説明

航空機用ドアアセンブリ及びかかる航空機用ドアアセンブリを備えた航空機機体

ドア開口とドア枠4とを有する機体2を備えた航空機の航空機用ドアアセンブリであって、ドア枠4に嵌合可能な航空機用ドア6を備えている。航空機用ドア6は、外板8を有するドア構成体を備えている。航空機用ドア6は、ロック状態閉扉位置から昇動することによってロック解除状態閉扉位置へ移動可能であり、このロック解除状態閉扉位置から揺動することによって、ドア枠4の外部にあって機体2の外側に位置する開扉位置へと移動可能である。航空機用ドア6は、開扉位置から揺動することによってロック解除状態閉扉位置へ復帰移動可能であり、このロック解除状態閉扉位置から降下することによってロック状態閉扉位置へ復帰移動可能である。航空機用ドア6がロック状態閉扉位置にあるときに、ドア枠4とドア辺縁部6aとの間にドア間隙16が存在しており、このドア間隙は航空機用ドア6を昇降可能とするために必要とされる余裕空間を提供している。航空機用ドア6は、その外側面のドア辺縁近傍領域6bに、ドア間隙カバー部材18を備えている。ドア間隙カバー部材18は、航空機用ドア6がロック状態閉扉位置にあるときに、ドア間隙16の上から航空機機体2の外側面の上にまで亘って延在してドア間隙16を覆っている。ドア間隙カバー部材18は、外板8の外側面に対して相対的に移動可能な状態でドア構造体に取付けられている。
(選択図)図2

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア枠により囲繞されたドア開口を有する機体を備えた航空機の航空機用ドアアセンブリに関し、この航空機用ドアアセンブリは、ドア枠に嵌合可能な例えば乗客用ドアなどの航空機用ドアを備えたものである。本発明は更に、かかる航空機用ドアアセンブリを備えた航空機機体に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の航空機用ドアアセンブリとしては、図6に模式的な縦断面図で示した航空機用ドアアセンブリなどが公知となっている。この公知の航空機用ドアアセンブリは、ドア枠202により囲繞されたドア開口を有する機体200を備えた航空機の航空機用ドアアセンブリであり、ドア枠202に嵌合可能な例えば乗客用ドアなどの航空機用ドア204を備えたものである。この航空機用ドア204は、外板206を有するドア構造体を備えている。航空機用ドア204は、ロック状態閉扉位置から昇動することによってロック解除状態閉扉位置へ移動可能であり、このロック解除状態閉扉位置から揺動することによって開扉位置へ移動可能であり、この開扉位置にあるときに、航空機用ドア204は、ドア枠202の外部にあって機体200の外側に位置している。尚、航空機用ドア204の昇動方向を図6に矢印205で示した。また、航空機用ドア204は、この開扉位置から揺動することによってロック解除状態閉扉位置へ復帰移動可能であり、このロック解除状態閉扉位置から降下することによってロック状態閉扉位置へ復帰移動可能である。航空機用ドア204がロック状態閉扉位置にあるときに、ドア枠202とドア上縁部210との間にドア間隙208(図6にハッチングで示した)が存在している。このドア間隙208は航空機用ドア204を昇降可能とするために必要とされる余裕空間を提供している。航空機用ドア204は、この航空機用ドア204の外側面のドア枠202に対向しているドア辺縁部にドア間隙カバー部材212を備えており、このドア間隙カバー部材212は外板206の表面に固定して取付けられている。航空機用ドア204がロック状態閉扉位置にあるときに、このドア間隙カバー部材212は、ドア間隙208の上から機体200の外側面の上にまで亘って延在して、ドア間隙208を覆っている。
【0003】
以上の構成によれば、ドア間隙カバー部材212の上縁部及び下縁部が、機体200の外側面の上に載置されることになるため、それら上縁部及び下縁部の夫々に、空力学的に望ましくない段差部214が形成され、それら段差部214によって飛行中に騒音が発生するという不都合が生じている。
【0004】
また、ドア間隙カバー部材212は可撓性を有する部材として構成されており、そのようにしているのは、航空機用ドアがロック状態閉扉位置にあるときに、ドア間隙カバー部材212が機体200の外板の表面に密接してガタ付かないようにするためである。ところが、そのようにしているために、航空機用ドア204が昇降動する際に、ドア間隙カバー部材212の上縁部216が、機体200の外側面を擦ってしまい、それによって機体の外側面の表面保護塗膜が損傷するという事態がしばしば生じている。
【0005】
公知の航空機用ドアアセンブリのうちには、ドア間隙カバー部材を備えずに、その代わりに、ゴム系材料のように弾性変形可能な材料から成る充填材を、単にドア間隙に装填した構成としたものもある。この充填材は、ドアが昇動してロック解除状態閉扉位置へ移動するときに圧縮される。そして、ドアが降下してロック状態閉扉位置へ復帰するときに、この充填材は、膨張した状態に戻ってドア間隙を閉塞する。しかしながらこの方式では、充填材からドア枠へ移行する移行領域、並びに、充填材からドア構造体へ移行する移行領域に、かなりの大きさの段差部が形成されてしまい、そのため、この種の航空機用ドアアセンブリは、空力学的特性がより劣ったものとなる。更に、ドアの開閉に伴って充填材に大きな応力が加わるため、充填材が極めて短期間のうちに損耗してしまうことから、充填材の交換を頻繁に行わなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的即ち技術的課題は、従来の航空機用ドアアセンブリに付随する上述した短所をできる限り払拭して、より優れた空力学的特性を有すると共に、機体の外側面の表面保護塗膜を損傷させることがなく、ドア間隙を高い信頼性をもって閉塞することができるようにした、航空機用ドアアセンブリを提供することにある。また更に、かかる航空機用ドアアセンブリを備えた航空機機体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、その第1の局面に関しては、請求項1に記載した特徴を備えた本発明に係る航空機用ドアアセンブリにより達成される。
【0008】
