説明

芳香用品およびその製造方法

【課題】芳香が一回以上変化し、携帯可能かつ使用の簡便な芳香用品およびその安価な製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】少なくとも2層の積層する芳香成分含有層を含み、芳香成分含有層が各々異なる芳香成分を含有する芳香用品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香用品およびその製造方法に関し、特に芳香が一回以上変化する、携帯可能かつ使用の簡便な芳香製品およびその安価な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香浴は、精油の香りを嗅ぐことにより種々の効果を得る方法である。精油およびその含有成分は、種類により、鎮静効果、入眠効果、覚醒効果、鎮痛効果、抗菌効果、消臭効果などを有することが知られており、目的とする効果に合わせて使用されている。近年、外出先でも簡易に芳香浴を行い、目的とする効果を得ることができるような、携帯可能かつ簡便かつ安価な芳香浴用品が求められている。
【0003】
芳香浴は単独の精油で行うこともあるが、複数の精油を混合して使用されることも多い。精油はその揮発速度によって、トップノート、ミドルノート、ベースノートに分類することができる。それぞれの精油を選んできて調合することで、バランスの良い芳香油とすることができる。しかし、揮発する順番は、トップノート、ミドルノート、ベースノートの順番であり、複数の精油をただ混合するだけではこの順番を操作することは不可能である。例えば、ミドルノートに分類されるラベンダーによる入眠効果を得て眠り、トップノートに分類されるグレープフルーツの覚醒効果で起床する、ということは調合油では不可能である。
【0004】
また、芳香成分を含有させた芳香シートが市販されているが、精油を複数持ち歩いて使用したり、市販されている芳香シートを複数使用したりすることも、簡便ではない。さらに、積層されたメモブロックに、香料を内含するマイクロカプセルを印刷する技術が知られている(特許文献1を参照)が、異なる芳香を楽しむためには、メモをめくる必要があり、例えば睡眠中であれば睡眠を妨げ、簡便ではない。
【0005】
上記の問題点を解決するために、機械的な方法により、芳香の揮散をコントロールする方法がある。例えば、複数のディフューザーにタイマーを組み合わせ、所望の時間に所望の芳香の揮散を行う製品(例えばaroscent、air aroma社製)が知られている。しかしながら、この方法では、ディフューザーにタイマーを設置することにより大型化し、携帯には著しく不便であったり、高価であるという問題点があった。これらの理由から、芳香が一回以上変化する、携帯可能かつ使用の簡便な芳香製品の開発が強く望まれていた。
【0006】
【特許文献1】実開平5−9979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、芳香が一回以上変化し、携帯可能かつ使用の簡便な芳香用品およびその安価な製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、少なくとも2層の積層する芳香成分含有層を含み、芳香成分含有層が各々異なる芳香成分を含有する芳香用品によれば、芳香を一回以上変化させることができることを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.少なくとも2層の積層する芳香成分含有層を含み、芳香成分含有層が各々異なる芳香成分を含有する芳香用品。
2.芳香成分含有層に積層する少なくとも1層の芳香成分透過層をさらに含む、前項1に記載の芳香用品。
3.芳香成分含有層水溶性高分子化合物を含有する、前項1または2に記載の芳香用品。
4.芳香成分透過層が水溶性高分子化合物を含有する、前項3に記載の芳香用品。
5.総厚みが1mm以下である、前項1〜4のいずれか1項に記載の芳香用品。
6.芳香成分含有層および/または芳香成分透過層の積層が塗布による、前項1〜5のいずれか1項に記載の芳香用品。
7.芳香成分含有層が、芳香成分を含有しない層を形成後、芳香成分を含浸させることにより形成される、前項1〜6のいずれか1項に記載の芳香用品。
