説明

芝刈機

【課題】マルチングモードにおいて刈った芝草をハウジングの下方へ効率良く排出するとともに、バギングモードにおいて刈った芝草を刈り芝収納体に効率良く収納すること。
【解決手段】芝刈機10は、回転可能な刈刃14を収納するための下開放のハウジング11の内周面に設けられている、シャッタ機構40を切り換え操作することにより、刈刃で刈られた芝草をハウジングから刈り芝収納体へ送るバギングモードと、刈られた芝草をハウジングの下方へ排出するマルチングモードとに、切り換えることが可能である。シャッタ機構は、ハウジングの内部に位置しているシャッタ本体42にキッカー47を有する。キッカーは、マルチングモードの際に、刈られた芝草をハウジングの下方へ案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バギングモードとマルチングモードの両方で使用できる、ロータリ式芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリ式芝刈機は、下開放のハウジング内に収納された刈刃を芝草に沿って回転させることで、芝草を刈るものである。このような芝刈機には、バギングモードで用いる形式の芝刈機と、マルチングモードで用いる形式の芝刈機がある。
【0003】
バギングモードで用いる芝刈機は、刈刃で刈った芝草(つまり、刈り芝)をバッグ等の刈り芝収納体に収納するものであり、刈り芝の全てを除去できるので芝刈り仕上がり性が良く、ゴルフ場などで多用されている。
【0004】
マルチングモードで用いる芝刈機は、刈り芝をハウジングの中で更に細かく刻んでハウジングの下方に排出するものであり、刈り芝を芝地へ戻してしまうことにより、「刈り芝捨て」作業を不要とすることができるので、公園などで多用されている。
【0005】
しかしながら、これでは用途に応じて2台の芝刈機を使い分けることになるので不便である。そこで近年、1台の芝刈機によってバギングモードとマルチングモードとを兼ねることができる技術が開発されている。この種の芝刈機としては、例えば下記の特許文献1及び特許文献2に記載された技術が知られている。
【0006】
特許文献1で知られている芝刈機のハウジングは、天板から後上方へ草排出シュートを延したバギングモード型ハウジングである。草排出シュートに対してシュートプラグを着脱することにより、バギングモード型ハウジングをバギングモードとマルチングモードとに切換えることができる。さらに、ハウジングは、内周部に複数のキッカー(Kicker)を備えている。これらのキッカーは、マルチングモードの際に、刈り芝をハウジングの下方へ案内する部材である。キッカーを備えたので、芝刈機をマルチングモードで使用する際には、刈り芝をハウジングの下方へ効率良く排出することができる。
【0007】
ところで、芝刈機をバギングモードで使用する際に、刈り芝はハウジング内で旋回運動をしながら草排出シュートに向かう。しかし、ハウジングの内周部に位置している、複数のキッカーは、ハウジング内における刈り芝の旋回運動に、影響を及ぼす。この結果、バギングモードにおいて、刈り芝をハウジングから草排出シュートを介してバッグに収納するときの、収納性能に影響を及ぼす。
【0008】
一方、特許文献2で知られている芝刈機は、シャッタを全開にして刈り芝を刈り芝収納体に収納するバギングモードと、シャッタを全閉にして刈り芝をハウジングの下方に排出するマルチングモードと、シャッタを任意の開度に設定してバギングモードとマルチングモードの中間モードとに、手動で切換えることができるというものである。但し、ハウジングはキッカーを備えていない。このため、芝刈機をマルチングモードで使用する際に、刈り芝をハウジングの下方へ一層効率良く排出するには、更なる改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4951449号明細書
