒホッフによる管内の音波の伝播)を用いて示されるように、特に1kHzを超える周波数に対して優れた騒音吸収体として作動する。
【0009】
この「マイクロハニカム」の開放セルは、1kHzまたはそれ以下のオーダーの周波数の範囲内の音波が構造中に浸透するには十分大きいが、多孔質材料内に含まれる流体中の粘性−音響散逸によって音響エネルギーを減衰させるのに必要な特定の表面を得るには小さすぎる。この散逸は多孔質構造の内壁上に現れる、外側層中の流体の剪断による。
【0010】
0.1mm未満の直径については、音波は構造中に効率的に浸透しない。0.3mmを超える直径については、四半波長共鳴の現象が再び優勢になる。
【0011】
直径0.1〜0.3mmの円筒状チャネルは、チャネルの壁上に現れる外側層に発生するガスの内部剪断における音波のエネルギー散逸を促進する。
【0012】
円筒状チャネルの直径が0.3mmを超えると、壁の総表面積は不十分になる。
【0013】
この新しい構造の吸収機構は、ガス中の粘性散逸によるものであるが、比較すると、従来の音響吸収システムはヘルムホルツ共鳴器の原理を用い、特定の周波数だけを吸収するのに有用であり、より広い周波数スペクトルを吸収可能とするためには非構造的な多孔質材料と組み合わせなければならない。
【0014】
ヘルムホルツ共鳴器の原理に基づくあらゆる騒音吸収体は、吸収すべき周波数の全体をカバーするために共鳴器構造に厚さの異なるさまざまな他の材料(ハニカム、フェルト等)が付属しなければならないので、全体的に先行技術は、厚くする必要性があることを示す傾向にある。実際に、この厚さの手法は決して無視できない過剰の重量を招くことがある。
【0015】
最終的に、本発明による材料はその構成の故に文献に記載された解決策とは異なって構造要素であり、それに応じて必要な寸法にすることができる。さらに、その多孔質に由来する重量低減のおかげで、その見かけの密度に対する機械的性能は例外的に優れている(ハニカム型の構造特性)。また、その騒音吸収体としての機能は追加の切り札であると考えることができる。結果として、本発明の航空機エンジンへの応用は、容積を増加させることなく放出点で騒音を処理することを可能にする。
【0016】
ハニカムを製造する従来の方法(波打ち金属シートの熔接または穿孔金属シートの配備)は対象物の規模のためここでは適用できない。したがって、他の技術を適用しなければならない。これらの技術の一つは、超純粋ニッケルの化学溶液(bath)からの成型に基づく。孔の形状および寸法は、用いられるマンドレルによって決定され、壁は化学的析出物の厚さによって決定される。
【0017】
この壁を製造するために望ましい合金の性質に応じて、異なる手法が適用できる。マンドレルが銅の化学的析出によって電気導体になると、それは電解ニッケルで被覆されて、取扱いのための十分な剛性が得られる。次いで、2005年7月7日の仏国特許出願第05.07255号に記載されたニッケルホウ素合金で予備被覆された粉体合金の堆積、または2005年7月7日の仏国特許出願第05.07256号に記載された有機結合剤中に配設された合金粉体の堆積によって電解析出が遂行される。
【0018】
本発明の任意の特徴、相補的な性質または代替としての特徴は以下に記載される。
【0019】
チャネルの長さと直径との間の比は約90〜110である。
【0020】
チャネルの表面粗さは0.01mm未満である。
【0021】
各チャネルは、それから約0.02〜0.3mmの最小間隔で間隔を置く6つの他のチャネルによって実質上均一な角度分布で取り囲まれる。
【0022】
各チャネルの軸は第1端部で第1面の垂直と20°未満の角度を形成する。
【0023】
本体はニッケルおよび/またはコバルトおよび/またはその合金、特にニッケルおよび/またはコバルト系超合金を含む。
【0024】
第1面は凹面である。
【0025】
