説明

荷崩れ防止用ベルト

【課題】
荷物表面のうちベルトで覆われている部分を透視できる透視性と、覆われている部分に冷風等を確実に当てることができる通風性を有し、更には冷所から外に出したときのベルトの結露を防止できるようにした荷崩れ防止用ベルトを提供する。
【解決手段】
荷崩れ防止用ベルト(B)は透視性と通風性を発揮できる網目を有するラッシェル織りの網でつくられた帯体(1)を備えている。帯体(1)には長手方向に伸縮性を有する伸縮帯(10)と、長手方向には本質的に伸縮性を有さず幅方向には伸縮性を有する非伸縮帯(11,12)を、それぞれ全幅にわたり備えている。帯体(1)の両端側には、荷物に巻き付けるときの有効長さを調節して留着できる面ファスナ(2,2a,2b)を備えている。また、帯体(1)の端部には、把手部材(3)と、帯体(1)の幅が変わらないようにする幅固定部材(4)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷崩れ防止用ベルトに関するものである。更に詳しくは、荷物の崩れを防止できる十分な強度を有するとともに、荷物表面のうちベルトで覆われている部分を透視できる透視性と、覆われている部分に冷風等を確実に当てることができる通風性を有し、更には冷所から外に出したときのベルトの結露を防止できるようにした荷崩れ防止用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
トラックの荷室への荷物の搬入や搬出及び管理倉庫等への搬入や搬出には、荷物を載せる台として木製のパレットが主に使用されている。パレットに載せられた荷物は、荷崩れしないように荷物の一部または全部が互いに固定される。
【0003】
以前は、積まれた荷物をラップフィルム(ストレッチフィルムともいう)で巻いて固定していた。しかしながら、この方法にはラップフィルムを巻き付けるのに大変な手間がかかること、荷物が冷蔵や冷凍品であるときにラップフィルムで遮られ冷気が利きにくく冷却効率が悪いこと、及び使用後のラップフィルムが再使用できないために処分に多大な手間と費用がかかることなどの問題があった。
【0004】
このため、近年においては、繰り返し使用できて処分のための手間や費用がかからない荷崩れ防止用ベルトが提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1に開示されたものは、伸縮性部材でつくられた帯体の両端側に面ファスナを有し、帯体のうち各面ファスナが取り付けられている部分は非伸縮性部材でつくられており、面ファスナが波打つなどの変形をしないようにして留着部の留着性を高めたものである。
【0005】
【特許文献1】特許第3551247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の荷崩れ防止用ベルトは、上記のように面ファスナの留着性に関しては十分な有用性を備えるものであるが、次の点で課題を生じていた。
【0007】
まず、帯体の材料は化学繊維からなる伸縮性織布であるが、透視性や通風性を備えているものではない。このため、荷物表面のうちベルトで覆われている部分を透視することはできないので、例えば荷物表面に表示されている品名、重量、原産地、ロット番号などの各種情報を確認する必要が生じた場合に表示部が覆われていると、その度にベルトをずらしたり外したりしなければならず手間がかかる。
【0008】
また、覆われている部分には、冷風を当てることができないので、例えば急速に冷凍するような場合、冷気の利きが悪く冷凍状態にムラを生じるおそれがある。
更には、冷凍庫などの冷所から外に出したときにベルトに結露が生じやすいので、例えば外したベルトを地面に落としたりすると、土や砂が簡単に付着してしまい、洗わなければ再使用できなくなるなど、外したときの取り扱いがしにくい。
【0009】
(本発明の目的)
本発明の目的は、荷崩れを防止するための荷崩れ防止用ベルトにおいて、荷物表面のうちベルトで覆われている部分を透視できる透視性と、覆われている部分に冷風等を確実に当てることができる通風性を有し、更には冷所から外に出したときのベルトの結露を防止できるようにした荷崩れ防止用ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
第1の発明にあっては、
透視性と通風性を発揮できる網目を有するラッシェル織りの網でつくられた帯体を備えており、帯体には長手方向に本質的に伸縮性を有さず幅方向には伸縮性を有する部分と、長手方向に伸縮性を有する部分を備えているとともに、帯体を巻き付けるときの有効長さを調節して留着できる留着手段を備えていることを特徴とする、
荷崩れ防止用ベルトである。
【0011】
第2の発明にあっては、
