説明

草刈機

【課題】本発明は、集草容器を昇降リンクで上昇させた位置に確実に維持するためにロック部材を設けるに当たって、支持フレームや昇降リンクに殊更補強を施すこともなく、又、ロック部材を邪魔にならないように配置することを意図したものである。
【解決手段】車体後部の支持フレーム31と昇降リンク33a,33bとの間に介装された油圧シリンダ34のシリンダ本体34b又はピストンロッド34aの先端部の一方に、向き変更可能なストッパー73を備えたロック部材70を枢支連結し、昇降リンク33a,33bを上昇させた状態で、ストッパー73を油圧シリンダ34のシリンダ本体34b又はピストンロッド34aの先端部の他方に接当させることで、ロック部材70により油圧シリンダ34の収縮を阻止し、ロック部材70を格納するときはストッパー73を機体内方側に向けようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部にリンク機構を介して備えた集草容器を、油圧シリンダの駆動により昇降するように構成した草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されているように、草刈機において、車体後部の支持フレーム(固定フレーム33)に昇降自在に連結された左右の昇降リンク(昇降アーム51,52)と、前記昇降リンク51,52に支持された集草容器31と、前記支持フレーム33と左右の昇降リンク51,52との間に介装された左右の油圧シリンダ34とを備え、前記左右の油圧シリンダ(昇降シリンダ34)の伸縮作動により前記左右の昇降リンク51,52を介して前記集草容器31を昇降させるように構成したものが知られている(括弧内及び符号は特許文献1に記載の名称及び符号に対応する)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−278782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記油圧シリンダを伸長させて集草容器を上昇させた状態を確実に維持するには、油圧シリンダを介在させている支持フレームと昇降リンクとの間を突っ張るロック部材で支えることが考えられる。この場合、例えば、油圧シリンダの油が不測にリークすると、ロック部材に全荷重が加わるので、ロック部材を取り付けている箇所の支持フレーム部分や昇降リンク部分に集中荷重が加わって変形する虞があるので、その部分に補強を施した上でロック部材を取り付ける必要がある。
【0005】
本発明の目的は、集草容器を昇降リンクで上昇させた位置に確実に維持するためにロック部材を設けるに当たって、支持フレームや昇降リンクに殊更補強を施すこともなく、且つ、ロック部材を邪魔にならないように配置した草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔第1発明の構成〕
本第1発明は、車体後部の支持フレームに昇降自在に連結された左右の昇降リンクと、前記昇降リンクに支持された集草容器と、前記支持フレームと左右の昇降リンクとの間に介装された左右の油圧シリンダとを備え、前記左右の油圧シリンダの伸縮作動により前記左右の昇降リンクを介して前記集草容器を昇降させるように構成した草刈機において、
前記油圧シリンダのシリンダ本体又はピストンロッドの先端部の一方に、機体左右方向の横軸芯周りに揺動自在にロック部材を備え、
前記ロック部材の長手方向に沿った軸芯周りに機体内方側に向く第1姿勢及び機体前後方向で前記油圧シリンダに向く第2姿勢に姿勢変更自在なストッパーを、前記ロック部材の先端部に備えて、
前記ストッパーが第1姿勢に操作された状態で、前記ロック部材を前記油圧シリンダから離れた格納位置に保持可能な保持部を備え、
前記ストッパーを第2姿勢に操作し、前記ロック部材を前記油圧シリンダに沿った作用位置に操作して、前記ストッパーを前記油圧シリンダのシリンダ本体又はピストンロッドの先端部の他方に接当させることによって、前記ロック部材により前記油圧シリンダの収縮を阻止可能に構成してある。
【0007】
〔第1発明の作用〕
本第1発明によると、昇降リンクが下降しないように突っ張るロック部材を、その一端側を油圧シリンダのシリンダ本体又はピストンロッドの先端部に取り付けて、機体左右方向の横軸芯周りに揺動自在に支持し、他端側に向き変更可能なストッパーを備え、油圧シリンダを伸長させた状態で、ロック部材を油圧シリンダに沿わせて前記ストッパーを前記シリンダ本体又はピストンロッドの先端部に接当させて、ロック部材をシリンダ本体と伸長させたピストンロッドの先端部との間で突っ張るようにすることによって、油圧シリンダの収縮を阻止するようにした。
