説明

芯地を有する防汚性繊維構造物

【解決手段】表地と、この表地の片面に接着樹脂を介して接着された芯地とを有する繊維構造物であって、上記芯地が撥水防汚処理されてなることを特徴とする芯地を有する防汚性繊維構造物。
【効果】本発明の繊維構造物は、親水防汚加工された表地と、撥水防汚加工された芯地とが、接着樹脂で接着されており、吸水性に優れる上に、高い防汚性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯地を有する防汚性繊維構造物に関し、更に詳述すると、シャツ等を構成するパーツである衿、カフス等として有用な、防汚性能に優れた芯地を有する繊維構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、シャツの衿やカフス部分は、型崩れを防ぎ、その形状を美しく保持するために、表地、表地を補強する芯地、及び表地と芯地を結合させる接着剤で構成されている。これまでの防汚シャツは、シャツ地が良好な防汚性でも、衿部分は複数のパーツ(衿台芯地、衿羽根芯地、接着剤等)の影響により、身生地に比べて洗濯効果が小さくなるため、特に衿に汚れが付きやすく、洗濯しても落ち難く、度重なる着用により表地、芯地、接着剤に汚れが溜まり、衿部分全体の汚れが目立つようになるという問題があった。また、商業洗濯で濡れ掛けプレス(脱水後、乾燥せずにアイロン掛けする方法)を行うと、溜まった汚れと接着剤が混合して表地に染み出してきて固着し、更に目立つという難点もあった。
【0003】
こうした衿の汚れを防ぐ方法が種々検討されている。例えば、表地には撥水剤及び撥油剤が付着しており、芯地には親水剤及び親油剤が付着しており、その表地の繊維よりも細い繊維を使った芯地を用い、表地に吸収された汗等を芯地の毛細管現象によって芯地側に吸収させるようにした衿部が提案されている(特許文献1:特開2004−107848号公報)。しかし、このような構成の衿では、使用されている芯地に汗等による油分が蓄積しているので防汚とは言えず、衿部分の汚れが目立つようになり、上記濡れ掛けプレスで溜まった汚れが表地に染み出すという問題も解決されない。
【0004】
また、粘度の高い接着剤を使用したり(特許文献2:特開平7−102234号公報)、ベース芯地と補強芯地の接着剤の粘性を変えたり(特許文献3:特開2004−149993号公報)、芯地の裏側からアイロン掛けすることで(特許文献4:特開2004−41405号公報)、プレスしたときに接着剤が表地へ染み出すのを防ぐ方法も提案されている。しかし、これらトップヒューズ(表地と直接接着できる芯地)の接着剤は疎水性であり、ポリエステルを含む芯地と共に油汚れを吸着し易いという欠点がある。一方、水溶性の接着樹脂を用いて縫製し、その後の洗濯によって樹脂を溶解除去することで、やわらかな風合いを保つと共に、接着剤の染み出しを防止できる衿部も提案されている(特許文献5:特開平9−87910号公報)が、永久的な接着が必要となる衿部分の場合には不十分であった。
【0005】
表地を撥水撥油処理し、芯地を吸水処理することで、撥水撥油性の表地に付着した汚れを吸水性の芯地が吸収するようにした衿部等も提案されている(特許文献6:特開2004−183107号公報)。しかし、洗濯によっても芯地の汚れは非常に落ち難いために、芯地に汚れが溜め込まれるという不都合がある。また、度重なる着用やアイロンなどにより、表地に汚れが逆戻りする可能性がある。更に、先染の表地ならば芯地の汚れは見え難いが、晒の場合は汚れが透けて見えたり、撥水撥油性の表地は汗を吸わずに着心地が悪いという問題もあった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−107848号公報
【特許文献2】特開平7−102234号公報
【特許文献3】特開2004−149993号公報
【特許文献4】特開2004−41405号公報
【特許文献5】特開平9−87910号公報
