説明

荷物セキュリティ検査システム

荷物セキュリティ検査システムであって、システムを通過するように移動する検査対象物を検査するためのシステムにおいて、システムが、検査対象物を支持し且つ搬送し、システム内に検査対象物の移動経路を画定するための機械的搬送ユニットと、検査対象物を透過する放射線ビームを発生させるための放射線発生ユニットと、検査対象物を既に透過した放射線についての透過データを収集し且つ透過データを処理するためのデータ収集ユニットとを備え、検査対象物の移動経路が、互いに対して所定の角度で配置される少なくとも二つの直線状補助経路を備え、データ収集ユニットが、放射線ビームを検知するための少なくとも二つの検知器アレイを備え、各検知器アレイは、一つの直線状補助経路に対応し、各々の前記検知器アレイの検知面が、対応する前記直線状補助経路に平行に配置され、使用時において、放射線発生ユニットとデータ収集ユニットとが静止しているとともに、検査対象物が移動経路に沿って進み、且つ検査対象物が、少なくとも二つの直線補助経路上を回転することなく平行移動のみする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線イメージ処理に関し、より詳細には、荷物セキュリティ検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティ検査は、対テロ行為及び薬物や密輸における不法取引と立ち向かうような分野において非常に重要である。米国の9/11テロ攻撃の後で、世界中の国々が、ますますセキュリティ検査を重視し、空港、バス乗り場、税関及び埠頭のような公共の場において、旅行者の手荷物、物品及び貨物専用コンテナを厳重に検査する一連のセキュリティ検査対策が特にとられている。
【0003】
現在、セキュリティ検査システムとして広範に使用される主流のイメージ処理技術は、放射線イメージ処理技術である。放射線(光子)の指数関数的減衰理論によると、放射線イメージ処理技術は、以下のように機能する。放射線源は検査対象物の片側から検査対象物に放射線を照射するように使用され、検査対象物を透過した後で、放射線は放射線収集手段によって検知され、放射線収集手段が、検知された放射線をデジタル形式の透過データに変換し、透過データが投影データと合成され、次にイメージとしてコンピュータに出力される。コンピュータは、収集データを処理し、イメージを合成し且つ再構成し、そのイメージを表示する。放射線イメージ処理技術を使用するセキュリティ検査システムは、断層撮影イメージ処理又はX線イメージ処理を実行し得る。断層撮影イメージ処理は、検査対象物の断層撮影イメージを示し、断層撮影イメージの複数のレイヤ(layer)を三次元イメージに合成する。X線イメージ処理は、検査イメージの二次元透視イメージを示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
断層撮影イメージ処理は、放射線ビームの透過投影データを取得するために、検査対象物への全方位にわたるX線照射を検知するような放射線収集手段を必要とするので、断層撮影イメージ処理セキュリティ検査システムは、一般にコンピュータ断層撮影(CT)装置を必要とし、検査対象物と放射線源との少なくとも一つが回転する必要がある。実用化において、セキュリティ検査システムは、一般に速いイメージ処理速度でオンライン・リアルタイム方式にて検査する必要がある。例えば、民間航空によって実施される物品は、税関において、0.5m/秒の速度で検査され、そのため、ねじピッチが大きく更にスパイラル運動をするCT装置では、前述の要件を満たすことが容易でない。その上、税関におけるコンテナのような大きなサイズの対象物については、コンテナ又は放射線源を回転させることが非常に難しい。更に、CT装置は、費用がかかる。上述の要因は、三次元イメージ処理のためにCT装置を使用するセキュリティ検査システムが広く利用されることを阻んでいる。
【0005】
断層撮影イメージ処理セキュリティ検査システムとは対照的に、X線イメージ処理セキュリティ検査システムは、空港、バス乗り場、税関、埠頭のような公共の場所において広く使用される。しかしながら、X線イメージ処理セキュリティ検査システムは、放射線の方向における対象物の重なりの影響を回避できず、且つ、X線イメージ処理セキュリティ検査システムの検査能力が著しく不十分であるため、放射線の方向における対象物の重なりの欠陥を解決できない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記を考慮して、本発明の主要目的は、セキュリティ検査システムの迅速なイメージ処理の要件を満たし且つ大きなサイズの対象物の困難な回転の問題とX線イメージ処理セキュリティ検査システムによる放射線の方向における対象物の重なりの欠陥とを解決する荷物セキュリティ検査システムを提供することである。
