説明

荷物運搬車両

【課題】 例えば空港において、航空機の貨物室から手荷物受け取りカウンターまで乗客の荷物を運搬する場合であって、車両の後部から荷物を積み込んで側部から運び出す形態の荷物運搬車両において、荷室に移動可能に設けた移動荷台上に効率よく荷物を積み込むことができるとともに、積み込んだ荷物が走行中に荷崩れしないようにする。
【解決手段】 移動荷台27の床部20の側部に当該床部20と分離可能に連結された側壁部40,41を設けて、荷物積み込み時には連結して両側壁部40,41間にいっぱいに荷物を積み込み、運び出す時には、側壁部40を単独で移動させてドア開口部を開放する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば空港において、航空機の貨物室に積載した乗客の荷物(例えば、スーツケースやボストンバック等)を旅客ターミナルビルの荷物受け取りカウンタまで搬送するための車両として好適な荷物運搬車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低速時は内燃機関ではなく電気モータで走行することにより、排出ガスを大幅に低減し、また走行燃費を大幅に向上させることができ、これにより大気汚染等の環境汚染を抑制することができるいわゆるハイブリッド車両が普及してきている。このハイブリッド車両は、現在いわゆるワンボックスカーあるいはミニバンクラスまでの大きさの主として乗用車に適用されており、トラック等の貨物車両は依然としてディーゼルエンジン等を搭載したものが主流となっている。
このため、例えば空港において、航空機と旅客ターミナルビルとの間で乗客の荷物を搬送する荷物運搬車両としては、通常のガソリン車あるいはディーゼル車が用いられており、いわゆるハイブリッド車は用いられていない。
また、従来、例えば特開平10-175714号公報に開示されているように箱形荷室を備えたトラック等の貨物車両については、荷物の積み下ろし時の利便性を考慮したものが種々提供されているが、現在ワンボックスカーやミニバン等のハイブリッド車について航空機用荷物の積み下ろし時の利便性を考慮した荷物運搬車両は提供されていなかった。
【特許文献1】特開平10-175714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、環境にやさしい空港を実現するための一環として、現在ハイブリッド車として普及しているワンボックス車両等であって、航空機荷物の運搬車両として好適な荷物運搬車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このため、本発明は、特許請求の範囲の各請求項に記載した構成の荷物運搬車両とした。
請求項1記載の荷物運搬車両によれば、切り換え手段により側壁部が一体で移動する状態とした移動荷台を後ろ側に移動させることにより、後部開口部を経てこの移動荷台上に荷物を積み込むことができる。移動荷台上に荷物を積み込んだ後、移動荷台を荷室の前側に移動させる。この時、側壁部が移動荷台と一体で荷室の前側に移動するため、この側壁部によって車両移動中における積み荷の荷崩れが防止される。荷崩れを防止しつつ移動した移動先において、切り換え手段の切り換え動作により側壁部を移動荷台とは独立して移動可能な状態として、この側壁部を単独で移動させることにより車両側部の開口部を経て移動荷台上に積み込んだ荷物を車外に運び出すことができる。
移動荷台を移動させる時には、切り換え手段により側壁部がこの移動荷台と一体移動する状態とすることにより、当該移動荷台上に積み込んだ荷物の荷崩れを防止することができる。
このように荷物を積み込み、また運び出すことができる当該荷物運搬車両は、例えば航空機の貨物室に積み込まれた多数の荷物(手荷物)を旅客ターミナルビルの荷物受け取りカウンターに運ぶ場合に好適に用いることができる。すなわち、航空機の貨物室搬出口に当該荷物運搬車両の後部開口部を向けた状態に当該荷物運搬車両を接近させ、この位置で荷物を航空機の貨物室から移動荷台上に移載して積み込む。この段階で移動荷台の側方には側壁部が位置しており、この側壁部いっぱいに荷物を積み込むことができる。
