説明

芝刈機

【課題】電動モータの回転数が小さく且つ集草効率の高い芝刈機を提供する。また、小型で操作性に優れた芝刈機を提供する。
【解決手段】芝刈機の動力源であるモータ50は、出力軸52と一体に回転する回転子53と、ハウジング30に固定された固定子54とを有し、出力軸52が略鉛直となるように配置される。回転子53は、出力軸52の軸方向視において出力軸52を中心に円周方向に配列した略環上の複数のコイルが設けられた円板状のコイルディスクを有し、固定子54は、コイルディスクを出力軸52の軸方向に通過する磁束を発生するマグネット71と上ヨーク72および下ヨーク73とを有する。モータ50の出力軸52には、芝草を刈るための回転刃33が取付けられる。また、モータ50と刈り取った芝草を送るファン37とには、動力伝達機構46が取付けられ、モータ50からの動力が増速してファン37に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の芝刈機として、電動モータにより回転刃を回転させて芝草を刈り取り、刈り取った芝草をファンにより案内して集草ケースに捕集するものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1で開示された芝刈機では、出力軸の軸方向が鉛直となるように電動モータを配置し、出力軸にファンを取付けると共に出力軸にギヤを介して芝刈り用の回転刃を取付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−159621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の芝刈機では、出力軸の軸方向が鉛直となるように電動モータが配置されることによって、電動モータからの動力が効率よくファンや回転刃に伝達されるものの、電動モータが鉛直方向に大きく突出するために、電動モータや回転刃を含む芝刈機の作業部の高さが大きくなってしまう。作業部の高さが大きいと、植木やベンチの下などの芝を刈り取ることが困難となる。また、特に、敷石やレンガが置かれた敷地では、こうした敷石やレンガに沿って芝刈機を曲線状に移動させたり芝刈機を持ち上げて移動させる必要があるが、電動モータが鉛直方向に大きく突出して作業部の重心の位置が高いと、移動によって操作者にかかる負担も大きくなる。
【0005】
また、上述の芝刈り機では、電動モータの出力軸にファンを直結し、減速して回転刃を駆動させているが、ファンでの風量を得るためにはファンの回転数を高くする必要があるため、高回転用に設計された電動モータを要する。しかし、高回転でのモータの使用はブラシ等の磨耗が大きくなったり、ロータの耐久性において不利となる場合があった。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、電動モータの回転数が小さく且つ集草効率の高い芝刈機を提供することや、小型で操作性に優れた芝刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る芝刈機は、
車輪を有し、少なくとも所定の前方に移動可能な本体と、
前記本体に設けられ、回転子と、固定子と、前記回転子と同軸一体に設けられた出力軸と、を有する電動モータと、
前記出力軸に取り付けられた回転刃と、
前記回転刃により刈り取られた芝を捕集する集草ケースと、
前記出力軸の後方に設けられ、前記回転刃により刈り取られた芝を前記集草ケース側に送るファンと、
前記電動モータからの動力を増速して前記ファンに伝達する動力伝達機構と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
前記電動モータは、前記出力軸の軸線が略鉛直に配置され、前記回転子と前記固定子との何れか一方は、複数のコイルが設けられたコイルディスクを有し、前記回転子と前記固定子との何れか他方は、前記コイルディスクを前記出力軸の軸方向に通過する磁束を発生する磁束発生手段を有してもよい。
【0009】
前記ファンは、一部が前記出力軸の軸方向視において前記回転子と重なる位置に設けられてもよい。
【0010】
また、前記動力伝達機構は、前記電動モータの回転子に取付けられた第1のギヤを含んでもよい。
【0011】
さらに、前記第1のギヤは、円環状の2つの部材からなり、該円環状の2つの部材が、前記出力軸の軸方向の両端から前記回転子に取付けられてもよい。
【0012】
