説明

荷保管用ラックの荷支持装置

【課題】荷収納区画1の左右両隔壁枠2の内側に荷出し入れ方向に長い左右一対の荷受け部材3が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置に免震構造を採用して耐震性を高める。
【解決手段】荷収納区画1の左右両隔壁枠2の内側に、当該荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に長い左右一対の荷受け部材3が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置であって、前記荷受け部材3は、前記隔壁枠2に取り付けられた支持部材7に、水平支点軸12の周りで揺動する前後一対の吊下用平行リンク9a,9bを介して荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に揺動自在に吊り下げられ、当該荷受け部材3を、前記吊下用平行リンク9a,9bの揺動を伴う揺動可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段10が併設された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷収納区画の左右両隔壁枠の内側に、当該荷収納区画の前後奥行き方向に長い左右一対の荷受け部材が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の荷保管用ラックにおいて、地震時にラックが荷収納区画の前後奥行き方向(荷出し入れ方向)に揺れることによって、保管中の荷が当該ラックの通路側(ラックに沿って設けられた入出庫用クレーンの走行通路のある側)へ荷受け部材上を滑動して落下する事故が発生している。このような事故を未然に防止する一つの手段として、各荷収納区画が備える左右一対の荷受け部材を免震構造とすることが考えられている。例えば特許文献1に記載されるように、この種の荷保管用ラックの荷支持装置における免震構造は、荷収納区画の左右両隔壁枠から連設された支持部材に対して各荷受け部材をその長さ方向(荷収納区画の前後奥行き方向)にスライド可能に支持し、荷受け部材をスライド可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段として、支持部材の横側方に荷受け部材長さ方向と平行向きのコイルバネを設けるものであった。
【特許文献1】特許第3729316号公報(特開2000−226111号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された従来の構成における免震構造では、荷受け部材の全長と同一長さのレール状の支持部材と荷受け部材側に軸支されたローラーとで荷受け部材を水平前後方向にスライド可能に支持する必要があり、荷支持装置全体が大型でコスト高になる問題点があった。特に付勢手段として、特許文献1に記載されるような荷受け部材と平行な水平向きのコイルバネを利用する付勢手段を採用したのでは、十分な揺れの減衰効果が得られないばかりでなく、更に部品点数が多くなり、荷支持装置全体がより大型でコスト高になるため、実用的ではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る荷保管用ラックの荷支持装置を提供することを目的とするものであって、請求項1に記載の荷保管用ラックの荷支持装置は、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、荷収納区画1の左右両隔壁枠2の内側に、当該荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に長い左右一対の荷受け部材3が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置であって、前記荷受け部材3は、前記隔壁枠2に取り付けられた支持部材7に、水平支点軸12の周りで揺動する前後一対の吊下用平行リンク9a,9bを介して荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に揺動自在に吊り下げられ、当該荷受け部材3を、前記吊下用平行リンク9a,9bの揺動を伴う揺動可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段10が併設された構成となっている。
