説明

芳香族アルキル化のための安定な形状選択性触媒およびその使用方法と調製方法

芳香族アルキル化に使用するための触媒を形成する方法は、ZSM−5ゼオライトであってよいゼオライトをリン含有化合物で処理する工程を含む。このリン処理ゼオライトは、結合剤と結合される。結合したリン処理ゼオライトは、この結合したリン処理ゼオライトを水素化金属化合物の水溶液と接触させ、結合したリン処理ゼオライトからその水溶液を分離して、水素化金属含有ゼオライト触媒を形成することによって、その水溶液により処理される。この触媒は、水素化金属含有ゼオライト触媒を、芳香族アルキル化に適した反応条件下で、芳香族化合物とアルキル化剤の芳香族アルキル化供給物と接触させることによる、アルキル芳香族生成物の調製に使用してよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く、芳香族化合物のアルキル化およびそのような反応に使用される触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族化合物は、アルキル化されると、異なるアルキル化芳香族化合物を形成する。特に価値のあるものの1つはパラキシレンである。パラキシレンは、ポリエステル繊維と樹脂を形成する上での主成分であるテレフタル酸への酸化の要望が大きいために、価値のある置換芳香族化合物である。パラキシレンは、ナフサの水素化処理(接触修飾)、ナフサまたは軽油のスチームクラッキング、およびトルエンの不均化から工業的に生産することができる。
【0003】
トルエンのメチル化としても知られている、トルエンのメタノールによるアルキル化が、パラキシレンを生成するために実験室での研究に使用されてきた。トルエンのメチル化は、酸性触媒上で、特にゼオライト触媒上で生じることが知られている。特に、ZSM−5ゼオライト、ゼオライトBetaおよびシリカアルミノリン酸塩(SAPO)触媒がこのプロセスに使用されてきた。一般に、以下の反応により示されるように、オルト(o)−、メタ(m)−およびパラ(p)−キシレンの熱力学的平衡混合物がトルエンのメチル化から形成され得る。
【化1】

【0004】
o−,m−,およびp−キシレンの熱力学的平衡混合物は、約500℃の反応温度でそれぞれ、約25,50および25モル%であろう。しかしながら、そのようなトルエンのメチル化は、幅広い温度範囲に亘り生じるであろう。パラキシレンは、吸着および異性化のサイクルによって、混合キシレンから分離することができる。C9+および他の芳香族化合物などの副生成物が、キシレン生成物の二次的アルキル化によって生成され得る。
【0005】
触媒が形状選択性を有していれば、トルエンのメチル化反応において、著しく多量のp−キシレンを得ることができる。修飾ゼオライト触媒において、ゼオライトの細孔の開口サイズを狭くすることにより、ゼオライトの外面を活性化することにより、またはゼオライトの酸性度を制御することにより、形状選択性を得ることができる。トルエンのメチル化は、修飾ZSM−5ゼオライト触媒上で起こり、熱力学的濃度よりも著しく多量のp−キシレンを含有するキシレン生成物が生成されるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
残念ながら、トルエンのメチル化を工業的に成功させるためには、数多くの技術的障害がある。これらの障害には、速い触媒の失活、低いメタノール選択率などがある。触媒のほとんどは、全てではないが、トルエンのメチル化について、速い触媒の失活を示す。典型的に、トルエンの転化率は、触媒上に急激にコークスが形成されるために、運転中に時間と共に減少する。触媒の失活は、トルエンのメチル化の工業的使用のために克服するのが最も難しい技術的障害の内の1つである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、形状選択性を有し、トルエンのメチル化などの芳香族アルキル化反応に使用したときの触媒の安定性が増大した触媒およびその触媒の調製方法に向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明をより完全に理解するために、添付の図面と共に解釈される以下の説明をここで参照する。
【図1】実施例1〜3からの触媒A(金属を含まない)および触媒B(ニッケルを含有する)を使用したトルエンのメチル化反応に関する時間に対するトルエンの転化率のグラフ
【図2】実施例4〜7からの触媒C〜F(異なる量のニッケルを含有する)を使用したトルエンのメチル化反応に関する時間に対するトルエンの転化率のグラフ
【図3】実施例1からの触媒A(金属を含まない)および実施例8からの触媒G(ニッケルを含有する)を使用したトルエンのメチル化反応に関する時間に対するトルエンの転化率のグラフ
【図4】実施例9〜11からの触媒H(自己結合P/金属を含まないZSM−5)および触媒IとJ(ニッケルを含有する)を使用したトルエンのメチル化反応に関する時間に対するトルエンの転化率のグラフ
【図5】実施例1からの触媒A(金属を含まない)および実施例12〜14からの触媒K〜M(白金を含有する)を使用したトルエンのメチル化反応に関する時間に対するトルエンの転化率のグラフ
【図6】実施例1からの触媒A(金属を含まない)および実施例15〜16からの触媒N〜O(パラジウムを含有する)を使用したトルエンのメチル化反応に関する時間に対するトルエンの転化率のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
ゼオライトは、微細孔構造を有するアルミノケイ酸塩材料である。ゼオライトは、天然に生じたものであっても、合成されたものであってもよい。ゼオライトは、異性化およびアルキル化反応などの多種多様の異なる炭化水素転化反応において触媒として一般に使用されている。その中に、芳香族化合物のアルキル化がある。
【0010】