【特許文献6】特開2004−183107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、吸水性を保ちつつ、防汚性を向上させた芯地を有する繊維構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、撥水加工した表地と、親水加工した芯地とを用いた上記の構成の衿等とは逆に、撥水防汚処理された芯地を用いること、特に親水防汚加工した表地と、撥水防汚加工した芯地とを組み合わせることで、表地が吸水性であり、汗を吸収するため着心地がよく、たとえ表地と芯地に着用による人体の汚れ、例えば汗や衿垢が付着しても、洗濯により容易に除去でき、表地に付着した脂汚れも芯地には付着しにくいため、芯地の汚れの残留を軽減することができ、それにより経時の黄ばみや臭いの発生を防いだ衿、カフス等の芯地を有する繊維構造物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記の芯地を有する防汚性繊維構造物を提供する。
<1>表地と、この表地の片面に接着樹脂を介して接着された芯地とを有する繊維構造物であって、上記芯地が撥水防汚処理されてなることを特徴とする芯地を有する防汚性繊維構造物。
<2>上記表地が親水防汚加工されてなる<1>記載の防汚性繊維構造物。
<3>親水防汚処理剤が、親水性ポリエステルオリゴマー、又は、フッ素系ビニルモノマーとポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマー及び非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマーの共重合体であり、繊維に対する付着量が1〜10質量%である<2>記載の防汚性繊維構造物。
<4>撥水防汚処理剤がフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、パラフィン系樹脂から選ばれ、繊維に対する付着量が1〜15質量%である<1>〜<3>のいずれかに記載の防汚性繊維構造物。
<5>衿羽根、衿台、カフス又は前立てである<1>〜<4>のいずれかに記載の防汚性繊維構造物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の繊維構造物は、親水防汚加工された表地と、撥水防汚性の防汚加工された芯地とが、接着樹脂で接着されているため、表地は吸水性に優れる上に、芯地は撥水性のために汚れを吸収せずに高い防汚性を有する。即ち、汗等の水分を吸うため着心地が良く、汗じみ、衿垢等、人体からの発生に起因する汚れの付着を軽減させ、生地に溜まる汚れを抑えることができるので、経時的な黄ばみや臭いの発生を抑制できる。また、永久接着剤が残留した汚れと共にプレスなどの外因により溶け出しておこる剥離の発生を防ぐことができる。また、漂白等による生地の傷みも軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の繊維構造物は、表地と、この表地の片面に接着樹脂を介して接着された芯地とを有する繊維構造物であって、上記表地が親水防汚加工されてなると共に、上記芯地が撥水防汚処理されてなるものである。
【0012】
ここで、本発明の繊維構造物に用いられる表地としては、特に制限されず、織物、編物、不織布等が挙げられる。これらの生地を構成する繊維としても特に制限されず、木綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、テンセル(精製セルロース)等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維等が挙げられる。これらの繊維は、1種単独で又は2種以上を混紡、交織等して使用することができるが、本発明においては、防汚性、吸水性の点から、セルロース系繊維を好ましく用いる。
【0013】
上記繊維構造物は、必要に応じて予め精練、漂白、染色加工等を常法に従って行ったものを使用することができる。
【0014】
本発明に用いられる芯地としては、不織布、織物、編物タイプ等、使用用途により適宜選択することができるが、ドレスシャツやワイシャツ等のシャツや、ブラウス等の場合、目付10〜300g/m2、特に100〜250g/m2程度の厚さのものを好適に用いることができる。上記芯地を構成する繊維としては、表地を構成する繊維として挙げたものと同様のものを例示することができるが、特に、収縮し難く、汚れ難い素材であることから綿とポリエステルの混綿等を好ましく使用することができる。
【0015】
