説明

船舶監視システム

【課題】海底ケーブルに影響を及ぼしうる停泊中の船舶を監視することができる船舶監視システムを提供する。
【解決手段】ケーブルが敷設された海域を撮像したものである監視画像から海面部分を検出し、海面部分を複数の監視区域画像に区分し(ステップS1)、監視画像から船舶を検出し(ステップS2)、船舶が位置する監視区域画像を特定し(ステップS3)、同一の監視区域画像に船舶が一定時間に亘り位置するときに当該船舶は停泊していると判定し(ステップS4)、ケーブルの敷設位置に対応する監視区域画像から所定の距離内に停泊していると判定された船舶があるときに当該船舶は警戒位置にあると判定し(ステップS5)、船舶が警戒位置にあることを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船舶監視システムに関し、特に、錨が海底ケーブルに損傷を与えないように船舶を監視する場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
瀬戸内海等には多くの島が存在しており、海底に敷設したケーブルを介してこれらの島に電力が供給されている。
【0003】
一方、このような海域では、船舶が航行するのはもちろんのこと、船舶が港やドッグに入る前に一時的に投錨して停泊することがある。風力や海流の速さによっては、投錨していても船舶は錨を引きずるように移動することがあるため、海底ケーブルは錨により引っかけられて船に引きずられたり、破損する虞がある。
【0004】
停泊中の船舶の錨による破損等を防ぐため、海底ケーブル周辺の海域をカメラ等で撮影し、その撮影された画像で停泊中の船舶の有無を監視員が監視し、場合によってはその船舶に警告を発しているのが現状である。
【0005】
このような監視員による船舶の監視の他に、水上レーダと複数の監視カメラとを用いて船舶の存在を検出できる港湾監視システム(例えば、特許文献1参照)が提案されている。これによれば、隣接する船舶の陰に隠れて航行する船舶も確実に検出することができる。また、カメラにより得られた監視映像を遠隔で監視し、必要に応じて記録できる監視システム(例えば、特許文献2参照)も提案されている。これによれば、監視映像を容易に閲覧することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1のような技術では、海域を航行するすべての船舶が記録されることから、投錨による海底ケーブルの損傷の虞がないレジャーボート等も監視対象になってしまうという問題がある。また、特許文献2のような技術では、監視海域に停泊している船舶は長時間記録されてしまうという問題がある。
【0007】
このため、監視カメラにより記録された画像の量が膨大なものとなり、その画像の伝送・再生に多大な時間を要したり、その膨大な画像に基づいて船舶の海底ケーブルへの影響を判断するという監視作業に係る負担が増大してしまうという問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開2005−277705号公報
【特許文献2】特開2004−187225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑み、海底ケーブルに悪影響を及ぼす可能性がある停泊中の船舶を監視することができる船舶監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、海底ケーブルが敷設された海域を撮像して監視画像を形成する撮像装置と、前記監視画像から海面部分を検出し、当該海面部分を複数の監視区域画像に区分する区分手段と、前記監視画像から船舶を検出すると共に当該船舶が位置する前記監視区域画像を特定する船舶位置特定手段と、同一の監視区域画像に前記船舶が一定時間に亘り位置するときに当該船舶は停泊していると判定する停泊判定手段と、前記海底ケーブルの敷設位置に対応する前記監視区域画像から所定の距離内に停泊していると判定された船舶があるときに当該船舶は警戒位置にあると判定する停泊位置判定手段と、前記船舶が警戒位置にあることを表す信号を出力する出力手段とを備えることを特徴とする船舶監視システムにある。
【0011】