ZSM−5ゼオライトは、芳香族アルキル化における触媒に使用される最も汎用のゼオライトの内の1つである。特に、トルエンのメチル化に使用するために本発明により修飾されたZSM−5ゼオライトの使用に言及し、この修飾ゼオライトはトルエンのメチル化に特にうまく適している。しかしながら、ここに記載したゼオライト触媒には、トランスアルキル化反応および他の芳香族アルキル化反応などの、他のタイプの反応に使用する用途もあることが当業者には明白であろう。特に、本発明の触媒には、混合ジアルキル化芳香族生成物におけるパラ異性体の増加した選択率を提供する反応に対する用途がある。
【0011】
ZSM−5ゼオライトは、10員の酸素環を有する、交差する二次元の細孔構造を含む多孔質材料である。そのような10員の酸素環の細孔構造を有するゼオライト材料は、しばしば中位細孔(medium-pore)ゼオライトと分類される。そのような中位細孔ゼオライトは、典型的に、5.0Åから7.0Åに及ぶ細孔直径を有する。ZSM−5ゼオライトは、約5.1から約5.6Åの細孔直径を有する中位細孔径ゼオライトである。
【0012】
ZSM−5ゼオライトに特に言及し注目するが、ここに記載された技法を使用して、同様に、他のゼオライトを処理し、形成してもよい。したがって、ZSM−5ゼオライトに加え、モルデンフッ石、オメガなどの他のゼオライト材料が、ここに記載したZSM−5ゼオライト材料の性質と似た性質を提供するであろうことも当業者には容易に認識されよう。それらのゼオライトも同様に中位細孔ゼオライトであろう。
【0013】
ZSM−5ゼオライトおよびその調製が、ここに引用する米国特許第3702886号明細書に記載されている。出発ZSM−5は、NH4+またはH+形態であってよく、微量の他の陽イオンを含有してもよい。本発明において、ZSM−5ゼオライト触媒は、修飾前に、約30以下から約1000以上までのシリカ/アルミナモル比を有してよく、より詳しくは、シリカ/アルミナモル比は、約30,50,80,100,200,250,300,400,500から約1000以上であってよく、これは、そのような範囲内の任意と全てのデータ点およびそのような範囲の端点を含む。
【0014】
ここに有用である、適しているなどとして列記されたまたは記載された任意の濃度または量の範囲について、その範囲は、端点を含むその範囲内の全ての濃度または量を含むことが意図され、具体的に挙げられたと考えるべきであることが理解されよう。例えば、「1から10の範囲」は、約1と約10の間の連続体に沿った各々と全ての可能な数を示すものとして読むべきである。それゆえ、その範囲内の特定のデータ点が明白に特定されているかまたは特定のいくつかのみを称している場合、またはさらにはのその範囲内のどのデータ点も明白に特定していないかまたは特定のいくつかのみしか称していない場合でさえ、本出願の発明者等には、その範囲内の任意のまた全てのデータ点が特定されたと考えられるべきであることが認識され理解され、また本発明者等がその全範囲およびその範囲内の全ての点を所有していることが理解されよう。
【0015】
ZSM−5ゼオライトまたは他のゼオライトにパラ選択性を提供するために、ゼオライトは、それをリン含有化合物で処理することによって修飾される。そのようなリン含有化合物としては、以下に限られないが、ホスホン酸、亜ホスフィン酸、亜リン酸およびリン酸、そのような酸の塩とエステル、およびハロゲン化リンが挙げられる。パラ選択性を増加させるために形状選択性を有する、芳香族アルキル化またはトルエンのメチル化のための触媒を提供するためのリン含有化合物として、特に、リン酸(H3PO4)およびリン酸水素アンモニウム((NH42HPO4)を使用してよい。そのような修飾触媒は、触媒の総質量で約0.01質量%から約15質量%の量でリン(P)を含有するであろう。
【0016】
リン処理は、様々な技法によって実施してもよい。その技法としては、スラリー蒸発法、湿式初期法および噴霧乾燥法が挙げられるであろう。スラリー蒸発法において、リンは、リン化合物の水溶液とゼオライトのスラリーを調製することによって、触媒中に含ませられる。スラリーを加熱して、ゼオライト触媒の処理を促進し、液体を蒸発させてもよい。スラリーを約25℃以上、例えば、約70℃から約100℃の温度の加熱することが、ほとんどの場合に適しているであろう。均質な処理を確実にするために、スラリーをこの工程中に撹拌し、またはかき混ぜてもよい。あるいは、ゼオライトスラリーからの液体の蒸発は、当該技術分野によく知られた噴霧乾燥技法を使用して行っても差し支えない。
【0017】
湿式初期法において、リン化合物の水溶液を、スラリーを形成せずに、噴霧などによって加えて、ゼオライトを乾燥させる。乾燥ゼオライトは、最初は粉末の形態にあってよく、これをリン化合物またはその水溶液と混合する。必要なら、ゼオライト粉末とリン含有化合物の混合物またはその溶液に水を加えて、それらの間の相互作用を促進してもよい。次いで、約400℃から約700℃の最高温度を有する温度プロファイルを使用して、リン処理ゼオライトをか焼する。ある実施の形態において、P処理ゼオライトを、結合前に、約300℃以上の温度で加熱し、次いで、そのゼオライトを、ここに引用する米国特許第7368410号明細書に記載されたような、適切な結合剤に結合させる。
【0018】
か焼後のリン処理ゼオライトを結合剤と混合して、特定の形状を有する触媒、例えば、1/16インチ(約0.16mm)の直径の円柱形状の押出触媒を形成する。その結合剤を無機酸化物材料を含んでもよい。特に、アルミナ、粘土、リン酸アルミニウム、シリカ−アルミナまたは他のアルミニウム含有材料、もしくはそれらの組合せなどのアルミニウム含有材料の結合剤が特に有用であろう。結合した触媒は、触媒の総質量で約1質量%から約99質量%の結合剤を含有してもよい。ある実施の形態において、結合剤は、触媒の総質量で約10質量%から約50質量%の量で存在してよい。
【0019】