上記表地と芯地とを加熱により溶融して接着させる接着樹脂としては、永久接着と仮接着がある。使用する部位により使い分ける。ドレスシャツの衿羽根やカフスには洗濯やドライクリーニング等に耐久性のある永久接着を使用する。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、齢化変性エチレン・酢酸ビニルポリマー等の樹脂が挙げられるが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の樹脂が好ましく用いられる。
【0016】
また、仮接着剤は縫製し易くするために用いられ、シャツの衿台などに使用する。例えば、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニルポリマー、ポリエステル等の樹脂が挙げられる。更にポリビニルアルコール系樹脂にも完全水溶性、可溶性、アルカリ可溶性等がある。
【0017】
本発明の繊維構造物は、汗等の水分を吸収すると共に、汗や衿垢等の皮脂汚れを除去しやすいように、表地を親水防汚処理する。親水防汚処理に使用する処理剤としては、例えばフッ素系ビニルモノマー、ポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマー及び非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマーの共重合体や親水性ポリエステルオリゴマーを挙げることができる。フッ素系ビニルモノマー、ポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマー及び非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマーの共重合体と親水性ポリエステルオリゴマーは単独でも処理剤となるが併用することもできる。
なお、親水防汚処理は、汗等の水分を吸収し、洗濯時(水中)に汗成分汚れや油(皮脂)汚れが溶け出し落ち易い性質を持たせた処理方法である。
【0018】
上記フッ素系ビニルモノマー、ポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマー及び非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマーの共重合体は、例えば、特開2005−330354号公報に記載されたものを挙げることができる。
【0019】
上記共重合体中の各モノマーの含有割合は、フッ素系ビニルモノマー、ポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマー、非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマーが、それぞれ質量比で1.0:1.5〜5.0:2.0〜6.5、特に1.0:3.0〜4.5:4.0〜5.0であることが、良好な吸水性と、皮脂汚れ等の付着防止を両立する上で好ましい。
【0020】
上記親水性ポリエステルオリゴマーとしては、化学合成繊維、特にポリエステルに対して防汚効果があり、付着した汚れが洗濯時に水中に溶け出す作用により汚れを落とし易く、付きにくい性質を持つ。具体的にはパーマリンMR100(三洋化成(株)製)、パーマローズTM(アイ・シー・アイジャパン(株)製)、ナイスポールPR−86E(日華化学(株)製)、プリシェードSR(一方社油脂工業(株)製)、ブリアンSR2000(松本油脂(株)製)、パラソルブPET(大原パラヂウム化学(株)製)等がある。
【0021】
特に、衿羽根や衿台の場合、衿羽根は、着用した時に一番目立つ場所で、シャツの命ともいえる部分であり、衿台はこの衿羽根を支える部分であることから、洗濯等による型崩れを防いで形状を長持ちさせるために、硬仕上げ剤を併用することが好ましい。硬仕上げ剤としては、例えばグリオキザール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル樹脂等の樹脂及び架橋触媒(金属塩、有機酸、ブロックイソシアネート系架橋剤等)を1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