【0005】
上記構成の本発明を実施するについて、具体的には請求項2に記載のように、前記支持部材7と吊下用平行リンク9a,9bとを垂直な滑りプレート16を介して互いに当接させるように構成することができる。
【0006】
又、請求項3に記載のように、前記付勢手段10には、前後一対の吊下用平行リンク9a,9bの内、少なくとも一方のリンク9aに組み込まれた付勢ユニット11Aを設け、この付勢ユニット11Aは、前記リンク9aの上下両端水平支点軸12,13の内の少なくとも一方の水平支点軸(実施形態では上側水平支点軸12)と、この水平支点軸12に外嵌された粘弾性体14と、この粘弾性体14に外嵌する保持用筒状体15とから構成し、粘弾性体14が外嵌された水平支点軸12は、粘弾性体14との相対回転が不能な角柱状(実施形態では四角軸部12b)に構成すると共に、前記リンク9aと当該リンク9aを軸支する相手側(即ち、支持部材7又は荷受け部材3)との何れか一方(実施形態では支持部材7)に固定し、保持用筒状体15は、粘弾性体14との相対回転が不能な角筒状に構成すると共に、前記リンク9aと当該リンク9aを軸支する相手側(即ち、支持部材7又は荷受け部材3)との内、前記角柱状の水平支点軸12が固定された側とは反対側(実施形態ではリンク9a)に固定することができる。
【0007】
又、上記請求項3に記載の構成を採用する場合、請求項4に記載のように、前記付勢ユニット11Aの角柱状の水平支点軸12は支持部材7から水平横向きに固定突設して前記リンク9aを貫通させ、前記保持用筒状体15は前記リンク9aの支持部材7のある側とは反対側に固定突設することができる。この場合、請求項5に記載のように、前記リンク9aは、当該リンク9aの揺動方向に平坦な垂直板材から構成し、当該リンク9aと荷受け部材3とを軸支する水平支点軸13は、前記リンク9aから固着突設した丸パイプ材13aから構成し、この丸パイプ材13aの先端部に荷受け部材3を相対回転自在に支承することができる。更に、請求項6に記載のように、前記荷受け部材3は、前記隔壁枠2のある側が開放したコ形材から構成し、この荷受け部材3と前記リンク9aとの軸支位置には、前記水平支点軸13の丸パイプ材13aの先端部が相対回転自在に貫通する角パイプ材17を荷受け部材3の内側空間に嵌合固定し、当該角パイプ材17からの前記丸パイプ材13aの抜け止め具17eを設けることができる。
【0008】
又、請求項7に記載のように、荷収納区画1の左右両隔壁枠2には、前後一対の支柱材4a,4bを設け、各支柱材4a,4bは互いに対向する内側が開放した横断面形状に構成し、前記支持部材7は、前後両支柱材4a,4bの側壁板部4cに取り付けることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る荷保管用ラックの荷支持装置によれば、ラックが地震発生時に荷収納区画の前後奥行き方向(荷受け部材の長さ方向)に揺れ動いたとき、ラックと一体に前後に揺れ動く支持部材と荷を支持している荷受け部材との間に、当該荷受け部材を支持している前後一対の吊下用平行リンクの前後方向の平行揺動運動を伴って、付勢手段の付勢力に抗しての相対移動が生じ、荷を支持している荷受け部材がラックと一体に同一速度、同一振幅で前後方向に揺れ動くことがなくなる。従って、開放された通路側(前方)にラックが揺れ動いたときに荷受け部材及び当該荷受け部材上の荷が一体に前方に揺れ動くことにより、慣性で荷が荷受け部材上を通路側へ滑動し、場合によっては通路側へ落下してしまう恐れがなくなり、所期の免震効果が得られる。この支持部材と荷受け部材との間の前後方向の相対移動は、付勢手段の付勢力に抗しての吊下用平行リンクの平行揺動運動で実現しており、相対移動後は当該付勢手段の付勢力が荷受け部材を原点位置に自動復帰させるので、荷受け部材上で荷が滑動しない限り荷の位置が前後方向に不測に変動することはなく、安全に荷を継続保管することができる。
