説明

色調補正剤、スクアリリウム化合物及び光学フィルター

【課題】光学フィルターの使用に適した耐熱性を有する色調補正剤及び当該色調補正剤を含有する光学フィルターを提供すること。
【解決手段】一般式(1)で表されるスクアリリウム化合物、好ましくは一般式(4)で表される新規スクアリリウム化合物を少なくとも一種光学フィルターの色調補正剤として用いる。該光学フィルターは、画像表示装置又は照明装置として好ましく使用される。尚、一般式(1)及び(4)の内容については明細書に記載の通りである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するスクアリリウム化合物からなる色調補正剤、当該色調補正剤として特に好適な新規スクアリリウム化合物及び当該色調補正剤を含有してなる光学フィルターに関する。該光学フィルターは、特に、画像表示装置及び照明装置用の光学フィルターとして有用である。
【背景技術】
【0002】
特定の光に対して強度の大きい吸収を有する化合物は、CD−R、DVD−R、DVD+R、青色レーザ記録ディスク等の光学記録媒体の記録層や、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ、LED照明等の色調補正剤として用いられている。
【0003】
色調補正剤には、求められる波長領域光を選択的に吸収する光吸収特性、フィルターやフィルムとして加工する場合に必要となる有機溶剤や合成樹脂に対する溶解性又は相溶性、性能を維持するための光や熱に対する安定性が求められている。
【0004】
このような色調補正剤として、インドール骨格を有するシアニン化合物、スクアリリウム化合物の使用が報告されている。例えば、特許文献1には、フェロセン基を有するインドール骨格を有する溶解性と耐光性の良好なスクアリリウム化合物が開示されている。また、特許文献2には、急峻な吸収を示し、5位にCF3を有するか4位又は6位にNO2を有する耐湿熱性と耐光性の良好なトリメチンシアニン化合物が開示されている。また、特許文献3には、5位にCF3とNO2を有するトリメチンシアニン化合物が開示されている。しかし、光学フィルターの色調補正剤として使用するには、光学フィルターの加工温度に耐えるべくさらなる耐熱性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−312710号公報
【特許文献2】特開2005−331545号公報
【特許文献3】特開2007−131818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、光学フィルターの使用に適した耐熱性を有する色調補正剤及び当該色調補正剤を含有する光学フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定の構造を有するスクアリリウム化合物が、耐熱性が高く、これを色調補正剤として使用することにより、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記一般式(I)で表されるスクアリリウム化合物からなる色調補正剤を提供するものである。
【0009】
【化1】

(式中、Aは、下記の群Iの(a)〜(k)から選ばれる基を表し、A’は、下記の群IIの(a’)〜(k’)から選ばれる基を表す。)
【0010】
【化2】

(式中、環B及び環B’は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン環又はピリジン環を表し、
1及びR1’は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のハロゲン置換アルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のハロゲン置換アルコキシ基又は炭素数1〜8のエーテル基を表し、
2及びR2’は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、
3〜R9及びR3’〜R9’は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基又は隣接する置換基と縮合環を形成する基を表し、
X及びX’は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CR5152−、炭素数3〜6のシクロアルカン−1,1−ジイル基、−NH−又は−NY2−を表し、R51及びR52は、水素原子、下記一般式(11)若しくは(12)で表される基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数6〜30のアリール基又は水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基を表し、
Y、Y’及びY2は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数6〜30のアリール基又は水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基を表し、当該Y、Y’及びY2中のアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で中断されてもよく、
r及びr’は、0又は(a)〜(k)若しくは(a’)〜(k’)において置換可能な数を表す。)
【0011】
【化3】

(上記一般式(11)において、GとTの間の結合は、二重結合、共役二重結合又は三重結合であり、Gは炭素原子を表し、Tは炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し(ただし、Tが酸素原子である場合はyとzは0であり、Tが窒素原子である場合はy+zは0又は1である。)、wは0〜4の数を表し、x、y及びzは、0又は1を表し、
01、R02、R03及びR04は、水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CO−で中断されてもよく、R01とR04は結合してシクロアルケン環又は複素環を形成してもよい。
上記一般式(12)において、G’とT’の間の結合は、二重結合又は共役二重結合であり、G’は炭素原子を表し、T’は炭素原子又は窒素原子を表し、w’は0〜4の数を表し、
01’は水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CO−で中断されてもよく、G’及びT’を含む環は、ヘテロ原子を含んでもよい5員環、ヘテロ原子を含んでもよい6員環、キノリン環、イソキノリン環又はアントラキノン環を表し、これらG’及びT’を含む環は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されてもよい。)
【0012】
また、本発明は、下記一般式(4)で表されるスクアリリウム化合物を提供するものである。
【0013】
【化4】

