説明

荷重センサ内蔵アクチュエータ

【課題】ベッドの床上の荷重を検出するための種々の手段が提案されているが、荷重センサがベッドと別体に構成され、また外部に設置されているため種々の課題がある。
【解決手段】本発明では、ねじシャフト1の一端側を基体2に回転可能に支持すると共に、ねじシャフトに雌ねじ部材3を螺合し、雌ねじ部材に固定した作動棒体4をねじシャフトの軸方向に進退可能に構成したアクチュエータにおいて、基体には、ねじシャフトと同軸に、スラスト軸受け6と、それを介してねじシャフトの一端側を軸方向に支持する作動筒体8を設けると共に、この作動筒体と、基体側の支持部材8との間に検出筒体9を設け、検出筒体の外面に歪みゲージ10を取り付けた荷重センサ内蔵アクチュエータにより上記の課題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷重センサ内蔵アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ねじシャフトの一端側を基体に回転可能に支持すると共に、ねじシャフトに雌ねじ部材を螺合し、雌ねじ部材に固定した作動棒体をねじシャフトの軸方向に進退可能に構成したアクチュエータは、ベッド等における床の昇降機構等に広く利用されている。
【0003】
一方、近来、例えば特許文献1に開示されているように、ベッドの脚の全てに荷重センサを設置して床上の荷重を検出可能とし、これにより、患者の体重や、患者の動きを検出して、介護や看護等に利用することが行われている。例えば、老人等のベッドの使用者が床部から降りたことを荷重測定により検出して通報することにより、事故等の発生の防止を図ることができる。
【0004】
尚、床上の荷重を検出する手段としては、荷重による気のう内の圧力の変化を検出するもの等、種々のものがある。
【特許文献1】特開平11−342160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように荷重センサがベッドと別体に構成され、また外部に設置されるものでは、次のような課題がある。
1.荷重センサ及びそれからのケーブルが病室の床上に露出しているため、使用環境においては、防水、防塵性、耐衝撃性、耐振動性等のような耐環境性能を確保することが難しい。
2.ベッドを移動する場合には、一々、荷重センサを外さなければならないので非常に面倒である。
そこで本発明ではこのような課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上述した目的を達成するために、ねじシャフトの一端側を基体に回転可能に支持すると共に、ねじシャフトに雌ねじ部材を螺合し、雌ねじ部材に固定した作動棒体をねじシャフトの軸方向に進退可能に構成したアクチュエータにおいて、基体には、ねじシャフトと同軸に、スラスト軸受けと、それを介してねじシャフトの一端側を軸方向に支持する作動筒体を設けると共に、この作動筒体と、基体側の支持部材との間に検出筒体を設け、検出筒体の外面に歪みゲージを取り付けた荷重センサ内蔵アクチュエータを提案する。
【0007】
また本発明では、上記の構成において、歪みゲージの信号を検出する検出手段を基体内に設置し、電線により基体外に検出信号を出力することを提案する。
【0008】
また本発明では、上記の構成において、歪みゲージの信号を検出する検出手段を基体内に設置すると共に、検出手段に無線通信手段を構成し、無線通信により基体外に検出信号を出力することを提案する。
【0009】
また本発明では、上記の構成において、支持部材を基体に対して着脱可能に構成することを提案する。
【0010】
更に本発明では、上記の構成において、ねじシャフトの一端側に細径部を形成し、この細径部にスラスト軸受を配置して軸方向の荷重を伝達する構成とすることを提案する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアクチュエータでは、作動棒体から雌ねじ部材を介してねじシャフトに伝達された荷重は、スラスト軸受を介して作動筒体に伝達され、そして作動筒体と支持部材間に配置された検出筒体を軸方向に圧縮する。
【0012】
軸方向に圧縮された検出筒体は、中間部が鼓状に膨出するような弾性変形をし、この弾性変形に対応して外面に固定された歪みゲージが変形するため、この歪みゲージの変形量に対応して、作動棒体を介して加わっている荷重を測定することができる。
【0013】
特に、歪みゲージを取り付けた検出筒体、及びそれに荷重を伝達するスラスト軸受と作動筒体は、ねじシャフトに対して同軸に構成しているため、基体内にコンパクトに格納することができる。
【0014】
このため本発明に係る荷重センサ内蔵アクチュエータは、基体内に荷重センサを内蔵する他は、外形を含めて、従来のアクチュエータと同様な構成としてベッドの昇降機構等に使用することができ、この場合には、ベッドと一体の構成としてベッド上の荷重を測定することが可能となる。
【0015】
アクチュエータに内蔵された歪みゲージの検出信号は、増幅器等の検出手段を介して電線によりアクチュエータの外部に導出したり、無線通信によりアクチュエータの外部に導出して荷重測定手段に接続することができる。前者の場合においても、電線はモータ配線と同一の導出部から導出させることができ、特別の導出部を設ける必要はない。
