説明

航空機機体洗浄装置

【課題】構成の簡略化を図るとともに、設備費およびランニングコストを低減させること。
【解決手段】配管33と枝管34との間に設けられるとともに、シリンダー83と、シリンダー83内に収められたピストン84と、ピストン84に固定されたロッド85とを有するアクチュエーター81と、ロッド85に連結されたリンク機構82と、を備え、洗浄水供給時には、洗浄水の及ぼす圧力によりピストン84およびロッド85が一方向に移動し、配管33と枝管34とが連通するとともに、リンク機構82により、噴射ノズルが航空機に近づくように枝管34がスイングし、洗浄水非供給時には、アクチュエーター81内に設けられた付勢手段95により、ピストン84およびロッド85が他方向に移動し、配管33と枝管34との連通が遮断されるとともに、リンク機構82により、噴射ノズルが航空機から遠ざかるように枝管34がスイングするように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突起物等があり、かつ、複雑な形状をした飛行機やヘリコプター(以下、「航空機」という。)の機体外表面を自動的に洗浄する航空機機体洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機の機体外表面の洗浄は、機体を清浄な状態に維持することにより、腐食を防止し、性能の低下を避けることを目的に、デッキブラシやモップあるいはスポンジ等による手作業で、人海戦術的な洗浄で行われていた。
通常、航空機の機体外表面の洗浄は、一定の飛行時間経過後、定期的に行われている。また、洋上を飛行することが多い航空機は、一飛行毎に行われている。
【0003】
このような手作業による洗浄は、洗剤や洗浄水で滑り易い傾斜のある胴体や翼上面で、かつ、滑落の危険がある高所での作業となり、また、洗剤や水を含ませた重い柄付きモップを頭上にする作業姿勢など中腰の重労働を伴う作業となっていた。
そこで、これらの問題点を解決するものとして、例えば、特許文献1に開示された航空機機体洗浄装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−198198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された航空機機体洗浄装置10では、多関節型ロボット16が取り付けられたクロスバー15を航空機11の前後方向に(X軸に沿って)移動させるガントリー12と、クロスバー15に取り付けられた多関節型ロボット16を航空機11の左右方向に(Y軸に沿って)移動させる機構と、ガントリー12に取り付けられたクロスバー15を航空機11の上下方向に(Z軸に沿って)移動させる機構とが必要になる。また、上記特許文献1に開示された航空機機体洗浄装置10では、多関節型ロボット16の先端部に取り付けられた20a,20b,20cと被洗浄面との距離を検出するセンサー21や、機体や作業者あるいはロボット同士の衝突を防止するセンサー類が必要となる。そのため、上記特許文献1に開示された航空機機体洗浄装置10では、構成(構造)が非常に複雑になり、また、設備費およびランニングコストも高騰してしまうといった問題点があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、構成の簡略化を図ることができ、設備費およびランニングコストを低減させることができる航空機機体洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る航空機機体洗浄装置は、洗機エリアに搬入された航空機の機体外表面を洗浄水で洗浄する航空機機体洗浄装置であって、前記洗機エリアに配設された配管と、前記配管の下流端に接続された枝管と、前記枝管の先端部に設けられた噴射ノズルと、前記配管および前記枝管を介して前記噴射ノズルに洗浄水を圧送する洗浄ポンプと、前記配管と前記枝管との間に設けられるとともに、シリンダーと、該シリンダー内に収められたピストンと、該ピストンに固定されたロッドとを有するアクチュエーターと、前記ロッドに連結されたリンク機構と、を備え、洗浄水供給時には、洗浄水の及ぼす圧力により前記ピストンおよび前記ロッドが一方向に移動し、前記配管と前記枝管とが連通するとともに、前記リンク機構により、前記噴射ノズルが航空機に近づくように前記枝管がスイングし、洗浄水非供給時には、前記アクチュエーター内に設けられた付勢手段により、前記ピストンおよび前記ロッドが他方向に移動し、前記配管と前記枝管との連通が遮断されるとともに、前記リンク機構により、前記噴射ノズルが航空機から遠ざかるように前記枝管がスイングするように構成されている。
【0008】
本発明に係る航空機機体洗浄装置によれば、洗浄ポンプが停止されて、配管に洗浄水が供給されていない状態では、例えば、図5および図6に示すように、ピストン84が、コイルばね95により蓋体87の側に付勢された状態になる。また、その一端が閉塞部材92の他端面に固定されたロッド85も、ピストン84とともにコイルばね95により蓋体87の側に付勢された状態になる。そして、ロッド85の他端に、その先端が連結されたアーム102は、ロッド101まわりに回動した状態になり、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に実線で示すように、洗機エリアSの上方において水平方向に延びるようにして保持される。
【0009】
つづいて、洗浄ポンプが運転されて、配管に洗浄水が供給されている状態では、例えば、図7および図8に示すように、ピストン84が、コイルばね95の付勢力に抗して蓋体86の側に押し進められた状態になる。このとき、図7に示すように、吐出ポート88と環状空間94とは連通した状態になり、配管33内からシリンダー83内に供給された洗浄水43は、環状空間94および吐出ポート88を通って、ジョイント104よりも上流側に位置する枝管34内に入り、ジョイント104を通ってジョイント104よりも下流側に位置する枝管34内に入って、天井部噴射ノズル32(図3等参照)から噴射される。また、その一端が閉塞部材92の他端面に固定されたロッド85も、ピストン84とともにコイルばね95の付勢力に抗して蓋体86の側に押し進められた状態になる。そして、ロッド85の他端に、その先端が連結されたアーム102は、図6に実線矢印で示すようにロッド101まわりに回動し、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に二点鎖線で示すように、洗機エリアSの上方において航空機3に近づく方向(上方から下方に向かって末広がりとなる方向:斜め方向)に延びるようにして保持される。
【0010】
航空機3を洗機する作業が終了したら、洗浄ポンプが停止されて、配管33に洗浄水43が供給されない状態にする。すると、ピストン84およびロッド85が、コイルばね95の復元力により蓋体87の側に付勢された状態、すなわち、図5および図6に示す状態になり、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に実線で示すように、洗機エリアSの上方において水平方向に延びるようにして保持される。