(式中、R18及びR19は、ニトロ基、トリフルオロメタン基又はメトキシ基を表し、Y5及びY6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のエーテル基、炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアリールアルキル基を表す。)
【0014】
また、本発明は、上記の色調補正剤の少なくとも一種を含有してなる光学フィルターを提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐熱性の良好な色調補正剤及びこれを含有してなる光学フィルターを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
先ず、本発明の色調補正剤について説明する。
本発明の色調補正剤は、上記一般式(1)で表されるスクアリリウム化合物、好ましくは後述する一般式(2)、(3)又は(4)で表わされるスクアリリウム化合物からなる。尚、本発明において、色調補正剤とは、特定の可視光を吸収して、光源、画像、映像、光信号、視覚情報等の品質を向上させる機能を有するものである。
【0017】
上記一般式(1)において、R1及びR1’で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、
炭素数6〜30のアリール基としては、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、2,5−ジ第三ブチルフェニル、2,6−ジ−第三ブチルフェニル、2,4−ジ第三ペンチルフェニル、2,5−ジ第三アミルフェニル、2,5−ジ第三オクチルフェニル、2,4−ジクミルフェニル、シクロヘキシルフェニル、ビフェニル、2,4,5−トリメチルフェニル等が挙げられ、
炭素数7〜30のアリールアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等が挙げられ、
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第3アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第3ヘプチル、1−オクチル、イソオクチル、第3オクチル等が挙げられ、
炭素数1〜8のハロゲン置換アルキル基としては、アルキル基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されたもの、例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、ノナフルオロブチル等が挙げられ、
炭素数1〜8のアルコキシ基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、イソプロピルオキシ、プロピルオキシ、ブチルオキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ等が挙げられ、
炭素数1〜8のハロゲン置換アルコキシ基としては、これらアルコキシ基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されたもの、例えば、クロロメチルオキシ、ジクロロメチルオキシ、トリクロロメチルオキシ、フルオロメチルオキシ、フルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、ノナフルオロブチルオキシ等が挙げられ、
炭素数2〜8のエーテル基としては、2−メトキシエチル、2−(2−メトキシ)エトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、4−メトキシブチル、3−メトキシブチル等が挙げられる。
【0018】
2及びR2’で表されるハロゲン原子、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基及び炭素数1〜8のアルキル基としては、上記のR1の説明で例示した基等が挙げられる。
【0019】
3〜R9及びR3’〜R9’で表されるハロゲン原子及び炭素数1〜8のアルキル基としては、上記のR1の説明で例示した基等が挙げられ、
隣接する置換基と縮合環を形成する基により構成される縮合環としては、ベンゼン、ナフタレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、メチルベンゼン、エチルベンゼン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン等の芳香族環;オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イソオキサゾール環、ナフトオキサゾール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、ナフトインドレニン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ナフトイミダゾール環、フラン環、ベンゾフラン環、ナフトフラン環、ピロール環、チオフエン環、ピリジン環、ピロロピリジン環、ピロール環、インドリジン環、インドール環、キノリン環、キノキサリン環、イミダゾキノキサリン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環等の複素環;シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂肪族環が挙げられる。
【0020】
X及びX’で表される炭素数3〜6のシクロアルカン−1,1−ジイル基としては、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル、2,4−ジメチルシクロブタン−1,1−ジイル、3−ジメチルシクロブタン−1,1−ジイル、シクロペンタン−1,1−ジイル、シクロヘキサン−1,1−ジイルが挙げられ、
X及びX’中のR51及びR52で表される炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第3ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第3オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、へプタデシル、オクタデシル等が挙げられ、これらのアルキル基の水素原子は、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で任意の数で置換されてもよい。
【0021】
51及びR52で表される炭素数6〜30のアリール基としては、上記のR1の説明で例示した基が挙げられ、これらのアリール基の水素原子は、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で任意の数で置換されてもよい。
【0022】
51及びR52で表される炭素数7〜30のアリールアルキル基としては、上記のR1の説明で例示した基が挙げられ、これらのアリールアルキル基の水素原子は、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で任意の数で置換されてもよい。
【0023】
Y、Y’及びY2で表される水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素原子6〜30のアリール基又は水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素原数7〜30のアリールアルキル基としては、上記R51及びR52の説明で例示した基が挙げられ、
これらのY、Y’、Y2中のアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で中断されてもよい。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第3アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第3ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第3オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ペプタデシル、オクタデシル等のアルキル基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、1−フェニルプロペン−3−イル等のアルケニル基;フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第3ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第3ブチルフェニル、シクロヘキシルフェニル等のアルキルアリール基;ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基等が、エーテル結合、チオエーテル結合で中断されたもの、例えば、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、2−ブトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3−メトキシブチル、2−フェノキシエチル、3−フェノキシプロピル、2−メチルチオエチル、2−フェニルチオエチル等が挙げられる。
【0024】
上記一般式(11)中、R01、R02、R03及びR04で表されるハロゲン原子としては、上記のR1の説明で例示した基が挙げられ
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチルが挙げられ、これらのアルキル基の水素原子は、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で任意の数で置換されてもよい。
また、R01とR04が結合して形成されるシクロアルケン環としては、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等が挙げられ、R01とR04が結合して形成される複素環としては、ピロール環、ジヒドロピロール環、ピリジン環等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(12)中、R01' で表されるハロゲン原子としては、上記のR1の説明で例示した基が挙げられ
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチルが挙げられ、これらのアルキル基の水素原子は、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で任意の数で置換されてもよい。
また、G’及びT’を含むヘテロ原子を含んでもよい5員環としては、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、チオフェン環、フラン環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ジヒドロピロール環、ジヒドロイミダゾール環、ジヒドロピラゾール環、トリアゾール環、ジヒドロチオフェン環、ジヒドロフラン環、ジヒドロチアゾール環、ジヒドロイソチアゾール環、ジヒドロオキサゾール環、ジヒドロイソオキサゾール環等が挙げられ、
G’及びT’を含むヘテロ原子を含んでもよい6員環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラン環、チオピラン環等が挙げられる。
また、これらG’及びT’を含む環は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第3ブチル、トリフルオロメチル等の炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第2ブトキシ、第3ブトキシ、トリフルオロメチルオキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0026】
上記一般式(1)で表されるスクアリリウム化合物の中でも、下記一般式(2)で表されるものが、吸収波長及び耐光性に優れ、色調補正剤として有用であるので好ましく、下記一般式(3)で表されるものが、製造コストが小さいのでより好ましい。
【0027】
【化5】