移動荷台上に一定量の荷物を積み込んだ後、当該移動荷台を荷室前側に移動させる。この時、側壁部も移動荷台と一体で移動するので、荷物を積み込んだ状態のまま荷室前側に移動させることができ、これにより荷崩れを防止することができる。移動荷台を荷室前側に移動させた後、当該荷物運搬車両を移動して、旅客ターミナルビルの荷物受け取りカウンターに横付けする。車両移動中においても、側壁部によって荷物の荷崩れが防止される。
荷物受け取りカウンターに到着後、切り換え手段の切り換え動作により側壁部を単独で移動させることにより、移動荷台の側方から退避させる。これにより当該荷物運搬車両の側部開口部を経て移動荷台上の荷物を車外(この場合荷物受け取りカウンター)へ運び出すことができる。
このように、車両の後部から荷物を積み込み、側部から荷物を運び出す(あるいはその逆)必要がある場合に、車両側部のスライドドアと後部のリヤゲートを備えたワンボックスカーやミニバン等を荷物運搬車両として利用することができることから、このワンボックスカーに設定されているいわゆるハイブリッド車を荷物運搬車両として用いることができる。空港の荷物運搬作業にハイブリッド車を用いることにより排出ガスを低減して大気汚染を防止することができるとともに、燃料の消費を抑制することができる。
【0005】
請求項2記載の荷物運搬車両によれば、移動荷台上に積み込んだ荷物の前方への荷崩れを防止することができる。
請求項3記載の荷物運搬車両によれば、ロック装置により側壁部を移動荷台に結合しておくことにより当該側壁部を常時移動荷台と一体で移動させることができる。また、車両側部の開口部を経てロック装置を車室外からアンロック操作することにより、当該側壁部を単独で移動させることができる。このため、移動荷台を側壁部と一体で荷室前側に移動させた後、側壁部を単独で例えば荷室後方に移動させることにより、移動荷台上に積み込んだ荷物を車両側部の開口部を経て車室外に運び出すことができる。
請求項4記載の荷物運搬車両によれば、補助壁部を上側の傾動位置に位置させておくことにより、移動荷台と側壁部のとの間における荷崩れが防止される。また、補助壁部を下側の傾動位置に位置させておくことにより、車両側部の開口部から移動荷台上の荷物を運び出す際に、荷物を楽に車両側部の開口部側に移動させることができる。
請求項5記載の荷物運搬車両によれば、バックドアが上下または左右旋回式の場合、車両後方にこれらを開放するスペースがない場合であっても、後部開口部を開放することができる。このため、当該荷物運搬車両を例えば航空機の貨物搬出口により一層接近させることができ、これにより航空機の貨物室と当該荷物運搬車両との間で荷物の積み込み、運び出しを楽に行うことができる。
請求項6記載の荷物運搬車両によれば、ステップ上に人が乗り上がって荷物を中継することにより、車両後部の開口部を経て移動荷台と車室外との間における荷物積み込み、運び出しを楽に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1及び図2は、本実施形態の荷物運搬車両1の全体を示している。この荷物運搬車両1は、エンジンとモータを併用するハイブリッド式の駆動機構を搭載したいわゆるワンボックスカー(又はミニバン)であり、車体Bの内部に荷室12を備えるとともに、この荷室12に対して荷物の積み下ろしを行うための後部の開口部2と左右両側部の開口部3,4を備えている。後部開口部2は、シャッター6により開閉される。このシャッター6は、後部開口部2を開放したとき車両ルーフ5に搭載した格納ケース6内に格納される。左右の開口部3,4は、それぞれスライドドア7,8によって開閉される。この左右のスライドドア7,8は、通常この種のワンボックスカーに装備されるものと同様であり、本実施形態において特に変更を要しない。
車室内前部には、運転席10と助手席11が配置されており、これらの後方のスペースが荷室12とされている。この荷室12は、上記後部開口部2と左右開口部3,4によって開放される。この荷室12内に、移動荷台27と左右の側壁部40,41が設けられている。これらの詳細が図3に示されている。
移動荷台27は、荷室12の底部を区画する車両フロア(荷室フロア13)に沿って前後に移動可能に設けられた平板形状の床部20と、この床部20の前部に設けた荷崩れ防止用の前壁部23と、床部20の左右側部に上下に傾動可能に設けた補助壁部25,26を備えている。