この航空機の航空機用ドアアセンブリは、ドア枠により囲繞されたドア開口を有する機体を備えた航空機の航空機用ドアアセンブリであって、前記ドア枠に嵌合可能な例えば乗客用ドアなどの航空機用ドアを備えており、前記航空機用ドアは、外板を有するドア構成体を備えている。前記航空機用ドアは、ロック状態閉扉位置から昇動(または降下)することによって、開扉可能な閉扉位置であるロック解除状態閉扉位置へ移動可能であり、このロック解除状態閉扉位置から揺動することによって開扉位置へ移動可能であり、この開扉位置にあるときに、前記航空機用ドアは、前記ドア枠の外部にあって前記機体の外側に位置している。また更に、前記航空機用ドアは、前記開扉位置から揺動することによって前記ロック解除状態閉扉位置へ復帰移動可能であり、このロック解除状態閉扉位置から降下(または昇動)することによって前記ロック状態閉扉位置へ復帰移動可能である。前記航空機用ドアが前記ロック状態閉扉位置にあるときに、前記ドア枠とドア辺縁部との間にドア間隙が存在しており、前記ドア間隙は、前記航空機用ドアを昇降動可能とするために必要とされる余裕空間を提供している。前記航空機用ドアは、該航空機用ドアの外側面の前記ドア枠に対向しているドア辺縁近傍領域にドア間隙カバー部材を備えており、該ドア間隙カバー部材は、前記航空機用ドアが前記ロック状態閉扉位置にあるときに、前記ドア間隙の上から前記航空機機体の外側面の上にまで亘って延在して前記ドア間隙を覆っている。前記ドア間隙カバー部材は、前記外板の外側面に対して相対的に移動可能な状態で前記ドア構造体に取付けられている。
【0009】
先行段落における括弧内の記載事項は、同段落に記載している原理を、機構的に上下を逆にして構成する場合について記載したものである。
【0010】
本発明に係る航空機用ドアアセンブリによれば、ドアの動作からは独立させてドア間隙カバー部材を移動させることができる。そのため、ロック解除状態閉扉位置へ移動させるためのドアの昇動が行われる前に、ドア間隙カバー部材をドアから離れる方向へ移動させて航空機機体の表面(即ち、航空機機体のドア枠の表面)から離すことができ、また、逆方向に移動させる際には、ロック状態閉扉位置へのドアの移動が完了した後に、ドア間隙カバー部材を移動させてドアの表面並びに航空機機体の表面(即ち、航空機機体のドア枠の表面)に当接させることができる。そして、これによって、ドア間隙カバー部材と、機体の外側面の表面保護塗膜(即ち、ドア枠の外表面の表面保護塗膜)とが擦れる箇所をなくして表面保護塗膜の損傷を回避できると共に、ドア間隙カバー部材を、ドアの輪郭面、航空機機体の輪郭面、及び航空機機体のドア枠の輪郭面と同一面上に位置させて一体化することができるという空気力学的に望ましい形態とすることができる。即ち、これによって、ドア間隙カバー部材から機体の輪郭面へ移行する移行領域、並びに、ドア間隙カバー部材からドアの輪郭面へ移行する移行領域に、不都合な段差部が形成されなくなる。そのため、航空機用ドアアセンブリの空力学徳性を総体的に改善できると共に、不都合な騒音の発生を防止することができ、更には、機体の外側面の表面保護塗膜を損傷せずにドア間隙が高い信頼性をもって閉塞することができる。
【0011】
ただし、基本的に、ロック状態閉扉位置からロック解除状態閉扉位置へ移動させるためのドアの昇動が行われているときに、ないしは、ドアのロック解除が行われているときに、ドア間隙カバー部材をドアから離れる方向へ移動させて航空機機体の表面(即ち、航空機機体のドア枠の表面)から離すようにすることも可能である。また同様に、ロック解除状態閉扉位置からロック状態閉扉位置へ移動させるためのドアの降下が行われているときに、ないしは、ドアのロックが行われているときに、ドア間隙カバー部材を移動させてドアの表面に並びに航空機機体の表面(即ち、航空機機体のドア枠の表面)に当接した状態に復帰させるようにすることも可能である。尚、これの動作が行われるときに、ドア間隙カバー部材が、ドア枠に(即ち、機体に)衝突することを回避し、それによって、機体の外側面の表面保護塗膜を擦って損傷させてしまうことを回避するためには、ドア間隙カバー部材の移動を開始する時点を、ドアの移動のタイミングに、即ち、ドアの昇動、降下、ロック解除、及びロックの動作のタイミングに、正しく合わせるようにする。
【0012】
請求項2乃至22は、本発明の特に好ましく有利な実施の形態に係る特徴を記載したものである。
【0013】
本発明の目的は、その第2の局面に関しては、請求項23に記載した特徴を備えた本発明に係る航空機機体により達成される。
【0014】
この航空機機体は、例えば予圧キャビンなどを備えた航空機機体であり、請求項1乃至22の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリを備えたことを特徴とする航空機機体である。本発明に係る航空機機体は、例えば旅客機などの固定翼機の機体として構成することが好ましい。ただし、本発明に係る航空機機体は、例えばヘリコプターなどの回転翼機の機体として構成することも可能である。
【0015】
本発明に係る航空機機体によれば、本発明に係る航空機用ドアアセンブリに関して上で詳細に説明した様々な利点と同じ利点が得られる。
【0016】
以下に、本発明の好適な実施の形態について、並びに、その細部構造及びその他の利点について、図面を参照しつつ更に詳細に説明して行く。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下の説明、及び、添付図面においては、記載の反復を回避するために、明確に区別することが必要または重要である場合を除いて、互いに同等の構成部品ないし構成要素には同一の参照番号を付している。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る航空機用ドアアセンブリの模式的縦断面図であり、航空機用ドアアセンブリが第1状態にあるところを示した図である。この図示例の航空機用ドアアセンブリは、予圧キャビンを備えた固定翼機である航空機の機体2の構成要素である。機体2はドア枠4により囲繞されたドア開口を有しており、このドア開口は予圧キャビンに開口している。この航空機用ドアアセンブリは、ドア枠4に嵌合可能な航空機用ドア6(以下、単に「ドア6」と称する)を備えており、このドア6は、乗客用ドアとして構成されており、また、いわゆる、プラグインドアとして構成されている。ドア6は、補強部材と外板8とを有するドア構造体を備えている。ドア6は更に、周縁封止材10を備えており、この周縁封止材10によって、ドア6を、ドア枠4の当接面12に対して封止できるようにしてあり、ひいては、予圧キャビンの内部に対して封止できるようにしてある。
【0019】