また、前記動力伝達機構は、前記第1のギヤと、前記ファンの回転軸に取付けられた第2のギヤとから構成されてもよい。
【0013】
さらに、前記回転刃は、前記回転刃から離れる方向に周縁が折り曲げられた折り曲げ板が取付けられてもよい。
【0014】
また、前記コイルディスクは、コイルの導体パターンが形成されたプリント配線板から構成されてもよい。
【0015】
さらに、前記磁束発生手段は、マグネットを備えてもよい。
【0016】
また、前記ファンの周囲には前記集草ケースに連通するボリュート部が形成され、前記ボリュート部の前記集草ケースに通じる開口が、前記回転刃の後方側上方に位置してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、モータの回転数が小さく且つ集草効率の高い芝刈り機を提供することができると共に小型で操作性に優れた芝刈機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態としての芝刈機を横から見た様子の一例を示す断面図である。
【図2】芝刈機を上から見た様子の一例を示す説明図である。
【図3】芝刈機のハウジング周辺を拡大した様子の一例を示す拡大図である。
【図4】出力軸と回転子とモータ側ギヤとを分解した様子の一例を示す分解図である。
【図5】回転子をコミュテータディスク側から軸方向視した様子の一例を示す説明図である。
【図6】コイル基板の一方の面の様子の一例を示す説明図である。
【図7】コイル基板の他方の面の様子の一例を示す説明図である。
【図8】コイル基板に形成された2つのコイルのうち一方を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施形態としての芝刈機20を横から見た様子の一例を示す断面図であり、図2は、芝刈機20を上から見た様子の一例を示す説明図である。実施形態の芝刈機20は、図示するように、操作者が把持するハンドル22と、ハンドル22に接続される主棹部26と、芝地などの芝刈りを行う作業部30と、芝刈機20全体を移動させるための車輪21a,21bとを備える。なお、以下の説明では、図1の左側(図2の下側)を芝刈機20の前側とし、図1の右側(図2の上側)を芝刈機20の後側とする。
【0020】
ハンドル22は、軽量で丈夫な材料(例えば、強化プラスチックなど)によって中空に形成され、主棹部26の後端部に取り付けられている。ハンドル22には、外部電源に接続して電力を作業部30に供給する電源プラグ23aおよび電源コード23bや、ハンドル22に対して揺動可能にレバー25が取付けられ、ハンドル22の内部には、電源コード23bに接続されて操作者によるレバー25の操作に応じて作業部30に電力を供給する電源配線24(作業部30側の一部は図示せず)が設けられている。なお、電源配線24には、ヒューズ24aが設けられている。
【0021】
主棹部26は、軽量で丈夫な材料(例えば、強化プラスチックなど)によって中空棒状に形成され、ハンドル22と作業部30とを接続する。主棹部26は、ハンドル22と内部で連通し、電源配線24が内部に配設されている。主棹部26の中段には、芝刈機20を持って移動するときや芝刈機20を持ち上げて芝刈りを行うときに用いられる補助ハンドル27が取付けられている。また、主棹部26は、作業部30に対して回動可能に取付けられており、操作者は、収納時には主棹部26を起立させておくなど、利用状況に応じて主棹部26を前後方向に回動させることができる。
【0022】
作業部30は、主棹部26の前端に連結されたハウジング(本体)40と、芝草などを刈り取る刈り取り部32と、刈り取られた芝草を捕集する集草ケース38と、動力を出力するモータ(電動モータ)50と、刈り取られた芝草を集草ケース38に送るファン37と、モータ50からの動力をファン37に伝達する動力伝達機構46と、を備える。また、作業部30には、刈り取り部32による芝草の刈り取りの高さを調整する高さ調節機構39が設けられている。図3にハウジング40周辺を拡大した様子を示す。
【0023】
ハウジング40は、刈り取り部32やモータ50,ファン37,動力伝達機構46を内部に収容し、後側に集草ケース38が取付けられている。ハウジング40は、前方の下側に刈り取り部32を収容し、刈り取り部32の前側に当たる位置に、前方が開口する前方開口部43が形成されている。また、ハウジング40は、刈り取り部32の後方に当たる位置に前方開口部43と連通するボリュート部44が形成され、このボリュート部44の上壁にファン37が取付けられている。ボリュート部44の後方には、上方に向けて開口する後方開口部45が形成されており、この後方開口部45に集草ケース38が取付けられる。