結合剤がなくてさえ、リン処理ゼオライト(上述したようなか焼前)を触媒として特定の形状とサイズに、例えば、1/16インチ(約0.16mm)の直径の円柱形状の押出体に形成しても差し支えない。そのような触媒は、「自己結合(self-bound)」触媒と記載される。
【0020】
次いで、形成された触媒(自己結合か、またはアルミナなどの結合剤と結合したかのいずれか)を約400℃以上の温度、より詳しくは約450℃から約700℃の温度でか焼または加熱してもよい。そのような加熱は、0.5時間以上に亘り行ってよい。
【0021】
触媒の活性または安定性を増加させるために、結合したリン処理ゼオライトは水素化金属を含む。水素化金属は、VIIIA族の遷移金属のいずれであってもよく、ニッケル、パラジウム、および白金、並びに他の金属が挙げられる。水素化金属としてニッケルが特にうまく適している。水素化金属は、ゼオライト触媒の総質量の約0.01質量%から約5.0質量%、より詳しくは、約0.03質量%から約2.0質量%の量で存在してよい。水素化金属は、水素化金属塩または水中に容易に溶解する他の化合物として触媒に加えてよい。
【0022】
予期せぬことに、結合したリン処理ZSM−5ゼオライト触媒中に水素化金属が存在することには、最終的な触媒の活性に影響がある。結合したリン処理ゼオライト上に堆積した水素化金属は、増加した活性を提供する。水素化金属の堆積は、水素化金属を含有する水溶液中に結合したリン処理ゼオライト触媒を浸漬することによって行ってもよい。この溶液の温度は、室温またはその溶液の沸点未満の温度に維持してよい。5分以上の期間の後、液体を固体から分離する。これは、デカンテーションまたは濾過もしくは固体から液体を分離するための他の非蒸発性分離技法により行われる。ここに用いたように、「分離」、「分離する」という用語または表現、もしくはゼオライトを水素化金属の水溶液で処理する際の液体と固体の分離に当てはまるような同様の表現は、固体からの液体の蒸発を除外することを意味する。実施例に示されるように、自己結合P/ZSM−5触媒の水素化金属溶液による処理によって、増加した触媒活性を示す触媒は得られなかった。
【0023】
結合P/ZSM−5触媒を水素化金属により処理する方法は、触媒の活性または安定性に同様に追加の影響がある。実施例に示されるように、結合したゼオライト触媒を水素化金属を含有する溶液により処理した後の濾過またはデカンテーション技法による液体の分離によって、液体が乾燥状態まで蒸発される一般に使用される含侵技法によるよりも増加した活性または安定性を有する触媒が得られた。例えば、表7の触媒G対触媒Eを参照のこと。
【0024】
水素化金属による処理後、処理済み触媒を、酸素を含有する雰囲気において、一般には空気中で、約400℃から約600℃の温度でか焼してよい。そのようなか焼後の触媒中の水素化金属は、酸化物形態で存在する、例えば、NiOとしてNiが存在するであろう。
【0025】
水素化金属が添加されたゼオライト触媒は、還元雰囲気内での水素化金属の酸化状態を減少または低下させるために、アルキル化または他の反応に使用する前にさらに前処理してもよい。そのような処理には、触媒を高温で還元性ガスと接触させることがある。還元性ガスは、水素(H2)、もしくは水素と窒素(N2)または軽質アルカンの混合物などの水素含有ガスであってよい。触媒は初期の開始温度で還元性ガスと接触させられるが、この還元性ガスは、窒素などの不活性搬送ガスと混合されてもよい。その温度は、前処理中にゆっくりと上昇させてもよく、初期開始温度は約100から約200℃であり、最終的な温度まで約0.2から約10.0℃/分の速度で上昇させてもよい。最終的な前処理温度は、約350から約600℃、より詳しくは約400から約550℃であってよい。前処理は、約0.5から10時間以上、より詳しくは約1から9時間、さらにより詳しくは約2から7時間に亘り行ってよい。
【0026】
NiOまたはNi2+含有ゼオライト触媒への温度プログラムされた還元プロファイルデータに基づいて、上述した触媒前処理により、Ni2+がNi+またはNi0に還元されると考えられる。金属イオンの1未満の酸化状態への水素化は、アルキル化反応中のコークスの形成を遅らせるのに有用であり、それゆえ、触媒の安定性の増加を促進するであろう。
【0027】
還元後、水素化金属を含有するゼオライト触媒は、触媒反応に使用する前に、蒸気処理してもよい。触媒は、任意の反応に触媒を使用する前に、300℃以下の温度で蒸気処理してよい。この蒸気処理は、反応装置の内部(in-situ)または外部(ex-situ)で行っても差し支えない。ある実施の形態において、触媒は中程度の温度で蒸気処理される。本発明に有用な、中程度の温度で蒸気処理する方法が、ここに引用される米国特許第7304194号明細書に記載されている。
【0028】
還元と任意の蒸気処理後、触媒は、芳香族アルキル化を行うために、アルキル化反応条件下で適切な供給物と接触させられる。本発明に用途を見出されているアルキル化反応の例としては、メタノールなどのアルキル化剤によるトルエンのアルキル化が挙げられる。他の例としては、ベンゼンと混合キシレンを生成する、水素の存在下での気相トルエン不均化が挙げられる。本発明には、多くの芳香族アルキル化反応に用途が見出されているが、ZSM−5ゼオライト触媒を使用したパラキシレンを生成するためのトルエンのメチル化に特にうまく適している。ここの記載の多くがそのようなトルエンのメチル化に向けられているであろうが、本発明がそのような使用のみに限られないことが当業者には容易に理解されるであろう。
【0029】
水素化金属を含有するゼオライト触媒は、芳香族アルキル化を行うために、アルキル化反応条件下で、芳香族炭化水素およびアルキル化剤を含む適切な供給物と接触させられる。芳香族アルキル化において、「アルキル化供給物」を使用してよい。ガス共供給物も使用してよい。共供給ガスは、水素または不活性ガスを含んでよい。ここに用いたように、「アルキル化供給物」という表現は、芳香族化合物およびアルキル化剤を包含することを意味する。ここに用いたように、トルエンのメチル化について、「メチル化供給物」という表現は、トルエンとメタノールの供給物を包含することを意味する。