【特許文献2】特許第3771507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、マルチングモードにおいて刈った芝草をハウジングの下方へ効率良く排出するとともに、バギングモードにおいて刈った芝草を刈り芝収納体に効率良く収納することができる技術を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明では、回転可能な刈刃を収納するための下開放のハウジングの内周面に設けられている、シャッタ機構を切り換え操作することにより、前記刈刃で刈られた芝草を前記ハウジングから刈り芝収納体へ送るバギングモードと、前記刈られた芝草を前記ハウジングの下方へ排出するマルチングモードとに、切り換えることが可能な芝刈機において、前記シャッタ機構は、前記ハウジングの内部に位置している可動部分にキッカーを有しており、このキッカーは、前記マルチングモードの際に、前記刈られた芝草を前記ハウジングの下方へ案内する部材であることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明では、請求項1において、前記ハウジングは、前記刈られた芝草を前記刈り芝収納体へ送るための刈り芝搬出通路を有しており、前記シャッタ機構における可動部分は、前記刈り芝搬出通路を開閉するためのシャッタ本体を含み、前記キッカーは、前記シャッタ機構が前記バギングモードに切り換えられたときに、前記シャッタ本体と共に前記刈り芝搬出通路から外れて位置するべく、前記シャッタ本体に有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、シャッタ機構をマルチングモードに切り換え操作することにより、刈刃で刈られた芝草(つまり、刈り芝)はハウジングの下方へ排出される。さらに、ハウジング内で旋回している刈り芝の流れは、キッカーによってハウジングの下方へ導かれる。このため、芝刈機をマルチングモードで使用する際に、刈り芝をハウジングの下方へ効率良く排出することができる。
【0014】
一方、シャッタ機構をバギングモードに切り換え操作することにより、シャッタ機構は刈り芝をハウジングから刈り芝収納体へ送るように移動する。このときに、シャッタ機構の可動部分と共にキッカーも移動する。このため、バギングモードにおいて、ハウジングから刈り芝収納体へ向かう刈り芝の流れがキッカーによって妨げられることはない。従って、芝刈機をバギングモードで使用する際に、刈り芝を刈り芝収納体に効率良く収納することができる。
【0015】
さらには、シャッタ機構は、ハウジングの内部に位置している可動部分にキッカーを有している。シャッタ機構における小型の可動部分にキッカーを有するので、ハウジングのような大型部材にキッカーを設ける場合に比べて、キッカーを設けることが容易であり、設けるための工数が少なくてすむ。しかも、ハウジングのような大型部材を全く加工しなくてすむ。
【0016】
請求項2に係る発明では、マルチングモードにおいて、シャッタ本体は刈り芝搬出通路を閉鎖している。このときに、キッカーはシャッタ本体と共に、刈り芝搬出通路を閉鎖する位置にあるが、バギングモードではないので差し支えない。
その後、シャッタ機構をバギングモードに切り換え操作することにより、シャッタ本体は刈り芝搬出通路の位置から外れる(刈り芝搬出通路を開く)。このときに、キッカーはシャッタ本体と共に、ハウジングから刈り芝搬出通路へ向かう刈り芝の流れに影響の無い位置へ、移動する。従って、芝刈機をバギングモードで使用する際に、刈り芝を刈り芝収納体に効率良く収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る芝刈機の左側面図である。
【図2】図1に示された芝刈機の平面図である。
【図3】図1に示された芝刈機の要部断面図である。
【図4】図1に示された芝刈機において刈刃及びシャッタ機構を外した状態の底面図である。
【図5】図1に示された芝刈機の底面図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】図5に示されたハウジング及びガイド部の要部斜視図である。
【図8】図5の8−8線断面図である。
【図9】図5の9−9線断面図である。
【図10】図5に示されたシャッタ本体及びキッカーの要部斜視図である。
【図11】図9に示されたシャッタ本体が半開位置にあるときの作用図である。