かかる第1の態様では、撮像装置が撮像した監視画像に基づいて、船舶が停泊しているか否かが判定され、その停泊位置が海底に敷設されたケーブルに近いか否かが判定される。これにより、船舶が投下した錨でケーブルを引っ張られたり、損傷してしまう虞のある船舶を早期に、かつ自動的に発見することができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する船舶監視システムにおいて、前記船舶位置特定手段は、複数の監視区域画像に亘り位置する船舶を大型の船舶として検出することを特徴とする船舶監視システムにある。
【0013】
かかる第2の態様では、大型の船舶を検出できるため、投錨による海底ケーブルの損傷の虞がないレジャーボート等を監視対象から外すことができる。これにより、監視画像のうち、この大型の船舶に係る部分だけを記録することができ、監視画像の記録に要する記憶媒体の容量を節約することができ、また、この節約の分だけ、監視画像に基づいて船舶の海底ケーブルへの影響を判定するのに要する時間を削減できる。
【0014】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載する船舶監視システムにおいて、前記区分手段は、前記複数の監視区域画像に対応する現実の海面の面積がそれぞれ等しくなるように前記監視画像を複数の監視区域画像に区分することを特徴とする船舶監視システムにある。
【0015】
かかる第3の態様では、船舶の位置、大きさ、速度を容易に計算することができる。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れか一つの態様に記載する船舶監視システムにおいて、前記船舶が停泊していると判定されたとき、前記監視画像を一定時間空けて間欠的に記憶媒体に記録することを特徴とする船舶監視システムにある。
【0017】
かかる第4の態様では、停泊している船舶が長時間に亘り記録されることが防止されるため、監視画像の記録に要する記憶媒体の録画可能な容量が節約され、また長時間に亘る監視画像の確認作業が不要になるため、監視負担が軽減される。
【0018】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の何れか一つの態様に記載する船舶監視システムにおいて、前記撮像装置をズームイン・アウト、パン及びティルトさせる撮像装置制御手段を備えることを特徴とする船舶監視システムにある。
【0019】
かかる第5の態様では、監視員が撮像装置を操作して、特定の船舶の動き、形状、船名等を精査することが可能となる。
【0020】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の何れか一つの態様に記載する船舶監視システムにおいて、前記船舶が警戒位置にあるとき、当該船舶に警報を発する警報手段を備えることを特徴とする船舶監視システムにある。
【0021】
かかる第6の態様では、警戒位置にある船舶に対して警報を与えることができ、これにより、ケーブルが錨で引っ張られたり損傷したりすることを未然に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、海底ケーブルに影響を及ぼしうる停泊中の船舶を監視することができる船舶監視システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0024】
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態に係る監視システムの監視対象となる海域周辺の概略地図である。図示するように、陸地A、B、Cと海Sとがあり、陸地Aから陸地Bに亘って送電用のケーブル1が敷設されている。ケーブル1は、海Sにおいては2本に分岐し、海底に配置されている。監視海域2は、ケーブル1の海底に配置された部分の周辺の海域であり、この監視海域2が視野に入るように監視カメラが陸地Bの監視所3に設置されている。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係る監視システムの概略構成図である。図示するように、監視システム10は、撮像装置の一例である監視カメラ11と、監視装置12と、遠隔監視装置13とを備えている。監視カメラ11と監視装置12とは、監視所3に設置され、遠隔監視装置13は、LANやインターネット等の通信手段を介して遠隔にある事業所や監視センター等に設置されている。
【0026】
監視カメラ11は、監視海域2を撮像して監視画像を形成し、その監視画像を監視装置12に送信する。監視カメラ11は、監視装置12で処理可能な監視画像を形成できるものであれば特に限定されない。例えば、夜間においても監視できるように高感度カメラを使用することもできる。