8.さらに基材を含む、前項1〜7のいずれか1項に記載の芳香用品。
9.基材の少なくとも片面に、少なくとも2層の芳香成分含有層が積層する、前項1〜8のいずれか1項に記載の芳香用品。
10.2層の芳香成分含有層のうち、基材に接している層Aに芳香成分aを、基材と接していない層Bに芳香成分bを含有し、芳香成分aが芳香成分bより高い蒸気圧を有する、前項9に記載の芳香用品。
11.芳香成分含有層AとBとの間に芳香成分透過層が介在する、前項10に記載の芳香用品。
12.芳香成分が精油である前項1〜11のいずれか1項に記載の芳香用品。
13.芳香成分の揮発を遮蔽するフイルムが貼付され、芳香成分を遮蔽する袋に収容されてなる、前項1〜12のいずれか1項に記載の芳香用品。
14.前項1〜13のいずれか1項に記載の芳香用品の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、芳香が一回以上変化する、携帯可能かつ使用の簡便な芳香用品およびその安価な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<芳香成分含有層および芳香成分透過層>
本発明は、積層された少なくとも2層の積層する芳香成分含有層を含み、芳香成分含有層が各々異なる芳香成分を含有する芳香用品を提供する。本発明において、芳香成分含有層とは、芳香成分が好ましくは液滴の状態で分散している層を示す。尚、本発明の芳香用品は、2つ以上の芳香成分含有層を含有し、該2つ以上ある芳香成分含有層が各々の層に異なる芳香成分を含有する。ここで、各々異なる芳香成分とは、各芳香成分含有層が異なる芳香成分を含んでいればよく、各層が同じ成分を含むことを排除するものではない。
【0012】
また、芳香成分含有層は、好ましくは芳香成分が透過しうる均質な連続層である。ここで、該均質な連続層とは、例えば、不織布、紙、布、連通する孔(例えば孔径100nm以上の孔)を有する膜は除く。また、本発明の芳香用品は、芳香成分含有層に積層される少なくとも1層の芳香成分透過層を含んでもよい。該芳香成分透過層は、芳香成分が透過しうる均質な連続層である。
【0013】
本発明の芳香用品において、芳香成分含有層および/または芳香成分透過層は高分子化合物を含有することが好ましく、水溶性高分子化合物を含むことが特に好ましい。芳香成分含有層における高分子化合物の含有量は5〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%が特に好ましい。芳香成分透過層における高分子化合物の含有量は、50質量%以上が好ましく70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0014】
前記水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸塩、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、などの水溶性天然高分子化合物類も使用できる。特に、好ましいものは、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチンである。
【0015】
芳香成分含有層および/または芳香成分透過層は、必要に応じて無機微粒子を含有することができる。該無機微粒子としては、例えば、シリカ、珪酸マグネシウムや珪酸カルシウム等の珪酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、合成ヘクトライト等各種スメクタイト粘土などが挙げられる。無機微粒子を芳香成分含有層に含有させる場合、該無機微粒子の含有量は、5〜60質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%が特に好ましい。
【0016】
本発明の芳香用品において、芳香成分含有層および/または芳香成分透過層は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて各種の添加剤を含むことができる。該添加剤として、例えば、界面活性剤(乳化剤、可溶化剤等)、紫外線吸収剤、pH調整剤、防腐・殺菌剤(オルトフェニルフェノール、安息香酸、サリチル酸、イソプロピルメチルフェノール等)、抗菌剤、防虫剤(パラジクロールベンゼン、ナフタリン、カンファー等)、誘引剤(アセトキシフェニルブタノン、メチルオイゲノール等)、忌避剤、色素、塩類、架橋剤等などが挙げられる。