(式中、R10〜R13は、少なくとも1つがニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲン置換アルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜4のハロゲン置換アルコキシ基であり、他は水素原子であり、
14〜R17は、少なくとも1つがニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲン置換アルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜4のハロゲン置換アルコキシ基であり、他は水素原子であり、
1及びX2は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CR5354−又は炭素数3〜6のシクロアルカン−1,1−ジイル基を表し、R53及びR54は、上記一般式(11)若しくは(12)で表される基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数6〜30のアリール基又は水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基を表し、Y3及びY4は、Yと同様の基を表す。)
【0028】
上記一般式(2)において、R10〜R13及びR14〜R17で表される、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチルが挙げられ、
炭素数1〜4のハロゲン置換アルキル基としては、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、ノナフルオロブチル等が挙げられ、
炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第2ブチルオキシ、第3ブチルオキシ、イソブチルオキシが挙げられ、
炭素数1〜4のハロゲン置換アルコキシ基としては、クロロメチルオキシ、ジクロロメチルオキシ、トリクロロメチルオキシ、フルオロメチルオキシ、フルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、ノナフルオロブチルオキシ等が挙げられる。
【0029】
また、X1及びX2中のR53及びR54で表わされる水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数6〜30のアリール基又は水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基としては、上記R51及びR52の説明で例示した基が挙げられる。
【0030】
【化6】

(式中、R10〜R13は、少なくとも1つがニトロ基、トリフルオロメタン基又はメトキシ基であり、他は水素原子であり、R14〜R17は、少なくとも1つがニトロ基又はトリフルオロメタン基であり、他は水素原子であり、Y3及びY4は、Yと同様の基を表す。)
【0031】
上記一般式(3)で表されるスクアリリウム化合物の具体例としては、下記化合物No.1〜36が挙げられる。
【0032】
【化7】

【0033】
【化8】

【0034】
【化9】

【0035】
【化10】

【0036】
さらに、上記一般式(3)で表わされる化合物の中でも、下記一般式(4)で表される本発明の新規スクアリリウム化合物が、さらに製造コストが小さいためより一層好ましい。
【0037】
【化11】

(式中、R18及びR19は、ニトロ基、トリフルオロメタン基又はメトキシ基を表し、Y5及びY6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のエーテル基、炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアリールアルキル基を表す。)
【0038】
5及びY6で表される炭素数1〜18のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第3アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第3ヘプチル、1−オクチル、イソオクチル、第3オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等が挙げられ、
炭素数3〜18のエーテル基としては、2−メトキシエチル、2−(2−メトキシ)エトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、4−メトキシブチル、3−メトキシブチル、2−フェノキシエチル等が挙げられ、
炭素数6〜18のアリール基としては、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、2,5−ジ第三ブチルフェニル、2,6−ジ−第三ブチルフェニル、2,4−ジ第三ペンチルフェニル、2,5−ジ第三アミルフェニル、シクロヘキシルフェニル、ビフェニル、2,4,5−トリメチルフェニルが挙げられ、
炭素数7〜30のアリールアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等が挙げられる。
【0039】
上記一般式(4)で表されるスクアリリウム化合物に相当する、具体的な化合物としては、上記の化合物No.3、6、9、12、15、18、22、23、24、25、26、33及び35が挙げられる。
【0040】
上記一般式(4)で表される本発明のスクアリリウム化合物は、その製造方法によって特に限定されず、周知一般の反応を利用して得ることができる。例えば、スクアリン酸とインドリウム化合物との脱水反応により、あるいはスクアリン酸アルキルエステルとインドリウム化合物との反応により合成することができる。これらの反応を促進させるために水酸化ナトリウム等の無機性塩基、トリエチルアミン等の有機性塩基を適宜使用することができる。具体的には下記合成ルートに準じて製造することができる。
【0041】
【化12】