【0027】
また、監視カメラ11は、監視装置12や遠隔監視装置13などの外部機器から送信される制御信号により、ズームイン・アウト、パン及びティルトすることが可能となっている。
【0028】
監視装置12は、CPU、記憶装置(RAM・ハードディスク等)、入力装置(キーボード・マウス等)、出力装置(ディスプレイ等)、通信手段、監視カメラ11の制御やデータの送受信のためのインタフェース(USBなど)等のハードウェアと、これらの装置を一体的に動作させるためのソフトウェアとから構成されている。
【0029】
監視装置12は、CPUで実行されるソフトウェアにより、監視カメラ11から監視画像が入力され、監視画像に基づいて監視海域2のケーブル1の近辺(警戒位置)で停泊している船舶を検出する。また、監視装置12は、そのような船舶を検出したことや監視画像を、通信手段を介して遠隔監視装置13に送信する機能も備えている。
【0030】
また、監視装置12のハードディスクには、監視カメラ11からの画像が記録されるようになっており、後日に記録内容を確認できるようになっている。また、詳細は後述するが、ハードディスクに記録された過去の監視画像は、船舶が停泊しているか否かの判定にも用いられる。
【0031】
遠隔監視装置13は、監視装置12と同様のハードウェアとソフトウェアとから構成され、監視装置12からの情報を受信する機能や、その情報を表示するディスプレイ等の出力装置を有している。この遠隔監視装置13により、監視カメラ11からの監視画像や、監視装置12により警戒位置に停泊していると判定された船舶4を遠隔地で確認することができるようになっている。
【0032】
また、遠隔監視装置13が設置された事業所等には、警報手段の一例である無線通信装置14が設置されている。具体的には、警戒位置にいる船舶4が遠隔監視装置13のディスプレイに表示され、そのことを確認した監視員が無線通信装置14を用いて船舶4にその停泊位置から離れるよう警報を発する。かかる警報を受けてケーブル1の近辺である警戒位置から船舶4が離脱することを期待できるため、警戒位置に停泊する船舶4が投下した錨でケーブル1を引きずったり、損傷させてしまうことを未然に防ぐことができる。
【0033】
なお、無線通信装置14は、監視員の操作により警報を発するものに限らず、監視装置12から遠隔監視装置13に船舶4が警戒位置にいることが送信されたとき、遠隔監視装置13が無線通信装置14を制御して船舶4に警報を発するようにしてもよい。
【0034】
ここで、監視システム10の構成を詳細に説明する。図3は、本発明の実施形態に係る監視システムの機能ブロック図である。図示するように、監視装置12は、区分手段20、船舶位置特定手段21、停泊判定手段22、停泊位置判定手段23、及び出力手段24を備え、遠隔監視装置13は、カメラ制御手段30を備えている。これらの各手段20〜24、30は、監視装置12及び遠隔監視装置13で実行されるソフトウェアとして実装されている。
【0035】
図4は、監視画像の例示であり、この監視画像40には、監視海域2やこの監視海域2を航行又は停泊している船舶4A、4B、4C、4Dが撮像されている。また、監視カメラ11は海面に対して傾斜した状態で撮像したので、監視画像40の上側に行くほど被撮像物は見かけの大きさが小さくなっている。なお、船舶4A、4Bは大型船であり、船舶4C、4Dはプレジャーボートなどの小型船である。この図を用いて、船舶が警戒位置にいることを判定するための処理について説明する。
【0036】
区分手段20は、監視カメラ11から監視画像40が入力され、この監視画像40の海面部分(監視海域2)を検出し、この海面部分を複数の監視区域画像Pに区分する。監視画像40から海面部分を検出する際には、監視画像40に既知の画像認識手法を適用することで海面部分を得ることができる。なお、図4中の特定の監視区域画像Pについて言及する際には、「監視区域画像P(X,Y)」と表記する。監視区域画像P(X,Y)とは、監視画像40の中央部にある監視区域画像P(0,0)を基準とし、X軸方向のX番目、Y軸方向のY番目にある監視区域画像Pであることを意味する。
【0037】
監視区域画像Pは、監視画像40の海面部分を格子状に区分して形成された領域のことをいう。また、監視画像40は、各監視区域画像P(X,Y)に対応する現実の海面の面積がそれぞれ等しくなるように区分されている。したがって、監視画像40の上側(監視海域2の奥側)になるほど各監視区域画像P(X,Y)の見かけの面積は小さくなっている。本実施形態では、各監視区域画像P(X,Y)に対応する現実の海面の面積は、一辺が100mの正方形の面積となっている。