帯体は合成樹脂製の繊維でつくられており、網目の目合いが1〜5mmの範囲内であることを特徴とする、
第1の発明に係る荷崩れ防止用ベルトである。
【0012】
第3の発明にあっては、
帯体の長手方向の少なくとも一端側には、把手部材と、帯体の幅が変わらないようにする手段が設けてあることを特徴とする、
第1または第2の発明に係る荷崩れ防止用ベルトである。
【0013】
帯体の長手方向には本質的に伸縮性を有さず幅方向には伸縮性を有する部分と、長手方向に伸縮性を有する部分のそれぞれの長さおよび長さの比は特に限定されるものではなく、使用対象となる荷物の種類や大きさの違いによって適宜設定することができる。
【0014】
帯体の素材は、例えばポリエチレン(PE)などの合成樹脂であるが、荷崩れを防止するための強度及び透視性、伸縮性などの機能性に問題がなければ、他の素材を採用することもできる。なお、帯体をつくる繊維は、透明や半透明であってもよいし、着色されていてもよく、更には網目が十分に大きければ不透明体であってもよい。
【0015】
帯体の幅が変わらないようにする手段は、帯体を荷物に巻き付ける際、把手部材を持って端部を引っ張ったときに、帯体の幅が収縮しないようにすることができれば、その形状、素材は特に限定しない。例えば、所要長さの棒体、板体の他、帯体そのものを多重に縫い込んだ補強部などである。
【0016】
留着手段としては、例えば面ファスナがあげられるが、これに限定するものではなく、帯体の有効長さを所要の長さに固定することができれば、フック、ボタン、ホックなどの係合具や長さの調節が可能なベルト、結び紐などを採用することもできる。
【0017】
(作用)
本発明に係る荷崩れ防止用ベルトの作用を説明する。なお、ここでは、本発明の各構成要件のそれぞれに、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与し説明するが、この符号の付与は、あくまで説明の理解を助けるためであって各構成要件の上記各部への限定を意味するものではない。
【0018】
パレットに、例えば段ボール箱で梱包された荷物を積み重ねる。複数段に積み重ねた荷物は、上部からの荷重がかかっていない上段のものが不安定なので、これらを荷崩れ防止用ベルトによって互いに固定する。上段の荷物が互いに固定されれば、それより下の段の荷物は上部からの荷重で押さえられて安定し、荷崩れを起こしにくくなる。
【0019】
荷崩れ防止用ベルト(B)を荷物を囲むように巻き付け、有効長さを調節して各荷物を互いにある程度締め付けて固定できる長さにし、留着手段(2,2a,2b)を留着して装着する。このとき、帯体(1)の長手方向に伸縮性を有する部分(10)により、適当な締め付け力が得られる。
【0020】
また、帯体(1)の長手方向には本質的に伸縮性を有さず幅方向には伸縮性を有する部分(11,12)により、例えば荷物の外形が平面でなく不定形である場合は、その外形に沿うように帯体(1)を柔軟に変形させることができ、良好な密着性と保持性を発揮できる。
【0021】
帯体(1)はラッシェル織り(raschel knitting:ラッセル織りともいう)の網でつくられており、透視性と通風性を発揮できる網目を有している。これにより、帯体(1)が被さったところの荷物表面に表示された文字などを視認することが可能である。また、帯体(1)を冷風が通り抜けることができるので、荷物を急速に冷凍する場合などに全体をむらなく均等に冷却することができる。更には、梱包材に通気口のある荷物であっても通気を邪魔する心配はない。
【0022】
また、帯体(1)は網であり通風性を有しているので、例えば冷凍庫などの冷所から外へ出したときにも、ほとんど結露が生じない。多少結露したとしても、ごく短時間で発散し乾いてしまう。
【0023】
帯体(1)の長手方向の少なくとも一端側に、把手部材(3)と、帯体の幅が変わらないようにする手段(4)が設けてあるものは、帯体(1)を荷物に巻き付ける際、把手部材(3)を持って端部を引っ張ったときに、帯体(1)の幅が収縮しないようにすることができ、本質的に幅は変わらない。これにより、帯体(1)に設けられる留着手段(2,2a,2b)を変形させてしまうことがなく、留着が簡単にかつ確実にできる。
【発明の効果】
【0024】
(a)本発明によれば、帯体はラッシェル織りの網でつくられ、荷物に巻いて固定したときには、帯体の長手方向に伸縮性を有する部分により、適当な締め付け力が得られる。
また、帯体の長手方向には本質的に伸縮性を有さず幅方向には伸縮性を有する部分により、例えば荷物の外形が平面でなく不定形である場合は、その外形に沿うように帯体を柔軟に変形させることができ、良好な密着性と保持性を発揮できる。
【0025】