(上記反応式において、R18、R19、Y5及びY6は、上記一般式(4)と同義であり、D-は、カウンターイオンを表す。)
【0042】
上記反応式において、D-で表されるカウンターイオンとしては、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、フッ素アニオン等のハロゲンアニオン;過塩素酸アニオン、塩素酸アニオン、チオシアン酸アニオン、六フッ化リンアニオン、六フッ化アンチモンアニオン、四フッ化ホウ素アニオン等の無機系アニオン;ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン等の有機スルホニルオキシイオンが挙げられる。
【0043】
上記一般式(4)で表される本発明のスクアリリウム化合物に限らず、上記一般式(1)〜(3)で表されるスクアリリウム化合物も同様の方法で製造することができる。
【0044】
本発明のスクアリリウム化合物は、後述の光学フィルター等の色調補正剤として好適に用いられる他、光学記録材料、色素増感型太陽電池、光電気化学電池、非線形光学装置、エレクトロクロミックディスプレイ、ホログラム、有機半導体、有機EL、ハロゲン化銀写真感光材料、光増感剤、印刷インキ、インクジェット、電子写真カラートナー、化粧料、プラスチック等の着色剤、タンパク質用染色剤、物質検出のための染料等の光学要素として用いられる。
【0045】
次に、本発明の光学フィルターについて説明する。
本発明の光学フィルターは、上記の本発明の色調補正剤の少なくとも一種を含有する。該色調補正剤は、それぞれ吸収極大波長を500〜800nmの範囲内又はその付近に持ち、可視光線を選択的に吸収して遮断することができるので、該色調補正剤を含有する本発明の光学フィルターは、表示画像の高品質化に用いられる画像表示装置用の光学フィルター及び照明装置用の光学フィルターとして特に好適なものである。また、本発明の光学フィルターは、眼鏡レンズ、窓、分析装置用途、半導体装置用途、天文観測用途、光通信用途等の各種用途にも用いることができる。
【0046】
本発明の光学フィルターにおいて、上記一般式(1)で表されるスクアリリウム化合物の含有量は、合計で通常0.1〜10000mg/m2、好ましくは5〜1000mg/m2である。該含有量が0.1mg/m2未満では、光吸収効果を十分に発揮することができず、10000mg/m2を超えて含有する場合には、フィルターの色目が強くなりすぎて表示品質等を低下させるおそれがあり、さらには、光吸収剤の配合量が増えることにより明度が低下するおそれもある。
【0047】
本発明の光学フィルターの形状に関しては、特に制限されるものではないが、通常、透明支持体に、必要に応じて下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、保護層等の各層を設けたものが挙げられる。本発明の色調補正剤、必要に応じて使用される本発明の色調補正剤以外の色素化合物からなる光吸収剤及び各種安定剤の任意成分を本発明の光学フィルターに含有させる方法としては、例えば、(1)透明支持体又は任意の各層に含有させる方法、(2)透明支持体又は任意の各層にコーティングする方法、(3)透明支持体及び任意の各層から選択される任意の隣合う二者間の粘着剤層に含有させる方法、(4)任意の各層とは別に、本発明の色調補正剤等の光吸収剤等を含有する光吸収層を設ける方法、(5)透明支持体を形成する樹脂組成物中に直接混合し、これを使用してフィルムや光学部材等所望の形状に加工する方法が挙げられる。
【0048】
上記透明支持体の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4'−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン、ノルボルネン樹脂等の高分子材料が挙げられる。透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。透明支持体のヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。
【0049】
上記透明支持体中には、本発明の色調補正剤以外の他の光吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光消光剤、フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、無機微粒子、耐光性付与剤、芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、遷移金属キレート化合物、粘度鉱物等を添加することができ、また、上記透明支持体には、各種の表面処理を施すこともできる。
【0050】
上記本発明の色調補正剤以外の光吸収剤としては、例えば、光学フィルターを画像表示装置用途に用いる場合には、色調調整用の光吸収剤、外光の反射や映り込み防止用の光吸収剤が挙げられ、特に画像表示装置がプラズマディスプレイの場合には、赤外リモコン誤作動防止用の光吸収剤が挙げられる。
【0051】
上記色調調整用の光吸収剤としては、波長450〜620nmのオレンジ光の除去のために用いられるものとして、トリメチンインドリウム化合物、トリメチンベンゾオキサゾリウム化合物、トリメチンベンゾチアゾリウム化合物等のトリメチンシアニン誘導体;ペンタメチンオキサゾリウム化合物、ペンタメチンチアゾリウム化合物等のペンタメチンシアニン誘導体;本発明の色調補正剤以外のスクアリリウム色素誘導体;アゾメチン色素誘導体;キサンテン色素誘導体;アゾ色素誘導体;オキソノール色素誘導体;ベンジリデン色素誘導体;ピロメテン色素誘導体;アゾ金属錯体誘導体:ローダミン色素誘導体;フタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0052】
上記の外光の反射や映り込み防止用の光吸収剤(波長480〜500nm対応)としては、トリメチンインドリウム化合物、トリメチンオキサゾリウム化合物、トリメチンチアゾリウム化合物、インドリデントリメチンチアゾニウム化合物等のトリメチンシアニン誘導体;フタロシアニン誘導体;ナフタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0053】
上記の赤外リモコン誤作動防止用の光吸収剤(波長750〜1100nm対応)としては、ジイモニウム化合物;ペンタメチンベンゾインドリウム化合物、ペンタメチンベンゾオキサゾリウム化合物、ペンタメチンベンゾチアゾリウム化合物等のペンタメチンシアニン誘導体;ヘプタメチンインドリウム化合物、ヘプタメチンベンゾインドリウム化合物、ヘプタメチンオキサゾリウム化合物、ヘプタメチンベンゾオキサゾリウム化合物、ヘプタメチンチアゾリウム化合物、ヘプタメチンベンゾチアゾリウム化合物等のヘプタメチンシアニン誘導体;スクアリリウム誘導体;ビス(スチルベンジチオラト)化合物、ビス(ベンゼンジチオラト)ニッケル化合物、ビス(カンファージチオラト)ニッケル化合物等のニッケル錯体;スクアリリウム誘導体;アゾ色素誘導体;フタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0054】
本発明の光学フィルターにおいて、上記の色調調整用の光吸収剤、外光の反射や映り込み防止用の光吸収剤、及び赤外リモコン誤作動防止用の光吸収剤(近赤外線吸収剤)は、本発明の色調補正剤を含有させる層と同一の層に含有させてもよく、別の層に含有させてもよい。それらの使用量はそれぞれ、通常光学フィルターの単位面積当たり0.1〜1000mg/m2の範囲であり、好ましくは5〜100mg/m2である。
【0055】
また、上記透明支持体に添加することができる上記無機微粒子としては、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等が挙げられる。
【0056】
上記透明支持体に施すことができる上記の各種の表面処理としては、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等が挙げられる。
【0057】
本発明の光学フィルターに設けることができる上記下塗り層は、任意の各層とは別に光吸収剤を含有するフィルター層を設ける場合に、透明支持体と光学フィルター層との間に用いる層である。上記下塗り層は、ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む層、フィルター層側の表面が粗面である層、又はフィルター層のポリマーと親和性を有するポリマーを含む層として形成する。また、下塗り層は、フィルター層が設けられていない透明支持体の面に設けて、透明支持体とその上に設けられる層(例えば、反射防止層、ハードコート層)との接着力を改善するために設けてもよく、光学フィルターと画像表示装置とを接着するための接着剤と光学フィルターとの親和性を改善するために設けてもよい。下塗り層の厚みは、2nm〜20μmが好ましく、5nm〜5μmがより好ましく、20nm〜2μmがさらに好ましく、50nm〜1μmがさらにまた好ましく、80nm〜300nmが最も好ましい。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む下塗り層は、ポリマーの粘着性で、透明支持体とフィルター層とを接着する。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ブタジエン、ネオプレン、スチレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル若しくはメチルビニルエーテルの重合又はこれらの共重合により得ることができる。ガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましく、25℃以下であることがさらにまた好ましく、20℃以下であることが最も好ましい。下塗り層の25℃における弾性率は、1〜1000MPaであることが好ましく、5〜800MPaであることがさらに好ましく、10〜500MPaであることが最も好ましい。フィルター層の表面が粗面である下塗り層は、粗面の上にフィルター層を形成することで、透明支持体とフィルター層とを接着する。フィルター層の表面が粗面である下塗り層は、ポリマーラテックスの塗布により容易に形成することができる。ラテックスの平均粒径は、0.02〜3μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。フィルター層のバインダーポリマーと親和性を有するポリマーとしては、アクリル樹脂、セルロース誘導体、アルギン酸、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、可溶性ナイロン及び高分子ラテックス等が挙げられる。また、本発明の光学フィルターには、二以上の下塗り層を設けてもよい。下塗り層には、透明支持体を膨潤させる溶剤、マット剤、界面活性剤、帯電防止剤、塗布助剤、硬膜剤等を添加してもよい。
【0058】
本発明の光学フィルターに設けることができる上記反射防止層においては、低屈折率層が必須である。低屈折率層の屈折率は、上記透明支持体の屈折率よりも低い。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層(特開昭57−34526号、特開平3−130103号、特開平6−115023号、特開平8−313702号、特開平7−168004号の各公報記載)、ゾルゲル法により得られる層(特開平5−208811号、特開平6−299091号、特開平7−168003号の各公報記載)、あるいは微粒子を含む層(特公昭60−59250号、特開平5−13021号、特開平6−56478号、特開平7−92306号、特開平9−288201号の各公報に記載)として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間又は微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
