説明

色素増感太陽電池

【課題】太陽光の有効利用を図り、色素増感太陽電池の光電変換効率を向上させる。
【解決手段】太陽光中の短波長領域の光を色素増感半導体層により光電変換可能な500nm〜650nmの長波長領域の光に波長変換する蛍光物質が非晶性含フッ素ポリマー中に分散している波長変換膜が、太陽光側の最外層として配設されていることを特徴とする色素増感太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光の有効利用を図ることにより、光電変換率を向上させた色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を光電変換して電気エネルギーを取り出す半導体太陽電池としては、単結晶シリコン、アモルファスシリコンなどを用いる無機系太陽電池が主流であり、光電変換効率も30%程度にまで高められている。
【0003】
こうした無機系太陽電池では、アモルファスシリコンの吸収ピーク波長が600nm付近にあり、単結晶シリコンでは800nm付近にあるため、光電変換に有効に利用される光は600nm以上の長波長領域の光に限られている。
【0004】
そこで、太陽光中の短波長領域の光も有効利用するため、短波長の光を希土類金属イオンや希土類金属錯体、蛍光色素などの蛍光物質により長波長の光に変換し、光電変換可能な光とすることが試みられている(特許文献1〜12)。かかる蛍光物質は、波長変換膜として、あるいは既存の透明電極や反射防止膜中に分散させて、さらにはカバーシートなどとして配設することにより、その効果を達成させようとしている。
【0005】
半導体系太陽電池には、無機系の太陽電池のほか、ローダミンBなどの有機色素やルテニウムなどの遷移金属の錯体の増感作用を利用する色素増感太陽電池がある(特許文献13〜16)。
【0006】
かかる色素増感太陽電池は光の吸収ピーク波長位置を増感色素の選択によりある程度制御できる点、コスト面や製造の容易さの点で無機系太陽電池よりも優れているが、無機系太陽電池にはない色素増感太陽電池に固有の課題が残っており、光電変換効率が5%程度に止まっているのが現状である。
【0007】
そこで、最近、色素増感太陽電池においても、700nm以上の近赤外光領域の光を用いて波長が550nm付近の光に変換可能な蛍光体微粒子の層を受光面側に施す試み(特許文献17)や、500nm以下の光を波長が500〜600nmの光に変換可能な蛍光体の層を受光面側に施す試み(特許文献18)も行われている。
【0008】
特許文献17に開示の技術では、700nm以上の近赤外光領域の光を波長が550nm付近の光に変換して利用するものであるため、色素増感太陽電池システムにおいて酸化還元に用いられるヨウ素イオン(I-、I3-)が450nm前後に吸収を有することから、太陽光に含まれているその波長付近の光を有効に光電変換に利用できず、波長変換効率において劣るものである。
【0009】
一方、特許文献18に開示の技術では、太陽光に含まれている500nm以下の波長付近の光を有効に光電変換に利用できるものの、無機系蛍光体や有機系蛍光物質をポリスチレン、セルロースなどの有機系樹脂、シリカなどの無機系マトリックスに分散させた波長変換層が示唆されているだけであり、波長変換効率は充分ではない。
【0010】
【特許文献1】特開昭58−106877号公報
【特許文献2】特開昭63−6881号公報
【特許文献3】特開平8−204222号公報
【特許文献4】特開平9−230396号公報
【特許文献5】特開平10−247739号公報
【特許文献6】特開平11−345993号公報
【特許文献7】特開2000−313877号公報
【特許文献8】特開2001−308365号公報
【特許文献9】特開2001−352091号公報
【特許文献10】特開2003−218367号公報
【特許文献11】特開2003−218379号公報
【特許文献12】特開2003−243682号公報
【特許文献13】特開平10−255863号公報
【特許文献14】特開2002−363418号公報
【特許文献15】特開2003−338326号公報
【特許文献16】特開2003−317814号公報
【特許文献17】特開2004−31050号公報
【特許文献18】特開2004−171815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、太陽光の有効利用を図り、色素増感太陽電池の光電変換効率を向上させることを目的とする。
【0012】
また、色素増感太陽電池が抱える色素増感太陽電池に固有の課題である酸化還元系電解質の光吸収による光電変換効率の低下の課題をも解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明は、太陽光中の短波長領域の光を色素増感半導体層により光電変換可能な500nm〜650nmの長波長領域の光に波長変換する蛍光物質(B)が分散している波長変換膜が、太陽光側の最外層として配設されており、前記波長変換膜が、非晶性含フッ素ポリマー(A)をマトリックスポリマーとし、蛍光物質(B)が該マトリックスポリマー中に分散している膜であることを特徴とする色素増感太陽電池に関する。