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の技術的な解決法は、以下を満たす。
荷物セキュリティ検査システムであって、システムを通過するように移動する検査対象物を検査するためのシステムにおいて、システムが、以下を備える。検査対象物を支持し且つ搬送し、システム内に検査対象物の移動経路を画定するための機械的搬送ユニットと、検査対象物を透過する放射線ビームを発生させるための放射線発生ユニットと、検査対象物を既に透過した放射線についての透過データを収集し且つ透過データを処理するためのデータ収集ユニットと、を備え、検査対象物の移動経路が、互いに対して所定の角度で配置される少なくとも二つの直線状補助経路を備え、データ収集ユニットが、放射線ビームを検知するための少なくとも二つの検知器アレイを備え、各検知器アレイが一つの直線状補助経路に対応し、各々の検知器アレイの検知面が、対応する直線状補助経路に平行に配置される。使用時において、放射線発生ユニットとデータ収集ユニットとは、静止しているとともに、検査対象物が、その移動経路に沿って進み、且つ検査対象物が、少なくとも二つの直線状補助経路上を回転することなく平行移動のみする。
【0008】
好ましくは、システムが、イメージ処理ユニットを更に備え、データ収集ユニットが、イメージ処理ユニットに出力するために収集された透過データを投影データに合成し、投影データが、イメージ処理ユニットによってイメージとして再構成される。
【0009】
好ましくは、システムが、イメージ処理ユニットによって再構成されたイメージを表示するための表示ユニットを更に備える。
好ましくは、放射線発生ユニットが、全ての検知器アレイによって共有される一つの放射線源を備える、又は放射線発生ユニットが、複数の放射線源を備え、各検知器アレイが一つの放射線源に対応する。
【0010】
好ましくは、機械的搬送ユニットが、検査対象物を支持し且つ搬送するための搬送手段と移動経路に沿った検査対象物の移動を制御するための制御手段とを備える。
好ましくは、機械的搬送ユニットは、検査対象物が、少なくとも二つの直線状補助経路の各々の上を回転することなく平行移動のみするように構成される。
【0011】
好ましくは、機械的搬送ユニットは、検査対象物が、少なくとも二つの直線状補助経路の各々の上を回転することなく一定の速度で平行移動のみするように構成される。
好ましくは、検査対象物の移動経路が、少なくとも二つの直線状補助経路における隣接する直線状補助経路の間に結合部を更に備える。
【0012】
好ましくは、機械的搬送ユニットは、検査対象物が、結合部において回転されることなく平行移動のみするように構成される。
好ましくは、機械的搬送ユニットは、検査対象物が、移動経路全体上を回転することなく平行移動のみするように構成される。
【0013】
好ましくは、機械的搬送ユニットは、検査対象物が、移動経路全体上を回転することなく一定の速度で平行移動のみがされるように構成される。
好ましくは、放射線発生ユニットとデータ収集ユニットとが、移動経路の両側にそれぞれ設けられる。
【0014】
好ましくは、データ収集ユニットは、以下を更に備える。検知器アレイによって検知さ
れた放射線ビーム信号を透過データに変換するための信号変換回路と、信号変換回路からの透過データを投影データに合成するためのデータ処理回路と、放射線ビーム信号を検知する検知器アレイと投影データを通じて透過データ処理回路との同期特性を制御するための論理制御回路とを備える。
【0015】
好ましくは、検知器アレイが、直線アレイ検知器又は平面アレイ検知器である。
好ましくは、直線アレイ検知器が、等間隔又は等角度で配列され、平面アレイ検知器が、平面パネル検知器、筒状検知器又はL型状検知器である。
【0016】
好ましくは、イメージ処理ユニットが、投影データを透視イメージ及び/又は断層撮影イメージとして再構成する。
好ましくは、イメージ処理ユニットが、直線フィルタ逆投影法アルゴリズムによる断層撮影イメージを発生させる。
【0017】
好ましくは、検知器アレイが平面アレイ検知器であり、イメージ処理ユニットが複数の断層撮影イメージを三次元イメージとして更に合成する。
好ましくは、イメージ処理ユニットが、所定の視角における透視イメージ又は複数の視角における複数の透視イメージを形成するように投影データを合成する。
【0018】
好ましくは、イメージ処理ユニットが、検知器の不整合、ハードニング(hardenig)、散乱補正、金属アーチファクト補正、並びにイメージ処理及びパターン認識の五つの処理態様の一つ又は任意の組み合わせを採用することにより投影データを処理する。
【0019】
好ましくは、イメージ処理とパターン認識が、イメージエンハンスメント、エッジ検出、及び危険物の知的識別の三つの処理様式からの一つ又は任意の組み合わせを含む。
好ましくは、それぞれの放射線源に関連する検知器アレイの検知面の開放角の合計が、実質上180度である。
【0020】
