説明

芳香族ポリサルホン樹脂組成物及びその成形体

【課題】離型性に優れ、色味が低減された芳香族ポリサルホン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】芳香族ポリサルホン樹脂に、トリアシルグリセロールを配合して、芳香族ポリサルホン樹脂組成物とする。芳香族ポリサルホン樹脂組成物におけるトリアシルグリセロールの含有量は、ポリサルホン樹脂100重量部に対して、0.02〜4重量部であることが好ましい。芳香族ポリサルホン樹脂組成物は、芳香族ポリサルホン樹脂とトリアシルグリセロールとを溶融混練してなるペレットであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリサルホン樹脂組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリサルホン樹脂は、機械的性質や熱的性質、電気的性質に優れることから、機械部品や航空部品、電気・電子部品を製造するための成形材料として好ましく用いられている。芳香族ポリサルホン樹脂の成形は、押出成形法や射出成形法、圧縮成形法、回転成形法により行うことができるが、芳香族ポリサルホン樹脂は、溶融粘度が高いため成形に高圧を要し、また非晶性であるため成形収縮率が小さく、さらに弾性率が高いことから、成形に用いた金型から成形品が取り出し難い、すなわち離型性に劣るという問題がある。
このため、芳香族ポリサルホン樹脂に離型剤を配合することが検討されており、例えば、特許文献1及び2には、芳香族ポリサルホン樹脂に金属石鹸や脂肪酸(ビス)アミドを配合してなる芳香族ポリサルホン樹脂組成物が記載されており、特許文献3には、芳香族ポリサルホン樹脂にフェニルエーテル型合成油を配合してなる芳香族ポリサルホン樹脂組成物が開示されている。また、特許文献1〜3には、芳香族ポリサルホン樹脂に脂肪酸エステルやポリエチレンワックス、マイクログリセリンワックスを配合してなる芳香族ポリサルホン樹脂組成物も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−149629号公報
【特許文献2】特開昭63−264667号公報
【特許文献3】特開昭63−54464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の芳香族ポリサルホン樹脂組成物は、離型性が必ずしも十分でなく、離型性を高めるべく離型剤を増量すると、機械的強度が低下したり、濁りを生じたりし易いという問題がある。また、芳香族ポリサルホン樹脂は一般に色味を帯びているため、透明性や艶色性の向上のためには、色味が低減された芳香族ポリサルホン樹脂組成物が求められる。
そこで、本発明の目的は、離型性に優れ、色味が低減された芳香族ポリサルホン樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、芳香族ポリサルホン樹脂とモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物とを含む芳香族ポリサルホン樹脂組成物を提供する。また、本発明によれば、前記芳香族ポリサルホン樹脂組成物を射出成形してなる成形体も提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の芳香族ポリサルホン樹脂組成物は、離型性に優れ、色味が低減されているので、これを射出成形することにより、透明性や艶色性に優れる成形体を有利に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例において離型抵抗の測定で用いた金型を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
芳香族ポリサルホン樹脂は、アリーレン単位、エーテル結合(−O−)及びサルホン結合(−SO2−)を必須とし、アリーレン単位がエーテル結合及びサルホン結合により無秩序に又は秩序正しく位置するポリアリーレン化合物である。
【0009】
芳香族ポリサルホン樹脂は、340℃、せん断速度1000s-1で測定される溶融粘度が、200〜1000Pa・sであることが好ましく、200〜700Pa・sであることがより好ましく、300〜500Pa・sであることがさらに好ましい。この溶融粘度があまり高いと、芳香族ポリサルホン樹脂組成物の成形時の流動性が低下し易くなり、あまり低いと、芳香族ポリサルホン樹脂組成物の強度が低下し易くなる。
【0010】
また、芳香族ポリサルホン樹脂は、下記式(1)で表される構造単位(以下「構造単位(1)」ということがある)を有するものであることが好ましく、さらに下記式(2)で表される構造単位(以下「構造単位(2)」ということがある)及び/又は下記式(3)で表される構造単位(以下「構造単位(3)」ということがある)を有していてもよい。
【0011】
−Ph1−SO2−Ph2−O− (1)
【0012】
(Ph1及びPh2は、それぞれ独立に、下記式(4)で表される基を表す。)
【0013】
−Ph3−R−Ph4−O− (2)
【0014】
(Ph3及びPh4は、それぞれ独立に、下記式(4)で表される基を表し、Rは、炭素数1〜5のアルキリデン基を表す。)