【0014】
前記波長変換膜として、非晶性含フッ素ポリマー(A)をマトリックスポリマーとし、蛍光物質が該マトリックスポリマー中に分散している膜を用いることにより、蛍光物質(B)、特に希土類金属錯体の発光効率がさらに向上し、光電変換効率も向上する。
【0015】
前記色素増感太陽電池における酸化還元系電解質がヨウ化物イオンまたは三ヨウ化物イオンであり、かつ波長変換膜中に含まれる蛍光物質が希土類金属錯体からなるときは、紫外光領域の光のみならず、ヨウ化物イオンまたは三ヨウ化物イオンが吸収する波長の光を希土類金属錯体で有効利用でき、光電変換効率の向上がさらに奏される。
【0016】
前記波長変換膜中に含まれる蛍光物質(B)としては、Tb錯体またはEu錯体が好ましく、さらに、Tb錯体またはEu錯体が吸収スペクトルの最大吸収ピーク波長を400nm以下の波長領域に有しており、かつその最大吸収ピーク波長の吸光係数が1000以上である錯体であるときに、より光電変換効率の向上が達成できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の色素増感太陽電池によれば、太陽光の有効利用を図り、光電変換効率を向上させることができる。
【0018】
また、色素増感太陽電池が抱える固有の課題である酸化還元系電解質の光吸収による光電変換率の低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の色素増感太陽電池の基本構造を図1に従って説明する。
【0020】
図1において、1は波長変換膜であり、透明基板2、透明電極3、増感色素が吸着された半導体粒子5からなる色素増感半導体層4、電解液層(キャリア輸送層)6、対抗(ホール集電)電極7および支持基板8から構成されており、波長変換膜1側から太陽光9が入射される。これらの構造のうち、波長変換膜1以外は従来の色素増感太陽電池が有している基本構造であり、前記特許文献13〜18にそれぞれの構造、製法、成分などが記載されており、本発明でもそれらの記載を引用する。なお、従来の色素増感太陽電池において透明電極2から支持基板8までの基本構造に、たとえば透明電極保護層、反射防止膜、紫外線遮断膜などの配設など種々の変更が加えられていることがあるが、そうした変更された構造も、本発明の色素増感太陽電池に適用可能である。
【0021】
本発明において、非晶性含フッ素ポリマー(A)をマトリックスポリマーとする波長変換膜中には蛍光物質(B)が分散されている。蛍光物質(B)は、太陽光中の短波長領域の光を色素増感半導体層により光電変換可能な500nm〜650nmの長波長領域の光に波長変換する機能を有しているものであり、無機系の太陽電池でも使用されている蛍光物質が使用できる。
【0022】
ただし、本発明では光電変換の中心を担う作用機構が色素増感作用であり、かつ効率的に光電変換可能な光の波長領域が500nm〜650nmであるため、色素増感半導体を構成する増感色素の種類(Ru系色素、クマリン系色素など)を考慮して選定する必要がある。
【0023】
また、蛍光物質(B)の選定の要因として、色素増感太陽電池に固有のものである酸化還元系電解液(電解質+溶媒)の作用も考慮することが重要である。すなわち、使用する酸化還元系電解質および溶媒はそれぞれ固有の吸収波長を有しており、それらが吸収した光はエネルギー変換には寄与しない。
【0024】
蛍光物質、増感色素および酸化還元系電解液の具体例および組合せについては後述する。
【0025】
蛍光物質が吸収する光は色素増感半導体層で有効に光電変換できない短波長領域の光であり、吸収スペクトルのピーク波長が500nm未満、好ましくは400nm以下にある光である。吸収ピーク波長の下限は通常200nm程度である。
【0026】
また、吸収スペクトルのピークがシャープな蛍光物質でもよいが、短波長領域を広くカバーできる吸収波長領域幅が広い物質の方が太陽光をさらに有効に利用できる点で望ましい。
【0027】
またさらに、上記した酸化還元系電解質および溶媒の固有の吸収波長をも吸収波長領域に含む物質が光電変換効率の低下を抑制できる点で好ましい。
【0028】
蛍光物質の変換波長は500nmから650nmの範囲であり、この範囲にあれば、色素増感半導体により有効に光電変換される。
【0029】
蛍光物質(B)の具体例としては、希土類金属錯体、希土類金属イオン、有機蛍光色素などがあげられる。
【0030】
希土類金属錯体としては、Tb、Euの希土類金属の錯体であって有機化合物を配位子とするものが、吸収ピーク波長位置および吸収波長領域幅を制御できる点から好ましい。
【0031】
前記のとおり配位子を選択することにより吸収ピーク波長や吸収波長幅を制御できる。また、配位子としては、具体的には、β−ジケトン構造を有する配位子、β−ジスルフォニル構造を有する配位子、カルボニルイミド構造を有する配位子、スルホンイミド構造を有する配位子があげられ、これらは形成した錯体の発光効率が良好な点で好ましい。
【0032】
具体的には、
【0033】
【化1】

