説明

荷重センサを用いた入力装置及びその入力座標変換方法

【課題】入力位置座標の検出位置ずれを防ぐとともに、表面パネルの回転角度が変化した場合に入力位置座標を表示座標系の座標へ簡便に変換させることが可能な、荷重センサを用いた入力装置及びその入力座標変換方法を提供することを目的とする。
【解決手段】画像や文字データを視認するための表示領域を有する表面パネルと、前記表面パネルへの入力位置を検出するように配置された複数の荷重センサと、を有し、前記表面パネルの回転角度に応じて前記画像や文字データの表示方向を規定する表示座標系と、前記表面パネルへの入力位置を規定するセンサ座標系とを有しており、前記複数の荷重センサの荷重データから前記センサ座標系における入力位置座標を算出する入力位置算出手段と、前記表面パネルの前記回転角度に基づいて前記入力位置座標を前記表示座標系の座標に変換する座標変換手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重センサを用いた入力装置及びその入力座標変換方法に関し、特に、入力位置座標の検出位置ずれを防ぐとともに、表面パネルの回転角度が変化した場合においても入力位置座標を表示座標系の座標へ簡便に変換させることが可能な、荷重センサを用いた入力装置及びその入力座標変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯用の電子機器などの表示部として、表示画像のメニュー項目やオブジェクト等を視認しながら直接、指などで操作して座標入力を行うための透光型入力装置が用いられている。このような入力装置として、特許文献1には荷重センサを用いた入力装置について開示されている。特許文献1に開示されている入力装置は、複数の荷重センサからの各出力値から、XY座標の押圧位置とZ方向の荷重とを所定の計算式により検出することができる。したがって、複数の荷重センサを用いた入力装置では、表示画像に表示されたメニュー項目や画像データを選択すると同時に、実行する処理内容を入力荷重の大きさによって選択可能であるため、1度の入力操作で多様な操作を行うことが可能となる。
【0003】
また、特許文献2及び特許文献3には、携帯電話等の携帯情報端末を回転させた場合や携帯情報端末の表示部を回転させた場合において、表示部の画像を適切な方向で表示させる方法ついて開示されている。特許文献3に開示されているように、表示座標系の座標原点はユーザーから見て表示部の左上の角部に設定されており、表示部が回転された場合には、表示部における座標原点が変更されて、常にユーザーから見て表示部の左上角部に位置するように設定される。これにより、表示部や携帯情報端末の回転角度に係わらず、ユーザーから見たときに適切な方向で画像を表示させることができる。
【0004】
近年、携帯情報端末の回転角度が変化した場合にも適切に画像等を表示させることができるとともに、多様な入力操作を実現することが求められており、携帯情報端末等の電子機器の表示部として荷重センサを用いた入力装置の搭載が検討されている。
【0005】
このような場合において、表示画像の表示方向を規定する表示座標系と、入力位置座標を規定するセンサ座標系との2つの座標系があり、表示座標系が回転した場合においても入力位置を適切に検出できるように表示座標系とセンサ座標系とを一致させる必要がある。図10には従来の入力装置101の平面図を模式的に示しており、図10(a)には初期状態における入力装置101を、図10(b)には90°回転したときの入力装置101を示す。図10(a)に示すように、初期状態における表示座標系130の表示座標原点130aとセンサ座標系131のセンサ座標原点131aは、いずれも表示領域111の左上角部に設定されている。したがって、表示座標系130で表示された画像やメニュー項目の表示位置座標とセンサ座標系131で検出された入力位置座標とを一致させることが可能である。
【0006】
図10(b)に示すように、入力装置101が90°回転した場合には、表示座標原点130aはユーザー側からみて左上角部に位置するように座標変換されて表示方向が回転される。そして、センサ座標原点131aについても同様にユーザー側からみて左上角部に変換される。したがって、入力装置101が回転した場合において、表示座標系130の表示位置座標とセンサ座標系131の入力位置座標とが一致するように、表示座標系130の回転とともにセンサ座標系131が回転されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−126997号公報