【0024】
刈り取り部32は、図3に示すように、モータ50からの動力によって回転する回転刃33と、芝草の絡みつきを防止すると共に刈り取った芝草をファン37側に案内する芝草案内板34と、ハウジング40に固定された固定刃35と、を備える。回転刃33や芝草案内板34,固定刃35は、ハウジング40の前端に、それぞれ板面が水平となるように配置されている。回転刃33は、モータ50の出力軸52に連結され、外周の複数箇所(例えば、2,3カ所)に外周方向に凸となる刃部(図示せず)が形成されている。回転刃33には、上側に、回転刃33と一体に回転する芝草案内板34が取付けられている。芝草案内板34は、周縁が回転刃33から離れるように上側に折り曲げられた円皿状に形成されている。固定刃35は、前方(図2では、前方の240度程度)の外周に所定間隔毎に凸となる複数の刃部35aが形成されている。こうした構成の刈り取り部32は、モータ50の動力を受けて回転刃33が回転することで、回転刃33と固定刃35とに挟まれる芝草を刈り取ることができる。また、芝草案内板34が回転刃33と一体に回転することにより、回転刃33の内側に芝草が入り込んでモータ50に芝草が絡まってしまうのを抑制することができると共に、刈り取られた芝草は芝草案内板34の回転に連れられてハウジング40内で移動し、芝草をボリュート部45に案内することができる。また、固定刃及び回転刃は、前後方向において、車輪21a、21bと略同じ位置に配置することにより、芝の際刈り作業を良好に行うことができる。
【0025】
モータ50は、電力を受けて出力軸52に動力を出力する整流子モータとして構成され、出力軸52と、出力軸52に連結されて出力軸52と一体に回転する回転子53と、ハウジング40に支持された固定子54および摺動子(図示せず)と、を備える。モータ50は、軸受41a,41bによって出力軸52がハウジング40に軸支されている。図4に、出力軸52と回転子53を分解した様子の一例を示す。
【0026】
回転子53は、フランジ61と、コミュテータディスク62と、4つのコイル基板64が積層されて形成されたコイルディスク63と、複数の絶縁板67,68とから構成されている。フランジ61は、例えばアルミニウム合金により形成され、中空円筒状の軸部61aと、軸部61aから延出する円板状のフランジ部61bと、を有する。フランジ61は、軸部61aの内周面が出力軸52の外周面と嵌合して互いに回り止め固定され(図4では、固定された状態を示している)、軸部61aの外周面には、フランジ部61bの一端側に絶縁板67を介してコミュテータディスク62が取り付けられ、フランジ部62bの他端側に絶縁板68を介してコイルディスク63が取り付けられている。
【0027】
コミュテータディスク62と、コイルディスク63を構成する4つのコイル基板64とは、絶縁体基板と導体パターンとから構成されたプリント配線板により形成される。図5に、回転子53をコミュテータディスク62側から軸方向視した様子の一例を示し、図6に、コイルディスク63を図5と同じ方向から(上から)見た様子の一例を示し、図7に、コイルディスク63を図5と逆の方向から(下から)見た様子の一例を示す。なお、図5から図7には、後述する固定子54のマグネット71の位置を2点鎖線で示している(符号は示さず)。コミュテータディスク62と4つのコイル基板64とは、図5から図7に示すように、中心にフランジ61の軸部61aが挿入される穴が開いた円板状にそれぞれ形成されている。実施形態では、コイルディスク63は、同一の導体パターンが印刷された4つのコイル基板64が積層されて構成されるものとした。
【0028】
コミュテータディスク62の上面(図5)および下面(図示せず)には、コミュテータ(整流子)の導体パターンが円環状に形成されている。コミュテータディスク62は、導体パターンのそれぞれ外周側の端部にコミュテータディスク62を軸方向に貫通するスルーホール62aが設けられ、このスルーホール62aに半田などが充填されて、コミュテータディスク62の上面に形成された導体パターンと下面に形成された導体パターンとが電気的に接続される。
【0029】
