説明

茹麺製造装置

【課題】 茹麺製造装置において、高い製造能力を一定に保ちながら、茹時間を広範囲、且つ、無段階に設定できる茹装置を提供する。
【解決手段】 前工程から切り出された麺1は、麺投入ホッパー2を経て、茹槽3内に配設された無端状の茹バスケットコンベアー4に担設された茹バスケット6に収納される。茹であがった麺1は麺排出ホッパー7を経て、次工程の冷却バスケット8に収納される。麺投入ホッパー2と麺排出ホッパー7を適宜揺動し、また、麺1を茹バスケットコンベアー4の途中からも投入できるようにして、麺1の受け渡しを過不足なく同期して行うと共に、設定茹時間を広範囲、且つ、無段階に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茹麺を連続的に製造する茹麺製造装置に係わり、一定の製造能力を保ちながら、設定茹時間を広範囲、且つ、無段階に変更できる茹麺の茹装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一定サイズの茹槽に限定される茹装置において、設定茹時間の変更は、製造能力を増減して行うのが一般的である。一定の製造能力を保ちながら、設定茹時間を変更する茹装置としては、図3、および、図4に示すものが知られている。
【0003】
図3において、茹装置と同調している前工程の麺機から定ピッチで切り出されてくる麺1は、定位置に固定された麺投入ホッパー2を経て、茹槽3内の無端状のチェーン、および、複数のスプロケット5で構成される茹バスケットコンベアー4に定ピッチで連続して取り付けられている茹バスケット6に受け渡される。最大設定茹時間をT、そのときの茹バスケットコンベアー4の搬送速度をV、設定茹時間をt(但し、無理数となるtは除く。以下、全ての説明文も同じ)、そのときの茹バスケットコンベアー4の搬送速度をvとする。茹時間をtにするときは、製造能力が一定なので、vをVのT/t倍に増速する。このとき、麺投入ホッパー2は定位置に固定されているので、tが、Tの約数となる茹時間に設定される場合に限り、前工程から切り出されてくる麺1は、VのT/t倍の速度で搬送されてくる茹バスケット6の内、t/Tの割合の茹バスケット6に必然的に過不足なく同期して受け渡しされる。また、湯面レベル9は常に一定に保たれている。
【0004】
図4において、茹装置と同調している前工程の麺機から切り出されてくる麺1は、定位置に固定された麺投入ホッパー2を経て、全ての茹バスケット6に過不足なく同期して受け渡される。茹バスケット6の移動は、図3の装置のように無端状のチェーンで構成された茹バスケットコンベアー方式ではなく、各々独立した複数の茹バスケット6が、麺投入ホッパー2 〜 茹コンベアー4等による茹区間 〜 麺排出ホッパー7 〜 戻しコンベアー5等による茹バスケット戻し区間 〜 麺投入ホッパー2を循環して移動するように構成された装置で行われる。設定茹時間は、茹区間に配設された茹コンベアー4の搬送速度を増減して無段階に変更することができる。また、湯面レベル9は常に一定に保たれている。
【0005】
図3、図4の装置共、茹であがった麺1は、茹バスケット6から定位置に固定された麺排出ホッパー7を経て、茹装置の製造能力と同調している次工程の冷却バスケット8に過不足なく同期して受け渡される。尚、茹バスケット6は、周知の通り、各々に蓋を担持しており、麺1を受け渡すときは適宜開閉できるようになっている。
【発明が解決しょうとする課題】
【0006】
ところで、図3に示す装置において、tは、Tの約数に限定されるので、段階的なtとなり、無段階に変更することはできないうえ、当然のことながら、Tの1/2を超えることはできず、狭い範囲に限定される。
また、一定の製造能力を保ちながら、tを変更するには、vを、VのT/t倍に増速しなくてはならない。実際の茹装置の製造能力は、4000食/時間、Tは720秒程度であることを勘案すると、T/tの値が大きいと、つまり、tが短時間であると、vは、装置の機械的特性や、麺の投入時、排出時の受け渡し精度の許容範囲を超えてしまうので、実用上、Tが720秒の場合、tは180秒が限度となり、これ以下に茹時間を短縮することは困難である。
【0007】
図4に示す茹装置は、無段階に設定茹時間を変更できるが、各々独立した複数の茹バスケットが、各々の工程を同期しながら循環して移動する複雑な構造なので、製造能力が低いものに限定されるうえ、安定性に欠け、設備費も高い。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、単純な構造でありながら、高い製造能力を一定に保ち、設定茹時間を広範囲、且つ、無段階に変更することが可能であり、トラブルが少なく、設備費も安価な茹装置を提供することを目的としている。