【特許文献2】特開2005−229490号公報
【特許文献3】特開2008−118286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
荷重センサを用いた入力装置101において、図10に示すように複数の荷重センサ120a〜120dが用いられており、それぞれの荷重データから所定の計算にしたがって荷重位置が算出される。荷重センサ120a〜120dにおいては、製造工程上のばらつきなどによってそれぞれ出力特性や感度が異なるため、各荷重センサ120a〜120dにそれぞれ同じ荷重が加えられた場合であっても出力値にある程度のばらつきが生じてしまう。また、各荷重センサ120a〜120dが設置される支持基板(図示しない)や入力荷重を受ける表面パネル110の平坦性や設置ばらつきによっても、誤差が生じる場合がある。したがって、入力位置座標を算出する際には、これらのばらつきを補正する必要がある。そのため、各荷重センサ120a〜120dで検出された荷重データに、それぞれの荷重センサ120a〜120dに対応したX位置係数、及びY位置係数を乗じて、正確に入力位置座標が算出される。
【0009】
しかしながら、図10(b)に示すように、入力装置101の回転に伴ってセンサ座標系131を回転させた場合には、センサ座標系131と各荷重センサ120a〜120dとの相対位置が変化してしまう。すなわち、入力位置座標の算出に必要なX位置係数、及びY位置係数が変化することになり、実際に入力した位置と算出された入力位置座標とにずれが生じて、入力装置101としての機能が損なわれてしまう。また、このずれを計算処理によって補正する場合には、入力装置101の回転角度が変化する度に補正を行う必要があり、処理が複雑化し、そのための処理回路も大規模なものになってしまうという問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決し、入力位置座標の検出位置ずれを防ぐとともに、表面パネルの回転角度が変化した場合においても入力位置座標を表示座標系の座標へ簡便に変換させることが可能な、荷重センサを用いた入力装置及びその座標変換方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の荷重センサを用いた入力装置は、画像や文字データを視認するための表示領域を有する表面パネルと、前記表面パネルに入力される入力位置を検出するように配置された複数の荷重センサと、を有し、前記表面パネルの回転角度に応じて前記画像や文字データの表示方向を規定する表示座標系と、前記表面パネルへの入力位置を規定するセンサ座標系とを有しており、前記複数の荷重センサの荷重データから前記センサ座標系における入力位置座標を算出する入力位置算出手段と、前記表面パネルの前記回転角度に基づいて前記入力位置座標を前記表示座標系の座標に変換する座標変換手段とを有することを特徴とする。
【0012】
これによれば、表面パネルの回転に伴って表示座標系が回転した場合であっても、入力操作による入力位置座標は、センサ座標系において正確に算出されることになる。そして、算出された入力位置座標は、表面パネルの回転角度に基づいて表示座標系の座標へと変換される。このようにして表示画像等の表示位置座標に対して、入力操作による入力位置座標を一致させて検出することが可能となる。
【0013】
したがって、表示座標系の回転とともにセンサ座標系を回転させて入力位置座標を検出する場合と比較して、センサ座標系と各荷重センサとの相対位置は変化しないため、各荷重センサのばらつき等に起因する入力位置座標の検出位置ずれを防ぐことが可能である。また、表面パネルの回転角度が変化する度に、各荷重センサのばらつき等の補正処理を行う必要が無いことから、簡便に入力位置座標を表示座標系の座標へ変換することが可能となる。
【0014】
また、前記座標変換手段において、前記表面パネルの前記回転角度に対応する座標変換パラメータを読み込んで、前記入力位置座標を前記表示座標系の前記座標に変換することが好ましい。これによれば、座標変換パラメータを用いて、所定の数式によって入力位置座標を表示座標系の座標へ変換することが可能となる。したがって、座標変換に必要な変数について、表面パネルの回転角度が変化するたびに算出する工程が省略できるため、座標変換手段における処理を簡略化して簡便に座標変換を行うことが可能となる。
【0015】
