説明

荷重、磨耗、および感染を感知するための生体整形外科インプラント診断装置

整形外科インプラントにおける荷重、磨耗、および感染の生体診断を提供するための装置である。この装置は、インプラントと関連付けられた少なくとも1つの荷重センサと、インプラントと関連付けられた少なくとも1つの温度センサと、インプラントと関連付けられた少なくとも1つの振動センサと、上記センサと動作的に結合された少なくとも1つの信号処理装置とを有する。信号処理装置は、上記センサから出力信号を受信し、この出力信号に対応する信号を送信するように動作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国エネルギー省によりUT−Battelle,LLC(有限責任会社)に認められた契約番号DEAC05−00OR22725の下で政府支援により行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
本発明は、診断用医療機器および処置に関し、より詳細には、生理学的パラメータを監視するための移植可能な装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変形関節症およびその他の疾病に冒された膝関節の置換処置は、1960年代前半に始まった。この処置の成功率は、その後数十年に大幅に改善された。しかし、推定22,000件の膝関節置換物が毎年改修されている。他の関節置換手術の改修も一般的である。患者の年齢に関係なく、人工器官はどれも一生涯持ちこたえると見込めるように、まだ、人工膝関節の機械的な面および摩耗特性を改善する必要がある。一般の患者に埋め込まれた器具について、医師が診断できる道具を改善する必要もある。
【0003】
全人工膝関節置換術(TKA)のための人工器官を設計する際の問題の大半は、荷重条件に関する利用可能な生体データがほとんどないことである。利用可能なデータの大半は、数学モデルまたは死体の研究から導き出されている。計器が装着されたインプラントを使用したデータは、極めて限られた量しか入手できない。モデル化データを実際のデータで検証できないために、モデル化データの信頼性には懸念が存在する。死体を使用して、人間がもつ力と動きを作り出すのは困難である。生きている人間についてのデータを収集するために使用されてきたシステムの多くは、少数の被験者に使用され、したがってこのデータを多数の個体に適用するには疑問の余地がある。こういったシステムは、数多くの器具で長期間にわたって使用するようには、あるいは商業ベースで製造するようには設計されていない。
【0004】
膝蓋大腿骨表面置換の結果生じる合併症は、全人工膝関節置換術(TKA)再置換のうち半数に起因している。大抵の合併症は、外科的技術の誤り、人工器官の不十分な設計、またはしゃがむなどの特定の動作中における、体重の最大7、8倍という膝蓋大腿への過大な荷重によって引き起こされる。しかし、多くの場合、乏しい膝の運動学と、人工器官コンポーネントに加わる力への不十分な理解が、磨耗、アライメント異常、または下記の合併症に関連する設計上の不備に大きく関与する。
【0005】
膝蓋大腿の合併症は、TKA失敗の顕著な原因である。最も一般的なTKA合併症は、膝蓋大腿亜脱臼(膝の内側または外側への膝蓋骨脱臼)であり、これは、いくつかの一連の合併症のうちの最大29パーセントで生じ、膝蓋大腿の痛みおよび摩擦音、コンポーネントの磨耗、故障、緩みおよび/または破損をもたらす。膝蓋骨コンポーネントの故障を招く他の合併症は、大腿骨、脛骨または膝蓋骨の各コンポーネントの位置異常、インプラントの不十分な設計、膝蓋骨骨折、アライメント異常、不十分な膝蓋骨切除、壊死虚血壊死、および再置換TKAである。
【0006】
かかる合併症によって、多くの外科医は、残りの関節軟骨が良好である変形関節症の患者の膝蓋骨表面置換を避けるようになる。しかし、複数の研究で、表面置換を行わない膝蓋大腿骨の問題の高まりが指摘されており、非表面置換膝蓋骨が機能しなくなった1次的なTKA後の2次的な表面置換は、1次的なTKA時に行う表面置換に劣ると判明している。
【0007】
Sharkey他の、1機関における1997〜2000年の再置換総数(212件)に関する2002年次報告では、早期故障の起因は、感染(25.4%)、緩み(16.9%)、不安定(21.2%)、膝伸展機構欠陥(6.6%)、膝蓋骨の虚血壊死(4.2%)、および単独膝蓋骨表面置換(0.9%)である。全体的な故障の一般的な原因は、ポリエチレンの磨耗(25%)、非感染性の緩み(24.1%)、不安定(21.2%)、感染(17.5%)、関節繊維症(14.6%)、アライメント異常(11.8%)、膝伸展機構欠陥(6.6%)、膝蓋骨壊死(4.2%)、人工器官プロステシス周辺骨折(2.8%)、および膝蓋骨表面置換の必要性(0.9%)であった。アライメント異常が、再置換が必要な全インプラントのうちの11.8%に存在した。Fehring他は、440人の患者の調査で、同様の結果を得た。これらの研究では、膝蓋大腿骨合併症について個別に報告されていないが、再置換の50%について膝蓋大腿骨コンポーネントの再置換が行われたことが報告された。
【0008】
対合するコンポーネント間の荷重を測定するために、少数の研究者によって、整形外科インプラントへの計器装着が少数の患者について行われた。この研究の大部分は、歪みゲージを装着した人工股関節で行われた。G.Bergmanは、歪みゲージを使用して測定された力を使用した、股関節荷重についての研究を発表した。その計器を装着した人工器官には誘導コイルを使用して電力供給され、測定値が、RF遠隔測定システムを使用してパソコンに送信される。このシステムの電力は、試験中、患者の脚の周りに着用された誘導コイルを使用して生成される。Bergmanは、2人の患者から得た荷重を報告した。そのデータには、関節荷重の範囲が、歩く速度に応じて体重の2.8倍(BW)〜4.8BWに及ぶことが示されている。こういった荷重は、ジョギングの場合に5.5BWまで増加し、つまずくことによって股関節荷重が7.2BWもの高さに及んだ。
【0009】
股関節インプラントに関する同様の研究が、DavyおよびKotzarによって行われた。2人の患者に同様の股関節人工器官が埋め込まれた。DavyおよびKotzarは、歩行中にピーク荷重2.1〜2.8BWを、片足姿勢の不安定な期間中に最大値5.5BWを計測した。