荷室フロア13の左右側部にはホイールハウスカバー14,15が荷室12側に盛り上がるように配置されている。床部20の幅は、この両ホイールハウスカバー14,15間を移動可能な幅(車幅方向の長さ)に設定されている。また、この床部20の長さ(車両前後方向の長さ)は、荷室フロア13の長さ(車両前後方向の長さ)の概ね半分程度の寸法に設定されている。
この床部20の支持構造の詳細が図4及び図5に示されている。この床部20は、その下面四隅に支持ローラ21〜21を備えている。各支持ローラ21は、ブラケット22により前後方向に回転自在に支持されている。この四箇所の支持ローラ21〜21を介して当該移動荷台20が荷室フロア13上に載置されている。従って、移動荷台20上に積み込まれた荷物の重量は、この四箇所の支持ローラ21〜21を介して荷室フロア13で受けられる。
【0007】
荷室フロア13上には、左右一対の駆動機構30,30が配置されている。両駆動機構30,30は、それぞれ駆動モータ31とこの駆動モータ31の出力軸に取り付けた駆動スプロケット32と、アイドラスプロケット33と駆動チェーン34を備えている。両駆動モータ31,31及び両アイドラスプロケット33,33は、それぞれ荷室12の前後方向ほぼ中央において荷室フロア13上に配置されている。駆動スプロケット32とアイドラスプロケット33に1本の駆動チェーン34が掛け渡されている。両駆動チェーン34,34のそれぞれの前端部34aは床部20の前端下面に固定され、後端部34bは床部20の後端下面に固定されている。図4に示すように、両チェーン34,34は、相互に左右対称の経路に沿って掛け渡されている。このため、両駆動モータ31,31を相互に反対方向に起動させることにより、両駆動チェーン34,34が同じ方向に移動し、従って床部20ひいては移動荷台27が各支持ローラ21を転動させながら荷室フロア13上を前側又は後ろ側に移動する。図3では、移動荷台27が前側の「荷下ろし位置」に移動した状態が示され、図4では荷下ろし位置に移動した移動荷台27が二点鎖線で示され、後ろ側の「荷積み位置」に移動した移動荷台27の床部20が実線で示されている。
両駆動モータ31,31の起動、停止、回転方向等については、図示省略した制御装置によって制御される。また、移動荷台27の荷下ろし位置及び荷積み位置は図示省略したセンサによって検知され、このセンサが出力する信号に基づいて両駆動モータ31,31の回転方向が上記制御装置によって適切に制御される。さらに、図示は省略したが、当該荷物運搬車両1の運転席10付近、助手席11付近及び後部開口部2付近には操作スイッチが配置されており、この操作スイッチを操作することによって移動荷台20を任意の方向に移動操作することができる。
【0008】
また、図5に示すように床部20の左右側部に沿って、荷室フロア13上には2本のガイドレール35,36が相互に平行に配置されている。この両ガイドレール35,36によって床部20の車幅方向の変位が規制されている。両ガイドレール35,36には、それぞれ荷室12の内方へ水平に張り出す係合縁35a,36aがその長手方向全長にわたって形成されている。
一方、床部20の左右側部には、規制縁20a,20aがその全長にわたってそれぞれ側方へ張り出す状態に設けられている。この両規制縁20a,20aの上側に、ガイドレール35,36の係合縁35a,36aがそれぞれ張り出している。このガイドレール35,36によって床部20ひいては移動荷台27の車幅方向の変位が規制されるとともに、荷室フロア13からの浮き上がりが規制される。規制縁20a,20aには、樹脂板が貼り付けられている。この樹脂板によって、当該移動荷台27の床部20が上方へわずかに変位した際における規制縁20a,20aとガイドレール35,36の係合縁35a,36aとの干渉による衝撃が緩和され、又異音の発生が抑制される。
【0009】
以上のように荷室フロア13上に支持された床部20の前部に、荷崩れ防止用の前壁部23が当該床部20の前部に沿って上方へ起立する状態に設けられている。この前壁部23は移動荷台20に固定されているため、移動荷台20と一体で移動する。この前壁部23には、多数の小径孔が打ち抜かれた鋼板(いわゆるパンチングメタル)が用いられている。