【0011】
このように、本発明に係る航空機機体洗浄装置によれば、噴射ノズルを先端部に備えた枝管が、洗浄水の水圧によりスイングさせられることになる。すなわち、噴射ノズルが先端部に設けられた枝管をスイングさせるための特別な駆動装置(例えば、油圧式のアクチュエーターや電気式のアクチュエーター)が不要となり、また、噴射ノズルが先端部に設けられた枝管のみがスイングさせられることになる。
これにより、構成の簡略化を図ることができ、設備費およびランニングコストを低減させることができる。
【0012】
本発明に係る航空機機体洗浄装置は、洗機エリアに搬入された航空機の機体外表面を洗浄水で洗浄する航空機機体洗浄装置であって、前記洗機エリアに配設された配管と、前記配管の下流端に接続された枝管と、前記枝管の先端部に設けられた噴射ノズルと、前記配管および前記枝管を介して前記噴射ノズルに洗浄水を圧送する洗浄ポンプと、前記配管と前記枝管との間に設けられるとともに、シリンダーと、該シリンダー内に収められたピストンと、該ピストンに固定されたロッドとを有するアクチュエーターと、前記ロッドに連結されたリンク機構と、を備え、洗浄水供給時には、洗浄水の水圧により前記ピストンおよび前記ロッドが一方向に移動し、前記配管と前記枝管とが連通するとともに、前記リンク機構により、前記噴射ノズルが航空機に近づくように前記枝管がスイングし、洗浄水非供給時には、前記アクチュエーター内に導入された気体または液体の及ぼす圧力により、前記ピストンおよび前記ロッドが他方向に移動し、前記配管と前記枝管との連通が遮断されるとともに、前記リンク機構により、前記噴射ノズルが航空機から遠ざかるように前記枝管がスイングするように構成されている。
【0013】
本発明に係る航空機機体洗浄装置によれば、洗浄ポンプが停止されて、配管に洗浄水が供給されていない状態では、例えば、図9および図10に示すように、ピストン84が、シリンダー83、ピストン84、および蓋体86により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体87の側に付勢された状態になる。また、その一端が閉塞部材92の他端面に固定されたロッド85も、ピストン84とともにシリンダー83、ピストン84、および蓋体86により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体87の側に付勢された状態になる。そして、ロッド85の他端に、その先端が連結されたアーム102は、ロッド101まわりに回動した状態になり、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に実線で示すように、洗機エリアSの上方において水平方向に延びるようにして保持される。
【0014】
つづいて、洗浄ポンプが運転されて、配管に洗浄水43が供給されている状態では、例えば、図11および図12に示すように、ピストン84が、シリンダー83、ピストン84、および蓋体87により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体86の側に押し進められた状態になる。このとき、図11に示すように、吐出ポート88と環状空間94とは連通した状態になり、配管33内からシリンダー83内に供給された洗浄水43は、環状空間94および吐出ポート88を通って、ジョイント104よりも上流側に位置する枝管34内に入り、ジョイント104を通ってジョイント104よりも下流側に位置する枝管34内に入って、天井部噴射ノズル32(図3等参照)から噴射される。また、その一端が閉塞部材92の他端面に固定されたロッド85も、ピストン84とともにシリンダー83、ピストン84、および蓋体87により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体86の側に押し進められた状態になる。そして、ロッド85の他端に、その先端が連結されたアーム102は、図10に実線矢印で示すようにロッド101まわりに回動し、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に二点鎖線で示すように、洗機エリアSの上方において航空機3に近づく方向(上方から下方に向かって末広がりとなる方向:斜め方向)に延びるようにして保持される。
【0015】
航空機3を洗機する作業が終了したら、洗浄ポンプが停止されて、配管33に洗浄水43が供給されない状態にするとともに、図示しない(第3の)洗浄ポンプが停止されて、配管123に洗浄水43が供給されている状態にする。すると、ピストン84およびロッド85が、シリンダー83、ピストン84、および蓋体86により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体87の側に付勢された状態、すなわち、図9および図10に示す状態になり、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に実線で示すように、洗機エリアSの上方において水平方向に延びるようにして保持される。
【0016】
このように、本発明に係る航空機機体洗浄装置によれば、噴射ノズルを先端部に備えた枝管が、洗浄水の水圧によりスイングさせられることになる。すなわち、噴射ノズルが先端部に設けられた枝管をスイングさせるための特別な駆動装置(例えば、油圧式のアクチュエーターや電気式のアクチュエーター)が不要となり、また、噴射ノズルが先端部に設けられた枝管のみがスイングさせられることになる。
これにより、構成の簡略化を図ることができ、設備費およびランニングコストを低減させることができる。
【0017】
本発明に係る航空機機体洗浄装置は、洗機エリアに搬入された航空機の機体外表面を、貯水槽に溜められた洗浄水で洗浄する航空機機体洗浄装置であって、前記洗機エリアの上方において前記洗機エリアの前後方向および/または左右方向に延びる配管と、前記配管の下流端に接続された枝管と、前記枝管の先端部に設けられた噴射ノズルと、前記貯水槽に溜められた洗浄水を吸引、昇圧し、前記配管および前記枝管を介して前記噴射ノズルに洗浄水を圧送する洗浄ポンプと、前記洗浄ポンプから圧送された洗浄水が、シリンダー内に収められたピストンの一端面に作用することにより、前記ピストンの他端面に固定されたロッドが、前記シリンダーから軸方向に沿って進出するアクチュエーターと、前記シリンダーから軸方向に沿って進出する前記ロッドにより、前記噴射ノズルが前記洗機エリアに搬入された航空機に近づくように前記枝管をスイングさせるリンク機構と、を備え、前記ピストンの他端面に作用して、前記ピストンおよび前記ロッドを、前記噴射ノズルが前記洗機エリアに搬入された航空機から遠ざかる方向に付勢するコイルばねが、前記シリンダー内に設けられている。
【0018】