また、本発明は、前に定義した多孔質体からなる少なくとも1つのセクタを含む航空機タービンハウジング、およびこの種の多孔質体の製造方法にも関し、熱によって分解することのできる材料からなり、金属系被覆で取り囲まれた各々直径約0.1〜0.3mmの円筒状マンドレルを有する複数のワイヤが層に配置され、各ワイヤの被覆は同じ層中の隣接するワイヤの被覆および隣接する層中のワイヤの被覆に接触し、マンドレルを除去するために熱処理が行われ、被覆は互いに結合して金属マトリックスを形成する。
【0026】
本発明による工程は、以下の特徴の少なくともいくつかを有することができる。
【0027】
マンドレルは有機材料から作られる。
【0028】
マンドレルは炭素から作られる。
【0029】
被覆は少なくとも部分的にマンドレル上に金属の化学的および/または電解析出によって形成される。
【0030】
被覆は少なくとも部分的に金属粒子をマンドレルおよび/または析出物に接着することによって形成される。
【0031】
金属粒子は、熱処理の前にワイヤ間の空隙中に導入される。
【0032】
金属粒子は熱処理の間に金属粒子を互いにおよび/または析出物に結合させるロウ付けコーティングを含む。
【0033】
存在する金属成分は熱処理の間にその構成金属とマンドレルおよび/または有機結合剤または接着剤から由来する炭素の間の共晶融合によって互いに結合する。
【0034】
熱処理の前に、各ワイヤの一端部はワイヤの軸に対して垂直に延びる共通の支持面に接着され、支持面は孤の形状に曲げられ、ワイヤの軸は放射状に延び、金属粒子がワイヤ間の空隙に導入される。
【0035】
熱処理の後、金属マトリックスは機械加工されて第1凹面が形成される。
【0036】
熱処理の後、チャネルに残る炭素の痕跡は除去される。
【0037】
チャネルの反対側の端部は金属マトリックスの対応する面に加えられた金属層によって閉じられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の特徴および利点を添付図面を参照しながら以下の説明でさらに詳細に説明する。
【0039】
本発明は以下に実施例によって示される。全ての組成物は重量で与えられる。
【実施例1】
【0040】
純粋なニッケルから多孔質体を製造する。用いられるマンドレルは直径0.1mmの回転する円筒状ワイヤである(以下の方法は対象ワイヤの1μm〜3mmの直径とは無関係に、およびその断面形状が何であれ使用可能である)。特に、釣り糸として販売されているポリアミドまたはポリイミド糸とすることができる。ニッケルは脱イオン水による十分な洗浄によって分離される以下の4ステップに従ってこの糸の上に化学的に析出される。
【0041】
(1)脱グリースおよびウェッティングによる表面の調製。
【0042】
(2)塩化スズSnCl塩の飽和溶液(5g/l)中に少なくとも5分間浸漬することによって、固体還元剤の吸着による塩化スズSnClの析出。
【0043】
(3)少なくとも5分間、還元によって、10g/lのPdClを含む酸溶液(pH=2)から処理すべき表面上へ触媒(パラジウム)の析出。
【0044】
(4)以下の組成物を有する溶液から実際にニッケルを析出させる。
【0045】
ニッケルトリエチレンジアミン Ni(HNCNH2+ 0.14M
水酸化ナトリウム NaOH 1M
五酸化ヒ素 As 6.5×10−4
イミダゾール N 0.3M
ヒドラジン水和物 N・HO 2.06M
pH 14
90℃で1時間30分間浸漬した後、ワイヤを非常に純粋なニッケルで約20μmの厚さに被覆する。
【0046】
この被覆されたワイヤは1cm程度の適切な長さの切片に切断される。次いで、異なる切片がアルミニウム坩堝中に互いに平行に配置される。第1層の切片は坩堝の平坦な底部に置かれ、ワイヤは直径方向に反対側の母線によって各々2つの隣接するワイヤに互いに接触する。後続の層は前の層の上に互いに千鳥型に配置される。切片が互いに接触するように全体に数十グラムの錘が置かれる。
【0047】
次いで、坩堝は10−3Paを超える真空下で炉中に置かれ、マンドレルの合成材料が分解する温度の400℃まで加熱され、ポンプシステムで排出される。1時間静置した後、70℃/分の温度勾配で1200℃の温度まで加熱され、続いて15分間静置して各管をその最も近い隣の2つの管と相互拡散させる。次いで、組み立て体は冷却される。