ドア6は、ロック状態閉扉位置(図1にドア6の第1状態として示した位置)から昇動することによってロック解除状態閉扉位置へ移動可能であり、このロック解除状態閉扉位置へ移動したならばドア6は開扉可能な状態になる。ドア6の昇動方向を図1に矢印14で示した。更に、ドア6は、このロック解除状態閉扉位置から揺動することによって開扉位置へ移動可能であり、この開扉位置にあるときに、ドア6は、ドア枠4の外部にあって機体2の外側に位置している。また、ドア6は、この開扉位置から揺動することによってロック解除状態閉扉位置へ復帰移動可能であり、このロック解除状態閉扉位置から降下することによってロック状態閉扉位置へ復帰移動可能である。ドア6の高さ寸法とドア枠4の内法高さ寸法との関係は、ドア6がロック状態閉扉位置にあるときに、ドア枠4とドア上縁部6aとの間にドア間隙16が存在するような関係としてある。図中にハッチングで示したこのドア間隙16は、ドア6を昇降可能とするために必要とされる余裕空間を提供している。
【0020】
更にこれも図1から明らかなように、ドア6は、その外側面の、ドア枠4に対向しているドア辺縁部に、可動式のドア間隙カバー部材18を備えている。ドア6が図1に示したようにロック状態閉扉位置にあるときに、ドア間隙カバー部材18は、ドア間隙16の上から機体2の外側面の上並びに機体2のドア枠4の上にまで亘って延在し、ドア間隙16を覆っている。図1に示した状態は、ドア間隙カバー部材18がカバー部材第1位置P1にあるときの状態である。ドア間隙カバー部材18の幅寸法は、最小でもドア6の幅寸法ないしドア間隙16の幅寸法と同程度のものとすることが好ましい。また、ドア6の高さ方向即ちドア間隙16の高さ方向に測ったドア間隙カバー部材18の長さ寸法Lは、ドア間隙の高さ寸法Hより大きくしてある。このドア間隙カバー部材18の長さ寸法Lに対するドア間隙の高さ寸法Hの比H/Lは、1:10〜1:1.1の範囲内とすることが好ましく、また特に1:10〜1:5の範囲内とすることや、1:6〜1:3.5の範囲内とすることがある。図示例ではこの比H/Lを、約1:3として、ドア間隙カバー部材18の上方の約3分の1の部分だけが、ドア間隙16を覆うようにしている。
【0021】
図1から明らかなように、可動式のドア間隙カバー部材18は、板状の部材として構成されている。このドア間隙カバー部材18の製作材料としては、例えば、アルミニウム合金などの軽金属材料から成る板状材料や、繊維複合材料から成る板状材料などが適しており、繊維複合材料から成る板状材料を用いる場合には、一体構造の板状材料と積層構造の板状材料とのどちらも使用可能である。図1に示した航空機用ドアアセンブリの縦断面図から明らかなように、板状の部材として構成されているドア間隙カバー部材18は、小さな曲率をもって彎曲している。このドア間隙カバー部材18の曲率は、このドア間隙カバー部材18が装備される部位におけるドア6の曲率ないし機体2の曲率に合わせてある。航空機の機体は、また特に予圧キャビンを備えた航空機の機体は、機体の横断面形状などの機体部分領域の形状が、このように彎曲した略々円形ないし楕円形の形状とされているため、ドア6の形状、並びにこのドア6に装備するドア間隙カバー部材18の形状も、それに合わせた形状にしてあるのである。
【0022】
図2は、図1に示した本発明に係る航空機用ドアアセンブリの模式的縦断面図であり、航空機用ドアアセンブリが第2状態にあるところを示した図である。ドア間隙カバー部材18が図1に示したカバー部材第1位置P1にあり、ドア6がロック状態閉扉位置にある状態(第1状態)から、ドア間隙カバー部材18は、外板8の外側面から離れる方向へ移動することによってカバー部材第2位置P2へ移動し、それによって、ドア6の昇動及びロック解除を行える状態となる。また、可動式のドア間隙カバー部材18がカバー部材第2位置P2にあり、ドア6がロック解除状態閉扉位置にある状態(第2状態)から、ドア間隙カバー部材18は、外板8の外側面へ近付く方向へ移動することによってカバー部材第1位置P1へ移動する。そして、この移動によって、ドア6の降下及びロックを行える状態となる。ドア間隙カバー部材18が、このように移動可能であることを、図2には両頭矢印20で表してある。
【0023】
ドア間隙カバー部材18を以上に説明したように移動させるために、本発明に係る航空機用ドアアセンブリは、この可動式のドア間隙カバー部材18を移動させるための駆動装置を備えている。図示例では、この駆動装置は、少なくともその一部分がドア構造体の内部に配設されており、また、ドア6のロックとロック解除とを行うためのロック装置に作用的に連結されている。ロック装置はロック機構を備えており、図1及び図2には、ロック機構のシャフト22が示されている。ロック装置に作用的に連結されているこの駆動装置は、ドア6の昇動ないしロック解除が行われる前に(またはドア6の昇動ないしロック解除が行われているときに)ドア間隙カバー部材18をカバー部材第2位置P1へ移動させる。また、この駆動装置は、ドア6のロックが行われた後に(またはドア6のロックが行われているときに)可動式のドア間隙カバー部材18をカバー部材第1位置P1へ移動させる。
【0024】
このように、ロック機構のシャフト22に作用的に連結してあるため、ドア間隙カバー部材18を移動させるための専用の駆動装置を別設ないし付加することが不要となっている。即ち、ここでは、ロック装置の一部分にドア間隙カバー部材18を駆動する機能を担わせて、複数の機能を好適に提供し得るものとしている。また、このように構成した本発明に係るシステムは、僅かなコストで、後付けによって既存のドア構造体に装備することも可能である。更に、以上のように作用的に連結することによって、ドアの昇動/ロック解除の動作、並びに、降下/ロックの動作に対して、ドア間隙カバー部材18の移動を確実に同期させることができる。そのため、ドア6の昇動/ロック解除が行われるときに、ドア間隙カバー部材18の上縁部18aがドア枠4や機体2に衝突することがなく、なぜならば、ドア6の昇動/ロック解除が行われる前に、または、ドア6の昇動/ロック解除が行われているときに、適切なタイミングでドア間隙カバー部材18を揺動させて、このカバー部材第2位置P2へ移動させることができるからである。従って、ドア間隙カバー部材18の駆動を、ロック装置の駆動に従動するように制御することができ、即ち、ドア間隙カバー部材18の駆動を、ロック装置の駆動に同期させ、また、ドアの昇動/降下及びロック/ロック解除の動作に同期させることが可能となっている。
【0025】
更に、以上のようにして駆動装置をロック装置に作用的に連結することで、ドアの昇動ないしロック解除が行われている最中に、ドア間隙カバー部材18をカバー部材第2位置P2へ移動させるようにすることも可能である(上の説明を参照されたい)。
【0026】