【問題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、従来は定位置に固定されている麺投入ホッパー、および、麺排出ホッパーを適宜揺動することによって、従来装置の設定茹時間が最大設定茹時間の約数に限定されている制約を取り除き、設定茹時間を無段階に変更できるようにするものである。
前記と同じく、製造能力を一定とした場合、最大設定茹時間をT、そのときの茹バスケットコンベアーの搬送速度をV、設定茹時間をt、そのときの茹バスケットコンベアーの搬送速度をvとする。tを変更するときは、vをVのT/t倍に増速する。このとき、麺投入ホッパーを茹バスケットコンベアーの進行方向の前後に適宜揺動すると、tがTの約数でなくても、前工程から切り出された麺は、過不足なく同期して茹バスケットに受け渡される。これにより、tがTの約数である制限が取り除かれるので、tはTまでの間、無段階に変更することができる。
前工程から切り出された麺が、茹バスケットに投入されようとするとき、麺投入ホッパーを、麺投入ホッパーの中心から最も近い距離にある茹バスケットに投入できる位置まで揺動すると、麺は、tがTの約数でないときも、VのT/t倍の速度で搬送されてくる茹バスケットの内、t/Tの割合の茹バスケットに必然的に過不足なく同期して受け渡しされる。また、麺投入ホッパーが揺動するとき、麺投入ホッパーの先端が動く最大距離は、茹バスケットの取り付けピッチの範囲内に必然的に収まるので、麺投入ホッパーの揺動角度は小さく収まる。従って、麺投入ホッパーの勾配が設定以上に緩くなることはないので、麺が麺投入ホッパーに詰まる等、麺の受け渡し精度に支障を及ぼすことはない。
また、茹であがった麺を茹バスケットから、茹装置の製造能力と同調している次工程の冷却バスケットに麺を受け渡す際も、麺投入ホッパーと同様に、麺排出ホッパーを適宜揺動するので、茹バスケットから排出された麺は、全ての冷却バスケットに過不足なく同期して受け渡しされる。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、前工程の麺機から切り出された麺を、茹槽内に配設された茹バスケットコンベアー途中の茹バスケットにも受け渡して、短い設定茹時間に対応できるようにし、設定茹時間の範囲を広くするものである。これにより、茹バスケットコンベアーの搬送速度を低く抑えることができるので、安定した信頼性の高い装置となる。茹バスケットコンベアーの途中に担設する三対のスプロケットで構成されるコンベアー軌跡変更ユニットを、茹槽内を水平に移動させて、茹バスケットコンベアーの軌跡の変更を行い、前工程から切り出された麺が、茹バスケットコンベアーの二ヶ所の位置に受け渡されるようにする。受け渡し位置の選択は、設定茹時間の長短によって行う。尚、茹バスケットコンベアーの軌跡を変更しても、無端状の茹バスケットコンベアーの全長は変わらないのでコンベアーチェーンのテンション調整は不要である。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明により、前工程の麺機から切り出された麺を、茹バスケットコンベアーの二ヶ所の位置に投入できるようになっているが、装置の構造上、各々の位置で茹バスケットのレベルが異なるので、それに応じて茹槽の湯面レベルを各々適当とされるレベル、即ち、麺を投入する位置において、茹バスケットの深さの1/2程度のレベルに周知の装置で制御するものである。これは湯面レベルを一定に保ち、麺を投入する位置における茹バスケットのレベルを機械構造的に変えるのに比べて格段に単純で、且つ、安価である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のごとく、麺投入ホッパーと麺排出ホッパーを適宜揺動すること、また、設定茹時間によって、茹バスケットコンベアーの搬送速度、前工程から切り出される麺の投入位置、および、茹槽の湯面レベルを適宜設定すると言う極めて単純なものである。従って安価な設備費でありながら、高い製造能力を一定に保ちつつ、茹時間を広範囲、且つ、無段階に設定することができる装置となっている。茹麺製造の業界においては、このような茹装置が切望されているにもかかわらず、未だ実施例は無い。本発明はその切望に応えるものである。
茹麺の品質は、麺の太さ、主原料である小麦粉の品種等により、微妙に茹時間を設定できるかどうかによって大きく左右される。従来の茹装置のように限定された段階的な茹時間の設定では、高品質の茹麺を製造することは非常に困難である。