【0038】
このように監視区域画像Pに区分することで、例えば船舶4Aが3つの監視区域画像P(−3,−1)〜P(−1,−1)に亘って撮像されていれば、船舶4Aは200m〜300mの大きさであることが分かる。また、船舶4Aが予め設定した単位時間に、予め設定した個数の監視区域画像Pだけ移動していれば、船舶4Aの速度を得ることができる。このように、現実の海面の面積が等しくなるように監視区域画像Pを区分することで、海面に対して傾斜して撮像された監視画像40であっても、監視区域画像Pを基準にして船舶4A〜4Dの大きさや速度を容易に得ることができる。これにより、監視装置12は、その監視区域画像Pと船舶4Aとの関係を元に、船舶4Aの位置、大きさ、速度を容易に計算することができる。
【0039】
船舶位置特定手段21は、監視カメラ11からの監視画像40から大型の船舶4A、4Bを検出する。監視画像40から船舶4A、4Bを検出する際には、監視画像40に既知の画像認識手法を適用することで船舶4A、4Bを得ることができる。また、監視画像40中に撮像された4隻のうち、大型船である船舶4A、4Bを検出するには、船舶4A〜4Dが監視区域画像Pに占める割合を算出することで判断する。例えば、画像認識手法により認識された船舶が2つ以上の監視区域画像Pに亘り存在する場合には、大型の船舶であると判定するようにする。
【0040】
また、船舶位置特定手段21は大型の船舶4A、4Bが位置する監視区域画像Pを特定する。例えば、図4の監視画像40からは、船舶4Bは監視区域画像P(3,1)及びP(4,1)に位置している、と特定される。
【0041】
このように大型の船舶4A、4Bを選択的に検出するので、プレジャーボートなどの小型船舶を監視対象から外した分だけ、監視負担を軽減し、また小型船舶の画像の記録に要する記憶媒体も節約できる。なお、小型船舶はケーブル1に損傷等を与えるほどの錨を投下する可能性が少ないので、小型船舶を監視の対象から外しても大きな問題はない。
【0042】
停泊判定手段22は、同一の監視区域画像Pに船舶4A,Bが一定時間に亘り位置するときに船舶4A,4Bは停泊していると判定する。この停泊の判定は、具体的には、過去の監視区域画像Pを一定時間分記録しておき、いずれの監視区域画像Pにも同一の船舶が検出されるか否かにより判定する。
【0043】
例えば、一定時間を過去10分としたとき、現在の監視区域画像P(X,Y)と、10分前の時刻t−1における監視区域画像Pt−1(X,Y)を用いる。この場合、船舶4Aが監視区域画像P(−3,−1)と監視区域画像Pt−1(−3,−1)の双方に位置していれば、船舶4Aは停泊していると判定される。
【0044】
なお、船舶が停泊していると判定されたとき、監視画像の記録間隔を一定時間空けて間欠的に記録するようにしてもよい。これにより、停泊している船舶が長時間に亘り記録されることが防止されるため、監視装置12の記憶媒体の録画可能な容量が節約され、また長時間に亘る監視画像の確認作業が不要になるため、監視負担が軽減される。
【0045】
停泊位置判定手段23は、ケーブル1の敷設位置に対応する監視区域画像Pから所定の距離内に停泊していると判定された船舶4A,4Bがあるときに船舶4A,4Bは警戒位置にあると判定する。ここで、ケーブル1の敷設位置に対応する監視区域画像Pは、各監視区域画像Pのうち、これらに対応する現実の海面下の海底にケーブル1が敷設されているものをいう。
【0046】
例えば、監視画像40では、7つの監視区域画像P(監視区域画像群Pc)がケーブル1の敷設位置に対応している。すなわち、監視区域画像群Pcに対応する現実の海面下にケーブル1が敷設されている。この監視区域画像群Pcは監視画像40を区分した後に、予め設定しておく。
【0047】
このように設定された監視区域画像群Pcと、停泊していると判定された船舶4A,4Bとの距離を算出する。この距離は、船舶4A、4Bの位置と最寄りの監視区域画像群Pcとから算出することができる。例えば、船舶4Aの場合、船舶4Aが位置する監視区域画像P(−1,−1)に最も近いものは、監視区域画像P(0,0)であるから、この二つの監視区域画像P(−1,−1)と監視区域画像P(0,0)とから船舶4Aとケーブル1との距離を概算できる。
【0048】