コイル基板64の上面(図6)及び下面(図7)には、コイルの導体パターンがそれぞれ円環状に形成されている。コイル基板64に形成された導体パターンの一部(図5から図7中、一転鎖線で囲んだ部位)を部分コイル65と定義する。実施形態では、図6及び図7に示すように、コイル基板64には、それぞれ20個の部分コイル65が設けられている。部分コイル65は、ぞれぞれ、外周側と内周側の端部にコイル基板64を軸方向に貫通するスルーホール66a,66bが設けられ、このスルーホール66a,66bに半田などが充填されて、コイル基板64の上面に形成された導体パターンと下面に形成された導体パターンとが電気的に接続される。部分コイル65は、軸中心に対して略垂直な直線部を有し、直線部から内周側と外周側とで折れ曲がって全体的にはクランク状に形成されている。コイル基板64の上面に印刷された部分コイル65のうち2つ(図6中、部分コイル65a)は、内周側で接続されており、また、コイル基板64の下面に印刷された部分コイル65のうち4つ(図5中、部分コイル65b)は、内周側でコイル基板64を軸方向に貫通するスルーホール64aに接続されて他のコイル基板64やコミュテータディスク62に電気的に接続される。こうした部分コイル65が、コイル基板64の内周側端および外周側端でスルーホール66a,66bによって上面と下面とで電気的に接続され、コイル基板64に2本のコイルが形成される。図8に、コイル基板64に形成される2本のコイルのうちの一方のみを示す。図8では、1本のコイルのうち、上面に印刷されたコイルパターンについては実線で示し、下面に印刷されたコイルパターンについては破線で示している。図示するように、上面に印刷されたコイルパターンと下面に印刷されたコイルパターンとは、スルーホール66a,66bの位置で重なり、この地点で電気的に接続される。コイル基板64に形成されたコイルは、コミュテータディスク62や他のコイル基板64との接続点であるスルーホール64aを両端として、上面と下面とを交互に行き来し、上面の部分コイル65同士(部分コイル65aの部分)の接続点で折り返して、コイル基板64を円周方向に2周するように、形成されている。このように構成される4つのコイル基板64は、軸方向視においてそれぞれに形成された導体パターンが一致するように、または、それぞれ予め定められた角度ずつズレるように積層されてコイルディスク63を構成する。
【0030】
固定子54は、図4および図5に示すように、永久磁石であるマグネット71と、一対の上ヨーク72および下ヨーク73と、から構成されている。上ヨーク72および下ヨーク73は、鉄等の磁性体によって円環板状に形成されており、ハウジング40にそれぞれ固定されている。上ヨーク72は、回転子53の上面と対向するように、詳細にはコミュテータディスク62より外周側に配置されてコイル基板64の部分コイル65の直線部と対向するように、ハウジング40に固定されている。下ヨーク73は、回転子53の下面と対向するように、詳細にはコイル基板64の部分コイル65の直線部と対抗するように、ハウジング40に固定されている。マグネット71は、複数の磁極が円環状に配置されるよう形成されており、下ヨーク73の上面に固着されている。こうした構成により、上ヨーク72および下ヨーク73は、マグネット71から発生される磁束がコミュテータディスク62及びコイルディスク63を出力軸52の軸方向に通過するように、磁路を形成する。なお、マグネット71と上ヨーク72および下ヨーク73とは、本発明の磁束発生手段を構成している。
【0031】
摺動子は、回転子53のコミュテータディスク62の上面に摺接するように、ハウジング40に固定されている(図示せず)。摺動子は、ハウジング40に固定されたブラシホルダに、電気伝導性を有する素材(例えば、カーボンなど)によって形成されたブラシが入れられて、ブラシホルダ内でバネの付勢力によってブラシが回転子53に押しつけられる。摺動子は、電源配線24に接続され、操作者によってレバー25が操作されたときに、電源配線24を通じて電力が供給される。
【0032】
ファン37は、ハウジング40の後方に形成されたボリュート部44に設けられ、その回転軸37aが軸受42a,42bによってハウジング40に軸支されている。ファン37は、実施形態では、図3に示すように、その一部が、出力軸52の軸方向視(図3中の上下方向)において回転刃33と重なる位置に配置されている。ファン37は、モータ50からの動力によって回転し、ハウジング40内でボリュート部44から後方開口部45に向かう空気の流れを生成する。このように、ファン37の一部を、出力軸52の軸方向視において回転刃33と重なる位置に配置することにより、作業部30の前後方向の長さを小さくすることができる。
【0033】