(b)帯体は透視性を有しているので、帯体が被さったところの荷物表面に表示された文字などを視認することが可能であり、例えば表示内容を確認する必要が生じたときも、隠れた部分を見るために帯び体をずらしたり外す必要はない。
【0026】
(c)帯体は通風性を有しているので、帯体を冷風が通り抜けることができ、荷物を急速に冷凍する場合などに全体をむらなく均等に冷却することができる。また、梱包材に通気口のある荷物であっても通気を邪魔する心配はない。
【0027】
(d)荷物を冷凍庫などの冷所から外へ出したときにも、帯体にはほとんど結露が生じることはなく、多少結露したとしても、ごく短時間で発散し乾いてしまうので、結露して濡れることによる取り扱いのしにくさが解消できる。
【0028】
(e)帯体の長手方向の少なくとも一端側に、把手部材と、帯体の幅が変わらないようにする手段が設けてあるものは、帯体を荷物に巻き付ける際、把手部材を持って端部を引っ張ったときに、帯体の幅が収縮しないようにすることができる。これにより、帯体に設けられる留着手段を変形させてしまうことがなく、留着が簡単にかつ確実にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明を図に示した実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例】
【0030】
図1は本発明に係る荷崩れ防止用ベルトの実施の形態を示す斜視図、
図2は把手部材側の構造を示す拡大説明図である。
【0031】
荷崩れ防止用ベルトBは、網でつくられた帯体1、留着手段である面ファスナ2、2a、2b、把手部材3及び幅固定部材4を備えている。
【0032】
帯体1は、ポリエチレン(PE)の透明な繊維を使用し、ラッシェル織りをした網(タテ糸、ヨコ糸:300Dモノフィラメント、目合い:2mm、♯200)でつくられている。帯体1は、荷崩れを防止するための十分な強度(引っ張り強度など)を備えている。
【0033】
帯体1は、所要長さの伸縮帯10と、その両側にそれぞれ接続してある互いに長さの異なる非伸縮帯11、12で構成されており、非伸縮帯11、12が大部分を占める。
伸縮帯10は、二重編みにされており、厚みが厚い。伸縮帯10は、長手方向へ伸縮が可能であり、幅方向へは実質的に伸縮しない。
【0034】
また、非伸縮帯11、12は、一重編みにされており、厚みが薄い。非伸縮帯11、12は、長手方向へは実質的に伸縮せず、幅方向へは伸縮可能である。
帯体1の幅方向の両端縁は、それぞれ全長にわたり折り返されて二重になるよう縫い付けられ、補強のための縁折り部14が設けられている。
【0035】
伸縮帯10と非伸縮帯11、12は、上記素材でつくられていることにより、それぞれ透視性と通風性を有している。つまり、帯体1はそれを通して裏側にあるものを視認することが可能であり、また、それを通して裏側にある荷物に冷風などを直接当てることが可能である。
【0036】
帯体1の長い方の非伸縮帯11の先端側には、先部の一部を摘み部13として150mmほど残して面ファスナ2が縫い付けてある。面ファスナ2は、帯体1を荷物に巻き付ける時の有効長さを調節するためにやや長く設定されている。
【0037】
帯体1の短い方の非伸縮帯12の先端部には、平紐でつくられた把手部材3が両端部を非伸縮帯12の幅方向両端部に縫い付けて設けてある。非伸縮帯12の先端部には、幅方向と平行に、幅が変わらないようにする手段である金属製で直棒状の幅固定部材4が折り込まれて取り付けてある(図2参照)。幅固定部材4は、非伸縮帯12の幅とほぼ同じ長さに形成されている。
【0038】
また、非伸縮帯12のうち上記面ファスナ2が設けられている側と反対側の面には、所要間隔をおいて二箇所に面ファスナ2a、2bが縫い付けてある。面ファスナ2a、2bはそれぞれ面ファスナ2に対し留着と剥がしが可能で、面ファスナ2の長さより短く(本実施の形態では、約1/5)形成されている。なお、一方の面ファスナ2aは非伸縮帯12の先端部に設けてある。
【0039】
荷崩れ防止用ベルトBの寸法は、本実施の形態では帯体1の幅が260mm、帯体1の長さが4000mm、伸縮帯10の長さが350mm、非伸縮帯11の長さが2800mm、非伸縮帯12の長さが850mm、面ファスナ2の長さが500mm、面ファスナ2a、2bの長さが100mm、面ファスナ2a、2bの間隔が200mmであるが、これに限定するものではなく、荷物の形状や大きさなどに合わせて適宜設定が可能である。
【0040】
(作用)
図3は荷崩れ防止用ベルトを使用しパレット上の荷物を緊締している状態を示す斜視説明図である。図1ないし図3を参照して荷崩れ防止用ベルトの使用方法及び作用を説明する。
【0041】
