説明

航空無線通信のコールサイン監視システム及びその方法

【課題】 管制官が管制対象の航空機との交信において、その航空機の応答を管制情報と照合して、応答元のコールサインを監視表示して、管制官が交信相手のコールサインを誤認することを防止する。
【解決手段】航空機に搭載する機上装置1、管制施設に設置される地上装置2と、地上装置2に航空機管制情報を送付する地上後方装置3と、を備え、地上装置2は、地上通信装置21と、データ照合装置22と、地上音声入出力装置23と、情報表示装置24とを備え、機上装置1は、パイロットの音声を入出力するヘッドセットなどの機上音声入出力装置11と、VDLデジタルリンクの時分割多重方式で地上装置2と通信する機上通信装置12と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管制官とパイロットの間で交信する際の呼びかけに用いるコールサインを監視することに関し、特に、時分割多重方式のVHFデジタルリンク モード3(VDL MODE3)無線回線における通報のデジタル音声信号に航空機を識別するローカルユーザIDを付加し、管制情報を参照して該ローカルユーザIDに対応するコールサインを監視表示する航空無線通信のコールサイン監視システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の航空無線通信システムは、アナログ無線通信であり音声のみを送受信している。管制官やパイロットが交信する相手に呼びかける際に、パイロットに対してはコールサインを、管制官に対しては管制施設の略称を、用いて呼びかけ、相手がコールサインあるいは略称で応答することによって相手を認識する。従って、交信毎にパイロットや管制官はコールサインや略称を発話することになる。
【0003】
航空機対地上システムの通信をアナログ無線通信から、デジタル無線通信であるVHF デジタルリンクモード3(VDL MODE3)に置き換える動きがある。VDL MODE3は、国際民間航空機関が規格を定めている時分割多重のデジタル無線通信方式であり、1つの周波数を3または4の時間スロットに分割することにより、データとデジタル音声を同時に送受信することができる。近年、この時分割多重のデジタル無線通信方式導入が進展している。
【0004】
音声通信及びデータリンク通信の両通信手段に対応する管制用通信システムがある。この方式では、通信切り替え部を設けて、音声通信送受信部及びデータリンク通信送受信部の受信信号から、音声通信かあるいはデータ通信かを認識し、切り替えて使用する。この例では、データと音声を同時に使うことができないので、音声に識別符号を付して通信することには利用できない(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、被管制対象監視システムにVHF時分割多重通信方式で測位データを送信するシステムがある。航空機から測位データを管制施設に送信するため、自身に割り当てられた時間スロットに自身の測位データを送信し、空いている時間スロットを他の航空機の測位データの中継に利用する。この方式では、時間スロットに特定の航空機を割り当てることにより、航空機の識別コードを送受することが不要になる。この例は、測位データのように、自動的なデータ通信には利用できる。しかし、管制官やパイロットが相互に相手を認識しながら会話で通信する管制通信の場合、呼びかけや応答によって相手を認識することが必要な手順で、コールサインを省略することはできない(例えば、特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−182200号公報(カラム番号0024−0026)
【特許文献2】特開平8−171412号公報(カラム番号0045−0048)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来方式の航空機を含む移動体に対する無線回線による管制通信では、一方的にデータを伝達するのでなく、相互に相手を認識して会話で交信する。そのため、通信のたびに自分の略称や相手のコールサインを発話する。そこで、次のような問題が生じる。
【0008】
第1の問題点は、パイロットや管制官が相手のコールサインを正しく発話しているか否か、また正しい相手が応答をしているか否かを確認する手段がないことである。管制官やパイロットがコールサインによる呼びかけを間違えた場合、また、コールサインを聞き間違えた場合、発話をチェックすることが難しい。
【0009】