【0015】
−(Ph5)n−O− (3)
【0016】
(Ph5は、下記式(4)で表される基を表し、nは、1〜3の整数を表す。nが2以上である場合、複数存在するPh5は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0017】
【化1】

【0018】
(R1は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のアルケニル基、フェニル基又はハロゲン原子を表す。n1は、0〜4の整数を表し、n1が2以上である場合、複数存在するR1は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0019】
芳香族ポリサルホン樹脂が構造単位(1)を有する場合、式(1)中のPh1及びPh2を表す式(4)中のn1は、0であることが好ましく、この式(4)で表される基は、p−フェニレン基であることが好ましい。また、構造単位(1)の含有量は、芳香族ポリサルホン樹脂を構成する全構造単位の合計量に対して、80モル%以上であることが好ましい。
【0020】
芳香族ポリサルホン樹脂が構造単位(1)及び(2)を有する場合、式(1)中のPh1及びPh2並びに式(2)中のPh3及びPh4を表す式(4)中のn1は、0であることが好ましく、この式(4)で表される基は、p−フェニレン基であることが好ましく、式(2)中のRは、イソプロピリデン基であることが好ましい。また、構造単位(1)/構造単位(2)のモル比は、通常0.5〜50、好ましくは0.5〜9、より好ましくは0.5〜4である。
【0021】
芳香族ポリサルホン樹脂が構造単位(1)及び(3)を有する場合、式(1)中のPh1及びPh2並びに式(3)中のPh5を表す式(4)中のn1は、0であることが好ましく、この式(4)で表される基は、p−フェニレン基であることが好ましく、式(3)中のnは、1又は2であることが好ましい。また、構造単位(1)/構造単位(3)のモル比は、通常0.1〜20、好ましくは0.1〜9、より好ましくは0.5〜4である。
【0022】
芳香族ポリサルホン樹脂としては、実質的に構造単位(1)のみからなるものや、実質的に構造単位(1)及び(2)のみからなるものが好ましく、実質的に構造単位(1)のみからなるものがより好ましい。
【0023】
芳香族ポリサルホン樹脂は、対応するビス(ハロアリール)スルホンとビス(ヒドロキシアリール)化合物とを、塩基を用いて脱ハロゲン化水素・重縮合させることにより、製造することができる。また、芳香族ポリサルホン樹脂の市販品の例としては、住友化学(株)製の「スミカエクセルPES3600P」や「スミカエクセルPES4100P」(構造単位(1)を有する芳香族ポリサルホン樹脂)、AMOCO社製の「UDEL P−1700」(構造単位(1)及び(2)を有する芳香族ポリサルホン樹脂)が挙げられる。なお、芳香族ポリサルホン樹脂の末端基は、その製法により適宜選択することができ、その例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基が挙げられる。
【0024】
本発明の芳香族ポリサルホン樹脂組成物は、前記のような芳香族ポリサルホン樹脂とモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物とを含むものである。このように、芳香族ポリサルホン樹脂に所定の化合物を離型剤として配合することにより、離型性に優れ、色味が低減された芳香族ポリサルホン樹脂組成物を得ることができる。
【0025】
モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物は、互いに同一又は異なる3分子の脂肪酸とグリセリンとのエステルであることが好ましく、典型的には下記式(5)で表される。
【0026】
2O−CH2−CH(OR3)−CH2−OR4 (5)
【0027】
(R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素又は脂肪酸からカルボキシル基中のヒドロキシル基を除いてなる残基を表し、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つは、脂肪酸からカルボキシル基中のヒドロキシル基を除いてなる残基である。)
【0028】
モノアシルグリセロールは、1分子の脂肪酸とグリセリンとのエステルであることが好ましく、典型的には下記式(5’)で表される。
【0029】
5O−CH2−CH(OR6)−CH2−OR7 (5’)
【0030】
(R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素又は脂肪酸からカルボキシル基中のヒドロキシル基を除いてなる残基を表し、R5、R6及びR7のうち1つが、脂肪酸からカルボキシル基中のヒドロキシル基を除いてなる残基である。)
【0031】