【0010】
KR Kaufmanは、TKA人工膝の計器が装着された脛骨コンポーネントの設計について報告した。この器具は、特別に機械加工された脛骨トレイからなる。この脛骨トレイは、Kaufmanの研究で、歪みゲージを装着する隔膜を形成するためにくり抜かれる。この器具は、脛骨大腿骨荷重の判定に使用される。電源またはデータ収集方法についての言及は示されていない。この器具を使用して収集または発表されたデータのことは、我々には分からない。
【0011】
TaylorおよびWalkerは、計器を装着した人工遠位大腿骨(DFR)を使用して、2人の被験者の遠位大腿骨における力を計測した。DFRには、歪みゲージが装着され、他の装置と同様に、インプラントへ電力を供給するために誘導結合が使用された。DFRは、大腿骨の大部分と置換する大きな人工器官である。計測された力は、ジョギングの場合3.6BWにものぼった。この装置は、大腿骨軸上のトルクを計測することができた。曲げモーメントは、前後の軸(内反外反)の周りで9.8BWcmとなり最も大きくなった。
【0012】
手術後の感染は、関節全置換および臓器移植処置の際に生じる、特に深刻な脅威である。1969〜1996年にMayo Clinicで行われた関節置換手術の調査では、深部創感染(DWI)が、1次的な人工膝関節全置換術(TKA)患者16,035人の2%と、人工股関節全置換術(THA)患者23,519人の1.3%に生じた。DWIに罹った患者は、四肢/臓器を失うまたは死亡する危険性が非常に高い。手術後の感染を整形外科的処置で治療するコストだけで、推定で毎年340,000,000ドルを超える(Hansen 1999年)。
【0013】
最近の創薬研究は、アプタマーと呼ばれるオリゴヌクレオチドの新しい生成方法に焦点が当てられている。これらの短い(15〜30個の塩基)単鎖オリゴヌクレオチドは、抗体よりも安定性がある。アプタマーは、抗体と同様の蛋白質の認識および結合特性を有し、事実上いかなる分子をも標的にするように設計することができる。創薬研究者は、抗体と同様の方法で、侵入した異物の認識において免疫システムを支援するために、アプタマーを使用して試験を行ってきた。
【0014】
計器を装着したインプラントを使用する研究は、前段落で示したようにかなり制限されてきた。行われた研究は、関節荷重状態を理解するために行われ、統計的に小さな母集団からなるものであった。患者数と、収集されたデータ数は、データがばらつきを示す傾向にあり、統計的に小さな母集団である。以下の段落で、この分野における最近の特許について述べる。
【0015】
Roy他、2004年3月16日発行の特許文献1に、マイクロカンチレバーを使用して、加わった荷重のみを測定するための装置が教示されている。荷重の導出、温度計測、または感染感知についての教示はない。
【0016】
Hershberger;Troy W.(Warsaw、IN);Booth,Jr.;Robert E.、Biomet,Inc.に譲渡済みの特許文献2に、関節再建術手術中にインプラントコンポーネントの適正な配置/留置を判定する装置および方法が記載されている。この特許は主に、膝関節で使用するためのものである。関節置換手術にはしばしば、関節置換術で使用される最終的な各コンポーネントの適正なサイズおよび関係を判定するために、仮コンポーネントが使用される。この特許では、仮コンポーネントに力変換器を装着する。こういった変換器は、関節の力の判定に使用され、適正なサイズのコンポーネントと、関節の力の均衡を保つ方法の判定に役立つ。力変換器は、コンピュータに接続され、手術中関節をその可動範囲にわたって動かしたときの、関節に生成された力の位置および大きさの読取値をもたらす。したがって、このシステムは、術中の評価に利用されるが、膝全体の移植後の体重支承荷重の生体内評価には役立たない。
【0017】
Nebojsa Kovacevic、NK Biotechnical Engineering Companyに譲渡済みの特許文献3、4に、人工関節用の力変換器が記載されている。この特許の変換器は、1996年にKaufmanおよびKovacevicにより発表された研究論文に記載のものと同様である。この論文の変換器は、かなり変更が行われた脛骨トレイTKAコンポーネントである。脛骨トレイが可撓性を有する部材となるように、一連の空洞が脛骨トレイの上側に機械加工されている。この曲げ部材に加えられた力に対応する信号をもたらすように、歪みゲージが各曲げ部材に取り付けられる。電源、信号条件付け、データ収集については何も述べられていない。
【0018】
Kovacevic;Nebojsa(Plymouth、MN)、発行済み、NK Biotechnical Engineering Companyに譲渡済み(1993年11月2日)の特許文献5に、センサ、センサカバー、および複数の歪みゲージを備える膝蓋骨センサを含む、膝蓋骨に作用する力を測定するための方法および装置について述べられている。このセンサは、脛骨トレイ力変換器のための、Kovacevicの特許文献3、4のものと同様の、かなり変更された膝蓋骨挿入物からなる。このシステムは、大きな金属製の隔膜(センサカバー)または膝蓋骨インプラントの直径全体を覆う変形可能な部材からなる。センサカバーは、センサに取り付けられ、大腿骨挿入物と接触する外側表面を有する。センサカバーは、その外側表面に作用する力をセンサに伝達する。センサカバーに作用する力を測定するために、センサは、その上に取り付けられた複数の歪みゲージを有する。このセンサの必要条件は、長期の臨床結果が劣り、比較的高い合併症率を有すると整形外科文献の複数の研究において示されている、金属製の裏張りを付けた人工膝蓋骨である。この人工膝蓋骨はまた、従来の膝蓋骨挿入物による場合よりも多くの物質を患者の膝蓋骨から切除する必要もあるように見える。このセンサについて、信号条件付けから動作電力に至る測定システム全体がどのように得られるかについては述べられていない。この研究文献には、この装置または同様の装置の使用例は記載されていなかった。
【0019】