動力伝達機構46は、図3に示すように、モータ50の回転子53に取付けられたモータ側ギヤ(第1のギヤ)47と、ファン37の回転軸37aに取付けられたファン側ギヤ(第2のギヤ)48とから構成されている。モータ側ギヤ47は、2つの円環状のギヤ構成部材47a,47bによって構成され、図4に示すように、この2つのギヤ構成部材47a,47bでモータ50の回転子53を両側から挟んで、互いにボルトなどにより締結することにより、回転子53に取付けられている。ファン側ギヤ48は、モータ側ギヤ47と噛み合うようにファン37の回転軸37aに取付けられている。こうした動力伝達機構46により、モータ50からの動力は、モータ側ギヤ47からファン側ギヤ48に伝達されてファン37に伝達される。この動力伝達機構46では、環状の2つのギヤ構成部材47a,47bで構成されるモータ側ギヤ47が、モータ50の回転子53に一体に取付けられているから、モータ50の出力軸52にギヤを設けるものに比して、ギヤを設けるために出力軸52を長くする必要などがなく、作業部30全体の高さを小さくすることができる。また、実施形態の動力伝達機構46は、回転子53に取付けられたモータ側ギヤ47の歯数より、ファン37の回転軸37aに取付けられたファン側ギヤ48の歯数を少なくして、モータ50からの動力が増速されてファン37に伝達されるものとした。これにより、ファン37を高回転で駆動して、ファン37による芝草の集草ケース37への搬送を効率よく行うことができ、ファン37による芝草の搬送力の増加や、ファン37の軽量化、小型化を図ることができる。また、ファン37は、出力軸52より進行方向の後方側に位置することで、集草ケース38に近くなり、効率よく芝草を集草ケース38に集めることができる。また、ファン37は、車輪21a,21bの間で前後方向に重なる位置に配設されていることから、空間を有効に利用することができ、作業部30をコンパクトに構成することができる。
【0034】
こうして構成される実施形態の芝刈機20では、操作者が、ハンドル22に設けられたレバー25を操作することにより、モータ50の摺動子に所定の電圧が印加される。このモータ50の摺動子に印加された電圧は、コミュテータディスク62を介して回転子53のコイル基板62に形成されたコイルに印加される。回転子53には、固定子54が発生する磁束が軸方向に通過しており、回転子53に流れる電流は、この磁束と垂直方向かつ出力軸52の中心軸と直交するように流れるため、出力軸52を中心とする回転力が発生し、回転子53と出力軸52とが回転する。モータ50の出力軸52が回転すると、出力軸52に一体に取付けられた回転刃33が回転して、固定刃35の刃部35bと回転刃33の刃部とで芝草を挟んで刈り取ることができる。刈り取られた芝草は、芝草案内板34の回転に連れられて前方開口部43からハウジング40内に移動し、ファン37が設けられたボリュート部44まで案内される。そして、ボリュート部44まで案内された芝草は、ファン37によって生成された空気の流れによって後方開口部45を通って集草ケース38に送られ、集草ケース38に捕集される。実施形態の芝刈機20では、ファン37は、その一部が、出力軸52の軸方向視において回転刃33と重なる位置に設けられるから、刈り取られた芝草が、回転刃33や芝草案内板34によって後方に運ばれたときに、ファン37によって生成された空気によって、効率よく芝草を集草ケース38に捕集することができる。また、実施形態の芝刈機20では、刈り取り部32がハウジング40の前端に配置されているため、操作者は、敷地の隅まで効率よく芝草を刈ることができ、芝刈機20を傾けて敷地の角の芝草を刈ることなどもできる。さらに、実施形態では、モータ50の出力軸52に直接に芝刈りのための回転刃33を取付けると共にモータ50に動力伝達機構48を介してファン37を取付けることにより、ファン37を高回転で駆動してファン37の小型化を図ることができると共に比較的小さい定格回転数のモータ50を用いることができる。また、モータ50を低回転で使用することができるため、摺動子のブラシの磨耗が抑えられて寿命が向上するとともに、ロータの耐久性に有利とすることができる。また、回転刃33の回転軸とモータ50の出力軸52とを同軸にすることにより、ファン37の軸上にはモータ50が配置されていないから、ファン37を小型化することで容易に装置全体を小型化することができる。なお、モータ50による回転刃33とファン37との駆動としては、例えば、回転刃33を2000〜3000rpm程度で回転させ、ファン37を12000〜14000rpmに回転させるなどとすることができる。