【図12】図9に示されたシャッタ本体が全開位置にあるときの作用図である。
【図13】図5に示されたシャッタ本体が全閉位置にあるときの作用図である。
【図14】図5に示されたシャッタ本体が半開位置にあるときの作用図である。
【図15】図5に示されたシャッタ本体が全開位置にあるときの作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0019】
実施例に係る芝刈機について、図1〜図15に基づき説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は作業者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Leは左側、Riは右側、Upは上側、Dwは下側、CLは機幅中心を示す。
【0020】
図1及び図2に示すように、芝刈機10は、芝草を刈る歩行型自走式作業機であって、ハウジング11と、ハウジング11の前部に備えた左右の前輪12,12と、ハウジング11の後部に備えた左右の後輪13,13と、ハウジング11の中央内部に収納された芝刈用の刈刃14と、ハウジング11の上部に備えたエンジン15(駆動源15)と、ハウジング11から後方へ延びた操作ハンドル16とからなる。
【0021】
この芝刈機10は、図2に示す平面視において、エンジン15によって刈刃14を時計回り方向(矢印Ra方向)に回転させることにより、芝草を刈り取るとともに、ハウジング11内に矢印Rbのような空気の流れ(旋回流)を発生させ、この旋回流により、刈刃14で刈った芝草を刈り芝収納体22に送り込んで収納することができる。以下、刈刃14で刈られた芝草のことを「刈り芝」という。
【0022】
図1及び図3に示すように、ハウジング11は、機体の役割を兼ねており、上面にエンジン11を重ねてボルト止めすることによって、一体的に組み付けたものである。エンジン15は、下端から下方の芝地Gr(図1参照)へ向かってハウジング11内まで延びた、出力軸15aを有する。この出力軸15aは、芝地Gr(地面)に対して略垂直な駆動軸である。
【0023】
出力軸15aには、ハウジング11内において、クラッチ18を介して刈刃14が取り付けられるとともに、走行用の無段変速装置(図示せず)に動力を伝達する駆動プーリ19が取り付けられている。エンジン15でクラッチ18を介して刈刃14を駆動することにより、刈刃14は、ハウジング11内において、出力軸15aの軸心SCを中心として回転可能(出力軸15a回りを回転可能)である。また、エンジン15で無段変速装置を介して後輪13,13(図1参照)を駆動することにより、芝刈機10を前方へ自走させて、芝刈り作業を進めることができる。
【0024】
以下、ハウジング11の詳細について説明する。図1、図4及び図5に示すように、ハウジング11は、下端面(芝地Grに対向する面)だけが全面的に開放された、いわゆる下開放のハウジングである。しかも、ハウジング11は、スクロール部11d(図4参照)を備えた渦巻ケーシング(spiral case、scroll case)である。
【0025】
図4に示すように、スクロール部11dは、バギングモードにおいて、刈刃14(図5参照)で刈った芝草を、ハウジング11内で矢印Rc方向(旋回方向Rc)に旋回運動させつつ、矢印Rbのように刈り芝搬出通路21へ向かわせるものである。
【0026】
図3〜図6に示すように、ハウジング11は、天板11aと外筒部11bと内筒部11cとスクロール部11dと刈り芝搬出通路21とからなる。天板11aは、ハウジング11の上端を塞いでいる、略水平な平面視略環状の板である。外筒部11bは、出力軸15aを中心として、天板11aの外縁から下方へ延びた円筒状の部材である。内筒部11cは、出力軸15aを中心として、天板11aの内縁から下方へ延びた円筒状の部材であり、外筒部11bよりも小径に構成されている。
【0027】