この前壁部23の左右側部は、それぞれ左右側方へ張り出して後述する左右の側壁部40,41の前方に至っている。これについては後述する。
床部20の左右側部には、それぞれ平板形状の補助壁部25,26がヒンジを介して上下に傾動可能に取り付けられている。この補助壁部25,26の上下傾動操作は、作業者の手動操作によりなされる。この補助壁部25,26は、床部20が図4において二点鎖線で示す荷下ろし位置に位置する状態では水平位置に戻される。床部20がこの荷下ろし位置に位置する状態において、この補助壁部25,26が水平位置に戻されることにより、実質的に床部20が当該補助壁部25,26の幅分だけドア開口部3,4側に延長された状態となるため、当該床部20上に積み込んだ荷物をよりドア開口部3,4寄りに近づけることができ、これにより車室外の作業者がドア開口部3,4を経て荷物を車室外へ荷下ろしし易くなる。
一方、図4中実線で示すように床部20が荷積み位置に位置する時、及び前後方向に移動する時には、この補助壁部25,26は、図5に示すように水平位置に対して概ね60°上側に傾斜した位置(以下、60°傾斜位置という)に保持される。補助壁部25,26の60°傾斜位置への傾動操作は、作業者の手動操作によりなされ、60°傾斜位置には後述するロック装置24によって保持される。
左右の補助壁部25,26が60°傾斜位置に保持されることにより、両補助壁部25,26のホイールハウスカバー14,15に対する干渉が回避され、ひいては床部20のスムーズな前後移動がなされる。この両補助壁部25,26の60°傾斜位置は、図3に示すように前壁部23の左右両端部に取り付けたロック装置24,24によってロックされる。また、両補助壁部25,26の水平位置は、ガイドレール35,36に沿って荷室フロア13上に取り付けた保持材58,58に載せ掛けられることにより保持される。図5では、60°傾斜位置に位置する補助壁部25,26が実線で示され、水平位置に位置する補助壁部25,26が二点鎖線で示されている。
【0010】
次に、左右の側壁部40,41は、荷室12の側部を区画する車両サイドパネルに沿って前後に移動可能に支持されて、当該荷室12を車両側方へ開放する引き戸形式の開閉扉として機能する。両側壁部40,41は、車両ルーフ5の側部に沿って吊り下げられている。両側壁部40,41は、相互に左右対称の構成によって支持されているので、以下図3及び図6に基づいて左側の側壁部40の支持構造について説明する。車両ルーフ5の室内側の左側部には、1本のスライドレール45がブラケット46〜48を介して当該左側部に沿って取り付けられている。このスライドレール45及びブラケット46〜48は、カバー49によってその全体が覆われている。カバー49はブラケット49a〜49aを介して車両ルーフ5の室内側に固定されている。
スライドレール45には、それぞれ二つのローラ50a,50aを備えた前後二箇所のスライダ部50b,50bを介して断面コ字形の上部支持枠50が前後にスライド自在に支持されている。この上部支持枠50に、ブラケット51,51を介して側壁部40の上部が支持され、これにより当該側壁部40がスライドレール45に吊り下げ状態で前後方向にスライド自在に支持されている。
側壁部40は、矩形の枠体40aの内側に前記前壁部23と同様パンチングメタル40bを張ったもので、左側のドア開口部3と同程度の前後幅を有している。
この側壁部40の上下幅は、前記ホイールハウスカバー14に干渉しない寸法に設定されている。この側壁部40の下部は、多段式のスライドレール55を介してホイールハウスカバー14の上面に支持されている。この多段式スライドレール55は、3本のレール55a,55b,55cが相互にスライド自在に組み付けられたもので、通常市販されているものが用いられている。このスライドレール55の最も内側のスライドレール55aの前後二箇所には、連結ピン55d,55eが上方へ突き出す状態に固定されている。この二本の連結ピン55d,55eは、側壁部40の枠体40aの下面に設けた連結孔40cに挿入されている。このスライドレール55によって、側壁部40の下部がホイールハウスカバー14(荷室フロア13)に対してスライド自在に支持されている。
【0011】