駆動装置は、ドア間隙カバー部材18と係合する少なくとも1つの駆動部材を備えており、その駆動部材によってドア間隙カバー部材18を移動させるものである。図示した実施の形態においては、少なくとも1つの駆動部材は、揺動レバー24として構成されており、また、可動式のドア間隙カバー部材18は、図1及び図2から明らかなように、揺動軸心Aを中心として、外板8の外側面に対して相対的に揺動するフラップ状の部材として構成されている。この揺動軸心Aは、ドア間隙カバー部材18のドア間隙16とは反対側の端縁の近傍の、ドア構造体の内部に位置しており、また、外板8の内側面の近傍に位置している。図示例において、揺動軸心Aは、揺動レバー24が固定結合されたシャフト22の回転軸心によって画成されている。従って、図示例では、ロック装置の一部分が、同時に駆動装置の一部分を構成している。
【0027】
特に図1及び図2から明らかなように、揺動レバー24は階段状に屈曲しており、図1に示した状態にあるときには、揺動レバー第1部分24aが外板8の内側面に沿って延在している。この揺動レバー第1部分24aに連なる揺動レバー第2部分24bは、図1において左方へ屈曲して、ドア間隙カバー部材18へ向かって延在しており、また、外板8に形成されている貫通開口26の中を通ってこの外板8を貫通している。揺動レバー第2部分24bのうちの、外板8から外方へ突出している部分は、可動式のドア間隙カバー部材18に至るまで延在している。それゆえ、換言するならば、駆動部材は、ドア6の内面側から、外板8に形成されている貫通開口26の中を通ってこの外板8を貫通し、可動式のドア間隙カバー部材18へと延在している。
【0028】
揺動レバー第2部分24bに連なる揺動レバー第3部分24cは、図1において右方上方へ屈曲して、外板8の外側面に略々沿った方向に、また、ドア間隙カバー部材18の下面に沿って延在して、ドア間隙カバー部材18の上端縁18aのすぐ近くにまで達しており、ただし、ドア間隙カバー部材18の上縁近傍領域18bに至ってはおらず、即ち、上縁近傍部分18bには揺動レバーが存在していない。以上の形状に形成されている揺動レバー24は、その揺動レバー第2部分24b及び揺動レバー第3部分24cの近傍部分において、ドア間隙カバー部材18に固定結合されている。揺動レバー24は、同時に、ドア間隙カバー部材18を支持する支持構造体を構成している。揺動レバー24及びドア間隙カバー部材18は、それらの全体を1個のユニットとして構成してもよく(一体部品方式)、或いは、2個以上の個別に製作した部品を互いに結合して構成してもよい(個別部品方式)。
【0029】
更に、これも図1から明らかなように、可動式のドア間隙カバー部材18の外側面は、ドア6がロック状態閉扉位置にあるときに、即ち、ドア間隙カバー部材18がカバー部材第1位置P1にあるときに、機体2の理想的な輪郭面、即ち機体2の目標輪郭面と同一面上に位置しており、また、ドア6の輪郭面、即ちドア6の目標輪郭面と同一面上に位置している。これを可能にするために、機体2、即ち機体2のドア枠4には、その外側面に凹部28を形成してあり、ドア6がロック状態閉扉位置にあるときに、即ち、ドア間隙カバー部材18がカバー部材第1位置P1にあるときに、可動式のドア間隙カバー部材18のドア枠4に対向した上縁近傍部分18bが、この凹部28の中に位置することによって、機体2の目標輪郭面と同一面上に位置できるようにしている。
【0030】
図示例では、凹部28は、ドア枠4の内縁の段差部により形成されている。上縁近傍部分18bの下面と、この上縁近傍部分18bに対向している凹部28の底部との間に、中間部材(不図示)を介挿するようにしてもよい。この中間部材は、例えば、ドア間隙カバー部材18に取付けるようにしてもよく、或いは、凹部28に取付けるようにしてもよい。この中間部材は、例えば、スペーサとして機能する部材とすることもでき、また、ドア間隙カバー部材18が機体2、即ち凹部28に当接するときの緩衝材として機能する部材とすることもでき、また更に、ドア間隙カバー部材18の上縁18aと機体2との間、即ち機体2のドア枠4との間の間隙(この間隙は非常に小さなものではあるが)を封止するための封止材として機能する部材とすることもできる。
【0031】
本発明に係る航空機用ドアアセンブリを、図1及び図2に示したドア6の高さ方向に延在する縦切断面で見たとき、この航空機用ドアアセンブリは、ドア間隙16に対向しているドア辺縁近傍領域6bを備えており、このドア辺縁近傍領域6bにおいて、外板8が、ドア6の所定の目標輪郭面よりも、また、ドア6の近傍における航空機機体2の所定の目標輪郭面よりも、ドア内面側へオフセットするように屈曲して形成されている。そして、可動式のドア間隙カバー部材18は、ドア内面側へオフセットしているこのドア辺縁近傍領域6bの上を覆うようにして配設されている。この構成とすることで、ドア辺縁近傍領域6bにおいては、所定の目標輪郭面と、ドア内面側へオフセットした外板8の外側面との間に、比較的扁平であってドア枠4へ近付くにつれて次第に幅が広がる略々くさび形の収容空間30が形成されており、この収容空間30の主たる機能は、可動式のドア間隙カバー部材18を収容することにある。最初のうちは(即ち、ドア辺縁近傍領域6bより手前の部分では)目標輪郭面に沿って延在している外板8が、ドア内面側へオフセットしているドア辺縁近傍領域6bへと移行する移行部分は、図示例では、なだらかな移行部分として形成されている。ただし、この移行部分は、基本的に、急激な移行部分として形成することも可能であり、例えば、この移行部分を、外板8の段差部として形成することも可能である。ただし一般的には、なだらかな移行部分として形成する方が好ましい。
【0032】
ドアの厚さ方向に測った収容空間30の平均高さ寸法Hと、ドア上縁近傍領域6bを除いたドア6の上方部分の厚さDとの比H/Dは、1:12〜1:4の範囲内とすることが好ましく、また特に、1:10〜1:6の範囲内としたもの、1:8〜1:5の範囲内としたもの、それに、1:6〜1:4の範囲内としたものがある。図示例では、この比H/Dを約1:8.5としている。
【0033】
収容空間30は、基本的に、図1に示した状態にあるときに、この収容空間30の略々全体が可動式のドア間隙カバー部材18によって占められるように形成してもよいが、ただし、可動式のドア間隙カバー部材18がカバー部材第1位置P1にあるときに、ドア間隙カバー部材18の内側面と、ドア内面側へオフセットしているドア辺縁近傍領域6bにおける外板8の外側面との間に、間隙30aが残存するように形成することが好ましい。図示例では、この間隙30aの中を揺動レバー第2部分24bの一部分並びに揺動レバー第3部分24cの一部分が延在している。この構成とすることで、揺動レバー24に上で説明した支持機能を担わせつつ、揺動レバー24がその中を延在する貫通開口26を小さく形成することが可能となっている。
【0034】