【0059】
広い波長領域の反射を防止するためには、上記反射防止層において、低屈折率層に加えて、屈折率の高い層(中・高屈折率層)を積層することが好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン共重合体、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタン等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応により形成されたポリマーを用いてもよい。
【0060】
さらに高い屈折率を得るため、上記ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物又は硫化物から形成することが好ましい。金属の酸化物又は硫化物としては、酸化チタン(例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物又は硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S等が挙げられる。被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例えばキレート化合物)、活性無機ポリマーを用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
【0061】
上記反射防止層の表面には、アンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成してその表面に反射防止層を形成するか、あるいは、反射防止層を形成後、エンボスロールにより表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を有する反射防止層を得ることができる。アンチグレア機能を有する反射防止層は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0062】
本発明の光学フィルターに設けることができる上記ハードコート層は、上記透明支持体の硬度よりも高い硬度を有する。ハードコート層は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマー又はモノマー(例えば紫外線硬化型樹脂)等を用いて形成することができる。シリカ系材料からハードコート層を形成することもできる。
【0063】
上記反射防止層(低屈折率層)の表面は、潤滑層を形成してもよい。潤滑層は、低屈折率層表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層は、ポリオルガノシロキサン(例えばシリコンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤又はその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
【0064】
本発明の色調補正剤を光学フィルターに含有させる際、上記「(3)透明支持体及び任意の各層から選択される任意の隣合う二者間の粘着剤層に含有させる方法」を採用する場合には、本発明の色調補正剤等を粘着剤に含有させた後、該粘着剤を用いて、上述した透明支持体及び任意の各層のうちの隣合う二者を接着すればよい。該粘着剤としては、シリコン系、ウレタン系、アクリル系等の粘着剤、ポリビニルブチラール接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤等の公知の合わせガラス用透明接着剤を用いることができる。また、該粘着剤を用いる場合、必要に応じて、硬化剤として、金属キレート系、イソシアネート系、エポキシ系等の架橋剤を用いることができる。また、粘着剤層の厚みは、2〜400μmとすることが好ましい。
【0065】
上記「(4)任意の各層とは別に、本発明の色調補正剤等の光吸収剤を含有する光吸収層を設ける方法」を採用する場合、本発明の色調補正剤は、そのまま使用して光吸収層を形成することもできるし、バインダーに分散させて光吸収層を形成することもできる。該バインダーとしては、例えば、ゼラチン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド等の合成高分子材料が用いられる。
【0066】
上記バインダーを使用する際には、同時に有機溶媒を使用することもでき、該有機溶媒としては、特に限定されることなく公知の種々の溶媒を適宜用いることができ、例えば、イソプロパノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は混合して用いることができる。
【0067】
また、上記の下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、保護層等は、一般的な塗布方法により形成することができる。塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書記載)等が挙げられる。二以上の層を同時塗布により形成してもよい。同時塗布法については、米国特許第2761791号、米国特許第2941898号、米国特許第3508947号、米国特許第3526528号の各明細書及び原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)に記載がある。
【0068】
本発明の光学フィルターの上記の塗布方法により作製する場合において、本発明の色調補正剤、有機溶媒及びその他の各種添加剤等を含む塗工液の濃度は、1〜5質量%、特に2〜3質量%であるのが好ましい。
【0069】
上記「(5)透明支持体を形成する樹脂組成物中に直接混合し、これを使用してフィルムや光学部材等所望の形状に加工する方法」を採用する場合、本発明の色調補正剤等は、熱可塑性樹脂組成物ペレットに予め混合しておいてもよく、フィルム等を成形加工するときに熱可塑性樹脂に添加してもよい。斯かる熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリルレート、ノルボルネン樹脂、ポリシクロオレフィン等が挙げられる。
【0070】
本発明の光学フィルターを画像表示装置用の光学フィルターとして使用する場合は、通常、ディスプレイの前面に配置される。例えば、本発明の光学フィルターは、ディスプレイの表面に直接貼り付けてもよく、ディスプレイの前に前面板が設けられている場合は、前面板の表側(外側)又は裏側(ディスプレイ側)に貼り付けてもよい。
【0071】
本発明の光学フィルターを照明装置用の光学フィルターとして使用する場合は、通常導光板の出射面側に配置されるが、導光板に光を入射するライトパイプと導光板の間に配置されてもよく、光源LEDとライトパイプの間に配置されてもよい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び評価例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
尚、実施例1〜3は、本発明のスクアリリウム化合物の合成例を示し、実施例4は、本発明の色調補正剤を含有する光学フィルターの製造例を示す。
また、評価例1は、本発明のスクアリリウム化合物の光学特性と耐熱性評価を示し、評価例2は、本発明の光学フィルターの耐熱性評価を示し、評価例3は、本発明の光学フィルターの耐光性評価を示す。
【0073】
[実施例1]化合物No.3の合成
2,2,3−トリメチル−1−(3−メチル−1−ブチル)−5−ニトロ−3H−インドリウムパークロレート2.1モル部をトルエン中に分散し、水酸化ナトリウム2.1モル部の水溶液を加え室温で2時間反応させた。その後、油水分離して得たトルエン相を水洗した後、スクアリン酸1モル部を加え、ブタノールをトルエンとブタノールの質量比が1:4になるように加え、110℃の温度で撹拌し、生成する水を除きながら3時間反応させた。反応中に析出した結晶をろ別し、120℃で減圧乾燥して、目的物である化合物No.3を収率76.6%で得た。得られた化合物についての分析結果は以下のとおりであった。
<分析結果>
1H−NMR)重クロロホルム溶媒
1.07(d,12)、1.66(dt,4)、1.78(dtt,2)、1.83(s,12)、4.03(m,4)、6.14(s,2)、7.02(d,2)、8.20(s,2)、8.30(d,2)
(TG)サンプル量2.33mg、測定条件:N2;200ml/分、昇温;10℃/分
重量減少開始温度;311℃
【0074】
[実施例2]化合物No.6の合成
2,2,3−トリメチル−1−(3−メチル−1−ブチル)−5−トリフルオロメチル−3H−インドリウムトシレート2.1モル部、スクアリン酸1モル部をトルエンとブタノールの質量比が1:4である混合溶剤に加え、110℃の温度で撹拌し、生成する水を除きながら3時間反応させた。溶剤を減圧留去して得た残渣をクロロホルムとイソプロピルアルコールの質量比が1:5である混合溶剤を用いて再結晶処理をした。晶析した結晶を120℃で減圧乾燥し、目的物である化合物No.6を収率9.1%で得た。得られた化合物についての分析結果は以下のとおりであった。
<分析結果>
1H−NMR)重クロロホルム溶媒
1.06(d,12)、1.68(dt,4)、1.79(dtt,2)、1.81(s,12)、4.00(m,4)、6.04(s,2)、7.03(d,2)、7.56(s,2)、7.60(d,2)
(TG)サンプル量3.60mg、測定条件:N2;200ml/分、昇温;10℃/分
重量減少開始温度;322℃
【0075】
[実施例3]化合物No.9の合成
2,2,3−トリメチル−1−プロピル−5−メトキシ−3H−インドリウムヨージド2.1モル部、スクアリン酸1モル部をトルエンとブタノールの質量比が1:4である混合溶剤に加え、110℃の温度で撹拌し、生成する水を除きながら3時間反応させた。溶剤を減圧留去して得た残渣を酢酸エチルとメタノールの質量比が10:1である混合溶剤を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理をした。Rf値0.5の成分を単離し、溶媒留去した後、得られた固体を120℃で減圧乾燥し、目的物である化合物No.9を収率33.3%で得た。得られた化合物についての分析結果は以下のとおりであった。
<分析結果>
1H−NMR)重クロロホルム溶媒
1.28(t,6)、2.04(tq,4)、2.24(s,12)、3.78(s,6)、4.12(t,4)、6.79(s,2)、6.81(d,2)、6.83(s,2)、7.42(d,2)
(TG)サンプル量3.29mg、測定条件:N2;200ml/分、昇温;10℃/分
重量減少開始温度;294℃
【0076】
[評価例1]色調補正剤の光学特性及び耐熱性評価
上記実施例1〜3で得た本発明の化合物No.3、6及び9並びに類似の化合物である下記の比較化合物1〜3について、色調補正剤としての物性を評価した。
評価は、クロロホルム溶液の分光吸収スペクトルによる極大吸収(λmax)、λmaxにおける吸光係数(ε)及び半値幅並びにDTA測定における分解ピーク温度(測定条件:N2;200ml/分、昇温;10℃/分)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【化13】