この側壁部40の前部には、ロック装置42が取り付けられている。このロック装置42が、特許請求の範囲に記載した切り換え手段の一例に相当する。このロック装置42によって、当該側壁部40の前部が前壁部23の左端部に結合される。また、図示は省略されているが、右側の側壁部41も同様のロック装置42によって前壁部23の右端部に結合される。このため、この左右のロック装置42,42によって側壁部40,41がそれぞれ前壁部23の左右端部に結合された状態では、両側壁部40,41は移動荷台27と一体で前後方向に移動する。図3に示すように移動荷台27が荷下ろし位置に位置する状態では、両側壁部40,41がそれぞれドア開口部3,4を塞ぐこととなる位置に位置する。
移動荷台27を荷下ろし位置に位置させた状態で、ロック装置42を車室外からドア開口部3を経てアンロック操作することができる。ロック装置42をアンロック操作すると、側壁部40を単独で荷室12の後ろ側へ移動させることができる。側壁部40を単独で荷室12の後ろ側に移動させると、ドア開口部3を経て床部20上の荷物を車室外へ運び出すことができる。床部20上の荷物を全て車室外へ運び出した後、側壁部40を手動操作にて前側に移動させれば、この側壁部40はロック装置42により前壁23の左端部に結合される。従って、その後移動荷台27を荷下ろし位置に向けて移動させる段階では側壁部40は移動荷台27と一体で移動する。
次に、図3に示すようにドア開口部3,4の後部には、それぞれウインドガラスが開閉不能であるクォータウインド56が設けられており、このクォータウインド56,56にはそれぞれガラス破損防止のためのパンチングメタル56aが嵌め込まれている。
また、図1及び図2に示すように後部開口部2の下部には、平板形状のステップ57が上下に回動可能に設けられている。このステップ57は、図1中二点鎖線で示すように上方へ回動してほぼ起立する位置に格納することができる。ステップ57の格納位置は、図示省略したロック装置によってロックされる。また、後部開口部2の下部に沿ってステップ受け58が設けられている。ステップ57は、図1中実線で示すように下方へ回動してこのステップ受け58に載せ掛けることにより、ほぼ水平位置に保持される。この水平位置に保持した状態のステップ57には、人が乗り上がって荷積み作業を行うことができる。
【0012】
以上のように構成した本実施形態の荷物運搬車両1によれば、例えば空港において、航空機の貨物室に積み込んだ乗客の荷物を積み込んで旅客ターミナルビルの荷物受け取りカウンターへ運搬する作業を効率よく行うことができる。
すなわち、図1に示すように当該荷物運搬車両1を後退させて、その後部を航空機60の貨物室搬出口61に向けた状態に停止させる。次に、シャッター6を上方へ開けて後部開口部2を開放するとともに、ステップ57を水平位置に取り出す。
次に、作業者の手動操作により左右の補助壁部25,26を60°傾斜位置に固定した後、図示省略した操作スイッチを操作して両駆動モータ31,31を起動させて、移動荷台27を荷積み位置に移動させる。この段階で、左右の側壁部40,41は、それぞれロック装置42により前壁部23ひいては移動荷台27に連結された状態となっていることにより、移動荷台27と一体で荷室12の後ろ側に移動する。また、左右の側壁部40,41の下部と床部20の左右側端部との間の隙間が、60°傾斜位置に保持した左右の補助壁部25,26によって塞がれた状態となる。すなわち、移動荷台27が荷積み位置に移動すると、荷室12の後ろ側半分のスペースに、床部20と前壁部23と左右の補助壁部25,26と左右の側壁部40,41により囲われた荷積みスペースが形成される。ステップ57に作業者が乗り上がって、航空機の貨物搬出口から順次荷物をこの荷積みスペースに移載する。
床部20上に荷物を積み込む際には、その両側方に側壁部40,41が起立状態で位置し、かつこの両側壁部40,41と床部20との間が補助壁部25,26により塞がれた状態となっていることから、積み込んだ荷物を荷崩れの心配をすることなく荷積みスペースの幅いっぱいに積み込むことができる。
床部20上に適量の荷物を積み込んだ後、操作スイッチを操作して移動荷台27を荷下ろし位置に移動させる。この段階で、前壁部23と左右の補助壁部25,26及び左右の側壁部40,41が床部20と一体で荷室12の前側に移動するので、床部20上に積み込んだ荷物が荷崩れを起こすことはない。移動荷台27が荷下ろし位置に停止した後、ステップ57を上方へ回動して格納するとともに、シャッター6を下げて後部開口部2を閉じる。