【0008】
本第1発明によると、ストッパーを第1姿勢に操作した状態で、ロック部材を格納位置に保持することができる。この状態において、ストッパーは機体内方側に向く第1姿勢に操作されており、機体外方側に突出する状態となっていないので、草刈作業時や移動走行時等において、ストッパーが邪魔になるようなことがない。
【0009】
本第1発明によると、ロック部材を使用する場合、ロック部材を保持部から外して、ストッパーを第2姿勢に操作する。この状態において、ストッパーは油圧シリンダに向いた後向き(又は油圧シリンダに向いた前向き)となるので、ロック部材を油圧シリンダに向けて揺動させて油圧シリンダに沿った作業位置に操作すれば、ストッパーを油圧シリンダのシリンダ本体又はピストンロッドの先端部に無理なく接当させることができる。これにより、ロック部材により油圧シリンダの収縮を阻止する状態を得ることができる。
【0010】
〔第1発明の効果〕
第1発明によれば、油圧シリンダのシリンダ本体とピストンロッドの先端部との間を直接ロック部材で突っ張りをしているので、油圧シリンダの取付部以外の本来の昇降リンクに対して補強を施こさなくても油圧シリンダの収縮(昇降リンクの下降)を阻止することができた。
【0011】
本第1発明によると、ロック部材の格納位置において、ストッパーが機体内方側に向く第1姿勢に操作されており、草刈作業時や移動走行時等においてストッパーが邪魔になるようなことがない点、並びに、ロック部材を作用位置に操作する場合、ストッパーを第2姿勢に操作することにより、ストッパーを油圧シリンダのシリンダ本体又はピストンロッドの先端部に無理なく接当させることができる点により、作業性及び操作性の良好なロック部材を得ることができた。
【0012】
〔第2発明の構成〕
第2発明は、第1発明の構成において、前記ロック部材を伸縮自在に構成して、前記ストッパーの第1姿勢及び前記ロック部材の収縮状態において、前記ロック部材を前記格納位置に保持可能に、前記保持部を構成し、前記ストッパーの第2姿勢、前記ロック部材の伸長状態及び作用位置において、前記ストッパーを前記油圧シリンダのシリンダ本体又はピストンロッドの先端部の他方に接当させることによって、前記ロック部材により前記油圧シリンダの収縮を阻止可能に構成してある。
【0013】
〔第2発明の作用効果〕
第2発明によれば、ロック部材を収縮状態と伸長状態とに伸縮できるようにして、格納時には収縮させた状態でロック部材を格納位置に保持することができるので、ロック部材を小スペースでコンパクトに格納でき、より一層邪魔にならないように格納できるに至った。
【0014】
〔第3発明の構成〕
第3発明は、第1発明または第2発明の構成において、前記ストッパーを、一対のアーム部と前記一対のアーム部の間に形成された空間部とを備えたU字状に構成して、前記第1姿勢において、前記ストッパーのアーム部及び空間部が機体内方側に向き、前記第2姿勢において、前記ストッパーのアーム部及び空間部が機体前後方向に向き、且つ、前記作用位置において、前記ストッパーの空間部に前記油圧シリンダのピストンロッドが入り込むように構成してある。
【0015】
〔第3発明の作用効果〕
第3発明によれば、ストッパーに一対のアーム部の間に形成された空間部に油圧シリンダのピストンロッドが入り込むようにして、油圧シリンダのピストンロッドの際で突っ張ることができるので、ストッパーのアーム部をロック部材の支持軸線に近づけた状態で突っ張ることができ、ストッパーのアーム部がロック部材の支持軸線から大きく離れた箇所で支持することによる偏過重が加わることが無く、良好に油圧シリンダの収縮を阻止することができるに至った。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】草刈機の全体側面図である。
【図2】草刈機の全体平面図である。
【図3】エンジンから動力取り出し機構への伝動を示す部分側面図である。
【図4】エンジンから動力取り出し機構への伝動を示す部分正面図である。
【図5】動力取り出し機構の縦断側面図である。
【図6】動力取り出し機構の別実施の形態を示す部分縦断側面図である。
【図7】草刈り装置の平面図である。
【図8】草刈り装置の刈り刃の取り付け構造を示す一部縦断側面図である。
【図9】刈り刃の取り付け部の組立て分解図を示す一部縦断側面図である。
【図10】シャーピン及び押さえスプリングの収納ケースを示す平面図である。
【図11】シャーピン及び押さえスプリングの収納ケースを示す一部縦断側面図である。