(上記、式中Fcは、フェロセニル基を表す。)
【0079】
上記評価結果から、化合物No.3、No.6及びNo.9は、いずれも類似化合物の比較化合物1〜3に比べて、分解温度が高く、耐熱性に優れることが確認できた。また、化合物No.3、No.6及びNo.9の半値幅は、比較化合物2及び3よりも小さく、比較化合物1とは同程度であることが確認できた。すなわち、本発明の化合物No.3、No.6及びNo.9は、耐熱性で比較化合物1〜3より優れ、光吸収の急峻性で比較化合物1と同程度であり、比較化合物2及び3より優れる。
【0080】
[実施例4]光学フィルターNo.1〜No.3の製造
下記の配合にて粘着剤溶液(塗工液1〜3)を調製し、100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に、該粘着剤溶液を厚さ200μmのスリットコーターを使用して塗布し、100℃、10分間乾燥した後、塗布面に厚さ1mmのガラスを張り合わせ、粘着層に色調補正剤を含有した光学フィルターNo.1〜No.3を製造した。
<配合>
(塗工液1)
0.5質量%の化合物No.3のエチルメチルケトン溶液 0.2 質量部
アクリル系粘着剤(デービーボンド5541:ダイアボンド社製) 5 質量部
メチルエチルケトン 0.99質量部
(塗工液2)
0.5質量%の化合物No.6のエチルメチルケトン溶液 0.2 質量部
アクリル系粘着剤(デービーボンド5541:ダイアボンド社製) 5 質量部
メチルエチルケトン 0.99質量部
(塗工液3)
0.5質量%の化合物Aのエチルメチルケトン溶液 0.2 質量部
アクリル系粘着剤(デービーボンド5541:ダイアボンド社製) 5 質量部
メチルエチルケトン 0.99質量部
【0081】
【化14】