【0035】
また、実施形態のモータ50は、プリント配線板であるコミュテータディスク62と4つのコイル基板64とから構成された円板状の回転子53を備えており、所謂コアに巻回されたコイルを有するモータと比較して、回転子53が軽量であり、高効率という利点を有する。また、上記構成の回転子53は所謂コイルエンド(所謂コアに巻回されたコイルにおいて、コアからはみ出す屈曲部分)を必要としないため、モータ50を扁平化及び小型化することができるほか、コイル基板64のコイルの発熱を抑制することができる。さらに、上記構成の回転子53は放熱面積が大きく、コイルの冷却能力が高いため、モータ50を冷却するための機構を低減したり省略して、部品点数を低減したり装置全体の小型化を図ることができる。
【0036】
このように実施形態の芝刈機20は、従来のモータと比較して扁平かつ小型なモータ50を用いているから、作業部30の高さを小さくして、植木やベンチの下などの芝草を効率よく刈り取ることができる。また、作業部30の高さを小さくして重心を低くすることにより、例えば、敷石などのある敷地内を敷石などに沿って曲線状に芝刈機20を移動させるときや、方向転換して芝刈機20による芝刈り作業を行うときなど、芝刈機20の安定性を向上させて操作性を向上させることができる。
【0037】
上述した芝刈機20では、モータ50の回転子53を、出力軸52の軸方向両端から円環状の2つのギヤ構成部材47a,47bで挟んでモータ側ギヤ47が形成されるものとしたが、モータ側ギヤ47は、1つの円環状の部材から構成されて回転子53の一方側から取付けられるものとしてもよい。また、モータ50からの動力をファン37側に伝達するギヤを、モータ50の出力軸52に設けてもよい。さらに、動力伝達機構46は、モータ側ギヤ47とファン側ギヤ48との2つの部材から構成されるものとしたが、モータ50からの動力を増速してファン48に伝達するものであれば如何なるものとしてもよく、ベルトや3つ以上のギヤを用いて構成されてもよい。
【0038】
上述した芝刈機20では、周縁が上側に折り曲げられて円皿状に形成された芝草案内板34を、回転刃33と一体に回転するように設けるものとしたが、例えばプレス加工や打ち抜き加工などによって回転刃33の板面の一部を上側に折り曲げてもよい。また、こうした芝草案内板34などの機構を設けなくてもよい。
【0039】
上述した芝刈機20では、モータ50の回転子53は、4つのコイル基板64が積層されてコイルディスク63が形成されるものとしたが、コイル基板64は、1つとしてもよいし、4つ以外の数が積層されてコイルディスクが形成されてもよい。また、コミュテータディスク62に変えて内周にコミュテータの導体パターンが形成され外周にコイルの導体パターンが形成されたコイル・コミュテータディスクを用いてもよい。さらに、実施形態のコミュテータディスク62やコイル基板64は、プリント配線板から構成されていたが、円板状に配列された薄型コイルなどから構成されてもよい。
【0040】
上述した芝刈機20では、一面に20個の部分コイル65が印刷されたコイル基板64を用いるものとしたが、コイルディスク63にコイルが形成されれば如何なる導体パターンがコイル基板64に形成されてもよく、部分コイル65の数は20個に限定されるものではない。また、同一の導体パターンが形成されたコイル基板を積層するものに限定されるものではなく、それぞれに異なる導体パターンが形成された複数のコイル基板が積層されてコイルディスクが形成されてもよい。
【0041】
上述した芝刈機20では、モータ50の固定子54は、マグネット71と上ヨーク72および下ヨーク73とから構成されるものとしたが、回転子53のコイル基板62を出力軸52の軸方向に通過する磁束を発生するものであればよく、複数の永久磁石や、電磁石、コイルのみ等から構成されてもよい。
【0042】
上述した芝刈機20では、モータ50は、コイルディスク63を有する回転子53とマグネット71を有する固定子54とを備えるものとしたが、コイルディスクを有する固定子とコイルディスクを出力軸の軸方向に通過する磁束を発生させる回転子とを備えるブラシレスモータであってもよい。
【0043】
上述した芝刈機20では、モータ50は電源コード23aや電源プラグ23bを介して外部電源の電力により駆動されるものとしたが、バッテリを搭載してバッテリの電力により駆動されてもよい。この場合、バッテリとして、燃料電池や二次電池が搭載されてもよく、電源コード23aや電源プラグ23bによって充電可能としたり、取り外して交換可能としてもよい。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0045】