【図12】シャーピン及び押さえスプリングの収納ケースを示す分解斜視図である。
【図13】草刈り装置の刈り草排出ダクトと搬送ダクトとの接続部の構造を示す部分側面図である。
【図14】草刈り装置の刈り草排出ダクトと搬送ダクトとの接続部の取り外し状態を示す部分側面図である。
【図15】集草容器の上昇状態を示す側面図である。
【図16】集草容器の上昇排出状態を示す側面図である。
【図17】集草容器のリンク構造を示す部分側面図である。
【図18】集草容器のリンク構造を示す部分平面図である。
【図19】集草容器のリンク構造の部分を示す分解斜視図である。
【図20】昇降シリンダのロック部材を示す側面図である。
【図21】昇降シリンダのロック部材を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は草刈機の全体側面図、図2は草刈機の全体平面図である。これらの図に示すように、この草刈機は、左右一対の操向操作自在な前車輪1,1と左右一対の駆動自在な後車輪2,2とによって自走するよう構成され、かつ車体後部に設けた運転座席3が装備された運転部を有した乗用型の自走車を備え、この自走車の車体フレーム4の前後輪間にリンク機構12を介して連結された草刈り装置20を備え、前記自走車の車体フレーム4の後部に支持フレーム31を介して支持される集草容器32が装備された刈草回収装置30を備えている。
【0018】
前記自走車は、エンジン5の出力を図1に示す伝動軸84より静油圧式無段変速装置85、ミッションケース86及び左右のチェーンケース87に内蔵した伝動機構を介して左右の後車輪2に伝達して走行するように構成されている。
【0019】
図3、図4に示すように、前記自走車は、車体前部に設けたエンジン5と、このエンジン5の下方に設けた動力取り出し機構40とを備えている。エンジン5の出力はベルト伝動機構41を介して動力取り出し機構40に伝達される。ベルト伝動機構41は、エンジン5の出力軸5aに取り付けた出力プーリ42と、揺動自在なテンションアーム43に支持されたテンションプーリ44と、動力取り出し機構40への入力プーリ45と、これらプーリ43,44,45に亘って巻回された伝動ベルト46とにより構成されている。
【0020】
前記動力取り出し機構40は次のように構成されている。図5に示すように、伝動ケース88内に油圧操作式の作業クラッチ47を備えており、伝動ケース88にボールベアリング89を介して入力プーリ45が回転自在に支持されている。円筒状の入力軸48は伝動ケース88に支持されたボールベアリング90と動力取り出し軸49を保持するボールベアリング91との間に設けられている。円筒状の入力軸48は、前端部が入力プーリ45とスプライン嵌合され、後端部が作業クラッチ47の摩擦板とスプライン嵌合されている。動力取り出し軸49は動力ケース88に取り付けたボールベアリング92と前記円筒状の入力軸48を保持するボールベアリング91に支持されているとともに、作業クラッチ47のクラッチケース93の内周に形成したスプラインに嵌合されている。動力取り出し軸49の前端には、動力取り出し軸49の前端を覆う動力取り出し軸キャップ51を装着している。
【0021】
これにより、入力プーリ45に伝動された動力は、円筒状の入力軸48、作業クラッチ47を経て動力取り出し軸49に伝達される。動力取り出し軸49に伝達された動力は、図1に示す回転軸50を介して草刈り装置20の刈り刃駆動装置22に伝達される。
【0022】
この草刈機は、芝や草を刈り込む草刈り作業を行う。
前記草刈り装置20を昇降させるリンク機構12は、車体フレーム4に上下揺動自在に支持されて互いに連結された左右一対の前揺動リンク13,13と、車体フレーム4に上下揺動自在に支持されて互いに連結された左右一対の後揺動リンク14,14と、前及び後揺動リンク13,14を接続するリンク(図示せず)とを備えている。
【0023】
前記左右一対の前揺動リンク13,13の先端部は、草刈り装置20の前記刈り刃ハウジング21の前部に位置する前連結部材23に連結されている。前記左右一対の後揺動リンク14,14の先端部は、前記刈り刃ハウジング21の後部に位置する後連結部材24に中間リンク24aを介して連結されている。前記左右一対の前揺動リンク13,13の一方にリフトシリンダ15が連動されている。
【0024】
つまり、前記リンク機構12は、前記リフトシリンダ15によって前揺動リンク13,13が揺動操作されると、後揺動リンク14,14も揺動して草刈り装置20が車体フレーム4に対して上下に揺動操作され、刈り刃ハウジング21の前後側に支持された接地ゲージ輪25が地面に接地した下降作業状態と、前記各接地ゲージ輪25が地面から上昇した上昇非作業状態とに昇降する。
