説明

芳香族またはヘテロ芳香族ニトリルの製造方法および該方法のための担体付き触媒

【課題】芳香族またはヘテロ芳香族ニトリルを、芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素から製造する新規かつ改善された方法を提供する。
【解決手段】一般式(I)の芳香族または、ヘテロ芳香族ニトリルを、


酸化バナジウム0.5〜20重量%を含有しかつ平均直径が10〜80%相異する2〜30の粒子画分からなり、担体は0.6〜1.2kg/lの嵩密度を有する担体付触媒を用いて、芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素からアンモニアおよび酸素または酸素含有ガスを用いて製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族またはヘテロ芳香族ニトリルの製造方法、該方法において使用される担体付き触媒および該担体付き触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーロッパ特許(EP−A)第222249号は、アルキル置換芳香族炭化水素から、アルミナ上に五酸化バナジウム2〜10重量%、三酸化アンチモン1〜10重量%、アルカリ金属酸化物0.02〜2重量%およびアルカリ土類金属酸化物0.01〜1重量%を含有する触媒の存在で、蒸気相中高めた温度で、アンモニアおよび酸素または酸素含有ガスによる接触酸化によって芳香族ニトリルを製造する方法を記載する。これらの触媒は1つだけの粒子画分からなる。
【0003】
ドイツ国特許(DE−A)第2810856号は、o−トルイジンから、担体上に酸化バナジウム1〜9重量%、酸化アンチモン5〜12重量%、酸化ビスマス3〜9重量%および酸化リン0.5〜4重量%を含有する触媒の存在で、蒸気相中高めた温度でアンモニアおよび酸素による接触酸化によってo−アミノベンゾニトリルの製造方法を記載する。これらの触媒も1つだけの粒子画分からなる。
【0004】
今日まで公知の方法における触媒の酸素消費および収率は不十分であった。
【特許文献1】ヨーロッパ特許(EP−A)第222249号
【特許文献2】ドイツ国特許(DE−A)第2810856号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、上述した欠点を除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、一般式I
【化1】

[式中xは窒素またはC−R6であり、
1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ水素、C1〜C8アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、アミノ、シアノ、C1〜C7シアノアルキル、C1〜C8アミノアルキルまたはヒドロキシである、ただし少なくとも1つの置換基はシアノまたはC1〜C7シアノアルキルである]の芳香族またはヘテロ芳香族ニトリルを、一般式II
【化2】