本発明によるセキュリティ検査システムは、上述の技術的な解決法から理解されるように以下の有利な効果を有する。
1.本発明は、円形軌道スキャン又はスパイラル軌道スキャンの代わりに直線状補助経路スキャンを採用しているので、検査対象物が実質的に直線移動し、円形又はスパイラル移動で生じる遠心力の問題を考慮する必要がない。こうして、迅速なイメージ処理が達成でき、検査対象物のイメージ処理速度が実質的に向上する。検査対象物をイメージ化するための時間が、税関において検査される物品の検査速度のための要件を大いに満たすように減少する、その結果、空港によって検査される物品の検査速度が更に向上する。システムは、市場における前途有望な用途の未来及び価値を有する。
【0021】
2.本発明は、検査対象物が実質的に直線移動を実行するように、円形軌道スキャン又はスパイラル軌道スキャンの代わりに直線状補助経路スキャンを採用しているので、大きなサイズの対象物は回転させる必要がなく、その結果、大きなサイズの対象物の困難な回転についての問題を解決する。
【0022】
3.検査対象物の断層撮影イメージと三次元イメージとが、本発明によって取得できるので、本発明は、従来のX線イメージ処理セキュリティ検査システムによるイメージ化の場合における対象物の重なりの問題を望ましく解決する。更に、単一の又は複数の視点からの従来の透視イメージは、本発明によって取得できる、本発明のシステムは、先ず、取得された透視イメージを通じて検査対象物の予備検査を実施することができ、潜在的な疑わしい領域が、疑わしい領域の更なる検査をもたらすように検出されるときに、断層撮影イメージ処理を実行する。
【0023】
4.検査対象物又は放射線源は、本発明により回転させる必要がないので、先行技術のセキュリティ検査システムにおける検査対象物の直線透過の特徴が利用され、本発明のシステムは、機械的な構造において非常に簡素であり、費用が低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下の実施形態は、本発明を例示するために用いられ且つ本発明の保護範囲を制限するものではない。
本発明の基本的な考えは、以下の通りである。検査対象物の移動経路は、互いに対して所定の角度で配置される少なくとも二つの直線状補助経路を備える。少なくとも二つの検知器アレイが、直線状補助経路の一つにそれぞれ対応して配置され、各々の検知器アレイの検知面は、対応する直線状補助経路に平行に配置され、使用時において、放射線発生ユニットとデータ収集ユニットとは静止したままであり、検査対象物は移動経路に沿って進み、且つ検査対象物は少なくとも二つの直線状補助経路上を回転することなく平行移動のみする。このように、検査対象物は、少なくとも二つの直線状補助経路上で回転しないので、少なくとも二つの検知器アレイの検知面は、互いに所定の角度で配置され、検査対象物は、少なくとも二つの検知器アレイに対して異なる角度となる。このように、本発明によるシステムは、検査対象物のコンピュータ断層撮影イメージ化をもたらすのと同時に、異なる角度において検査対象物の従来のX線イメージ化をもたらすように、より大きな角度範囲から検査対象物の透過投影データを取得できる。特に、それぞれの放射線源に対する検知器アレイの開放角の合計がほぼ180度のときに、全方向における検査対象物の透過投影データを、正確な断層撮影イメージが取得できるように入手できる。
【0025】
図1は、本発明による荷物セキュリティ検査システムの技術的な解決法の全体を示すブロック図である。図1に示されるように、システムは、放射線発生ユニット101と機械的搬送ユニット102とデータ収集ユニット103とイメージ処理ユニット104と表示ユニット105とを備える。
【0026】
放射線発生ユニット101は、検査対象物を透過する放射線ビームを発生させるために使用され、放射線ビームが、検査対象物を透過した後でデータ収集ユニット103に到達する。放射線発生ユニット101は、X線管、加速器放射線源又はアイソトープ源とし得る。ほぼ180度の開放角で放射線ビームを発生させるために、放射線発生ユニット101は、通常二つ以上の放射線源を使用することができる。その上、放射線発生ユニット101は、放射線の整合及び放射線に対する保護のための補助装置ユニットを更に備えることができ、放射線の開放角がデータ収集ユニットにおける検知器アレイをカバーすることを保証できる。
【0027】
機械的搬送ユニット102は、検査対象物を支持し且つ搬送するために使用され、システム内に検査対象物の移動経路を画定する。機械的搬送ユニット102によって画定される通路は、互いに対して所定の角度に配置される少なくとも二つの直線状補助経路を含み、後で、図3及び図7を参照して詳細に記載される。機械的搬送ユニットは、検査対象物を支持し且つ搬送する搬送手段と、移動経路に沿った検査対象物の移動を制御するための制御手段とを備える。機械的搬送ユニット102は、データ収集ユニット103の検知面に平行な方向、すなわちデータ収集ユニット103における検知器アレイの検知面に平行な方向に検査対象物を搬送する。二つ以上の直線状補助経路に沿った検査対象物の移動中、各々の直線状補助経路において、制御手段は、検査対象物が平行移動するよう、検査対象物をデータ収集ユニットの検知面に平行な方向に一定の速度で搬送するように搬送手段を制御する。