Walker;Peter S.(Weston、MA);Ewald;Frederick C.(Weston)の特許文献6。皮質壁のカルシウムを含む骨の大部分の周囲に一様に嵌まるように、脛骨高原の切除された部分に嵌め込まれる比較的薄いプレートを有する、人工器官および外科的処置が提供される。脛骨髄管の軸とほぼ一致するように合わせられたプレートの下側にあるピンが、プレートと高原の間の横相対運動に対抗してプレートを固定し、やはりプレートの下側にあるブレードまたは竜骨が、高原の海綿骨の最大密度(強度)と一致するように合わせられ、高原に対する回転に対抗してプレートを固定する。この発明の外科的処置では、おおよその位置決めと、プレートと固定手段の間の正確な相互関係を確保するために、鋳型を使用する。
引用され、本明細書に参照により組み込まれる参考文献は、以下のとおりである。
【0020】
【表1−1】

【0021】
【表1−2】

【0022】
【特許文献1】米国特許第6,706,005号明細書
【特許文献2】米国特許第5,470,354号明細書
【特許文献3】米国特許第5,360,016号明細書
【特許文献4】米国特許第5,197,488号明細書
【特許文献5】米国特許第5,425,775号明細書
【特許文献6】米国特許第4,822,362号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、整形外科器具で使用するためのセンサシステムである。このセンサ一式により、整形外科またはその他の医療器具と患者の間の力、関節置換コンポーネントとその下にある骨の間の力または圧力、医療器具内部の力、整形外科器具の磨耗量、医療器具の振動特性、摩擦による発熱、および内部感染を、外部監視することが可能になる。本発明と共に使用できる医療器具の例は以下のものからなるが、これに限定されない:脛骨、大腿骨、または膝全置換術に使用される膝蓋骨コンポーネント、股関節全移植術に使用される大腿骨または寛骨臼コンポーネント、肩関節置換術における肩甲骨または上腕骨コンポーネント、足関節置換術における脛骨および距骨、および腰椎/頸椎椎間板の椎体間置換術。関節内の力を監視することによって、インプラントの製造業者は関節の運動学をより理解し、より信頼性のあるインプラントを開発できるようになる。生体感知素子からのデータにより、作用を受ける関節に、数学モデルの正確な境界条件が与えられる。また、本発明により、臨床医は、荷重の大きさ、荷重の不均衡、磨耗、および感染の存在の影響を理解するために、一般の患者に対して生体監視と、整形外科およびその他のインプラントの診断を行うことができるようになる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、半導体またはMEMS(microelectromechanical systems、マイクロ電気機械システム)製造技術を使用して製作された一連の1つまたは複数の微視的感知素子からなる。こういったセンサの一実施形態は、マイクロカンチレバー感知素子の配列である。このセンサは、圧電素子を使用して電力を自己供給する、あるいは電磁誘導、高周波(RF)誘導または電池から電力が外部供給される。このセンサは、RF技術またはその他の手段を使用して、データを遠隔送信する。装置に電力を受動式に供給し、データを送信するために、RFID技術が使用されている受動バージョンが現存している。このセンサの最も堅牢な実施形態では、センサパッケージはまた、電子回路パッケージに振動感知素子、温度感知素子、化学感知素子、および超音波送受信器も組み込まれている。これらの素子によって、感染の存在の判定と、インプラント支承表面の厚さの判定が可能になる。圧電性の感知素子およびマイクロ2点支持梁技術を含む、センサ素子の他の実施形態は、様々な荷重の感知に使用可能である。
【0025】
この装置の一実施形態は、整形外科インプラント内の荷重、磨耗、および感染の生体診断を提供する。この装置は、インプラントに加えられた垂直荷重および横荷重に応答しそれを示す出力信号を生成するための、インプラントに関連付けられた少なくとも1つの荷重センサと、上記インプラントに近接した温度に応答しそれを示す出力信号を生成するための、インプラントに関連付けられた少なくとも1つの温度センサと、上記インプラントに近接した振動に応答しそれを示す出力信号を生成するための、インプラントに関連付けられた少なくとも1つの振動センサと、少なくとも1つの荷重/温度/振動センサと動作的に結合され、少なくとも1つの荷重/温度/振動センサからの出力信号を受信し、その出力信号に対応する信号を送信するように動作可能である、少なくとも1つの信号処理装置とを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、人体または四肢と人工器官インプラントの間に存在する力および圧力を測定する。他の利点は、四肢の前頭面および矢状面における力を含む、膝蓋大腿を支承する表面力を測定することである。本発明の他の利点は、整形外科人工器官の磨耗を測定することである。本発明の他の利点は、整形外科インプラントの感染指標を測定することである。本発明の他の利点は、整形外科インプラントの振動特性を測定することである。本発明の他の利点は、整形外科インプラントの摩擦による発熱を測定することである。
【0027】
本発明の各利点は、微細加工カンチレバーすなわち「簡易的に支持された」梁を新規に適用することによって実現される。これらの梁は、上記の各利点に応えることが示されている。マイクロカンチレバー梁はサイズが小さく、測定量の判定が容易であり、消費電力が小さいために、こういった測定の筋書きにマイクロカンチレバー梁ほど適用可能なものはない。表面置換用人工膝蓋骨を、本発明の説明に使用するが、人工膝蓋骨で述べた概念は、TKA人工器官の腰部、肩部、脛骨または大腿骨のコンポーネント、あるいは他の整形外科器具および人工器官で簡単に利用される。
【0028】
このセンサを人工膝蓋骨に適用する形では、人工器官とその下にある膝蓋骨の間の力を測定するだけでなく、脛骨大腿骨力も四頭筋からの筋力も推測することができ、膝蓋腱における力が同様に判定される。これは、膝蓋骨が、膝蓋骨に作用する3つの力の系を有しているからである。3つの力は、四頭筋によって与えられる力と、膝蓋腱によって与えられる反作用の力と、膝蓋骨と大腿骨の間にある支承表面の相互作用力である。これらの力の1つを測定すると、残りの2つの力を解くことが可能になる。人体の筋力を測定することができるということが、数世紀にわたって研究者から見逃されてきた。膝蓋骨における力がもつ3つの力の系と、そういった力を解くための均衡が、図1に示されている。