[式中x´は窒素またはC−Rであり、
、R、R、R、RおよびRはそれぞれ水素、C1〜C8アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、アミノ、C1〜C8アミノアルキルまたはヒドロキシルである、ただし少なくとも1つの置換基はC1〜C8アルキルである]の芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素からアンモニアおよび酸素または酸素含有ガスを用い、ガス相中200〜600℃および1〜5barで、酸化バナジウム0.5〜20重量%を含有する担体付き触媒上で製造し、担体付き触媒は平均直径が10〜80%相異する2から30の粒子画分からなりかつ担体は0.6〜1.2kg/lの嵩密度を有する、芳香族またはヘテロ芳香族ニトリルの新規および改善された製造方法を見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
新規方法は、次のように実施することができる:
芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素、アンモニアおよび酸素または酸素含有ガスの混合物を、平均直径が10〜80%、好ましくは10〜70%、とくに好ましくは30〜60%相異する2〜30、好ましくは2〜10、とくに好ましくは2から5、つまり2、3、4または5、とくに2または3の粒子画分からなりかつ担体が0.6〜1.2、好ましくは0.6〜1.0、とくに好ましくは0.6〜0.9kg/lの嵩密度を有する担体付き触媒の存在において、固定層またはとくに流動層で、ガス相中200〜600℃、好ましくは300〜550℃、とくに好ましくは350〜500℃および0.1〜5、好ましくは0.3〜2、とくに好ましくは0.5〜1.5bar、とくに大気圧で反応させることができる。
【0008】
出発化合物は、アンモニアおよび空気のような酸素含有ガスにとり、その濃度を有利に0.1〜25容量%、好ましくは0.1〜10容量%にする。
【0009】
適当な担体付き触媒は、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、酸化マグネシウムまたはその混合物、とくに好ましくはアルミナ、シリカまたはその混合物からなる担体および酸化バナジウム0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、とくに好ましくは3〜8重量%および酸化アンチモン0〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%、とくに好ましくは1〜10給料%、とくに2〜8重量%および酸化セシウム、酸化ルビジウムまたはその混合物0〜4重量%、好ましくは0.01〜4重量%、とくに好ましくは0.05〜3重量%およびタングステン、モリブデン、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンおよび銅またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物からなる群から選択された1種または数種の酸化物0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%、とくに好ましくは0〜3重量%を有し、担体は全触媒量の50〜99.9重量%になるものである。
【0010】
担体付き触媒は、同時にまたは連続して担体を任意の所望溶液、触媒活性成分たとえばバナジウムおよび必要な場合には、アンチモン、セシウム、ルビジウム、タングステン、モリブデン、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属の1種または数種の化合物の溶液または懸濁液で含浸し、乾燥しかつ酸化条件下400〜800℃、好ましくは450〜750℃でか焼することによって製造することができる。好ましくは、含浸溶液または懸濁液は、担体により吸収されうるよりも大きくない量で使用される。含浸は、複数の工程で、それぞれの場合中間乾燥後に実施することもできる。
【0011】
含浸溶液は、通例活性成分を好ましくは水溶液の形またはその塩、とくに酸化か焼中に残留物を留めずに分解しうる有機酸の塩の形で使用される。とくにバナジウムの場合にはシュウ酸塩、およびアンチモンおよびタングステンの場合には酒石酸塩が好ましく、酒石酸塩はたとえばアンモニウムイオンとの混合塩の形で存在していてもよい。かかる溶液の製造のために、金属酸化物は酸に溶解することができる。
【0012】
異なる平均粒径を有する担体は、含浸工程前または好ましくは後に一緒にし、好ましくは十分に混合することができる。
【0013】
置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R、R、R、R、RおよびRおよび結合xおよびx´は、次の意味を有する:
xおよびx´はそれぞれ
− 窒素またはC−R6,好ましくはC−R6であり、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ
− 水素、
− C1〜C8アルキル、好ましくはC1〜C4アルキル、とくに好ましくはメチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピル、
− フッ素、塩素、臭素またはヨウ素のようなハロゲン、好ましくはフッ素、塩素または臭素、とくに塩素、
− トリフルオロメチル、
− ニトロ、
− アミノ、
− C1〜C8アミノアルキル、好ましくはC1〜C4アミノアルキル、とくに好ましくはアミノメチル、1−アミノエチルまたは2−アミノエチル、
− ヒドロキシルであり、
1、R2、R3、R4、R5およびR6は付加的にそれぞれ
− シアノ、
− C1〜C7シアノアルキル、好ましくはC〜C3シアノアルキル、とくに好ましくはシアノメチル、1−シアノエチルまたは2−シアノエチル、
− ただし少なくとも1つ、つまり1、2、3、4、5、または6、このましくは1、2または3、とくに好ましくは1または2、とくに1つの置換基はシアノまたはC1〜C7シアノアルキルである。
【0014】
アンモ酸化は、o−キシレンからフタロジニトリルの製造、m−キシレンからイソフタロジニトリルの製造、p−キシレンからテレフタロジニトリルの製造、トルエンからベンゾニトリルの製造およびβ−ピコリンからニコチノニトリルの製造のためとくに工業的に重要である。
【0015】
キシレンの場合には、第一メチル基のアンモ酸化は、第二メチル基のアンモ酸化よりも迅速に行われるので、部分的アンモ酸化生成物、たとえばp−キシレンからのp−メチルベンゾニトリル、o−キシレンからのo−メチルベンゾニトリルおよびあるいは副生物としてのベンゾニトリルは、容易に得ることができる。
【実施例】
【0016】
触媒A
嵩密度0.8kg/lを有する球状アルミナ(Condea−ChemieからのPuralox(R)SCC150/120)1000gをミキサ中で、蒸留水351.4g、濃度25%のアンモニア溶液150g、酸化アンチモン(III)65.5g、バナジン酸(酸化バナジウム(V)90重量%)56.2g、硝酸カリウム6g、酒石酸150gおよびシュウ酸二水和物152.3gから製造した水溶液930.4gで含浸した。湿った触媒前駆物質を、空気の存在で、600℃で10時間加熱した。
【0017】
触媒B
活性物質の溶液を、触媒Aの場合に記載したように、球状アルミナ(Condea−ChemieからのPuralox(R)SCC80/120)1000gに加えた。湿った触媒前駆物質を、空気の存在で、600℃で10時間加熱した。
【0018】
ふるい分析により、2つの粒子画分AおよびBは平均直径が相互に45%相異する。
【0019】
例1および2および比較例AおよびB
o−キシレンのアンモ酸化
直径6cmおよび高さ120cmを有する流動層反応器中に、o−キシレン3容量%(つまり120g/h)、酸素12容量%およびアンモニア85容量%からなるガス気流を470℃で触媒600g上に通した。4つの異なる触媒を使用した。
【0020】
例1: 触媒A550g+触媒B50gの混合物
例2: 触媒A500g+触媒B100gの混合物
比較例A: 触媒Aの純粋画分600g
比較例B: 触媒Bの純粋画分600g
結果は次表に記載されている:
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中xは窒素またはC−R6であり、
1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ水素、C1〜C8アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、アミノ、シアノ、C1〜C7シアノアルキル、C1〜C8アミノアルキルまたはヒドロキシである、ただし少なくとも1つの置換基はシアノまたはC1〜C7シアノアルキルである]の芳香族またはヘテロ芳香族ニトリルを、式II
【化2】

