説明

船舶用畳

【課題】万一の事故の際に持ち運びが簡単で、水に浮き、避難中には連結もでき体力の消耗を抑えられるような船舶用の畳を提供する。
【解決手段】畳床は低発泡樹脂板、発泡樹脂板、木板の少なくとも1種類の素材を積層した構成で、積層した素材の何れかに取手紐4を設置する溝部7aを有し、溝部を設けた素材から畳裏面側の素材には、上記取手紐を船舶用畳の裏面側に取り出せるように開口部8aを設け、上記取手紐にはフック4aを設けて隣接する別の船舶用畳の取手紐に上記フックを連結することにより船舶用畳同士の連結が行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の海難事故の際に救助、救命用に使用することができる船舶用畳に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶の海難事故の対策として、救命ボートの設置や、ライフジャケット(救命胴衣)の着用などが義務付けられたりしている。そして、平成20年4月から、航行中の漁船に1人で乗船して漁ろうに従事する場合、連絡手段を確保していても、ライフジャケットの着用が義務付され着用義務の適用範囲が拡大もされている。
【0003】
そして、救命ボートや救命いかだに関する提案などが種々行われており、特許文献1に示すような、乗組員を収納したままで、吊り下げ手段等により避難及び救助可能な救命いかだであって、空気室を有する円形状の本体と、該本体の上部を覆う円形のシート状の天幕と、該天幕を支持する2本以上の棒状体と、これら棒状体を交差させた状態で保持及び固定する保持具とからなり、棒状体を湾曲させて両端部を本体の周囲上部の所定位置に着脱自在の適宜手段にて接合可能とし、湾曲した2本以上の棒状体の交差部分で保持具により保持・固定し、その上を天幕で覆うことにより、天幕をドーム状に保持した救命いかだなどの提案が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−240782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に知られているような救命いかだであると、乗組員を収納したままで吊り下げ手段によって避難及び救助可能となるのではあるが、海難事故が発生した場合に、船舶の乗員すべてをクレーン等で降ろすことができる時間的な余裕があるとは限らない。そして、特に訓練を受けていない乗客の場合は、救命いかだ(またはボード)が船舶のどこに設置されているのか、そしてどのように使用状態にするのかなど即座にわからないということもあり、乗員数以上の救命いかだやボートが船舶に設置されていても実際に避難時に使用できない状態で海中(水中)に避難しなければならない状態となることも考えられる。
【0006】
そのような場合においては、乗客や乗組員は身のまわりにある水に浮く物を持って避難するしかない。そのような場合において、万一の事故の際に持ち運びが簡単で、水に浮き、避難中には連結もでき体力の消耗を抑えられるような船舶用の畳を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために本発明の請求項1は、船舶の居住スペースに設置する船舶用畳であって、畳床は低発泡樹脂板もしくは発泡樹脂板もしくは木板の少なくとも1種類の素材を積層した構成を具備し、積層した素材の何れかに取手紐を設置する溝部を有し、上記溝部を設けた素材から畳裏面側の素材には、上記取手紐を船舶用畳の裏面側に取り出せるように開口部を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2は、開口部内に収納されている取手紐の端部を仮固定する段差部を畳床に使用している板部材の開口部の側面に設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3は、上記取手紐にはフックを設けて隣接する別の船舶用畳の取手紐に上記フックを連結することにより船舶用畳同士の連結が行え、上記取手紐の端部を仮固定する段差部に上記フックも仮固定することができるようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4は、船舶用畳の裏面に設けた開口部1箇所につき上記取手紐と上記フックをぞれぞれ1つづつ配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、救命具や救命ボートが避難時に使用できない状態で海中(水中)に避難しなければならない状態となっても、船舶の居住スペースに敷き込まれた船舶用畳を救命具として使用することができる。また、船舶用畳同士の連結が行えるようにしたので、避難中には連結もでき、連結した船舶用畳の上に避難することで体力の消耗を抑えることができる。また、取手紐やフックを船舶用畳の裏面に設けた開口部内で仮固定する段差部を設けているので、通常畳として使用する際には取手紐やフックが畳裏面から飛び出したりすることなく使用でき、そして、避難した際には、開口部から取手紐やフックを取り出して、船舶用畳1枚で救命具として使用したり、またフックで船舶用畳を複数枚連結すして使用することができる。本発明の船舶用畳を救命具や救命ボートと合わせて使用することによって、万一の水難事故の際の人命救助に効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の船舶用畳の斜視外観図である。
