説明

芳香族副生成物が除去された直鎖アルファオレフィンの調製方法およびそのための反応装置システム

本発明は、有機溶媒とオリゴマー化触媒の存在下でエチレンのオリゴマー化により直鎖アルファオレフィンを調製する方法であって、芳香族C9+化合物で汚染されたC10+アルファオレフィンの生成物分画を、生成物主流から分離し、転化反応装置に移送し、そこで、C10+アルファオレフィンおよび芳香族C9+化合物を、フリーデル・クラフツ・アルキル化触媒の存在下で反応させて、芳香族C19+化合物を生成する方法、およびそのための反応装置システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒と触媒の存在下でエチレンのオリゴマー化により直鎖アルファオレフィンを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンのオリゴマー化により直鎖アルファオレフィンを生成する方法が当該技術分野において広く知られている。通常、そのプロセスには、ジルコニウム成分および活性化剤として働く有機アルミニウム成分を含む触媒が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、直鎖アルファオレフィンを製造するプロセスであって、触媒溶液とエチレンがその中に導入される1つの反応装置が用いられるプロセスが開示されている。そのプロセスにより、C4〜C28炭素原子を有する直鎖アルファオレフィンの生成物分布が得られ、ここで、C20+の分画は通常、蝋状高分子物質を含有している。
【0004】
4〜C28炭素原子を有するアルファオレフィンを含有する生成物流は、例えば、蒸留または抽出により、いくつかの分画に分離されるであろう。得られる主な分画の1つは、C10+アルファオレフィン、好ましくはC10〜C18アルファオレフィンを含有する分画である。この分画は大抵、芳香族成分、特に、オリゴマー化中に形成されるC9+芳香族成分により汚染されているであろう。もちろん、価値の下がった分画C10+が提供されてしまうので、これらの副生成物は望ましくない。従来技術において、芳香族成分はこれまで、抽出および/または蒸留の繰返しにより除去されてきた。例えば、C10+アルファオレフィン分画から芳香族成分を除去するために、5つの蒸留塔がこれまで用いられてきた。
【特許文献1】独国特許発明第4338414C1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服した直鎖アルファオレフィンを調製する方法を提供することにある。具体的には、C10+アルファオレフィン分画の価値を改善するために、C10+アルファオレフィン分画中に通常存在する芳香族副生成物を低コストで容易に除去できる方法を提供すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、芳香族C9+化合物により汚染されたC10+アルファオレフィンの生成物分画を、生成物主流から分離し、転化反応装置に移送し、そこで、C10+アルファオレフィンおよび芳香族C9+化合物を、フリーデル・クラフツ・アルキル化触媒の存在下で反応させて、芳香族C19+化合物を生成することにより達成される。
【0007】
フリーデル・クラフツ・アルキル化触媒が、アルキル化に触媒作用を及ぼすのに十分な酸性度を持つ任意の材料から選択されることが好ましい。
【0008】
フリーデル・クラフツ・アルキル化触媒が、粘土、ゼオライト、ルイス酸およびプロトン酸から選択されることがより好ましい。
【0009】
ある好ましい実施の形態において、フリーデル・クラフツ・アルキル化触媒は、粘土、ゼオライト、H2SO4、P410、H3PO4、AlCl3、FeCl3、SbCl5、SnCl4、BF3、TiCl4およびZnCl2から選択される。
【0010】
調製された芳香族C19+化合物は、好ましくは蒸留により、転化反応装置内でまたはその下流で未反応のC10+アルファオレフィンから分離されることが好ましい。
【0011】
さらに、分離されたC19+化合物が、オリゴマー化中に得られたC20+残留物と組み合わされることが好ましい。
【0012】
芳香族C19+化合物が、その熱使用のため、好ましくは燃焼のために、さらに別の装置に移送されてもよい。
【0013】
ある好ましい実施の形態において、転化反応装置内での転化は周囲温度で行われる。
【0014】
転化反応装置に導入される前に、C10+アルファオレフィンの分画に追加の溶媒を加えることがさらに好ましい。
【0015】
10+アルファオレフィン分画がC10〜C18分画であることが最も好ましい。
【0016】
本発明はさらに、好ましくは本発明による方法を用いた、エチレンをオリゴマー化して直鎖アルファオレフィンを形成するための反応装置システムであって、オリゴマー化反応装置および転化反応装置を備え、転化反応装置内にフリーデル・クラフツ・アルキル化触媒が存在するものである反応装置システムを提供する。
【0017】
意外なことに、C10+直鎖アルファオレフィン分画中に含まれる芳香族副生成物は、少なくともC19+を有する芳香族成分を生成するための別個の転化反応装置内において、フリーデル・クラフツ・アルキル化触媒の存在下で、そのC10+アルファオレフィンをオリゴマー化プロセスにおいて得られた芳香族成分と反応させることにより、容易に転化(除去)できることが分かった。これらのC19+芳香族成分は、C10+アルファオレフィン分画から容易に分離でき、さらに処理、例えば、燃焼させられる。それゆえ、芳香族副生成物の分離は、非常に単純な方法工程で行われ、アルファオレフィン分画から芳香族副生成物を分離するためにこれまで用いられてきた5つの蒸留塔が省かれる。したがって、投資コストおよび運転コストが減少し、価値の高まった生成物(副生成物のないアルファオレフィン分画)が得られる。
【0018】
本発明の概念を、芳香族不純物または副生成物を含有するどのような炭化水素流に適用してもよいことが、当業者には明らかである。例えば、パラフィン系流の場合、容易に分離されるであろう重質芳香族化合物への転化を可能にするためには、パラフィン系流にオレフィンを加えなければならない。
【0019】
一般に、直鎖アルファオレフィン(C10+)の芳香族成分(C9+)による転化は、以下のスキームにしたがう:
【化1】