【0030】
任意の共供給ガスに加え、蒸気の形態にあってよい水も、アルキル化供給物と共に、共供給物として反応装置に導入してもよい。アルキル化またはメチル化反応に使用される水または蒸気は、共供給物としての水素または不活性ガスの有無にかかわらず、アルキル化供給物と共に、アルキル化反応の始動中に反応装置に導入してもよく、または初期の始動後に導入してもよい。いずれの場合にも、共供給ガス(もしあれば)およびアルキル化供給物と混合する前に、液体の水を加え、気化してもよい。芳香族アルキル化における水の共供給物の使用が、ここに引用される米国特許第7060864号明細書に記載されている。
【0031】
トルエンのメチル化または他の芳香族アルキル化のための反応装置の圧力は、様々であってよいが、典型的に、ゲージ圧で約10から約1000psi(約69から約6900kPa)に及ぶ。反応装置の温度は、様々であってよいが、典型的に、約400から約700℃に及ぶ。供給物を反応装置に導入する際に、触媒床の温度は、所望の転化を行うために選択された反応温度に調節してよい。その温度は、所望の最終的な反応装置の温度を提供するために、約0.1℃/分から約10℃/分の速度で徐々に増加させてもよい。実施例に使用したように、反応装置の温度は、反応装置の触媒床の入口で測定した温度を称する。
【0032】
反応は、芳香族アルキル化反応を実施するために一般に使用される様々な異なる反応装置内で行ってよい。連続したおよび/または並列の多数の反応装置または単一の反応装置が、芳香族アルキル化反応またはトルエンのメチル化反応を実施するのに適しているであろう。
【0033】
ここに用いたように、触媒活性は、供給された炭化水素または反応体のモルに対して、転化された炭化水素または反応体のモルの%として表すことができる。トルエンがキシレンに転化されるトルエンのメチル化において、触媒活性は、供給されたトルエンのモルに対する転化されたトルエンのモルによって測定され、以下の式:
トルエンの転化のモル%=[(Ti−To)/Ti]×100 (2)
により定義することができ、ここで、Tiは、供給されたトルエンのモル数であり、Toは、未反応のトルエンのモル数である。ここに用いたように、混合キシレンの選択率は:
混合キシレンの選択率のモル%=[Xtx/(Ti−To)]×100 (3)
と表してよく、ここで、Xtxは、生成物中の総または混合(o−,m−またはp−)キシレンのモル数である。
ここに用いたように、p−キシレンの選択率は:
p−キシレンの選択率のモル%=(Xp/Xtx)×100 (4)
と表してよく、ここで、Xpは、p−キシレンのモル数である。
ここに用いたように、メタノールの転化率は:
メタノールの転化率のモル%=[(Mi−Mo)/Mi]×100 (5)
と表してよく、ここで、Miは、供給されたメタノールのモル数であり、Moは、未反応のメタノールのモル数である。
ここに用いたように、トルエンのメチル化のメタノール選択率は:
メタノールの選択率のモル%=[Xtx/(Mi−Mo)]×100 (6)
と表してよく、ここで、Xtxは、混合(o−,m−またはp−)キシレンのモル数であり、Miは、供給されたメタノールのモル数であり、Moは、未反応のメタノールのモル数である。
【0034】
以下の実施例は、本発明を説明するようにうまく働く。
【実施例】
【0035】
実施例1
比較触媒A
250と300の間のSiO2/Al23モル比を有するHN4−ZSM−5ゼオライト粉末を、H3PO4で処理し、次いで、約530℃の温度でか焼した。リン処理ZSM−5ゼオライトを微細な粉末に粉砕し、次いで、約20質量%のアルミナ結合剤と混合し、1/16インチ(約0.16mm)の直径の円柱形状の触媒押出体に押し出した。次いで、結合したゼオライトを530℃の温度にか焼または加熱した。粉末状のリン処理ZSM−5(P/ZSM−5)およびアルミナ結合P/ZSM−5触媒(触媒A)を、蛍光X線(XRF)分析によってNa2O、P25、SiO2およびAl23について、N2吸着によってBET表面積と総細孔体積について、分析した。それらの結果が以下の表1に示されている。
【表1】

【0036】
上述した触媒Aを、固定床の連続流タイプの反応装置内においてトルエンのメチル化反応について試験した。5.4mlの装填量の触媒(触媒サイズ:20〜40メッシュ)を反応装置に装填した。約1時間に亘り、水素を流しながら(200cc/分)触媒床の温度を150℃にゆっくりと上昇させることによって(約5℃/分)、触媒を乾燥させた。H2を流しながら(同じ流量)3時間に亘り、触媒を480℃でさらに加熱した。200℃でH2の搬送ガス(459cc/分)と共に水蒸気(2.2ミリモル/分)を一晩導入することによって、触媒に蒸気処理を施した。予混したトルエンとメタノールの供給物(モル比4.5)を200℃で反応装置に加えた。液空間速度(LHSV)[メチル化供給物(トルエン+メタノール)に基づく]を約2時-1に維持し、H2ガスの共供給物を供給し、約7〜8のH2/メチル化供給物のモル比を提供するように維持した。それに加え、水を、反応装置に導入する前に気化し、共供給物として反応装置に加えた。H2O/メチル化供給物のモル比は約0.8であり、反応装置の入口での圧力は、ゲージ圧で約20psi(約138kPa)であった。触媒床の入口での温度を450℃まで上昇させ、次いで、485℃に調節し、そのときに、トルエンの転化率は約11.4モル%であった。反応装置の蒸気流を分析して、転化率と選択率を計算した。
【0037】