【0017】
芳香成分含有層および/または芳香成分透過層は、塗布、接着、ラミネート等様々な方法で形成することができる。本発明において塗布とは、皮膜を形成する方法で、皮膜を形成する成分を含有する液体を基材上に広げることで、皮膜を形成することを示す。層を塗布によって形成する装置としては、例えば、リップコーター、ダイコーター、グラビアコーター、スライドコーター、バーコーターなどが挙げられ、好ましくはスライドコーターであり、より好ましくは、複数のスリットを有するスライドコーターである。塗布方式のメリットとして、厚みの制御が容易である点が挙げられる。例えば、芳香成分透過層の厚みは、任意の芳香成分に合わせた厚みにすることが好ましいが、ラミネート方式の場合、ラミネートするフイルム自体を切り替える必要があるが、塗布方式であれば、塗布量の変更により厚みの変更をより容易に行えるため、生産性に優れている。
【0018】
本発明においてラミネートとは、フイルムを貼り付けて積層することを示す。前記フイルムとしては、無孔質フイルム、孔径が100nm未満の微多孔質フイルム等を用いることができる。該微多孔質フイルムの孔径は好ましくは50nm未満、より好ましくは孔径30nm未満とする。該孔径が100nm以下であることで、使用初期において芳香成分の揮発が過度とならず、本発明の効果を発揮することができる。無孔質フイルム、孔径が100nm未満の微多孔質フイルムは、多層フイルムであってもよい。
【0019】
前記無孔質フイルムとしては、公知のものを使用することができ、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリスチレンフイルム等が好適に挙げられ、ポリスチレンフイルムが好ましい。また、前記孔径が100nm以下の微多孔質フイルムとしては、公知のものを使用することができ、ポリエチレン微多孔質フイルム、ポリプロピレン微多孔質フイルム、ポリテトラフロロエチレン微多孔質フイルム、ポリイミド微多孔質フイルムが好適に挙げられ、ポリテトラフロロエチレン微多孔質フイルムが好ましい。該無孔質フイルムおよび微多孔質フイルムの厚みは100μm以下が好ましく、50μm以下が特に好ましい。
【0020】
芳香成分透過層をラミネートによって形成する装置としては、例えば、ホットメルトラミネーター、コールドラミネーターなどが挙げられ、好ましくはコールドラミネーターである。
【0021】
<基材>
本発明の芳香用品は、芳香成分含有層および芳香成分透過層に加えて、さらに基材を含むことができる。本発明において基材とは、芳香成分含有層および芳香成分透過層を支持する要素であり、100μm以上の厚みを持ち、孔径100nm以上の孔を持たない層を有する構造物である。基材の形状は板状が好ましい。
【0022】
前記基材としては、例えば、本発明の芳香用品を塗設できるものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンフイルム、ポリエステルフイルム、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム、ポリエチレンコート紙、ポリエチレンコート不織布などが挙げられる。
【0023】
<芳香成分>
芳香成分含有層における芳香成分の含有量は目的にあわせて適宜調整することができるが、20〜85質量%が好ましく、40〜85質量%がより好ましく、50〜85質量%が特に好ましい。本発明に使用する芳香成分としては、例えば、精油、合成香料、動物性香料、これらの有効成分や単体化合物などが好適に挙げられ、精油または精油に含まれる有効成分が好ましい。
【0024】
芳香成分はその揮発速度によって、トップノート、ミドルノート、ベースノートに分類することができる。トップノートは、その蒸気圧が約15μmHg(25℃)以上のものであり、ミドルノートは、その蒸気圧が約10〜14μmHg(25℃)のものであり、ベースノートは、その蒸気圧が約10μmHg(25℃)未満のものである。芳香成分の蒸気圧は、主として含まれる芳香化合物の蒸気圧による。
【0025】