【0029】
そういった力を解くための方程式は、以下のとおりである。
PF=FQsin(α)+FLsin(β)
Qcos(α)=FLcos(β)
【0030】
【数1】

【0031】
ここで、FQは四頭筋の力を表し、FLは膝蓋靭帯の力を表し、FPFは膝蓋大腿の接触力を表す。フレームA、B、およびCは、力学モデル化の際に通例使用される基準フレームである。Aフレームは脛骨の向きを表し、Bフレームは膝蓋骨の向きを表し、Cフレームは大腿骨の向きを表す。αは、B2軸と四頭筋腱の間の角度を表し、四頭筋の力の方向を指定する。βは、膝蓋靭帯とB2軸の間の角度を表し、脛骨と膝蓋骨の間の力の方向を指定する。膝蓋大腿関節の反作用の力は、B1軸に沿っていると仮定する。
【0032】
本発明の荷重測定装置は、膝蓋大腿支承表面の法線荷重、すなわちインプラント内部の法線圧力を測定するだけでなく、横荷重(すなわち圧力)も測定するように構成される。横荷重は、膝蓋骨の場合、筋肉不均衡、アライメント異常、および潜在的な亜脱臼を示す。本発明の特徴は、単一方向の力を測定できる単一のセンサだけを組み込んだ従来の荷重測定装置とは異なる。計器を装着した脛骨トレイの場合、センサ全体にわたる荷重のばらつきは、アライメント、筋肉/靭帯不均衡や、不適切な機構などを示す。脊柱でも、複数の方向または場所で荷重を測定することは有益である。
【0033】
マイクロカンチレバー梁の動きの検出には、複数の方法が使用可能である。この動きを測定する通常の方法は、カンチレバー梁の表面に特定のコーティングを塗ることに基づいている。このコーティングは、曲げの関数として抵抗が変化するピエゾ抵抗型のコーティングであっても、梁が動的荷重を受けるときに電荷を出す圧電性のコーティングであってもよい。梁の曲げを判定する他の通常の方法は、カンチレバー梁自体を平行板コンデンサのプレートの1つとして使用して、静電容量の変化を偏向と関連付けることである。この偏向の測定には光学的方法など他の方法が使用可能であるが、現時点では、上記の方法がこの用途に最も適している。
【0034】
膝蓋骨内の力を測定するために、梁を、中間パッケージ内にカプセル化、またはその他の方法でその人工器官の表面に取り付けることができる。好ましい実施形態では、梁は、高分子またはエストラマー材料内にカプセル化される。この中間の材料は、マイクロカンチレバー装置の最適な応答範囲が実験状態で予期された荷重範囲に対応するように、装置の応答を「調整する」ために使用することができる。この高分子材料は、パッケージを介した力の伝達を向上させるために、わずかに凸状の側面およびわずかに凹状の側面を有する。このパッケージは、この人工器官の表面と生体の骨の間に取り付けられる。図2は、この実施形態の図を示す。ロードセルの凹面側表面2に加えられた荷重1が、カプセル材料4に配設されたマイクロカンチレバーセンサ3によって感知される。ロードセルは、凹面側表面5も有する。ロードセルは、センサ一式内に少なくとも1つのマイクロカンチレバーセンサを使用する。単一の配列または複数の配列のセンサを使用することもできる。
【0035】
図3に示されている他の実施形態は、デバイスの中心に向かって差歪みが生じるように、凸面側表面も凹面側表面も使用せず、カンチレバーを外側の周囲で支持するために、より剛性のあるパッケージ材料7の使用を基にする超小型ロードセルパッケージを示す。マイクロカンチレバーセンサ8の周りに配設されているパッケージ材料7に加えられた荷重1が、ロードセルで感知される。パッケージ材料7のヤング率(剛性)Eは、超小型ロードセルの応答調整に使用され、内部の構成部品の剛性Eよりも大きくなる。このパッケージ構成は、パッケージ自体がセメントまたは他の接着剤によって統制されない形で取り囲まれ、それによって凹面側および凸面側表面の効果を打ち消される可能性がある環境では、おそらく好ましいはずである。このパッケージは、直径が3ミリメートル程度、高さが1ミリメートルまたはそれ未満、総容量が超小型ロードセルと同等になる。
【0036】
本発明の他の利点は、整形外科インプラントに存在する磨耗を測定することである。本発明は、図6および7に示すように、その信号処理チップ内に超音波送信器および受信器を組み込むことによってこの役目を果たす。超音波送/受信器は、超音波トランシーバ要素10に組み込まれた圧電性材料の形をしている。超音波エネルギーのバースト11が放出、受信され、これによって、裏側の表面すなわち材料の表面からエネルギーが反射する時間を測定することによって、磨耗表面の厚さを測定することが可能になる。この好ましい実施形態では、単一の素子が送信器および受信器として利用され、他の実施形態では、異なる素子を使用することになる。この好ましい実施形態ではまた、変換器/受信器は、表面微細加工技術を使用して、圧電性の材料から製作される。代替実施形態では、超音波エネルギーを生成し、受信するための共振空洞として、表面微細加工された容量性構造を使用することになる。超音波による厚さ測定の原理は、材料内の音速の知識を利用する。等式1は、注目の材料の厚さdと、注目の材料の体積弾性率Bと、材料の密度ρ0と、音響エネルギーパルスの放出と受信の間の時間との関係を示す。
【0037】
【数2】

【0038】
本発明のこの態様は、図6および7でそれぞれ示すように、脛骨TKAコンポーネントおよび膝蓋人工器官コンポーネントで例示される。脛骨トレイの適用例では、好ましい実施形態は、脛骨トレイの下にセンサパッケージを、可動支承人工器官のポリエチレン挿入物と干渉しないように配置する。センサパッケージは、固定支承コンポーネントの支承表面の下に簡単に配置してもよく、あるいはポリエチレン製コンポーネント内に成型してもよい。
【0039】
マイクロカンチレバーは、非常に精密な温度変化の計測に使用されてきた。しばしば、これらのカンチレバーは、金などの材料でコーディングされ、これによりマイクロカンチレバーは二材料による曲げ変形を受ける。温度感知カンチレバーが、人工器官診断センサの一式に含まれる。人工器官の温度を測定することによって、患者が現在活動状態でない場合に、リウマチ性関節炎、軟組織の衝突または摩擦症候群などの関節滑膜炎を引き起こす感染性または非感染性炎症性疾患などの状態の存在が示される。温度の測定は、人工器官コンポーネントの摩擦による発熱の測定にも使用することができる。摩擦による発熱は、磨耗のもう1つの兆候であり、人工器官の故障の原因として提案されている。