刈り芝搬出通路21は、外筒部11bから後方(より詳しくは、後上方)へ向かって、外筒部11bの接線方向に延びた部材である。この刈り芝搬出通路21は、前端にはハウジング11に臨む通路開口23を有し、後端にはグラスバッグ等の刈り芝収納体22(図1参照)を取付け可能な構成である。刈り芝搬出通路21に対して、刈り芝収納体22は取外し可能である。刈り芝は、ハウジング11の内部で出力軸15a回りを旋回しながら刈り芝搬出通路21へ送られる。
【0028】
以上の説明から明らかなように、外筒部11bから刈り芝搬出通路21が延びる方向は、刈刃14の回転方向Raに合致する。言い換えると、刈り芝搬出通路21は刈刃14の回転軌跡の接線方向に延びる。通路開口23は、刈刃14の回転方向Raに開いている。
【0029】
図6に示すように、スクロール部11dは、天板11aと外筒部11bと内筒部11cとによって囲まれた、平面視略環状の空間である。この空間11dにおいて、天板11aと外筒部11bとのコーナ11e(外側コーナ11e)、及び天板11aと内筒部11cとのコーナ11f(内側コーナ11f)は、比較的緩やかな円弧状断面に形成されている。このスクロール部11dは、側方から見たときに下向きのU字状断面に形成されて、刈り芝が旋回する通路であり、刈り芝が旋回しながら刈り芝搬出通路21(図3、図4参照)へ向かうように構成されている。つまり、スクロール部11dは、刈り芝搬出通路21の通路開口23(図4参照)に連なる。
【0030】
図5〜図7に示すように、ハウジング11は、内部にガイド部25を有している。図7に示すように、ガイド部25は、出力軸15a回りで旋回方向Rcに旋回している刈り芝を、矢印W1のようにハウジング11の外周部(つまり、外筒部11bの内周面)へ向けて案内しつつ、刈り芝搬出通路21へ案内する部材である。
【0031】
詳しく述べると、ガイド部25は、スクロール部11d(通路11d)において、内側コーナ11f又はその近傍に配置されている。例えば、ガイド部25は、全体がスクロール部11dの内面に密接し、天板11aにビス26、溶着、カシメなど、各種の取付け構成によって取り付けられる。このようなガイド部25は、刈り芝が旋回する旋回方向Rcに対して向かう方向、つまり、旋回方向Rcとは反対方向へ先細り状となるように、平面視(底面視も同様)と側面視の両方で、略三角形状となるように形成されている。
【0032】
ハウジング11を下側Dwから見たときに、ガイド部25は次の構成をなす。
ガイド部25における先細りの先端25aは、内側コーナ11fに位置している。三角形を呈したガイド部25における、1つの辺25bは、内筒部11cの外面に沿うとともに、接している。この辺25bは、先細りの先端25aの部分が天板11aに最も近く、旋回方向Rcへいくにつれて天板11aから離れるように、傾斜している。つまり、辺25bにおける後端25cの部分が、天板11aから最も離れている。
【0033】
ここで、ハウジング11を下側Dwから見たときに、三角形を呈しているガイド部25において、3つの頂点を次のように定義する。先細りの先端25aのことを「第1の頂点25a」という。後端25cのことを「第2の頂点25c」という。残りの端25dのことを「第3の頂点25d」という。第3の頂点25dは、天板11aに接している。
【0034】
旋回流の流れは、略三角形状のガイド部25によって、ハウジング11の径方向に効率良く分散される。このため、内側コーナ11fの近傍において、低速で旋回している刈り芝を、ハウジング11の径方向(内筒部11cの径外方)に効率良く案内することができる。
【0035】
さらにハウジング11は、図5、図8及び図9に示すように、スクロール部11dにガイド部30を沿わせている。このガイド部30は、ハウジング11の天板11aの下側に設けられており、ガイド方向後縁31を通路開口23に臨ませている。この結果、軸心SCを通るハウジング11の断面形状は、スクロール部11dを有する部分と有しない部分とで、概ね均一になる。このため、マルチングモードにおいて、ハウジング11内で刈り芝を旋回方向Rcへ十分に旋回を運動させることができる。マルチングモードの作業を効率良く行うことができる。
【0036】
