説明

苗移植機移送装置

【課題】
ハウス内に畝を複数形成して苗移植機で苗移植をする施設に関して、ハウス内のスペースをできるだけ利用して畝を長く形成し、できるだけ多くの作物を収穫できることを課題とする。
【解決手段】
複数の畝を形成するハウス内に、畝に苗を移植する苗移植機を吊り上げる吊り上げ手段と、該吊り上げ手段が移動するとき案内する案内手段とをハウスの天井付近に設け、
前記苗移植機が畝を跨いで苗移植作業を行ないながら走行するとき前記吊り上げ手段は案内手段に沿って移動し、前記苗移植機が隣接する畝間を移動するときには前記吊り上げ手段が苗移植機を吊り上げた状態で前記案内手段に沿って移動する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハウス内に畝を形成して野菜等を栽培する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハウス内で農作業機を使用する技術に関して、ハウス内に形成している畝に移植した移植機が隣接する畝に旋回して移動する際に、できるだけ旋回動作に要するスペースを小さくしてその分ハウス内の畝の長さを長くして栽培効率を高めることを意図した技術が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平10−178812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
畝の終端まで移植作業がなされ、隣接する畝に旋回して移動する場合にハウス内で旋回するスペースが必要となり、その分畝の長さが短くなってしまう。また、旋回時に走行車輪で畝の端部を崩してしまうことがある。
【0004】
本発明はハウス内のスペースをできるだけ利用して畝を長く形成し、できるだけ多くの作物を収穫できる構成とすることを目的とする。また、走行車輪で畝の端部を崩さないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために次のような技術的手段を備える。
すなわち、請求項1記載の発明においては、複数の畝U1〜U4を形成するハウスA内に、畝Uに苗を移植する苗移植機Bを吊り上げた状態で昇降できる昇降手段と、該昇降手段を隣接する畝方向に案内する案内手段と、を設けたことを特徴とする苗移植機移送装置とする。
【0006】
請求項2記載の発明においては、前記昇降手段は上下方向軸心に回動可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機移送装置とする。
請求項3記載の発明においては、複数の畝U1〜U4を形成するハウスA内に、畝に苗を移植する苗移植機Bを吊り上げて昇降できる昇降手段と、該昇降手段が移動するとき案内する案内手段Dと、をハウスAの天井1付近に設け、該案内手段Dは畝U1〜U4に沿ってそれぞれ形成する畝走行案内部2a〜2dと、隣接する畝走行案内部を連結する畝移動案内部3a〜3cとから形成し、前記畝走行案内部2a〜2dは、前記苗移植機Bが畝Uを跨いで走行しながら苗移植作業を行なうとき、苗移植機Bと連結する前記昇降手段を案内し、前記前記畝移動案内部3a〜3cは前記苗移植機Bが隣接する畝Uに移動するときに、苗移植機Bを吊り上げた昇降手段を案内する構成としたことを特徴とする苗移植機移送装置とする。
【0007】
請求項4記載の発明においては、前記畝移動案内部3a〜3cは前記畝走行案内部2a〜2dの一端と隣接して対向する畝走行案内部2a〜2dの一端とを連結する構成としたことを特徴とする請求項3記載の苗移植機移送装置とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明においては、畝Uでの苗移植作業を終えた苗移植機Bが隣接する次工程の畝Uに移動するときには、昇降手段で吊り上げられ、その状態で案内手段にて案内されて隣接する畝の上方に移動する。そして、苗移植機は降ろされて当該畝の苗移植作業を開始する。本発明により、苗移植機Bが隣接する畝に移動するときに旋回動作をする必要が無いため、ハウスA内旋回するためのスペースの分を畝にすることができ、その分作物の収穫量を増やすことができる。
【0009】
請求項2記載の発明においては、前記昇降手段は上下方向軸心に回動可能に構成したことで次工程の畝に移動した苗移植機の向きを変更することができるため、畝間の移動作業をより簡単にすることができる。
【0010】
請求項3記載の発明においては、苗移植機Bが畝Uを跨いで走行して苗移植作業を行なう。そのとき苗移植機Bと昇降手段は連結しており、昇降手段は苗移植機Bの走行と共にハウスAの天井1付近に設けている畝走行案内部に沿って移動する。そして一つの畝Uの苗移植作業が終了し、苗移植機Bを隣接する畝Uに移動させるときには、昇降手段で苗移植機Bを吊り上げて畝移動案内部に沿って隣接する畝Uまで移送する。本発明により、苗移植機Bと昇降手段を連結したままで苗移植作業ができるため、昇降手段を苗移植機に連結したり取り外したり済む手間が減りより迅速な苗移植作業をすることができる。
