説明

色混合照明システム

色混合照明システムは、第1のスペクトル範囲において第1のピーク波長を有する第1の可視光を発する発光ダイオード6,7と、第1の可視光の一部を第2のスペクトル範囲において第2のピーク波長を有する第2の可視光に変換する蛍光材料8とを有している。第2の可視光は少なくとも50nmの半値全幅(FWHM)を有する。第2の可視光は赤色光であり、第2のピーク波長は590から630nmまでの範囲内、好ましくは600から615nmまでの範囲内にあることが好ましい。この照明システムは、第3のスペクトル範囲において第3のピーク波長を有する第3の可視光を発する他の発光ダイオード7を有することが好ましい。本発明による色混合照明システムは、高い演色評価数を伴って白色光を生成し、原色の波長のある程度のばらつきを許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの発光ダイオードと少なくとも1つの蛍光材料とを有する色混合照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光材料と組み合わせた発光ダイオード(LED)をベースとする照明システムは、一般の照明アプリケーション用の白色光源として用いられている。また、そのような照明システムは、表示装置、例えば液晶ディスプレイ(LCD)装置又はライトタイルを点灯させるために使用されている。
【0003】
冒頭の段落において述べられたタイプの色混合照明システムは、US−B6234648号(本願出願人整理番号PHN17100)公報から知られている。この既知の色混合照明システムは、それぞれが動作中に予め選択された波長範囲の可視光を発する少なくとも2つの発光ダイオードを有している。コンバータは、照明システムの演色を最適化するように、上記LEDの一方により発せられる可視光の一部を他の波長範囲の可視光に変換する。上記ダイオードは青色発光ダイオード及び赤色発光ダイオードを含み、上記コンバータは青色発光ダイオードにより発せられる光の一部を緑色光に変換する蛍光材料を含んでいることが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LEDと蛍光材料との組み合わせが常に所望の演色評価数(CRI)をもたらすわけではないことが、上記既知の色混合照明システムの欠点である。
【0005】
本発明は、上記不都合を完全に又は部分的に取り除く目的を有している。特に、本発明の目的は、かなり高い演色評価数を有する白色光を生成する色混合照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的のために、冒頭の段落において述べられた種類の色混合照明システムが、第1のスペクトル範囲において第1のピーク波長を有する第1の可視光を発する発光ダイオードと、上記第1の可視光の一部を第2のスペクトル範囲において第2のピーク波長を有する第2の可視光に変換する蛍光材料とを有し、上記第2の可視光は少なくとも50nmの半値全幅(FWHM)を有する。
【0007】
本発明の説明及び特許請求の範囲において、光源の発光スペクトルの幅を表すために「半値全幅」という用語が用いられている。波長の関数としての光源の発光プロファイルは、ガウス曲線のプロファイルと類似している。異なるプロファイルを比較するために、通常、ピーク値又は最大値の半分に低下した時のプロファイルの両端の幅が用いられる。この「幅」が所謂FWHMとして扱われている。
【0008】
一般の照明アプリケーション用の白色光を作るために色混合システムにおいて青色、緑色及び赤色発光ダイオード(LED)を組み合わせることが知られている。相関色温度(CCT)は、個々のLEDの出力比を適切に調整することにより設定され得る。3つのLEDのスペクトル発光帯波長が430〜470nm、520〜560nm及び590〜630nmの範囲内にある場合、約80〜85の演色評価数(CRI)が可能である。また、LEDの発光スペクトルは発光ダイオードの構造及びLEDが構成される材料の組成により決定される波長(「ピーク波長」)において単一のかなり狭いピークを一般的に示すことが知られている。これは、白色光の光源を形成するために青色、緑色及び赤色LEDを組み合わせることは達成可能なCRIに制限を与えることを意味する。また、得られる演色評価数は、LEDの小さな波長のばらつきに非常に敏感である。
【0009】