トップノートに属する芳香化合物として、例えばリナロール、エチルアセテート、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、青葉アルコール、ギ酸フェニルエチル、樟脳、テルピノーレン、リモネン、l−メントール、3−オクテノール、テトラヒドロリナロール、ボルネオール、イソプレゴール、ベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、メチルフェニルカルビノール、ジメチルフェニルカルビノール、フェニルエチルアルコール、シネオール、アセトフェノン、酢酸ベンジル、等が挙げられる。
【0026】
また、ミドルノートに属する芳香化合物として、例えばテルピネオール、ゲラニオール、シトロネロール、シトロネラール、デシルアルデヒド、ベンジルアセテート、シトラール、オイゲノール、フェニルエチルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、テルピニルアセテート、アセトフェノン、チモール、イソオイゲノール、ボルニルアセテート、ベンジルプロピオネート、9−デセノール、ネロール、ロジノール、ジメチルオクタノール、ラバンジュロール、ムゴール、ミルセノール、テトラヒドロムゴール、β−フェニルエチルジメチルカルビノール、β−フェニルエチルメチルエチルカルビノール、フェノキシエチルアルコール、アニスアルデヒド、インドール、アセトアニソール、シンナミルアセテート、フェニルプロピルフェニルアセテート、アミルベンゾエイド、アニシルアセテート、フェニルプロピルアルデヒド、ヘリオトロピン、ジャスミン(absolute)、等が挙げられる。
【0027】
さらに、ベースノートに属する芳香化合物として、例えばγ−ウンデカラクトン、エチルメチルフェニルグリシデート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、フェニルエチルアルコール、ムスコン、シベトン、メチルヨノン、ヨノン、cis−ジャスモン、バニリン、シンナミックアルコール、サイクラメンアルデヒド、ファルネソール、ヒドロキシシトロネロール、ボルニルメトキシシクロヘキサノール、ノボール、ネロリドール、サンタロール、サンダロール、セドロール、ベチペロール、パチュリアルコール、インドール、スカトール、アニスアルコール、γ−フェニルプロピルアルコール、α−アミルシンナミックアルコール、フェニルグリコール、第3級ブチルシクロヘキサノール、安息香酸、桂皮酸、ヒドロ桂皮酸、フェニル酢酸、2−メチルテトラヒドロキノリン、6−メチルキノリン、オクチルアルデヒド、フェニルエチルフェニルアセテート、ベンゾフェノン、リナリルフェニルアセテート、アミルシンナミックアルデヒド、イソオイゲノール、フェニルアセチックアルデヒド、等が挙げられる。
【0028】
本発明に使用する精油としては、例えば、イランイラン精油、ゼラニウム精油、ラベンダー精油、ジャスミン精油、カモミール精油、ラベンティン精油、ヒソップ精油、ローズ精油、ネロリ精油、シダーウッド精油、ユーカリ精油、サイプレス精油、ヒノキ精油、サンダルウッド精油、ジュニパー精油、ティートリー精油、パイン精油、パチュリ精油、オレンジ精油、グレープフルーツ精油、ライム精油、レモングラス精油、レモン精油、シトロネラ精油、ベルガモット精油、ペパーミント精油、ローズマリー精油、クラリセージ精油、クローブ精油、タイム精油、フェンネル精油、マジョラム精油、メリッサ精油、ローズウッド精油、バジル精油、バテ精油、シナモン精油等の天然の精油が挙げられる。このなかでも特に、イランイラン精油、ゼラニウム精油、シダーウッド精油、ユーカリ精油、サイプレス精油、オレンジ精油、グレープフルーツ精油、ライム精油、ペパーミント精油、ローズマリー精油が好ましい。また、これらの精油を複数組み合わせて用いてもよい。
【0029】
芳香成分として精油を使用する場合、トップノートに属する精油として、例えばオレンジ、グレープフルーツ、シトロネラ、ティートリー、バジル、パルマローザ、ペパーミント、ベルガモット、ユーカリ、レモン等が挙げられる。また、ミドルノートに属する精油として、例えばカモミール、クラリセージ、サイプレス、ジャスミン、ゼラニウム、ネロリ、マジョラム、ラベンダー、ローズマリー等が挙げられる。さらに、ベースノートに属する香料成分として、サンダルウッド、パチュリー、フランキンセンス、ベチパー、ベンゾイン、ミルラ、ローズ等が挙げられる。精油の分類は、主として含まれる芳香化合物によっている。また、精油の蒸気圧は、主として含まれる芳香化合物の蒸気圧による。