20 芝刈機
21a,21b 車輪
22 ハンドル
23a 電源プラグ
23b 電源コード
24 電源配線
25 レバー
26 主棹部
27 補助ハンドル
30 作業部
32 刈り取り部
33 回転刃
34 芝草案内部
35 固定刃
37 ファン
37a 回転軸
38 集草ケース
40 ハウジング
41a,41b,42a,42b 軸受
43 前方開口部
44 ボリュート部
45 後方開口部
46 動力伝達機構
47 モータ側ギヤ
47a,47b ギヤ構成部材
48 ファン側ギヤ
50 モータ
52,152 出力軸
52a フランジ部
53 回転子
54 固定子
61 フランジ
61a 軸部
61b フランジ部
62 コミュテータディスク
62a スルーホール
63 コイルディスク
64 コイル基板
64a スルーホール
65 部分コイル
65a,65b スルーホール
67,68 絶縁版
71 マグネット
72 上ヨーク
73 下ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有し、少なくとも所定の前方に移動可能な本体と、
前記本体に設けられ、回転子と、固定子と、前記回転子と同軸一体に設けられた出力軸と、を有する電動モータと、
前記出力軸に取り付けられた回転刃と、
前記回転刃により刈り取られた芝を捕集する集草ケースと、
前記出力軸の後方に設けられ、前記回転刃により刈り取られた芝を前記集草ケース側に送るファンと、
前記電動モータからの動力を増速して前記ファンに伝達する動力伝達機構と、
を備えることを特徴とする芝刈機。
【請求項2】
前記電動モータは、前記出力軸の軸線が略鉛直に配置され、前記回転子と前記固定子との何れか一方は、複数のコイルが設けられたコイルディスクを有し、前記回転子と前記固定子との何れか他方は、前記コイルディスクを前記出力軸の軸方向に通過する磁束を発生する磁束発生手段を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の芝刈機。
【請求項3】
前記ファンは、一部が前記出力軸の軸方向視において前記回転子と重なる位置に設けられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の芝刈機。
【請求項4】
前記動力伝達機構は、前記電動モータの回転子に取付けられた第1のギヤを含む、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の芝刈機。
【請求項5】
前記第1のギヤは、円環状の2つの部材からなり、該円環状の2つの部材が、前記出力軸の軸方向の両端から前記回転子に取付けられる、
ことを特徴とする請求項4に記載の芝刈機。
【請求項6】
前記動力伝達機構は、前記第1のギヤと、前記ファンの回転軸に取付けられた第2のギヤとから構成される、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の芝刈機。
【請求項7】
前記回転刃は、前記回転刃から離れる方向に周縁が折り曲げられた折り曲げ板が取付けられる、
ことを特徴とする請求項2乃至6の何れか1項に記載の芝刈機。
【請求項8】
前記コイルディスクは、コイルの導体パターンが形成されたプリント配線板から構成される、
ことを特徴とする請求項2乃至7の何れか1項に記載の芝刈機。
【請求項9】
前記磁束発生手段は、マグネットを備える、
ことを特徴とする請求項2乃至8の何れか1項に記載の芝刈機。
【請求項10】
前記ファンの周囲には前記集草ケースに連通するボリュート部が形成され、前記ボリュート部の前記集草ケースに通じる開口が、前記回転刃の後方側上方に位置する、
ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の芝刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−157282(P2012−157282A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19043(P2011−19043)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】