本発明によれば、第1のスペクトル範囲において第1のピーク波長を有する第1の可視光を発するLED(例えば青色光を発するLED)が、上記第1の可視光又は他の適切な励起波長の一部を第2のスペクトル範囲において第2のピーク波長を有する第2の可視光に変換する蛍光材料(例えば、青色光の一部が赤色光に変換される。)と組み合わせられる。上記第2の可視光は少なくとも50nmの半値全幅(FWHM)を有し、これは対応する光を発する対応するLEDの半値全幅よりもかなり大きい(赤色LEDの典型的なFWHMは約20nmである。)ので、個々のLEDの大きな波長のばらつき(例えば、典型的なFWHMの50%以上まで)に比較的影響を受けない高い演色評価数を伴って光源が設計及び製造され得る。
【0010】
特に、赤色LEDは温度の変動により引き起こされるピーク波長及びフラックスのばらつきに敏感であり、青色ないし緑色のInGaNLEDよりも少なく安定である。また、CRIは狭い帯域の赤色LEDのピーク波長の小さなばらつきに特に敏感である。この目的のために、本発明による色混合照明システムの好ましい形態は、上記第2の可視光が赤色光であり、上記第2のピーク波長が590から630nmまでの範囲内にあることを特徴としている。上記第2のピーク波長は600から615nmまでの範囲内にあることが好ましい。赤色光は、少なくとも50nmのFWHMを有する蛍光材料により生成される。
【0011】
本発明による色混合照明システムにおいて赤色LEDの使用を回避することは、幾つかの利点を有する。通常、青色及び緑色LED(例えばInGaNフリップチップ)はサブマウント上に個々に実装される。電気的な接続のためのこのサブマウントのワイヤボンディングが必要である。上記ワイヤボンディングは、脆弱であり、LEDチップの封入に関する選択の自由を制限する。しかしながら、複数のチップ用の単一のサブマウントの場合、適切な導通構造でありながら、実際にはこれらの青色及び緑色LEDの接続に関して全てのボンドワイヤが省略され得る。しかしながら、赤色発光LED(例えばAlInGaPチップ)は、通常、フリップチップのタイプにおいて利用可能ではなく、これは上記赤色LEDへのボンドワイヤが依然として必要であることを意味する。
【0012】
また、既知の赤色LEDは、室温において良好な発光効率を示す。しかしながら、この効率は、約100℃の通常の(接合の)作業温度においてその値の実際に半分まで低下する。この温度まで、青色及び緑色LEDはかなり小さい効率の低下を示すだけである。非常に高い接合温度が望ましい場合、これは赤色LEDの上記効率をかなり低いレベルに相当低下させる。
【0013】
赤色LEDを使用することの他の欠点は、フルパワーにおける動作により引き起こされる予想される温度上昇で赤色LED(例えばAlInGaPチップ)のピーク波長がかなり大きいシフトを示すことである。これは、光源を暗くすることにより赤色LEDの色特性がかなり変化することを意味する。暗くすると、カラーポイントを積極的に観測し、駆動電流を調節することにより任意の色変化を補償することによって、カラーポイントはかなり一定に維持され得るが、演色評価数の変化を補償することは可能ではない。
【0014】
赤色LEDの使用を回避することにより、上述した問題が完全に又は部分的に回避され得る。また、少なくとも50nmのFWHMを有するルミネセンス材料により生成される赤色光を適用することにより、個々のLEDの波長のばらつきにかなり影響を受けない高い演色評価数を伴って光源が設計及び製造され得る。
【0015】
590から630nmまでの範囲内、又は好ましくは600から615nmまでの範囲内の赤色光のピーク波長に関する波長範囲は、赤色発光ルミネセンス材料の範囲からの目的にかなった選択である。発明者等は、青色及び緑色LED(例えばInGaNフリップチップ)と組み合わせられた赤色のピーク波長の選択範囲を狭くすることにより、90よりも高いCRIを伴って(2700Kから5000Kまでの範囲内における)白色光が生成される一方で、青色及び緑色LEDの発光波長のある程度のばらつきが許容されることを見出した。
【0016】
青色及び緑色LEDを赤色ルミネセンス材料と組み合わせて使用する実験及び計算から、以下のことが結論づけられ得る(詳しくは、本発明の好ましい実施の形態の詳細な説明を参照されたい。)。本発明による色混合照明システムにおける赤色ルミネセンス材料と青色及び緑色LEDとの組み合わせは、青色及び緑色LEDのピーク波長のばらつきに対して非常に強く、非常に高いCRI値をもたらす。特に、2700〜5000KのTの範囲全体においてCRI≧80を実現するために、約15nmの青色及び緑色LEDのピーク波長のばらつきが許容される。また、2700〜5000KのTの範囲全体においてCRI≧90を実現するために、約7nmの青色及び緑色LEDのピーク波長のばらつきが許容される。青色及び緑色LEDのピーク波長が独立して変動しない場合、又は同じ波長のインターバルで変動しない(例えば、小さい波長範囲において緑色を選択し、青色が(非常に)大きい波長範囲において変動することを許容する)場合、青色及び緑色LEDについての該当する波長範囲は示された範囲よりも非常に大きい。システムが特定の色温度又はより小さい色温度の範囲に照準をあてている場合にも同じことが当てはまる。