【0010】
而して、上記請求項1に記載の本発明の構成によれば、荷受け部材を荷収納区画の前後奥行き方向に移動可能に支持する手段として、垂直面に沿って前後方向に揺動する前後一対の吊下用平行リンクを利用したので、従来のような荷受け部材と同一長さのレール状の支持部材のような大型の部品やこの支持部材上に荷受け部材を移動自在に支持する複数のローラーなどが不要になり、荷支持装置全体をシンプル且つ軽量に構成することができる。しかも付勢手段により荷受け部材を、前記吊下用平行リンクが垂直に垂下する定位置に付勢保持するように構成したので、単に荷受け部材を前後方向に揺動自在に吊り下げたものと比較して、荷受け部材(荷)の前後方向の揺れを速やかに減衰させて免震効果を高めることができる。勿論、水平に前後揺動する平行リンクで荷受け部材を支持する場合と比較して、リンクに作用する曲げ力がゼロか又は格段に小さく、大重量の荷を取り扱える荷支持装置としも容易に実施することができると共に、荷受け部材が前後揺動したときに当該荷受け部材上の荷と荷受け部材との間で相対摺動が生じないので、不要な磨耗を生じさせないで済む。
【0011】
尚、吊下用平行リンクは、その上端部がリンク一側方の支持部材に軸支されると共に下端部がリンク他側方の荷受け部材に軸支されるので、荷受け部材に載置される荷の重量を受けて当該リンクには外向き(支持部材のある側)に曲げ力が働くのであるが、請求項2に記載の構成によれば、前記リンクに作用する外向きの曲げ力を滑りプレートを介して支持部材で受け止めさせることができる。従って、リンクを曲げ強度の大きな太い角パイプ材などで構成する必要がなく、コストダウンを図ることができる。
【0012】
又、請求項3に記載の構成によれば、付勢手段を吊下よう平行リンクの水平支点軸部分に組み込むことができ、しかも当該水平支点軸部分に捩じりコイルバネを組み込んで付勢手段とする場合よりも粘弾性体の振動減衰効果が期待でき、更に吊下用平行リンクと支持部材又は荷受け部材との間にガスダンパーを介装する場合と比較して、荷支持装置全体をコンパクトに、そして安価に構成することができる。この場合に、請求項4に記載の構成によれば、付勢ユニットの構成がリンク外側のフローチャート委空間を利用して容易に構成することができると共に、リンクを支持部材に隣接させることができるので、請求項2に記載の構成を採用する場合に、薄い板材から成る滑りプレートを支持部材の側面又はリンクの側面に直付けすることができ、構造をシンプルにして安価に実施することができる。この請求項5に記載の構成を採用した場合、リンクと荷受け部材とが水平横方向に大きく離れることになるが、請求項6に記載の構成によれば、当該リンクと荷受け部材との軸支構造を頑丈に構成することができ、しかも荷受け部材そのものは、軽量安価なコ形材で構成できる。
【0013】
又、請求項7に記載の構成によれば、地震力(振幅)が大きく、支持部材に対する許容スライド領域内での荷受け部材の相対移動だけでは十分な免震効果が期待できないような場合でも、支持部材に吊下用平行リンクを介して吊り下げられている荷受け部材そのものを、ラックの隔壁枠を構成する支柱材の側壁板部の左右横方向の弾性変形を利用して、ラックに対して前後水平方向に相対移動させることにより、免震効果を補わせることができる。従って、付勢手段の付勢ユニットに使用される粘弾性体の小型化にも役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の荷支持装置が適用できるラックの基本的な構成を示しており、1は上下左右両方向に碁盤目状に配置された荷収納区画であって、左右横方向に隣接する荷収納区画1間には垂直に隔壁枠2が立設され、上下に隣接する荷収納区画1は、左右一対の荷受け部材3によって区切られている。
【0015】