【0028】
更に、二つの隣接する直線状補助経路の間の結合部において一定の速度で移動するとき
、検査対象物は回転しない。一般に、搬送手段は、搬送ベルト、チェイン、ローラ等とすることができ、制御手段は電気モータとし得る。
【0029】
データ収集ユニット103は、検査対象物を透過する放射線ビームの透過データを検知するために使用され、検知される透過データをイメージ処理ユニット104に出力するための投影データに合成する。データ収集ユニット103は、少なくとも検知器アレイと信号変換回路とデータ処理回路及び論理制御回路とを備える。検知器アレイは、検査対象物を透過する放射線ビーム信号を検知するために使用され、検知される放射線ビーム信号は、信号変換回路を介して透過データに変換され、信号変換回路からの透過データが、データ処理回路によって投影データに合成される。更に、放射線ビーム信号を検知する検知器アレイと投影データを伝送するデータ処理回路との同期特性は、論理制御回路によって制御される。
【0030】
データ集積回路103は、二つの検知器アレイを少なくとも含み、検知器アレイの数は直線状補助経路の数と同一である。更に、検知器アレイの検知面は、対応する直線状補助経路に平行である。このように、直線状補助経路は、互いに対して所定の角度で配置されるので、検知器アレイは、互いに対して特定角度で対応して配置される。更に、検査対象物が移動経路上を平行移動するので、放射線ビームが、異なる角度で検査対象物を突き抜けてそれぞれの検知器アレイに到達できるように、少なくとも二つの検知器アレイに対してそれぞれ異なる角度である。できる限り全方向において透過データを取得するために、検知器アレイの検知面とそれぞれの放射線源との角度の合計は、好ましくは概略180度である。しかし、正確性をきたすための要件が減じる場合には、合計は180度より小さくされ得る。
【0031】
検知器アレイは、直線アレイ検知器又は平面アレイ検知器とすることができる。直線アレイ検知器は、互いに等間隔又は等角度に配列される。平面アレイ検知器は、平面パネル検知器、筒状検知器又はL型状検知器とすることができ、L型状検知器が図2に示される。平面パネル検知器又は筒状検知器と比較すると、L型状検知器は、同じ高さの対象物をカバーするとき、L型状検知器実質的に検知器の数を削減できる。直線アレイ検知器又は平面アレイ検知器は、固体検知器、ガス検知器又は半導体検知器とすることができる。検知器アレイは、一般に、放射線源の反対側に配置され、検査対象物の移動経路が検知器アレイと放射線源との間にある。
【0032】
二つの直線状補助経路においてスキャンを行う荷物セキュリティ検査システムでは、二つの検知器アレイが必要とされ、二つの検知器アレイの検知面によって形成される角度は、0度より大きく且つ180度より小さい。一般に、二つの検知器アレイの検知面は、90度の角度を形成する。二つの検知器アレイの位置関係が、本発明の第一の実施形態による二つの直線状補助経路においてイメージ処理を行う荷物セキュリティ検査システムの平面図である図3に示される。
【0033】
複数の直線状補助経路においてスキャンを行う荷物セキュリティ検査システムにおいて、複数の検知器アレイの間の位置関係が、本発明の第二の実施形態による複数の直線状補助経路においてイメージ処理を行う荷物セキュリティ検査システムの平面図である図7に例示される。
【0034】
二以上の直線状補助経路においてスキャンを行う荷物セキュリティ検査システムでは、検査対象物の特定の直線状補助経路上に複数の検知器アレイがある場合、検知器アレイの個々の区分の全長Kは、放射線源から検知器アレイまでの垂直距離Tに関係する。距離Tがより大きくなるのに応じて全長Kは大きくなり、Φ,K,Tは式K=2TtanΦ/2
を満たす。概略180度の投影データを取得するために、放射線ビーム開放角Φと直線区
分の数Nとは、式Φ=180/Nを満たす。変数Φ,K及びTの物理的意味は、図3又は図7に示される。
【0035】
検知器アレイが透過データを検知するとき、透過データを検知するための時間間隔Δtは等しいので、検査対象物は一定の速度で移動する。検査対象物の移動速度をvとすると、本発明による荷物セキュリティ検査システムにおいて透過データを検知する検知器アレイの空間等価サンプリングの間隔は、Δd=vΔtである。更に、全ての検知器アレイは、同期して収集データを処理する、データ収集ユニットが、イメージ処理ユニット104に出力するために、収集した透過データを投影データに合成する。投影データは、イメージ処理ユニットによって断層撮影イメージ及び/又は透視イメージとして再構成される。最後に、イメージ処理ユニットによって再構成されるイメージが、表示ユニットによって表示される。