第2の問題点は、管制官やパイロットがコールサインを言い間違える可能性があることである。その理由は、パイロットや管制官が意図する相手のコールサインでなく、間違ったコールサインを発話していることに気づかないミスがある。このケアレスミスは、人間が行うことをどんなに注意深く気をつけても、間違える可能性を排除できない。殊に、管制官は、複数の航空機のコールサインを相手航空機によって使い分けるし、またコールサイン自体が似ているコードであるためである。
【0010】
第3の問題点は、コールサインを聞き間違える可能性があることである。無線通信における空中伝播状態が悪いと聞き取りづらいことがあるためである。また、音声によるコールサイン伝達の場合、発話者のマイクスイッチの操作タイミングによっては、音声が途中で途切れる場合があるためである。
【0011】
以上の問題を解決する航空無線通信のコールサイン監視システム及びその方法を提供する。管制通信にVHF デジタルリンクモード3(VDL MODE3)を採用すると、1つの時間スロットにデータとデジタル音声を同時に載せて送受信することができる。管制施設の地上装置は航空機の機上装置から音声をデジタル音声信号として受け取り、このデジタル音声信号に付された発信元の識別番号をデータ照合装置で、航空機のコールサインと照合し、発信元の識別番号に対応するコールサインを情報表示装置に表示する。つまり、音声のコールサインを耳で識別するのでなく、デジタル音声信号に付された識別符号でもって、コールサインと対応を取り、そのコールサインを管制官に表示装置に提示する。管制官は、自身の呼びかけた航空機のコールサインが正しく応答されたか否かを視認し、監視することができる。
【0012】
航空機のパイロットは運航中に様々な管制官とコンタクトをとり、管制指示を請け、報告を行う。従って、パイロットは管制を受ける相手の施設によって、無線周波数を変える、あるいは時間スロットの割り当てを変える、識別番号を変えるなど、して通信が行われる。そこで、運航中の航空機を識別するのにローカルユーザIDがある。これは、VDL MODE3規格の用語で、管制下にある航空機に対して、一時的に割り当てる識別番号で国際規約に取り決められたものである。
【0013】
また、航空機を個別に識別する航空機アドレスがある。これは、ICAOアドレスと呼ばれている24ビットの識別コードで、航空機毎に固定的に割り当てられ、国際的に取り決められたものである。
【0014】
運行中の航空機は、通常、便名で呼ばれる。これをコールサインといい、飛行計画に記載されている。管制官やパイロットは、相手航空機を呼ぶときや自分の識別するときに用いる。
【0015】
管制情報は、航空機が運行する際の飛行計画情報に航空機識別である航空機アドレスを追加記載した情報で、この発明のコールサイン監視システム及びその方法に用い、航空機管制情報管理装置が保持する。
【0016】
パイロットの呼びかけの音声をデジタル音声信号に変換し、該信号にローカルユーザIDを付して送信する。管制施設の通信装置は、航空機から受信したリンク確立要求から航空機アドレスを検出する。管制施設の通信装置は新たなローカルユーザIDを当てる通信リンク確立応答を返信する。更に、航空機アドレスを航空機管制情報装置に送り、管制情報を参照して、航空機アドレスとコールサインとローカルユーザアドレスIDと、を対応付けて保持する。
【0017】
一方、航空機は通信リンク確立応答によって割り当てられたローカルユーザIDを保持し、管制施設に対する呼びかけ、あるいは応答のデジタル音声信号にローカルユーザIDを付して、管制施設に送信する。管制施設は、デジタル音声信号に該ローカルユーザIDを検出して、対応するコールサインを管制情報から得て、それをコールサイン表示装置に監視表示する。このプロセスを実行することにより、応答する航空機のコールサインを音声で確認するだけでなく、応答に付されたローカルユーザIDからコールサインを引き出し、表示装置で視認することができる。従って、万一、管制官が意図していない航空機に呼び掛けた、あるいは通報を受けたとき、そのコールサインを目で確かめることができる。
【0018】
この発明の目的は、管制官がローカルユーザIDを割り当てた航空機との交信において、その航空機のコールサインを管制情報と照合して表示することにより、管制官が交信相手のコールサインを視認することによってケアレスミスを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そのため、この発明の、航空管制施設の地上装置と、航空機搭載の機上装置と、の間で、VHFデジタルリンク モード3(VDL MODE3)無線回線で通信リンクを確立して交信する際にパイロット通報の航空機コールサインを監視するシステムにあって、前記無線回線の通信リンク未確立のとき、リンク確立要求に航空機アドレスを付し、前記無線回線のリンク確立済みのとき、通報のデジタル音声信号にローカルユーザIDを付して、パイロットから管制官への通報に用いられる機上装置と、管制官とパイロットとの間で交わされる管制通信に用いる航空機の前記航空機アドレス及びそれの飛行計画情報を入手して、航空機アドレスとローカルユーザIDとコールサインを対応付ける管制情報を保持する地上後方装置と、地上の管制施設に設けられ、前記無線回線におけるタイミング同期する基準信号の所定周期の発信と、前記通報のデジタル音声信号の前記ローカルユーザIDに基づいて、通報元の航空機コールサインを前記管制情報から入手して監視表示する地上装置と、を備える。
