説明

荷重受支持ブラケット

【課題】 外壁材等による荷重や地震等の振動、その他の外力を受けてもALC面材に損傷を与えることなく、またそれらによる変形も非常に小さく、熱損失も小さいこと。
【解決手段】 ブラケット本体1と筒状補強部材2と保持金具3とで構成する。ブラケット本体1は円筒状に構成し、その一端にALC面材11と当接する当接部1aを構成し、他端に進退自在に螺合した取付部本体1b2を構成し、その外面に胴縁8を取り付ける取付面1bfを構成する。当接部1aは、ブラケット本体1の筒内に延びる鍔状の当接板1a1を備えている。取付面1bfは、中央に取付孔1bhを開口した平坦な面である。筒状補強部材2は、その基部をブラケット本体1に外装固定し、当接部1a側から突出させる。筒状補強部材2には、その先端に鋸刃状の切り刃2aが連設してあり、これによりALC面材11中にそれ自体が進入する筒状溝11aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の躯体の外側に躯体に取り付けたALC面材を介して断熱材を配設した外断熱構造に於いて、脆弱なALC面材の損傷を避けつつ外壁材を確実に支持するために使用する荷重受支持ブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の断熱技術には、断熱材を躯体の内側に配する構成の内断熱と、外側に配する構成の外断熱とがある。この外断熱は内断熱と比較して、特に省エネルギーの点、躯体に熱応力が生じない点及び結露防止の点等で優れており、これらの利点が知られつつある。今後は更に内断熱構造に代わって多くの建物で採用されることになると思われる。
【0003】
現在、実施されている外断熱の施工の例としては、建物の駆体の外面に配してある面材にその前面の断熱材を分断しながら所定間隔毎に横桟を固設し、これらの横桟に外壁材を支持するための複数の通気胴縁を取り付ける支持構造が採用されている。
【0004】
前記通気胴縁は前記横桟の前面に一定間隔で設置される縦桟をそのように称しており、これによって断熱材の前面と外壁材の裏面との間に空気の流動する空間を確保する。この空間を空気が流動することにより断熱材を乾燥した状態に保つことができる。
【0005】
このような例の場合は、前記横桟の部位が断熱材の欠損部となり、かつ該横桟が熱橋となってしまうため、熱損失が大きくなり断熱性能が低下するという問題がある。
【0006】
他の例としては、硬質発泡系の断熱材を使用し、該断熱材の高い圧縮強度を利用してその前面に外壁材を支持するための通気胴縁を配すると共に、これを長ビス(ボルト・ナット)等の軸状の結合部材で固定する支持構造がある。
【0007】
このような例の場合は、硬質発泡系の断熱材の内部にあるガスが時間の経過とともに抜け、該断熱材が収縮し、強度が低下するという問題がある。
【0008】
このように内部のガスが抜けると、該断熱材は自重により更にそれ自体が収縮し、該断熱材と前記のように配してある通気胴縁との間に隙間が生じるようになり、外壁材の荷重は結局長ビスだけに作用することになる。
【0009】
同様に断熱材の収縮により長ビスと断熱材との間にも隙間が生じることになる。この長ビスと断熱材との間に隙間が生じると、硬質発泡系の断熱材に支持されていた長ビスの荷重に対する曲げ強度が低下する。したがって外壁材の荷重により該長ビスが容易に曲がるようになり、その結果として外壁材がずれ下がることになるという問題がある。
【0010】
これらの問題に対しては特許文献1及び2の提案があり、これらの提案によって解決されるに至っている。これらの文献に示されるブラケットは、通気胴縁を建物の躯体に確実に固定できるものであり、長期に亘る使用にも不安のない堅牢なものであるが、駆体の外側にALC面材が配され、これを介して断熱材が配された建物に適するものではない。また若干高価になる傾向があり、簡易で安価なブラケットということもできない。