図3に示すように、ハウジング11の内周面(外筒部11bの内周面)にはシャッタ機構40が設けられている。このシャッタ機構40は、ハウジング11の内部において天板11aに回転可能に取り付けられた回転盤41と、この回転盤41の外縁に取り付けられたシャッタ本体42と、回転盤41に基端が取り付けられたアーム43と、このアーム43の先端に連結された操作レバー44と、ハウジング11の後部上面に設けられた操作ガイド部45からなる。回転盤41は、軸心SCと同心上に位置する環状の水平板である。
【0037】
回転盤41及びシャッタ本体42は、ハウジング11の内部に位置している可動部分である。以下、シャッタ機構40において、回転盤41及びシャッタ本体42のことを、総称するときには、ハウジング11の内部に位置している「可動部分41,42」と言うことにする。
【0038】
図3、図5及び図10に示すように、シャッタ本体42は、板材を折曲げ成形した部材であって、回転盤41の外縁からハウジング11の外筒部11bへ向かって延びる水平部42aと、水平部42aの先端から湾曲しつつ外筒部11bの内周面に沿って下がる垂直部42bとからなる。水平部42aと垂直部42bとのコーナ42cは、スクロール部11dの外側コーナ11eに合わせた、比較的緩やかな円弧状に形成されている。シャッタ本体42の全体形状は、シャッタ本体42を下から見たときに、軸心SCを中心とした概ね扇状である。このようなシャッタ本体42は、軸心SCを中心として、回転盤41と共に回転可能である。
【0039】
図3に示すように、操作レバー44は、アーム43の先端に上下スイング可能に且つ左右スイングが規制されて、取り付けられている。さらに、操作レバー44は、実線で示す中立側に、リターンスプリング46によって弾発されている。図2及び図3に示すように、操作ガイド部45は、操作レバー44を挿通する左右に長いガイド用長孔45aと、ガイド用長孔45aに沿って設けた複数(例えば5個)の位置決め溝45bとを有する。操作ガイド部45によって、操作レバー44の操作を案内することができる。ガイド用長孔45aの一端側に臨む位置決め溝45bの位置が全閉位置を規定し、ガイド用長孔45aの他端側に臨む位置決め溝45bの位置が全開位置を規定する。位置決め溝45bの間隔は、例えばシャッタ本体42の開度が25%ずつになる間隔に設定すればよい。
【0040】
以上の説明から明らかなように、シャッタ機構40は、刈り芝搬出通路21において、ハウジング11に臨む通路開口23に設けられたシャッタ本体42を有する。このシャッタ本体42は、出力軸15aの軸心SCを旋回中心として旋回可能である。シャッタ本体42によって、通路開口23を開閉するとともに開度を調節することができる。シャッタ本体42を、操作レバー44によって旋回操作することができる。
【0041】
図8は、ハウジング11から後上方へ刈り芝搬出通路21を延ばしたこと、及び、スクロール部11dにおいて、天板11aから下方へ一定の隙間をあけてガイド部30を設け、ガイド部30のガイド方向後縁31の高さを、通路開口23の下端より高位に設定したことを示している。ガイド方向後縁31は通路開口23に臨んでいる。
【0042】
図9は、ハウジング11、刈刃14、刈り芝搬出通路21の通路開口23、ガイド部30及びシャッタ本体42の関係を展開して示している。スクロール部11d内におけるガイド部30の高さは、シャッタ本体42の高さと概ね同じである。従って、ハウジング11に刈り芝搬出通路21を設けるとともに、スクロール部11dにシャッタ本体42を設けたにもかかわらず、スクロール部11dの断面変化(断面形状や大きさの変化)は比較的小さい。この結果、スクロール部11dで空気や刈り芝を円滑に十分に旋回運動させることができる。
【0043】
図5、図8及び図9に示すように、シャッタ本体42は、ガイド部30のガイド方向後縁31に臨む開閉先端部42dに、ガイド部30の上側へ折り返した重合わせ部42eを一体に形成したものである。従って、シャッタ本体42を全閉にしたときには、ガイド方向後縁31に重合わせ部42eの一部が上下に重なる。なお、ガイド部30の先端部32は、端が天板11aの下面に当たるように傾斜した傾斜部に構成されている。
【0044】