【0020】
更に、前記機上装置は、パイロットに対する音声を入出力する機上音声入出力装置と、前記通信リンク未確立のとき、リンク確立要求に航空機アドレスを付し、前記通信リンク確立済みであるとき、前記音声のデジタル音声信号に前記ローカルユーザIDを付して前記無線回線に送信する、あるいは前記デジタル音声信号を機上音声入出力装置に音声出力する機上通信装置と、を有する。
【0021】
更に、前記地上後方装置は、運行する航空機の飛行計画情報並びに前記航空機の航空機アドレスを管制施設から入手する航空管制情報供給装置と、前記飛行計画情報並びに前記航空機アドレスに基づいて、前記航空機アドレスと前記コールサインとを対応付ける管制情報を管理し、前記データ照合装置に渡す航空管制情報管理装置と、を有する。
【0022】
更に、前記地上装置は、管制官に対する音声を入出力する地上音声入出力装置と、前記機上装置から受信する前記航空機アドレスを含むリンク確立要求に対して、新たに割り当てるローカルユーザIDを含む通信リンク確立応答を返信し、前記ローカルユーザIDを含む前記デジタル音声信号を受信するとき、前記ローカルユーザIDとそれに対応するコールサインとを対応付け、前記機上通信装置の前記無線回線のタイミング同期する基準信号を所定の周期で発信する地上通信装置と、前記地上通信装置から前記航空機アドレスの通知を受けて、前記航空機アドレスと、それに割り当てたローカルユーザIDと、を対応付け、前記管制情報から前記航空機アドレスに対応するコールサインを検出して航空機アドレスとコールサインを対応付け、前記地上通信装置から前記ローカルユーザIDの通知を受けて前記コールサインを対応付けるデータ照合装置と、前記データ照合装置から通知される前記ローカルユーザIDに対応するコールサインを通報毎に監視表示する情報表示装置と、を有する。
【発明の効果】
【0023】
この発明の第1の効果は、管制官が交信相手を正確に目で認識できることにある。その理由は、表示装置に交信相手のコールサインが表示され、目で確かめることができるため、パイロットがコールサインを言い間違え、あるいは聞き間違え、をチェックできるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。航空無線通信のコールサイン監視表示システムの実施例を示す図1を参照すると、この実施例は、航空機に搭載する機上装置1、管制施設に設置される地上装置2と、地上装置2に航空機管制情報を供給する地上後方装置3と、を備える。
【0025】
機上装置1は、パイロットの音声を入出力するヘッドセットなどの機上音声入出力装置11と、VDLデジタルリンクの時分割多重方式で地上装置2と通信する機上通信装置12と、を含む。
【0026】
地上装置2は、地上通信装置21と、データ照合装置22と、地上音声入出力装置23と、情報表示装置24と、を備えている。
【0027】
地上後方装置3は、航空機の飛行計画及び航空機アドレスを管理する航空管制情報管理装置31と、管制施設から飛行計画及び航空機アドレスを入手し、航空管制情報管理装置31に供給する航空管制情報供給装置32と、を備える。
【0028】
図3を参照すると、機上通信装置12は、VDLデジタルリンクの時分割多重方式でデジタル音声信号を送信するVDL送信部1201と、該信号を受信するVDL受信部1205と、VDL送信部1201及びVDL受信部1205の時分割多重方式におけるタイミング同期を制御するタイミング同期部1207と、タイミング同期のための基準信号をVDL受信部1205から受ける基準信号受信部1206と、を備える。
【0029】
更に、機上通信装置12は、リンク確立未確立のとき、リンク確立要求に航空機アドレスを付加してパイロットの音声入力をデジタル音声信号に変換し、リンク確立済みのとき、ローカルユーザIDを付加して、デジタル音声信号をVDL送信部1201に渡すデジタル音声信号生成部1202と、航空機アドレス付加部1203と、ローカルユーザID付加部1204と、を備える。
【0030】