【0036】
イメージ処理ユニット104は、データ収集ユニット103から受け取った投影データを直線フィルタ逆投影法のアルゴリズムによる断層撮影イメージとして再構成する。このアルゴリズムによって、全ての直線状補助経路のスキャンから取得する投影データが再構成され、全ての再構成は、最高解像度の断層撮影イメージを形成するために共に組み入れられる。これは、以下により立証される。
【0037】
検知器アレイがデータ収集ユニット103内にある場合、データp(l,t,z)は、対象物がX方向において座標位置lに移動するときに、zthのレイヤ中のtに配置される検知器によって収集された投影値を表し、t,zは共に、検知器アレイが対象物の直線移動の中心線と対応した後の値である。更に、Dは、放射線源から直線移動の中心線まで
の距離であり、±tは、X軸において検知器アレイの最大及び最小の位置を表し、放射線を受けた対象物
【0038】
【数1】

の概算推定値
【0039】
【数2】

は以下の通りである。
【0040】
【数3】

であって、
【0041】
【数4】

【0042】
【数5】

【0043】
【数6】

【0044】
【数7】

hは回旋中心であり、
【0045】
【数8】

を満たす理論値を有する。
S−Lフィルタ関数が一般に用いられ、関数hの離散形式は、
【0046】
【数9】

である。
【0047】
直線フィルタ逆投影法アルゴリズムは、データ収集方向lにおいて受け取った投影本体データの効果的なフィルタ処理によって特徴づけられ、検知器の方向tにおいて受け取った投影本体データを逆投影法処理で実現するように集積する。これらの特徴が、直線状スキャン経路によって決定される。収集データを平行なビームとして再転換するリビンニング(rebinning)方法と比較すると、直線フィルタ逆投影法アルゴリズムは、再構成するイメージの分解能をより良く維持するように各々の検知される有効な投影データを十分に使用でき、リビンニング方法よりはるかに低くなるデータ欠失の検出感度を発揮する。
【0048】
イメージ処理ユニット104が、データ収集ユニットから受け取る投影データを断層撮影イメージとして再構成し、再構成処理は以下を含む。イメージ処理ユニットが、直線フィルタ逆投影法アルゴリズムを使用することによって、データ収集方向においてデータ収集ユニットから受け取る投影データのフィルタ処理を生じさせ、断層撮影イメージを生成するように、検知器方向におけるフィルタ処理された投影データを逆投影法で実現するように集積する。イメージ処理ユニット104は、生成する断層画面を3−Dイメージとして更に合成できる。
【0049】
イメージ処理ユニット104が、データ収集ユニットから受け取る投影データを透視イメージとして再構成し、再構成処理は以下を含む。イメージ処理ユニットは、データ収集ユニットから受け取る投影データを、個々の透視又は複数の透視から透視イメージを形成するように合成する。前述の合成処理において、イメージ処理ユニットは、二つ以上の検知器アレイにおいてデータの特定の列又はより多くの列を使用することによってデータを合成できる。
【0050】
更に、データ収集ユニットから受け取る投影データをイメージとして再構成するイメージ処理ユニット104の処理は、以下の五つの処理態様のうちの一つの又は任意の組み合わせを採用することによって、データ収集ユニットから受け取る透過投影本体データを処理する工程を更に備える。その処理方法は、検知器の不整合補正、ビームハードニング(hardening)補正、散乱補正、金属アーチファクト補正、並びにイメージ処理及びパターン認識である。イメージ処理及びパターン認識は、以下の三つのうちの一つの又は任意の組み合わせを含む。それは、イメージエンハンスメント、エッジ検出、及び危険物知的識別である。
【0051】
イメージ処理ユニット104は、コンピュータ装置、コンピュータワークステーション又はコンピュータ一群とし得る。
表示ユニット105は、イメージ処理ユニット104によって入力される3−Dイメー
ジ又は透視イメージを表示するために使用される。表示ユニット105は、ブラウン管(CTR)ディスプレイ又は液晶ディスプレイとし得る。
【0052】
実施形態1
図3は、本発明の第一の実施形態による二つの直線状補助経路においてイメージ処理を行う荷物セキュリティ検査システムの平面図である。この実施形態において、二つのX線源があり、すなわち、線源Iと線源IIとが、放射線発生ユニット101として提供される。線源Iと線源IIとは、X線管、加速器放射線源又はアイソトープ源とし得る。特定のタイプのX線源が、検査対象物の大きさおよび実用の用途によって使用される。X線源は、放射線ビームを開放角90度以内に照射し、水平方向において検査対象物を照射する。
【0053】