モノアシルグリセロールとしては、例えば、モノカプリル酸グリセリン、モノウンデシル酸グリセリン、モノラウリル酸グリセリン、モノトリデシル酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリン、モノペンタデシル酸グリセリン、モノパルミチン酸グリセリン、モノヘプタデシル酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、モノノナデカン酸グリセリン、モノアラキジン酸グリセリン、モノベヘン酸グリセリン、モノリグノセリン酸グリセリン、モノセロチン酸グリセリン、モノヘプタコ酸グリセリン、モノモンタン酸グリセリン、モノメリシン酸グリセリン、モノラクセル酸グリセリン等が挙げられる
【0032】
ジアシルグリセロールは、互いに同一又は異なる2分子の脂肪酸とグリセリンとのエステルであることが好ましく、典型的には下記式(5’’)で表される。
【0033】
8O−CH2−CH(OR9)−CH2−OR10 (5’’)
【0034】
(R8、R9及びR10は、それぞれ独立に、水素又は脂肪酸からカルボキシル基中のヒドロキシル基を除いてなる残基を表し、R8、R9及びR10のうち2つが、脂肪酸からカルボキシル基中のヒドロキシル基を除いてなる残基である。)
【0035】
ジアシルグリセロールとしては、例えば、ジカプリル酸グリセリン、ジウンデシル酸グリセリン、ジラウリル酸グリセリン、ジトリデシル酸グリセリン、ジミリスチン酸グリセリン、ジペンタデシル酸グリセリン、ジパルミチン酸グリセリン、ジヘプタデシル酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、ジノナデカン酸グリセリン、ジアラキジン酸グリセリン、ジベヘン酸グリセリン、ジリグノセリン酸グリセリン、ジセロチン酸グリセリン、ジヘプタコ酸グリセリン、ジモンタン酸グリセリン、ジメリシン酸グリセリン、ジラクセル酸グリセリン等が挙げられる。
【0036】
トリアシルグリセロールは、互いに同一又は異なる3分子の脂肪酸とグリセリンとのエステルであることが好ましく、典型的には下記式(5’’’)で表される。
【0037】
11O−CH2−CH(OR12)−CH2−OR13 (5’’’)
【0038】
(R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、脂肪酸からカルボキシル基中のヒドロキシル基を除いてなる残基を表す。)
【0039】
トリアシルグリセロールとしては、例えば、トリカプリル酸グリセリン、トリウンデシル酸グリセリン、トリラウリル酸グリセリン、トリトリデシル酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、トリペンタデシル酸グリセリン、トリパルミチン酸グリセリン、トリヘプタデシル酸グリセリン、トリステアリン酸グリセリン、トリノナデカン酸グリセリン、トリアラキジン酸グリセリン、トリベヘン酸グリセリン、トリリグノセリン酸グリセリン、トリセロチン酸グリセリン、トリヘプタコ酸グリセリン、トリモンタン酸グリセリン、トリメリシン酸グリセリン、トリラクセル酸グリセリン等が挙げられる。
【0040】
前記脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、ウンデシル酸、ラウリル酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコ酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸が挙げられ、その炭素数は、好ましくは10〜30である。
前記脂肪酸は、飽和脂肪酸であることが好ましく、また、直鎖状の脂肪酸であることが好ましい。
【0041】
モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物としては、トリアシルグリセロールが好ましい。
【0042】
モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物としては、粒径が小さいもの、具体的には100メッシュの篩を通過するものが好ましく用いられる。この粒径があまり大きいと、シリンダー内にてスクリュウで溶融混練することによる芳香族ポリサルホン樹脂組成物の製造や成形の際、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物が高せん断力を受け、分解が促進されやすくなり、得られる芳香族ポリサルホン樹脂組成物やその成形体に悪影響を与え易くなる。
【0043】
本発明の芳香族ポリサルホン樹脂組成物におけるモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物の含有量は、芳香族ポリサルホン樹脂100重量部に対して、0.02〜4重量部であることが好ましく、0.03〜2重量部であることがより好ましく、0.05〜1重量部であることがさらに好ましい。モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物の含有量があまり少ないと、離型性が不十分になり易く、あまり多いと、離型性は向上するが、発煙が発生し易くなったり、金型表面が汚染され易くなったり、成形体が白濁し易くなったりするため、好ましくない。
【0044】