【0017】
本発明による色混合照明システムの好ましい形態は、第1の可視の上記発光ダイオードが青色光を発し、上記第1のピーク波長が450から470nmまでの範囲内にあり、上記半値全幅(FWHM)は20から25nmまでの範囲内にあることを特徴としている。好適な青色LEDは、InGaNフリップチップである。
【0018】
3つのスペクトル帯域に基づく照明用の白色光を作るために、通常3色の色混合照明システムが用いられる。そのような色混合照明システムは、青色、緑色及び赤色の光源を有する。第3の光源は、他のLED又は他の蛍光材料のいずれか一方であり得る。勿論、ブルー/シアン、緑、イエロー/アンバー及び赤色の光源の適切な混合物を使用することにより4色の色混合照明システムも製造され得る。そのような色は、LEDをルミネセンス材料と適切に組み合わせることにより達成され得る。
【0019】
この目的のために、本発明による色混合照明システムの好ましい形態は、第3のスペクトル範囲において第3のピーク波長を有する第3の可視光を発する他の発光ダイオードを有することを特徴としている。上記他の発光ダイオードは緑色光を発し、上記第3のピーク波長は510から550nmまでの範囲内にあり、上記半値全幅(FWHM)は25から45nmまでの範囲内にあることが好ましい。
【0020】
代替として、本発明による色混合照明システムの好ましい形態は、上記第1の可視光の一部を、少なくとも40nmのFWHMを有すると共に第3のスペクトル範囲において510から550nmまでの範囲の第3のピーク波長を有する第3の可視光に変換する他の蛍光材料を有することを特徴とする。
【0021】
本発明のこれらの観点及び他の観点は、以下に説明される実施の形態から明らかであり、以下に説明される実施の形態を参照して理解されるであろう。
【0022】
各図面は単に模式的なものであり、その縮尺は正確には描かれていない。特に、幾つかの寸法は、理解し易いように非常に誇張されて図示されている。各図における同様の構成要素はできる限り同一の参照符号により示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1Aは、本発明による色混合照明システムを有する照明器具の断面図を模式的に示している。図示されているように、この照明器具は、色混合照明システム1と反射器10とを有している。色混合照明システム1は、複数の青色及び緑色LEDチップ6,7と、青色LEDチップ6の上に部分的に与えられるか又は適切な(例えば、近紫外線、青、シアン又はシアングリーン色を発する)ポンプLEDの上に完全に与えられた赤色発光ルミネセンス材料8とを有している。ルミネセンス材料8は、青色LEDチップ6上にドットとして塗布されている。他の実施の形態では、上記ルミネセンス材料は、上記LEDチップ上又はLEDチップの一部の上に所定の厚さを有する層として塗布される。本発明によれば、赤色発光ルミネセンス材料8は、少なくとも50nmの半値全幅(FWHM)を有している。上記赤色発光ルミネセンス材料のピーク波長は、600から615nmまでの範囲内にあることが好ましい。
【0024】
青色光を赤色光に変換するルミネセンス材料8は、SrS:Eu、SrSi:Eu、CaS:Eu、CaSi:Eu、(Sr1−xCa)S:Eu及び(Sr1−xCaSi:Eu(但しx=0〜1)により形成される群から選択されることが好ましい。非常に好適なルミネセンス材料は、かなり高い安定性を示すSrSi:Euである。また、SrSi:Euは硫化物の使用を回避するルミネセンス材料である。SrS:Euは約610nmのピーク波長を有し、SrSi:Euは約620nmのピーク波長を有し、CaS:Euは約655nmのピーク波長を有するのに対して、CaSi:Euは約610nmのピーク波長を有する。
【0025】
赤色LEDよりも非常に広い赤色ルミネセンス材料8のスペクトル範囲(それぞれ約20nm及び70nmのFWHM)のために、色混合照明システムは、3色のみにより90よりも良好なCRIを伴って実現され得る(図3も参照されたい。)。
【0026】