さらに、本発明の荷重センサを用いた入力装置によれば、前記入力位置座標を算出する際に必要なX位置係数及びY位置係数を、初期設定時に、複数の荷重測定データを用いて最小2乗法により求めることが好適である。こうすれば、各荷重センサの特性ばらつきや設置ばらつき等の補正係数を初期設定時にあらかじめ求めておき、入力位置算出手段において適用することにより、入力位置検出精度を向上させることができる。
【0016】
本発明の荷重センサを用いた入力装置において、前記荷重センサは、センサ基板と前記センサ基板に設けられた複数のピエゾ素子とを有して構成されており、入力操作による前記センサ基板の変位量を前記ピエゾ素子により検出することが好ましい。これによれば、荷重センサの小型化が可能であるため、入力装置の狭額縁化に有利である。
【0017】
本発明の荷重センサを用いた入力装置において、前記表示領域は4辺を有する略矩形状に形成されており、前記複数の荷重センサは、前記表示領域の各辺の略中央に位置する前記表示領域の外周にそれぞれ配置されていることが好適である。このような配置にすれば、入力操作に対する各荷重センサのセンサ出力を向上させることが可能となる。
【0018】
本発明の荷重センサを用いた入力装置の入力座標変換方法は、
a)前記複数の荷重センサの荷重データから、前記センサ座標系における入力位置座標を算出するステップと、
b)前記表面パネルの前記回転角度に基づいて、前記センサ座標系の前記入力位置座標を前記表示座標系の座標に変換するステップと、を有することを特徴とする。
【0019】
これによれば、表面パネルの回転に伴って表示座標系が回転した場合であっても、入力操作による入力位置座標はセンサ座標系において正確に算出されることになる。そして、算出された入力位置座標は、表面パネルの回転角度に基づいて表示座標系の座標へと変換される。このようにして表示画像等の表示座標に対して、入力操作による入力位置座標を一致させて検出することが可能となる。
【0020】
したがって、表示座標系の回転とともにセンサ座標系を回転させて入力位置座標を検出する場合と比較して、センサ座標系と各荷重センサとの相対位置は変化しないため、各荷重センサのばらつき等に起因する入力位置座標の検出位置ずれを防ぐことが可能である。また、表面パネルの回転角度が変化する度に、各荷重センサのばらつき等の補正処理を行う必要が無いことから、簡便に入力位置座標を表示座標系の座標へ変換することが可能となる。
【0021】
本発明の荷重センサを用いた入力装置の座標変換方法によれば、前記b)ステップにおいて、前記表面パネルの前記回転角度に対応する座標変換パラメータを読み込んで、前記入力位置座標を前記表示座標系の前記座標に変換することが好適である。これによれば、座標変換パラメータを用いて、所定の数式によって入力位置座標を表示座標系の座標へ変換することが可能となる。したがって、座標変換に必要な変数について、表面パネルの回転角度が変化するたびに算出する工程を省略できるため、座標変換手段における処理を簡略化して簡便に座標変換を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の荷重センサを用いた入力装置及びその入力座標変換方法によれば、表示座標系の回転とともにセンサ座標系を回転させて入力位置座標を検出する場合と比較して、センサ座標系と各荷重センサとの相対位置は変化しないため、各荷重センサのばらつき等に起因する入力位置座標の検出位置ずれを防ぐことが可能である。また、表面パネルの回転角度が変化する度に、荷重センサのばらつき等の補正処理を行う必要が無いことから、簡便に入力位置座標を表示座標系の座標へ変換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態における荷重センサを用いた入力装置の平面図である。
【図2】図1のII−II線で切断したときの断面図である。
【図3】本実施形態における荷重センサの断面図である。
【図4】荷重センサを構成するセンサ基板について、ベース基板側から見た時の平面図を示す。
【図5】本実施形態の入力装置を回転させた場合における、表示座標系及びセンサ座標系を説明するための平面図である。
【図6】本実施形態における入力装置の動作を示すフローチャート図である。
【図7】本実施形態における入力装置のブロック図である。
【図8】図6のステップST6において読み込まれる座標変換パラメータの一例を示す表である。
【図9】本実施形態における入力装置の初期測定フローチャート図である。