本発明に係る航空機機体洗浄装置によれば、洗浄ポンプが停止されて、配管に洗浄水が供給されていない状態では、例えば、図5および図6に示すように、ピストン84が、コイルばね95により蓋体87の側に付勢された状態になる。また、その一端が閉塞部材92の他端面に固定されたロッド85も、ピストン84とともにコイルばね95により蓋体87の側に付勢された状態になる。そして、ロッド85の他端に、その先端が連結されたアーム102は、ロッド101まわりに回動した状態になり、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に実線で示すように、洗機エリアSの上方において水平方向に延びるようにして保持される。
【0019】
つづいて、洗浄ポンプが運転されて、配管に洗浄水が供給されている状態では、例えば、図7および図8に示すように、ピストン84が、コイルばね95の付勢力に抗して蓋体86の側に押し進められた状態になる。このとき、図7に示すように、吐出ポート88と環状空間94とは連通した状態になり、配管33内からシリンダー83内に供給された洗浄水43は、環状空間94および吐出ポート88を通って、ジョイント104よりも上流側に位置する枝管34内に入り、ジョイント104を通ってジョイント104よりも下流側に位置する枝管34内に入って、天井部噴射ノズル32(図3等参照)から噴射される。また、その一端が閉塞部材92の他端面に固定されたロッド85も、ピストン84とともにコイルばね95の付勢力に抗して蓋体86の側に押し進められた状態になる。そして、ロッド85の他端に、その先端が連結されたアーム102は、図6に実線矢印で示すようにロッド101まわりに回動し、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に二点鎖線で示すように、洗機エリアSの上方において航空機3に近づく方向(上方から下方に向かって末広がりとなる方向:斜め方向)に延びるようにして保持される。
【0020】
航空機3を洗機する作業が終了したら、洗浄ポンプが停止されて、配管33に洗浄水43が供給されない状態にする。すると、ピストン84およびロッド85が、コイルばね95の復元力により蓋体87の側に付勢された状態、すなわち、図5および図6に示す状態になり、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に実線で示すように、洗機エリアSの上方において水平方向に延びるようにして保持される。
【0021】
このように、本発明に係る航空機機体洗浄装置によれば、噴射ノズルを先端部に備えた枝管が、洗浄水の水圧によりスイングさせられることになる。すなわち、噴射ノズルが先端部に設けられた枝管をスイングさせるための特別な駆動装置(例えば、油圧式のアクチュエーターや電気式のアクチュエーター)が不要となり、また、噴射ノズルが先端部に設けられた枝管のみがスイングさせられることになる。
これにより、構成の簡略化を図ることができ、設備費およびランニングコストを低減させることができる。
【0022】
本発明に係る航空機機体洗浄装置は、洗機エリアに搬入された航空機の機体外表面を、貯水槽に溜められた洗浄水で洗浄する航空機機体洗浄装置であって、前記洗機エリアの上方において前記洗機エリアの前後方向および/または左右方向に延びる配管と、前記配管の下流端に接続された枝管と、前記枝管の先端部に設けられた噴射ノズルと、前記貯水槽に溜められた洗浄水を吸引、昇圧し、前記配管および前記枝管を介して前記噴射ノズルに洗浄水を圧送する洗浄ポンプと、前記洗浄ポンプから圧送された洗浄水が、シリンダー内に収められたピストンの一端面に作用することにより、前記ピストンの他端面に固定されたロッドが、前記シリンダーから軸方向に沿って進出するアクチュエーターと、前記シリンダーから軸方向に沿って進出する前記ロッドにより、前記噴射ノズルが前記洗機エリアに搬入された航空機に近づくように前記枝管をスイングさせるリンク機構と、を備え、前記ピストンの他端面に作用して、前記ピストンおよび前記ロッドを、前記噴射ノズルが前記洗機エリアに搬入された航空機から遠ざかる方向に付勢する液体または気体が、前記シリンダー内に供給されるように構成されている。
【0023】
本発明に係る航空機機体洗浄装置によれば、洗浄ポンプが停止されて、配管に洗浄水が供給されていない状態では、例えば、図9および図10に示すように、ピストン84が、シリンダー83、ピストン84、および蓋体86により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体87の側に付勢された状態になる。また、その一端が閉塞部材92の他端面に固定されたロッド85も、ピストン84とともにシリンダー83、ピストン84、および蓋体86により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体87の側に付勢された状態になる。そして、ロッド85の他端に、その先端が連結されたアーム102は、ロッド101まわりに回動した状態になり、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に実線で示すように、洗機エリアSの上方において水平方向に延びるようにして保持される。
【0024】
つづいて、洗浄ポンプが運転されて、配管に洗浄水43が供給されている状態では、例えば、図11および図12に示すように、ピストン84が、シリンダー83、ピストン84、および蓋体87により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体86の側に押し進められた状態になる。このとき、図11に示すように、吐出ポート88と環状空間94とは連通した状態になり、配管33内からシリンダー83内に供給された洗浄水43は、環状空間94および吐出ポート88を通って、ジョイント104よりも上流側に位置する枝管34内に入り、ジョイント104を通ってジョイント104よりも下流側に位置する枝管34内に入って、天井部噴射ノズル32(図3等参照)から噴射される。また、その一端が閉塞部材92の他端面に固定されたロッド85も、ピストン84とともにシリンダー83、ピストン84、および蓋体87により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体86の側に押し進められた状態になる。そして、ロッド85の他端に、その先端が連結されたアーム102は、図10に実線矢印で示すようにロッド101まわりに回動し、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に二点鎖線で示すように、洗機エリアSの上方において航空機3に近づく方向(上方から下方に向かって末広がりとなる方向:斜め方向)に延びるようにして保持される。
【0025】
航空機3を洗機する作業が終了したら、洗浄ポンプが停止されて、配管33に洗浄水43が供給されない状態にするとともに、図示しない(第3の)洗浄ポンプが停止されて、配管123に洗浄水43が供給されている状態にする。すると、ピストン84およびロッド85が、シリンダー83、ピストン84、および蓋体86により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体87の側に付勢された状態、すなわち、図9および図10に示す状態になり、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に実線で示すように、洗機エリアSの上方において水平方向に延びるようにして保持される。