【0011】
そこで、これを解決しようとするのが特許文献3の提案であり、それは、建物の躯体に固設したALC面材と外壁材を固設する胴縁との間に介在し、該ALC面材の前面に配した断熱材中にスポット的に埋め込んで使用する荷重受支持ブラケットであって、一端を前記ALC面材に接する当接部に、他端を前記胴縁を取り付ける取付部に、それぞれ構成した筒状のブラケット本体と、該ブラケット本体の当接部側から突き出し延長し、外端に切り刃を備えた筒状補強部材であって、該切り刃で該ALC面材中に旋回しつつ形成した筒状溝に進入する筒状補強部材とで構成した荷重受支持ブラケットである。
【0012】
そして、前記筒状補強部材は、前記ブラケット本体より長い金属筒状部材で構成し、その基部を該ブラケット本体の内周面に内張状態に取り付け又は外周面に外張り状態に取り付けることを適当とするものである。
【0013】
更に前記ブラケット本体の当接部には、断熱材への埋め込み時にその埋め込み部位を旋削する旋削刃を構成することを適当とするものである。
【0014】
この特許文献3の荷重受支持ブラケットは、それ以前の技術の問題点を解決した非常に優れたものであると考えるが、構造上、そのALC面材との当接面が小さいため、該荷重受支持ブラケットに掛かる外壁材等の荷重が狭いその当接面に集中し、中でもその下部の一部に集中する虞があり、場合によりそれによって該ALC面材の対応する部位に損傷を生じさせる虞のあることが分かった。
【0015】
【特許文献1】特開2002−30739号公報
【特許文献2】特開2003−49496号公報
【特許文献3】特開2006−70590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前記特許文献3の荷重受支持ブラケットを更に改良するものであり、ALC面材への当接面を拡張し、かつこれに掛かる荷重を一部に集中させず、広い面に分散することにより、容易にALC面材に損傷を与えることのない荷重受支持ブラケットを提供することを解決の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の1は、建物の躯体に固設したALC面材と外壁材を固設する胴縁との間に介在し、該ALC面材の前面に配した断熱材中にスポット的に埋め込んで使用する荷重受支持ブラケットであって、
一端を、その内側に中央の軸孔を残す状態に延長した、前記ALC面材に接する当接板を備えた当接部に、他端を、前記胴縁を直接に又は保持手段を介して間接に取り付ける取付部に、それぞれ構成した筒状のブラケット本体と、
該ブラケット本体の当接部側の外周から突き出し延長し、その先端に切り刃を備えた筒状補強部材であって、該切り刃で前記ALC面材中に筒状溝を形成しながら該筒状溝中に進入する筒状補強部材と、
前記取付部に配した胴縁又は胴縁との間に配した保持手段から貫通させ、前記ブラケット本体の内部を通過させ、前記当接部の当接板の中央に開口した軸孔を通じてALC面材に到達させ、該ALC面材に連結することで、該ブラケット本体を該ALC面材に固定するための軸状結合手段と、
で構成した荷重受支持ブラケットである。
【0018】
本発明の2は、本発明の1の荷重受支持ブラケットに於いて、前記取付部を、前記ブラケット本体の他端部内周に形成した雌ねじ部と、該雌ねじ部に進退自在に螺合する雄ねじ部を外周に備え、外端に中央に取付孔を開口した取付面を備えた筒状の取付部本体とで構成したものである。
【0019】
本発明の3は、本発明の1又は2の荷重受支持ブラケットに於いて、前記軸状結合手段として、前記取付部に配した胴縁又は保持手段をその外部から貫通し、前記ブラケット本体の内部を通過し、当接部の当接面に開口した軸孔を通じて突出すると共に、前記当接部で当接している取付対象のALC面材を貫通し、該ALC面材の裏面側に形成した凹部に突出した端部にワッシャー部材を嵌挿させた上でナットを螺合して、該ALC面材に固定できるようにしたボルト(長ビス)を採用したものである。