【0025】
図7〜図9に示すように、前記草刈り装置20において、動力取り出し軸49の動力が回転軸50を介して刈り刃駆動装置22に伝達されており、刈り刃駆動装置22からギヤ伝動される左右の出力軸16の下部に刈り刃26を備えている。すなわち、出力軸16の下端のカッターホルダー17と押さえスプリング18(皿バネ)との間に刈り刃26を設け、押さえスプリング18の下からカッター締付けボルト19で締め付ける。そして、カッターホルダー17と刈り刃26とにピン孔52,53を形成し、これらのピン孔52,53に亘ってシャーピン54を嵌入してある。これにより、刈り刃26が石や木の根等の硬い異物に衝突したときに、シャーピン54がせん断されるようにして刈り刃26や刈り刃駆動装置22、回転軸50等を保護するようにしてある。尚、図中、符号55は、軸受ボス部56に対する刈芝の巻付き防止と、軸受ボス部56の下端の隙間から、砂やワラ屑などの細かい塵埃が侵入することを阻止するために、出力軸16と一体回転するように出力軸16の下端とカッターホルダー17との間に介装した防塵カバーである。
【0026】
図7、図10〜図12に示すように、刈り刃ハウジング21における前記草刈り装置20の左後方の接地ゲージ輪25の支持部材28に、前記シャーピン54と押さえスプリング18を収容する蓋57を備えた円筒状の収容ケース58を設けてある。収容ケース58に取付板59が固定され、取付板59がボルト29により支持部材28に固定してあり、収容ケース58の中心にボルト60を設けてある。収容ケース58内には、8個のシャーピン54を収容する小ケース61を取り出し自在に設けてある。小ケース61の上に4個の押さえスプリング18を収容してある。蓋57の中心にはボルト孔57aを形成してあり、シャーピン54及び押さえスプリング18を収容ケース58内に収容した状態で蓋57をしてノブ付きナット62で蓋57を締付けて固定する。
作業中に、シャーピン54が折れたときには、エンジン5を止めて、蓋57を開けて、シャーピン54を取り出し、必要なら押さえスプリング18とともに、シャーピン54を交換する。
【0027】
前記草刈り装置20を下降作業状態にして自走車を走行させると、草刈り装置20は、前記刈り刃ハウジング21の内部に刈り刃ハウジング横方向に並んで位置する二枚の刈り刃26を前記刈り刃駆動装置22によって刈り刃ハウジング21の上下向きの軸芯まわりに回転駆動して前記各刈り刃26によって草刈りを行い、刈り草を前記刈り刃26の回転によって発生した風によって刈り刃ハウジング21の上部に位置する刈り草排出ダクト27から排出する。
【0028】
前記刈り草排出ダクト27から排出された刈り草は、前記刈り刃26からの風による搬送作用と、自走車に前記左右一対の後車輪2,2の間を車体前後方向に通して設けてある搬送ダクト6による案内作用とによって前記集草容器32に送り込まれ、この集草容器32によって回収されて貯留される。
【0029】
刈り草排出ダクト27に接続される搬送ダクト6は、下向きに開口したダクト本体部6aと、支点P周りで上下動自在に支持されたダクト下カバー部7とを備えている。ダクト下カバー部7は、支点P周りに揺動する揺動枠8と、揺動枠8に支持された左右の側板7aと、支点P周りに揺動自在に支持された底板7bとを備えている。左右の側板7aは、揺動枠8に外向きに取り付けられたピン8a,8bと、ダクト本体部6aに付設されたピン6bに抜け止め支持されている。側板7aにはピン6bに対して側板7aが揺動できるように円弧状の長孔7cを形成してある。底板7bは支点P周りに揺動自在に支持されているとともに、その前端部が揺動枠8の前側のピン8aに載置支持されている。側板7aには、ピン8a,8bを挿通するためのダルマ孔7dが形成されている。ダルマ孔7dは頭付きピン8a,8bを挿脱できるようにするためのもので、頭付きピン8a,8bをダルマ孔7dから外して側板7aを外すことができるようになっている。揺動枠8の前端には、刈り草排出ダクト27の下縁に当接させるためのピン8cを付設してある。ピン8aと車体フレーム4に取り付けたスプリング支持部9との間にスプリング10を張設して、揺動枠8の前端のピン8cを刈り草排出ダクト27に当接することによってダクト下カバー部7が位置保持され、刈り刃ハウジング21の昇降に伴って、ピン8cを刈り草排出ダクト27に当接した状態でダクト下カバー部7が支点P周りに上下揺動する。
【0030】