各隔壁枠2は、前後一対の支柱材4a,4bを連結部材5によって互いに連結したラチス構造のものであって、荷収納区画1の背面側では、各隔壁枠2の後側支柱材4bが水平や斜めの連結部材6で連結され、荷収納区画1の正面側、即ち、荷収納区画1に対して荷の出し入れを行う入出庫用クレーンの走行通路側では、荷収納区画1に対する荷の出し入れに邪魔にならないレベルで水平連結材(図示省略)で各隔壁枠2の前側支柱材4aどうしが連結されることが知られている。左右一対の荷受け部材3は、荷収納区画1に対する荷の出し入れ方向、即ち、荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に長い棒状のもので、その前後両端部が、外側に隣接する隔壁枠2の前後両支柱材4a,4bに支持される。
【0016】
以下、本発明の一実施形態を具体的に説明すると、図2及び図3に示すように、隔壁枠2の前後両支柱材4a,4bは、互いに対向する内側が開放する横断面形状のもので、荷受け部材3の前後両端部を支持するための前後一対の支持部材7が、図2Cに示すように、支柱材4a,4bの横向きに突出する横断面角形の側壁板部4cに外嵌する状態でピン8により同一高さに係止されている。荷受け部材3の前後両端部は、各支持部材7の荷収納区画1に面する垂直板部7aに吊下用平行リンク9a,9bを介して、荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に揺動自在に吊り下げられ、各吊下用平行リンク9a,9bには、吊り下げた荷受け部材3を、吊下用平行リンク9a,9bが垂直に垂下する定位置に付勢保持する付勢手段10を構成する付勢ユニット11A,11Bが併設されている。
【0017】
詳細構造を図4〜図6に基づいて説明すると、吊下用平行リンク9a,9bは、その前後揺動方向に平坦な垂直板材から成るもので、その上端部が上側水平支点軸12により支持部材7の垂直板部7aの上端部に軸支され、下端部が下側水平支点軸13により荷受け部材3に軸支されている。付勢ユニット11A,11Bは、各吊下用平行リンク9a,9bの外側(支持部材7のある側とは反対側)で上側水平支点軸12を利用して構成されている。
【0018】
吊下用平行リンク9a,9bを支持部材7に軸支する上側水平支点軸12は、支持部材7の垂直板部7aに溶接などで固着された円柱軸部12aと、この円柱軸部12aの端面に2本の取付ボルト12cで同心状に連結された、円柱軸部12aの周囲に張り出す太さの四角軸部12bとから構成され、板状の吊下用平行リンク9a,9bは、四角軸部12bが連結される前の円柱軸部12aに相対回転自在に嵌合し、当該円柱軸部12aの周りで前後に揺動自在に吊り下げられる。付勢ユニット11A,11Bは、前記上側水平支点軸12の四角軸部12bと、この四角軸部12bに相対回転不能に外嵌する四角筒状の粘弾性体14と、この粘弾性体14に相対回転不能に外嵌する四角筒状の保持用筒状体15とから構成されたもので、保持用筒状体15は、その外端に蓋板15aが溶接などで固着されると共に、内端には外側にのみ張り出す取付板部15bが溶接などで連設され、当該保持用筒状体15に粘弾性体14を嵌め込んだ状態で、当該粘弾性体14の中央角孔に上側水平支点軸12の四角軸部12bが嵌まり込むように吊下用平行リンク9a,9bの外側に当て付け、取付板部15bを複数本の取付ボルト15cで吊下用平行リンク9a,9bに固定している。
【0019】
而して、吊下用平行リンク9a,9bが上側水平支点軸12から真下に垂下する姿勢にあるとき、上側水平支点軸12の四角軸部12bの各垂直外側面と四角筒状の保持用筒状体15の各垂直内側面とが互いに平行となるように構成されており、従って、粘弾性体14周方向の応力が作用していない初期状態では、吊下用平行リンク9a,9bが上側水平支点軸12から真下に垂下する姿勢に保持されると共に、荷受け部材3が荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)の揺動領域の中央定位置に保持される。
【0020】
上側水平支点軸12の円柱軸部12aは板状の吊下用平行リンク9a,9bの板厚よりも軸方向長さが適当に長いもので、吊下用平行リンク9a,9bを上側水平支点軸12の四角軸部12bの内端に隣接させるように配置したとき、当該吊下用平行リンク9a,9bと支持部材7の垂直板部7aとの間に形成される空間を埋める厚さの、摩擦抵抗の小さな素材から成る滑りプレート16が、吊下用平行リンク9a,9bの下半部の支持部材7に対面する側に、複数本の取付ネジ16aと吊下用平行リンク9a,9b側に設けられたネジ孔とにより取り付けられている。従って、吊下用平行リンク9a,9bは、支持部材7の垂直板部7aと平行な垂直姿勢を保って上側水平支点軸12(円柱軸部12a)の周りで前後に揺動することができ、このとき滑りプレート16が支持部材7の垂直板部7aに摺接する。従って、滑りプレート16を取り付ける取付ネジ16aは、当該滑りプレート16の滑り面から突出しない皿ネジが使用されている。