【0034】
が例示でき、なかでも
【0035】
【化2】

【0036】
が、紫外領域における吸光係数が高い点、形成した錯体の発光効率が高い点で好ましく挙げられる。
【0037】
特に有効な蛍光物質(B)としては、Tb錯体またはEu錯体であって、吸収スペクトルの最大吸収ピーク波長を400nm以下の波長領域に有しており、かつ該最大吸収ピーク波長の吸光係数が1000以上、さらには10000以上である錯体が好ましい。吸光係数が大きい方が変換される波長の光の強度が強くなり、光電変換効率が向上する。
【0038】
それらの具体的な錯体としては上記配位子を有するTb錯体およびEu錯体が挙げられ、これらは紫外光領域の光のみならず、ヨウ化物イオンまたは三ヨウ化物イオンが吸収する波長の光を吸収し、可視光領域の光に高効率に変換できる点から好ましい。
【0039】
特に好ましい錯体としてはつぎのものが例示できる。
【0040】
【化3】

【0041】
最大吸収ピーク波長:390nm
最大吸収ピーク波長の吸光係数:12000
吸収波長幅:300〜480nm
変換波長:615nm
【0042】
【化4】

【0043】
最大吸収ピーク波長:350nm
最大吸収ピーク波長の吸光係数:1500
吸収波長幅:300〜390nm
変換波長:615nm
【0044】
【化5】

【0045】
最大吸収ピーク波長:360nm
最大吸収ピーク波長の吸光係数:2300
吸収波長幅:300〜380nm
変換波長:550nm
【0046】
その他の蛍光物質としては、Tb3+、Eu3+などの希土類金属イオンや、ローダミンやクマリンなどの蛍光色素なども使用できる。
【0047】
本発明の特徴の1つは、波長変換膜のマトリックスポリマーとして非晶性含フッ素ポリマー(A)を用いることにある。非晶性含フッ素ポリマー(A)を用いることにより、透明性および耐候性、耐溶剤性、耐熱性などに優れた膜を形成でき、さらに蛍光物質、特に希土類金属錯体の発光効率をさらに向上させて光電変換効率を向上させることができる。
【0048】
本発明で波長変換膜のマトリックスポリマーとして用いる非晶性含フッ素ポリマー(A)は、フッ素含有率のできる限り高いことが望ましい。好ましいフッ素含有率は、20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に50質量%以上である。
【0049】
上限は水素原子が全てフッ素原子に置き換えられたポリマーであるが、ポリマーの構造によって異なるものの、フッ素含有率が高くなりすぎると、蛍光物質との相溶性、分散性が低下してしまう傾向にある。
【0050】
非晶性含フッ素ポリマー(A)としての好ましい第一のポリマーとしては、ポリマー側鎖を形成し得る部分またはポリマー主鎖を形成し得る部分の少なくとも一方に、フッ素原子を有する含フッ素アクリレート類由来の構造単位を有する含フッ素アクリレート系重合体(A1)である。
【0051】
具体例としては、式(1):
【0052】
【化6】

【0053】
(式中、X1はH、F、Cl、CH3またはCF3;R1はエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜50の1価の炭化水素基およびエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜50の1価の含フッ素炭化水素基から選ばれる基であって、ただし、X1、R1の少なくとも一方にフッ素原子を含む)で表される含フッ素アクリレート類(a1−1)から選ばれる少なくとも1種の単量体由来の構造単位を有するものが好ましい。
【0054】
1を除いた具体的構造として、
【0055】
【化7】

【0056】
などの構造を有するものが挙げられ、なかでも、
【0057】
【化8】

【0058】
の構造を有するものが重合性の面で好ましく、さらには、
【0059】
【化9】

【0060】
の構造を有するものが蛍光物質(B)との組成物とした場合、発光強度、発光効率を向上できる点で好ましく、さらに得られた重合体に透明性と耐熱性を付与できる点で、また機械的強度を付与できる点で好ましい。
【0061】
含フッ素アクリレート(a1−1)におけるXがFまたはCF3である場合、側鎖のR1は、フッ素原子を含んでいなくてもよいが、通常、エーテル結合を有していてもよい炭素数1〜50の1価の含フッ素アルキル基、エーテル結合を有していてもよい芳香族環状構造を含む炭素数2〜50の1価の含フッ素アリール基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0062】
それによって、含フッ素アクリレート系重合体(A1)のフッ素含有率を大幅に向上させることができ、蛍光物質(B)との組成物とした場合、発光強度、発光効率を向上できる点で好ましい。
【0063】
なかでもエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜50の1価の含フッ素アルキル基から選ばれる少なくとも1種であることが、透明性の点で、発光強度、発光効率の面でさらに向上し、好ましい。
【0064】
本発明において、含フッ素アクリレート系重合体(A1)を構成する構造単位を与える含フッ素アクリレート(a1−1)としては、具体的には以下の単量体が好ましく挙げられる。
【0065】
(a1−i)直鎖状の含フッ素アルキル基を有する単量体
【0066】
【化10】