図1は、約365時間の試験期間中の運転中の異なる時間での触媒Aに関するトルエンの転化率を示している。反応装置の温度は、約485℃の触媒床の入口での温度および約494℃の平均床温度で変えずに維持した。トルエンの転化率は、一定の触媒床の入口での温度で、運転の時間の経過と共に減少することが分かった。単位時間当たりの転化率のこの減少は、失活速度であり、24時間当たりで−0.065%と測定される。表2は、触媒Aについての、トルエンの転化率、メタノールの転化率、混合キシレンに対するトルエンの選択率、パラキシレンの選択率、および混合キシレンに対するメタノールの選択率を示している。
【表2】

【0038】
実施例2
触媒B
実施例1からのアルミナ結合P/ZSM−5ゼオライト触媒(触媒A)にニッケルを含ませて触媒Bを形成した。0.737gと秤量されたニッケル六水和物をフラスコ内の100mlの脱イオン水中に溶解させ、このフラスコ内のニッケル塩溶液中に30.03gの触媒Aの押出物を浸漬し、次いで、このフラスコを5分間に亘り振盪し、60℃で一晩寝かせた(aged)。次いで、触媒Aを、液体をデカンテーションすることによって分離した。次いで、ニッケル処理ゼオライトを10時間に亘り約530℃の最高温度でか焼した。この触媒のニッケル含有量は、XRF分析により測定して、総質量の0.07質量%であった。触媒Bの調製と分析が表3に要約されている。
【0039】
上述した触媒Bを、固定床の連続流タイプの反応装置内においてトルエンのメチル化反応について試験した。5.4mlの装填量の触媒(触媒サイズ:20〜40メッシュ)を反応装置に装填した。少なくとも1時間に亘り、水素を流しながら(200cc/分)触媒床の温度を150℃にゆっくりと上昇させることによって(約5℃/分)、触媒を乾燥させた。H2を流しながら(同じ流量)3時間に亘り、触媒を430℃でさらに加熱した。200℃でH2の搬送ガス(459cc/分)と共に水蒸気(2.2ミリモル/分)を一晩導入することによって、触媒に蒸気処理を施した。予混したトルエンとメタノールの供給物(モル比4.5)を200℃で反応装置に加えた。液空間速度(LHSV)[メチル化供給物(トルエン+メタノール)に基づく]を約2時-1に維持し、H2ガスの共供給物を供給し、約7〜8のH2/メチル化供給物のモル比を提供するように維持した。それに加え、水を、反応装置に導入する前に気化し、共供給物として反応装置に加えた。H2O/メチル化供給物のモル比は約0.8であり、反応装置の入口での圧力は、ゲージ圧で約20psi(約138kPa)であった。触媒床の入口での温度を450℃まで上昇させ、次いで、495℃に調節し、そのときに、トルエンの転化率は約15.4モル%であった。反応装置の蒸気流を分析して、転化率と選択率を計算した。
【表3】

【0040】
図1は、約893時間の試験期間中の運転中の異なる時間での、430℃で前還元した、触媒Bに関するトルエンの転化率を示している。反応装置の温度は、約487℃の触媒床の入口での温度および約496℃の平均床温度で変えずに維持した。トルエンの転化率は、一定の温度での試験期間中に、不変のままか、またはいくぶん上昇し、触媒の安定性を示した。言い換えれば、893時間の試験運転中に、触媒Bについては、触媒の失活は観察されなかった。使用した触媒の炭素(C)含有量は2.3質量%であった。表2は、触媒Bについての、トルエンの転化率、メタノールの転化率、混合キシレンに対するトルエンの選択率、パラキシレンの選択率、および混合キシレンに対するメタノールの選択率を示している。
【0041】
実施例3
実施例2におけるように、トルエンのメチル化に触媒Bを利用した。蒸気処理の前に、H2を流しながらの430℃の代わりに、触媒を約480℃の前還元温度で加熱したことを除いて、反応装置、触媒装填量、乾燥条件および蒸気処理条件は、実施例2と同じであった。
【0042】
図1は、約414時間の試験期間中の運転中の異なる時間でのトルエンの転化率を示している。反応装置の温度は、約485℃の触媒床の入口での温度および約493℃の平均床温度で変えずに維持し、そのときのトルエンの転化率は約15.4モル%であった。トルエンの転化率は、一定の温度での試験期間中に、不変のままか、またはいくぶん上昇し、触媒の安定性を示した。すなわち、414時間の試験期間中に、触媒Bについては、触媒の失活は観察されなかった。使用した触媒の炭素(C)含有量は3.4質量%であった。表2は、480℃で前還元した触媒Bについての、トルエンの転化率、メタノールの転化率、混合キシレンに対するトルエンの選択率、パラキシレンの選択率、および混合キシレンに対するメタノールの選択率を示している。
【0043】
実施例4〜7
触媒C〜F
触媒Bに加え、触媒活性、選択性および安定性へのNi含有量の影響を調査するために、トルエンのメチル化反応において、異なるニッケル含有量を有するいくつかのニッケル添加触媒を試験した。基本の触媒Aおよび先に触媒Bについて記載したのと同じ手法を使用して、Ni添加触媒C,D,EおよびFを作製した。表3は、基本触媒とニッケル塩の量、使用した水の量、寝かせ温度および最終的な触媒のニッケル含有量(XRFにより測定)を示している。触媒中のNi含有量は、0.03質量%から約0.15質量%まで様々であった。
【0044】
触媒C,D,EおよびFをトルエンのメチル化反応において試験した。触媒の装填量、前乾燥、蒸気処理および試験の各条件は、実施例3に記載したのと同じであった。図2は、触媒C,D,EおよびFについての運転中の異なる時間でのトルエンの転化率を示している。表2は、触媒C,D,EおよびFについての、トルエンの転化率、メタノールの転化率、混合キシレンに対するトルエンの選択率、パラキシレンの選択率、および混合キシレンに対するメタノールの選択率を示している。
【0045】
触媒C,D,EおよびFは増加した触媒活性を示し、触媒Aと比べて高いトルエンの転化率を示した(表2、実施例1〜7)
実施例8
触媒G
この実施例において、含浸技法を使用した、Ni添加触媒(触媒G)を形成した。この技法において、実施例1からのアルミナ結合P/ZSM−5ゼオライト触媒(触媒A)にニッケルを含ませた。0.153gの量のニッケル六水和物を100mlの脱イオン水中に溶解させた。セラミックボウル中に30.4gの押出触媒Aにニッケル塩溶液を加え、90℃で一晩寝かせた。液体のほとんどが蒸発し、530℃でのか焼中にさらに蒸発を続けた。