【0082】
[比較例1]比較用光学フィルター1〜3の製造
下記の配合にて比較用粘着剤溶液(比較用塗工液1〜3)を調製し、100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に、該粘着剤溶液を厚さ200μmのスリットコーターを使用して塗布し、100℃、10分間乾燥した後、塗布面に厚さ1mmのガラスを張り合わせ、粘着層に色調補正剤を含有した比較用光学フィルター1〜3を製造した。
<配合>
(比較用塗工液1)
0.25質量%の比較化合物1のエチルメチルケトン溶液 0.4 質量部
アクリル系粘着剤(デービーボンド5541:ダイアボンド社製) 5 質量部
メチルエチルケトン 0.99質量部
(比較用塗工液2)
0.25質量%の比較化合物2のエチルメチルケトン溶液 0.4 質量部
アクリル系粘着剤(デービーボンド5541:ダイアボンド社製) 5 質量部
メチルエチルケトン 0.99質量部
(比較用塗工液3)
0.5質量%の比較化合物3のエチルメチルケトン溶液 0.2 質量部
アクリル系粘着剤(デービーボンド5541:ダイアボンド社製) 5 質量部
メチルエチルケトン 0.99質量部
【0083】
[評価例2]光学フィルターの耐熱性評価
上記実施例4及び比較例1で得た光学フィルターについて、光学フィルター形成直後の吸収スペクトルを日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計V−570で測定し、λmax及び半値幅の測定を行った。また、下記条件による耐熱性試験を行った後のλmaxにおける透過率(耐熱性試験後の透過率)と耐熱性試験前の透過率を測定し、その比「(100−耐熱性試験後の透過率/100−耐熱性試験前の透過率)×100(%)」を算出して、光学フィルターの耐熱性(%)とした。結果を表2に示す。
(耐熱性試験)
光学フィルターを80℃恒温槽中で50時間加熱した。
【0084】
【表2】