【0030】
芳香を1回以上変化させるには、液滴からの芳香成分の芳香成分含有層および芳香成分透過層における拡散速度と、層構成を制御することが好ましい。液滴からの芳香成分の拡散速度は、たとえば、芳香成分の粒径、芳香成分含有層および/若しくは芳香成分透過層の厚み等で調整できる。また、界面活性剤を使用することによっても芳香成分透過層の表面からの芳香成分の揮発速度を制御することができる。界面活性剤としては、特に限定されないが、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0031】
芳香成分含有層に芳香成分を含有させる方法としては、特に限定されず、あらかじめ水溶性高分子化合物等の層を構成する成分に芳香成分を分散してから芳香成分含有層を形成することもできるが、芳香成分を含有しない層を形成後、芳香成分を該芳香成分を含有しない層に含浸させることにより形成することが好ましい。該芳香成分を含有しない層としては、水溶性高分子からなる層、無機微粒子と水溶性高分子からなる層が好適に挙げられる。
【0032】
前記芳香成分を含有しない層に芳香成分を含浸させる方法としては、グラビアコート、マイヤーバーコート、スプレーコート、カーテンコート、ノズルからの筋塗布などが挙げられ、マイヤーバーコート、スプレーコートが好ましい。芳香成分は原液のまま含浸させることもできるし、有機溶剤に希釈して含浸させることもできる。有機溶剤は、エタノールが好ましい。
【0033】
本発明の芳香用品は、製造されたとき、芳香成分含有層中に芳香成分を液滴の状態で分散させることが好ましい。そして、使用時において、該液滴から芳香成分は液体状態で他の芳香成分含有層や芳香成分透過層などに拡散し、芳香用品の表面などより揮発する。本発明の芳香用品の製造時に、芳香成分含有層に分散させる芳香成分の液滴の大きさを適宜調節することにより、芳香成分含有層または芳香成分透過層の表面からの芳香成分の揮発速度を制御することができる。また、該液滴の大きさは通常は平均粒径0.1〜100μm、好ましくは1〜80μm、より好ましくは5〜50μmとすることが好ましい。液滴の大きさは、粒径分析器(LA−950 堀場製作所社製)、光学顕微鏡(エクリプスE600 ニコン社製)で計測することができる。
【0034】
芳香成分を液滴の状態で芳香成分含有層に分散する手段としては、例えば、水溶性高分子化合物中に芳香成分を含有させて、超音波処理、ホモジナイザー処理する方法等が挙げられる。超音波処理する場合、超音波時間は、超音波発振器のマイクロチップ端で1〜60分、好ましくは10〜50分、より好ましくは20〜40分とすることが好ましい。
【0035】
<厚み>
本発明の芳香用品において、芳香成分含有層および芳香成分透過層の厚みは、目的に合わせて各々適宜調整することにより、芳香成分の芳香成分透過層への拡散速度を制御することができる。芳香成分含有層および芳香成分透過層の総厚みは、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.7mm以下、特に好ましくは0.5mm以下とすることが好ましい。
【0036】
<層構成>
本発明の芳香用品における層構成としては、芳香成分aを含有する基材に接している層Aと、基材と接していない芳香成分bを含有する層Bからなる芳香用品が挙げられる。該芳香用品において、芳香成分aは、芳香成分bに対して、より低い蒸気圧を有する芳香成分とするのが好ましい。この構成により、芳香用品の表面に近い芳香成分含有層Bに含まれる芳香成分bを先に揮発させ、次いで芳香用品の表面から遠い芳香成分含有層Aに含まれる芳香成分aを揮発させることができ、芳香を変化させることが可能となる。また、さらに別の芳香成分cを含有する芳香成分含有層Cを積層することにより、芳香を2回以上変化させることも可能である。
【0037】
<実施態様>