この船舶4Aとケーブル1との距離が、予め定めた距離以下であれば、船舶4Aは警戒位置にあると判定する。すなわち、このような位置で船舶4Aが停泊していると、投下した錨でケーブル1が引っ張られたり、損傷する事故が引き起こされる可能性が高いということである。
【0049】
出力手段24は、監視カメラ11が撮像した画像を通信回線を介して遠隔監視装置13に送信したり、停泊した船舶が警戒位置にある旨の情報を遠隔監視装置13に送信する。
【0050】
このような情報や監視画像を受信した遠隔監視装置13は、これらをディスプレイ31に表示する。これにより監視員は遠隔地において監視海域2の状況や警戒位置にある船舶の有無を確認できる。また、前述したように、監視員は警戒位置にある船舶4Aに対して無線通信装置14で警報を発することもでき、ケーブル1の損傷等を未然に防ぐことができる。
【0051】
なお、監視装置12及び遠隔監視装置13は、上記のような監視画像や停泊した船舶が警戒位置にあるか否かをディスプレイに表示するのみではなく、その他の情報を表示してもよい。例えば、監視画像にケーブル1の敷設位置や潮位を表示させてもよいし、船舶の位置や、船舶と監視所との距離、船舶の大きさ、速度を表示してもよい。これにより、より詳細に監視海域2の状況を把握することができる。
【0052】
カメラ制御手段30は、監視カメラ11に所定の制御信号を送信することで、監視カメラ11をズームイン・アウト、パン及びティルトさせることが可能になっている。これにより、監視員が監視カメラ11を操作して、特定の船舶の動き、形状、船名等を精査することが可能となっている。
【0053】
図5は、本発明の実施形態に係る監視システムの処理のフローである。図示するように、監視システムでは以下のように処理が実行される。
【0054】
まず、監視装置12は、監視カメラ11から監視画像40を取得し、監視画像40を複数の監視区域画像に区分する(ステップS1)。これにより、前述したように監視画像40の海面部分は監視区域画像P(X,Y)に区分される。次に、監視装置12は、監視画像40から所定の大きさの船舶の検出を行う(ステップS2)。これにより、前述したように、例えば2つ以上の監視区域画像Pに亘るような大きさの船舶4A、4Bが検出される。次に、検出した船舶が位置する監視区域画像の特定を行う(ステップS3)。これにより、例えば、船舶4Aは、時刻tにおいて、監視区域画像P(−3,−1)〜P(−1,−1)に位置すると特定される。
【0055】
次に、同一の監視区域画像に船舶が一定時間に亘り位置するか否かを判定する。これは、監視画像40を一定期間記録しておき、その記録した時刻ごとの監視画像40に船舶がどの位置にいるかを判定し、その結果、船舶が一定時間、同一位置に居るか否かにより判定する。
【0056】
例えば停泊の条件を、過去10分間において同一海域にいることとすると、船舶4Aが現在の時刻tと、10分前である時刻t−1とにおいて、監視区域画像P(−3,−1)〜P(−1,−1)に位置するか否かにより判定する。
【0057】
これにより、船舶4Aが同一の監視区域画像P(−3,−1)〜P(−1,−1)に位置していない(ステップS4:No)ならば、ステップS1から処理を実行し、船舶4Aが同一の監視区域画像P(−3,−1)〜P(−1,−1)に位置している(ステップS4:Yes)ならば次のステップS5の処理を行う。なお、船舶4Aが停泊していると判定されたとき、監視画像の記録間隔を一定時間空けて間欠的に記録するようにしてもよい。
【0058】
ステップS5では、船舶の停泊位置がケーブル1の敷設位置に近いか否かを判定する。すなわち、船舶4Aがケーブル1の敷設位置に対応する監視区域画像群Pcから所定の距離内にあるか否かにより判定する。この結果、船舶の停泊位置がケーブル1の敷設位置に近くないならば(ステップS5:No)、ステップS1から処理を実行し、近いならば(ステップS5:Yes)、遠隔監視装置13に対して、船舶4Aが警戒位置にいる旨の情報の送信を行う(ステップS6)。
【0059】
以上に説明したように、監視システム10では、監視カメラ11が撮像した監視画像40に基づいて、大型の船舶4A、4Bが停泊しているか否かが判定され、その停泊位置が海底に敷設されたケーブル1に近いか否かが判定される。そして、その判定結果は遠隔監視装置13で表示されるため、監視員はその結果を見て監視海域2の状況を確認したり、船舶に対して抜錨して監視海域2から離脱するよう警報を与えることができる。これにより、大型の船舶が投下した錨でケーブル1が引っ張られたり、損傷してしまうことを未然に防ぐことができる。