【0026】
このように、本発明に係る航空機機体洗浄装置によれば、噴射ノズルを先端部に備えた枝管が、洗浄水の水圧によりスイングさせられることになる。すなわち、噴射ノズルが先端部に設けられた枝管をスイングさせるための特別な駆動装置(例えば、油圧式のアクチュエーターや電気式のアクチュエーター)が不要となり、また、噴射ノズルが先端部に設けられた枝管のみがスイングさせられることになる。
これにより、構成の簡略化を図ることができ、設備費およびランニングコストを低減させることができる。
【0027】
本発明に係る航空機洗機場は、上記いずれかの航空機機体洗浄装置を具備している。
【0028】
本発明に係る航空機洗機場によれば、構成の簡略化を図ることができ、設備費およびランニングコストを低減させることができる航空機機体洗浄装置を具備していることになる。
これにより、航空機洗機場の建造費およびランニングコストを低減させることができる。
【0029】
本発明に係る航空機搭載船は、上記いずれかの航空機機体洗浄装置を具備している。
【0030】
本発明に係る航空機搭載船によれば、構成の簡略化を図ることができ、設備費およびランニングコストを低減させることができる航空機機体洗浄装置を具備していることになる。
これにより、航空機搭載船の建造費およびランニングコストを低減させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る航空機機体洗浄装置よれば、構成の簡略化を図ることができ、設備費およびランニングコストを低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る航空機機体洗浄装置を具備した航空機洗機場の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る航空機機体洗浄装置を具備した航空機洗機場の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を拡大して示す側面図である。
【図4】図3に示す航空機機体洗浄装置の要部を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した平面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機から遠ざかった位置にある状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した側面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機から遠ざかった位置にある状態を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した平面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機に近づいた位置にある状態を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した側面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機に近づいた位置にある状態を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した平面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機から遠ざかった位置にある状態を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した側面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機から遠ざかった位置にある状態を示す図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した平面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機に近づいた位置にある状態を示す図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した側面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機に近づいた位置にある状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態に係る航空機機体洗浄装置について、図1から図8を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る航空機機体洗浄装置を具備した航空機洗機場の斜視図、図2は本実施形態に係る航空機機体洗浄装置を具備した航空機洗機場の概略構成図、図3は本実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を拡大して示す側面図、図4は図3に示す航空機機体洗浄装置の要部を示す平面図、図5は本実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した平面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機から遠ざかった位置にある状態を示す図、図6は本実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した側面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機から遠ざかった位置にある状態を示す図、図7は本実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した平面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機に近づいた位置にある状態を示す図、図8は本実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した側面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機に近づいた位置にある状態を示す図である。
【0034】
本実施形態に係る航空機機体洗浄装置20(図2以下の図を参照)は、例えば、図1に示すような航空機洗機場1の内部に配置されている。
航空機洗機場1は、例えば、格納庫2に隣接した敷地に建てられた上面視矩形状を呈する建家であり、航空機3が洗機される洗機エリアSの四方(前面、後面、両側面(左面および右面))は、壁面4,5,6,7により取り囲まれている(区画されている)。
【0035】
なお、洗機エリアSの上方は壁面によって覆われておらず、梁8および水平ブレース9が露出した吹き抜けになっている。