【0040】
感染は、いかなる大きな外科的処置にとっても臨床的に最も壊滅的な合併症の1つである。関節全置換、臓器移植、および異質の材料が体内に埋め込まれるその他の外科的処置などの処置の際に生じる術後感染は、臨床的に深部創感染(DWI)と呼ばれ、とりわけ深刻な脅威である。異質の材料が存在すると、異質の材料が存在しないときの感染よりも、従来の抗生物質治療法で根絶するのが困難な細菌増殖が生じ得る。その後、感染した関節全置換部では、かなりの割合で、感染を根絶するためにインプラントを取り除く必要がある。インプラントを取り除かずに感染を根絶する鍵の1つは、早期に感染を認識することである。ある細菌は急速に増殖して、予防接種後早期に感染の臨床的兆候を引き起こす一方、他の細菌はそれほど臨床的兆候を引き起こさず、早期の診断が困難になる。早期の感染存在信号を医師に供給するはずの感知装置を何か用いれば、感染治癒率が高くなり患者疾病率が低くなるはずである。感染に対する細胞シグナル応答は、カルシウムおよびその他のイオンが増加し、マクロファージ、Tリンパ球、および好中球という生物化学誘引物質の濃度が高まることによって引き起こされる電荷の変化によって示される。これらの誘引物質には、C反応性蛋白、活性型第VII因子、セロトニン、およびエピネフリンが含まれる。感染に対する免疫反応中に、マクロファージはサイトカインを生成し、サイトカインは炎症および免疫反応に関係する蛋白質生成シグナルを伝達する。免疫反応の初期に生成される4つのサイトカイン群は、腫瘍壊死因子−α、インターロイキン−1、インターロイキン−6、およびインターフェロンである。他のサイトカイン群もまた、免疫反応の際に存在する。
【0041】
細胞シグナル伝達は、生物学的誘引分子に対して特異的な抗体でコーティングされたマイクロカンチレバーと、サイトカイン(細胞シグナル伝達蛋白質)に対して特異的なアプタマー受容体(合成RNA分子または単鎖DNA分子)でコーティングされたマイクロカンチレバーを組み込むことによって判定される。このコーティングは、内皮細胞、肥満細胞、好中球細胞、マクロファージ細胞、および骨芽細胞が感染物質のストレスを受ける組織培養または代表標本内で行われる。本発明は、複数の細胞シグナル伝達メカニズムを検出し、感染への応答に対する理解を深め、生体感知用途へマイクロカンチレバー技術を組み込むことによって、複数の局面にて生物学的感知の現況技術を進歩させる。
【0042】
本発明の一実施形態では、インプラントおよびその他の外科的処置部から流出するドレナージ管内の感染マーカを監視するために、感染センサを配置する。この実施形態では、感染を示す特定の細菌を検出する。
【0043】
本発明はまた、集中治療室の主な死亡原因である、敗血症および敗血性ショックの検出にも有益である。感染を早期検出し、感染過程を特定することによって、感染過程がより効果的に処置される。
【0044】
図8は、電源内蔵式計器を装着した脛骨の実施形態の概略図であり、荷重、振動、温度、および感染用のトレイセンサパッケージ81が脛骨トレイの下に配設されている。信号処理装置82が、装置の柱に配置され、髄内センサパッケージ83がアンテナ84の先端に配設されている。髄内パッケージ83は、感染、温度、および振動用センサを備える。圧電体層85が、装置への電力供給に使用される。
【0045】
図4は、誘導コイル43から電力を供給される信号処理装置42と連絡するマイクロカンチレバーセンサ41を有する、膝蓋センサパッケージの実施形態である。膝蓋スタッド44が、取付けに使用される。電源は、外部電磁誘導(図示せず)、外部高周波誘導(図示せず)または充電式電池(図示せず)でもよい。
図5は、誘導コイル53から電力を供給される信号処理装置52と連絡するマイクロカンチレバーセンサ51を有する、膝蓋電源内蔵式センサパッケージの実施形態である。電源は、圧電体スタック54、外部電磁誘導(図示せず)、外部高周波誘導(図示せず)または充電式電池(図示せず)でもよい。
【0046】
本発明の感染感知部分は、細胞シグナル伝達過程の理解における著しい進歩と、マイクロ電気機械装置と器官組織の間の相互作用を調査する技術の成熟を意味する。創薬実験は、癌細胞、HIV、および他の疾病の指標を検出するために、アプタマーを使用し、蛍光標識して行われてきた。アプタマーは、リウマチ性関節炎および変形関節症などの他の炎症性疾病を調査するために提案されてきた。本発明は、薬物送達の調査と一般的な疾病治療に、全般的に適用される。
【0047】
感染の存在を検出するために、本発明は、特定の細菌性またはウイルス性の成分の検出を試みるのではなく、感染に対する人体の最も早い応答機構を検出する。感知素子の配列では、検出体系に冗長性をもたせるために、複数の感染指標の存在を判定する。サイトカイン応答スペクトル、または他の感染に一般に関連する炎症性化学物質が測定され、存在する感染のタイプに関する情報の判定に使用される。主要な検出方法は、複数のサイトカイン蛋白質または他の炎症性化学物質に対して特異的なアプタマーまたは抗体で機能化されたマイクロカンチレバーを使用している。こういった素子は、生体環境の変化と、細胞間情報伝達に使用される蛋白質の存在を検出する。この手法の一部分は、マイクロカンチレバー感知技術に基づいており、サイトカインの濃度を検出するために、サイトカイン受容体でコーティングされたマイクロカンチレバーの配列を使用する。
【0048】
本発明は、アプタマーヌクレオチドおよびサイトカインへの親和性を有する抗体を使用する。アプタマーの場合、マイクロカンチレバー基板への結合を促進するために、こういったアプタマーに官能基を追加してもよく、リンク要素と結合した一連のヌクレオチドが使用される。C反応性蛋白抗体を、炎症性サイトカインの全般的な指標として使用してもよい。マイクロカンチレバーの配列が、C反応性蛋白抗体材料およびDNAアプタマー材料で機能化される。こういった配列の応答は、既知量のサイトカイン蛋白質を使用して特徴付けられ、較正される。
【0049】