【図10】従来例の荷重センサを用いた入力装置における課題を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態における荷重センサを用いた入力装置1について、図面に基づいて説明する。なお、各平面図及び各断面図は見やすくするため模式的に示したものであり、寸法の比率は適宜変更して示している。
【0025】
図1は、入力装置1を入力面側から見たときの平面図であり、透過させて模式的に示したものである。図2には、図1のII−II線で切断したときの入力装置1の断面図を示す。
【0026】
図1及び図2に示すように本実施形態の入力装置1は、荷重を検出することができる複数の荷重センサ20a〜20dと表面パネル10とを有して構成される。図2に示すように、入力装置1は液晶パネルやOLED(Organic light emitting diode)パネル等の表示装置17の表示面側に配置されて、携帯電話等の携帯情報端末の表示部として用いられる。
【0027】
表面パネル10は、PC(ポリカーボネート)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等の透明樹脂基板又はガラス基板から形成されており、入力操作を行う入力面を構成している。図1に示すように、表面パネル10には矩形状の表示領域11が設けられており、ユーザーは表示領域11を通して表示装置17からの表示画像や文字データ等を視認することができる。
【0028】
図2に示すように、複数の荷重センサ20a〜20d(図2では20a、20cのみ図示する)は支持基板13上に設置されており、表面パネル10に加えられる荷重位置を検出できるように表面パネル10の裏面側(表示装置17側)に配置される。これにより、入力操作時に表面パネル10の入力面の任意の箇所が押圧されると、入力位置に応じて複数の荷重センサ20a〜20dに荷重が加えられて、それぞれ荷重データが出力されることになる。なお、支持基板13には、表面パネル10と同様に透光性の基板を用いることができ、必要に応じて表示領域11と対向する箇所に窓状の穴を形成することも可能である。
【0029】
図1に示すように、矩形状の表示領域11の外周には着色された加飾領域12が設けられている。本実施形態において複数の荷重センサ20a〜20dは、矩形状の表示領域11の各辺の略中央部に位置する加飾領域12に、それぞれ配置されている。このように配置することにより表面パネル10に加えられる荷重を良好に検出することが可能となる。すなわち、表面パネル10は入力操作における押圧を支えることができる程度の剛性を有して構成されているが、表面パネル10の裏面に荷重センサ20a〜20bが設けられていない場所では撓みやすくなる。したがって、例えば荷重センサ20a〜20bを角部に設ける場合は、特に辺の中央部付近が撓みやすいため、表示領域11の中央部付近を押圧しても荷重センサ20a〜20dに荷重がうまく伝達されない場合が生じて、センサ出力が低下する場合がある。これに対し、本実施形態の入力装置1のように、各辺の中央部付近に荷重センサ20a〜20dを形成することにより、表面パネル10に加えられた荷重が各荷重センサ20a〜20dに良好に伝達されて、センサ出力を向上させることが可能となる。なお、荷重センサの位置や個数はこれに限定される物では無い。
【0030】
加飾領域12には、着色された加飾層(図示しない)がスクリーン印刷法やインクジェット印刷法等の印刷法により形成されている。これにより、加飾領域12が遮蔽されて、各荷重センサ20a〜20dがユーザーに視認されることを防止できる。
【0031】
図3には荷重センサ20aの断面図を、図4にはセンサ基板22の裏面側から見たときの平面図を示す。なお、図3では荷重センサ20aの構成を示しているが、荷重センサ20b〜20cにおいても同様の構成、機能を有する。
【0032】
図3に示すように、荷重センサ20aはセンサ基板22、ベース基板21、及び受圧部24を有して構成されている。
【0033】
センサ基板22とベース基板21とは、センサ基板側支持部27aとベース基板側支持部27bとが圧着されて接合されている。そして、センサ基板22とベース基板21との間に所定の空間部を有するように接合されている。センサ基板22には厚み方向に変位可能な変位部25が形成されており、変位部25の上面には上方に突出する受圧部24が形成されている。また、図4に示すように、センサ基板22の裏面には、歪み検出素子として複数のピエゾ素子23が形成されている。複数のピエゾ素子23は、ブリッジ回路を構成するように配線部26によって接続されている。