【0021】
下側水平支点軸13は、吊下用平行リンク9a,9bの支持部材7のある側とは反対側に溶接などで固着突設された丸パイプ材13aから構成され、吊下用平行リンク9a,9bに対する丸パイプ材13aの取付強度と丸パイプ材13a自体の曲げ強度とを高めるために、当該丸パイプ材13aと吊下用平行リンク9a,9bとの間に上下一対の補強板13b,13cが溶接などで固着されている。
【0022】
一方、荷受け部材3は、支持部材7のある側が開放したコ形材(溝形鋼)から成るもので、その前後両端部には、上下両側面が荷受け部材3の上下両側板部3a,3bの内側面に隣接するサイズの角パイプ材17が嵌合されると共に、荷受け部材3の上側板部3aと角パイプ材17とを複数本の取付ネジ17aにより互いに結合している。この取付ネジ17aには、荷受け部材3の上面(上側板部3aの上側荷支持面)から突出しない皿ネジが使用されている。而して、前記角パイプ材17の左右両側板部17b,17cには、吊下用平行リンク9a,9bから突設された下側水平支点軸13の丸パイプ材13aが相対回転自在に貫通する貫通孔17dが設けられ、この貫通孔17dに前記丸パイプ材13aを挿通し、当該丸パイプ材13aの抜け止めとして、角パイプ材17の外側の側板部17bの内側に隣接して丸パイプ材13aに割りピンなどの抜け止め具17eが装着されている。
【0023】
以上の構成の荷支持装置において、荷が左右一対の荷受け部材3上に跨がって載置されたとき、荷受け部材3側の荷重は、角パイプ材17、下側水平支点軸13(丸パイプ材13a)、吊下用平行リンク9a,9b、及び上側水平支点軸12の円柱軸部12aを介して支持部材7で受け止められる。而して、各荷受け部材3を前後方向に動かすように外力を作用させたときは、前後一対の吊下用平行リンク9a,9bが荷受け部材3の運動方向に前後平行揺動するのを伴って荷受け部材3が前後方向に平行運動することになるが、このとき、前後2つの付勢ユニット11A,11Bにおいて、支持部材7に固定されている上側水平支点軸12の四角軸部12bに対して、前後平行揺動する吊下用平行リンク9a,9bに固定されている保持用筒状体15が相対的に回転し、内周面が上側水平支点軸12の四角軸部12bに固定状態で且つ外周面が保持用筒状体15に固定状態の粘弾性体14に周方向の捩じり変形が生じる。換言すれば、荷受け部材3と支持部材7との間の前後方向の相対移動は、前後2つの付勢ユニット11A,11Bの付勢力、即ち、粘弾性体14の周方向の捩じり弾性に抗して行われる。
【0024】
従って、地震などによりラックが荷収納区画1の前後奥行き方向(X方向)に揺れ動いたとき、荷を支持している荷受け部材3に対してラックと一体の支持部材7が、付勢ユニット11A,11Bの粘弾性体14の周方向の捩じり弾性に抗する吊下用平行リンク9a,9bの前後揺動運動を伴って同方向に揺動し、荷を支持している荷受け部材3と支持部材7との間で前後方向の相対移動が生じ、荷受け部材3上の荷は殆ど揺れ動かないか又は、支持部材7の揺れよりも遅れて小さな振幅で揺れ動くことになり、揺れの速度や振幅が想定範囲内であれば所期の免震効果が得られる。
【0025】
又、上記実施形態では、支持部材7を支持している隔壁枠2の前後一対の支柱材4a,4bが横断面形状が開放断面であって、図2Cに示すように、支持部材7を取り付けている支柱材4a,4bの横向きに突出する横断面角形の側壁板部4cが内外水平方向に弾性変形できるものであるから、この支柱材4a,4bの横断面角形の側壁板部4cの内外水平方向の弾性変形を伴う方向であれば、支持部材7と隔壁枠2との間の水平方向の相対移動がある程度許容されている。従って、地震などによるラック(隔壁枠2)の揺れ方向によっては、支持部材7と荷受け部材3との間の水平前後方向の相対移動に加えて、支持部材7と隔壁枠2との間の水平方向の相対移動が、荷受け部材3で支持されている荷に対する免震効果を高めることにもなる。