また、前面を形成する壁面4および後面を形成する壁面5はそれぞれ、左右方向にスライドして前面開口および後面開口を開閉するスライド式の扉とされ、これら前面開口および後面開口を介して、航空機3を洗機エリアSに搬入したり、洗機エリアSから搬出したりすることができるようになっている。
さらに、壁面4,5,6,7の上面(上端)および上部(頂部)には、屋外の風向・風速による影響を最小限にするように設計された耐風板10が、連続するようにして設けられている。
【0036】
図2に示すように、本実施形態に係る航空機機体洗浄装置20は、天井部噴射系統(第1の噴射系統)21と、床部噴射系統(第2の噴射系統)22とを備えている。
天井部噴射系統21は、(第1の)洗浄ポンプ31と、天井部噴射ノズル(第1の噴射ノズル)32と、(第1の)配管33とを備えている。
洗浄ポンプ31は、(第1の)吸引管41を介して地下または地上に設置された貯水槽42に溜められた洗浄水43を吸引、昇圧し、配管33を介して天井部噴射ノズル32に洗浄水43を圧送する(供給する)ポンプである。洗浄ポンプ31の吸込口には吸引管41の下流端が接続され、洗浄ポンプ31の吐出口には配管33の上流端が接続されている。また、吸引管41の上流端には、フート弁44が設けられている。
【0037】
天井部噴射ノズル32は、洗機エリアSの上方において洗機エリアSの前後方向(図2において左右方向)および/または洗機エリアSの左右方向(図2において紙面に垂直な方向)に延びる配管33の下流端(末端)に接続された枝管34の一端部(先端部)に設けられている。そして、貯水槽42に溜められた洗浄水43は、洗浄ポンプ31で昇圧され、配管33および枝管34を介して天井部噴射ノズル32に導かれ(供給され)、天井部噴射ノズル32から航空機3に向かって噴出されるようになっている。
なお、図2において天井部噴射ノズル32から延びる実線は、天井部噴射ノズル32から円錐状に噴射される洗浄水43の範囲を示している。
【0038】
配管33の途中には、その上流端がエアタンク(空気槽:気蓄槽)52の出口に接続された(第1の)空気供給管51の下流端が接続されている。エアタンク52には、図示しないコンプレッサーにより昇圧された空気が溜められており、エアタンク52に溜められたエア(空気)は、空気供給管51、配管33、および枝管34を介して天井部噴射ノズル32に導かれ(供給され)、天井部噴射ノズル32から噴出されるようになっている。エアタンク52の入口には、その上流端がコンプレッサーの吐出口に接続された(第2の)空気供給管53の下流端が接続されている。
【0039】
床部噴射系統22は、(第2の)洗浄ポンプ61と、床部噴射ノズル(第2の噴射ノズル)62と、(第2の)配管63とを備えている。
洗浄ポンプ61は、(第2の)吸引管71を介して地下または地上に設置された貯水槽42に溜められた洗浄水43を吸引、昇圧し、配管63を介して床部噴射ノズル62に洗浄水43を圧送する(供給する)ポンプである。洗浄ポンプ61の吸込口には吸引管71の下流端が接続され、洗浄ポンプ61の吐出口には配管63の上流端が接続されている。また、吸引管71の上流端には、フート弁72が設けられている。
【0040】
床部噴射ノズル62は、洗機エリアSの下方において洗機エリアSの前後方向(図2において左右方向)および/または洗機エリアSの左右方向(図2において紙面に垂直な方向)に延びる配管63から上方に向かって延びる枝管64の一端(上端)に設けられている。そして、貯水槽42に溜められた洗浄水43は、洗浄ポンプ61で昇圧され、配管63および枝管64を介して床部噴射ノズル62に導かれ(供給され)、床部噴射ノズル62から航空機3に向かって噴出されるようになっている。
なお、図2において床部噴射ノズル62から延びる実線は、床部噴射ノズル62から円錐状に噴射される洗浄水43の範囲を示している。
【0041】
洗機エリアSの下方には、天井部噴射ノズル32および/または床部噴射ノズル62から噴出された洗浄水43を回収する汚水槽(汚水枡)73が設けられている。すなわち、天井部噴射ノズル32および/または床部噴射ノズル62から噴出された洗浄水43、天井部噴射ノズル32および/または床部噴射ノズル62から噴出されて航空機3を洗浄した(航空機3に衝突した)洗浄水43は、洗機エリアSの床面(下面)を形成する金属製のメッシュ74を通って汚水槽73に一旦溜められた後、排水管75を介して排出されるようになっている。
【0042】
なお、貯水槽42の水位は、水位センサー76で検出された水位に基づいてその開度が自動的に調整制御される調整弁(制御弁)77が開閉されることにより、所定範囲内の水位に維持されるようになっている。
【0043】
さて、本実施形態に係る航空機機体洗浄装置20では、配管33と枝管34とが、図3から図8に示すアクチュエーター81を介して接続され、枝管34が、図3から図8に示すリンク機構82により、図3に示すような昇降(スイング)をするように構成されている。
図5および図7に示すように、アクチュエーター81は、シリンダー83と、ピストン84と、ロッド85とを備えている。
【0044】
シリンダー83は、一端開口が(第1の)蓋体86により閉塞され、他端開口が(第2の)蓋体87により閉塞された円筒状の部材である。蓋体86の中央部には、板厚方向に貫通する貫通穴86a(図6等参照)が設けられている。この貫通穴86aにはロッド85が挿通され、この貫通穴86aにより、シリンダー83およびロッド85の軸方向(長手方向)にロッド85が案内されるようになっている。また、蓋体86には、図示しない空気ポートが少なくとも1個設けられている。
一方、蓋体87の中央部には、板厚方向に貫通する貫通穴87aが設けられている。この貫通穴87aには配管33の下流端が接続され、この貫通穴87aを介して配管33からシリンダー83の内部に、洗浄水43またはエアが導かれるようになっている。
また、シリンダー83には、板厚方向に貫通する吐出ポート88が複数個(本実施形態では2個)設けられており、各吐出ポート88には、枝管34の上流端が、対応する吐出ポート88と連通するようにして接続されている。
【0045】
ピストン84は、シリンダー83の軸方向に沿って、その外周面がシリンダー83の内壁面(内周面)を摺動する筒状部91と、一端開口(蓋体87と対向する側の開口)を閉塞する閉塞部材92とを備えている。
閉塞部材92の一端面(蓋体87と対向する端面)の中央部には、蓋体87の側に向かって突出する凸部93が設けられている。また、この凸部93が設けられることにより、閉塞部材92の一端面、凸部93の外周面、シリンダー83の内壁面との間に環状空間94が形成されるようになっている。
【0046】
ロッド85は、一端が閉塞部材92の他端面に固定され、他端がリンク機構82を構成するアーム102の先端に連結された丸棒状の部材である。ロッド85の周りには、ロッド85の軸方向に沿って延びるとともに、蓋体86と閉塞部材92との間に配置されてピストン84を蓋体87の側に付勢するコイルばね(付勢手段)95が設けられている。
【0047】
リンク機構82は、ロッド101と、アーム102と、軸受103とを備えている。