図1及び図2に示したように、収容空間30の全体のうちのくさび形に尖っている側の部分領域である下方部分領域には(即ち、可動式のドア間隙カバー部材18の全体のうちのドア6に対向している部分領域である下縁近傍領域18cと、外板8の全体のうちのこのドア間隙カバー部材18の下縁近傍領域18cに隣接している部分領域との間の領域には)、断面形状がくさび形のライニング部材32が配設されており、このライニング部材32によって収容空間30の当該部分領域(下方部分領域)が塞がれている。そして、これによって、ドア6の当該箇所における輪郭面が、所定の目標輪郭面となるようにしてある。また、それと共に、ドア間隙カバー部材18は、図1に示した第1カバー部材位置P1にあるときに、その下縁近傍領域18cがライニング部材32によって整流されて、空力学的に好ましい形状を呈するものとなっている。ライニング部材32は、ドア間隙カバー部材18に対向している上縁近傍領域32aの一部分が、ドア間隙カバー部材18の下側を延在している形状とするのもよい。そうすれば、そのライニング部材32が、ドア間隙カバー部材18の下縁近傍領域18cがその上に載置される載置面としての機能、及び/または、ドア間隙カバー部材18の下縁近傍領域18cを封止する封止部材としての機能を併せ持つようになる。
【0035】
図3は、図1及び図2に示した本発明に係る航空機用ドアアセンブリの模式的平面図であり、図1に示した矢印IIIの方向から見た図であって、本発明の第1の実施の形態に係る航空機用ドアアセンブリの細部構造を示した図である。その細部構造として、図3には例えば、2つの貫通開口26が示されており、それら貫通開口26は、ドア6の幅方向に互いに離隔しており、それら貫通開口26の各々の中を、駆動装置の揺動レバー24が1本ずつ延在している。従って、駆動装置は、ドア6の幅方向に互いに離隔した少なくとも2本の揺動レバー24を備えたものとして、それら揺動レバー24が、揺動レバーとしての本来の機能を果たすと同時に、可動式のドア間隙カバー部材18の支持構造体ないし補強構造体としても機能するものとすることが好ましい。2本の揺動レバー24は、それらに共通する1本のシャフト22(図4を併せて参照のこと)によって互いに連結されている。3本以上の揺動レバー24を備えるようにしてもよく、この揺動レバー24の本数は、例えばドアの幅寸法などに応じて適宜定めるようにすればよい。
【0036】
揺動レバー24の各々は、既述のごとく、外板8に形成されている貫通開口26の中を通って、外板8を貫通して延在しており、そのため、この航空機用ドアアセンブリは、貫通開口26をドア6の外面側及び/または内面側に対して封止するための封止装置を備えている。周知のごとく、予圧キャビンを備えた航空機は、飛行中に、また特に高々度の飛行中に、その予圧キャビン内の圧力が機外の大気圧よりも高圧となっている。それゆえ、予圧キャビン内の圧力が失われるのを防止するために、また、貫通開口26において不快な騒音が発生するのを防止するために、上述した封止装置を備えているのである。本発明の様々な実施の形態のうちの少なくとも1つの実施の形態では、この封止装置を、貫通開口26に直接装着するようにした装置としているが、ただし、図1〜図3に示した実施の形態では、それとは異なった方式の装置とすることが望ましい。
【0037】
これについて、図4を参照して説明する。図4は、図1〜図3に示した本発明に係る航空機用ドアアセンブリの上方部分の模式的斜視図であり、図1の矢印IIIから見た図である。
【0038】
図4から明らかなように、揺動レバー24を備えた駆動装置は、その少なくとも一部分が、ドア構造体の内部に設けられた圧力封止チャンバ34の中に収容されるようにしてあり、この圧力封止チャンバ34は、少なくともドアの内面側に対して封止されており、それによって予圧キャビンの内部に対して封止されている。特に、図示例においては、揺動レバー24の各々に対して1つずつの圧力封止チャンバ34が設けられており、その圧力封止チャンバ34の中に、少なくとも、揺動レバー第1部分24aと、揺動レバー第2部分24bの一部分とが収容されている。圧力封止チャンバ34は、外板8と、ドア構造体の互いに隣接した2つのリブ部分36と、閉塞部材38とで画成されており、この閉塞部材38は、2つのリブ部分36のドア内面側を閉塞している。揺動レバー第2部分24bの一部分がその中を貫通して外部へ延出することでドア間隙カバー部材18まで延在している貫通開口26は、この圧力封止チャンバ34の中に開口している。複数の揺動レバー24に共通する揺動軸心Aを画成しているシャフト22は、互いに隣接した2つのリブ部分36の夫々に形成されている2つの開口36aに嵌合されて軸支されている。このシャフト22の、図4において右側の端部は、圧力封止チャンバ34の外へ延出して、他方の(隣の)揺動レバー24まで延在しており、そして、その他方の揺動レバー24を収容している圧力封止チャンバ34(不図示)の中へ延入している。シャフト22はそこでも同様にして軸支されている。シャフト22の軸受部は、即ち、シャフト22を軸支するためにリブ部分36に形成されている開口36aは、封止リングによって、圧力封止チャンバの外部に対して(即ち、図示例ではキャビン内に対して)封止されている。既述のごとく、貫通開口26の各々は圧力封止チャンバ34の中に開口しているため、貫通開口26を圧力封止するためのその他の圧力封止装置は基本的に不要であるが、ただし、その他の圧力封止装置を併用するようにしてもよい。
【0039】
本発明の1つの実施の形態として、シャフト22の少なくとも一方の端部を、圧力封止チャンバ34の内部に完全に収容された軸支装置によって軸支するように構成したものがある。その軸支装置は、例えば、リブ部分36の内側面に取付けるようにしてもよく、或いは、リブ部分36に形成した陥凹部または膨出部の内部に嵌装するようにしてもよい。このような構成としたならば、当該箇所には、圧力封止チャンバ34の外部に通じる開口が存在しなくなるため、当該箇所を圧力封止せずに済む。
【0040】
本発明に係る航空機用ドアアセンブリの可動式のドア間隙カバー部材18は、いかなる作動位置にあるときにも、その周囲の気圧が、機体2の外側の、即ち、ドア6の外側の、外部大気圧と等しくなっている。そのため、図示例のように予圧キャビンを備えた機体2であっても、可動式のドア間隙カバー部材18には、キャビン内の圧力は全く作用せず、その全ての表面に外部大気圧が作用している。それゆえ、このドア間隙カバー部材18には、比較的小さな応力しか作用せず、その結果、このドア間隙カバー部材18は、非常に軽量でありながら安定性と大きな強度を備えた部材として構成し得るものとなっている。
【0041】