【0013】
こうして荷室12に荷物を積み込んだ後、当該荷物運搬車両1を走行させて旅客ターミナルビルの荷物受け取りカウンターへ移動する。当該車両1は、空港内であることから定められた低速度で走行され、従って電気モータで走行させることができるので、排気ガスをほとんど排出することなく走行することができ、この点で燃料(ガソリン)の消費を大幅に低減できるとともに、大気汚染の防止を図ることができる。
荷物受け取りカウンターでは、先ず左側のスライドドア7(右側から荷下ろしする場合は、右側のスライドドア8)を開いて、左側のドア開口部3を開放する。次に、左側のロック装置42をアンロック操作して、左側の側壁部41を単独で後ろ側に移動する。これにより荷室12の左側が開放され、これにより積み込んだ荷物をドア開口部3から車室外へ運び出すことができる。
なお、この際、作業者はロック装置24をアンロック操作して補助壁部25を水平位置に倒しておくことにより、床部20上の荷物をよりドア開口部3側に移動させやすくなり、従ってより楽に荷下ろし作業を行うことができる。
以上のようにして、全ての荷物を荷下ろしした後、作業者は補助壁部25を上方へ傾動操作して再度60°傾斜位置に保持するとともに、側壁部40を前側に戻してロック装置42により前壁23に結合させた状態とする。然る後操作スイッチを操作して移動荷台27を荷積み位置に移動させる。以上で、一回の荷物運搬作業が完了する。
【0014】
以上のように構成した荷物運搬車両1によれば、当該車両1の後部から荷物を積み込み、側部から荷物を運び出す形態の運搬作業を行う場合に、移動荷台27を荷室12の前部と後部との間を移動させることができるので、効率よく運搬作業を行うことができる。しかも、移動荷台27の両側方には側壁部40,41が位置しているので、床部20上に積み込んだ荷物の荷崩れを心配することなく、幅(両側壁部40,41間)いっぱいに荷物を積み込むことができる。また、床部20の前部には前壁部23が一体に設けられているので、荷物が前方へ荷崩れすることもない。
さらに、荷物を積み込んだ後、移動荷台27を前方の荷下ろし位置に移動させて、ロック装置42をアンロック操作すれば、左側または右側または双方の側壁部40,41を移動荷台27とは独立して後ろ側に移動してドア開口部3,4を開放することができ、これにより積み込んだ荷物を効率よく荷室12から運び出すことができる。
【0015】
以上説明した実施形態には、種々変更を加えることができる。例えば、補助壁部25,26は、ホイールハウスカバー14,15に干渉しない傾斜位置に固定した構成としてもよい。また、側壁部40,41の下部にホイールハウスカバー14,15に干渉しない傾斜角度で傾斜壁部を一体に設けて、例示した補助壁部に代えることもできる。
さらに、荷室12内にホイールハウスカバー14,15が張り出さず、荷室フロア13が全範囲にわたってフラットである場合には、左右の側壁部を下方へ延長して、荷室フロアに設けたスライドレールに支持する構成として、例示した補助壁部25,26を省略することもできる。この場合、側壁部の下部を荷室フロア13に支持するスライドレールは、前記例示した多段伸縮式のスライドレール55,55に代えて、荷室フロア13の前後方向全範囲にわたる長さの固定式スライドレールを用いることができる。
また、駆動スプロケット32,32を回転させて駆動チェーン34,34を移動させることにより、移動荷台27を前後に移動させる構成を例示したが、これに代えてラック・ピニオン機構等のその他の直動機構を用いる構成としてもよい。
さらに、駆動機構30,30を省略して、手動操作により移動荷台を前後に移動させる構成としてもよい。
また、荷室後ろ側に単独移動させた側壁部40,41は、手動操作により前側に戻してロック装置42により前壁に結合させる構成を例示したが、当該側壁部40,41を荷室後ろ側に位置させたまま移動荷台27を荷積み位置に移動させると、この側壁部40,41がロック装置42を介してこの移動荷台27に自動的に連結される構成としてもよい。この構成によれば、上記作業者の手動操作による手間を掛けることなく、床部20上に荷物を積み込んだ後、移動荷台27を前方の荷下ろし位置に移動させる際に、必ず側壁部40,41が一体で荷室12の前側に移動するので積み込んだ荷物の荷崩れを確実に防止することができる。