【0016】
こうして本発明を使用してベッドを構成した場合には、荷重センサ及びそれからのケーブルが病室の床上に露出するようなことがないので、防水、防塵性、耐衝撃性、耐振動性等のような耐環境性能を確保することが容易である。
【0017】
またベッドを移動する場合にも、荷重センサを一々外すという面倒な作業は不要となる。
【0018】
また本発明に係る荷重センサ内蔵アクチュエータでは、荷重センサとアクチュエータとが一体に構成されているので、荷重センサのシステム的な調整は、荷重センサ内蔵アクチュエータ自体の製造時に行うことができ、ベッド等に設置した際のキャリブレーションは不要となるため、ベッド等の組立工程の削減、そしてコストダウンを図ることが可能である。
【0019】
また、本発明の荷重センサ内蔵アクチュエータでは、支持部材を基体に対して着脱可能に構成すれば、使用する荷重範囲に適合した検出筒体及び歪みゲージを有する支持部材と交換することにより、荷重範囲の異なる多種類のアクチュエータを容易に構成することができ、また検出筒体に代えて支持用リブを突出させた構成の支持部材を、代わりに基体に装着することにより、同一外形で、荷重センサを内蔵していないアクチュエータを容易に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1〜図4は本発明の荷重センサ内蔵アクチュエータの実施の形態を示す縦断説明図である。
符号1はねじシャフトであり、このねじシャフト1の一端側を基体2に回転可能に支持すると共に、ねじシャフト1には雌ねじ部材3を螺合しており、この雌ねじ部材3に作動棒体4を固定して、作動棒体4をねじシャフト1の軸方向に進退可能に構成している。尚、基体2は、図においてハッチングを付しているが、このハッチングを付した部分は必ずしも無空部分を示すものではなく、適宜に空間部分を構成できるものである。又、図示は省略しているが、基体2とねじシャフト1間には、ラジアル方向のみ拘束して回転可能とするラジアル軸受けを適所に設けることができる。
【0021】
次に、符号5はねじシャフト1の一端側に設けた細径部を示すもので、この細径部5にスラスト軸受6を配置し、ねじシャフト1の荷重を、細径部5の上側の段部によりスラスト軸受6の上側部材に伝達する構成としている。そしてスラスト軸受6の下側部材の下側に作動筒体7を設けている。これらのスラスト軸受6と作動筒体7はねじシャフト1の外側に同軸に配置されている。
【0022】
符号8は支持部材であり、この支持部材8は、図1、図2に示すように基体2の後側に装着可能に構成している。装着機構は、ねじ等の締結部材により結合する構成や、螺合により結合する構成等、適宜である。
【0023】
次に支持部材8には検出筒体9を突設しており、図1に示す装着時には、検出筒体9はねじシャフト1の外側に同軸に配置され、その先端面が作動筒体7の下面に当接状態となる。
【0024】
そして検出筒体9の外面には歪みゲージ10を取り付けている。符号11は回路基板であり、この回路基板11には歪みゲージ10からの信号電線12が接続されて、歪みゲージ10の検出信号を増幅する等の検出手段が機能の一つとして構成されており、この回路基板11からの出力電線13はコードキャップ14を有する導出部から、基体1の外部に導出して、荷重測定手段を機能の一部として構成したコントローラ15に接続している。このコントローラ15及び回路基板11は、歪みゲージ10に関する上述した荷重の検出機能の他、図示を省略しているモータの駆動制御や回転量検出等に関する機能を有するものとすることができる。尚、回路基板11は、その機能を上記コントローラ15にもたすことにより省略することも可能である。
【0025】
このように本発明では、歪みゲージ10を取り付けた検出筒体9、及びそれに荷重を伝達する作動筒体7及びスラスト軸受6は、ねじシャフト1に対して同軸に構成しているため、基体2内にコンパクトに格納することができる。
【0026】
従って本発明の荷重センサ内蔵アクチュエータは、基体2内に荷重センサを内蔵する他は、外形を含めて、従来のアクチュエータと同様な構成とすることができ、従って従来のアクチュエータと同様な形態においてベッド等の昇降機構に用いることができる。
【0027】
即ち、この場合、作動棒体4から雌ねじ部材3を介してねじシャフト1に伝達された荷重は、スラスト軸受6を介して作動筒体7に伝達され、作動筒体7と支持部材8間に配置された検出筒体9をねじシャフト1の軸方向に圧縮する。
【0028】
軸方向に圧縮された検出筒体9は中間部が鼓状に膨出するような弾性変形をし、この弾性変形に対応して歪みゲージ10が変形するため、この歪みゲージ10の変形量に対応して、作動棒体4を介して加わっている荷重、即ち、この実施の形態の場合にはベッドの床からの荷重を、回路基板11、出力電線13を介して、アクチュエータの外部のコントローラ15において測定することができる。
【0029】
以上の実施の形態では、アクチュエータに内蔵された歪みゲージ10による検出信号は、コードキャップ14を有する導出部を介して出力電線13によりアクチュエータの外部に導出しているが、この導出部は、図示は省略しているモータや回路基板11への給電線や信号線の導出部を利用すれば、専用の導出部を設ける必要なない。