【0048】
この操作の終りに、純粋なニッケルから作られた微小多孔質目的物が得られ、約100μmの直径Dで回転させた円筒状チャネルの形の孔(図1)を含む。図に示した理想的な場合、各円筒状孔1はそこから約40μmの最小の厚さを有する純粋ニッケルの壁3によって分離された6つの直近の隣の孔2を有する。チャネル2は均一な角度分布で配置され、すなわち、図1の面におけるそれらの軸の線4は規則的な6角形の頂点で配置され、その中心はチャネル1の軸の線5である。実際には、チャネルの配列は規則性が低くなる。
【実施例2】
【0049】
実施例1で用いられる長い合成ワイヤは、その軸が規則的な6角形の頂点に沿って真っ直ぐ突出する6つの平行な円筒状棒を含むポリテトラフルオロエチレン(PTFE)組み立て体に巻き取られる。次いで、このワイヤの上に、脱イオン水による十分な洗浄によって分離される以下の4ステップに従って銅が化学的に析出される。
【0050】
(1)脱グリースおよびウェッティングによる表面の調製。
【0051】
(2)塩化スズSnCl塩の飽和溶液(5g/l)中に少なくとも5分間浸漬することによって、固体還元剤の吸着による塩化スズSnClの析出。
【0052】
(3)少なくとも5分間、10g/lのAgNOを含む中性溶液から処理すべき表面上へ触媒(銀)の析出。
【0053】
(4)以下の組成物を有する溶液から実際に銅を析出させる。
【0054】
硫酸銅 CuSO・6HO 0.1M
ホルムアルデヒド HCHO 0.5M
ナトリムおよびカリウムの二重酒石酸塩 KNaC・4HO 0.4M
水酸化ナトリウム NaOH 0.6M
30分後、ワイヤは銅析出物の特徴的な赤色を示した。
【0055】
この操作の後、もはや電気の導体であるワイヤは電解ニッケル析出のための従来の溶液に浸漬されてカソードに接続される。電流密度3A/dmで20分間の析出の後、ワイヤは20μmの純粋なニッケルで被覆される。
【0056】
このようにして被覆されたワイヤは適切な長さの切片に切断される。次いで、切片は
IN738の商品名で市販されている粉体ニッケル超合金80部と、それ自体等量のエポキシ接着剤と希釈剤としてのエチルアルコールから構成される結合剤20部との混合物で厚さ約100μmに被覆され、この操作は、粉体と結合剤の混合物の存在下で切片を平坦な支持表面と平坦な支持プレートとの間を回転させることによって行われ、これらの2つのプレート間の距離が粉体堆積の厚さを決定する。
【0057】
このようにして被覆された切片は坩堝に配置され、これは実施例1で説明した真空炉中に置かれる。
【0058】
温度が400℃に保たれる間にマンドレルと結合剤の材料は分解してポンプシステムによって排出される。接着剤の分解は超合金粉体の各粒子の表面上に炭素の残渣を堆積させる。1時間静置した後、新しく70℃/分の温度勾配で1320℃の温度まで加熱し、続いて15分間静置して各粉体の粒子をその最も近い隣の2つの粒子と相互拡散させ、各管をその最も近い隣の2つの管と相互拡散させる。次いで、組み立て体は冷却される。
【0059】
この操作の終わりに、合金IN738から作られた微小多孔質目的物が得られる。各孔は直径約100〜300μmの大きさであり、約200μmの超合金の壁によって隣接孔から分離される。
【実施例3】
【0060】
実施例2と同じ方法を用いて20μmのニッケルで被覆され切片に切断されたワイヤが得られる。
【0061】
さらに、仏国特許第2777215号に記載されている技術によって、Astrolloyの名称で市販されている直径10μmの粉体超合金の粒子上に厚さ1μm未満のニッケル−ホウ素合金系ロウ付け層が堆積され、このようにして被覆された粉体はCoatexP90の名称で市販されている1%のメチルメタクリレートと混合され、任意で水で希釈して作業可能な混合物を得る。ニッケルめっきされたワイヤの切片は実施例2に説明したようにしてこの混合物中で回転され、約100μmの被覆された超合金粉体層を受け取る。
