説明

色彩浮造り合板とその製造方法

【課題】 内部に着色部を持つ合板で、表層に浮造りを施すことにより製品表面に木材の早材部、晩材部および着色部の色彩構成を持つ合板およびその製造方法。
【解決手段】
厚さ0.7〜3.0mmの単板を表層単板とし、第2層単板と平行に堆積する。着色部は接着層に着色する又は表層単板の裏面に染料を塗布することで得られ、合板製造時の圧締温度を0〜40℃、圧力は通常の合板製造時の圧力より低い5〜10kg/cmの圧力とする。この合板の表面をブラシやブラストで削り込むことで、色彩構成が豊かな浮造り合板となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の早材部、晩材部に加えて着色部から構成される色彩豊かな浮造り合板とその製造方法に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、浮造りは、材料表面をブラッシング、ブラストまたは焼き加工などで年輪に沿って凹凸をつけて立体感を持たせ、木目や木材の持つ自然の風合いを引き出す杉などの針葉樹材に対して施されてきた伝統的な加工法の一つである。
【0003】
浮造りを応用して木材に深みや意匠性を持たせる加工方法として、木材単板に塗料を塗り重ねた後に浮造りを施す方法や着色した樹脂強化板の上に木材単板を重ねて浮造りを施す方法[特許文献1]がある。後者は、樹脂強化板の挿入により、床材の耐クラック性、耐傷性の向上を図る技術で、ブラッシングの際の木材単板層を超える削り込みに配慮した技術である。
【特許文献1】特許P3870115
【発明の開示】

【本発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の浮造りを合板に適用し、表面の色彩を早材、晩材に加えて着色部の3色以上で構成することで、斬新な配色または自然な色彩を醸し出すことが可能である。しかし、針葉樹材を合板の表層単板に使用した場合、剥離、欠損、そりなどが生じやすかった。さらに合板は単板を繊維方向に直交して接着されているため、表層単板の下層が露出すると交錯しあった繊維面が現れ、意匠性が損なわれるといった課題があった。
【0005】
また、[0003]に記載の、木材単板に塗料を塗り重ねて塗膜層に浮造りを施す方法は色の組み合わせによる外観の意匠性は期待できるものの、削り込みが表層の塗膜に限定されることから、浮造りの特徴である凹凸が顕著ではない。また、単板表面が塗料で覆われてしまうために、木材自体の色彩を表面に現せないことも多かった。
【0006】
一方、特許P3870115のものは木材単板と着色された樹脂強化層を台板に貼り付けることでそりを抑制しながら、浮造りによる深みを創出しているが、台板が不可欠でコスト高になる、薄物が製造できないといった課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明は以下の手段を用いる。
【0008】
表層単板の厚さは0.7〜3.0mm、好ましくは0.9〜1.5mmである。これよりも厚い単板であれば、浮造りの際に着色部を露出させるために大きな切削が要求され、一方、これよりも薄い単板は、表面に割れが生じ、結果として合板表面の単板のはく離が生じたり、二次的なスプライサー等による横接ぎ加工が難しいことから、製品バリエーションが低下する。
【0009】
内部に設ける着色部は、接着剤を着色する又は表層単板の裏面から染料を塗布することで得られる。前者の手法で着色する場合は、着色部と単板とが明確な層構成になっているため、合板表面の木材の早材部、晩材部との境界が明瞭となる。一方、後者の手法では、単板が単色に染まることなく、染色されにくい晩材は木材そのものの色を残すこともできる。単板に染料が染み込むことにより単板内に着色部が形成されるため、単板との境界が前者のように明瞭ではなく、染物のような外観の仕上がりとなる。また、着色した接着層との組み合わせにより、3色以上の色彩構成が可能となる。上記の方法で合板内部に着色部を施して着色部を浮造りにより露出させることで[0005]のものと比較して、より深い凹凸を創出することが可能となる。
【0010】
本発明において予想される表層単板を越える削り込みに対しては、表層単板および裏面単板の直下の層の単板を、繊維方向を平行に配すことで解決を図る。こうすることによって、浮造りの際に表層単板を越える削り込みが発生しても、露出する部分が同一樹種で同じ繊維方向であるために意匠に問題を生じない。また、合板内部の応力分布のバランスをとるために裏面の直下にも同様に単板を配する。この時に用いる単板は、表層単板と同系色、好ましくは同樹種のものを用いる。
【0011】
色彩浮造り合板は原料として広葉樹材よりもそりを生じやすい針葉樹材を用いており、本発明においては製品製造時あるいは加工時のそりを防ぐために以下の手段を用いる。
【0012】
合板の圧締時に生じるそりについては、圧締温度により防ぐあるいは軽減することができる。合板は通常0〜150℃の温度の範囲で圧締されるが、針葉樹材を原料とするそりの少ない合板を作製するために、本発明においては冷圧可能な接着剤を使用して0〜40℃の範囲内で圧締を行う。
【0013】
浮造りの際に生じるそりに関しては、加工を合板の表層単板のみならず、裏面にも施すことで防ぐことができる。表面のみの加工に留まると、合板内部の応力のバランスが崩れてそのことが原因で合板に大きなそりが生じてしまうため、加工の際に表面と同様の加工を裏面にも行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
単板厚さ0.7〜1.5mmの針葉樹単板を表層に用いて、内部に着色部を持つ合板を製造し、着色部が一定レベルまで露出するよう表面に浮造りを施した色彩浮造り合板は、単に木材の持つ自然の風合いや木目の強調に加えて、着色部の配色や露出面積の設定を変えることにより、木目を生かしながらも従来の木材では不可能であった多彩なイメージも表現できることとなる。また、合板を安定的に製造するために、表層単板の下の第2層の単板は表層単板と同樹種または同系色のものとし、表層単板と同一の繊維方向で配されている。このことにより、浮造りの際に接着層を超える掘り込みが生じても、第2層単板は表層単板と繊維方向を同一に配された同樹種であるために、露出した時の外見はきわめて自然であり、特に異種材料を使用することなく自然素材の木材を用いて削り込みに対する対応が可能となる。さらには第2層単板まで削り込むことを意図することで、凹凸による陰影はより深くなり、意匠性に貢献することとなる。
【0015】
また、当該発明により、加工途中及び加工後の合板のそり、割れを効果的に抑制することが可能となり、製品としての品質を保持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
色彩浮造り合板の構成要素について、以下に解説する。
【0017】
表層単板には、針葉樹単板を用いる。単板はロータリー単板、スライス単板ともに使用可能である。単板の厚さは0.7〜3.0mm、好ましくは0.9〜1.5mmの間である。これ以上の厚さであると浮造りを行って着色層を露出させるのに困難が生じ、これ以上薄くなると樹種の特性上、割れを生じたり、ジョインター等による幅はぎが不可能となる。[表1]に単板の厚さと品質との関係を表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
着色部は、接着層に着色剤を混入する、表層単板に染色を施す、又は両者を併用することによって得る。接着層を着色部とするものについては、接着層に顔料を混入して調整する。顔料は粉末状、水系どちらでも使用することができる。表層単板に染色を施したものについては、染色は溶剤系木材用染料を用いる。
【0020】
その染色は、従来の木材染色に用いられている減圧法、加圧法、常圧浸漬法とは異なり、表層単板の裏面から染料をスプレー塗布あるいは刷毛による塗布をおこなう。この方法を取ることで、染料は木材の比較的密度の低い早材部により多く染み込み、晩材部にはほとんど染み込まないため、仕上がり表面は木目模様に着色面が表出することとなり、木材の風合いや色味も損なうことはない。また、従来の染色方法よりも処理時間、コスト、設備等の面で有利である。
【0021】
上記のように内部に着色部を施した合板を作製することで、着色部の配色および木材の早材部、晩材部との色の組み合わせで様々なイメージの表現が可能となる。例えば原色を用いた斬新なイメージの表現、パステルカラーを用いた軽快感の描写や寒色を使った色使いから表現される清涼感などの創出などに代表される色彩と凹凸による陰影に彩られた木目模様を持つ高意匠な合板を得ることが出来る。
【0022】
合板の層構成は、繊維方向を直行させて堆積するのが通常である。本発明においては、表層単板の下の第2層単板を表層単板と繊維方向を同じくして積層・接着をおこなう。こうすることで、浮造りの際に着色部を越えた削り込みが発生しても意匠に問題を生じることを防ぐことができる。このときに用いる単板は、表層単板と同樹種のものとし、厚さは任意とする。合板内部の応力のバランスを取るために、裏面側にも同様の積層をおこなう。
【0023】
接着剤は、従来の合板製造用のものであれば使用可能であるが、着色部に関しては接着層が露出することになるため、水性ビニルウレタンや変性酢酸ビニル樹脂などのF☆☆☆☆のものが望ましい。接着剤は通常のスプレッダ等を用いて塗布する。積層された単板は、冷圧または熱圧、あるいは両者を併用して接着する。このときの圧締温度は0〜130℃の範囲であるが、そりの少ない合板を作製するため、好ましくは冷圧可能な合板用接着剤を用いて0〜40℃の範囲で圧締する。
【0024】
【表2】