上記色混合照明システムの標準的な作業温度において、上述した蛍光体の著しいルミネセンス消光は認められない。また、ルミネセンス材料8のピーク波長は、(赤色AlInGaPLEDの発光とは大きく異なり)200℃までの温度に関して安定である。ルミネセンス材料8の赤色のフラックスの温度依存性は、InGaNの色(青色ないし緑色)に関しても同様である。また、赤色ルミネセンス材料8の安定した発光のために赤色LEDのビニングはもはや必要ない。
【0027】
反射器10は、少なくとも多角形の断面を有する周壁の部分と、少なくとも面(facet)50を有する周囲本体の部分とを備えている。この反射器10は、光を所望の角度分布に視準し、色混合照明システム1からの光を混合する。上記反射器の第1の部分2は、青色及び緑色LEDチップ6,7並びに赤色発光ルミネセンス材料8のために充填剤又は封入された材料を有し得る。代替の実施の形態では、この部分2は色混合照明システムを形成する。反射器10の上部4は、必要に応じて空中に存在していてもよく、実際には好ましいコスト及び重量を考慮して空中に存在することが好ましい。反射器10は、光軸21に関してn(典型的n=6又は8であるが、任意の整数であり得る。)個の部分から成る対称性を有する中空管のような構造であることが好ましい。光軸21に対して垂直な任意の面における上部4の断面は、光軸21を中心とする正多角形、例えば六角形又は八角形である。反射器10は、主要な反射器を機械的に保護するために(透明の)カバー板16を含み得る。このカバー板16は、例えばプラスチック及びガラスのような材料により形成され、全く(clear)透明の平らで滑らかな板であり得る、任意の所望の拡散量を有し、すりガラス、プリズムガラス、波形ガラス等であり得る及び/又はステアリング若しくは屈折性又はこれらの特性を併せ持ち得る。カバー板16の上記固有の特性は、色混合照明システム1の様相に影響を及ぼし、ある程度全体的な光の出力分布に影響を及ぼす。しかしながら、カバー板16は、動作原理に必須ではなく、反射器10の設計の自由度とバリエーションを与える。
【0028】
図1に示されているような照明器具は、LEDチップ6,7及びルミネセンス材料8の近くに「主要な光学系」を全く設けることなくLEDチップ6,7及び赤色発光ルミネセンス材料8のアレイの完全な2×90°の発光を受け入れる。
【0029】
図1Bは、本発明による色混合照明システムの他の実施の形態の断面図を模式的に示している。図示されているように、色混合照明システム1は、複数の青色LEDチップ6と、赤色発光ルミネセンス材料8及び緑色発光ルミネセンス材料9とを有しており、上記両方のルミネセンス材料8,9は青色LEDチップ6の上に部分的に与えられている。
【0030】
青色光を緑色光に変換する蛍光材料9は、(Ba1−xSrSiO:Eu(x=0〜1、好ましくはx=0.5)、SrGa:Eu、LuAl12:Ce及びSrSi:Euにより形成される群から選択されることが好ましい。安定性の面において、LuAl12:Ce及びSrSi:Euが特に好適なルミネセンス材料である。また、これら後者のルミネセンス材料は硫化物の使用を回避する。(Ba0.5Sr0.5SiO:Euは約523nmのピーク波長を有し、SrGa:Euは約535nmのピーク波長を有し、LuAl12:Ceは約515nm及び545nmのピーク波長を有するのに対して、SrSi:Euは約541nmのピーク波長を有する。
【0031】
本発明による色混合照明システムにイエロー/アンバー色発光ルミネセンス材料が使用される場合、非常に好適なルミネセンス材料は、化学式のx及びyの値に依存して560〜590nmの範囲のピーク波長を有する(Y1−xGd(Al1−yGa12:Ceである。x及びyは、0.0ないし0.5の範囲内にあることが好ましい。
【0032】
緑色LEDよりも非常に広い緑色ルミネセンス材料のスペクトル範囲のために(約40nmに対して70nmのFWHM)、色混合照明システムはかなり高いCRIを伴って実現され得る。
【0033】
好ましいLEDをベースとする光源は以下のものを有する。
1)青色発光InGaNLEDチップと、緑色発光InGaNLEDチップ(又は、好ましくは緑色発光ルミネセンス材料(蛍光体)を励起する青色発光チップ)と、赤色発光蛍光体を励起するInGaNチップとの構成物よりなる3色のシステム。上記ルミネセンス材料は、変換過程により生じるストークスシフトエネルギー損失をできる限りなくすためにシアングリーン色発光LEDチップにより励起されることが好ましい。
2)青色発光LEDチップと、効率が最適化される(ストークスシフトが最小化される)ように青色又はより長い波長において発光するLEDチップにより励起される色に変換される3つの異なるルミネセンス材料との構成物よりなる4色のシステム。