【図2】船舶用畳を裏面から見た状態の斜視外観図である。
【図3】樹脂製畳表2を下側にした状態の畳の幅方向の内部の素材の積層状態を説明する図である。
【図4】畳内部の斜視断面図である。
【図5】船舶用畳の裏面開口部全箇所にフックを設けた状態を説明する図である。
【図6】船舶用畳をフックで連結した状態を説明する図である。
【図7】船舶用畳をフックで連結した状態を説明する図である。
【図8】船舶用畳をフックで連結した状態を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の船舶用畳1の実施の形態について説明する。図1は、船舶用畳1の斜視外観図であり、畳表には樹脂製畳表2を使用し、畳縁は化学繊維の畳縁3を使用している。図2は、船舶用畳1を裏面から見た状態の斜視外観図であり、船舶用畳1の裏面には畳床を構成する部材に開口部を設け、取手紐4が設けられている。開口部から取手紐4を取り出して避難中に持って救助を待つことができるのである。
【0014】
図3と図4で、畳内部の実施形態の1例を説明する。図3は樹脂製畳表2を下側にした状態の畳の幅方向の内部の素材の積層状態を説明する図で、図4は畳内部の斜視断面図である。
【0015】
図3に示したように、下側より樹脂製畳表2、クッション材5、低発泡樹脂板6と積層し、低発泡樹脂板6の中央に取手紐4を取り付けるための溝部7aを有する低発泡樹脂板7が低発泡樹脂板6に接着されている。取手紐4を持っている時には人の体重がかかるため取手紐4を取り付ける部材は低発泡の樹脂板としている。そして、低発泡樹脂板7の左右両側に発泡樹脂板8が取手紐4が低発泡樹脂板6上に見える状態となるような開口部8aを低発泡樹脂板7が取り付けられている側に2箇所構成するようにして低発泡樹脂板6に接着されている。図示では、発泡樹脂板8は低発泡樹脂板7の左右それぞれに接着されるために開口部8aは4箇所となっている。低発泡樹脂板7と低発泡樹脂板8の厚みは同じ厚みにされている。
【0016】
そして、その低発泡樹脂板7と低発泡樹脂板8上に発泡樹脂板9が設けられ、発泡樹脂板9の開口部は低発泡樹脂板8の開口部より小さな開口部としており、以上の構成で船舶用畳1の畳床を構成している。低発泡樹脂板7と低発泡樹脂板8は船舶用畳1長さ方向にわたった長さ寸法を有している。また、発泡樹脂板9の表面は避難中によく目立つような、例えば黄色やオレンジ色という色としている。もちろん発泡樹脂板9に黄色やオレンジ色のシートを貼り付けてもよい。また、夜間のライト等でよく分かる様、発光塗料の処理を施してもよい。
【0017】
また、開口部8aの取手紐4の端部側には低発泡樹脂板8と低発泡樹脂板6とで段差部8bを形成し、この段差部8bに取手紐4とフック4aを挟み込んで仮の固定ができるようにしている。すなわち、畳床に使用している素材である低発泡樹脂板8の開口部8aの側面に段差部8bを設けているのである。
【0018】
上記した畳床に樹脂製畳表2を貼付(もしくは縫着)し、畳の幅方向両側に化学繊維の畳縁3を縫着して船舶用畳1を構成している。
【0019】
本発明の船舶用畳1の幅寸法は50〜60cm、長さは幅寸法の2倍程度の大きさとし、海難事故などが発生した場合に、即座に乗客や乗組員が船舶用畳1を1枚を持って移動できる大きさとしている。もちろん通常家屋に敷き込みする程度の大きさ(幅寸法90〜100cm程度で長さは幅寸法の2倍程度の大きさ)の畳としても良いし、幅寸法を小さくしても良い。ただ、幅寸法が小さすぎると1枚の畳での浮力が小さくなってしまうため、上記の寸法程度が良好である。
【0020】
図5の平面視で示すように溝部7aを略U字状として取手紐4を取り付けた構造としているもので、、開口部4箇所の取手紐4それぞれにフック4aを設けた構成としている。図6は、図5に示した船舶用畳1の連結した状態を説明する図であり、船舶用畳1の裏面に設けた4箇所のうちの1箇所の開口部からフック4aを取り出して、隣接する船舶用畳1の取手紐4に連結し、フック4aを取り付けた紐が時計回りに四角形状となるように連結している。もちろん反時計回りに四角形状となるように連結してもよい。
【0021】