機械的搬送ユニット102における制御手段は、一定の速度で移動補助経路Iと移動補助経路IIとに沿って平行移動するように、検査対象物を運ぶ搬送手段を制御し、更に、検査対象物が、移動補助経路Iと移動補助経路IIとの結合部において一定の速度で移動するときに回転しない。
【0054】
データ収集ユニット103は、線源Iと線源IIとの反対側にそれぞれ配置される二組の平面アレイ検知器である。平面アレイ検知器の検知面は、機械的搬送ユニット102の搬送手段の伝送プラットフォームが配置される箇所の面に垂直である。二組の平面アレイ検知器の検知面は、90度の角度を形成する。
【0055】
イメージ処理ユニット104は、セキュリティ検査システム全体の制御、データ送信、イメージ再構成及びデータ処理のような作業を実行するコンピュータワークステーションである。
【0056】
データ収集ユニット103の二組の平面アレイ検知器によって検知する透過投影本体データが、コンピュータワークステーションに入力された後で、コンピュータワークステーションが、直線フィルタ逆投影法アルゴリズムによって、受け取った投影データを、検査イメージの透視イメージ、断層撮影イメージ又は3−Dイメージとして再構成し、再構成
された透視イメージ、断層撮影イメージ又は3−Dイメージをディスプレイ上に表示する

【0057】
図4は、図3の荷物セキュリティ検査システムの単一の直線状補助経路の上のスキャン処理を示す概略図である。X線源は、水平の開放角Φを有する放射線ビームを、水平方向において、一定の速度で搬送ベルト上を移動する検査対象物に照射するように放射し、検査対象物を透過した後の放射線ビームは、平面アレイ検知器の検知面に到達する。平面アレイ検知器の検知面は、放射線ビームの透過投影データを検知し、コンピュータに出力するために、それら透過投影データを放射線ビームの投影データに合成する。コンピュータは、直線フィルタ逆投影法アルゴリズムにより、受け取った投影データのイメージ再構成を実行し、次にディスプレイ上に再構成イメージを表示する。この実施形態において、荷物セキュリティ検査システムが直線フィルタ逆投影法のアルゴリズムを使用することによって断層撮影イメージを再構成する場合、XY平面における収集データの断層撮影イメージが図5に示され、システムによって取得された再構成された断層撮影イメージと透視イメージとが図6に示される。
【0058】
図5は、手荷物モデルを使用することによるシミュレート実験結果に関する図であり、中心レイヤにおける再構成結果を示す。図5−1は、このモデルの元の図であり、図5−2は、xy平面において再構成された断層撮影イメージの概略図である。
【0059】
図6において、上側部分に連続的に配列される四つの図は、それぞれ、手荷物モデルの再構成前と後との元の図、xz平面及びyz平面における透視イメージを示す概略図であり、図6−1は、手荷物モデルの再構成前の、xz平面の中心レイヤにおける元の図の概
略図であり、図6−2は、手荷物モデルの再構成後の、xz平面の中心レイヤにおける透視イメージの概略図であり、図6−3は、手荷物モデルの再構成前の、yz平面の中心レイヤにおける元の図の概略図であり、図6−4は、手荷物モデルの再構成後の、yz平面の中心レイヤにおける透視イメージの概略図である。図6−5は、手荷物モデルの再構成後の、xz平面における透視イメージの概略図である。
実施形態2
図7は、本発明の第二の実施形態による複数の直線状補助経路においてイメージ処理を行う荷物セキュリティ検査システムの平面図である。
【0060】
この実施形態では、セキュリティ検査システム全体のスキャン処理は、四つの直線状補助経路からなる。四つのX線源、すなわち、放射線発生ユニットとして提供される線源I、線源II、線源III、線源IVである。線源I、線源II、線源III、線源IVは、X線管、加速器放射線源又はアイソトープ源とし得る。特定のタイプのX線源は、検査対象物の大きさ及び実用の用途によって使用される。
【0061】
各々のX線源は、放射線ビームを開放角45度以内に照射し、検知器アレイの検知面と対応する線源との間に形成される角度の合計が、180度である。
機械的搬送ユニットにおける制御手段は、移動補助経路I、移動補助経路II、移動補助経路III、及び移動補助経路IVに沿って検査対象物を一定の速度で平行移動するように運ぶための搬送手段を制御する。更に、検査対象物は、移動補助経路の結合部において一定の速度で移動するときに回転しない。
【0062】
データ収集ユニット4は、線源I、線源II、線源III、線源IVの反対側にそれぞれ配置された4組の平面アレイ検知器である。平面アレイ検知器の検知面は、機械的搬送ユニットの搬送手段の伝送プラットフォームが配置される箇所の面に垂直である。隣接する二組の平面アレイ検知器の検知面は、130度の角度を形成する。
【0063】
イメージ処理ユニットは、セキュリティ検査システム全体の制御、データ送信、イメージ再構成、データ処理のような作業を実行するためのコンピュータワークステーションである。
【0064】