3)青又はシアン色発光LEDチップと、著しい青色のリークを伴ってシアン色発光ルミネセンス材料を励起する青色チップと、ルミネセンス材料、好ましくは緑,イエロー/アンバー及び赤色発光蛍光体の混合物を励起するLEDチップとの構成物よりなる単色パラメータシステム。
【0034】
好ましいルミネセンス材料(蛍光体)は、アルカリ土類酸化物,硫化物,窒化物,SiON又はSiAlONのタイプの母体格子から作られたEu2+及びCe3+ドープ材料であり、これらは多くの市販の蛍光体に対して大きな利点、例えば青色光の強い吸収を示す。
【0035】
赤色ルミネセンス材料の波長範囲の選択に関して、以下の考察が与えられ得る。T=2700Kの色温度に関して、赤色ルミネセンス材料の最適な(CRI≧92)ピーク波長λp,red phosphorは、λp,red phosphor=610〜615nmの範囲内であることが好ましい。同様に、T=5000Kに関しては、λp,red phosphor=600〜605nmの範囲内であることが好ましい。CRI≧90の場合、赤色ルミネセンス材料のピーク波長に関する下限は590nm(T=5000K)であることが好ましく、上限は630nm(T=2700K)であることが好ましい。
【0036】
また、CRI≧90であり、青色LED及び緑色LEDの両方において少なくとも5nmの波長のばらつきを認める場合には、上記下限(T=5000K)はλp,red phosphor=595nmであり、上記上限(T=2700K)はλp,red phosphor=620nmである。
【0037】
2700Kから5000KまでのTの範囲全体に関してCRI≧90に達することができるように、λp,red phosphor=605〜615nmであることが好ましい。
【0038】
CRI≧80であり、青色及び緑色LEDの両方のピーク波長の少なくとも15nmの波長のばらつきを認める場合には、上記下限(T=5000K)はλp,red phosphor=590nmであり、上記上限(T=2700K)はλp,red phosphor=620nmである。2700Kから5000KまでのTの範囲全体に関してCRI≧80に達することができるようにするため、赤色ルミネセンス材料のピーク波長はλp,red phosphor=590〜630nmの範囲内であることが好ましい。
【0039】
上述の考察から以下の結論が得られる。
1)CRI≧80を条件とし、青色及び緑色LEDの両方のピーク波長の15nmというかなり大きいばらつきを認める場合、赤色ルミネセンス材料のピーク波長はλp,red phosphor=590〜620nmの範囲内であることが好ましい。
2)CRI≧90を条件とし、青色及び緑色LEDの両方のピーク波長の約7nmという妥当なばらつきを認める場合(このケースにおいて青色及び緑色の両方に関して15nmというかなり大きいばらつきは可能ではない。)、赤色ルミネセンス材料のピーク波長はλp,red phosphor=600〜615nmの範囲内であることが好ましい。(2700Kから5000Kまでの色温度の範囲に関する)赤色ルミネセンス材料の非常に好適なピーク波長はλp,red phosphor=610nmである。
【0040】
赤色ルミネセンス材料に関する上述の考察を鑑みて青色LEDの波長範囲を選択する場合、赤色ルミネセンス材料に関するピーク波長がλp,red phosphor=610nmであると仮定して以下の考察が与えられ得る。CRI≧90であり、少なくとも5nmの緑色のピーク波長のばらつきの場合、青色のピーク波長は、下限がλp,B=448nm(T=2700K)であり、上限がλp,B=473nm(T=2700K)の範囲内であることが好ましい。Tが高くなるほど、波長範囲は小さくなる。
【0041】
少なくとも5nmの緑色のピーク波長のばらつきを伴ってTの範囲全体にわたってCRI≧90を得るためには、青色のピーク波長がλp,B=456〜465nmの範囲内であることが好ましい。このケースにおいてGとBとは独立ではないことを述べておく。
【0042】
少なくとも5nmの独立した緑色のピーク波長のばらつきを伴ってTの範囲全体にわたってCRI≧90を得るためには、青色のピーク波長がλp,B=458〜463nmの範囲内であることが好ましい。CRI≧80であり、少なくとも15nmの緑色のピーク波長のばらつきの場合、青色のピーク波長は、下限がλp,B=435nm(T=2700K)であり、上限がλp,B=480nm(T=2700K)の範囲内であることが好ましい。Tが高くなるほど、波長範囲は小さくなる。
【0043】