ところで、図3、図5及び図10に示すように、シャッタ機構40は、ハウジング11の内部に位置している可動部分41,42にキッカー47を有している。このキッカー47は、マルチングモードの際に、刈り芝がハウジング11の内部で旋回する流れを整えつつ、刈り芝をハウジング11の下方へ案内する部材である。つまり、キッカー47は、出力軸15a回りで旋回方向Rcに旋回している刈り芝を、矢印W2のようにハウジング11の内方(内筒部11cの外周面)へ、且つハウジング11の下方へ案内する。このような役割を果たすキッカー47は、ハウジング11の内部において、ハウジング11の外周寄りの部分、つまり外筒部11bの内周部分又はその近傍に位置している(より具体的には、外側コーナ11e又はその近傍に位置している)。
【0045】
より詳しく述べると、図10に示すように、キッカー47は、シャッタ本体42に有しており、水平部42aと垂直部42bとのコーナ42c又はその近傍に位置する。例えば、キッカー47は、全体がシャッタ本体42に密接し、水平部42aにビス48、溶着、カシメなど、各種の取付け構成によって取り付けられる。シャッタ機構40(図5参照)がバギングモードに切り換えられたときに、キッカー47は、シャッタ本体42と共に刈り芝搬出通路21(図5参照)から外れて位置することになる。このようなキッカー47は、刈り芝が旋回する旋回方向Rcに対して向かう方向、つまり、旋回方向Rcとは反対方向に先細り状となるように、平面視(底面視も同様)と側面視の両方で、略三角形状となるように形成されている。
【0046】
ハウジング11(図3参照)を下側Dwから見たときに、キッカー47は次の構成をなす。
キッカー47における先細りの先端47aは、水平部42aと垂直部42bとのコーナ42cに位置している。三角形を呈したキッカー47における、1つの辺47bは、垂直部42bの外面に沿うとともに、接している。この辺47bは、先細りの先端47aの部分が水平部42aに最も近く、旋回方向Rcへいくにつれて水平部42aから離れるように、傾斜している。つまり、辺47bにおける後端47cの部分が、水平部42aから最も離れている。
【0047】
ここで、ハウジング11(図3参照)及びキッカー47を下側Dwから見たときに、三角形を呈しているキッカー47において、3つの頂点を次のように定義する。先細りの先端47aのことを「第1の頂点47a」という。後端47cのことを「第2の頂点47c」という。残りの端47dのことを「第3の頂点47d」という。第3の頂点47dは、第2の頂点47cと同様に水平部42aから最も離れている。
【0048】
このように、キッカー47は、刈り芝が旋回する旋回方向Rcに対して向かう方向に先細り状となる平面視略三角形状である。旋回流の流れは、略三角形状のキッカー47によって、ハウジング11の径方向(図5に示す内筒部11cの方向)に効率良く分散される。このため、高速で旋回している刈り芝を、図5に示すハウジング11の径方向に効率良く案内することができる。
【0049】
次に、上記構成の芝刈機10の全体的な作用を説明する。なお、図11〜図12は上記図9に対応させて表したものである。図13〜図15は上記図5に対応させて表したものである。
【0050】
図9及び図13は、操作レバー44を全閉位置にセットすることで、シャッタ本体42を全閉位置(開度0%)に操作したことを示す。通路開口23をシャッタ本体42にて閉じることで、芝刈機10をマルチングモードで用いる形式に設定し、刈刃14で刈った芝草(刈り芝)をハウジング11の中で更に細かく刻んで、ハウジング11の下方に排出することができる。
【0051】
図11及び図14は、操作レバー44を半開位置にセットすることで、シャッタ本体42を半開位置(開度50%)に操作したことを示す。通路開口23をシャッタ本体42にて任意の開度だけ開けることで、芝刈機10を中間モード(バギングモードとマルチングモードの中間モード)で用いる形式に設定し、刈り芝の一部を地面に戻しつつ、残りを刈り芝収納体22(図1参照)に収納することができる。
【0052】
図12及び図15は、操作レバー44を全開位置にセットすることで、シャッタ本体42を全開位置(開度100%)に操作したことを示す。通路開口23を全開にすることで、芝刈機10をバギングモードで用いる形式に設定し、刈り芝を刈り芝収納体22(図1参照)に収納することができる。