【0026】
付勢ユニット11A,11Bの粘弾性体14は、その周方向の捩じり弾性復元力で吊下用平行リンク9a,9bを真下に垂下する初期姿勢に自動復帰させるように作用しているので、ラックの揺れが収まったときには、当該粘弾性体14の周方向の捩じり弾性復元力で荷受け部材3は所期の定位置に自動的に戻される。
【0027】
又、上記構成では、吊下用平行リンク9a,9bと上側水平支点軸12との嵌合部と、当該吊下用平行リンク9a,9bから左右横方向に突出した下側水平支点軸13と荷受け部材3との嵌合部とが、左右水平方向に大きく離れていることにより、板状の吊下用平行リンク9a,9bには、その下半部が支持部材7側に接近する方向の曲げ力を受けることになるが、この曲げ力は、当該吊下用平行リンク9a,9bに取り付けられた滑りプレート16を介して支持部材7の垂直板部7aで受け止められ、吊下用平行リンク9a,9bの変形は防止される。一方この構成では、吊下用平行リンク9a,9bの前後揺動は、滑りプレート16と支持部材7の垂直板部7aとの摺接を伴って行われるが、一方の摺接面が滑りプレート16の表面であるから、吊下用平行リンク9a,9bの前後揺動時の摩擦抵抗は、当該滑りプレート16の材質により小さくすることができる。勿論、滑りプレート16は、支持部材7の垂直板部7a側に取り付けても良いし、両方に取り付けて滑りプレート16どうしが互いに摺接するように構成しても良い。
【0028】
尚、付勢ユニット11A,11Bの介装位置は上記実施形態で示した位置に限定されない。例えば、上記実施形態のように、付勢ユニット11A,11Bを吊下用平行リンク9a,9bと支持部材7との間に介装する場合でも、上側水平支点軸12を吊下用平行リンク9a,9bに固定するときは、保持用筒状体15を支持部材7側に固定して付勢ユニット11A,11Bを構成することもできる。又、付勢ユニット11A,11Bを吊下用平行リンク9a,9bと荷受け部材3との間に介装することも可能である。例えば、図示のように下側水平支点軸13が吊下用平行リンク9a,9bに固定されているときは、保持用筒状体15を荷受け部材3側に固定して付勢ユニット11A,11Bを構成することができるし、この逆に、下側水平支点軸13が荷受け部材3に固定されるときは、保持用筒状体15を吊下用平行リンク9a,9b側に固定して付勢ユニット11A,11Bを構成することも可能である。勿論、付勢力を高めるために、吊下用平行リンク9a,9bと支持部材7との間と吊下用平行リンク9a,9bと荷受け部材3との間との両方に付勢ユニット11A,11Bを介装することもできる。更に、前後一対の吊下用平行リンク9a,9bの内、何れか一方にのみ、付勢ユニットを併設しても良い。
【0029】
又、上記実施形態では、荷受け部材3は、付勢手段10で付勢保持される定位置(吊下用平行リンク9a,9bの揺動を伴う荷受け部材3の揺動可能領域内の定位置)から前後何れの方向にも揺動できるように構成したが、前記定位置から後方(ラックの入出庫用クレーンの走行通路のある側とは反対側)には揺動できないように構成することもできる。更に、左右一対の荷受け部材3は、入出庫用クレーンの荷移載用フォークなどによる荷の出し入れに影響しない箇所、例えば荷受け部材3の後端部や、前記荷移載用フォークの出退空間より下側で、荷受け部材3どうしを連結部材で互いに連結することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】A図は荷保管用ラックの基本構成を説明する要部の横断平面図、B図は同要部の正面図である。
【図2】A図は荷支持装置を示す平面図、B図は同正面図、C図はA図のC部拡大図である。
【図3】荷支持装置の片側を示す一部切欠き側面図である。
【図4】1つの付勢ユニット部分を示す横断平面図である。
【図5】同部分の縦断正面図である。
【図6】同部分の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 荷収納区画