表地の処理方法は、上記に示した親水防汚樹脂の濃度が1〜20質量%、特に3〜10質量%となるよう調製した処理液(水)を用い、表地の繊維に対する上記樹脂の付着量が、0.5〜15質量%、特に2〜8質量%となるように、テンターを用いたパッド・ドライ法、コーティング法、スプレー法、液流染色機、ドラム染色機を用いた浸漬法等により行うことができる。本発明においては、作業性や経済性に優れることから、特にパッド・ドライ法を好ましく採用することができる。この場合、樹脂の付着量が少なすぎると防汚性が低下するおそれがある。
【0023】
パッド・ドライ法を行う場合、樹脂の付着量が上記範囲となるようピックアップ率を適宜選定し、80〜180℃で1〜5分乾燥することが好ましい。乾燥した後は、120〜200℃、3〜8分でキュアして、場合により水洗することが好ましい。上記条件を下回ると防汚性が低下する、または耐久性が低下する場合があり、上回ると生地が脆化する場合がある。
【0024】
なお、防汚処理とは、汚れが洗濯の際に付着した汚れが水中に溶け出し、汚れが落ち易く、付きにくくなるように布帛に行う加工で、また、下記のSR(Soil Release)性試験を用いて、防汚処理の評価ができる。
【0025】
<SR性試験>
下記、汚染液、洗浄液及びランドリーテスターを準備し、下記の試験方法を行う。
使用機器:ランドリーテスター(小型の温度調節機付き商業洗濯機を想定)
汚染液 :混合油脂(オレイン酸、ステアリン酸 他数種)0.1質量%、カーボンブラック0.05質量%、洗剤(界面活性剤)0.15質量%の水溶液を作成
洗浄液 :洗剤(界面活性剤)0.3質量%の水溶液を作成
【0026】
<試験方法>
(1) 容器に試料と150ccの汚染液を加え、80℃に昇温させておいたランドリーテスターにセットし、30分間運転する。
(2) その後、汚染液を取り除き、空にした容器に汚染させた(1)の試料と洗浄液200ccを入れて、再び80℃で15分間運転する。
(3) 処理した後、流水で水洗して脱水乾燥する。
(4) 試験前の試料と試験後の試料を堅牢度用の汚染用グレースケールで比較して等級判定する。
この場合、3級以上であれば、防汚性が高いと評価し得る。
【0027】
芯地は、脂汚れ等の付着や残留を防止するために撥水防汚処理(加工)する。
芯地の撥水防汚処理剤としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、パラフィン系樹脂等の撥水防汚性の樹脂が挙げられ、特に防汚性に優れる点から、フッ素系の樹脂が好ましい。撥水防汚処理剤は、乾燥時(衣類として着用時)には油汚れをはじき、また、洗濯時(水中)では油汚れを水中に放す性質を持ったものが良く、具体例としては、NKガードSR108N(日華化学(株)製)、パラガードSRF(大原パラジウム化学(株)製)、ユニダインTG991(ダイキン工業(株)製)、アサヒガードAG1100(明成化学工業(株)製)、リケンパランFG−95(三木理研工業(株)製)等がある。
【0028】
上記撥水防汚性樹脂を含む処理液には、防汚性を高める目的で、更に、異なる防汚剤を併用することができる。
【0029】
芯地の処理方法は、上記樹脂の濃度が1〜20質量%、特に5〜15質量%となるよう調製した処理液(水)を用い、芯地の繊維に対する上記樹脂の付着量が、0.5〜30質量%、特に3〜20質量%となるよう、表地の処理方法と同様な方法及び処理条件で処理することができる。この場合、樹脂の付着量が少なすぎると防汚性が低下する場合がある。
【0030】
本発明の繊維構造物は、上述の処理を施した表地及び芯地、接着樹脂により構成される。典型的には、シャツやブラウスの衿羽根、衿台、カフス、前立て等として有用であるが、例えば、衿羽根や衿台の場合、それぞれ以下の方法で製造することができる。
<接着樹脂の塗布方法>
芯地に接着剤用の樹脂をパウダードット法、コーティング法等により10〜50g/m2の目安で塗布する。
<衿羽根>
衿羽根は、表地に接着剤を塗布したベース芯地と補強芯地を重ね、適切な条件で接着する。
<衿台>
衿台は、表地に接着剤を塗布した芯地を重ね、適切な条件で接着する。
【0031】
この場合、未処理の表地及び芯地を裁断、縫製し、製造途中の段階で、表地及び芯地の処理を行うこともできるが、作業性の点から、予め処理した表地及び芯地を裁断、縫製する方が好ましい。
【0032】