【0053】
このように、(1)シャッタ本体42を全開にして、刈り芝を刈り芝収納体22に収納するバギングモードと、(2)シャッタ本体42を全閉にして、刈り芝をハウジング11の下方に排出するマルチングモードと、(3)シャッタ本体42を任意の開度に設定した、バギングモードとマルチングモードの中間モードとに、適宜切換えることができる。
【0054】
さらには、シャッタ本体42を任意の開度に操作することにより、芝地Gr(図1参照)の状態、仕上がり条件や好みに応じて、刈り芝の排出形態を、きめ細かく自由に設定することができる。さらにまた、中間モードに切換えることで、ハウジング11から刈り芝収納体22へ排出する刈り芝の排出流量を減少させることができる。この結果、刈り芝収納体22への刈り芝の溜まる時間が延びるので、刈り芝収納体22の交換頻度を低減することができる。
【0055】
次に、ハウジング11にガイド部25を設けたことによる、芝刈機10の作用を説明する。
図15に示すバギングモードにおいて、刈刃14は軸15a(出力軸15a)回りを回転して、芝草を刈るとともに、ハウジング11の内部で出力軸15a回りの旋回流を発生する。刈られた芝草(刈り芝)は、旋回流によって、ハウジング11の内部で出力軸15a回りを旋回しつつ、刈り芝搬出通路21へ送られる。
【0056】
刈刃14の回転によって刈り芝がハウジング11内を旋回運動するときの旋回速度は、軸心SCから遠いほど高速である。つまり、ハウジング11の外周部における旋回流の流速は、出力軸15aの近傍における旋回流の流速よりも高速である。具体的には、平面視略環状の通路11d(スクロール部11d)を旋回する旋回流の流速は、内筒部11cの近傍において最も低速である。この低速となる内側コーナ11f(図7参照)又はその近傍にガイド部25を配置した。このガイド部25は、出力軸15a回りを低速で旋回している刈り芝を、旋回流が高速であるハウジング11の外周部(外筒部11b側)へ案内しつつ、刈り芝搬出通路21へ案内する。
【0057】
このため、旋回している刈り芝の流れが円滑になるので、刈り芝が出力軸15a回りに滞留すること(いわゆる、芝溜まり現象)を効率良く防止できる。芝溜まり現象を解消できるので、芝刈機10を清掃、点検する頻度を低減することができる。しかも、概ね全ての刈り芝の旋回速度が高速になる。刈り芝の概ね全量を、ハウジング11から刈り芝搬出通路21へ速やかに送って、刈り芝収納体22(図1参照)に効率良く収納することができる。この結果、刈り芝を刈り芝収納体22に収納する収納性能を高めることができる。しかも、ガイド部25は、ハウジング11の内部に有するだけの簡単な構成ですむ。
【0058】
次に、ハウジング11にガイド部25の他に、シャッタ機構40及びキッカー47を有していることによる、芝刈機10の作用を説明する。
キッカー47は、ハウジング11の外周寄りの部分又はその近傍に位置し、ハウジング11の内部で旋回している刈り芝の流れを整えつつ、下方へ案内するものである。シャッタ機構40を、図13に示すマルチングモードに切り換え操作することにより、刈り芝はハウジング11の下方へ排出される。さらに、ハウジング11内で旋回している刈り芝の流れは、キッカー47によってハウジング11の下方へ導かれる。このため、芝刈機10をマルチングモードで使用する際に、刈り芝をハウジング11の下方へ効率良く排出することができる。このマルチングモードにおいて、ガイド部25は、ハウジング11の内部で出力軸15a回りを低速で旋回している刈り芝を、ハウジング11の外周部へ案内する。
【0059】
このように、ハウジング11の内部にガイド部25とキッカー47の両方を配置したので、マルチングモードの際に、ハウジング11の内部で旋回している刈り芝の流れを、均一になるように分散させることができる。しかも、ガイド部25によって、芝溜まり現象を防止することができる。このため、刈り芝をハウジング11の下方へ効率良く排出することができる。また、マルチングモードにおいては、シャッタ本体42は刈り芝搬出通路21を閉鎖している。このときに、キッカー47はシャッタ本体42と共に、刈り芝搬出通路21を閉鎖する位置にあるが、バギングモードではないので差し支えない。