本発明の一実施態様としては、例えば、図1に示すように前記芳香用品において、芳香成分含有層Aにトップノート等の蒸気圧の高い芳香成分aを含有させ、該芳香成分含有層Aの基材とは反対の面に積層する、すなわち芳香用品の表面あるいは揮発させる部位に近い芳香成分含有層Bにミドルノートやベースノート等の芳香成分aより蒸気圧の低い方向成分bを含有させることができる。また、図2に示すように芳香成分含有層Aと、芳香成分含有層Bとの間に芳香成分透過層Xを介在させてもよい。また、図3に示すように該芳香成分含有層Bの芳香成分含有層Aあるいは芳香成分透過層Xとは反対の面に積層する芳香成分透過層Yを含んでなる芳香用品としてもよい。
【0038】
また別の一実施態様として、図4に示すように、片面より芳香成分透過層X、芳香成分含有層A、芳香成分含有層B、芳香成分透過層Yの順に層構成を有していてもよい。また、図5に示すように芳香成分含有層Aと芳香成分含有層Bとの間に基材を有していてもよい。この場合、例えば芳香成分透過層Xに対してYの厚さを薄く、透過率を高くすることで、層Bに含まれる成分bの後で層Aに含まれる成分aを揮発させることも可能となる。尚、本発明の芳香用品において、さらに発熱層、粘着層等を有していてもよい。
【0039】
本発明の芳香用品は、芳香を遮蔽するフイルム(以下、芳香遮蔽フイルムとも言う)を貼付し、該芳香用品を芳香を遮蔽する袋(以下、芳香遮断袋とも言う)に収容して用いることができる。該芳香遮蔽フイルムは、芳香を遮蔽できれば特に限定されないが、ポリエステルフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、アルミニウムフイルムなどが、好適に使用される。また、これらを組み合わせた多層フイルムも好適に使用される。また、該芳香を遮蔽する袋は、芳香を遮蔽できれば特に限定されないが、ポリエステルフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、アルミニウムフイルムなどを袋状に加工した袋が、好適に使用される。また、これらを組み合わせた多層フイルムを袋状に加工した袋も、好適に使用される。
【0040】
<芳香成分の検出>
本発明の芳香用品から大気中に揮発した芳香成分は、においセンサによって検出することができる。該においセンサとしては、例えば、酸化物半導体ガスセンサ、水晶振動子ガスセンサ、導電性ポリマーガスセンサ、ガスクロマトグラフ、質量分析などが挙げられる。中でも、市販されている測定容易な酸化物半導体ガスセンサが好ましく、例えば、XP‐329III(新コスモス電機社製)、ОMX‐SR(日本シンテック社製)が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下に本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
まず、芳香成分含有層(第3層)を構成する芳香成分含有ゼラチン水溶液(1)を調製した。ビーカー中において、のゼラチン水溶液[ゼラチン(製造元をご記載ください)6.25質量%] 10gを調製し、ラベンダー精油(製造元をご記載ください) 2.5gを添加した。続いて、超音波洗浄機(製品名、製造元をご記載ください)中で超音波(超音波の大きさをご記載ください)を室温にて30分間照射し、芳香成分含有ゼラチン水溶液(1)を調製した。芳香成分含有ゼラチン水溶液(1)中の芳香成分の平均粒径を光学顕微鏡(エクリプスE600 ニコン社製で計測した結果、28μmであった。
【0043】
次に、芳香成分含有層(第1層)を構成する芳香成分含有ゼラチン水溶液(2)を、ラベンダー精油をグレープフルーツ精油に変更した以外は、芳香成分含有ゼラチン水溶液(1)と同様の方法で調製した。芳香成分含有ゼラチン水溶液(2)中の芳香成分の平均粒径を光学顕微鏡(エクリプスE600 ニコン社製で計測した結果、33μmであった。
【0044】
さらに、芳香成分透過層(第2層)を構成するゼラチン2.5質量%のゼラチン水溶液(3)を調製した。
【0045】
その後、基材として6cm×9cmのポリエチレンコート紙を使用して、以下の構成からなる芳香シート101を塗布により作製した。
【0046】
【表1】

【0047】
(実施例2)
芳香成分透過層を形成しないことを除いては、実施例1と同様の方法で、芳香シート102を作製した。
【0048】
【表2】

【0049】
(比較例)