【0020】
本発明の4は、本発明の1、2又は3の荷重受支持ブラケットに於いて、前記保持手段を、前記取付部の取付面に固定する固定部材と、前記胴縁を固定保持する保持部材とで構成し、
前記固定部材を、中央部に前記取付面の取付孔に嵌合する位置決め突部を備え、該位置決め突部の中央に軸状結合手段を貫通させる軸孔を開口し、更に前記保持部材を水平方向にスライド自在に支持する上下の案内レール又は上下の案内溝を備えたものに構成し、
他方、前記保持部材を、前記胴縁を固定保持する保持面と、前記固定部材の上下の案内レールにスライド自在に係合して水平方向移動自在に支持される上下の係合溝又は前記固定部材の上下の案内溝にスライド自在に係合して水平方向移動自在に支持される上下の係合レール部とを備えたものに構成したものである。
【0021】
本発明の5は、本発明の2の荷重受支持ブラケットに於いて、前記取付孔を3角形以上の多角形開口部に構成したものである。
【発明の効果】
【0022】
したがって、本発明の1の荷重受支持ブラケットによれば、面材としてALC板を使用した建物に於いて、簡易な構成でありながら、これを使用することにより、前記当接部の軸孔を除くほぼ全面にわたって形成した当接板がALC面材の前面に当接することになるため、該荷重受支持ブラケットに掛かる荷重、特に曲げ荷重が該当接板の全面を通じて広い範囲に分散されて掛かることになり、該ALC面材に部分的に大きな荷重が掛かることがない。
【0023】
また同時に、前記筒状補強部材が、それ自体によってALC面材に形成した筒状溝に嵌合して、より広い面である該筒状溝の内外の面に接することとなる。
【0024】
従って、例えば、地震等の振動を受けた場合等であっても、荷重受支持ブラケットに掛かる荷重及び地震等による荷重は、前記当接板及び前記筒状補強部材を通じて広く分散されてALC面材に伝わることになるため、該ALC面材に損傷を与えることなく、建物の外壁材の荷重を長期間に亘り確実に保持でき、外壁材のずれ下がり等を防止できる。
【0025】
本発明の2の荷重受支持ブラケットによれば、取付部で不陸を調節しながら、胴縁を直接に又は保持手段を介して間接に取り付けることができる。
【0026】
本発明の3の荷重受支持ブラケットによれば、若干脆弱性のあるALC面材に、これ自体を該ALC面材に損傷を生じさせる虞を低下させつつ確実に固定することができる。
【0027】
本発明の4の荷重受支持ブラケットによれば、各々が躯体にその上下端でピン結合され、地震等により躯体が変形した場合に、一定範囲で自由に回転変位することによりその損傷を回避するように取り付けられているALC面材、即ち、ロッキング構法によって取り付けられているALC面材に、外壁材をこれを介して取り付けることにより、地震等の振動を受けた際のそのようなALC面材の自由な回転変位を制限することなく取り付けることを可能とし、該ALC面材のロッキング構法による作用を制限しないようにしたものである。
【0028】
またそのような作用を非常に簡単な構成で実現することができるものでもある。
【0029】
本発明の5の荷重受支持ブラケットによれば、取付部本体の中央の取付孔を3角形以上の多角形開口部に構成したため、その取付孔に、電動工具の同様の形状寸法に構成した回転先端を嵌合してこれを回転させることができる。そのため、前記ブラケット本体に該取付部本体をスピーディに螺合して取り付けることができる。該取付部本体の螺合進退状態を調節する不陸の微調整はその後手動により簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の荷重受支持ブラケットは、一端を当接部に、他端を取付部に、それぞれ構成した筒状のブラケット本体と、該ブラケット本体の当接部側の外周から突き出し延長した筒状補強部材と、前記ブラケット本体をALC面材に固定するための軸状結合手段とで構成したものである。