【0034】
入力装置1の入力操作時において表面パネル10の任意の箇所に荷重が加えられると、表面パネル10の裏面に配置された各荷重センサ20a〜20dのそれぞれの受圧部24に荷重が加えられる。これにより、変位部25がセンサ基板22の厚み方向に変位して、この変位量に応じて各ピエゾ素子23の電気抵抗値が変化する。この各ピエゾ素子23の電気抵抗値の変化により、各ピエゾ素子23で構成されるブリッジ回路の中点電位が変化して、センサ出力として取り出される。図3に示すようにセンサ基板側電気接続部28aはベース基板側電気接続部28bと接続されており、センサ出力はベース基板側電気接続部28bを介して外部の制御部15(図示しない)へと出力される。そして、各荷重センサ20a〜20dのセンサ出力データに基づいて入力位置座標が算出される。
【0035】
荷重センサ20a〜20dは、半導体プロセスによって製造することが可能であり、センサ基板22、ベース基板21、及び受圧部24はシリコン基板から構成されている。この製造プロセスのぱらつき等によって、荷重センサ20a〜20dの出力特性は、ばらつきを有することになる。また、表面パネル10及び支持基板13の反りや歪み、荷重センサ20a〜20dの設置方法等によっても、誤差を生じる場合がある。
【0036】
したがって、入力位置座標を算出する場合に、各荷重センサ20a〜20dの出力特性のばらつきを補正する必要がある。そのため、各荷重センサ20a〜20dのデータに、それぞれのばらつきに対応したX位置係数、Y位置係数を乗じて入力位置座標が算出される。
【0037】
図5は、入力装置1の回転角度が変化した場合における、表示座標系30及びセンサ座標系31と入力装置1との関係を示す説明図である。表示座標系30は、表面パネル10の回転に応じて表示画像や文字データ等の表示方向を規定する座標系であり、センサ座標系31は表面パネル10への入力位置を規定する座標系である。図5(a)は初期状態であり、重力方向に対して入力装置1の方向がほぼ一致している状態を示す。図5(b)は、入力装置1を反時計回りに約90°回転させた状態であり、図5(c)、図5(d)はそれぞれ約180°、約270°回転させた場合を示す。
【0038】
図5(a)に示すように、初期状態においては表示座標系30とセンサ座標系31とは一致しており、表示座標原点30aとセンサ座標原点31aとはいずれも表示領域11の例えば左上角部に設定されている。この場合、表示画像やメニュー選択項目の表示位置座標に対する入力操作時の入力位置座標の検出位置ずれは発生せず、問題なく入力操作を行うことが可能である。
【0039】
ところが、図5(b)〜図5(d)に示すように表面パネル10の回転角度を変化させた場合、ユーザーに対して一定の方向で表示画像や文字データ等を表示させるために、表示座標系30は表面パネル10に対して回転する。すなわち、入力装置1を約90°(図5(b))、約180°(図5(c))、約270°(図5(d))と回転させても、表示座標原点30aはユーザーから見たときに表示領域11の左上に位置するように座標変換される。これにより、表面パネル10の回転角度によらず、ユーザーに対して適切な方向に画像等が表示されることになる。
【0040】
これに対し、センサ座標系31の各荷重センサ20a〜20dに対する相対位置は、表面パネル10が回転した場合でも変化しない。例えば、図5(b)に示すように表面パネル10が90°回転した場合には、センサ座標系31についても同じく90°回転する。したがって、表面パネル10の回転によって、表示座標系30とセンサ座標系31とは一致しなくなるため、表示位置座標と入力位置座標との間にずれが発生してしまう。
【0041】
例えば図10に示した従来例の入力装置101と同様に、表示座標系30の回転とともにセンサ座標系31についても表面パネル10に対して回転させると、センサ座標系31と表示座標系30とのずれは無くなる。しかし、上述のとおり入力位置座標の算出においては、各荷重センサ20a〜20dのばらつき等を補正するためのX位置係数、Y位置係数を乗じて算出される。したがって、センサ座標系31が各荷重センサ20a〜20dに対して回転すると、その度に新たに補正係数を設定する必要があり、処理時間が増大し、また、処理に必要な回路も増大してしまうという課題が生じてしまう。また、センサ座標系31を回転させたときに補正係数を設定しない場合、入力位置座標の算出ずれが大きくなり、入力装置1としての機能を損なうおそれがある。