【0011】
請求項4記載の発明においては、畝移動案内部3a〜3cは畝走行案内部3a〜3cの一端と隣接して対向する畝走行案内部3a〜3cの一端とを連結する構成としたことで苗移植機Bが畝Uの終端まで苗を移植して、そのまま、苗移植機Bを昇降手段で吊り上げて、隣接して対向する畝Uの一端、すなわち苗移植始端側まで移送する。そのため、吊り上げて移動する距離が短くて済み、一つの畝Uの苗植え付け作業終了後、迅速に次工程の畝Uの苗移植作業を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態の苗移植機及び苗移植機の移送装置について図面と共に説明する。
図1はハウスAの内部を説明する図で、ハウスA内には複数の畝U1〜U4が形成されていると共に、隣接する畝Uと畝Uとの間には苗移植機Bの前輪10及び後輪11からなる走行車輪10、11が通過する畝溝M1〜M3が形成されている。そして、ハウスAの天井1側には、苗移植機Bの走行車輪10、11が畝溝Mから離れる状態になるよう吊り上げた状態で昇降することができるできるホイストCと、ホイストCが畝Uに沿って移動するときに案内する案内手段Dと、苗移植機Bを牽引するロープRを動かす駆動装置E等を設けている。
【0013】
案内手段Dは、畝U1〜U4に沿って設けられている畝走行案内部2a〜2dと、隣接する畝走行案内部同士を連結する畝移動案内部3a〜3cとから構成され、畝走行案内部2a〜2dと畝移動案内部3a〜3cは共にレール状に形成されており、ハウスAの支柱4等に支持されている。
【0014】
畝移動案内部3a〜3cについて詳述すると、最初に苗移植作業を行なう畝U1上の畝走行案内部2aの苗移植終端側と次工程に苗移植作業を行なう畝U2上の畝走行案内部2bの苗移植始端側とを連結する構成としている。そして、畝U2に沿って形成している畝走行案内部2bの苗移植終端側と次工程に苗移植作業を行なう畝U3上の畝走行案内部2cの苗移植始端側とを畝移動案内部3bで連結しており、以降、苗移植作業の工程順に畝走行案内部の苗移植終端側と次工程の畝走行案内部の苗移植始端側とを連結する構成としている。
【0015】
ホイストCは苗移植機Bと連結するチェーン20とチェーン20を作動させる駆動部21と、案内手段Dに沿って移動する車輪22とロープRを取り付ける取付部23と、駆動部21を上下軸心に回動させる回動軸24とから構成する。
【0016】
次に、苗移植機Bについて説明する。
苗移植機Bは畝Uを跨いで畝溝Mを走行する左右一対の走行車輪と、苗を移植する苗移植装置Fと、苗移植装置Fに苗を供給する苗供給装置Gとを備えている。さらに詳述すると、左右一対の前輪10、及び後輪11が機体に設けており、機体前側には苗Pを収容する多数の苗収容体12が長円形状に周回移動する苗供給装置Gを設け、苗供給装置Gの後ろ側には苗収容体12に収容される苗Pを把持する苗把持ハンド13を複数並列に備える苗移植装置Fを配置している。機体前後方向に移動させる前後移動モータ15で前後移動して苗収容体12内の苗を把持し、上下移動モータ14で下降して畝Uに苗を移植する構成としている。本実施例の苗移植装置Fは苗把持ハンド13が直接下降して畝Uに挿して植え付ける構成としているが、嘴状の植え付け爪を形成して、該植え付け爪に苗収容体12の苗Pを供給し、植え付け爪が土中に突入して苗Pを畝Uに植え付ける構成としても良い。なお、15は苗把持ハンド13で苗を移植する場所に予め植え付け孔を設ける作孔器である。
【0017】
苗移植装置Fの左右両側には苗供給装置Gに苗を供給する作業者が着座する座席Hを設けている。そして、座席Hの下方にはステップ16を設けている。そして18は苗移植機Bを手で動かす時に把持するハンドルで、19は苗移植機Bが畝に沿って走行するための畝案内ローラである。
【0018】
次に苗移植機Bによる苗移植作業について説明する。
本実施例の苗移植機Bはエンジンやバッテリ等の動力を備えておらず、ホイストCに連結しているロープRで牽引する構成で、ロープRはハウスAの天井1側中央付近に設置する駆動装置Eの駆動で苗移植機Bを牽引する。本実施例の駆動装置Eは巻き取り機でロープの巻き取り動作でロープRの長さを伸縮させることにより苗移植機Bを牽引している。
【0019】
苗移植機Bは畝U1の苗移植始端側から苗移植作業を開始する。機体が停止した状態で植え付け条分の作孔器15で苗植え付け位置に孔を設けた後、苗収容体12内に供給された苗Pを把持した把持ハンド13が該孔に苗Pを挿入する。植え付け動作が終了すると、駆動装置Eが設定量作動しロープRを介して苗移植機B牽引して設定した距離を走行させる。そのとき、苗移植機Bにチェーン20を介して連結しているホイストCは苗移植機Bの走行と共に、畝走行案内部2aに沿って移動する。苗移植機Bが設定した距離を走行すると停止し、苗移植作業が行なわれる。その間作業者は座席Hに着座するか畝溝Mを歩行しながら苗供給装置Gの苗収容体12に苗Pを供給する。