本発明は広範囲、且つ、無段階で微妙に茹時間を設定できるので、多品種、高品質の茹麺を大量生産することが可能である。従って、高品質で安価な茹麺を消費者に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面の図1、および、図2にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
図1、および、図2は、本発明による茹装置の概要構成を示し、図1は、比較的短い茹時間を要する場合の状態を、図2は、比較的長い茹時間を要する場合の状態を示している。
【0014】
図1において、この茹装置は、茹槽3内に、無端状のチェーン、および、複数のスプロケット5で構成された茹バスケットコンベアー4を配設している。茹バスケットコンベアー4には、麺1を収容する茹バスケット6が、定ピッチで連続的に取り付けられている。茹バスケット6は、周知の通り、各々に蓋を担持しており、麺1を受け渡すときは適宜開閉できるようになっている。茹装置と同調している前工程の麺機から定ピッチで切り出された麺1は、麺投入ホッパー2を経て、茹バスケット6に受け渡され、茹槽3で茹でられた後、麺排出ホッパー7を経て、茹装置の製造能力と同調している次工程の冷却バスケット8へと受け渡される。
一般に茹麺の茹時間は、秒単位で管理され、60秒〜720秒(1分〜12分)なので、以下、この実際の数字を使って、本発明の茹装置を具体的に説明する。
一定のサイズの茹槽3に限定される茹装置においては、湯に浸かっている部分の茹バスケットコンベアー4の長さは、最大設定茹時間720秒を確保できる長さに設定する。茹バスケットコンベアー4の搬送速度の最高速度には、機械特性、および、麺の投入時、排出時の乗り移り精度からして限度がある。本発明では、設定茹時間が比較的短いとき、茹バスケットコンベアー4の搬送速度を低く抑えるため、前工程の麺機から切り出された麺1を、茹バスケットコンベアー4の途中の茹バスケット6に受け渡しできるようにしている。茹バスケットコンベアー4の途中には、三対のスプロケット11、12、13で構成されるコンベアー軌跡変更ユニット10を備えている。コンベアー軌跡変更ユニット10は、茹槽3内を水平に移動して茹バスケットコンベアー4の軌跡を変更し、図1、または、図2に示す位置に設定される。具体的には、設定茹時間が60秒〜180秒の場合は図1に示す位置に、180秒〜720秒の場合は図2に示す位置に各々設定される。
【0015】
前記と同じく、製造能力を一定とした場合、最大設定茹時間をT、そのときの茹バスケットコンベアー4の搬送速度をV、設定茹時間をt、そのときの茹バスケットコンベアー4の搬送速度をvとすると、vは、VのT/t倍となる。
tがTの約数のとき、茹バスケット6は、前工程から定ピッチで切り出された麺1に対して、一定の位置に同期して搬送されてくるので、麺投入ホッパー2を麺投入の中心の位置に固定した状態であっても、麺1は、茹バスケット6に過不足なく同期して受け渡される。
図1においては、Tは180秒であるので、その約数となるtは60秒、90秒、180秒となり、このときのvは、各々Vの3倍、2倍、1倍となり、また、麺1が収容される茹バスケット6の割合はt/T、言い換えれば、T/t個毎、つまり各々3個毎、2個毎、1個毎の茹バスケット6に麺1が収容される。
tがTの約数でないとき、麺投入ホッパー2を麺投入の中心の位置に固定した状態では、茹バスケット6は麺1に対して一定位置に同期しないので、麺1を茹バスケット6に受け渡すことはできない。
本発明は、tがTの約数でないときにおいても、麺投入ホッパー2を適宜揺動して、麺1が茹バスケット6に過不足なく同期して受け渡しできるようになっている。前工程から切り出された麺1が、茹バスケット6に投入されようとするとき、麺投入ホッパー2を、麺投入ホッパー2の中心から、最も近い距離にある茹バスケット6に投入できる位置まで揺動して麺1を投入すると、麺1は、VのT/t倍の速度で搬送されてくる茹バスケット6の内、t/Tの割合の茹バスケット6に必然的に過不足なく同期して受け渡される。
具体的には、図1の状態におけるTは180秒、ここで、例えば、tを66秒に設定すると、vはVの180/66倍(30/11倍)となり、麺1は11/30の割合、言い換えれば、30個の茹バスケット6の内、11個に過不足なく同期して受け渡される。
また、麺投入ホッパー2が揺動するとき、麺投入ホッパー2の先端が動く最大距離は、茹バスケット6の取り付けピッチの範囲内に必然的に収まるので、麺投入ホッパー2の揺動角度は小さく収まる。従って、麺投入ホッパー2の勾配が設定以上に緩くなることはないので、麺1が、麺投入ホッパー2に詰まる等、麺の受け渡し精度に支障を及ぼすことはない。