前記スプリング支持部9の一端部は機体フレーム4に取り付けた枢支ピン4aを介して回動自在に枢支連結され、他端部には下向きの切欠き凹部9aが形成され、スプリング支持部9の中間部に取り付けたピン9bにスプリング10の上端部が係止されている。
【0031】
前記スプリング支持部9の切欠き凹部9aを機体フレーム4に付設した固定ピン4bに引っ掛けることでスプリング10に張力が作用し、スプリング10を介してダクト下カバー7が持ち上げられ、ピン8cが刈り草排出ダクト27の下縁に当接することでダクト下カバー7の位置が保持される。草刈り装置20の刈り刃ハウジング21が上昇されて刈り草排出ダクト27が上昇すると、ダクト下カバー部7もスプリング10の付勢力により持ち上げられる。
【0032】
スプリング支持部9を固定ピン4bから外してスプリング10を緩めるとダクト下カバー部7が下方に下がる。これにより、揺動枠8のピン8cが刈り草排出ダクト27の下縁より下方に下がるので、草刈り装置20を取り外すときは勿論、草刈り装置20を装着するときに、刈り草排出ダクト27をダクト本体部6aと揺動枠8のピン8cとの間に容易に挿入することができ、草刈り装置20の装着も容易に行うことができる。
【0033】
図1に示すように、前記刈草回収装置30は、前記支持フレーム31の左右側から車体後方向きに上下揺動自在に延出した上下一対の昇降リンク33a,33bと、各昇降リンク33a,33bの遊端側に連結された容器支持体33cとを有したリンク機構33によって、支持フレーム31の上端部と集草容器32の後端部とを連結している。この刈草回収装置30は、前記集草容器32の左右両横側に設けた昇降シリンダ34(油圧シリンダに相当)と、前記集草容器32の後部の下方に設けた一つのダンプシリンダ35とを備えている。昇降シリンダ34のシリンダ本体34bの下端部が、支持フレーム31の下端に接続され、昇降シリンダ34のピストンロッド34aの先端部が、昇降リンク34bに固定されたブラケット34cに接続されている。
【0034】
前記刈草回収装置30は、前記左右一対の昇降シリンダ34,34によって前記リンク機構33を下降操作し、前記ダンプシリンダ35によって集草容器32を回転支軸36の軸芯まわりに下降揺動操作することにより、集草容器32を下降回収状態に操作する。
すると、集草容器32の前部に設けてある刈り草投入口32cが車体前方向きになって前記搬送ダクト6に連通し、搬送ダクト6からの刈り草が集草容器32に刈り草投入口32cから投入される。集草容器32の後部に設けてある刈り草排出口32bに対する蓋体32aの支持アーム39が、この支持アーム39と容器フレーム32fとを連結している連結ボルト39aの軸芯まわりに、前記支持アーム39と前記容器支持体33cとに連結された開閉リンク37によって閉じ側に揺動操作され、前記蓋体32aが閉じ操作されて刈り草排出口32bを閉じ、刈り草と共に集草容器32に流入した搬送風は、集草容器32の壁体の網目から容器外に流出する。これにより、集草容器32は、搬送ダクト6からの刈り草を回収して貯留する。
【0035】
前記容器フレーム32fとその横外側に位置する支持アーム39とは、連結ボルト39aで枢支連結されている。連結ボルト39aは外向きのボルト頭39bが突出している。集草容器32を低位姿勢でダンプシリンダ35を作動させて集草容器32を回転支軸36周りでダンプさせり元に戻したとき、或いは、昇降シリンダ34を作動させて集草容器32を昇降させるべく、昇降リンク33a,33bを昇降させたときは、連結ボルト39aが昇降リンク33a,33bを横切ることになる。このとき、昇降リンク33a,33bが連結ボルト39aのボルト頭39bに引っ掛かって、集草容器32が横揺れしたり、昇降リンク33a,33bに不測の外力が作用して、異音が発生することがある。
【0036】
これを解消するために連結ボルト39aに外側近傍における支持アーム39の外面の長手方向両側にガイド部材63,63を取り付けてある。一対のガイド部材63,63は、四隅に折り曲げ爪94を形成した添え板95に固定してあり、添え板95の中央部にボルト挿通用の孔96を形成してある。添え板95を支持アーム39に嵌め込み連結ボルト39aにより固定することで、添え板95が折り曲げ爪94で位置決めされるようになっている。一対のガイド部材63,63は連結ボルト39a側程、支持アーム39の外面から突出した長いテーパー状に形成してあり、連結ボルト39aのボルト頭39bよりも突出している。これによって、連結ボルト39aが昇降リンク33a,33bを横切るときに昇降リンク33a,33bが支持アーム39に近接しても、昇降リンク33a,33bはガイド部材63に摺接しながら、連結ボルト39aを乗り越えるので、昇降リンク33a,33bは引っ掛かることなく連結ボルト39aを横切る。