【0046】
次いで、先の実施例におけるように、触媒Gをトルエンのメチル化に使用した。5.4mlの装填量の触媒(触媒サイズ:20〜40メッシュ)を反応装置に装填した。少なくとも1時間に亘り、水素を流しながら(200cc/分)触媒床の温度を150℃にゆっくりと上昇させることによって(約5℃/分)、触媒を乾燥させた。H2を流しながら(同じ流量)3時間に亘り、触媒を480℃でさらに加熱した(還元させた)。200℃でH2の搬送ガス(459cc/分)と共に水蒸気(2.2ミリモル/分)を一晩導入することによって、触媒に蒸気処理を施した。予混したトルエンとメタノールの供給物(モル比4.5)を200℃で反応装置に加えた。液空間速度(LHSV)[メチル化供給物(トルエン+メタノール)に基づく]を約2時-1に維持し、H2ガスの共供給物を供給し、約7〜8のH2/メチル化供給物のモル比を提供するように維持した。それに加え、水を、反応装置に導入する前に気化し、共供給物として反応装置に加えた。H2O/メチル化供給物のモル比は約0.8であり、反応装置の入口での圧力は、ゲージ圧で約20psi(約138kPa)であり、触媒床の入口での温度を450℃まで上昇させ、次いで、485℃(触媒床の平均温度498℃)に調節した。反応装置の蒸気流を分析して、転化率と選択率を計算した。
【0047】
図3は、触媒Gについての、運転中の異なる時間でのトルエンの転化率によって測定された触媒活性を示している。比較のために、触媒Aについて得られたトルエンの転化率が図3に示されている。また、表2は、触媒Gについての、トルエンの転化率、メタノールの転化率、混合キシレンに対するトルエンの選択率、パラキシレンの選択率、および混合キシレンに対するメタノールの選択率を示している。触媒Gは、触媒A(金属を含まない)よりも高い活性を示したが、おおよそ同じニッケル含有量を有するが、Ni装填の手法で液体と固体の分離に非蒸発性手法を使用した触媒E(実施例5)よりも低い活性を示した。
【0048】
実施例9〜11
比較触媒H〜J
250と300の間のSiO2/Al23モル比を有するHN4−ZSM−5ゼオライト粉末を、H3PO4で処理し、次いで、押出用混合物に製造し、これを1/16インチ(約0.16mm)の直径の円柱形状の押出体することによって、「自己結合」P/ZSM−5押出触媒を製造した。次いで、押出触媒を530℃の最高温度にか焼または加熱した。これにより触媒Hを形成した。XRF分析により、触媒Hが以下の組成を有したことが示された:77.65質量%のSiO2、0.53質量%のAl23、19.53質量%P25、0.04質量%未満のNa2O。触媒HのBET(N2吸着)および総細孔体積は、それぞれ、168m2/gおよび0.12cc/gであった。
【0049】
触媒Hを使用し、これを、触媒B〜Fに使用したのと同じ手法を用いて、異なる量のニッケルで処理することによって、いくつかのニッケル添加触媒(IおよびJ)を製造した(表4参照)。触媒IおよびJのニッケル含有量は、触媒の総質量の、それぞれ、0.08質量%および0.25質量%であった。
【表4】

【0050】
触媒H,IおよびJをトルエンのメチル化反応において試験した。触媒の装填量、H2を流しながらの前乾燥および蒸気処理の各条件は、実施例3について記載したものと同じであった。480℃での触媒乾燥および200℃一晩の蒸気処理後、予混したトルエンおよびメタノールの供給物(モル比3.0)を200℃で反応装置に加えた。液空間速度(LHSV)[メチル化供給物(トルエン+メタノール)に基づく]を約2時-1に維持し、H2ガスの共供給物を供給し、約7〜8のH2/メチル化供給物のモル比を提供するように維持した。それに加え、水を、反応装置に導入する前に気化し、共供給物として反応装置に加えた。H2O/メチル化供給物のモル比は約0.8であり、反応装置の入口での圧力は、ゲージ圧で約20psi(約138kPa)であり、触媒床の入口での温度を450℃まで上昇させ、次いで、485℃(触媒床の平均温度498℃)に調節した。反応装置の蒸気流を分析して、転化率と選択率を計算した。
【0051】
図4は、触媒H,IおよびJについての、運転中の異なる時間でのトルエンの転化率を示している。表2は、触媒H,IおよびJについての、トルエンの転化率、メタノールの転化率、混合キシレンに対するトルエンの選択率、パラキシレンの選択率、および混合キシレンに対するメタノールの選択率を示している。自己結合P/ZSM−5触媒であった触媒Hは18モル%近いトルエンの転化率を示し、このトルエンの転化率は、24時間当たり−0.014%の速度で時間と共にゆっくりと減少した。約0.08質量%のNiを含有した触媒Iは、約12.7%のトルエンの転化率を示し、これは、24時間当たり−0.170%の速度で減少した。約0.25質量%のNiを含有した触媒Jは、最初は著しく低いトルエンの転化率を示し、約9%のトルエンの転化率に到達した。活性が低かったので運転を停止し、失活速度は測定しなかった。
【0052】
要約すると、自己結合P/ZSM−5にNiを添加しても、増加した触媒活性も、改善された触媒安定性も示されなかった。このことは、アルミナ結合P/ZSM−5触媒へのNiの添加の場合とは対照的である。
【0053】
実施例12〜14
触媒K〜M
触媒C,D,EおよびFに使用したのと同じ手法を使用して、アルミナ結合P/ZSM−5触媒(触媒A)に様々な量のPtを添加することによって、Pt添加P/ZSM−5触媒を製造した。先に記載された触媒Aに、0.05、0.11および0.18質量%の異なる装填量で白金を添加して、それぞれ、触媒K,LおよびMを形成した(表5参照)。約100mlの脱イオン水中に異なる量の硝酸テトラアミン白金(II)を溶解させることによって、アルミナ結合P/ZSM−5ゼオライト触媒(触媒A)に白金を含ませた。触媒A(押出体)をフラスコ内の白金塩溶液中に浸漬し、次いで、このフラスコを5分間に亘り振盪し、60℃で一晩寝かせた。触媒押出体を、液体をデカンテーションすることによって、水溶液から分離した。次いで、白金処理ゼオライトを10時間に亘り約530℃の最高温度でか焼した。