図5に示したのは、本発明の第2の実施の形態に係る航空機用ドアアセンブリの模式的縦断面図である。ドア6の構造、並びに、可動式のドア間隙カバー部材18の構造は、そのかなりの部分が第1の実施の形態のものと同一となっている。ただし、第1の実施の形態とは異なり、この第2の実施の形態では、揺動レバーの揺動軸心を画成しているロック装置のシャフトに連結され、外板8を貫通して延出している揺動レバーを備えていない。その代わりに、この図5に示した構成例では、ドア6の外側で、外板8の外側面の上方部分に、独立した揺動軸心Aが配置されている。可動式のドア間隙カバー部材18は、この揺動軸心Aを中心として、カバー部材第1位置とカバー部材第2位置との間で揺動可能となっている。
【0042】
更に、図5の構成例では、駆動装置は、ドア6の外板8の外側面とこの外板8に対向している可動式のドア間隙カバー部材18の内側面との間に存在する領域に(即ち、収容空間30の中に)配設されている。この駆動装置は、ドア間隙カバー部材18を移動させるための少なくとも1個のアクチュエータ40を備えており、このアクチュエータ40はドア6と(図示例ではドア6の外板8と)係合すると共に、ドア間隙カバー部材18と係合している。このアクチュエータ40は、例えば、機械式、磁気式、電気式、電気機械式、電磁式、電歪式(例えば圧電式)、磁歪式、油圧式、または空圧式などの、様々な形式の位置制御機構とすることができ、或いは更に、以上に列挙した様々な形式の位置制御機構を組合せた形式の機構とすることもできる。アクチュエータ40は、必要とあらば、リンク機構に連結して用いるようにしてもよい。少なくとも1つの実施の形態においては、アクチュエータ40を、非接触式で作動し得るものとしている。
【0043】
図5に示した実施の形態の利点は、駆動装置を作動させるために、外板8に貫通開口を形成する必要がなく、従って、貫通開口に対応した封止装置を装備する必要もないことにある。通常は、外板8を貫通させる必要があるのは、アクチュエータ40及び/またはドア間隙カバー部材18に接続するための、電源配線、及び/または、制御配線、及び/または、センサ用配線だけである。外板8を貫通させるこれら配線は、可動部材を含まないため、封止をより容易に行うことができる。
【0044】
既述のごとく、図5の実施の形態においては、駆動装置、即ち駆動装置のアクチュエータ40が、ロック装置に(即ち、ロック装置のロック機構に)機械的に連結されておらず、従って、ドア間隙カバー部材18の移動をドア6の昇動/ロック解除動作並びに降下/ロック動作に同期させることで、ドア間隙カバー部材18の上縁部18aが機体2に、即ちドア枠4に衝突するのを防止するための、機械的な連結構造が装備されていない。このため、図5の航空機用ドアアセンブリのアクチュエータ40は、これを制御装置(不図示)に接続し、この制御装置を更に、ロック装置及び/または適当なセンサに接続して、そのセンサから、ドア6の作動状態並びにドア6のロック装置の作動状態を表す、様々なドア制御信号が供給されるようにしている。制御装置は、それらドア制御信号に基づいて、適切なアクチュエータ制御信号を送出する。このアクチュエータ制御信号によって、アクチュエータ40の作動が、またひいては、ドア間隙カバー部材18の作動が、ロック装置の作動に従動するように制御されて、ロック装置の動作及びドア6の昇降動作に同期するようにしている。
【0045】
制御装置は、その全体をドア6の内部に収容することによって、ドア6に完全に一体化するようにしてもよく、或いは、例えばコネクタなどで接続することによって、その一部分またはその全体をドア6の外部に配設するようにしてもよい。ドア6の外部に配設する場合には、例えば、ドア枠の領域に配設するようにしてもよく、或いは、機体2の更にその他の適当な箇所に配設するようにしてもよい。
【0046】
また更に、ドア間隙カバー部材18に、及び/または、ドア間隙カバー部材18の駆動装置にセンサを装備して、そのようなセンサが、ドア間隙カバー部材18の作動状態、または、ドア間隙カバー部材18のアクチュエータ40の作動状態を表す状態信号を、制御装置へ供給するようにするのもよい。制御装置は、少なくとも1つの出力線を備えたものとし、その出力線を介して、状態信号、及び/または、ドア制御信号が、表示装置または操作装置へ供給されるようにするのもよく、それら表示装置または操作装置は、例えば、ドア6、ドア枠4、機体領域、または航空機の操縦席などに装備することができる。
【0047】
図5に示した実施の形態は、特に、ドア制御(ロック解除、昇動、開扉、閉扉、降下、及びロックの制御)や、ドア間隙カバー部材18の駆動装置の制御、それに、それら構成要素に対する調節を、電気的ないしは電子的に行うように構成されている航空機用ドアアセンブリに用いるのに適したものである。
【0048】
本発明は、以上に説明した実施の形態のみに限定されない。本発明に係る航空機用ドアアセンブリは、特許請求の範囲に記載した保護範囲の枠内で、以上に説明した実施の形態以外の様々な形態で実施し得るものである。その具体例を挙げるならば、例えば、可動式のドア間隙カバー部材18を、個別に形成されて列設された複数の可動式のドア間隙カバー部材から成るものとし、カバー部材第1位置P1にあるときに、それら複数のドア間隙カバー部材が隣り合うものどうしで重なり部を持つような構成とすることも可能である。また、ドア間隙カバー部材18の揺動軸心Aの位置を、外板8の平面内とすることも可能である。そのようにする場合には、例えば、その揺動軸心Aが、外板8の対応して形成された切欠部の中に位置するようにすればよい。
【0049】
上で説明した好適な実施の形態における可動式のドア間隙カバー部材18は、移動に際して単に回転するように構成したものであるが、本発明を実施する上では、ドア間隙カバー部材18を、移動に際して平行移動するように構成することもでき、或いはまた、移動に際して回転と平行移動とを組合せた動きをするように構成することもできる。それらの構成とする場合には、その移動の形態に応じた適宜の機構を装備するようにすればよい。また、ドアの昇降装置とドアのロック装置とが互いに連結されていない場合には、ドア間隙カバー部材18を、ドアの昇降装置に作用的に連結するようにしてもよい。
【0050】
特許請求の範囲の記載、明細書の記載、並びに、図面の記載中に使用している参照符号は、単に本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明の権利範囲を規定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る航空機用ドアアセンブリの模式的縦断面図であり、航空機用ドアアセンブリが第1状態にあるところを示した図である。