まず、パレットPに、例えば段ボール箱で梱包された荷物を積み重ねる。三段に積み重ねた荷物(L1:下段、L2:中段、L3:上段、各段は4個組み)は、上部からの荷重がかかっていない上段の荷物L3と荷重が小さい中段の荷物L2が不安定なので、これらを荷崩れ防止用ベルトBによって互いに固定する。上段の荷物L3と中段の荷物L2が互いに固定されれば、それより下の下段の荷物L1は上部からの荷重で押さえられて安定し、荷物全体として荷崩れを起こしにくくなる。
【0042】
荷崩れ防止用ベルトBを荷物L2、L3の両方にかかるようにして、それらを囲むように巻き付け、有効長さを調節して各荷物L2、L3を互いにある程度締め付けて固定できる長さにし、面ファスナ2に面ファスナ2a、2bを留着して荷締めを行う。このとき、帯体1の長手方向に伸縮性を有する伸縮帯10により、適当な締め付け力が得られる。
【0043】
また、帯体1の把手部材3が設けてある一端側に幅固定部材4を有しているので、帯体1を荷物に巻き付ける際、把手部材3を持って端部を引っ張ったときに、帯体1の幅が収縮しないようにすることができる。これにより、帯体1に設けられている面ファスナ2a、2bを変形させてしまうことがなく、面ファスナ2との留着が簡単にかつ確実にできる。
【0044】
また、本例では荷物の表面が平面であるが、例えば荷物の外形が平面でなく凹凸のある不定形である場合は、帯体1の長手方向には本質的に伸縮性を有さず幅方向には伸縮性を有する非伸縮帯11、12は、その外形に沿うように帯体1を幅方向に柔軟に変形させることができるので、良好な密着性と保持性を発揮できる。
【0045】
帯体1を構成する伸縮帯10及び非伸縮帯11、12はラッシェル織りの網でつくられており、透視性と通風性を発揮できる網目を有している。これにより、帯体1が被さったところの荷物表面に表示された文字などを視認することが可能である。また、帯体1を冷風が通り抜けることができるので、荷物を急速に冷凍する場合などに全体をむらなく均等に冷却することができる。
【0046】
更には、梱包材に通気口のある荷物(野菜や果物など)であっても通気を邪魔する心配はない。なお、帯体1は網であるので、例えば荷物を冷凍庫などの冷所から外へ出したときにも、ほとんど結露が生じることがなく、多少結露したとしても、ごく短時間で発散し乾くので支障はない。
【0047】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまで説明上のものであって限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は図示されている実施の形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る荷崩れ防止用ベルトの実施の形態を示す斜視図。
【図2】把手部材側の構造を示す拡大説明図。
【図3】荷崩れ防止用ベルトを使用しパレット上の荷物を緊締している状態を示す斜視説明図。
【符号の説明】
【0049】
B 荷崩れ防止用ベルト
1 帯体
10 伸縮帯
11、12 非伸縮帯
13 摘み部
14 縁折り部
2、2a、2b 面ファスナ
3 把手部材
4 幅固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透視性と通風性を発揮できる網目を有するラッシェル織りの網でつくられた帯体(1)を備えており、帯体(1)には長手方向に本質的に伸縮性を有さず幅方向には伸縮性を有する部分(11,12)と、長手方向に伸縮性を有する部分(10)を備えているとともに、帯体(1)を巻き付けるときの有効長さを調節して留着できる留着手段(2,2a,2b)を備えていることを特徴とする、
荷崩れ防止用ベルト。
【請求項2】
帯体(1)は合成樹脂製の繊維でつくられており、網目の目合いが1〜5mmの範囲内であることを特徴とする、
請求項1記載の荷崩れ防止用ベルト。
【請求項3】
帯体(1)の長手方向の少なくとも一端側には、把手部材(3)と、帯体(1)の幅が変わらないようにする手段(4)が設けてあることを特徴とする、
請求項1または2記載の荷崩れ防止用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−264773(P2006−264773A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89648(P2005−89648)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(505111502)井上製氷冷蔵株式会社 (3)
【出願人】(505111513)九州繊工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】