少なくとも5nmの緑色のピーク波長のばらつきを伴ってTの範囲全体にわたってCRI≧80を得るためには、青色のピーク波長がλp,B=440〜474nmの範囲内であることが好ましい。少なくとも15nmの緑色のピーク波長のばらつきを伴ってTの範囲全体にわたってCRI≧80を得るためには、青色のピーク波長がλp,B=445〜471nmの範囲内であることが好ましい。これらのケースにおいてGとBとは独立ではないことを述べておく。
【0044】
少なくとも5nmの独立した緑色のピーク波長のばらつきを伴ってTの範囲全体にわたってCRI≧80を得るためには、青色のピーク波長がλp,B=445〜470nmの範囲内であることが好ましい。少なくとも15nmの独立した緑色のピーク波長のばらつきを伴ってTの範囲全体にわたってCRI≧80を得るためには、青色のピーク波長がλp,B=452〜467nmの範囲内であることが好ましい。
【0045】
赤色ルミネセンス材料及び青色LEDに関する上述の考察を鑑みて緑色LEDの波長範囲を選択する場合、赤色ルミネセンス材料に関するピーク波長がλp,red phosphor=610nmであると仮定して以下の考察が与えられ得る。CRI≧90であり、少なくとも5nmの青色のピーク波長のばらつきの場合、緑色のピーク波長は、下限がλp,G=525nm(T=2700K)であり、上限がλp,G=537nm(T=2700K)の範囲内であることが好ましい。Tが高くなるほど、波長範囲は小さくなる。
【0046】
少なくとも5nmの青色のピーク波長のばらつきを伴ってTの範囲全体にわたってCRI≧90を得ることができるように、緑色のピーク波長はλp,G=528〜536nmの範囲内であることが好ましい。このケースにおいてGとBとは独立ではないことを述べておく。
【0047】
少なくとも5nmの独立した青色のピーク波長のばらつきを伴ってTの範囲全体にわたってCRI≧90を得ることができるように、緑色のピーク波長はλp,G=529〜534nmの範囲内であることが好ましい。
【0048】
CRI≧80であり、少なくとも15nmの青色のピーク波長のばらつきの場合、緑色のピーク波長は、下限がλp,G=516nm(T=2700K)であり、上限がλp,G=545nm(T=2700K)の範囲内であることが好ましい。Tが高くなるほど、波長範囲は小さくなる。少なくとも5nmの青色のピーク波長のばらつきを伴ってTの範囲全体にわたってCRI≧80を得ることができるように、緑色のピーク波長はλp,G=516〜546nmの範囲内であることが好ましい。少なくとも15nmの青色のピーク波長のばらつきを伴ってTの範囲全体にわたってCRI≧80を得ることができるように、緑色のピーク波長はλp,G=518〜543nmの範囲内であることが好ましい。これらのケースにおいてGとBとは独立ではないことを述べておく。
【0049】
少なくとも5nmの独立した青色のピーク波長のばらつきを伴ってTの範囲全体にわたってCRI≧80を得ることができるように、緑色のピーク波長はλp,G=520〜542nmの範囲内であることが好ましい。少なくとも15nmの独立した青色のピーク波長のばらつきを伴ってTの範囲全体にわたってCRI≧80を得ることができるように、緑色のピーク波長はλp,G=524〜539nmの範囲内であることが好ましい。色の混合についての上述の考察から、赤、緑及び青色の混合に関して、固有の緑色及び青色LEDの発光と組み合わせて赤色蛍光体を使用することが有利であることが結論づけられ得る。λp,red phosphor=610nmの赤色ルミネセンス材料のピーク波長であれば、Tの範囲全体(2700〜5000K)に関する最高のCRI値は、λp,G=531nmの緑色LEDのピーク波長と組み合わせられたλp,B=460nmの青色LEDのピーク波長で得られる。2700Kから5000KまでのTの範囲を対象範囲に含めるために、最適なピーク波長又はピーク波長の範囲(全ての波長の組み合わせが表示されているCRIを得るためにやはり有効である。)が表1にまとめられている。
【表1】

この結果は(例えばAlInGaPLEDチップを使用した)赤色、緑色及び青色LEDの既知の組み合わせと比較され得る。最良のCRIの結果は、約λp,R=615nm、λp,G=540nm、λp,B=462nmのピーク波長において得られる。理想的な波長を有するこれらのLEDの上記組み合わせでは、CRI≧90を得ることは可能ではないことに注意されたい。波長のばらつきを考慮に入れて、CRI≧80に関して、表2に与えられているような結果が得られる。ピーク波長のかなり小さい許容されたばらつき(約6nm)に注意されたい。
【表2】

【0050】