【0042】
以下、本実施形態の入力装置1における入力座標変換方法について図面に基づいて説明する。図6には、本実施形態の入力装置1における入力座標変換のフローチャートを示す。また、図7には入力装置1のブロック図を示す。
【0043】
図6に示すステップST1では、ユーザーが表面パネル10の任意の箇所に荷重を加えて入力操作を行う。これにより、表面パネル10の裏面に配置された各荷重センサ20a〜20dにはそれぞれ入力位置と入力荷重量に応じた荷重が加えられる。
【0044】
ステップST2では、各荷重センサ20a〜20dでそれぞれ検出されたセンサ出力データが、図7に示す制御部15へと送られて、荷重データとして取得される。なお、制御部15は様々な処理を行うIC(Integrated Circuit)から構成されており、処理する機能や目的に応じて複数のICから構成されていてもよい。
【0045】
次にステップST3では、各荷重データに基づいてセンサ座標系31における入力座標を算出する。各荷重センサ20a〜20dで検出された荷重データをそれぞれDatA、DatB、DatC、DatDとし、センサ座標系31における入力位置座標を(Xs、Ys)、全荷重をZとすると、以下のような式で算出される。なお、Ax〜Dx、及びAy〜Dyは、各荷重センサ20a〜20dのばらつき等を補正するためのX位置係数、Y位置係数である。
Xs=(Ax・DatA+Bx・DatB+Cx・DatC+Dx・DatD)/Z
Ys=(Ay・DatA+By・DatB+Cy・DatC+Dy・DatD)/Z
Z=DatA+DatB+DatC+DatD
【0046】
本実施形態においては、図5(b)から図5(d)に示すように、表面パネル10を回転させた場合においても、センサ座標系31と各荷重センサ20a〜20dとの相対位置は変化しないため、センサ座標系31における入力座標は上記の式で算出することができる。また、初期状態で得られたX位置係数、Y位置係数をそのまま用いることができ、表面パネル10の回転角度が変化するたびにX位置係数、Y位置係数を求めるステップを省略することができるため、簡便に入力位置座標を算出することができる。
【0047】
また、図5(b)から図5(d)に示すように表面パネル10の回転角度が変化した場合において、センサ座標系31の各荷重センサ20a〜20dに対する相対位置は変化せず、これに対し、表示座標系30は表面パネル10の回転に応じて回転する。このため、センサ座標系31と表示座標系30とはずれが生じていることから、センサ座標系31における入力位置座標と表示座標系30の表示位置座標とは一致しない。本実施形態の入力装置1においては、ステップST3で算出されたセンサ座標系31の入力位置座標を、ステップST6において表示座標系30の座標に変換させることにより一致させることができる。
【0048】
まず、図6に示すステップST4では、図7に示す回転検出部14から表面パネル10の回転角度のデータを取得する。回転検出部14は表面パネル10と一体に設置される場合に限らず、入力装置1や表示装置17に接続されたプリント基板等の回路基板に配置される等、実質的に表面パネル10の回転角度データが検出可能なように配置されていれば良い。
【0049】
回転検出部14は、加速度センサ等のセンサを用いることができ、重力方向に対する表面パネル10の方向を検出することにより表面パネル10の回転角度を取得することができる。あるいは、表面パネル10を携帯機器の筐体に対して回転させる場合には、回転検出部14として機械的または電気的スイッチを用いて、筐体に対する表面パネル10の回転角度を検出することができる。
【0050】
次に、ステップST5では、表面パネル10の回転角度に対応する座標変換パラメータを取得する。座標変換パラメータは、後述するステップST6の入力位置座標変換時に必要なパラメータであり、図8に示すように、回転角度に対応する座標変換パラメータ(θ、Xp、Yp)の値が制御部15にあらかじめ保存されている。なお、表中のXp_max、Yp_maxは、表面パネル10の表示領域11のX方向及びY方向の最大幅を示しており、例えば、図5(a)に示すように、センサ座標系31の原点を左上角部とすると、右下角部の座標は(Xp_max、Yp_max)となる。また、図8の表に示す「rotation index」の0〜3は、それぞれ、図5(a)〜図5(d)にそれぞれ対応して設定されている。例えば、表面パネル10の回転角度が、図5(b)に示すような状態の場合、図8の表に示す「rotation index」=1に対応する座標変換パラメータ、すなわち、(θ、Xp、Yp)=(90、Xp_max、0)が取得される。