【0037】
前記ダンプシリンダ35を作動(伸長作動)させると、集草容器32が、回転支軸36周りに回動するとともに、この動作に伴って、開閉リンク37が作動して支持アーム39が連結ボルト39a周りに回動して蓋体32aが開く。ダンプシリンダ35の逆の作動(収縮作動)で、開閉リンク37が元の位置に移動して蓋体32aが閉じる。
このとき、リンク長や諸々の製作誤差や長年の使用による狂いで蓋体32aがきっちりと閉まらないことがある。
【0038】
これを解消するため、開閉リンク37を支持アーム39との連結軸67の近くで、第1開閉リンク部37aと第2開閉リンク部37bとに2分割し、重合部64,65に長孔64a,64b,65a,65bを形成し、両長孔64a,65a及び64b,65bにボルト66,66で固定してある。ダンプシリンダ35を収縮作動させて蓋体32aが完全に閉まらないときは、ボルト66,66を緩めて蓋体32aを完全に閉じた状態にした後、ボルト66を締めて第1開閉リンク部37aと第2開閉リンク部37bを固定する。これによって、蓋体32aの閉まり具合を調節することができる。
【0039】
図15は前記集草容器32の上昇状態を示す側面図、図16は集草容器32の上昇排出状態を示す側面図である。この図に示すように、前記刈草回収装置30は、前記左右一対の昇降シリンダ34,34によって前記リンク機構33を上昇操作し、前記ダンプシリンダ35によって集草容器32を回転支軸36の軸芯まわりに上昇操作することにより、集草容器32を上昇排出状態に操作する。
すると、集草容器32の前記刈り草投入口32cが車体上方向きになり、前記刈り草排出口32bが車体下方向きになる。前記開閉リンク37が集草容器32の回転支軸36のまわりでの揺動によって前記支持アーム39を開き側に揺動操作し、前記蓋体32aが開き操作されて刈り草排出口32bを開く。これにより、集草容器32は、貯留していた刈り草を刈り草排出口32bからの自然落下によって排出する。
【0040】
前記刈草回収装置30には、集草容器32を昇降シリンダ34で上昇させたときに、集草容器32が下降しないように、昇降シリンダ34のピストンロッド34aの収縮を阻止するロック部材70を備えている。
【0041】
前記ロック部材70は鉄管からなる外筒71と鉄管からなる内筒72とを備えている。外筒71の基端を、ピストンロッド34aの先端部を連結しているブラケット34cに、ピン38(機体左右方向の横軸芯に相当)周りに、機体前後方向に揺動自在に枢着している。外筒71に対してスライド及び回転自在に内筒72を内嵌して、内筒72の先端に馬蹄形のストッパー73を固定してある。
【0042】
前記ストッパー73を形成する板状のストッパー片73aの長手方向一端部を内筒72に固定し、他端部にピストンロッド34aを嵌める略U字状の切欠き凹部74(空間部に相当)を形成してある。切欠き凹部74の両側に、荷重を支持する一対のアーム部73cを形成してある。ストッパー片73aの内筒72を取り付けている中間部には係止孔75を形成し、アーム部73cに補強リブ73bを備えている。
【0043】
前記外筒71の遊端側端部には機体左右方向に係止ピン76を貫通させるためのピン孔71aを穿設してある。外筒71に嵌入している内筒72の基端側端部には、外筒71から内筒72を引き出した伸長状態で、係止ピン76を前記ピン孔71aと共に挿通するためのピン孔72aを形成してある。集草容器32を上昇させて昇降シリンダ34のピストンロッド34aが大きく突出した状態において、前記ストッパー73のアームブ73c及び切欠き凹部74をピストンロッド34aに嵌合させると、両ピン孔71a,72aに係止ピン76が挿通可能な状態、又は、両ピン孔71a,72aが略重合する状態となって、係止ピン76を容易に挿通できる状態になるようにピン孔71a,72aを形成してある。
【0044】
内筒72を外筒71に対して最大に押し込んだ位置よりも少し手前の状態で、且つ、ストッパー73のアーム部73c及び切欠き凹部74の開口部74aが機体内方側に向く第1姿勢にしたときに、前記係止ピン76を前記ピン孔71aと共に挿通できるピン孔72bを形成してある。
前記ストッパー73に形成した係止孔75は円形に形成してある。下側の昇降リンク33bの基部には、係止孔75と嵌合するコの字状の保持部77を付設してある。
【0045】