【0067】
が好ましく挙げられ、なかでも
CH2=CF−COO−CH2CF2CF2H、
CH2=CF−COO−CH2(CF2CF22
が特に好ましく挙げられる。
【0068】
また、
(a1−ii)分枝状の含フッ素アルキル基を有する単量体
【0069】
【化11】

【0070】
が特に好ましく挙げられる。
【0071】
(a1−iii)エーテル結合を有する含フッ素アルキル基を側鎖にもつ単量体
【0072】
【化12】

【0073】
が特に好ましく挙げられる。
【0074】
また、含フッ素アクリレート系重合体(A1)の重量平均分子量は500〜1,000,000、さらには5,000〜800,000、特に10,000〜500,000が好ましい。
【0075】
つぎに含フッ素アクリレート系重合体(A1)をガラス転移温度(Tg)とフッ素含有率の観点から説明し、例示する(具体例が前述の例と重複する場合もある)。
【0076】
かかる観点から、好ましい含フッ素アクリレート系重合体(A1)の第一は、(A1−I)ガラス転移温度が40℃以上でフッ素含有率が50質量%以上である含フッ素アクリル重合体である。
【0077】
ガラス転移温度が40℃より低いと室温で変形して形状安定性に問題があり、また希土類金属イオンが移動し再分布して相分離を惹き起こすことがある。ガラス転移温度は、発光素子などにした際に自己発熱によりマトリックスの重合体自体が加熱されるため、耐熱性の点から好ましくは65℃以上、さらには100℃以上である。上限は特に限定されないが、含フッ素アクリル重合体では通常200℃程度である。
【0078】
もちろん、フッ素含有率が高い方が好ましく、52質量%以上、特に55質量%以上である。フッ素含有率の上限も特に限定されないが、蛍光物質との相溶性を悪化させない点、および化学構造的な制限から、通常76質量%程度である。
【0079】
含フッ素アクリレート系重合体(A1−I)は、なかでも、式(2):
【0080】
【化13】

【0081】
(式中、Rf1はエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基)の構造を含む含フッ素アクリル重合体が、単独重合体でも、さらには共重合体としても、ガラス転移温度が40℃以上、フッ素含有率が50質量%以上を示す重合体となりやすく、しかも発光(増幅)強度も充分高く好ましい。Rf1としてはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素アルキル基またはエーテル結合を有していてもよい炭素数3〜40の含フッ素アリール基が好ましくあげられる。
【0082】
上記式(2)の含フッ素アクリル重合体を形成しうる、α位がフッ素原子であるアクリレート(以下、「αFアクリレート」という)としては、たとえばつぎのものが好ましく例示できる。なお、各モノマーの後の記載は、(略称)そして(単独重合体のガラス転移温度とフッ素含有率(質量%))である(以下同様)。
【0083】
CH2=CFCOOCH225 (5FF)(101℃、51%)、
CH2=CFCOOCH2CF2CFHCF3 (6FF)(70℃、52%)、
CH2=CFCOOCH248H (8FF)(65℃、56%)、
CH2=CFCOOC24817 (17FF)(66℃、64%)、
CH2=CFCOOC(CF32H (HFIP−F)(104℃、55%)、
CH2=CFCOOC(CF3265 (147℃、56%)、
【0084】
【化14】

【0085】
なかでもHFIP−F、8FFは錯体との親和性が高く好ましい。また、αFアクリレートは、側鎖に分岐構造をもつものがガラス転移温度を高くすることができる点で好ましい。
【0086】
また、含フッ素アクリレート系重合体(A1−I)は、式(3):
【0087】
【化15】