【0051】
ステップST6では、以下に示す[数1]によってサンサ座標系31における入力位置座標を表示座標系30の座標へと変換することができる。ステップST6では、ステップST3で得られた入力位置座標(Xs、Ys)、及びステップST5で得られた座標変換パラメータ(θ、Xp、Yp)を用いて、簡便に表示座標系30の座標へと変換することが可能である。これにより、センサ座標系31における入力位置座標(Xs、Ys)は表示座標系30における入力位置座標(Xt、Yt)へと変換される。なお、全荷重データZには、ステップST3で求めた値がそのまま用いられる。
【0052】
【数1】

【0053】
ステップST6においては、[数1]に示すように、各荷重センサ20a〜20dのばらつき等の影響を補正するためのX位置係数(Ax〜Dx)、及びY位置係数(Ay〜Dy)を新たに算出して、座標変換式に用いる必要がない。したがって、表面パネル10の回転角度が変化するたびに補正係数を算出する必要がなく、座標変換を短時間で行うことが可能である。また、制御部15における処理回路の規模の増大を抑えることができる。
【0054】
なお、ステップST4及びST5は、図6に示すように、ステップST2及びST3と並列に実行することができる。従来技術のように、表面パネル10の回転角度の変化に応じて補正係数を算出して座標変換を行う場合には、座標変換工程が複雑化し、また並列処理は困難であるため処理時間が増大してしまう。これに対し、本実施形態の入力装置1においては並列処理可能であり、座標変換処理が短時間で済むため、快適な入力操作を行うことが可能となる。
【0055】
次に、ステップST7では、表示座標系30へと変換された入力位置座標(Xt、Yt)に基づいて、表示装置17の画面表示を更新する。この処理において、図7に示す画像処理部16に、入力位置座標データ(Xt、Yt)及び全荷重データZが送信されて、表示装置17の画面が更新される。なお、画像処理部16には必ずしも全データを送信する必要はなく、必要に応じてデータの一部を送信する場合もある。
【0056】
ステップST7の後、引き続き入力操作を行う場合はステップST1から繰り返され、入力操作を行わない場合には終了する(ステップST8)。
【0057】
図9には、各荷重センサ20a〜20dのばらつき等の影響を補正するためのX位置係数、及びY位置係数を求める初期測定フローチャート図を示す。この初期測定は1回だけ行えば良いため、入力装置1を組み立てた後の出荷前に実施される。または、入力装置1が組み込まれた携帯機器などを購入したユーザーが最初に実施してもよい。
【0058】
図9のステップST11では初期オフセット補正として、初期状態における各荷重センサ20a〜20dの出力データについてゼロ点補正を行う。これは、初期状態で各荷重センサ20a〜20dに加えられている荷重についてゼロ点補正する処理である。これにより、初期状態における各荷重センサ20a〜20dの出力ばらつきや、表面パネル10との設置の状態のばらつきをリセットできる。
【0059】
次にステップST12以降では、データ取得ループを実行する。ステップST13において、表示領域11のある決められた位置、例えば(Xs、Ys)=(0、0)に一定の荷重を加える。そして、そのときの各荷重センサ20a〜20dの出力データ(DatA1、DatB1、DatC1、DatD1)を取得する(ステップST14)。
【0060】
このようなデータ取得処理(ST13〜ST14)を、センサ座標系31の異なる位置で繰り返し行う(ステップST15)。入力位置座標(Xs、Ys)はある決められた位置であるため、変数は各荷重センサ20a〜20dの出力データ(DatA、DatB、DatC、DatD)の4つである。したがって、少なくとも4箇所でのデータを取得することにより、4変数の線形方程式を立てることができる。これにより、最小2乗法を用いてX位置係数(Ax、Bx、Cx、Dx)、及びY位置係数(Ay、By、Cy、Dy)を求めることができる。
【0061】
図9に示す初期測定フローにより求められたX位置係数及びY位置係数は制御部15に格納される。そして、図6に示すステップST3の入力位置座標の算出処理において用いられる。これにより、各荷重センサ20a〜20dのばらつき等を補正して、センサ座標系31における入力位置座標の検出精度を向上させることができる。