【0060】
なお、本発明の監視システムでは、監視装置12と遠隔監視装置13とに分けて各手段20〜24,30が実装されていたが、このような態様に限らない。例えば、監視所3には監視カメラ11のみを設け、その画像が遠隔地の事業所等に送信されるようにしておき、その事業所に各手段20〜24,30を実装した監視装置を設置してもよい。
【0061】
また、本発明の監視システムは、送電用のケーブルに限らず、海底に敷設されるケーブル全般に適用しうる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、海底に敷設されたケーブルを大型船から投下された錨から保護する必要がある産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態に係る監視システムの監視対象となる海域周辺の概略地図である。
【図2】本発明の実施形態に係る監視システムの概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る監視システムの機能ブロック図である。
【図4】監視画像の例示である。
【図5】本発明の実施形態に係る監視システムの処理のフローである。
【符号の説明】
【0064】
A、B、C 陸地
S 海
P 監視区域画像
1 ケーブル
2 監視海域
3 監視所
4、4A、4B、4C、4D 船舶
10 監視システム
11 監視カメラ
12 監視装置
13 遠隔監視装置
14 無線通信装置
20 区分手段
21 船舶位置特定手段
22 停泊判定手段
23 停泊位置判定手段
24 出力手段
30 カメラ制御手段
31 ディスプレイ
40 監視画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底ケーブルが敷設された海域を撮像して監視画像を形成する撮像装置と、
前記監視画像から海面部分を検出し、当該海面部分を複数の監視区域画像に区分する区分手段と、
前記監視画像から船舶を検出すると共に当該船舶が位置する前記監視区域画像を特定する船舶位置特定手段と、
同一の監視区域画像に前記船舶が一定時間に亘り位置するときに当該船舶は停泊していると判定する停泊判定手段と、
前記海底ケーブルの敷設位置に対応する前記監視区域画像から所定の距離内に停泊していると判定された船舶があるときに当該船舶は警戒位置にあると判定する停泊位置判定手段と、
前記船舶が警戒位置にあることを表す信号を出力する出力手段とを備える
ことを特徴とする船舶監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載する船舶監視システムにおいて、
前記船舶位置特定手段は、複数の監視区域画像に亘り位置する船舶を大型の船舶として検出する
ことを特徴とする船舶監視システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する船舶監視システムにおいて、
前記区分手段は、前記複数の監視区域画像に対応する現実の海面の面積がそれぞれ等しくなるように前記監視画像を複数の監視区域画像に区分する
ことを特徴とする船舶監視システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する船舶監視システムにおいて、
前記船舶が停泊していると判定されたとき、前記監視画像を一定時間空けて間欠的に記憶媒体に記録する
ことを特徴とする船舶監視システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載する船舶監視システムにおいて、
前記撮像装置をズームイン・アウト、パン及びティルトさせる撮像装置制御手段を備える
ことを特徴とする船舶監視システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載する船舶監視システムにおいて、
前記船舶が警戒位置にあるとき、当該船舶に警報を発する警報手段を備える
ことを特徴とする船舶監視システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−157828(P2010−157828A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333893(P2008−333893)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】