こういったマイクロカンチレバーの配列は、内皮細胞、肥満細胞、好中球細胞、マクロファージ細胞、骨芽細胞、および骨芽細胞が一般的な細菌性/ウイルス性の感染物質のストレスを受ける体外組織培養実験に利用される(表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、ペプトストレプトコッカス、プロテウス、大腸菌、腸球菌、B/C型肝炎ウイルス、など)。様々な細胞シグナル伝達物質のサイトカイン応答は、管理された体外状況下で判定される。本発明はまた、センサの生物学的材料との適合性に関する情報をもたらす。
【0050】
効果的なパッケージと、効果的な処理素子への生物学的情報の情報伝達が必要であるが、これらの必要条件は、長期的なインプラントに対して必要であるはずのものほど厳格ではない。パッケージは、感知素子を含み、物理的防護をもたらし、検体の拡散を統制し、免疫システムによる攻撃から感知素子を保護する。後者の課題については、適当な膜が短期間汚染物質(免疫グロブリンなど)によるセンサ性能の劣化を低減するために使用される。さらに、パッケージ全体が生体適合性を有する。
【0051】
適当な処理素子へのバイオセンサ情報の送信が、生体感知のもう1つの必要条件である。遠隔測定が、好ましいデータ送信機構である。この機構は、使用者の利便性を大幅に増すために小型化してもよい。経皮的配線が、細胞シグナル伝達の情報を送信する別の方法である。これは短期の試験には十分であるはずである。
【0052】
コーティングされていないカンチレバーのセットが、振動力および動的加速度を測定するために、センサ一式に含まれる。内部振動の測定値は、関節の緩みが生じたかどうかの判定に使用される。インプラントの緩み早期診断は、定期的なX線写真の利用からは判定することが困難なことが多い。インプラントの緩み診断が遅れるほど、緩んだコンポーネントの動きによる骨の摩擦磨耗から生じる、骨の欠損が大きくなる。したがって、人工器官の緩み信号を早期に送るはずの感知装置によって、骨を保存することになり、より多くの骨が再置換インプラント固定に使用可能になるので、理論上、再置換関節全置換術の成功率が高くなる。関節コンポーネントに衝撃を与えると、このシステムで測定される振動周波数に大きな飛躍が生じる。人工器官の固有周波数が日常の活動中に見られる周波数と同様のものであると、そのために、人工器官関節の緩み、人工器官関節の過度の磨耗および人工器官の最終的な故障が生じる可能性がある。
【0053】
センサに遠隔で電力を供給するには、複数の方法が使用可能である。完全受動モード運転のシステム(このシステムは、遠隔電源が使用可能な場合に限って動作する)に電力を供給するために、遠隔電力を使用することができ、あるいは内部電池の再充電に遠隔電力結合を使用することができる。この好ましい実施形態では、センサは、磁気誘導または高周波(RF)誘導を使用して、遠隔で電力供給される。センサからのアナログデータは、周波数に変換され、低出力RF送信器を使用して送信される。
【0054】
図5に示すこのシステムの電源内蔵式バージョンでは、膝蓋骨の取付けスタッドの代わりに圧電性材料の代替スタック54を備える、自己電力生成システムを使用する。圧電性材料の層は、図8のように脛骨トレイのポリエチレン部分の下に、または大腿骨コンポーネントの取付け位置に、圧電性材料の薄い層を組み込むなど、自己電力供給用に他の整形外科用器具に組み込んでもよい。小さな電池または容量性蓄電システムの充電には、日常の動作による力で十分である。
【0055】
本発明の好ましい実施形態と現在みなされているものを示し、説明したが、本発明の範囲から逸脱せずに、これらの実施形態に様々な変更および修正を加え得ることが当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】膝蓋骨に作用する3つの力の系を示す示力図である。
【図2】調整にカプセル材料の剛性を使用する超小型ロードセルの湾曲した実施形態の図である。
【図3】調整にパッケージの剛性を使用する超小型ロードセルの湾曲していない実施形態の図である。
【図4】外部電源式ロードセルの概略図である。
【図5】電源内蔵式ロードセルの概略図である。
【図6】人工膝蓋骨の超音波装置の図である。
【図7】人工脛骨の超音波装置の図である。
【図8】人工脛骨の電源内蔵式診断装置の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整形外科インプラントにおける荷重、磨耗、および感染の生体診断を提供するための装置であって、
前記インプラントに加えられた垂直荷重および横荷重に応答しそれを示す出力信号を生成するための、前記インプラントに関連付けられた少なくとも1つの荷重センサと、
前記インプラントに近接した温度に応答しそれを示す出力信号を生成するための、前記インプラントに関連付けられた少なくとも1つの温度センサと、
前記インプラントに近接した振動に応答しそれを示す出力信号を生成するための、前記インプラントに関連付けられた少なくとも1つの振動センサと、
前記少なくとも1つの荷重、温度、および振動センサと動作的に結合され、前記少なくとも1つの荷重、温度、および振動センサからの前記出力信号を受信し、前記出力信号に対応する信号を送信するように動作可能である、少なくとも1つの信号処理装置とを備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの荷重、温度、および振動センサがさらに、マイクロ電気機械システムを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記マイクロ電気機械システムがさらに、圧電性材料、二重に支えられたマイクロ梁、ピエゾ抵抗型のコーティング、圧電性のコーティング、および平行板コンデンサからなるグループから選択された少なくとも1つの素子を備えることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置が、圧電素子、圧電性のスタック、電磁誘導、高周波誘導および充電式電池からなるグループから選択された少なくとも1つのデバイスを備える電源から電力供給されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの荷重、温度、および振動センサがさらに、高分子材料およびエストラマー材料からなるグループから選択された少なくとも1つのカプセル材料を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記カプセル材料がさらに、凸面側表面および凹面側表面を含むことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が、脛骨、腓骨、大腿骨、膝蓋骨、寛骨臼、肩甲骨、上腕骨、距骨、および椎間腔からなるグループから選択された少なくとも1つのコンポーネントに配設されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記信号処理装置がさらに、無線遠隔測定および経皮的配線からなるグループから選択された少なくとも1つの送信装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