また、図7及び図8に示す実施形態では、低発泡樹脂板7は取手紐4が幅方向にスライドできる程度の低発泡樹脂板7の幅方向に設けられた溝部7bを有している。溝部7bは取手紐1本につき2箇所の溝部を設けており、この溝部7b内を取手紐4が畳の幅方向にスライドできることにより、幅方向の左右いずれの側かの取手紐4を長い状態とすることができる。そして取手紐4にはフック4aが設けられてもおり、隣に配置した船舶用畳1の取手紐4にフック4aをかけることで、船舶用畳1を複数枚連結した状態とすることができる。図7では幅方向に隣り合う船舶用畳1同士を連結する状態を開示しているが、長さ方向に隣り合った状態で連結することも可能である。
【0022】
図8(a)に示す図は、取手紐4を開口部から引き出して取手として使用する状態を示した図である。図8(b)は、船舶用畳1を連結するためにフック4aを隣接する船舶畳の方へ取手紐4を溝部7b内をスライドさせて配置した状態を図示したものである。図8(c)は図8(b)に示した状態の船舶用畳1と連結するために、取手紐4を隣接する船舶用畳側へスライドさせて配置した状態を図示したものである。
【0023】
図8(a)の状態で使用する場合は、海中(水中)で取手紐4を持ちながら救助を待つのであるが、長時間海中(水中)に浸かっていると体力を消耗してしまうため、船舶用畳複数枚を連結して、体力の少ない人や子供を海中(水中)から連結した船舶用畳上に乗せて体力の消耗を抑えながら救助を待つことができるのである。
【0024】
船舶用畳1を連結する状態を開示した図6及び図7においては、連結状態をわかりやすくするために船舶用畳1と隣り合う船舶用畳1の間隔を広くした状態で図示しているが、実際にはこの間隔はほとんど無い状態として取手紐4の長さを設定しておくとよい。
【0025】
そして、低発泡樹脂板6や低発泡樹脂板7の発泡倍率は5〜10倍程度とし、発泡樹脂板8や発泡樹脂板9の発泡倍率を30〜45倍程度としておくと望ましい。発泡樹脂板としている場合は取手紐4によって溝部7a、7bが破損しない程度の強度を有する発泡倍率とする。また、低発泡樹脂板7は、破損しない素材として木板に変更してもよい。
【0026】
本発明の船舶用畳は、特に大型船舶の個室や大人数部屋の床に敷き込んで普段は畳として使用し、万一の際には、敷き込んだ畳を持って避難するのである。もちろん救命具や救助ボートなどが使用できる人はそちらを使用すればよいのである。また、小型船舶においても、漁ろうの休憩の際に寝そべって休憩できるようにするために数枚敷いておくような使用でもよい。
【0027】
その他に、避難する人が持ち運ぶことをしなくても、例えば、船舶のテラスやテラス付近の屋内に敷き込み、万一船が沈没してしまった場合には、船舶用畳が敷き込んだ場所から流出し、多数枚が海上に浮くという状態になるような場所へ設置したりして万一の際の人命救助に備えて設置することが望ましい。敷き込んだ場所から万一の際には船舶用畳が船外へ流れ出すことができるような場所に設置できる場合には、船舶用畳の大きさはできるだけ大きくしていることが望ましい。

【符号の説明】
【0028】
1 船舶用畳
2 樹脂製畳表
3 化学繊維の畳縁
4 取手紐
4a フック
5 クッション材
6 低発泡樹脂板
7 低発泡樹脂板
7a 溝部
7b 溝部
8 発泡樹脂板
8a 開口部
8b 段差部
9 発泡樹脂板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の居住スペースに設置する船舶用畳であって、
畳床は低発泡樹脂板もしくは発泡樹脂板もしくは木板の少なくとも1種類の素材を積層した構成を具備し、
積層した素材の何れかに取手紐を設置する溝部を有し、
上記溝部を設けた素材から畳裏面側の素材には、上記取手紐を船舶用畳の裏面側に取り出せるように開口部を設けた
ことを特徴とする船舶用畳。
【請求項2】
開口部内に収納されている取手紐の端部を仮固定する段差部を畳床に使用している板部材の開口部の側面に設けたことを特徴とする請求項1記載の船舶用畳。
【請求項3】
上記取手紐にはフックを設けて隣接する別の船舶用畳の取手紐に上記フックを連結することにより船舶用畳同士の連結が行え、取手紐の端部を仮固定する上記段差部に上記フックも仮固定することができるようにしたことを特徴とする請求項2記載の船舶用畳。
【請求項4】
船舶用畳の裏面に設けた開口部1箇所につき上記取手紐と上記フックをぞれぞれ1つづつ配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の船舶用畳。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−255813(P2011−255813A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132903(P2010−132903)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000163121)極東産機株式会社 (68)
【Fターム(参考)】