[式中x´は窒素またはC−Rであり、
、R、R、R、RおよびRはそれぞれ水素、C1〜C8アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、アミノ、C1〜C8アミノアルキルまたはヒドロキシである、ただし少なくとも1つの置換基はC1〜C8アルキルである]の芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素からアンモニアおよび酸素または酸素含有ガスを用い、ガス相中200〜600℃および0.1〜5barで、酸化バナジウム0.5〜20重量%および酸化アンチモン0.5〜20重量%を含有する担体付き触媒上で製造し、担体付き触媒は平均直径が30〜60%相異する2又は3の粒子画分からなり、担体は0.6〜1.2kg/lの嵩密度を有し、担体は、全触媒量の50〜99.9重量%である、担体付き触媒を使用する、芳香族またはヘテロ芳香族ニトリルの製造方法。
【請求項2】
反応を流動層中で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
担体がアルミナ、シリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムまたはその混合物からなる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
担体付き触媒が、酸化バナジウム0.5〜20重量%、酸化アンチモン0.5〜20重量%および酸化セシウム、酸化ルビジウムまたはその混合物0.01〜4重量%を含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
平均直径が30〜60%相異する2又は3の粒子画分からなり、担体は0.6〜1.2kg/lの嵩密度を有し、触媒が、酸化バナジウム0.5〜20重量%、酸化アンチモン0.5〜20重量%、酸化セシウムまたは酸化ルビジウム0〜4重量%およびタングステン、モリブデン、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、カリウム、銅またはアルカリ土類金属からなる群から選択された1種または数種の酸化物0〜10重量%を含有し、担体は全触媒量の50〜99.9重量%である、芳香族又はヘテロ芳香族ニトリルへの接触酸化用担体付き触媒。
【請求項6】
担体として、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムまたはその混合物を使用する、請求項5記載の担体付き触媒。
【請求項7】
担体として、アルミナ、シリカまたはその混合物を使用する、請求項5または6記載の担体付き触媒。

【公開番号】特開2008−69156(P2008−69156A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242657(P2007−242657)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【分割の表示】特願平8−264546の分割
【原出願日】平成8年10月4日(1996.10.4)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】