整形外科インプラントにおける荷重、磨耗、および感染の生体診断を提供するための装置であって、
前記インプラントに加えられた垂直荷重および横荷重に応答しそれを示す出力信号を生成するための、前記インプラントに関連付けられた少なくとも1つの荷重センサと、
前記インプラントに近接した温度に応答しそれを示す出力信号を生成するための、前記インプラントに関連付けられた少なくとも1つの温度センサと、
前記インプラントに近接した振動に応答しそれを示す出力信号を生成するための、前記インプラントに関連付けられた少なくとも1つの振動センサと、
前記インプラントに加えられた磨耗に応答しそれを示す出力信号を生成するための、前記インプラントに関連付けられた少なくとも1つの超音波装置と、
前記少なくとも1つの荷重センサ、温度センサ、振動センサ、および超音波装置と動作的に結合され、前記少なくとも1つの荷重センサ、温度センサ、振動センサ、および超音波装置からの前記出力信号を受信し、前記出力信号に対応する信号を送信するように動作可能である、少なくとも1つの信号処理装置とを備えることを特徴とする装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの荷重センサ、温度センサ、振動センサ、および超音波装置がさらに、マイクロ電気機械システムを備えることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記マイクロ電気機械システムがさらに、圧電性材料、二重に支えられたマイクロ梁、ピエゾ抵抗型のコーティング、圧電性のコーティング、および平行板コンデンサからなるグループから選択された少なくとも1つの素子を備えることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記装置が、圧電素子、圧電性のスタック、電磁誘導、高周波誘導および充電式電池からなるグループから選択された少なくとも1つのデバイスを備える電源から電力供給されることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの荷重センサ、温度センサ、振動センサ、および超音波装置がさらに、高分子材料およびエストラマー材料からなるグループから選択された少なくとも1つのカプセル材料を備えることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記カプセル材料がさらに、凸面側表面および凹面側表面を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記装置が、脛骨、腓骨、大腿骨、膝蓋骨、寛骨臼、肩甲骨、上腕骨、距骨、および椎間腔からなるグループから選択された少なくとも1つのコンポーネントに配設されることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記信号処理装置がさらに、無線遠隔測定および経皮的配線からなるグループから選択された少なくとも1つの送信装置を備えることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項17】
整形外科インプラントにおける荷重、磨耗、および感染の生体診断を提供するための装置であって、
前記インプラントに加えられた垂直荷重および横荷重に応答しそれを示す出力信号を生成するための、前記インプラントに関連付けられた少なくとも1つの荷重センサと、
前記インプラントに近接した温度に応答しそれを示す出力信号を生成するための、前記インプラントに関連付けられた少なくとも1つの温度センサと、
前記インプラントに近接した振動に応答しそれを示す出力信号を生成するための、前記インプラントに関連付けられた少なくとも1つの振動センサと、
前記インプラントに加えられた磨耗に応答しそれを示す出力信号を生成するための、前記インプラントに関連付けられた少なくとも1つの超音波装置と、
前記インプラントに近接した感染に応答しそれを示す出力信号を生成するための、前記インプラントに関連付けられた少なくとも1つの化学的センサと、
前記少なくとも1つの荷重センサ、温度センサ、振動センサ、超音波装置、および化学的センサと動作的に結合され、前記少なくとも1つの荷重センサ、温度センサ、振動センサ、超音波装置、および化学的センサからの前記出力信号を受信し、前記出力信号に対応する信号を送信するように動作可能である、少なくとも1つの信号処理装置とを備えることを特徴とする装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの荷重センサ、温度センサ、振動センサ、超音波装置、および化学的センサがさらに、マイクロ電気機械システムを備えることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記マイクロ電気機械システムがさらに、圧電性材料、二重に支えられたマイクロ梁、ピエゾ抵抗型のコーティング、圧電性のコーティング、平行板コンデンサ、抗体コーティング、およびアプタマー受容体コーティングからなるグループから選択された少なくとも1つの素子を備えることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記抗体コーティングが、C反応性蛋白、活性型第VII因子、セロトニン、およびエピネフリンからなるグループから選択された少なくとも1つの誘引物質対して特異的であることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記アプタマー受容体コーティングが、腫瘍壊死因子−a、インターロイキン−1、インターロイキン−6、およびインターフェロンからなるグループから選択された少なくとも1つのサイトカインに対して特異的であることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記装置が、圧電素子、圧電性のスタック、電磁誘導、高周波誘導および充電式電池からなるグループから選択された少なくとも1つのデバイスを備える電源から電力供給されることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項23】