【0016】
図2の状態におけるTは720秒である。図1の場合と同じく、tが720秒の約数となる180秒、240秒、360秒、720秒のときは、麺投入ホッパー2を定位置に固定、tがTの約数でないときは、麺投入ホッパー2を適宜揺動して、茹バスケット6に過不足なく同期して麺1を受け渡しする。このとき、vをVのT/t倍にすること、また、麺1が、t/Tの割合の茹バスケット6に過不足なく同期して受け渡されることは図1の場合と同じである。
【0017】
次工程の冷却装置は、茹装置の製造能力と同調しており、そこに配設された冷却バスケットコンベアーには、冷却バスケット8が連続して定ピッチで取り付けられている。茹バスケット6に収容されている茹あがった麺1は、麺排出ホッパー7を経て、冷却バスケット8に受け渡される。麺排出ホッパー7を、麺投入ホッパー2と同様に定位置に固定、もしくは、適宜揺動させて、麺1を過不足なく同期して全ての冷却バスケットに受け渡す。
【0018】
本発明では、設定茹時間帯の長短によって、コンベアー軌跡変更ユニット10を水平に移動して、茹バスケット6の軌跡を変更するが、図1と図2に示すように、麺投入ホッパー2の位置における茹バスケット6の軌跡のレベルは、装置の構造上、差異がある。ここでは図示していないが、本発明では、それに応じて湯面レベル9を、理想とされる茹バスケット6の深さの1/2程度のところに周知の制御装置で設定するようになっている。これは湯面レベル9を一定に保ち、麺を投入する位置における、茹バスケット6のレベルを機械構造的に変えるのに比べて格段に単純で、且つ、安価である。
尚、湯面レベル9に応じて、麺投入ホッパー2は上下する構造となっている。
【0019】
以上のように、茹バスケット6に対する麺1の投入位置を適宜設定し、また、麺投入ホッパー2、および、麺排出ホッパー7を適宜揺動することによって、高い製造能力を保ちながら、設定茹時間を広範囲、且つ、無段階に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態装置において、茹時間が短い場合の概要構成を示す。
【図2】本発明の実施形態装置において、茹時間が長い場合の概要構成を示す。
【図3】従来の茹装置の一例の概略を示す。
【図4】従来の茹装置の他例の概略を示す。
【符号の説明】
【0021】
1 麺
2 麺投入ホッパー
3 茹槽
4 茹バスケットコンベアー
5 スプロケット
6 茹バスケット
7 麺排出ホッパー
8 冷却バスケット
9 湯面レベル
10 コンベアー軌跡変更ユニット
11 スプロケット
12 スプロケット
13 スプロケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茹麺製造装置の茹装置において、製造能力を一定に保ちながら、茹時間を無段階に設定するため、茹槽内に配設された無端状のチェーンに定ピッチで連続して取り付けられている茹バスケットで構成される茹バスケットコンベアーの速度を、茹時間の設定に応じて変更すると共に、
茹装置と同調している前工程の麺機から定ピッチで切り出されてくる麺を、茹バスケットに過不足なく同期して受け渡しするため、茹バスケットコンベアーの進行方向の前後に適宜揺動する麺投入ホッパーと、
茹バスケットに収容された茹であがった麺を、茹装置と同調している次工程の冷却バスケットへ過不足なく同期して受け渡しするため、冷却バスケットの進行方向の前後に適宜揺動する麺排出ホッパーを備えることを特徴とした茹装置。
【請求項2】
本発明の茹装置は、茹時間の設定範囲を広くするため、前工程の麺機から切り出された麺を、茹槽内に配設された茹バスケットコンベアーの途中の茹バスケットにも受け渡しを行う。そのため、茹バスケットコンベアーの途中に担設する三対のスプロケットで構成されるコンベアー軌跡変更ユニットが、茹槽内を水平に移動して、茹バスケットコンベアーの軌跡を変更する装置を備えることを特徴とした茹装置。
【請求項3】
本発明の茹装置は、前項に記したように、茹時間の設定範囲を広くするため、茹バスケットコンベアーの軌跡を変更するが、その際、茹槽の湯面レベルを麺投入に最適なレベルに設定する装置を備えることを特徴とした茹装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−101109(P2009−101109A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299820(P2007−299820)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(507382429)
【Fターム(参考)】