図2は、赤色発光ルミネセンス材料8と組み合わせられた青色及び緑色LED6,7を有する本発明の一実施の形態による色混合照明システムのスペクトル組成を示している。上記色混合照明システムの構成要素の(ワット/mmで表された)出力パワーPが(nmで表された)波長λの関数として示されている。「B」が付されている曲線は青色LED6の発光スペクトルを示しており、「G」が付されている曲線は緑色LED7の発光スペクトルを示しており、「R」が付されている曲線は赤色ルミネセンス材料8の発光スペクトルを示している。全体のスペクトルは、「T」が付されている曲線により示されている。図2に示されているような色混合照明システムは、94の演色評価数(CRI)で4000Kの相関色温度(CCT)において100lmを発光することが可能である。25℃と120℃との接合温度において赤色発光ルミネセンス材料8のスペクトルは同じであるので、CRIは94のかなり高いレベルのままである。
【0051】
図3Aは、2700Kの色温度に関して、赤色発光ルミネセンス材料8と組み合わせられた青色及び緑色LED6,7を有する本発明の一実施の形態による色混合照明システムに関する演色評価数を青色及び緑色LEDのピーク波長の関数として示している。
【0052】
図3Aの例では、610nmの波長ピーク及び83nmのFWHMを有する赤色発光ルミネセンス材料8が使用されている。図3Aのy軸に沿って、ピーク波長が447nmと482nmとの間で変動する状態で、23nmの典型的なFWHMを有する青色LED6の(nmで表された)ピーク波長λp、Bが示されている。図3Aのx軸に沿って、ピーク波長が512nmと557nmとの間で変動する状態で、35nmの典型的なFWHMを有する緑色LED7の(nmで表された)ピーク波長λp、Gが示されている。図3Aに示されている種々の領域は、演色評価数(CRI)のある値を有する各領域を示している。特に、図3Aの中央の領域は、CRIが90と95との間の範囲にある領域を表している。図3Aの上記中央の領域の周りの第1の領域は、CRIが85と90との間の範囲にある領域を表している。図3Aの上記中央の領域の周りの第2の領域は、CRIが80と85との間の範囲等にある領域を表している。(600から615nmまでの好ましい範囲内において)610nmのピーク波長と組み合わせられた赤色発光ルミネセンス材料8の(50nmを上回る)かなり広いFWHMが与えられると、CRI≧90の演色評価数の値がかなり大きい波長範囲において3色のみの組み合わせにより実現され得ることが分かる。
【0053】
図3Bは、5000Kの色温度に関して、赤色発光ルミネセンス材料8と組み合わせられた青色及び緑色LED6,7を有する本発明の一実施の形態による色混合照明システムに関する演色評価数を青色及び緑色LEDのピーク波長の関数として示している。
【0054】
図3Bの例では、610nmの波長ピーク及び83nmのFWHMを有する赤色発光ルミネセンス材料8が使用されている。図3Bのy軸に沿って、ピーク波長が447nmと482nmとの間で変動する状態で、23nmの典型的なFWHMを有する青色LED6の(nmで表された)ピーク波長λp、Bが示されている。図3Bのx軸に沿って、ピーク波長が512nmと557nmとの間で変動する状態で、35nmの典型的なFWHMを有する緑色LED7の(nmで表された)ピーク波長λp、Gが示されている。図3Bに示されている種々の領域は、演色評価数(CRI)のある値を有する各領域を示している。特に、図3Bの中央の領域は、CRIが90と95との間の範囲にある領域を表している。図3Bの上記中央の領域の周りの第1の領域は、CRIが85と90との間の範囲にある領域を表している。図3Bの上記中央の領域の周りの第2の領域は、CRIが80と85との間の範囲等にある領域を表している。(600から615nmまでの好ましい範囲内において)610nmのピーク波長と組み合わせられた赤色発光ルミネセンス材料8の(50nmを上回る)かなり広いFWHMが与えられると、CRI≧90の演色評価数の値がかなり大きい波長範囲において3色のみの組み合わせにより実現され得ることが分かる。
【0055】