前記少なくとも1つの荷重センサ、温度センサ、振動センサ、超音波装置、および化学的センサがさらに、高分子材料およびエストラマー材料からなるグループから選択された少なくとも1つのカプセル材料を備えることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項24】
前記カプセル材料がさらに、凸面側表面および凹面側表面を含むことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記装置が、脛骨、腓骨、大腿骨、膝蓋骨、寛骨臼、肩甲骨、上腕骨、距骨、椎間腔、および組織からなるグループから選択された少なくとも1つのコンポーネントに配設されることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項26】
前記信号処理装置がさらに、無線遠隔測定および経皮的配線からなるグループから選択された少なくとも1つの送信装置を備えることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項27】
前記化学的センサがさらに、ドレナージ管排液に配設された少なくとも1つの細菌センサを備えることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項28】
整形外科インプラントにおける荷重、磨耗、および感染の生体診断を提供する方法であって、
センサ一式を整形外科インプラントに近接して配置するステップと、
データを収集し、送信するために前記センサ一式に電力を供給するステップと、
前記整形外科インプラント内の荷重、磨耗、および感染を判定するために前記データを分析するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
前記センサ一式がさらに、荷重センサ、温度センサ、振動センサ、超音波装置、および化学的センサからなるグループから選択された少なくとも1つのデバイスを備えることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの荷重センサ、温度センサ、振動センサ、超音波装置、および化学的センサがさらに、マイクロ電気機械システムを備えることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記マイクロ電気機械システムがさらに、圧電性材料、二重に支えられたマイクロ梁、ピエゾ抵抗型のコーティング、圧電性のコーティング、平行板コンデンサ、抗体コーティング、およびアプタマー受容体コーティングからなるグループから選択された少なくとも1つの素子を備えることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体コーティングが、C反応性蛋白、活性型第VII因子、セロトニン、およびエピネフリンからなるグループから選択された少なくとも1つの誘引物質に対して特異的であることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記アプタマー受容体コーティングが、腫瘍壊死因子−a、インターロイキン−1、インターロイキン−6、およびインターフェロンからなるグループから選択された少なくとも1つのサイトカインに対して特異的であることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記電力を供給するステップがさらに、圧電素子、圧電性のスタック、電磁誘導、高周波誘導および充電式電池からなるグループから選択された少なくとも1つのデバイスを含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記センサ一式がさらに、高分子材料およびエストラマー材料からなるグループから選択された少なくとも1つのカプセル材料を備えることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記カプセル材料がさらに、凸面側表面および凹面側表面を含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記センサ一式が、脛骨、腓骨、大腿骨、膝蓋骨、寛骨臼、肩甲骨、上腕骨、距骨、椎間腔、および組織からなるグループから選択された少なくとも1つのコンポーネントに配設されることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記データを収集し送信するステップがさらに、無線遠隔測定および経皮的配線からなるグループから選択された少なくとも1つの送信装置を含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−510584(P2008−510584A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530124(P2007−530124)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/030250
【国際公開番号】WO2006/098759
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(503447069)ユーティーバッテル エルエルシー (2)
【出願人】(500296088)ユニバーシティ オブ テネシー リサーチ ファウンデーション (9)
【Fターム(参考)】