【0062】
このようにして被覆された切片は、次いで坩堝中に配置され、これは実施例1に説明した真空下の炉に置かれる。
【0063】
温度が400℃に保たれる間にマンドレルの材料は分解される。1時間静置した後、新しく70℃/分の温度勾配で1120℃の温度まで加熱され、続いて15分間静置して各粉体の粒子をその最も近い隣の2つの粒子とロウ付けさせ、各管をその最も近い隣の2つの管とロウ付けさせる。次いで、組み立て体は冷却される。
【0064】
このようにして、簡単な熱処理によって粉体粒子の互いのロウ付けと、管の互いのロウ付けの両方が行われる。超合金粉体上へのニッケル−ホウ素合金の化学的析出の結果、アニーリングの後に得られる管の壁は密度が高く均質である。粉体の粒子は互いにロウ付けされる。
【0065】
この操作の終りに、Astrolloyから作られた微小多孔質目的物が得られる。各孔は直径約100〜300μmの大きさであり、約200μmの超合金の壁によって隣接孔から分離される。
【実施例4】
【0066】
熱分解された綿として知られる繊維の粗紡糸、すなわち、天然綿を梳綿し、それを低圧アルゴン下で熱分解して得られる炭素粗紡糸がマンドレルとして用いられ、これらの粗紡糸は直径約0.1mmである。
【0067】
繊維はスルファミン酸ニッケルの従来の溶液中で「バレル」法として知られる技術によって予めニッケル被覆されている。電解は約20〜40μmの厚さのニッケルを得るために必要な時間実施される。次いで、ニッケル被覆された粗紡糸は切片に切断され、約95%の粗紡糸と5%の接着剤の割合で実施例2に用いられた希釈されたエポキシ接着剤と混合され、PTFE型中に互いに平行に配置される。接着剤が硬化した後、多孔質性の高い組み立て体が得られる。次いで、注射筒を用いて注入することにより、この組み立て体は被覆されたAstrolloy超合金粉体と実施例3で用いたCoatexP90との混合物で含浸される。90℃の乾燥炉中で乾燥した後、材料は800℃に予備加熱された水素下の縦型炉に置かれる。次いで、1100℃の温度に達するまで毎分5℃の温度勾配を受ける。次いで2つの現象が同時に起きる。それによってAstrolloy粉体粒子をコーティングしたニッケル−ホウ素ロウ付けが溶融して、その結果、粉体の粒子は互いにロウ付けされ、粗紡糸の炭素は炉の雰囲気の水素と反応してメタンを形成する。8時間の後、および水素下で約500℃の温度まで冷却し、次いでアルゴン下で室温に戻した後、50〜200μmの厚さに変動する壁によって分離された、直径約0.1mmの孔を有する微小多孔質の目的物が得られるが、コーティングされた繊維間の隙間から他のより小さな孔が生成しうる。
【0068】
実施例1から4の各々は対向する2つの主平面を有する多孔質体を提供し、ワイヤの直径に対して接着される比を考慮すれば、その厚さは用いたワイヤ切片の1cm程度の長さに等しく、これらの2つの面に垂直なそれらの上で開口する円筒状孔1を含む。したがって、本発明によって、平坦な多孔質体を得ることができ、その孔は一端部で閉じられ、例えば、基礎部材にロウ付けされた0.5mmの厚さのシートの形の連続的な金属層6(図2)、またはコーティングもしくは噴霧による浮遊金属粉体で孔を充填することによって主面の1つを覆う。
【0069】
また、基礎部材を機械加工して、凸の孤の形の輪郭を有する一表面と凹の孤の輪郭を有する一表面とを得て、次いで、凸表面上で孔の封鎖を行うことによって、本発明による航空機タービンハウジングのセクタを製造することも可能である。この場合、ワイヤ切片の長さは得られるセクタの厚さよりも大きくなければならず、チャネルの軸は孤に沿って半分だけ凹表面に垂直であり、それらが孤の各端部に接近すると垂直に対して傾きが増加する。
【実施例5】
【0070】