ただし、そりは幅30cm長さ90cmの合板を平面に置いた時のそりまたはねじれの最大矢高とし、表中の○:10mm以内、△:15mm以内、×:15mm以上とした。
【0025】
圧締時の圧力は、通常の合板製造時に適用される圧力(8〜10kgf/cm)を1とすると2/3〜1の間で設定する。この範囲以下の圧力では接着剤の強度発現に必要な圧力が得られず接着不良を生じさせる原因となる。この範囲以上の圧力では、表層単板晩材部の第2単板層へのめり込みや着色部となった接着層のはみ出しが生じ、浮造りに適さない合板となる。
【0026】
浮造りは、グリッドサンダ等を用いたブラッシング、あるいは単板厚やブラシの材質によってはドラムサンダやワイドベルトサンダ等を利用したサンディングを併用して行う。グリッドサンダのブラシの材質は、砥石つきナイロンや鋼、SUSなどとする。薄物合板表面に加工を施す時に、加工が表面のみであれば、表層単板が研削された分、合板内部の応力のバランスが崩れ、加工後に大きなそりを生じさせる。これを防ぐために表面と裏面を交互にサンダに供して削り込みの度合いを同等とする。特にロータリ単板を使用したものについては推奨される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明により製造される色彩浮造り合板の断面図である。
【図2】色彩浮造り合板製造時の積層を示す模式図である。
【符号の説明】
【0028】
1 表層単板
2 着色層
3 第2層単板
4 コア部分
5 裏面単板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直下の単板と同じ繊維方向に厚さ0.7〜3.0mmの単板を表層単板として配し、0〜40℃の圧締温度かつ5〜10kgf/cmの圧締圧で無色の接着剤により接着した後、ブラシまたはブラストにより削り込んで浮造りを施すことを特徴とする合板およびその製造方法
【請求項2】
着色された接着剤により接着することを特徴とする請求項1記載の合板およびその製造方法
【請求項3】
裏面より染料を塗布した単板を表層に配することを特徴とする請求項1および請求項2記載の合板およびその製造方法

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−241571(P2009−241571A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114522(P2008−114522)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人科学技術振興機構、地域イノベーション創出総合支援事業「シーズ発掘試験」、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(591190955)北海道 (121)
【Fターム(参考)】