【0020】
畝U1の苗移植終端側まで移植作業が終わり作業者が苗移植機Bから降りると、作業者の操作、或いは自動制御でホイストCが苗移植機Bの走行車輪10、11が地面から離れるよう吊り上げる。そして、ホイストCは苗移植機Bを吊り上げた状態で畝移動案内部3aに沿って畝走行案内部2bの苗移植始端位置まで移動し、そこで回動軸24を回動させて苗移植機の向きを変更しながら苗移植機Bを降ろして畝U2の苗移植作業を開始する。そして、その後畝U3、畝U4の順に苗移植作業が継続される。
【0021】
本実施の形態の構成により、畝の苗移植終端側から隣接する次工程の畝の苗移植始端側に移動するときに苗移植機Bが旋回動作する必要がなく、旋回動作のためのスペースをハウスA内に設ける必要がないため、そのスペースの分、畝を延長させることができる。従って、作物の収穫量を増加させることができる。また、旋回動作することにより畝Uの終端側を走行車輪10、11で崩してしまうことを防止することができる。さらに、苗移植機Bの走行を案内する案内レールDを天井1側に設けることにより、作業者は苗移植機Bへの乗降や苗供給装置Gに苗を供給する際、畝溝M1〜M3を歩行するときに障害物になるものが無く作業が良好に行なえる。また、隣接する畝に移送するときにはチェーン20を連結したり取り外したりする必要が無いため、より迅速な苗移植作業を行なうことができる。
【0022】
なお、本実施の形態では、図2に示すように畝移動案内部3a〜3cを畝Uの端部側にU字型で形成することで、よりスムーズにそしてより短い距離で苗移植機Bを隣接する次工程の畝まで吊り上げ移動させることができる。また、図示はしないが、特に荷重がかかる畝移動案内部3a〜3cをハウスAの側壁に近い側の支柱に取付支持できるため、苗移植機Bを吊り上げて移動するのに耐えうる強固な支持構成にすることができる。
【0023】
本実施例では昇降手段及び案内手段を苗移植機Bに使用しているが、苗移植機Bを例えば畝を成型する管理機等の等の農作業機に使用しても良い。
本実施例の苗移植機Bは自走するためのエンジンあるいはバッテリ等の駆動源を搭載していない構成だが、駆動源を搭載すれば、畝走行案内部2a〜2d及び駆動装置EやロープRは不要にして畝移動案内部3a〜3cと昇降手段だけで隣接する畝に移動することができる。この場合、畝移動案内部は畝U1から畝U4の両端部それぞれの上方にわたって形成することで苗移植機Bを所望の畝Uに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】側面から見たハウス内部を説明する図
【図2】平面から見たハウス内部を説明する図
【図3】苗移植機の側面図
【図4】苗移植機の平面図
【図5】苗移植装置の斜視図
【符号の説明】
【0025】
U1〜U4 畝
A ハウス
B 苗移植機
C ホイスト
D 案内手段
1 天井
2a〜2d 畝走行案内部
3a〜3c 畝移動案内部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の畝U1〜U4を形成するハウスA内に、畝Uに苗を移植する苗移植機Bを吊り上げた状態で昇降できる昇降手段と、該昇降手段を隣接する畝方向に案内する案内手段と、を設けたことを特徴とする苗移植機移送装置。
【請求項2】
前記昇降手段は上下方向軸心に回動可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機移送装置。
【請求項3】
複数の畝U1〜U4を形成するハウスA内に、畝に苗を移植する苗移植機Bを吊り上げて昇降できる昇降手段と、該昇降手段が移動するとき案内する案内手段Dと、をハウスAの天井1付近に設け、
該案内手段Dは畝U1〜U4に沿ってそれぞれ形成する畝走行案内部2a〜2dと、隣接する畝走行案内部を連結する畝移動案内部3a〜3cとから形成し、
前記畝走行案内部2a〜2dは、前記苗移植機Bが畝Uを跨いで走行しながら苗移植作業を行なうとき、苗移植機Bと連結する前記昇降手段を案内し、
前記前記畝移動案内部3a〜3cは前記苗移植機Bが隣接する畝Uに移動するときに、苗移植機Bを吊り上げた昇降手段を案内する構成としたことを特徴とする苗移植機移送装置。
【請求項4】
前記畝移動案内部3a〜3cは前記畝走行案内部2a〜2dの一端と隣接して対向する畝走行案内部2a〜2dの一端とを連結する構成としたことを特徴とする請求項3記載の苗移植機移送装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−94834(P2006−94834A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287432(P2004−287432)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】