ロッド101は、アクチュエーター81の軸方向と直交して水平方向に延びる丸棒状の部材であり、軸方向における中央部にはアーム102が固定されている。アーム102の両側方に位置するロッド101は、軸受103を介して回動可能に支持されている。
【0048】
ロッド101の両端には、上流側に位置する枝管34と、下流側に位置する枝管34とを連通するジョイント104がそれぞれ接続されている。ジョイント104は、下流側に位置する枝管34の上流端が接続されて、ロッド101および下流側に位置する枝管34とともに回動する回動部105と、上流側に位置する枝管34の下流端が接続されて、上流側に位置する枝管34、およびアクチュエーター81とともに静止部を構成する非回動部(固定部)106とを備えている。
また、回動部105には、下流側に位置する枝管34と反対の側に延びるロッド107を介して(カウンター)ウェイト108がそれぞれ連結されている。
【0049】
アーム102は、一端(基端)がロッド101に固定されて、ロッド101とともに回動(揺動)する板状の部材であり、アクチュエーター81を構成するロッド85の他端を両側方から挟み込むようにして配置されている。アーム102の他端(先端)は、ピン109(図6等参照)を介してロッド85の他端に取り付けられている。
軸受103は、下面が架台110の上面と接するようにして架台110に固定されている。
【0050】
つぎに、洗浄水43を用いて航空機3を洗機する(または空気を用いて天井部噴射ノズル32あるいは航空機3に残った洗浄水43を噴き飛ばす)際の、アクチュエーター81およびリンク機構82の動作を図5から図8を参照しながら説明する。
【0051】
まず、洗浄ポンプ31(図2参照)が停止されて、配管33に洗浄水43(図2参照)が供給されていない状態(または空気供給管51(図2参照)の途中に設けられた開閉弁54(図2参照)が閉じられて、配管33に空気が供給されていない状態)では、図5および図6に示すように、ピストン84が、コイルばね95により蓋体87の側に付勢された状態になる。このとき、図5に示すように、吐出ポート88は、筒状部91の外周面により閉塞されている。また、図5および図6に示すように、その一端が閉塞部材92の他端面に固定されたロッド85も、ピストン84とともにコイルばね95により蓋体87の側に付勢された状態になる。そして、ロッド85の他端に、その先端が連結されたアーム102は、ロッド101まわりに回動した状態になり、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に実線で示すように、洗機エリアSの上方において水平方向に延びるようにして保持される。
【0052】
つづいて、洗浄ポンプ31(図2参照)が運転されて、配管33に洗浄水43(図2参照)が供給されている状態(または空気供給管51(図2参照)の途中に設けられた開閉弁54(図2参照)が開けられて、配管33に空気が供給されている状態)では、図7および図8に示すように、ピストン84が、コイルばね95の付勢力に抗して蓋体86の側に押し進められた状態になる。このとき、図7に示すように、吐出ポート88と環状空間94とは連通した状態になり、配管33内からシリンダー83内に供給された洗浄水43(または空気)は、環状空間94および吐出ポート88を通って、ジョイント104よりも上流側に位置する枝管34内に入り、ジョイント104を通ってジョイント104よりも下流側に位置する枝管34内に入って、天井部噴射ノズル32(図3等参照)から噴射される。また、図7および図8に示すように、その一端が閉塞部材92の他端面に固定されたロッド85も、ピストン84とともにコイルばね95の付勢力に抗して蓋体86の側に押し進められた状態になる。そして、ロッド85の他端に、その先端が連結されたアーム102は、図6に実線矢印で示すようにロッド101まわりに回動し、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に二点鎖線で示すように、洗機エリアSの上方において航空機3に近づく方向(上方から下方に向かって末広がりとなる方向:斜め方向)に延びるようにして保持される。また、シリンダー83、ピストン84、および蓋体86により形成された空間内の空気は、蓋体86に設けられた図示しない空気ポートを介してシリンダー83の外部に排出される。
【0053】
航空機3を洗機する作業(または天井部噴射ノズル32あるいは航空機3に残った洗浄水43を噴き飛ばす作業)が終了したら、洗浄ポンプ31(図2参照)が停止されて、配管33に洗浄水43(図2参照)が供給されない状態(または空気供給管51(図2参照)の途中に設けられた開閉弁54(図2参照)が閉じられて、配管33に空気が供給されない状態)にする。すると、ピストン84およびロッド85が、コイルばね95の復元力により蓋体87の側に付勢された状態、すなわち、図5および図6に示す状態になり、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に実線で示すように、洗機エリアSの上方において水平方向に延びるようにして保持される。
【0054】
このとき、筒状部91の外周面により吐出ポート88が閉塞された後、シリンダー83、ピストン84、および蓋体87により形成された空間内に残った洗浄水43(または空気)は、配管33の途中(例えば、アクチュエーター81の近傍に位置する配管33)に設けられた図示しない逃がし弁を介して(逃がし弁を開けることにより)シリンダー83内および配管33内から逃がされるようになっている。また、シリンダー83、ピストン84、および蓋体86により形成された空間内には、蓋体86に設けられた図示しない空気ポートを介して流入する空気が充填される。
【0055】
本実施形態に係る航空機機体洗浄装置20によれば、天井部噴射ノズル32を先端部に備えた枝管34が、洗浄水43の水圧によりスイングさせられることになる。すなわち、天井部噴射ノズル32が先端部に設けられた枝管34をスイングさせるための特別な駆動装置(例えば、油圧式のアクチュエーターや電気式のアクチュエーター)が不要となり、また、天井部噴射ノズル32が先端部に設けられた枝管34のみがスイングさせられることになる。
これにより、構成の簡略化を図ることができ、設備費およびランニングコストを低減させることができる。
【0056】
本発明の他の実施形態に係る航空機機体洗浄装置について、図9から図12を参照しながら説明する。
図9は本実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した平面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機から遠ざかった位置にある状態を示す図、図10は本実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した側面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機から遠ざかった位置にある状態を示す図、図11は本実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した平面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機に近づいた位置にある状態を示す図、図12は本実施形態に係る航空機機体洗浄装置の要部を一部断面視した側面図であって、天井部噴射ノズルが、洗機エリアに搬入された航空機に近づいた位置にある状態を示す図である。