なお、本発明の芳香族ポリサルホン樹脂組成物には、必要に応じて、芳香族ポリサルホン及びモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物以外の成分、例えば、アルミニウム繊維、ガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカー等の繊維状又は針状の補強剤;アルミニウムパウダー、アルミニウムフレーク等の粉末;マイカ、ガラスビーズ等の無機充填剤;フッ素樹脂、金属石鹸類等のモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物以外の離型剤;酸化チタンの如き顔料、染料等の着色剤;酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤が1種以上含まれていてもよいが、繊維状又は針状の補強剤や無機充填剤が含まれる場合は、成形収縮率が改善ざれ、離型性が向上するため、これら補強剤や充填材を含まない芳香族ポリサルホン樹脂組成物の方が、本発明の効果が大きい。
【0045】
本発明の芳香族ポリサルホン樹脂組成物は、芳香族ポリサルホン樹脂とモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物とを溶融混練してペレット化することにより、好適に製造することができ、典型的には、芳香族ポリサルホン樹脂、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物及び必要に応じて他の成分を、ヘンシルミキサーやリボンブレンダーで混合した後、単軸スクリュー又は2軸スクリューの押出機を用いて、通常250〜400℃、好ましくは300〜390℃で溶融混練してペレット化することにより、好適に製造することができる。
【0046】
また、芳香族ポリサルホン樹脂から構成されるペレットとモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物とを、タンブラーミキサー等で混合し、この混合物を成形に付してもよい。この場合、成形機内の溶融混練により、均一な芳香族ポリサルホン樹脂組成物が構成される。このように、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物は、成形までに配合されればよいが、芳香族ポリサルホン樹脂の色味を効果的に低減するには、前記のように、芳香族ポリサルホン樹脂とモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物とを溶融混練してペレット化し、このペレットを成形に付すことが好ましい。
【0047】
本発明の芳香族ポリサルホン樹脂組成物は、様々な部品・部材に成形することができ、成形方法としては、例えば、射出成形法、圧縮成形法、押出し成形法、中空成形法が挙げられる。中でも射出成形法が好ましい。
【0048】
成形体としては、例えば、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、プリント配線板、コンピュータ関連部品、等の電気・電子部品;ICトレー、ウエハーキャリヤー、等の半導体製造プロセス関連部品;VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具、等の家庭電気製品部品;ランプリフレクター、ランプホルダー、等の照明器具部品;コンパクトディスク、レーザーディスク(登録商標)、スピーカー、等の音響製品部品;光ケーブル用フェルール、電話機部品、ファクシミリ部品、モデム、等の通信機器部品;分離爪、ヒータホルダー、等の複写機関連部品;インペラー、ファン、歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース、等の機械部品;自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品、等の自動車部品;マイクロ波調理用鍋、耐熱食器、等の調理用器具;床材、壁材などの断熱、防音用材料、梁、柱などの支持材料、屋根材、等の建築資材または土木建築用材料;航空機部品、宇宙機部品、原子炉などの放射線施設部材、海洋施設部材、洗浄用治具、光学機器部品、バルブ類、パイプ類、ノズル類、フィルター類、膜、医療用機器部品及び医療用材料、センサー類部品、サニタリー備品、スポーツ用品、レジャー用品、が挙げられる。
【0049】
本発明の芳香族ポリサルホン樹脂組成物は、最小肉厚が3.0mm以下、特に2.0mm以下であるような薄肉の成形体に成形した場合でも、芳香族ポリサルホン樹脂単独と同等の強度を保持しつつ、離型性に優れるので、金型から成形体を取り出す際、成形体の変形や破損を招くことなく、薄肉の成形体を安定して得ることができる。よって、本発明の芳香族ポリサルホン樹脂組成物は、薄型化・大型化が進み、成形時の流動性に加え、耐熱性や強度も要求されるランプリフレクターを製造するための成形材料として、好適に用いられる。ここで、ランプリフレクターの例としては、自動車のヘッドランプ用リフレクターやフォグランプ用リフレクター、ヘッドランプ用サブリフレクターが挙げられる。
【実施例】
【0050】