【0062】
また、センサ座標系31における入力位置座標を表示座標系30の座標へと変換する場合(ステップST6)においては、[数1]に示すように、X位置係数、Y位置係数が不要である。したがって、表面パネル10の回転角度に応じて、例えば図9に示すようなデータ取得ループ(ステップST12〜ST15)を行う必要がなく、簡便な算出処理で座標変換を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1 入力装置
10 表面パネル
11 表示領域
12 加飾領域
13 支持基板
14 回転検出部
15 制御部
16 画像処理部
17 表示装置
20a、20b、20c、20d 荷重センサ
21 ベース基板
22 センサ基板
23 ピエゾ素子
24 受圧部
25 変位部
30 表示座標系
30a 表示座標原点
31 センサ座標系
31a センサ座標原点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像や文字データを視認するための表示領域を有する表面パネルと、
前記表面パネルに入力される入力位置を検出するように配置された複数の荷重センサと、を有し、
前記表面パネルの回転角度に応じて前記画像や文字データの表示方向を規定する表示座標系と、前記表面パネルへの入力位置を規定するセンサ座標系とを有しており、
前記複数の荷重センサの荷重データから前記センサ座標系における入力位置座標を算出する入力位置算出手段と、前記表面パネルの前記回転角度に基づいて前記入力位置座標を前記表示座標系の座標に変換する座標変換手段とを有することを特徴とする荷重センサを用いた入力装置。
【請求項2】
前記座標変換手段において、前記表面パネルの前記回転角度に対応する座標変換パラメータを読み込んで、前記入力位置座標を前記表示座標系の前記座標に変換することを特徴とする請求項1に記載の荷重センサを用いた入力装置。
【請求項3】
前記入力位置座標を算出する際に必要なX位置係数及びY位置係数を、初期設定時に、複数の荷重測定データを用いて最小2乗法により求めることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の荷重センサを用いた入力装置。
【請求項4】
前記荷重センサは、センサ基板と前記センサ基板に設けられた複数のピエゾ素子とを有して構成されており、入力操作による前記センサ基板の変位量を前記ピエゾ素子により検出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の荷重センサを用いた入力装置。
【請求項5】
前記表示領域は4辺を有する略矩形状に形成されており、前記複数の荷重センサは、前記表示領域の各辺の略中央に位置する前記表示領域の外周にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の荷重センサを用いた入力装置。
【請求項6】
画像や文字データを視認するための表示領域を有する表面パネルと、前記表面パネルに入力される入力位置を検出するように配置された複数の荷重センサと、を有し、前記表面パネルの回転角度に応じて前記画像や文字データの表示方向を規定する表示座標系と、前記表面パネルへの入力位置を規定するセンサ座標系とを有する荷重センサを用いた入力装置の入力座標変換方法であって、
a)前記複数の荷重センサの荷重データから、前記センサ座標系における入力位置座標を算出するステップと、
b)前記表面パネルの前記回転角度に基づいて、前記センサ座標系の前記入力位置座標を前記表示座標系の座標に変換するステップと、を有することを特徴とする荷重センサを用いた入力装置の入力座標変換方法。
【請求項7】
前記b)ステップにおいて、前記表面パネルの前記回転角度に対応する座標変換パラメータを読み込んで、前記入力位置座標を前記表示座標系の前記座標に変換することを特徴とする請求項6に記載の荷重センサを用いた入力装置の入力座標変換方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−25427(P2013−25427A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157371(P2011−157371)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】