【0088】
(式中、Rf3はエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素炭化水素基でフッ素原子の数が7個以上)の構造を含む含フッ素メタクリレート重合体が、単独重合体でもガラス転移温度が40℃以上、フッ素含有率が50質量%以上を示し、発光強度も充分高く好ましい。Rf3としてはエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜40の含フッ素アルキル基またはエーテル結合を有していてもよい炭素数3〜40の含フッ素アリール基が好ましくあげられる。
【0089】
式(3)で示される構造を与えるモノマーとしては、たとえばつぎのものが好ましく例示できる。
CH2=C(CH3)COOCH248H (8FM)(47℃、51%)、
CH2=C(CH3)COOC24817 (17FM)(40℃、61%)、
CH2=C(CH3)COOC(CF33 (9FtBuM)(156℃、56%)、
CH2=C(CH3)COOC(CF3265 (132℃、52%)
【0090】
なかでも8FMは錯体との親和性が良く好ましい。また、含フッ素メタクリレートは、側鎖に分岐構造をもつものがガラス転移温度が高くなることから好ましい。
【0091】
またさらに、含フッ素アクリレート系重合体(A1−I)は、前記αFアクリレートと前記含フッ素メタクリレートとの共重合体であっても良く、共重合の組成および共重合比は、ガラス転移温度が40℃以上でフッ素含有率が50質量%以上の共重合体となる組成と共重合比が選択される。
【0092】
この場合の、好ましい共重合体の組合せとしては、HFIP−Fと8FMの共重合体、6FON0と8FMの共重合体、17FFと8FMの共重合体などの組合せが、発光(増幅)強度や機械的強度に優れる点から好ましい。
【0093】
含フッ素アクリレート系重合体(A1−I)には、前記例示のαFアクリレートおよび/または含フッ素メタクリレートに加えて、共重合可能な他のモノマーを導入してもよい。
【0094】
他のモノマーとしては、得られる共重合体のガラス転移温度が40℃以上でフッ素含有率が50質量%以上の共重合体となる組成と共重合比を選択する。
【0095】
他のモノマーとしては、たとえばつぎのものが例示できる。
CH2=C(CH3)COOCH3 (MMA)(120℃、0%)、
CH2=C(CH3)COOCH2C(CF32H (6FiP−M)(72℃、48%)、
CH2=C(CH3)COOCH2C(CF32CH3 (6FNPM)(120℃、43%)、
CH2=CFCOOCH2CF3 (3FF)(125℃、44%)、
CH2=CFCOOCH2C(CF32CH3 (6FNPF)(135℃、49%)、
CH2=CFCOOC(CH32H (IP−F)(93℃、14%)、
CH2=CFCOOC65 (PFPh−F)(160℃、45%)
【0096】
他のモノマーとしては、なかでもMMAが機械的強度が向上改善される点で好ましい。また、6FNPM、6FNPF、PFPh−Fはフッ素含有率をほとんど低下させずにガラス転移点を上げられる点で好ましい。
【0097】
また、好ましい共重合体の組合せとしては、HFIP−FとMMAの2元共重合体、HFIP−FとMMAと6FNPFの3元共重合体、5FFと6FNPFの2元共重合体などの組合せが、機械的強度と発光(増幅)強度のバランスが良好な点から好ましい。
【0098】
本発明の含フッ素アクリレート系重合体(A1)の好ましい第二は、(A1−II)ガラス転移温度が100℃以上でフッ素含有率が30質量%以上かつ50質量%未満である含フッ素アクリル重合体である。
【0099】
ガラス転移温度が100℃より高い場合、フッ素含有率が比較的小さくても充分な発光強度が得られる。もちろん、フッ素含有率が高い方が好ましく、35質量%以上、特に40質量%以上である。
【0100】
ガラス転移温度の上限は特に限定されないが、含フッ素アクリル重合体では通常200℃程度である。
【0101】
含フッ素アクリル重合体(A1−II)の具体例としては、つぎのものがあげられる。
【0102】
(A1−IIa)含フッ素アクリル系モノマーの単独重合体:
式(1)で示される構造を与えるモノマーのうち、単独重合体で100℃以上でフッ素含有率が30質量%以上かつ50質量%未満を満たすものとしては、たとえば前記の(A1−I)で例示した3FF(125℃、44%)、6FNPF(135℃、49%)、PFPh−F(160℃、45%)、6FNPM(120℃、43%)などがあげられる。
【0103】
なかでも6FNPFおよび6FNPMは蛍光物質、特には希土類金属錯体との親和性が高く好ましい。また、得られる含フッ素アクリル重合体は、側鎖に分岐構造をもつものがガラス転移温度が高くなることから好ましい。
【0104】
(A1−IIb)前記(A1−IIa)で示す含フッ素アクリル系モノマー同士または他の含フッ素アクリル系モノマーとの共重合体:
共重合の組成および共重合比は、ガラス転移温度が100℃以上でフッ素含有率が30質量%以上かつ50質量%未満の共重合体となる組成と共重合比を選択する。