【0030】
また回路基板11等に無線通信手段を設けて、歪みゲージ10による検出信号を無線通信によりアクチュエータの外部に送信して上記コントローラ15等の荷重測定手段により測定を行うことができる。
【0031】
以上説明したように本発明に係る荷重センサ内蔵アクチュエータを使用してベッドを構成すると、ベッド上の荷重を測定するために荷重センサ及びそれからのケーブルが病室の床上に露出するようなことがないので、防水、防塵性、耐衝撃性、耐振動性等のような耐環境性能を確保することが容易である。
【0032】
またベッドを移動する場合にも、一々、荷重センサを外すということが不要であるので面倒でない。
【0033】
また、以上の実施の形態においては、支持部材8を基体2に対して着脱可能に構成しているので、使用する荷重範囲に適合した検出筒体9及び歪みゲージ10を有する支持部材8と交換することにより、荷重範囲の異なる多種類のアクチュエータを容易に構成することができる。
【0034】
更に図3、図4に示すように、検出筒体に代えて支持用リブ16を突出させた構成の支持部材8’を、代わりに基体2に装着することにより、同一外形で、荷重センサを内蔵していないアクチュエータを容易に構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は以上の通りであるので、病院や高齢者施設、あるいは一般家庭等におけるベッドの床の昇降機構に使用することにより、ベッド上の使用者の体重の測定や使用者の体動等の情報を検出するための手段をベッドと一体に構成することができ、上述したような利点を有することにより、利用可能性が大である。
【0036】
また本発明の荷重センサ内蔵アクチュエータは、ベッドへの利用ばかりでなく、荷重を測定可能なアクチュエータとして、医療機器、家具等にも利用可能である。
【0037】
また本発明の荷重センサ内蔵アクチュエータは、アクチュエータとしての利用でなく、作動棒体が進退可能な荷重測定装置としても利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の荷重センサ内蔵アクチュエータの実施の形態を示す説明的縦断面図である。
【図2】図1のアクチュエータにおいて支持部材を外した状態を示す説明的縦断面図である。
【図3】図1のアクチュエータにおいて、基体に装着可能な他の支持部材を示す説明的縦断面図である。
【図4】図1のアクチュエータにおいて、基体に他の支持部材を装着した状態を示す説明的縦断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ねじシャフト
2 基体
3 雌ねじ部材
4 駆動棒体
5 細径部
6 スラスト軸受
7 作動筒体
8 支持部材
9 検出筒体
10 歪みゲージ
11 回路基板
12 信号電線
13 出力電線
14 コードキャップ
15 コントローラ
16 支持用リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじシャフトの一端側を基体に回転可能に支持すると共に、ねじシャフトに雌ねじ部材を螺合し、雌ねじ部材に固定した作動棒体をねじシャフトの軸方向に進退可能に構成したアクチュエータにおいて、基体には、ねじシャフトと同軸に、スラスト軸受けと、それを介してねじシャフトの一端側を軸方向に支持する作動筒体を設けると共に、この作動筒体と、基体側の支持部材との間に検出筒体を設け、検出筒体の外面に歪みゲージを取り付けたことを特徴とする荷重センサ内蔵アクチュエータ。
【請求項2】
歪みゲージの信号を検出する検出手段を基体内に設置し、電線により基体外に検出信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の荷重センサ内蔵アクチュエータ。
【請求項3】
歪みゲージの信号を検出する検出手段を基体内に設置すると共に、検出手段に無線通信手段を構成し、無線通信により基体外に検出信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の荷重センサ内蔵アクチュエータ。
【請求項4】
支持部材を基体に対して着脱可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の荷重センサ内蔵アクチュエータ。
【請求項5】
ねじシャフトの一端側に細径部を形成し、この細径部にスラスト軸受を配置して軸方向の荷重を伝達する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の荷重センサ内蔵アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−121566(P2009−121566A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294963(P2007−294963)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(390039985)パラマウントベッド株式会社 (165)
【Fターム(参考)】