データ収集ユニットの4組の平面アレイ検知器によって検知する投影データが、コンピュータワークステーションに入力された後で、コンピュータワークステーションは、受け取った投影データを直線フィルタ逆投影法アルゴリズムにより、検査イメージの透視イメージ、断層撮影イメージ、又は3−Dイメージとして再構成し、再構成された透視イメージ、断層撮影イメージ、又は3−Dイメージをディスプレイ上に表示する。
【0065】
この実施形態において、直線フィルタ逆投影法アルゴリズムによって再構成する断層撮影イメージの結果又は直線フィルタ逆投影法アルゴリズムによって再構成される断層撮影イメージ及び透視イメージは、上記の実施形態1におけるものと同一である。簡潔にするために、これ以上の詳細な説明はここではしない。
【0066】
上述の記載は、本発明の実施形態のみを示し、本発明を制限するために使用されない。本発明において開示される内容によれば、当業者は、本発明の保護範囲に全て含まれ得るべき同一の、代替の解決手段を明らかに考え得る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明による複数の直線状補助経路上においてイメージ処理を行う荷物セキュリティ検査システムの技術的な解決手段の全体を示すブロック図である。
【図2】L型状平面アレイ検知器の概略図である。
【図3】本発明の第一の実施形態による二つの直線状補助経路においてイメージ処理を行う荷物セキュリティ検査システムの平面図である。
【図4】図3の荷物セキュリティ検査システムにおける単一の直線状補助経路上でのスキャン処理を示す概略図である。
【図5】三次元イメージが、図3に基づく直線フィルタ逆投影法アルゴリズムを使用することによって再構成されるときの、xy平面における収集データの断層撮影イメージの概略図である。
【図6】図3に基づく直線フィルタ逆投影法アルゴリズムを使用することによって再構成される断層撮影イメージと本発明のシステムによって取得される透視イメージとを示す。
【図7】本発明の第二の実施形態による複数の直線状補助経路においてイメージ処理を行う荷物セキュリティ検査システムの平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物セキュリティ検査システムであって、該システムを通過するように移動する検査対象物を検査するためのシステムにおいて、
前記検査対象物を支持し且つ搬送し、前記システム内に前記検査対象物の移動経路を画定するための機械的搬送ユニットと、
前記検査対象物を透過する放射線ビームを発生させるための放射線発生ユニットと、
前記検査対象物を既に透過した放射線についての透過データを収集し且つ前記透過データを処理するためのデータ収集ユニットと、を備え、
前記検査対象物の前記移動経路が、互いに対して所定の角度で配置される少なくとも二つの直線状補助経路を備え、
前記データ収集ユニットが、放射線ビームを検知するための少なくとも二つの検知器アレイを備え、各検知器アレイは一つの直線状補助経路に対応し、各々の前記検知器アレイの検知面が、対応する前記直線状補助経路に平行に配置され、
使用時において、前記放射線発生ユニットと前記データ収集ユニットとが静止しているとともに、前記検査対象物が移動経路に沿って進み、且つ前記検査対象物が前記少なくとも二つの直線状補助経路上を回転することなく平行移動のみすることを特徴とするシステム。
【請求項2】
イメージ処理ユニットを更に備え、
前記データ収集ユニットは、前記イメージ処理ユニットに出力するために前記収集された透過データを投影データに合成し、
該投影データは、前記イメージ処理ユニットによってイメージとして再構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記イメージ処理ユニットによって再構成される前記イメージを表示するための表示ユニットを更に備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記放射線発生ユニットが、全ての検知器アレイによって共有される一つの放射線源を備える、又は、
前記放射線発生ユニットが複数の放射線源を備え、各検知器アレイが一つの放射線源に対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記機械的搬送ユニットが、前記検査対象物を支持し且つ搬送するための搬送手段と、前記移動経路に沿った前記検査対象物の移動を制御するための制御手段とを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記機械的搬送ユニットは、前記検査対象物が前記少なくとも二つの直線状補助経路の各々の上を回転することなく平行移動のみするように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記機械的搬送ユニットは、前記検査対象物が前記少なくとも二つの直線状補助経路の各々の上を回転することなく一定の