【0105】
他の含フッ素アクリル系モノマーとしては、たとえば6FiP−M、IP−Fなどがあげられる。
【0106】
また、好ましい共重合体の組合せとしては、3FFと6FNPMの共重合体、PFPh−Fと6FNPMの共重合体、6FNPFと6FNPMの共重合体などの組合せが、発光(増幅)強度や機械的強度が良好な点から好ましい。また、他の含フッ素アクリル系モノマーとして6FiP−MやIP−Fを使用するときは、ガラス転移温度を低下させずに機械的強度を付与できる点から好ましい。
【0107】
(A1−IIc)前記(A1−IIa)で示す含フッ素アクリル系モノマーと非フッ素系アクリル系モノマーとの共重合体:
非フッ素系アクリル系モノマーとしては、得られる共重合体のガラス転移温度が100℃以上でフッ素含有率が30質量%以上かつ50質量%未満の共重合体となる組成と共重合比を選択する。
【0108】
非フッ素系アクリルモノマーとしては、たとえばMMA(120℃、0%)は機械的強度を改善できる点で特に好ましい。
【0109】
好ましい共重合体としては、たとえば6FNPMとMMAの2元共重合体、6FNPFとMMAの2元共重合体、6FNPMとMMAとIP−Fの3元共重合体、6FNPFとMMAとIP−Fの3元共重合体が、さらにMMAと5FFの2元共重合体が、機械的強度と発光(増幅)強度のバランスが良好な点から好ましく例示できる。
【0110】
含フッ素アクリル重合体(A1)の好ましい第三は、(A1−III)前記含フッ素アクリレート(a1−1)由来の構造単位に加えて、多官能アクリレート(a1−2)由来の構造単位を有することを特徴とする重合体である。
【0111】
多官能アクリレート(a1−2)由来の構造単位を導入することで、蛍光物質との組成物からなる波長変換膜の光機能性(発光(増幅)強度および発光(増幅)効率)を大幅に向上させることができる。
【0112】
本発明において、波長変換膜における非晶性含フッ素ポリマー(A)の好ましい第二は、硬化性の部位を側鎖または主鎖末端に有する含フッ素ポリマー(A2)である。
【0113】
硬化性部位を有する含フッ素ポリマー(A2)としては、WO02/72706号パンフレットやWO2004/016689号パンフレットに記載と同様のものが、具体的に好ましく挙げられる。
【0114】
さらに、波長変換膜における非晶性含フッ素ポリマー(A)の好ましい第三は、用いる蛍光物質(B)中の希土類金属イオンと配位結合することが可能な官能基または錯体形成可能な官能基を側鎖または主鎖末端に有する含フッ素ポリマー(A3)である。
【0115】
錯形成可能な官能基を有する含フッ素ポリマー(A3)としては、WO02/72696号パンフレットやWO03/91343号パンフレットに記載と同様のものが、具体的に好ましく挙げられる。
【0116】
マトリックスポリマーを形成する非晶性含フッ素ポリマー(A)中に蛍光物質(B)が分散した波長変換膜を形成する方法としては、ポリマーを溶剤に溶解したのち蛍光物質を添加した蛍光物質分散ポリマー溶液をたとえば既存の色素増感太陽電池の透明基板上に塗布、乾燥し、波長変換膜を作製する方法があげられる。塗布方法としては、回転塗布(スピンコート)、流延塗布、ロール塗布、グラビア塗布などがあげられる。
【0117】
そのほか、波長変換層のフィルムを溶融押出成型などにより形成した後、透明基板上に熱圧着などにより、波長変換層を形成するといった方法も採用できる。
【0118】
波長変換膜中の蛍光物質の量は、蛍光物質を分散させるマトリックスポリマーとの相溶性などによっても異なるが、通常、波長変換膜の全質量の1質量%以上、好ましくは5質量%以上である。好ましい上限は30質量%である。蛍光物質の量が多すぎると波長変換膜の透過性が低下し、少なすぎると波長変換効果が低下する傾向にある。
【0119】
波長変換膜の膜厚は、分散させる蛍光物質の量、光の透過性、膜強度などを考慮して決めればよいが、通常、1nm以上、1mm以下である。
【0120】
つぎに既存の色素増感太陽電池の構成成分である色素増感半導体および酸化還元系電解液について、本発明との関係で、特に好ましいものについて説明するが、本発明はそれらの説明、例示に限定されるものではない。
【0121】
色素増感半導体(図1中の5)は、特許文献13〜18に詳しくかつ具体的に記載されており、代表的な例としては酸化チタンや酸化亜鉛などの酸化物半導体粒子に増感色素が吸着されたものである。本発明では、既存の色素増感太陽電池で使用されている色素増感半導体の吸収波長に合わせて蛍光物質を選定してもよいし、蛍光物質に合わせて色素増感半導体を選定してもよい。
【0122】
増感色素としては従来公知の物質が使用でき、代表例としては特許文献13〜18、特に特開2003−338326号公報(特許文献15)に記載されているものが例示できる。それらのうち、強い吸収波長(ピーク波長)が500〜650nmの範囲にあるRuビピリジン色素、Ruターピリジン色素などのRu系色素、クマリン系色素などが好ましい。
【0123】