本発明の繊維構造物は、後述する実施例にも示されるように、皮脂等の汚れが付着しにくく、たとえ付着したとしても洗濯により容易に除去することができる。また、汗等の水分を吸収するため着心地がよく、表地と芯地が共に防汚性に優れ、芯地の汚れが表地から透けて見えたり、汚れが溜まって表地に逆戻りしたりすることもないため、衿羽根、衿台、カフス、前立て等として用いることで、清潔で快適な衣料製品を提供することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0034】
[実施例1]
下記のシャツ地と芯地を用意し、それぞれを処理して衿羽根を作製する。
(1)シャツ地:綿・ポリエステル混紡50/50(質量%)ブロード[50S×50S/経142×緯76(本/インチ)]の生機を通常の糊抜・精練・漂白・シルケット加工した生地を使い、以下の条件にて生地に親水防汚加工剤を付与した。
処方液の調製
(防シワ+親水防汚加工剤(フッ素系+ポリエステル系)処方液)
成分 配合割合
パラレヂンNC−3 5質量% (親水防汚剤)
(大原パラヂウム化学株式会社製;フッ素系樹脂)
ベッカミンLF−55Pコンク 15質量% (樹脂加工剤)
(大日本インキ化学株式会社製;グリオキザール系樹脂)
カタリストGT−3 3質量% (触媒)
(大日本インキ化学株式会社製;金属系触媒)
ソフテックスN−491 1質量% (吸水柔軟剤)
(北広ケミカル株式会社製;界面活性剤)
パーマリンMR100 3質量% (親水防汚剤)
(三洋化成工業株式会社製;ポリエステル系樹脂剤)
【0035】
生地の処理
下記条件で処理した。
パッド(ピックアップ70%),ドライ(120℃×1分),キュア(160℃×2分)
【0036】
(2)芯地:ポリエステル/綿・65/35(質量%)[23/2×23/2(23番手単糸の双糸)/経51×緯55(本/インチ)]の生機を通常の糊抜・精練・漂白加工した生地を使い、以下の条件にて生地に撥水防汚加工剤を付与した。
処方液の調製
(硬仕上+撥水防汚加工剤処方液)
成分 配合割合
NKガードSR−108N 10質量% (撥水防汚剤)
(日華化学株式会社製;フッ素系樹脂)
ベッカミンLF−55Pコンク 10質量% (樹脂加工剤)
(大日本インキ化学株式会社製;グリオキザール系樹脂)
カタリストGT−3 3質量% (触媒)
(大日本インキ化学株式会社製;金属系触媒)
【0037】
生地の処理
下記条件で処理した。
パッド(ピックアップ100%),ドライ(120℃×1分),キュア(160℃×2分)
その後、接着樹脂剤として高密度ポリエチレンを塗付した。
【0038】
接着
得られたシャツ地と芯地を、平板プレス(170℃×2kgf/cm2×15秒)にて接着して衿羽根試料とした。
【0039】
[実施例2]
下記のシャツ地と芯地を用意し、それぞれを処理して衿羽根を作製する。
(1)シャツ地:実施例1の生地を使用した。また、下記の処方液にて実施例1と同様に処理した。
(防シワ+親水防汚加工剤(ポリエステル系)処方液)
成分 配合割合
ベッカミンLF−55Pコンク 15質量% (樹脂加工剤)
(大日本インキ化学株式会社製;グリオキザール系樹脂)
カタリストGT−3 3質量% (触媒)
(大日本インキ化学株式会社製;金属系触媒)
パーマリンMR100 3質量% (親水防汚剤)
(三洋化成工業株式会社製;ポリエステル系樹脂剤)
(2)芯地:実施例1と同様に処理した。
実施例1と同様に接着樹脂剤を塗布し、シャツ地と芯地を接着して衿羽根試料を作製した。
【0040】
[実施例3]
下記のシャツ地と芯地を用意し、それぞれを処理して衿羽根を作製する。
(1)シャツ地:綿100質量%ブロード[50S×40S/経148×緯70(本/インチ)]の生機を通常の糊抜・精練・漂白・シルケット加工した生地を使用した。また、下記の処方液にて実施例1と同様に処理した。
(防シワ+親水防汚加工剤(フッ素系処方液)
成分 配合割合
パラレヂンNC−3 5質量% (親水防汚剤)
(大原パラヂウム化学株式会社製;フッ素系樹脂)
ベッカミンLF−55Pコンク 15質量% (樹脂加工剤)
(大日本インキ化学株式会社製;グリオキザール系樹脂)
カタリストGT−3 3質量% (触媒)
(大日本インキ化学株式会社製;金属系触媒)
ソフテックスN−491 1質量% (吸水柔軟剤)
(北広ケミカル株式会社製;界面活性剤)
(2)芯地:実施例1と同様に処理した。
実施例1と同様に接着樹脂剤を塗布し、シャツ地と芯地を接着して衿羽根試料を作製した。