【0085】
上記表2から、本発明の光学フィルターである光学フィルターNo.1〜3は、比較用光学フィルター1〜3よりも耐熱性に優れることが確認できた。また、半値幅は比較用光学フィルター1と同程度かわずかに広く、比較用光学フィルター2及び3よりも小さいことが確認できた。
【0086】
[評価例3]光学フィルターの耐光性評価
上記実施例4で得られた光学フィルターNo.1〜No.3について、下記条件による耐光性試験を行い、評価例2と同様の方法によって、下記条件による耐光性試験を行った後のλmaxにおける吸光度(耐光性試験後の吸光度)と耐光性試験前の吸光度を測定し、その比「(耐光性試験後の吸光度/耐光性試験前の吸光度)×100(%)」を算出して、光学フィルターの耐光性(%)とした。結果を表3に示す。
(耐光性試験)
光学フィルターに対し、キセノン光源の55000ルクスの光を50時間照射した。
【0087】
【表3】

【0088】
上記表3から、本発明に係る化合物同士を対比すると、化合物No.3及び化合物No.6を色調補正剤として使用した光学フィルターは、化合物Aを色調補正剤として使用した光学フィルターより耐光性が良好であることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるスクアリリウム化合物からなる色調補正剤。
【化1】

(式中、Aは、下記の群Iの(a)〜(k)から選ばれる基を表し、A’は、下記の群IIの(a’)〜(k’)から選ばれる基を表す。)
【化2】

(式中、環B及び環B’は、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン環又はピリジン環を表し、
1及びR1’は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のハロゲン置換アルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のハロゲン置換アルコキシ基又は炭素数1〜8のエーテル基を表し、
2及びR2’は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、
3〜R9及びR3’〜R9’は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基又は隣接する置換基と縮合環を形成する基を表し、
X及びX’は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CR5152−、炭素数3〜6のシクロアルカン−1,1−ジイル基、−NH−又は−NY2−を表し、R51及びR52は、水素原子、下記一般式(11)若しくは(12)で表される基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数6〜30のアリール基又は水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基を表し、
Y、Y’及びY2は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数6〜30のアリール基又は水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基を表し、当該Y、Y’及びY2中のアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で中断されてもよく、
r及びr’は、0又は(a)〜(k)若しくは(a’)〜(k’)において置換可能な数を表す。)
【化3】

(上記一般式(11)において、GとTの間の結合は、二重結合、共役二重結合又は三重結合であり、Gは炭素原子を表し、Tは炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し(ただし、Tが酸素原子である場合はyとzは0であり、Tが窒素原子である場合はy+zは0又は1である。)、wは0〜4の数を表し、x、y及びzは、0又は1を表し、
01、R02、R03及びR04は、水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CO−で中断されてもよく、R01とR04は結合してシクロアルケン環又は複素環を形成してもよい。
上記一般式(12)において、G’とT’の間の結合は、二重結合又は共役二重結合であり、G’は炭素原子を表し、T’は炭素原子又は窒素原子を表し、w’は0〜4の数を表し、
01’は水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CO−で中断されてもよく、G’及びT’を含む環は、ヘテロ原子を含んでもよい5員環、ヘテロ原子を含んでもよい6員環、キノリン環、イソキノリン環又はアントラキノン環を表し、これらG’及びT’を含む環は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されてもよい。)
【請求項2】
上記スクアリリウム化合物が下記一般式(2)で表されるものである請求項1に記載の色調補正剤。
【化4】

(式中、R10〜R13は、少なくとも1つがニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲン置換アルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜4のハロゲン置換アルコキシ基であり、他は水素原子であり、
14〜R17は、少なくとも1つがニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲン置換アルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜4のハロゲン置換アルコキシ基であり、他は水素原子であり、
1及びX2は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、−CR5354−又は炭素数3〜6のシクロアルカン−1,1−ジイル基を表し、R53及びR54は、上記一般式(11)若しくは(12)で表される基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数6〜30のアリール基又は水酸基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基を表し、Y3及びY4は、Yと同様の基を表す。)
【請求項3】
上記スクアリリウム化合物が下記一般式(3)で表されるものである請求項1に記載の色調補正剤。
【化5】

(式中、R10〜R13は、少なくとも1つがニトロ基、トリフルオロメタン基又はメトキシ基であり、他は水素原子であり、R14〜R17は、少なくとも1つがニトロ基又はトリフルオロメタン基であり、他は水素原子であり、Y3及びY4は、Yと同様の基を表す。)
【請求項4】
上記スクアリリウム化合物が下記一般式(4)で表されるものである請求項1に記載の色調補正剤。
【化6】

(式中、R18及びR19は、ニトロ基、トリフルオロメタン基又はメトキシ基を表し、Y5及びY6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のエーテル基、炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアリールアルキル基を表す。)
【請求項5】
下記一般式(4)で表されるスクアリリウム化合物。
【化7】

(式中、R18及びR19は、ニトロ基、トリフルオロメタン基又はメトキシ基を表し、Y5及びY6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のエーテル基、炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜18のアリールアルキル基を表す。)
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の色調補正剤の少なくとも一種を含有してなる光学フィルター。
【請求項7】
画像表示装置又は照明装置に使用されることを特徴とする請求項6のいずれかに記載の光学フィルター。

【公開番号】特開2011−144280(P2011−144280A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6804(P2010−6804)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】