酸化還元系電解液は酸化還元系電解質と溶媒からなる液状物または酸化還元系電解質とポリマーからなる組成物などであり、色素増感半導体層中および対抗電極との間の空隙を充填している。
【0124】
酸化還元系電解質としては従来公知の物質が使用でき、特開2002−363418号公報(特許文献14)に詳しく記載されているもののほか、特許文献13、15〜16、18に記載されている物質などがあげられる。
【0125】
それらのうち、輸送効率が特に良好な点から、ヨウ化物イオン、三ヨウ化物イオンが好ましく使用できる。
【0126】
また、溶媒としてはカーボネート類、ニトリル化合物類、アルコール類などが使用されており、それらのなかでもプロピレンカーボネートなどのカーボネート類およびアセトニトリル、メトキシアセトニトリルなどのニトリル化合物類が、吸収波長領域が光電変換に利用される領域から外れていることから好ましく使用される。
【0127】
ところで前述したように、これらの酸化還元系電解質は固有の吸収波長帯域を有しており、その帯域が色素増感半導体の吸収波長に重なると、光電変換効率が低下してしまう。たとえばヨウ化物イオンまたは三ヨウ化物イオンは300〜500nmに特性吸収をもつため、この部分の光の利用が制限される。
【0128】
本発明の好ましい態様では、こうした酸化還元系電解質の吸収波長の光を波長変換膜中の蛍光物質で予め吸収し、長波長側に波長変換し利用することが可能になる。たとえば、酸化還元系電解質としてヨウ化物イオンまたは三ヨウ化物イオンを使用する場合は、蛍光物質として希土類金属錯体、特にTb錯体またはEu錯体を用いることが好ましい。
【0129】
本発明の色素増感太陽電池は、波長変換膜を配設していない従来の色素増感太陽電池の光電変換効率を1%以上高くすることができる。
【実施例】
【0130】
つぎに実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0131】
まず、以下の実施例において使用する測定法を説明する。
【0132】
(フッ素含有率の測定)
酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ素イオンメータ。オリオン社製の901型)で測定することによって求める(質量%)。
【0133】
(TG−DTA)
示差走査熱量計(SEIKO 社製、RTG220)を用いて、30℃から200℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温−降温−昇温(2回目の昇温をセカンドランと呼ぶ)させて得られるセカンドランにおける吸熱曲線の中間点をTg(℃)とする。
【0134】
(波長変換膜の膜厚)
マイクロメーターを用いて計測した波長変換膜配設後の太陽電池全体の膜厚から、予め同様に測定した波長変換膜を配設する前の太陽電池の厚さを差し引いて算出する。
【0135】
合成例1(Eu錯体、Eu(CF3COCHCOCF33・2((C653P=O)の調製)
酢酸ユーロピウム4水和物2.0g(5mmol)およびヘキサフルオロアセチルアセトン3.0g(20mmol)を水50mlに加え、室温で3日間攪拌した。沈殿した固体をろ過、水洗後、水/メタノール混合溶媒で再結晶し、錯体(Eu(CF3COCHCOCF33)を得た(収率60%)。得られた結晶はTG−DTA測定の結果から、2水和物であることが確認された。
【0136】
得られた錯体(Eu(CF3COCHCOCF33)1.0g、トリフェニルフォスフィンオキサイド0.5gをメタノールに溶解させ60℃で5時間撹拌した。沈澱した固体をろ過後、トルエン/シクロヘキサン混合溶媒から再結晶し、錯体(Eu(CF3COCHCOCF33・2((C653P=O)を得た(収率50%)。
【0137】
合成例2(バルク重合)
三つ口フラスコにモノマーとしてCH2=CFCOOCH2(CF24H(8FF)を2g、開始剤としてAIBNを入れ窒素置換した。反応温度を60℃にして、10時間撹拌させ塊状重合した。得られた透明な液体をアセトン5mlに溶解させ、ヘキサンに滴下して、再沈澱した。得られた非晶性含フッ素ポリマーは1.8gであった。この非晶性含フッ素ポリマーのフッ素含有率を表1に示す。
【0138】
合成例3(バルク重合)
モノマーとしてCH2=CFCOOCH2CF2CF3(5FF)を用いた以外は合成例2と同様にして非晶性含フッ素ポリマーを得た。この非晶性含フッ素ポリマーのフッ素含有率を表1に示す。
【0139】
合成例4(バルク重合)
モノマーとしてCH2=CFCOOCH(CF32H(HFIP―F)を用いた以外は合成例2と同様にして非晶性含フッ素ポリマーを得た。この非晶性含フッ素ポリマーのフッ素含有率を表1に示す。
【0140】
合成例5(バルク重合)
モノマーとしてCH2=CFCOOCH2CF3(3FF)を用いた以外は合成例2と同様にして比較用の非晶性含フッ素ポリマーを得た。この非晶性含フッ素ポリマーのフッ素含有率を表1に示す。
【0141】
比較合成例1
モノマーとしてメチルメタクリレート(MMA)を用いた以外は合成例2と同様にして比較用の非フッ素系ポリマー(PMMA)を得た。
【0142】
【表1】