【0041】
[比較例1]
下記のシャツ地と芯地を用意し、それぞれを処理して衿羽根を作製する。
(1)シャツ地:実施例1の生地を使用した。また、下記のレギュラー加工剤にて実施例1と同様に処理した。
(防シワ加工剤処方液)
成分 配合割合
ベッカミンLF−55Pコンク 10質量% (樹脂加工剤)
(大日本インキ化学株式会社製;グリオキザール系樹脂)
カタリストGT−3 3質量% (触媒)
(大日本インキ化学株式会社製;金属系触媒)
ニッカシリコンAMC800E 3質量% (柔軟剤)
(日華化学株式会社製;シリコーン系樹脂)
シリコーランSi810−50M 3質量% (柔軟剤)
(一方社油脂工業株式会社製;シリコーン系樹脂)
【0042】
(2)芯地:実施例1の生地を使用した。また、下記のレギュラー加工剤にて実施例1と同様に処理した。
(硬仕上加工剤処方液)
成分 配合割合
ベッカミンLF−55Pコンク 10質量% (樹脂加工剤)
(大日本インキ化学株式会社製;グリオキザール系樹脂)
成分 カタリストGT−3 3質量% (触媒)
(大日本インキ化学株式会社製;金属系触媒)
【0043】
次いで、実施例1と同様に接着樹脂剤を塗布し、シャツ地と芯地を接着して衿羽根試料を作製した。
【0044】
[比較例2]
下記のシャツ地と芯地を用意し、それぞれを処理して衿羽根を作製する。
(1)シャツ地:実施例3の生地を使用した。また、下記のレギュラー加工剤にて実施例1と同様に処理した。
(2)芯地:比較例1の芯地と同様に処理した。
次いで、実施例1と同様に接着樹脂剤を塗布し、シャツ地と芯地を接着して衿羽根試料を作製した。
【0045】
[実施例4]
下記のシャツ地と芯地を用意し、それぞれを処理して衿台を作製する。
(1)シャツ地:実施例1のシャツ地と同様に処理した。
(2)芯地:ポリエステル/綿・65/35(質量%)[23/2×23/2(23番手単糸の双糸)/経51×緯45(本/インチ)]の生機を通常の糊抜・精練・漂白加工した生地を使い、以下の条件にて生地に撥水防汚加工剤を付与した。
【0046】
処方液の調製
(硬仕上+撥水防汚加工剤処方液)
成分 配合割合
NKガードSR−108N 10質量% (撥水防汚剤)
(日華化学株式会社製;フッ素系樹脂)
ベッカミンLF−55Pコンク 10質量% (樹脂加工剤)
(大日本インキ化学株式会社製;グリオキザール系樹脂)
カタリストGT−3 3質量% (触媒)
(大日本インキ化学株式会社製;金属系触媒)
ポリ酢酸ビニル 2質量% (硬仕上剤)
ポリビニルアルコール 3質量% (硬仕上剤)
【0047】
生地の処理
下記条件で処理した。
パッド(ピックアップ100%),ドライ(120℃×1分),キュア(160℃×2分)
その後、接着樹脂剤としてポリビニルアルコール系樹脂を実施例1と同様に塗布し、シャツ地と芯地を接着して衿台試料を作製した。
【0048】
[実施例5]
下記のシャツ地と芯地を用意し、それぞれを処理して衿台を作製する。
(1)シャツ地:実施例2のシャツ地と同様に処理した。
(2)芯地:実施例4の芯地と同様に処理した。
その後、実施例4と同様に接着樹脂剤を塗布し、シャツ地と芯地を接着して衿台試料を作製した。
【0049】
[実施例6]
下記のシャツ地と芯地を用意し、それぞれを処理して衿台を作製する。
(1)シャツ地:実施例3のシャツ地と同様に処理した。
(2)芯地:実施例4の芯地と同様に処理した。
その後、実施例4と同様に接着樹脂剤を塗布し、シャツ地と芯地を接着して衿台試料を作製した。
【0050】
[比較例3]
下記のシャツ地と芯地を用意し、それぞれ衿台を作製する。
(1)シャツ地:比較例1と同様に処理した。
(2)芯地:実施例3の生地を使用した。また、下記のレギュラー加工剤にて実施例1と同様に処理した。
(硬仕上加工剤処方液)
成分 配合割合
ベッカミンLF−55Pコンク 10質量% (樹脂加工剤)
(大日本インキ化学株式会社製;グリオキザール系樹脂)
成分 カタリストGT−3 3質量% (触媒)
(大日本インキ化学株式会社製;金属系触媒)
ポリ酢酸ビニル 2質量% (硬仕上剤)
ポリビニルアルコール 3質量% (硬仕上剤)
その後、実施例4と同様に接着樹脂剤を塗布し、シャツ地と芯地を接着した衿台試料を作製した。
【0051】
[比較例4]
下記のシャツ地と芯地を用意し、それぞれ衿台を作製する。