【0057】
本実施形態に係る航空機機体洗浄装置は、アクチュエーター81の代わりに、アクチュエーター121が設けられているという点で上述した実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0058】
アクチュエーター121は、シリンダー83と、ピストン84と、ロッド85とを備えているという点で、上述したアクチュエーター81と何ら変わるところはないが、上述した実施形態と本実施形態とは、上述した実施形態では、コイルばね95の復元力を利用して、ピストン84およびロッド85を蓋体87の側に付勢するようにしていたのに対して、本実施形態では、洗浄水43の水圧を利用して、ピストン84およびロッド85を蓋体87の側に付勢するようにしているという点で異なる。
【0059】
そのため、本実施形態に係る蓋体86には、上述した空気ポートの代わりに、洗浄水ポート122が設けられている。洗浄水ポート122には、その上流端が図示しない(第3の)洗浄ポンプの吐出口に接続された配管123の下流端が接続されている。
なお、(第3の)洗浄ポンプは、図示しない(第3の)吸引管を介して地下または地上に設置された貯水槽42(図2参照)に溜められた洗浄水43(図2参照)を吸引、昇圧し、配管123および洗浄水ポート122を介してシリンダー83、ピストン84、および蓋体86により形成された空間内に洗浄水43を圧送する(供給する)ポンプであり、吸込口には(第3の)吸引管の下流端が接続されている。また、(第3の)吸引管の上流端には、図示しないフート弁が設けられている。
【0060】
つぎに、洗浄水43を用いて航空機3を洗機する(または空気を用いて天井部噴射ノズル32あるいは航空機3に残った洗浄水43を噴き飛ばす)際の、アクチュエーター121およびリンク機構82の動作を図9から図12を参照しながら説明する。
【0061】
まず、洗浄ポンプ31(図2参照)が停止されて、配管33に洗浄水43(図2参照)が供給されていない状態(または空気供給管51(図2参照)の途中に設けられた開閉弁54(図2参照)が閉じられて、配管33に空気が供給されていない状態)では、図9および図10に示すように、ピストン84が、シリンダー83、ピストン84、および蓋体86により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体87の側に付勢された状態になる。このとき、図9に示すように、吐出ポート88は、筒状部91の外周面により閉塞されている。また、図9および図10に示すように、その一端が閉塞部材92の他端面に固定されたロッド85も、ピストン84とともにシリンダー83、ピストン84、および蓋体86により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体87の側に付勢された状態になる。そして、ロッド85の他端に、その先端が連結されたアーム102は、ロッド101まわりに回動した状態になり、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に実線で示すように、洗機エリアSの上方において水平方向に延びるようにして保持される。
【0062】
つづいて、洗浄ポンプ31(図2参照)が運転されて、配管33に洗浄水43(図2参照)が供給されている状態(または空気供給管51(図2参照)の途中に設けられた開閉弁54(図2参照)が開けられて、配管33に空気が供給されている状態)では、図11および図12に示すように、ピストン84が、シリンダー83、ピストン84、および蓋体87により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体86の側に押し進められた状態になる。このとき、図11に示すように、吐出ポート88と環状空間94とは連通した状態になり、配管33内からシリンダー83内に供給された洗浄水43(または空気)は、環状空間94および吐出ポート88を通って、ジョイント104よりも上流側に位置する枝管34内に入り、ジョイント104を通ってジョイント104よりも下流側に位置する枝管34内に入って、天井部噴射ノズル32(図3等参照)から噴射される。また、図11および図12に示すように、その一端が閉塞部材92の他端面に固定されたロッド85も、ピストン84とともにシリンダー83、ピストン84、および蓋体87により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体86の側に押し進められた状態になる。そして、ロッド85の他端に、その先端が連結されたアーム102は、図10に実線矢印で示すようにロッド101まわりに回動し、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に二点鎖線で示すように、洗機エリアSの上方において航空機3に近づく方向(上方から下方に向かって末広がりとなる方向:斜め方向)に延びるようにして保持される。また、シリンダー83、ピストン84、および蓋体86により形成された空間内の洗浄水43は、配管123に設けられた図示しない洗浄水ポートを介してシリンダー83の外部に排出される。
【0063】
航空機3を洗機する作業(または天井部噴射ノズル32あるいは航空機3に残った洗浄水43を噴き飛ばす作業)が終了したら、洗浄ポンプ31(図2参照)が停止されて、配管33に洗浄水43(図2参照)が供給されない状態(または空気供給管51(図2参照)の途中に設けられた開閉弁54(図2参照)が閉じられて、配管33に空気が供給されない状態)にするとともに、図示しない(第3の)洗浄ポンプが停止されて、配管123に洗浄水43が供給されている状態にする。すると、ピストン84およびロッド85が、シリンダー83、ピストン84、および蓋体86により形成された空間内に充填された洗浄水43の水圧により蓋体87の側に付勢された状態、すなわち、図9および図10に示す状態になり、ジョイント104よりも下流側に位置する枝管34は、例えば、図3に実線で示すように、洗機エリアSの上方において水平方向に延びるようにして保持される。
【0064】
このとき、筒状部91の外周面により吐出ポート88が閉塞された後、シリンダー83、ピストン84、および蓋体87により形成された空間内に残った洗浄水43(または空気)は、配管33の途中(例えば、アクチュエーター121の近傍に位置する配管33)に設けられた図示しない逃がし弁を介して(逃がし弁を開けることにより)シリンダー83内および配管33内から逃がされるようになっている。
【0065】