更に、機上通信装置12は、VDL受信部1205を通じて受信するデジタル音声信号をパイロットのヘッドセットなどの機上音声入出力装置11に出力するデジタル音声信号受信部1208と、地上装置2から送信されるリンク確立応答に含まれるローカルユーザIDを検出するローカルユーザID検出部1209と、該ローカルユーザIDをパイロット応答に付加するために保持するローカルユーザID保持部1210と、ローカルユーザID検出部1209によって、通信リンク確立応答を検知して設定されるリンク確立フラグ1211と、航空機を個別に識別する航空機アドレスを保持する航空機アドレス保持部1212と、を備える。
【0031】
地上装置2は、VDLデジタルリンクを時分割多重方式で管制通信する地上通信部21と、地上通信部21で検出された航空機アドレス及びローカルユーザIDに基づいて、コールサインと照合を取るデータ照合装置22と、地上通信装置21に対する音声入出力するヘッドセットなどの地上音声入出力部23と、照合されたコールサインを出力して監視表示する情報表示装置24と、を備える。
【0032】
図2を参照すると、地上通信装置21は、VDLデジタルリンクを時分割多重方式でVHFを機上通信装置12に送信するVDL送信部2101と、同じく機上通信装置12からVHFを受信するVDL受信部2102と、航空機に搭載されている機上通信装置12に対する時分割多重方式のタイミング同期する基準信号を発信する基準信号発信部2103と、を備える。
【0033】
更に、管制官の地上音声入出力装置23からの音声をデジタル音声信号に変換するデジタル音声信号生成部2104と、リンク確立応答でローカルユーザIDを機上通信装置12に送信するリンク確立応答部2105と、を備える。
【0034】
更に、VDL受信部2102からのデジタル音声信号を管制官のヘッドセットなどの地上音声入出力装置23に出力するデジタル音声受信部2106と、デジタル音声信号から航空機アドレスあるいはローカルユーザIDを検出し、通信リンク未確立であるか、あるいは通信リンク確立済みであるかを検出するローカルユーザID検出部2107と、通信リンク未確立であるとき、割り当てのローカルユーザIDをリンク確立応答部2105に送付するローカルユーザID送付部2108と、通信リンク未確立であるとき、検出された航空機アドレスと割り当てるローカルユーザIDとを対応付けて登録する航空機アドレス登録部2109と、ローカルユーザIDと航空機アドレスとを対応付けるローカルユーザIDー航空機アドレス割り当てテーブル2111と、を備える。
【0035】
更に、デジタル音声信号ヘッダ検出部2107で、ローカルユーザIDを検出したとき、ローカルユーザIDに対応するコールサインを監視するため、ローカルユーザIDー航空機アドレス割り当てテーブル2111から該当の航空機アドレスをデータ照合装置22に送るローカルユーザID及び航空機アドレス送付部2110と、を備える。
【0036】
図4及び図5を参照すると、データ照合装置22は、地上後方装置3から航空機アドレス及び飛行計画情報を入手して、運行する航空機の航空機アドレスとそれのコールサインとを対応付ける航空機アドレス及びコールサイン対応テーブル2203を作成する航空機アドレス及びコールサイン登録部2201と、地上通信装置21で機上通信装置12との通信リンク確立の過程で得られるローカルユーザID−航空機アドレス割り当てテーブル2111から入手して、航空機アドレス及びローカルユーザIDテーブル2202を作成する航空機アドレス及びローカルユーザID登録部2202と、機上通信装置12の通報に含まれるローカルユーザIDを検出して、通報毎に該ローカルユーザIDを入手し、ローカルユーザIDに対応するコールサインを、航空機アドレス及びローカルユーザID対応テーブル22011と航空機アドレス及びコールサイン対応テーブル22021とから導出したローカルユーザID及びコールサイン対応テーブル2203から入手するコールサイン表示部2204と、コールサイン表示部2204は、該コールサインを情報表示装置24に送付する。該コールサインは、情報表示装置24に監視表示される。
【0037】
次に、この航空無線通信のコールサイン監視システムの動作によって、監視表示方法を説明する。図6を参照すると、パイロットから管制官に呼び掛けて、通信リンク確立する場合がある。地上通信装置21と機上通信装置12の間は交信のないとき、基準信号を発信して(ステップ511)、機上通信装置12は該信号を受信して、時分割多重方式のタイミング同期を制御する(ステップ512)。機上通信装置12が地上通信装置21に対して、航空機アドレスを付した通信リンク確立要求をする(ステップ521)。地上通信装置21は、通信リンク確立要求に対して、該航空機にローカルユーザIDを割り当て、通信リンク確立応答によって、該ローカルユーザIDを機上通信装置21に送る(ステップ591)。地上通信装置21は、通信リンク確立要求の航空機アドレス及び割り当てのローカルユーザIDをデータ照合装置22に送り(ステップ592)、保持させる(ステップ594)。機上通信装置12は、ローカルユーザIDを保存してリンク確立済みフラグ1211を設定する。機上通信装置12からの通報には、リンク確立済みフラグ1211が設定されているので、以後のデジタル音声信号にローカルユーザIDを付して地上通信装置21と交信する(ステップ593)。