ここでの目的は、前の実施例に必要な機械加工を行うことなく、航空機タービンのハウジングのセクタを製造することである。約1メートルの内径を有するハウジングは、例えば12セクタに分割される。実施例3のようにして調製され適切な長さに切断されたニッケル被覆ワイヤ切片は約1mmの厚さを有するPTFEの水平プレート上に垂直に配置され、長さと幅はそれぞれ製造すべきセクタの孤の長さと軸の長さに等しい。プレートの全表面がニッケル被覆ワイヤの切片で覆われると、これらの切片はシアノアクリレート型接着剤でそれに取り付けられる。接着剤がポリマー化されると、ワイヤの切片が放射状に外方向に延びて互いの間隔がシートから出発して周縁方向に増加するように、PTFEのシートは折り曲げられ、ニッケルコーティングは切片の堅固な保持を確実にする。このようにして形成された空隙は実施例3で用いられたコーティングされたAstrolloy超合金粉体とCoatexP90の混合物で充填されるが、この粉体はATCA製の直径約0.5mmの球など、中空のニッケル球で部分的に置き換えることができる。70℃の乾燥チャンバ中で1夜乾燥した後、繊維、粉体および接着剤の組み立て体は機械的に固くなるので、PTFEシートは取り除かれる。組み立て体は真空下の炉に置かれる。容器中の圧力が約10−3Pa以下(below)になるとき、組み立て体は、脱ガスおよび有機生成物(マンドレルとメチルメタクリレート)の除去のために450℃の温度で1時間加熱される。メタクリレートの分解は超合金粉体の各粒子の表面上に炭素残渣を堆積させる。新しく70℃/分の温度勾配で1320℃の温度までの加熱が行われ、続いて15分間静置して各粉体の粒子をその最も近い隣の2つの粒子と相互拡散させ、各管をその最も近い隣の管と相互拡散させる。次いで、組み立て体は冷却される。前の実施例のように、Ni−炭素共晶はロウ付け半田として作用し、粉体の粒子が互いに結合し、次いで合金中へ炭素が拡散する結果として固化することを確実にした。冷却の後、本体の凹面の近傍で最小数百分の1ミリメートルの厚さ、およびその凸面の近傍で数十分の1ミリメートルの厚さを有する壁12によって互いに分離された、直径0.1mmの複数のチャネル11と十字交差した円孤の形の多孔質体10が得られる(図3)。次いで、孔は凸面に加えられた図2の層6と類似の金属層13によって閉じられる。
【0071】
図3に示したようなセクタは、ハウジングの周縁全体またはその一部だけに用いることができる。
【0072】
上記実施例にはマンドレルとしてその入手可能性のため円形断面のワイヤを用いたが、特に多角形の断面など、非円形のマンドレルを用いることも可能である。
【0073】
必要であれば、熱処理後にチャネルの壁上に残る炭素の痕跡を除去し、それによって非常に平滑な表面を得るために多孔質体の超音波処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明による多孔質体の第1の主面の部分図である。
【図2】図1の線II−IIの断面の本体の部分図である。
【図3】本発明による航空機タービンハウジングのセクタの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの対向する主面を有し、第1の主面上を掃引するガスの流れによって発生または伝達される騒音を減衰するようにした多孔質金属体であって、前記本体は、その軸が前記第1面に実質上垂直な直線に沿って延び、その端部の第1端部で前記第1面に開きその対向する端部で閉じる円筒状チャネルの形の孔(1、2)を有し、各チャネルは約0.1〜0.3mmの直径を有し、その長さの少なくとも一部がその最も近い隣からの最小距離(e)0.02〜0.3mmの間に位置し、前記チャネルの長さと直径との間の比が10を超える多孔質金属体。
【請求項2】
前記チャネルの長さと直径との間の比が約90〜110である請求項1に記載の多孔質体。
【請求項3】
前記チャネルの表面粗さが0.01mm未満である請求項1および2のいずれか1項に記載の多孔質体。
【請求項4】
各チャネル(1)が、それから約0.02〜0.3mmの最小間隔で間隔を置く6つの他のチャネル(2)によって実質上均一な角度分布で取り囲まれる請求項1から3のいずれか1項に記載の多孔質体。
【請求項5】
前記チャネルの各々の軸が前記第1端部で前記第1面の垂直と20°未満の角度を形成する請求項1から4のいずれか1項に記載の多孔質体。