実施例1では第1層と第3層に分けて芳香成分含有層に含有させたラベンダー精油とグレープフルーツ精油を、一層の芳香成分含有層に含有させて実験を行った。
【0050】
ビーカー中のゼラチン 6.25質量%のゼラチン水溶液 20gに、ラベンダー精油およびグレープフルーツ精油を各2.5gずつ添加した。続いて、超音波洗浄機中で超音波(超音波の大きさをご記載ください)を室温にて30分間照射し、芳香成分含有ゼラチン水溶液(4)を調製した。芳香成分含有ゼラチン水溶液(4)中の芳香成分の平均粒径を光学顕微鏡(エクリプスE600 ニコン社製(計測器名、製造元をご記入ください)で計測した結果、34μmであった。
【0051】
その後、基材として6cm×9cmのポリエチレンコート紙を使用して、以下の構成からなる芳香シート103を塗布により作製した。
【0052】
【表3】

【0053】
(試験例)
使用後10分間、1時間および2時間における芳香シート101、102の芳香を元の精油の芳香と比較した官能試験の結果を表3に示す。
【0054】
【表4】

【0055】
表4に示したように、本発明によれば、芳香が一回以上変化し、二回目以降の芳香に、トップノートに分類される精油の芳香が含まれる、携帯可能かつ使用の簡便な芳香用品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施態様の模式図を示す。
【図2】本発明の一実施態様の模式図を示す。
【図3】本発明の一実施態様の模式図を示す。
【図4】本発明の一実施態様の模式図を示す。
【図5】本発明の一実施態様の模式図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層の積層する芳香成分含有層を含み、芳香成分含有層が各々異なる芳香成分を含有する芳香用品。
【請求項2】
さらに芳香成分透過層を含む、請求項1に記載の芳香用品。
【請求項3】
芳香成分含有層が水溶性高分子化合物を含有する、請求項1または2に記載の芳香用品。
【請求項4】
芳香成分透過層が水溶性高分子化合物を含有する、請求項3に記載の芳香用品。
【請求項5】
総厚みが1mm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の芳香用品。
【請求項6】
芳香成分含有層および/または芳香成分透過層の積層が塗布による、請求項1〜5のいずれか1項に記載の芳香用品。
【請求項7】
芳香成分含有層が、芳香成分を含有しない層を形成後、芳香成分を含浸させることにより形成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の芳香用品。
【請求項8】
さらに基材を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の芳香用品。
【請求項9】
基材の少なくとも片面に、少なくとも2層の芳香成分含有層が積層する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の芳香用品。
【請求項10】
2層の芳香成分含有層のうち、基材に接している層Aに芳香成分aを、基材と接していない層Bに芳香成分bを含有し、芳香成分aが芳香成分bより高い蒸気圧を有する、請求項9に記載の芳香用品。
【請求項11】
芳香成分含有層AとBとの間に芳香成分透過層が介在する、請求項10に記載の芳香用品。
【請求項12】
芳香成分が精油である請求項1〜11のいずれか1項に記載の芳香用品。
【請求項13】
芳香成分の揮発を遮蔽するフイルムが貼付され、芳香成分を遮蔽する袋に収容されてなる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の芳香用品。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の芳香用品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−56613(P2008−56613A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236107(P2006−236107)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】