実施例1〜5、比較例1〜6
芳香族ポリサルホン樹脂として、住友化学(株)の「スミカエクセルPES3600P(樹脂(1))」および「スミカエクセルPES4100P(樹脂(2))」(パウダー)を用いた。また、離型剤として、次のものを用いた。
【0051】
離型剤(1):トリステアロイルグリセロール(AXEL PLASTICS RESEARCH LABORATORIES社製の「MOLDWIZ INT−40DHT」)。
離型剤(2):トリミリスチン酸グリセリン(MP Biomedicals,Inc.社製)。
離型剤(3):モノステアリン酸グリセロール(和光ケミカル社製)。
離型剤(4):ジステアリン酸グリセロール(和光ケミカル社製)。
離型剤(5):ジペンタエリスリトールヘキサステアレート(コグニス・オレオケミカル・ジャパン(株)製の「LOXIOL VPG2571」)。
離型剤(6):ステアリン酸バリウム(堺化学工業(株)製の「SB」)。
【0052】
芳香族ポリサルホン樹脂100重量部に対して、表1に示す種類及び量の離型剤を配合し、ヘンシェルミキサーでドライブレンドした。この混合物を二軸押出機(池貝鉄工(株)製の「PCM−30型」)を用いて、シリンダー温度330〜350℃で造粒し、芳香族ポリサルホン樹脂(比較例1)又はその組成物(実施例1〜5、比較例1〜6)のペレットを得た。このペレットについて、次の方法で離型抵抗の測定、引張強度の測定及び色調の評価を行い、結果を表1に示した。
【0053】
[離型抵抗の測定]
ペレットを、射出成形機(日精樹脂工業(株)製の「ES−400型」)を用いて、シリンダー温度360℃、金型温度150℃、保圧900kg/cm2又は1300kg/cm2、射出速度一定の条件で、図1に示す金型に射出した後、金型内から成形体(φ11×φ15×10mmでコア・キャビとも抜きテーパー0)を取り出すために要した圧力を測定し、この圧力を離型抵抗とした。
【0054】
[引張強度の測定]
ペレットを、射出成形機を用いて、ダンベル状試験片(ASTM4号)に成形し、ASTMD638に準拠して測定した。
【0055】
[色調の評価]
ペレットを、射出成形機を用いて、#4000で磨かれた金型により、板状試験片(64mm×64mm×3mm)に成形し、目視にて白濁の有無を確認し、白濁していない試験片について、測色色差計(日本電色工業(株)製の「ZE−2000」)を用いて、透過光のL値及びYI値を測定した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリサルホン樹脂とモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物とを含む芳香族ポリサルホン樹脂組成物。
【請求項2】
前記モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物の含有量が、前記ポリサルホン樹脂100重量部に対して、0.02〜4重量部である請求項1に記載の芳香族ポリサルホン樹脂組成物。
【請求項3】
前記モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物が有するアシル基が、炭素数10〜30の脂肪酸からカルボキシル基中のヒドロキシル基を除いてなる残基である請求項1又は2に記載の芳香族ポリサルホン樹脂組成物。
【請求項4】
前記モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールおよびトリアシルグリセロールからなる群より選ばれる1種以上の化合物が、トリアシルグリセロールである請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリサルホン樹脂組成物。
【請求項5】
前記トリアシルグリセロールの含有量が、前記ポリサルホン樹脂100重量部に対して、0.02〜4重量部である請求項4に記載の芳香族ポリサルホン樹脂組成物。
【請求項6】
前記トリアシルグリセロールが有する3つのアシル基が、それぞれ独立に、炭素数10〜30の脂肪酸からカルボキシル基中のヒドロキシル基を除いてなる残基である請求項4又は5に記載の芳香族ポリサルホン樹脂組成物。
【請求項7】
前記芳香族ポリサルホン樹脂と前記トリアシルグリセロールとを溶融混練してなり、ペレット状である請求項1〜6のいずれかに記載の芳香族ポリサルホン樹脂組成物。
【請求項8】
前記芳香族ポリサルホン樹脂の340℃、せん断速度1000s-1で測定される溶融粘度が、200〜1000Pa・sである請求項1〜7のいずれかに記載の芳香族ポリサルホン樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の芳香族ポリサルホン樹脂組成物を射出成形してなる成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−225838(P2011−225838A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69450(P2011−69450)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】