【請求項6】
ニッケルおよび/またはコバルトおよび/またはその合金、特にニッケルおよび/またはコバルト系超合金を含む請求項1から5のいずれか1項に記載の多孔質体。
【請求項7】
前記第1面が凹面である請求項1から6のいずれか1項に記載の多孔質体。
【請求項8】
請求項7に記載の多孔質体からなる少なくとも1つのセクタを含む航空機タービンハウジング。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の多孔質体を製造する工程(process)であって、熱によって分解することのできる材料からなり金属系被覆で取り囲まれた各々直径約0.1〜0.3mmの円筒状マンドレルを有する複数のワイヤが、実質上互いに平行な直線に沿って配置され、前記ワイヤが列に配置され、各ワイヤが同じ層の隣接ワイヤの被覆および隣接列のワイヤの被覆に接触し、熱処理が行われて前記マンドレルが除去され、被覆を互いに結合させ、金属マトリックスを製造する工程。
【請求項10】
前記マンドレルが有機材料から作られる請求項9に記載の工程。
【請求項11】
前記マンドレルが炭素から作られる請求項9に記載の工程。
【請求項12】
前記被覆が金属の化学的および/または電解析出によって前記マンドレル上に少なくとも部分的に形成される請求項9から11のいずれか1項に記載の工程。
【請求項13】
前記被覆が金属粒子を前記マンドレルおよび/または前記析出物に接着することによって少なくとも部分的に形成される請求項9から12のいずれか1項に記載の工程。
【請求項14】
前記熱処理の前に前記金属粒子が前記ワイヤ間の空隙中に導入される請求項9から13のいずれか1項に記載の工程。
【請求項15】
金属粒子が、前記熱処理の間に前記金属粒子を互いにおよび/または前記析出物に結合させるろう付けコーティングを含む請求項13および14のいずれか1項に記載の工程。
【請求項16】
存在する前記金属成分が前記熱処理中にその構成金属と前記マンドレルおよび/または有機バインダーまたは接着剤から由来する炭素との間の共晶の融合によって互いに結合する請求項9から15のいずれか1項に記載の工程。
【請求項17】
請求項7に記載の多孔質体を製造するための請求項9から16のいずれか1項に記載の工程であって、前記熱処理の前に、各ワイヤの一端部が前記ワイヤの軸に垂直に延びる共通の支持面に接着され、前記支持体が孤の形状に曲げられ、前記ワイヤの軸が放射状に延び、前記金属粒子が前記ワイヤ間の前記空隙中に導入される工程。
【請求項18】
請求項7に記載の多孔質体を製造するための請求項9から16のいずれか1項に記載の工程であって、前記熱処理の後に、前記金属マトリックスが機械加工されて前記第1凹面が形成される工程。
【請求項19】
前記熱処理の後に、前記チャネルに残る前記炭素の痕跡が除去される請求項9から18のいずれか1項に記載の工程。
【請求項20】
前記チャネルの前記対向する端部が、前記金属マトリックスの対応する面に加えられた金属層によって閉じられる請求項9から19のいずれか1項に記載の工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−521637(P2009−521637A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546521(P2008−546521)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002823
【国際公開番号】WO2007/077343
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(508006470)オネラ(オフィス・ナショナル・ドゥエチュード・エ・ドゥ・ルシェルチェ・アエロスパシャル) (5)
【氏名又は名称原語表記】ONERA (OFFICE NATIONAL D’ETUDES ET DE RECHERCHES AEROSPATIALES)
【Fターム(参考)】