内筒72を外筒71に最大に押し込んだ状態では、ストッパー73は、保持部77に近づけても保持部77から離れた延長側に位置してある。内筒72を外筒71に最大に押し込んだ状態で、ストッパー73の係止孔75を保持部77の延長線上に位置させた状態で、内筒72を少し引き出すと、保持部77をストッパー73の係止孔75に嵌めることができる。保持部77と係止孔75とが係合した状態で、且つ、ストッパー73のアーム部73c及び切欠き凹部74を機体内方側に向く第1姿勢にすると、前記両ピン孔71a,72bに前記係止ピン76が挿通可能な状態に、両ピン孔71a,72bを重合させることができる。この状態で、係止ピン76をピン孔71a,72bに挿通させてベータピン78で抜け止めをすることで、ストッパー73のアーム部73c及び切欠き凹部74が機体内方側に向く第1姿勢に固定され、ロック部材70が収縮状態に固定されるのであり、ロック部材70が収縮状態で格納位置に保持される。
【0046】
次にロック部材70を格納位置から作用位置に操作する状態について説明する。
図15及び図20に示すように、昇降シリンダ34を伸長させて昇降リンク33a,33bを上昇させた状態において、図20の二点鎖線に示す格納位置のロック部材70に対し、ベータピン78を取り外して係止ピン76を抜き取り、内筒72を上方に少し収縮させて、保持部77からストッパー73(係止孔75)を上方に外す。次に外筒71に対して内筒72を約90度回転させて、ストッパー73のアーム部73c及び切欠き凹部74を、昇降シリンダ34のピストンロッド34aに向いた後向きの第2姿勢に操作する。
【0047】
前述の状態で図20に示すように、ロック部材70をピン38周りに昇降シリンダ34に向かって機体後方に揺動させると、ストッパー73のアーム部73cの間(切欠き凹部74)に昇降シリンダ34のピストンロッド34aが入り込む。次に外筒71に対して内筒72を下方に伸長させ、ストッパー73のアーム部73cを昇降シリンダ34のシリンダ本体34bの上端部に接当させて、係止ピン76をピン孔71a,72aに挿通し、係止ピン76にベータピン78を取り付ける。これにより、ストッパー73のアーム部73c及び切欠き凹部74が第2姿勢に固定され、ロック部材70が伸長状態に固定されるのであり、昇降シリンダ34の収縮(昇降リンク33a,33bの下降)が阻止される。
【0048】
前述のように、ロック部材70をピン38周りに昇降シリンダ34に向かって機体後方に揺動させる場合、先にロック部材70を伸長させてから、次にストッパー73のアーム部73c及び切欠き凹部74を第2姿勢に操作して、この後にロック部材70をピン38周りに昇降シリンダ34に向かって機体後方に揺動させても同じである。
【0049】
〔別実施の形態〕
(1) 図6は動力取り出し機構40の別実施の形態を示す。ボールベアリング79を介して前方動力取り出し軸80を支持したリング部材81を用意し、図5に示す動力取り出し軸キャップ51を外して、前方動力取り出し軸80を入力軸48と動力取り出し軸49との間の空間に挿通して、動力取り出し軸49と前方動力取り出し軸80とをスプライン嵌合する。前記スプライン嵌合をした状態で、リング部材81を入力プーリ45にボルト82で連結する。これにより、作業クラッチ47の入り切り操作により、動力取り出し軸49とともに前方動力取り出し軸80を回転・停止させることができる。
【0050】
(2)図20では、昇降シリンダ34のピストンロッド34aの先端部に、ロック部材70(外筒71)がブラケット34cを介して接続されているが、ロック部材70(外筒71)を、昇降シリンダ34のピストンロッド34aの先端部に直接に揺動自在に取り付けてもよい。
【0051】
(3)図20において、昇降シリンダ34のピストンロッド34aに対して機体後側(図20の紙面右側)に位置するように、ロック部材70(外筒71)をブラケット34c又は昇降シリンダ34のピストンロッド34aの先端部に、機体左右方向の横軸芯周りに揺動自在に取り付けてもよい。このように構成すると、昇降リンク33bにおいてブラケット34cよりも先端側の部分に、保持部77を固定すればよく(格納位置)、ストッパー73のアーム部73c及び切欠き凹部74の第2姿勢が、昇降シリンダ34のピストンロッド34aに向いた前向きとなる。
【0052】
(4)図20において、昇降シリンダ34のシリンダ本体34bの上端部の機体前側(図20の紙面左側)に、ロック部材70(外筒71)を機体左右方向の横軸芯周りに揺動自在に取り付けてもよい。このように構成すると、昇降シリンダ34のシリンダ本体34bの下部の機体前側に、保持部77を固定すればよく(格納位置)、ストッパー73のアーム部73c及び切欠き凹部74をブラケット34c又は昇降シリンダ34のピストンロッド34aの先端部に接当させる。この状態において、ストッパー73のアーム部73c及び切欠き凹部74の第2姿勢が、昇降シリンダ34のピストンロッド34aに向いた後向きとなる。