本実施形態に係る航空機機体洗浄装置によれば、天井部噴射ノズル32を先端部に備えた枝管34が、洗浄水43の水圧によりスイングさせられることになる。すなわち、天井部噴射ノズル32が先端部に設けられた枝管34をスイングさせるための特別な駆動装置(例えば、油圧式のアクチュエーターや電気式のアクチュエーター)が不要となり、また、天井部噴射ノズル32が先端部に設けられた枝管34のみがスイングさせられることになる。
これにより、構成の簡略化を図ることができ、設備費およびランニングコストを低減させることができる。
【0066】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜必要に応じて変形・変更実施可能である。
例えば、上述した実施形態では、本発明に係る航空機機体洗浄装置を、図1に示すような航空機洗機場1の内部に配置したものを一具体例として挙げて説明したが、本発明に係る航空機機体洗浄装置は、図1に示すような航空機洗機場1以外の航空機洗機場や、航空機(例えば、ヘリコプター)を搭載する艦船(例えば、ヘリコプター搭載護衛艦)の飛行甲板にも配置することができる。
【0067】
また、アクチュエーター81,121の形態、コイルばね95やロッド85が配置される場所は、必要に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 航空機洗機場
3 航空機
20 航空機機体洗浄装置
31 洗浄ポンプ
32 天井部噴射ノズル(噴射ノズル)
33 配管
34 枝管
42 貯水槽
43 洗浄水
81 アクチュエーター
82 リンク機構
83 シリンダー
84 ピストン
85 ロッド
95 コイルばね(付勢手段)
121 アクチュエーター
S 洗機エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗機エリアに搬入された航空機の機体外表面を洗浄水で洗浄する航空機機体洗浄装置であって、
前記洗機エリアに配設された配管と、
前記配管の下流端に接続された枝管と、
前記枝管の先端部に設けられた噴射ノズルと、
前記配管および前記枝管を介して前記噴射ノズルに洗浄水を圧送する洗浄ポンプと、
前記配管と前記枝管との間に設けられるとともに、シリンダーと、該シリンダー内に収められたピストンと、該ピストンに固定されたロッドとを有するアクチュエーターと、
前記ロッドに連結されたリンク機構と、を備え、
洗浄水供給時には、洗浄水の及ぼす圧力により前記ピストンおよび前記ロッドが一方向に移動し、前記配管と前記枝管とが連通するとともに、前記リンク機構により、前記噴射ノズルが航空機に近づくように前記枝管がスイングし、
洗浄水非供給時には、前記アクチュエーター内に設けられた付勢手段により、前記ピストンおよび前記ロッドが他方向に移動し、前記配管と前記枝管との連通が遮断されるとともに、前記リンク機構により、前記噴射ノズルが航空機から遠ざかるように前記枝管がスイングすることを特徴とする航空機機体洗浄装置。
【請求項2】
洗機エリアに搬入された航空機の機体外表面を洗浄水で洗浄する航空機機体洗浄装置であって、
前記洗機エリアに配設された配管と、
前記配管の下流端に接続された枝管と、
前記枝管の先端部に設けられた噴射ノズルと、
前記配管および前記枝管を介して前記噴射ノズルに洗浄水を圧送する洗浄ポンプと、
前記配管と前記枝管との間に設けられるとともに、シリンダーと、該シリンダー内に収められたピストンと、該ピストンに固定されたロッドとを有するアクチュエーターと、
前記ロッドに連結されたリンク機構と、を備え、
洗浄水供給時には、洗浄水の水圧により前記ピストンおよび前記ロッドが一方向に移動し、前記配管と前記枝管とが連通するとともに、前記リンク機構により、前記噴射ノズルが航空機に近づくように前記枝管がスイングし、
洗浄水非供給時には、前記アクチュエーター内に導入された気体または液体の及ぼす圧力により、前記ピストンおよび前記ロッドが他方向に移動し、前記配管と前記枝管との連通が遮断されるとともに、前記リンク機構により、前記噴射ノズルが航空機から遠ざかるように前記枝管がスイングすることを特徴とする航空機機体洗浄装置。
【請求項3】
洗機エリアに搬入された航空機の機体外表面を、貯水槽に溜められた洗浄水で洗浄する航空機機体洗浄装置であって、
前記洗機エリアの上方において前記洗機エリアの前後方向および/または左右方向に延びる配管と、
前記配管の下流端に接続された枝管と、
前記枝管の先端部に設けられた噴射ノズルと、
前記貯水槽に溜められた洗浄水を吸引、昇圧し、前記配管および前記枝管を介して前記噴射ノズルに洗浄水を圧送する洗浄ポンプと、
前記洗浄ポンプから圧送された洗浄水が、シリンダー内に収められたピストンの一端面に作用することにより、前記ピストンの他端面に固定されたロッドが、前記シリンダーから軸方向に沿って進出するアクチュエーターと、
前記シリンダーから軸方向に沿って進出する前記ロッドにより、前記噴射ノズルが前記洗機エリアに搬入された航空機に近づくように前記枝管をスイングさせるリンク機構と、を備え、
前記ピストンの他端面に作用して、前記ピストンおよび前記ロッドを、前記噴射ノズルが前記洗機エリアに搬入された航空機から遠ざかる方向に付勢するコイルばねが、前記シリンダー内に設けられていることを特徴とする航空機機体洗浄装置。
【請求項4】
洗機エリアに搬入された航空機の機体外表面を、貯水槽に溜められた洗浄水で洗浄する航空機機体洗浄装置であって、
前記洗機エリアの上方において前記洗機エリアの前後方向および/または左右方向に延びる配管と、
前記配管の下流端に接続された枝管と、
前記枝管の先端部に設けられた噴射ノズルと、
前記貯水槽に溜められた洗浄水を吸引、昇圧し、前記配管および前記枝管を介して前記噴射ノズルに洗浄水を圧送する洗浄ポンプと、
前記洗浄ポンプから圧送された洗浄水が、シリンダー内に収められたピストンの一端面に作用することにより、前記ピストンの他端面に固定されたロッドが、前記シリンダーから軸方向に沿って進出するアクチュエーターと、
前記シリンダーから軸方向に沿って進出する前記ロッドにより、前記噴射ノズルが前記洗機エリアに搬入された航空機に近づくように前記枝管をスイングさせるリンク機構と、を備え、
前記ピストンの他端面に作用して、前記ピストンおよび前記ロッドを、前記噴射ノズルが前記洗機エリアに搬入された航空機から遠ざかる方向に付勢する液体または気体が、前記シリンダー内に供給されるように構成されていることを特徴とする航空機機体洗浄装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の航空機機体洗浄装置を具備していることを特徴とする航空機洗機場。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の航空機機体洗浄装置を具備していることを特徴とする航空機搭載船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−236459(P2012−236459A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105520(P2011−105520)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】