【0020】
ここで、R’は、2つ以上の炭素原子を有する任意のアルキル基であり、Rは、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは8から16個の炭素原子を有する任意のアルキル基である。
【実施例】
【0021】
本発明の方法および反応装置システムの追加の利点および特徴を、添付の図面を参照して、さらに説明する。
【0022】
図1において、直鎖アルファオレフィンを調製するためのエチレンのオリゴマー化のための反応装置1が提供されている。反応装置1において、エチレンは、好ましくは60〜100℃の温度で、溶媒、好ましくはトルエンと、適切な触媒との存在下でオリゴマー化される。オリゴマー化後(反応装置は連続運転されることが好ましい)、生成物流は排出ライン2を通して反応装置から除去される。生成物流は、溶媒、触媒、液体直鎖アルファオレフィンおよび高分子量オリゴマー並びに未反応の溶解したエチレンを含む。生成物流の成分は、例えば、分離ユニット3において、分離されるであろう。例えば、液体直鎖アルファオレフィンは、C4〜C8、C10〜C18およびC20+の分画を得るために、蒸留によりいくつかの分画に分離されるであろう。通常、C10〜C18(C10+)の分画は芳香族副生成物を含む。この分画は、分離ユニット3からライン4を通して転化反応装置5に移送されてよく、随意的な追加の溶媒が提供されてよく、ここで、C10+分画および芳香族副生成物は、フリーデル・クラフツ・アルキル化触媒の存在下で反応させられる。次いで、転化反応装置5の排出流をさらに処理してもよく、例えば、芳香族副生成物(今では、C19+)は、蒸留によりアルファオレフィンから分離し、例えば、燃焼のために、さらに別の装置に移送することができる。精製されたC10+分画は、任意の所望の目的に利用してもよく、付加価値がある。
【0023】
先の説明、図面または特許請求の範囲に開示された特徴は、別個とその任意の組合せの両方で、本発明を様々な形態を実現するための素材であろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による方法を実施するための反応装置システムの概略図
【符号の説明】
【0025】
1 反応装置
3 分離ユニット
5 転化反応装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒とオリゴマー化触媒の存在下でエチレンのオリゴマー化により直鎖アルファオレフィンを調製する方法であって、芳香族C9+化合物で汚染されたC10+アルファオレフィンの生成物分画を生成物主流から分離し、転化反応装置に移送する工程を有し、前記転化反応器において、前記C10+アルファオレフィンおよび前記芳香族C9+化合物をフリーデル・クラフツ・アルキル化触媒の存在下で反応させて、芳香族C19+化合物を生成することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記フリーデル・クラフツ・アルキル化触媒が、アルキル化に触媒作用を及ぼすのに十分な酸性度を持つ任意の材料から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記フリーデル・クラフツ・アルキル化触媒が、粘土、ゼオライト、ルイス酸およびプロトン酸から選択されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記フリーデル・クラフツ・アルキル化触媒が、粘土、ゼオライト、H2SO4、P410、H3PO4、AlCl3、FeCl3、SbCl5、SnCl4、BF3、TiCl4およびZnCl2から選択されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
調製された前記芳香族C19+化合物が、前記転化反応装置内でまたはその下流で未反応のC10+アルファオレフィンから分離されることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記芳香族C19+化合物が蒸留により分離されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
分離された前記C19+化合物が、オリゴマー化中に得られたC20+残留物と組み合わされることを特徴とする請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記芳香族C19+化合物が、その熱使用のために、さらに別の装置に移送されることを特徴とする請求項5から7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記転化反応装置における転化が周囲温度で行われることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記転化反応装置中への導入前に、前記C10+アルファオレフィンの分画に追加の溶媒を加えることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記C10+アルファオレフィンの分画がC10〜C18分画であることを特徴とする請求項1から10いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
エチレンをオリゴマー化して直鎖アルファオレフィンを形成するための反応装置システムであって、オリゴマー化反応装置および転化反応装置を備え、前記転化反応装置内にフリーデル・クラフツ・アルキル化触媒が存在するものである反応装置システム。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−530320(P2009−530320A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500714(P2009−500714)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000812
【国際公開番号】WO2007/107202
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(507055615)リンデ アーゲー (29)
【氏名又は名称原語表記】LINDE AG
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】