【0053】
(5)図20において、昇降シリンダ34のシリンダ本体34bの上端部の機体後側(図20の紙面右側)に、ロック部材70(外筒71)を機体左右方向の横軸芯周りに揺動自在に取り付けてもよい。このように構成すると、昇降シリンダ34のシリンダ本体34bの下部の機体後側に、保持部77を固定すればよく(格納位置)、ストッパー73のアーム部73c及び切欠き凹部74をブラケット34c又は昇降シリンダ34のピストンロッド34aの先端部に接当させる。この状態において、ストッパー73のアーム部73c及び切欠き凹部74の第2姿勢が、昇降シリンダ34のピストンロッド34aに向いた前向きとなる。
【0054】
(6)昇降シリンダ34において、昇降シリンダ34のシリンダ本体34bをブラケット34cに接続し、昇降シリンダ34のピストンロッド34aの先端部を支持フレーム31の下部に接続してもよい。このように構成すると、前項(4)又は(5)の構成を採用して、昇降シリンダ34のシリンダ本体34bの下端部の機体前側又は後側に、ロック部材70(外筒71)を機体左右方向の横軸芯周りに揺動自在に取り付ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、集草容器を昇降させる昇降リンクとして左右各一本の昇降リンクで構成したリンク機構でも適用できる。
【符号の説明】
【0056】
31 支持フレーム
32 集草容器
33a 昇降リンク
33b 昇降リンク
34 油圧シリンダ
34a ピストンロッド
34b シリンダ本体
38 機体左右方向の横軸芯
70 ロック部材
73 ストッパー
73c アーム部
74 空間部
77 保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部の支持フレームに昇降自在に連結された左右の昇降リンクと、前記昇降リンクに支持された集草容器と、前記支持フレームと左右の昇降リンクとの間に介装された左右の油圧シリンダとを備え、前記左右の油圧シリンダの伸縮作動により前記左右の昇降リンクを介して前記集草容器を昇降させるように構成した草刈機において、
前記油圧シリンダのシリンダ本体又はピストンロッドの先端部の一方に、機体左右方向の横軸芯周りに揺動自在にロック部材を備え、
前記ロック部材の長手方向に沿った軸芯周りに機体内方側に向く第1姿勢及び機体前後方向で前記油圧シリンダに向く第2姿勢に姿勢変更自在なストッパーを、前記ロック部材の先端部に備えて、
前記ストッパーが第1姿勢に操作された状態で、前記ロック部材を前記油圧シリンダから離れた格納位置に保持可能な保持部を備え、
前記ストッパーを第2姿勢に操作し、前記ロック部材を前記油圧シリンダに沿った作用位置に操作して、前記ストッパーを前記油圧シリンダのシリンダ本体又はピストンロッドの先端部の他方に接当させることによって、前記ロック部材により前記油圧シリンダの収縮を阻止可能に構成してある草刈機。
【請求項2】
前記ロック部材を伸縮自在に構成して、
前記ストッパーの第1姿勢及び前記ロック部材の収縮状態において、前記ロック部材を前記格納位置に保持可能に、前記保持部を構成し、
前記ストッパーの第2姿勢、前記ロック部材の伸長状態及び作用位置において、前記ストッパーを前記油圧シリンダのシリンダ本体又はピストンロッドの先端部の他方に接当させることによって、前記ロック部材により前記油圧シリンダの収縮を阻止可能に構成してある請求項1に記載の草刈機。
【請求項3】
前記ストッパーを、一対のアーム部と前記一対のアーム部の間に形成された空間部とを備えたU字状に構成して、
前記第1姿勢において、前記ストッパーのアーム部及び空間部が機体内方側に向き、
前記第2姿勢において、前記ストッパーのアーム部及び空間部が機体前後方向に向き、且つ、前記作用位置において、前記ストッパーの空間部に前記油圧シリンダのピストンロッドが入り込むように構成してある請求項1又は2に記載の草刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−284112(P2010−284112A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140512(P2009−140512)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】