【表5】

【0054】
触媒K,LおよびMの各々をトルエンのメチル化反応において試験した。触媒の装填量、H2を流しながらの加熱および蒸気処理の各条件は、実施例3において触媒Bについて記載したものと同じであった。480℃での触媒乾燥および200℃一晩の蒸気処理後、予混したトルエンおよびメタノールの供給物(モル比4.5)を200℃で反応装置に加えた。液空間速度(LHSV)[メチル化供給物(トルエン+メタノール)に基づく]を約2時-1に維持し、H2ガスの共供給物を供給し、約7〜8のH2/メチル化供給物のモル比を提供するように維持した。それに加え、水を、反応装置に導入する前に気化し、共供給物として反応装置に加えた。H2O/メチル化供給物のモル比は約0.8であり、反応装置の入口での圧力は、ゲージ圧で約20psi(約138kPa)であり、触媒床の入口での温度を450℃まで上昇させ、次いで、485℃に調節した。反応装置の蒸気流を分析して、転化率と選択率を計算した。
【0055】
図5は、異なる量の白金を含有する触媒K〜Mおよび金属を含有しない触媒Aを使用したトルエン率の転化の比較を示している。表6は、触媒AおよびK〜Mについての、トルエンの転化率、メタノールの転化率、混合キシレンに対するトルエンの選択率、パラキシレンの選択率、および混合キシレンに対するメタノールの選択率を示している。触媒Aと比べると、白金を含有する触媒K,LおよびMの3つ全ては、増加した触媒活性を示し、より高いトルエンの転化率を示し、試験期間中にトルエンの転化率の明白な減少は示さなかった。
【表6】

【0056】
実施例15〜16
触媒N〜O
触媒C,D,EおよびFに使用したのと同じ手法を使用して、アルミナ結合P/ZSM−5触媒(触媒A)に様々な量のPdを添加することによって、Pd添加P/ZSM−5触媒を製造した。先に記載された触媒Aに、0.05および0.09質量%の異なる装填量でパラジウムを添加して、それぞれ、触媒NおよびOを形成した(表5参照)。約100mlの脱イオン水中に異なる量の硝酸パラジウムを溶解させることによって、アルミナ結合P/ZSM−5ゼオライト触媒(触媒A)にパラジウムを含ませた。触媒A(押出体)をフラスコ内のパラジウム塩溶液中に浸漬し、次いで、このフラスコを5分間に亘り振盪し、60℃で一晩寝かせた。触媒押出体を、液体をデカンテーションすることによって、水溶液から分離した。次いで、パラジウム添加触媒を10時間に亘り約530℃の最高温度でか焼した。
【0057】
触媒NおよびOの各々をトルエンのメチル化反応において試験した。触媒の装填量、H2を流しながらの加熱および蒸気処理の各条件は、実施例3において触媒Bについて記載したものと同じであった。3時間に亘る480℃でのH2を流しながら触媒を処理し、200℃で一晩蒸気処理した後、予混したトルエンおよびメタノールの供給物(モル比4.5)を200℃で反応装置に加えた。液空間速度(LHSV)[メチル化供給物(トルエン+メタノール)に基づく]を約2時-1に維持し、H2ガスの共供給物を供給し、約7〜8のH2/メチル化供給物のモル比を提供するように維持した。それに加え、水を、反応装置に導入する前に気化し、共供給物として反応装置に加えた。H2O/メチル化供給物のモル比は約0.8であり、反応装置の入口での圧力は、ゲージ圧で約20psi(約138kPa)であり、触媒床の入口での温度を450℃まで上昇させ、次いで、485℃に調節した。反応装置の蒸気流を分析して、転化率と選択率を計算した。
【0058】
表6は、触媒AおよびN〜Oについての、トルエンの転化率、メタノールの転化率、混合キシレンに対するトルエンの選択率、パラキシレンの選択率、および混合キシレンに対するメタノールの選択率を示している。図6は、パラジウムを含有する触媒NとOおよび金属を含有しない触媒Aを使用したトルエンの転化率の比較を示している。触媒Aと比べると、パラジウム含有触媒NおよびOの両方とも、より高いトルエン転化率と共に、増加した触媒活性を示し、試験期間中にトルエンの転化率に明白な減少は示さなかった。
【0059】
表7は、触媒A(金属含まず)と、基本触媒Aとほとんど同じ量の金属を有する、触媒G(0.10質量%のNi)、触媒E(0.09質量%のNi)、触媒L(0.11質量%のPt)、触媒O(0.09質量%のPd)との間のトルエンの転化率および触媒の失活速度(一定の触媒床の入口での温度での24時間当たりのトルエン転化の減少速度)を示している。触媒Gは、一般に使用される含浸技法(溶液を蒸発させた)を使用して製造し、基本触媒Aと比べて増加したトルエンの転化率を示した(触媒Gの13.5%対触媒Aの11.5%、これは、活性の約17%の相対的な増加である)。触媒Gは、改善された失活速度も示した(触媒Gの−0.012%対触媒Aの−0.065%)。それに対し、Ni塩溶液のデカンテーションにより製造した触媒Eは、さらに増加したトルエンの転化率を示し(触媒Eの14.9%対触媒Aの11.5%と触媒Gの13.5)、トルエンの転化率は試験期間中に減少しなかった。触媒E(0.09%のNi)に使用したのと同じ方法を使用することにより製造した触媒L(0.11質量%のPt)および触媒O(0.09質量%のPd)は、基本触媒Aと比べて増加した活性を示したが、触媒Eほど大きくはなかった。触媒Eと同様に、触媒LおよびOは、試験期間中にトルエンの転化率の減少は示さなかった。
【表7】

【0060】