上述した実施の形態は本発明を限定するものではなく本発明を説明するものであり、当業者であれば後に付されている特許請求の範囲から逸脱することなく多数の他の実施の形態を設計することができることに注意されたい。特許請求の範囲において、括弧内の任意の参照符号は特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではない。動詞「有する」及びその活用の使用は、特許請求の範囲において明記されている構成要素又はステップ以外の構成要素又はステップの存在を排除するものではない。構成要素の前に付されている冠詞「a」又は「an」は、複数のそのような構成要素の存在を排除するものではない。本発明は、幾つかの個別の構成要素を有するハードウェア及び適切にプログラムされたコンピュータにより実現され得る。幾つかの手段を列挙した装置の特許請求の範囲において、これらの手段の幾つかはハードウェアの1つの同じアイテムにより具現化され得る。互いに異なる従属請求項において何らかの策(measures)が列挙されているという単なる事実は、これらの策の組み合わせが有利に用いられ得ないことを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1A】本発明による色混合照明システムを有する照明器具の断面図である。
【図1B】本発明による色混合照明システムの他の実施の形態の断面図である。
【図2】赤色発光ルミネセンス材料と組み合わせられた青色及び緑色LEDを有する本発明の一実施の形態による色混合照明システムのスペクトル組成を示している。
【図3A】2700Kの色温度に関して、赤色発光ルミネセンス材料と組み合わせられた青色及び緑色LEDを有する本発明の一実施の形態による色混合照明システムに関する演色評価数を青色及び緑色LEDのピーク波長の関数として示している。
【図3B】5000Kの色温度に関して、赤色発光ルミネセンス材料と組み合わせられた青色及び緑色LEDを有する本発明の一実施の形態による色混合照明システムに関する演色評価数を青色及び緑色LEDのピーク波長の関数として示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスペクトル範囲において第1のピーク波長を有する第1の可視光を発する発光ダイオードと、
前記第1の可視光の一部を第2のスペクトル範囲において第2のピーク波長を有する第2の可視光に変換する蛍光材料と
を有し、前記第2の可視光は少なくとも50nmの半値全幅(FWHM)を有する色混合照明システム。
【請求項2】
前記第2の可視光は赤色光であり、前記第2のピーク波長は590から630nmまでの範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の色混合照明システム。
【請求項3】
前記第2のピーク波長は600から615nmまでの範囲内にあることを特徴とする請求項2記載の色混合照明システム。
【請求項4】
第1の可視光を発する前記発光ダイオードは青色光を発し、前記第1のピーク波長は445から470nmまでの範囲内にあり、前記半値全幅(FWHM)は15から30nmまでの範囲内にあることを特徴とする請求項1又は2記載の色混合照明システム。
【請求項5】
第3のスペクトル範囲において第3のピーク波長を有する第3の可視光を発する他の発光ダイオードを有することを特徴とする請求項1又は2記載の色混合照明システム。
【請求項6】
前記他の発光ダイオードは緑色光を発し、前記第3のピーク波長は510から550nmまでの範囲内にあり、前記半値全幅(FWHM)は25から45nmまでの範囲内にあることを特徴とする請求項5記載の色混合照明システム。
【請求項7】
前記蛍光材料は、青色光を赤色光に変換し、SrS:Eu,SrSi:Eu,CaS:Eu,CaSi:Eu,(Sr1−xCa)S:Eu及び(Sr1−xCaSi:Eu(但し、x=0.0〜1.0)により形成される群から選択されたことを特徴とする請求項1又は2記載の色混合照明システム。
【請求項8】
前記第1の可視光の一部を、少なくとも40nmのFWHMを有すると共に第3のスペクトル範囲において510から550nmまでの範囲の第3のピーク波長を有する第3の可視光に変換する他の蛍光材料を有することを特徴とする請求項1又は2記載の色混合照明システム。
【請求項9】
前記他の蛍光材料は青色光を緑色光に変換し、(Ba1−xSrSiO:Eu(但し、x=0〜1、好ましくはx=0.5),SrGa:Eu,LuAl12:Ce及びSrSi:Euにより形成される群から選択されたことを特徴とする請求項8記載の色混合照明システム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2007−504644(P2007−504644A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524478(P2006−524478)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051431
【国際公開番号】WO2005/022030
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】