【図2】図1に示した本発明に係る航空機用ドアアセンブリの模式的縦断面図であり、航空機用ドアアセンブリが第2状態にあるところを示した図である。
【図3】図1及び図2に示した本発明に係る航空機用ドアアセンブリの模式的平面図であり、図1に示した矢印IIIの方向から見た図である。
【図4】図1〜図3に示した本発明に係る航空機用ドアアセンブリの上方部分の模式的斜視図であり、図1の矢印IIIから見た図であり、更なる細部構造まで示した図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る航空機用ドアアセンブリの模式的縦断面図である。
【図6】従来の航空機用ドアアセンブリの模式的縦断面図である。
【符号の説明】
【0052】
2 機体
4 ドア枠
6 ドア
6a ドア上縁部
6b 内面側へオフセットしたドア辺縁近傍領域
8 ドアの外板
10 周縁封止材
12 当接面
14 昇動方向
16 ドア間隙
18 可動式のドア間隙カバー部材
18a ドア間隙カバー部材の上縁部
18b ドア間隙カバー部材の上縁近傍領域
18c ドア間隙カバー部材の下縁近傍領域
20 ドア間隙カバー部材の移動方向
22 ドアロック装置のシャフト
24 揺動レバー
24a 揺動レバー第1部分
24b 揺動レバー第2部分
24c 揺動レバー第3部分
26 ドアの外板に形成された貫通開口
28 凹部
30 収容空間
30a 間隙
32 くさび形のライニング部材
34 圧力封止チャンバ
36 リブ部分
36a シャフトを軸支するための開口
38 閉塞部材
40 アクチュエータ
200 機体
202 ドア枠
204 航空機用ドア
205 昇動方向
206 外板
208 ドア間隙
210 ドア上縁部
212 ドア間隙カバー部材
214 空力学的に望ましくない段差部
216 ドア間隙カバー部材の辺縁部
A シャフト22の回転軸心、且つ、揺動レバーの揺動軸心
D ドアの厚さ
収容空間の平均内法高さ寸法
ドア間隙の高さ寸法
L ドアの高さ方向に測ったドア間隙カバー部材の長さ寸法
P1 カバー部材第1位置
P2 カバー部材第2位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア枠(4)により囲繞されたドア開口を有する機体(2)を備えた航空機の航空機用ドアアセンブリであって、前記ドア枠(4)に嵌合可能な例えば乗客用ドアなどの航空機用ドア(6)を備えた航空機用ドアアセンブリにおいて、
前記航空機用ドア(6)は、外板(8)を有するドア構成体を備えており、
前記航空機用ドア(6)は、ロック状態閉扉位置から昇動することによってロック解除状態閉扉位置へ移動可能であり、このロック解除状態閉扉位置から揺動することによって開扉位置へ移動可能であり、この開扉位置にあるときに、前記航空機用ドア(6)は、前記ドア枠(4)の外部にあって前記機体(2)の外側に位置しており、
前記航空機用ドア(6)は、前記開扉位置から揺動することによって前記ロック解除状態閉扉位置へ復帰移動可能であり、このロック解除状態閉扉位置から降下することによって前記ロック状態閉扉位置へ復帰移動可能であり、
前記航空機用ドア(6)が前記ロック状態閉扉位置にあるときに、前記ドア枠(4)とドア辺縁部(6a)との間にドア間隙(16)が存在しており、前記ドア間隙(16)は前記航空機用ドア(6)を昇降可能とするために必要とされる余裕空間を提供しており、
前記航空機用ドア(6)は、その外側面の、前記ドア枠(4)に対向しているドア辺縁近傍領域(6b)に、ドア間隙カバー部材(18)を備えており、このドア間隙カバー部材(18)は、前記航空機用ドア(6)が前記ロック状態閉扉位置にあるときに、前記ドア間隙(16)の上から前記航空機機体(2)の外側面の上にまで亘って延在して前記ドア間隙(16)を覆っており、
前記ドア間隙カバー部材(18)は、前記外板(8)の外側面に対して相対的に移動可能な状態(20)で前記ドア構造体に取付けられている、
ことを特徴とする航空機用ドアアセンブリ。
【請求項2】
前記可動式のドア間隙カバー部材(18)がカバー部材第1位置(P1)にあり、前記ドア(6)が前記ロック状態閉扉位置にある状態から、前記可動式のドア間隙カバー部材(18)は、前記外板(8)の外側面から離れる方向へ移動することによってカバー部材第2位置(P2)へ移動し、それによって、前記ドア(6)の昇動及びロック解除を行える状態となり、
前記可動式のドア間隙カバー部材(18)が前記カバー部材第2位置(P2)にあり、前記ドア(6)が前記ロック解除状態閉扉位置にある状態から、前記可動式のドア間隙カバー部材(18)は、前記外板(8)の外側面へ近付く方向へ移動することによって前記カバー部材第1位置(P1)へ移動し、それによって、前記ドア(6)の降下及びロックを行える状態となる、
ことを特徴とする請求項1記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項3】
前記ドア間隙カバー部材(18)は、板状の部材として構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項4】
前記可動式のドア間隙カバー部材(18)を移動させるための駆動装置(22;24;40)を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項5】
前記駆動装置(40)は、前記ドア(6)の前記外板(8)の外側面とこの外板(8)に対向している前記可動式のドア間隙カバー部材(18)の内側面との間に存在する収容空間(30;30a)を画成している領域に配設されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項6】
前記駆動装置(22;24)は、少なくともその一部分が前記ドア構造体の内部に配設されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項7】
前記駆動装置(24)は、前記ドア(6)のロックとロック解除とを行うためのロック装置(22)に作用的に連結されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項8】
前記可動式のドア間隙カバー部材(18)は、前記ロック装置(22)に作用的に連結された前記駆動装置(24)によって、
前記ドア(6)のロック解除が行われる前に、または、前記ドア(6)のロック解除が行われているときに、前記カバー部材第2位置(P2)へ移動され、