また、後部開口部2から荷物を積み込んで、側部のドア開口部3から荷物を運び出す場合を例示したが、逆に、ドア開口部3(又は4)から荷物を積み込んで、後部開口部2から荷物を運び出す場合にも同様に適用することができる。
さらに、空港において、航空機の貨物室と旅客ターミナルビルの荷物受け取りカウンターとの間で荷物を運搬する作業に用いる荷物運搬車両を例示したが、本発明に係る荷物運搬車両はその他の形態の荷物運搬作業に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を示す図であって、荷物運搬車両の側面図である。
【図2】本発明の実施形態を示す図であって、荷物運搬車両の平面図である。
【図3】本発明の実施形態を示す図であって、荷室を右斜め後方から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施形態を示す図であって、荷室の平面図である。
【図5】本発明の実施形態を示す図であって、荷室を後方から見た図である。
【図6】本発明の実施形態を示す図であって、左側の側壁部の支持構造を後方から見た縦断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1…荷物運搬車両
2…後部開口部
3…ドア開口部(左側)
4…ドア開口部(右側)
5…車両ルーフ
6…シャッター
7…左スライドドア
8…右スライドドア
12…荷室
13…荷室フロア
14…左側ホイールハウスカバー
20…床部
23…前壁部
25…補助壁部(左側)
26…補助壁部(右側)
27…移動荷台
30…駆動機構
31…駆動モータ
34…駆動チェーン
40…側壁部(左側)
41…側壁部(右側)
42…ロック装置(切り換え手段)
45…スライドレール
57…ステップ
60…航空機
61…貨物搬出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に荷室を備えるとともに後部と側部に前記荷室への荷物積み下ろし用の開口部を備えた車体と、荷物を載置して前記荷室のフロアに沿って前後に移動可能であり、前側に移動させると前記側部開口部を経て荷物を積み下ろし可能で、後ろ側に移動させると前記後部開口部を経て荷物を積み下ろし可能な移動荷台と、前記荷室の側部に沿って移動可能に設けられた荷崩れ防止用の側壁部と、該側壁部が前記移動荷台と一体で移動する状態と該側壁部が前記移動荷台とは独立して移動可能な状態とに切り換えることができる切り換え手段を備えた荷物運搬車両。
【請求項2】
請求項1記載の荷物運搬車両であって、前記移動荷台が、その前部に荷崩れ防止用の前壁部を備えた荷物運搬車両。
【請求項3】
請求項1又は2記載の荷物運搬車両であって、前記切り換え手段として、人が前記荷室の側部開口部を経て車外から操作可能で、前記側壁部と前記移動荷台とを結合分離可能なロック装置を備えた荷物運搬車両。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の荷物運搬車両であって、前記移動荷台が、その側部に上下に傾動可能に設けられ、上側の傾動位置に保持されて前記移動荷台と前記側壁部との間を閉塞し、下側の傾動位置で前記移動荷台と面一に保持される補助壁部を備えた荷物運搬車両。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の荷物運搬車両であって、車両後部の開口部を開閉するシャッターを備えた荷物運搬車両。
【請求項6】
請求項1記載の荷物運搬車両であって、車両後部に、水平に位置させて人が乗り上がることができ、該水平位置から上方へ回動して車両後部に沿って格納可能なステップを備えた荷物運搬車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−168691(P2006−168691A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367995(P2004−367995)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】