(1)シャツ地:比較例2と同様に処理した。
(2)芯地:比較例3と同様に処理した。
その後、実施例4と同様に接着樹脂剤を塗布し、シャツ地と芯地を接着した衿台試料を作製した。
【0052】
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた試料について、下記方法により、汚れの落ちやすさについて評価した。結果を表1に示す。
ダイヤペースト防汚試験
日本化学繊維協会規格「汚れの落ちやすさ度(ダイヤペースト法)JCFA TM104」に準拠して行った。
(汚れ液)
カーボンブラック16.7%、牛脂硬化油20.8%、流動パラフィン62.5%の割合で配合した液1gを100mlのモーターオイルに分散させた液を使用した。
(方法)
(i)試験片に汚れ液を0.1ml滴下し、約7gf/cm2の荷重をかけ、60秒間放置する。
(ii)荷重を取り除き、濾紙で余剰な汚れ液を拭き取る。
(iii)1時間室温で放置する。
(iv)103法(JIS L 1042)洗濯を1回行う。
(v)室温で乾燥後、試験片に残存している汚れの状態を汚染用グレースケールにて判定する。等級が大きいほど防汚性が高いことを示す。
【0053】
赤オレイン酸防汚試験
ドレスシャツや肌着に付着する人体皮脂成分であるオレイン酸を用いて行った。
(汚れ液)
オレイン酸に赤色の油溶解色素を溶かした液を使用する。
(方法)
ダイヤペースト防汚試験と同様に行った。等級が大きいほど防汚性が高いことを示す。
【0054】
赤オレイン酸抽出率試験
赤オレイン酸防汚試験を行った試料から、クロロホルムにてオレイン酸を抽出した。値が小さい方が良好である。
(方法)
(i)赤オレイン酸防汚試験を行った試料をクロロホルム30mlと共に試験管に入れて攪拌し、30分間放置する。
(ii)クロロホルムを取り出し、再度クロロホルム10mlを試験管に入れて攪拌し、10分間放置する。
(iii)試験管からクロロホルムを取り出し、先のクロロホルム30mlと共にアルミカップへ入れて、クロロホルムを蒸発させる。
(iv)アルミカップに残留したオレイン酸を測定する。
(v)赤オレイン酸抽出率(%)={抽出量/滴下した赤オレイン酸}×100
とする。
【0055】
【表1】

【0056】
表1では、実施例1〜3は比較例1,2に比べてダイヤペースト防汚試験と赤オレイン酸防汚試験では等級が大きく、赤オレイン酸抽出率試験では値が小さい事から防汚性能が良好であることが示された。また、同様に実施例4〜6は比較例3,4に比べて防汚性能が良好であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地と、この表地の片面に接着樹脂を介して接着された芯地とを有する繊維構造物であって、上記芯地が撥水防汚処理されてなることを特徴とする芯地を有する防汚性繊維構造物。
【請求項2】
上記表地が親水防汚処理されてなる請求項1記載の防汚性繊維構造物。
【請求項3】
親水防汚処理剤が、親水性ポリエステルオリゴマー、又は、フッ素系ビニルモノマーとポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマー及び非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマーの共重合体のいずれか一方、又は双方であり、親水防汚処理剤の繊維に対する付着量が1〜20質量%である請求項2記載の防汚性繊維構造物。
【請求項4】
撥水防汚処理剤がフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、パラフィン系樹脂から選ばれ、繊維に対する付着量が1〜15質量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の防汚性繊維構造物。
【請求項5】
衿羽根、衿台、カフス又は前立てである請求項1〜4のいずれか1項記載の防汚性繊維構造物。


【公開番号】特開2007−237670(P2007−237670A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65942(P2006−65942)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】