速度で平行移動のみするように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記検査対象物の前記移動経路が、前記少なくとも二つの直線状補助経路における隣接する直線状補助経路の間に結合部を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記機械的搬送ユニットは、前記検査対象物が前記結合部において回転することなく平行移動のみするように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記機械的搬送ユニットは、前記検査対象物が前記移動経路全体上を回転することなく平行移動のみするように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記機械的搬送ユニットは、前記検査対象物が前記移動経路全体上を回転することなく一定の速度で平行移動のみするように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記放射線発生ユニットと前記データ収集ユニットとが、前記移動経路の両側にそれぞれ設けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記データ収集ユニットが、
前記検知器アレイによって検知された前記放射線ビーム信号を前記透過データに変換するための信号変換回路と、
該信号変換回路からの前記透過データを前記投影データに合成するためのデータ処理回路と、
放射線ビーム信号を検知する前記検知器アレイと前記投影データを伝送する前記データ処理回路との同期特性を制御するための論理制御回路と、
を更に備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項14】
前記検知器アレイが、直線アレイ検知器又は平面アレイ検知器である、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記直線アレイ検知器が等間隔又は等角度で配列され、前記平面アレイ検知器が平面パネル検知器、筒状検知器又はL型状検知器である、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記イメージ処理ユニットが、前記投影データを透視イメージ及び断層撮影イメージの一方又は両方として再構成する、請求項2に記載のシステム。
【請求項17】
前記イメージ処理ユニットが、直線フィルタ逆投影法アルゴリズムによる前記断層撮影イメージを生成する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記検知器アレイが平面アレイ検知器であり、前記イメージ処理ユニットが複数の断層撮影イメージを三次元イメージとして更に合成する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記イメージ処理ユニットが、所定の視角における透視イメージ又は複数の視角における複数の透視イメージを形成するように前記投影データを合成する、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記イメージ処理ユニットが、検知器の不整合、ハードニング、散乱補正、金属アーチファクト補正、並びにイメージ処理及びパターン認識の五つの処理態様の一つ又は任意の組み合わせを採用することにより前記投影データを処理する、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
前記イメージ処理及びパターン認識が、イメージエンハンスメント、エッジ検出、及び危険物知的識別の三つの処理態様の一つ又は任意の組み合わせを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
それぞれの放射線源と関連する検知器アレイの前記検知面の開放角の合計が、実質上180度である、請求項4に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図7】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−536320(P2009−536320A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508091(P2009−508091)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/CN2007/001413
【国際公開番号】WO2007/128216
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(502192546)清華大学 (20)
【出願人】(503414751)同方威視技術股▲分▼有限公司 (18)
【Fターム(参考)】