表7も、触媒H(金属含まず)と触媒I(0.08質量%のNi)との間のトルエンの転化率および触媒の失活速度の比較を示している。触媒Hは自己結合P/ZSM−5触媒である。触媒Iは、触媒Hを使用し、触媒Eに用いたのと同じ方法を使用することによって製造した。予期せぬことに、触媒Iは、活性の増加を示さず、むしろ、活性の劇的な減少を示し、トルエンの転化率は、基本触媒Hのものよりも速く減少した。
【0061】
本発明をその形態のいくつかのみで示してきたが、本発明はそれらに限られず、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変更および改変が可能であることが当業者には理解されよう。したがって、添付の請求項は、広く、本発明の範囲と整合した様式で解釈されるのが適切である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族アルキル化に使用するための触媒を形成する方法において、
ゼオライトをリン含有化合物で処理し、
リン処理ゼオライトを結合剤と混合し、
結合した前記リン処理ゼオライトを水素化金属化合物の水溶液と接触させ、該結合したリン処理ゼオライトから該水溶液を分離することによって、結合した前記リン処理ゼオライトを前記水溶液で処理して、水素化金属含有ゼオライト触媒を形成する、
各工程を有してなる方法。
【請求項2】
前記ゼオライトがZSM−5ゼオライトであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記水素化金属がVIIIA族の遷移金属であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記水素化金属が、ニッケル、パラジウムおよび白金の内の少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記水素化金属含有ゼオライトを約400℃以上の温度でか焼することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記水素化金属が、前記触媒の総質量の約0.03%から約5%の量で該触媒中に存在することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、該触媒の総質量の約0.01%から約15%のリンを含有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記結合剤がアルミナ結合剤であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記結合剤が、前記触媒の総質量の約1%から約99%の量で該触媒中に存在することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
芳香族アルキル化に使用するための水素化金属含有ゼオライト触媒において、
a) ゼオライト、
b) リン、
c) 結合剤、および
d) 水素化金属化、
を有してなる触媒。
【請求項11】
結合したリン含有ゼオライトを水素化金属化合物の水溶液と接触させ、該結合したリン含有ゼオライトから該水溶液を分離することによって、前記結合したリン含有ゼオライトを前記水溶液で処理して、水素化金属含有ゼオライト触媒を形成することにより形成されることを特徴とする請求項10記載の触媒。
【請求項12】
前記ゼオライトがZSM−5ゼオライトであることを特徴とする請求項10記載の触媒。
【請求項13】
前記水素化金属がVIIIA族の遷移金属であることを特徴とする請求項10記載の触媒。
【請求項14】
前記水素化金属が、ニッケル、パラジウムおよび白金の内の少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項10記載の触媒。
【請求項15】
前記水素化金属含有ゼオライト触媒が約400℃以上の温度でか焼されることを特徴とする請求項11記載の触媒。
【請求項16】
前記水素化金属が、前記触媒の総質量の約0.03%から約5%の量で該触媒中に存在することを特徴とする請求項10記載の触媒。
【請求項17】
前記触媒が、該触媒の総質量の約0.01%から約15%のリンを含有することを特徴とする請求項10記載の触媒。
【請求項18】
前記結合剤がアルミナ結合剤であることを特徴とする請求項10記載の触媒。
【請求項19】
前記結合剤が、前記触媒の総質量の約1%から約99%の量で該触媒中に存在することを特徴とする請求項10記載の触媒。
【請求項20】
アルキル芳香族生成物を調製する方法において、
芳香族アルキル化に適した反応条件下で、水素化金属含有ゼオライト触媒を、芳香族化合物とアルキル化剤の芳香族アルキル化供給物と接触させる工程であって、前記水素化金属含有ゼオライト触媒が、以下の順序:ゼオライト、リン、結合剤、および水素化金属化合物を有する結合したリン含有ゼオライトを含むものである工程、
を有してなる方法。
【請求項21】
結合したリン含有ゼオライトを水素化金属化合物の水溶液と接触させ、該結合したリン含有ゼオライトから該水溶液を分離することによって、前記結合したリン含有ゼオライトを前記水溶液で処理して、水素化金属含有ゼオライト触媒を形成することを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記水素化金属含有ゼオライト触媒が、芳香族アルキル化に使用される前に、約400℃以上の温度でか焼されることを特徴とする請求項20記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−507390(P2012−507390A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534485(P2011−534485)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/005613
【国際公開番号】WO2010/051007
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】