【0038】
次に、図7を参照すると、地上通信装置21と機上通信装置12との間で、通信リンク確立済みの状態で、管制官がパイロットに呼び掛けるとき(ステップ50)、コールサインが用いられるが、リンク確立済みフラグ1211が設定されているので、呼び掛けにローカルユーザIDが付される(ステップ601)。該呼び掛けを受信した地上通信装置21は、該デジタル音声信号の音声出力を地上音声入出力装置23に送り、検出されるローカルユーザIDをデータ照合装置22の送付する(ステップ602)。データ照合装置22は、ローカルユーザIDを基に、保持しているローカルユーザID及びコールサイン対応テーブル2203を検索して、該当のコールサインを表示する(ステップ603)。この例示は、管制官がパイロットに呼び掛けたが、パイロットが管制官に呼び掛けた場合は、ステップ601からステップ603は、同じである。
【0039】
以上によって、管制官は、該表示のコールサインを監視して、呼び掛けのコールサインと同一のコールサインの相手から応答があったことを確認できる。管制官は、表示されたコールサインを監視することにとって、自身が交信している相手が意図している相手であることを認識できる。
【0040】
更に、機上通信装置12と地上通信装置21の区間は無線通信である。この無線通信区間はデータとデジタル音声とが同時に送受信できる無線通信であれば適用することができ、VDL Mode3とは異なった通信方式を利用できることは明らかである。
【0041】
更に、この実施例は、航空機の管制通信に適用した例であるが、無線通信を用いて、遠隔に移動体を管制するシステム、例えば、船舶や業務車両にも適用できることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、パイロットと航空管制官の航空管制通信といった用途に適用できる。また、航空機に限らず、船舶や業務用車両等の他の移動体を無線で管制するといった用途にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明のコールサイン監視表示システムの実施の形態を示す図である。
【図2】図1における地上通信装置の構成を示す図である。
【図3】図1における機上通信装置の構成を示す図である
【図4】図1のデータ照合装置の構成を示す図である。
【図5】分図(a)は、航空機アドレス及びコールサイン対応のテーブル、分図(b)は航空機アドレス及びローカルユーザID対応テーブル、分図(c)はローカルユーザID及びコールサイン対応のテーブルをそれぞれ示す。
【図6】コールサイン監視方法におけるリンク確立を例示するフローチャートである。
【図7】通常交信におけるコールサイン監視表示を例示するフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1 機上装置
2 地上装置
3 地上後方装置
11 機上音声入出力装置
12 機上通信装置
21 地上通信装置
22 データ照合装置
23 地上音声入出力装置
24 情報表示装置
31 航空管制情報管理装置
32 航空管制情報供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空管制施設の地上装置と、航空機搭載の機上装置と、の間で、VHFデジタルリンク モード3(VDL MODE3)無線回線で通信リンクを確立して交信する際にパイロット通報の航空機コールサインを監視するシステムにあって、
前記無線回線の通信リンク未確立のとき、リンク確立要求に航空機アドレスを付し、前記無線回線のリンク確立済みのとき、通報のデジタル音声信号にローカルユーザIDを付して、パイロットから管制官への通報に用いられる機上装置と、
管制官とパイロットとの間で交わされる管制通信に用いる航空機の前記航空機アドレス及びそれの飛行計画情報を入手して、航空機アドレスとローカルユーザIDとコールサインを対応付ける管制情報を保持する地上後方装置と、
地上の管制施設に設けられ、前記無線回線におけるタイミング同期する基準信号の所定周期の発信と、前記通報のデジタル音声信号の前記ローカルユーザIDに基づいて、通報元の航空機コールサインを前記管制情報から入手して監視表示する地上装置と、
を備えることを特徴とする航空無線通信のコールサイン監視システム。
【請求項2】
前記機上装置は、
パイロットに対する音声を入出力する機上音声入出力装置と、