【0143】
実施例1
(1)アノード電極の作製
透明導電膜を形成した透明基板として、市販のフッ素ドープSnO2ガラス(日本板硝子(株)製、導電層膜厚450nm)を用いた。
【0144】
該フッ素ドープSnO2ガラスの上の透明導電膜に酸化チタンペーストを塗布し、自然乾燥後、500℃で30分電気炉で焼成を行った。酸化チタンペーストは、平均粒径15nmのTiO2ペースト(Solaronix社製)を用いた。1回の塗布、乾燥および焼成で、約2μm厚の酸化チタン多孔質膜が形成された。この操作を、複数回繰り返すことにより、約10μm厚とした。
【0145】
酸化チタン多孔質膜をRu色素溶液に浸漬し、80℃で2時間還流を行い、酸化チタン多孔質膜にRu色素を担持させて、アノード電極を作製した。
【0146】
Ru色素溶液は、エタノールに3×10-4mol/LのRu色素(Solaronix社製、Ruthenium535)を溶解させることにより調製した。
【0147】
(2)カソード電極の作製
カソード電極は、アノード電極の作製で使用したものと同じフッ素ドープSnO2ガラスの上の透明導電膜の表面に、スパッタリング法で白金を付着させることにより作製した。
【0148】
(3)色素増感太陽電池の作製
上記(1)および(2)で作製したカソード電極とアノード電極を対向させて電池構造を形成し、両電極間に酸化還元電解質を注入した。注入した酸化還元電解質はヨウ素系電解質であり、アセトニトリル(90容量%)と3−メチル−2−オキサゾリジノン(10容量%)との混合溶媒に、ヨウ素とヨウ化リチウムとを加えて調製した。
【0149】
(4)波長変換膜用組成物の調製と波長変換膜の形成
メチルイソブチルケトン50mlに合成例2で得た含フッ素アクリレート重合体3gと合成例1で得たEu錯体30mgを加えて溶解させ、波長変換層用組成物を調製した。
【0150】
得られた波長変換膜用組成物を、上記の色素増感太陽電池のアノード電極側の透明導電膜の逆側、すなわち太陽光照射側にアプリケーターを用いて塗布し、波長変換膜を形成した。波長変換膜の膜厚は70μmであった。
【0151】
(5)光電変換率の測定
(4)で得られた太陽電池に対して、AM1.5のソーラーシュミレーターで1000W/m2の疑似太陽光を照射して、分光感度特性を評価し、光電変換効率を算出した。結果を表2に示す。
【0152】
実施例2
波長変換膜に用いる重合体として、合成例3で得られた重合体を用いた以外は実施例1と同様にして波長変換膜を配設した色素増感太陽電池を作製し、疑似太陽光を照射して、分光感度特性を評価し、光電変換効率を算出した。結果を表2に示す。
【0153】
実施例3
波長変換膜に用いる重合体として、合成例4で得られた重合体を用いた以外は実施例1と同様にして波長変換膜を配設した色素増感太陽電池を作製し、疑似太陽光を照射して、分光感度特性を評価し、光電変換効率を算出した。結果を表2に示す。
【0154】
実施例4
波長変換膜に用いる重合体として、合成例5で得られた重合体を用いた以外は実施例1と同様にして波長変換膜を配設した色素増感太陽電池を作製し、疑似太陽光を照射して、分光感度特性を評価し、光電変換効率を算出した。結果を表2に示す。
【0155】
比較例1
波長変換膜を配設しなかった以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製し、疑似太陽光を照射して、分光感度特性を評価し、光電変換効率を算出した。結果を表2に示す。
【0156】
比較例2
波長変換膜を用いる重合体として、比較合成例1で得られた非フッ素重合体(PMMA)を用いた以外は実施例1と同様にして波長変換膜を配設した色素増感太陽電池を作製し、疑似太陽光を照射して、分光感度特性を評価し、光電変換効率を算出した。結果を表2に示す。
【0157】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の色素増感太陽電池の基本構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0159】
1 波長変換膜
2 透明基板
3 透明電極
4 色素増感半導体層
5 色素増感半導体層
6 電解液層
7 対抗電極
8 支持基板
9 太陽光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光中の短波長領域の光を色素増感半導体層により光電変換可能な500nm〜650nmの長波長領域の光に波長変換する蛍光物質(B)が分散している波長変換膜が、太陽光側の最外層として配設されており、
前記波長変換膜が、非晶性含フッ素ポリマー(A)をマトリックスポリマーとし、蛍光物質(B)が該マトリックスポリマー中に分散している膜であることを特徴とする色素増感太陽電池。
【請求項2】
前記色素増感太陽電池における酸化還元系電解質がヨウ化物イオン、三ヨウ化物イオンであり、かつ波長変換膜中に含まれる蛍光物質が希土類金属錯体からなることを特徴とする請求項1記載の色素増感太陽電池。
【請求項3】
前記波長変換膜中に含まれる蛍光物質(B)がTb錯体またはEu錯体である請求項1または2記載の色素増感太陽電池。
【請求項4】
前記Tb錯体またはEu錯体が、吸収スペクトルの最大吸収ピーク波長を400nm以下の波長領域に有しており、かつ該最大吸収ピーク波長の吸光係数が1000以上である錯体である請求項3記載の色素増感太陽電池。

【図1】
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【公開番号】特開2006−269373(P2006−269373A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89467(P2005−89467)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】