前記ドア(6)のロックが行われているときに、または、前記ドア(6)のロックが行われた後に、前記ドア間隙第1位置(P1)へ移動される、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項9】
前記ロック装置の一部分(22)が前記駆動装置の少なくとも一部分を構成していることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項10】
前記駆動装置は、前記可動式のドア間隙カバー部材(18)と係合する駆動部材(24;40)を備えており、この駆動部材によって前記可動式のドア間隙カバー部材(18)を移動させるものであることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項11】
前記駆動部材(24)は、前記可動式のドア間隙カバー部材(18)を支持または補強する構造体を構成していることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項12】
前記可動式のドア間隙カバー部材(18)は、揺動軸心(A)を中心として、前記外板(8)の外側面に対して相対的に揺動するフラップ状の部材として構成され、前記駆動部材は少なくとも1つの駆動レバー(24)を備えることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項13】
前記駆動部材(24)は、前記ドア(6)の内面側から、前記外板(8)に形成されている貫通開口(26)の中を通って前記外板(8)を貫通し、前記可動式のドア間隙カバー部材(18)へと延在していることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項14】
前記貫通開口(26)を前記ドア(6)の内面側及び/または外面側に対して封止するための封止装置(34)を備えていることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項15】
前記駆動装置(24)は、少なくともその一部分(24a、24b)が、前記ドア構造体の内部に設けられた圧力封止チャンバ(34)の中に収容されており、該圧力封止チャンバ(34)は、少なくとも前記ドア(6)の内面側に対して封止されていることを特徴とする請求項1乃至14の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項16】
前記駆動装置を制御するための、前記駆動装置に接続された制御装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至15の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項17】
前記可動式のドア間隙カバー部材(18)の外側面は、前記ドア(6)が前記ロック状態閉扉位置にあるときに、前記機体(2)の輪郭面、並びに、前記ドア(2)の輪郭面と同一面上に移動可能であることを特徴とする請求項1乃至16の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項18】
前記航空機機体(2;4)は外側面に陥凹部(30)を備えており、前記ドア(6)が前記ロック状態閉扉位置にあるときに、前記ドア枠(6)に対向している前記可動式のドア間隙カバー部材(18)の辺縁近傍領域(18b)が、前記陥凹部(30)の中に位置可能で、前記機体(2)の前記目標輪郭面と同一面上になるようにしてあることを特徴とする請求項1乃至17の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項19】
前記航空機用ドアアセンブリは、前記ドア(6)の高さ方向に延在する縦切断面で見たとき、前記ドア間隙(16)に対向しているドア辺縁近傍領域(6b)を備えており、このドア辺縁近傍領域(6b)において、前記外板(8)が、前記ドア(6)の所定の目標輪郭面(KS)よりも、また、前記ドア(6)の近傍における前記航空機機体(2)の所定の目標輪郭面よりも、ドア内面側へオフセットしており、
前記可動式のドア間隙カバー部材(18)は、ドア内面側へオフセットしている前記ドア辺縁近傍領域(6b)の上を覆うようにして配設されている、
ことを特徴とする請求項1乃至18の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項20】
前記可動式のドア間隙カバー部材(18)の内側面と、ドア内面側へオフセットしている前記ドア辺縁近傍領域(6a)における前記外板(8)の外側面との間に、間隙(30a)が存在していることを特徴とする請求項1乃至19の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項21】
前記可動式のドア間隙カバー部材(18)の全体のうちの前記ドア(6)に対向している部分領域である辺縁近傍領域(18c)と、前記ドア(6)の前記外板(8)の全体のうちのこの辺縁近傍領域(18c)に隣接している部分領域との間に存在している中空空間(30)に、ライニング部材(32)が配設されており、該ライニング部材(32)が前記中空空間(30)内で、前記ドア(6)の前記所定の目標輪郭面を画成することを特徴とする請求項1乃至20の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項22】
前記可動式のドア間隙カバー部材(18)は、個別に形成されて列設された複数の可動式のドア間隙カバー部材から成ることを特徴とする請求項1乃至21の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリ。
【請求項23】
例えば予圧キャビンなどを備えた航空機機体において、請求項1乃至22の何れか1項記載の航空機用ドアアセンブリを備えたことを特徴とする航空機機体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−519854(P2009−519854A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546095(P2008−546095)
【出願日】平成18年12月2日(2006.12.2)
【国際出願番号】PCT/DE2006/002143
【国際公開番号】WO2007/076755
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(500228126)ユーロコプター・ドイッチェランド・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (4)
【Fターム(参考)】