【0060】
一方、シャッタ機構40を、図15に示すバギングモードに切り換え操作することにより、シャッタ機構40は、刈り芝をハウジング11から刈り芝収納体22へ送るように移動する。このときに、シャッタ機構40の可動部分41,42と共にキッカー47も移動する。
【0061】
つまり、シャッタ本体42が刈り芝搬出通路21の位置から外れた(刈り芝搬出通路21を開いた)ときに、このシャッタ本体42と共に、キッカー47は「ハウジング11から刈り芝搬出通路21へ向かう刈り芝の流れ」に影響の無い位置へ、移動する。このため、バギングモードにおいて、「ハウジング11から刈り芝収納体22へ向かう刈り芝の流れ」が、キッカー47によって妨げられることはない。従って、芝刈機10をバギングモードで使用する際に、刈り芝を刈り芝収納体22(図1参照)に効率良く収納することができる。
【0062】
さらには、シャッタ機構40における小型の可動部分41,42にキッカー47を有するので、ハウジング11のような大型部材にキッカー47を設ける場合に比べて、キッカー47を設けることが容易であり、設けるための工数が少なくてすむ。しかも、ハウジング11のような大型部材を全く加工しなくてすむ。
【0063】
なお、本発明では、動力源はエンジン11に限定されるものではなく、例えば電動モータであってもよい。
また、刈り芝収納体22は、グラスバッグに限定されるものではなく、例えばボックスであってもよい。
また、シャッタ本体42は通路開口23の開度を調節できる構成であればよく、その形状、寸法、材質は任意である。
ガイド部25やキッカー47の寸法、材質は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の芝刈機10は、バギングモードとマルチングモードの両方で使用できる、ロータリ式芝刈機に用いるのに好適である。
【符号の説明】
【0065】
10…芝刈機、11…ハウジング、11a…天板、11b…外筒部、11c…内筒部、11d…空間部(通路、スクロール部)、11f…コーナ(内側コーナ)、14…刈刃、15…エンジン、15a…軸(エンジンの出力軸)、21…刈り芝搬出通路、23…刈り芝収納体、25…ガイド部、40…シャッタ機構、41…回転盤(シャッタ機構の可動部分)、42…シャッタ本体(シャッタ機構の可動部分)、47…キッカー、Gr…芝地、Rc…旋回方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な刈刃を収納するための下開放のハウジングの内周面に設けられている、シャッタ機構を切り換え操作することにより、前記刈刃で刈られた芝草を前記ハウジングから刈り芝収納体へ送るバギングモードと、前記刈られた芝草を前記ハウジングの下方へ排出するマルチングモードとに、切り換えることが可能な芝刈機において、
前記シャッタ機構は、前記ハウジングの内部に位置している可動部分にキッカーを有しており、このキッカーは、前記マルチングモードの際に、前記刈られた芝草を前記ハウジングの下方へ案内する部材であることを特徴とする芝刈機。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記刈られた芝草を前記刈り芝収納体へ送るための刈り芝搬出通路を有しており、
前記シャッタ機構における可動部分は、前記刈り芝搬出通路を開閉するためのシャッタ本体を含み、
前記キッカーは、前記シャッタ機構が前記バギングモードに切り換えられたときに、前記シャッタ本体と共に前記刈り芝搬出通路から外れて位置するべく、前記シャッタ本体に有していることを特徴とした請求項1記載の芝刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−279277(P2010−279277A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134378(P2009−134378)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】