2 隔壁枠
3 荷受け部材
4a,4b 支柱材
4c 支柱材の側壁板部
7 支持部材
7a 支持部材の垂直板部
9a,9b 吊下用平行リンク
10 付勢手段
11A,11B 付勢ユニット
12 上側水平支点軸
12a 上側水平支点軸の円柱軸部
12b 上側水平支点軸の四角軸部
13 下側水平支点軸
13a 丸パイプ材
14 粘弾性体
15 保持用筒状体
16 滑りプレート
17 角パイプ材
17e 割りピンなどの抜け止め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷収納区画の左右両隔壁枠の内側に、当該荷収納区画の前後奥行き方向に長い左右一対の荷受け部材が水平に架設された荷保管用ラックの荷支持装置であって、前記荷受け部材は、前記隔壁枠に取り付けられた支持部材に、水平支点軸の周りで揺動する前後一対の吊下用平行リンクを介して荷収納区画の前後奥行き方向に揺動自在に吊り下げられ、当該荷受け部材を、前記吊下用平行リンクの揺動を伴う揺動可能領域内の定位置に付勢保持する付勢手段が併設された、荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項2】
前記支持部材と吊下用平行リンクとを垂直な滑りプレートを介して互いに当接させてある、請求項1に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項3】
前記付勢手段は、前後一対の吊下用平行リンクの内、少なくとも一方のリンクに組み込まれた付勢ユニットを備え、この付勢ユニットは、前記リンクの上下両端水平支点軸の内の少なくとも一方の水平支点軸と、この水平支点軸に外嵌された粘弾性体と、この粘弾性体に外嵌する保持用筒状体とから成り、粘弾性体が外嵌された水平支点軸は、粘弾性体との相対回転が不能な角柱状で、前記リンクと当該リンクを軸支する相手側との何れか一方に固定され、保持用筒状体は、粘弾性体との相対回転が不能な角筒状で、前記リンクと当該リンクを軸支する相手側との内、前記角柱状の水平支点軸が固定された側とは反対側に固定されている、請求項1又は2に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項4】
前記付勢ユニットの角柱状の水平支点軸は支持部材から水平横向きに固定突設されて前記リンクを貫通し、前記保持用筒状体は前記リンクの支持部材のある側とは反対側に固定突設されている、請求項3に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項5】
前記リンクは、当該リンクの揺動方向に平坦な垂直板材から構成され、当該リンクと荷受け部材とを軸支する水平支点軸は、前記リンクから固着突設した丸パイプ材で構成され、この丸パイプ材の先端部に荷受け部材を相対回転自在に支承して成る、請求項4に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項6】
前記荷受け部材は、前記隔壁枠のある側が開放したコ形材から成り、この荷受け部材と前記リンクとの軸支位置には、前記水平支点軸の丸パイプ材の先端部が相対回転自在に貫通する角パイプ材を荷受け部材の内側空間に嵌合固定され、当該角パイプ材からの前記水平支点軸の丸パイプ材の抜け止めを設けて成る、請求項5に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。
【請求項7】
荷収納区画の左右両隔壁枠は、前後一対の支柱材を備え、各支柱材は互いに対向する内側が開放した横断面形状のものであって、前記支持部材は、前後両支柱材の側壁板部に取り付けられている、請求項1〜6の何れか1項に記載の荷保管用ラックの荷支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−50125(P2008−50125A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228791(P2006−228791)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】