前記通信リンク未確立のとき、リンク確立要求に航空機アドレスを付し、前記通信リンク確立済みであるとき、前記音声のデジタル音声信号に前記ローカルユーザIDを付して前記無線回線に送信する、あるいは前記デジタル音声信号を機上音声入出力装置に音声出力する機上通信装置と、
を有することを特徴とする請求項1記載の航空無線通信のコールサイン監視システム。
【請求項3】
前記地上後方装置は、
運行する航空機の飛行計画情報並びに前記航空機の航空機アドレスを管制施設から入手する航空管制情報供給装置と、
前記飛行計画情報並びに前記航空機アドレスに基づいて、前記航空機アドレスと前記コールサインとを対応付ける管制情報を管理し、前記データ照合装置に渡す航空管制情報管理装置と、
を有することを特徴とする請求項1記載の航空無線通信のコールサイン監視システム。
【請求項4】
前記地上装置は、
管制官に対する音声を入出力する地上音声入出力装置と、
前記機上装置から受信する前記航空機アドレスを含むリンク確立要求に対して、新たに割り当てるローカルユーザIDを含む通信リンク確立応答を返信し、前記ローカルユーザIDを含む前記デジタル音声信号を受信するとき、前記ローカルユーザIDとそれに対応するコールサインとを対応付け、前記機上通信装置の前記無線回線のタイミング同期する基準信号を所定の周期で発信する地上通信装置と、
前記地上通信装置から前記航空機アドレスの通知を受けて、前記航空機アドレスと、それに割り当てたローカルユーザIDと、を対応付け、前記管制情報から前記航空機アドレスに対応するコールサインを検出して航空機アドレスとコールサインを対応付け、前記地上通信装置から前記ローカルユーザIDの通知を受けて前記コールサインを対応付けるデータ照合装置と、
前記データ照合装置から通知される前記ローカルユーザIDに対応するコールサインを通報毎に監視表示する情報表示装置と、
を有することを特徴とする請求項1記載の航空無線通信のコールサイン監視システム。
【請求項5】
航空管制施設の地上装置と、航空機搭載の機上装置と、の間で、VHFデジタルリンク モード3(VDL MODE3)無線回線で通信リンクを確立して交信する際にパイロット通報の航空機コールサインを監視する方法にあって、
前記地上装置が所定周期で基準信号を発信し、前記機上装置が前記基準信号によって、前記無線回線のタイミング同期させる基準信号同期処理するステップと、
前記基準信号同期処理ステップの後、前記地上装置が前記機上装置からのリンク確立要求を待ち受け、前記リンク確立要求を受信しないとき、前記基準信号同期処理に戻り、リンク確立要求待ち受けるステップと、
前記リンク確立要求を受信したとき、前記機上装置に新たなローカルユーザIDを割り当てる通信リンク確立処理を実行するステップと、
前記通信リンク確立処理による前記無線回線に通信リンクを確立後、前記航空機アドレス及び前記ローカルユーザID並びに航空機のコールサインを管制情報に基づいて対応付けるステップと、
前記デジタル音声信号に前記ローカルユーザIDを検出するとき、通常交信して前記ローカルユーザIDに対応する航空機のコールサインを監視表示するステップと、
を実行することを特徴とする航空無線通信のコールサイン監視方法。
【請求項6】
前記通信リンク確立処理は、
前記地上装置が、前記機上装置からのリンク確立要求を受信したとき、新たなローカルユーザIDを前記機上装置に割り当てを通知するリンク確立応答を前記機上装置に返信し、前記機上装置は前記ローカルユーザIDを保持し、前記地上装置に送信するデジタル音声信号に前記ローカルユーザIDを付すことを特徴とする請求項5記載の航空無線通信のコールサイン監視方法。
【請求項7】
前記ローカルユーザIDは、
前記地上装置を通じて交信する複数の航空機を識別するため、所定の識別番号から一つを選択し、前記通信リンク確立応答によって、各航空機の機上装置に割り当て保持させる識別番号であり、前記地上装置に対する通報のデジタル音声信号に付し、発信元の航空機のコールサインを対応付けることを特徴とする請求項5記載の航空無線通信のコールサイン監視方法。
【請求項8】
前記航空機アドレスは、
航空機の機上装置及び地上後方装置の航空管制情報管理装置が保持し、前記航空機の管制情報に含まれる、航空機を個別に識別する識別番号であることを特徴とする請求項5記載の航空無線通信のコールサイン監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−94842(P2007−94842A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284643(P2005−284643)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】