【0031】
この荷重受支持ブラケットは、建物の躯体に固設したALC面材と外壁材を固設する胴縁との間に介在し、該ALC面材の前面に配した断熱材中にスポット的に埋め込んで使用するものである。また、該ブラケット本体は、その径、長さ及び周側の厚み等並びにその材質等を必要な耐荷重や対象の建物に配される断熱材の厚み等を考慮しながらプラスチック、セラミックス又は金属等から自由に決定することができる。もっとも材質に関しては、多くの場合は、プラスチック類が熱伝導率が小さい点や安価に製造しうる点で適当である。
【0032】
前記ブラケット本体の当接部は、前記ALC面材にできるだけ広い面積で当接できるように構成するものであり、その一端から筒内に張り出した当接板を備えた構成とする。この当接板は中央に軸孔を残した概ねドーナツ状の形状をもった物に構成し、その外面は該ブラケット本体の端部外面と同一の面内に位置するものとする。
【0033】
前記ブラケット本体の取付部は、他端、即ち、該ブラケット本体の当接部を構成した一端と反対側の端部に構成する。該取付部は、該他端に、前記胴縁を直接に又は保持手段を介して間接に取り付ける得るように構成する。
【0034】
前記取付部は、前記胴縁を直接に取り付ける場合は、それが可能な構成であれば、特に特定の構成に限定されない。単なる環状の平坦面であっても良い。或いは、このような環状平坦面に鋭角の突起を突出形成し、木質の胴縁をこれに当接させた場合にその突起が突き刺さり又は食い込んで、当接させた胴縁が容易に動くことがないようにすることもできる。
【0035】
前記取付部は、前記胴縁を保持手段を介して取り付ける場合は、その外面を保持手段を取り付けるのに都合が良いように構成する。当然、保持手段の構成と関係するのでそれに対応するように構成する。いずれにしても特定の構成に限定されない。
【0036】
また取付部は、いずれにしても不陸調整可能な構成とすることもできる。この場合は、例えば、該取付部を、前記ブラケット本体の前記他端部の内周に形成した雌ねじ部と、該雌ねじ部に進退自在に螺合する雄ねじ部を外周に備え、外端に中央に取付孔を開口した取付面を備えた筒状の取付部本体とで構成することができる。取付部本体の螺合状態を調節することで、そのブラケット本体からの突出状態を種々に変更可能であり、不陸の調節ができることになる。
【0037】
なお、以上の取付部本体の取付孔は、これを3角形以上の多角形開口部に構成することができる。多くの場合、六角形が適当である。このように構成することにより、回転型の電動工具等を用いて、その回転部の先端の同様の多角形の結合部を該取付孔に嵌合した上で回転動作させ、前記ブラケット本体に取付部本体をスピーディに適当な状態まで螺合することができる。不陸の微調整は、手動で該取付部本体を回転させて行うことができる。
【0038】
また前記保持手段は、前記取付部に取付固定可能であり、胴縁を適切に固定保持することができる構成であれば特定の構成に限定されない。例えば、該保持手段は、前記取付部の取付面に固定する固定部材と、前記胴縁を固定保持する保持部材とで構成することができる。
【0039】
前記固定部材は、中央部に前記取付面の取付孔に嵌合する位置決め突部を備え、該位置決め突部の中央に軸状結合手段を貫通させ得る軸孔を開口し、更に前記保持部材を水平方向にスライド自在に支持する上下の案内レール又は上下の案内溝を備えたものに構成することができる。他方、前記保持部材は、前記胴縁を固定保持する保持面と、前記固定部材の上下の案内レールにスライド自在に係合して水平方向移動自在に支持される上下の係合溝又は前記固定部材の上下の案内溝にスライド自在に係合して水平方向移動自在に支持される上下の係合レール部とを備えたものに構成することができる。
【0040】
前記筒状補強部材は、前記ブラケット本体の当接部側外周から突出延長させた筒状の部材であり、その先端に切り刃を構成し、該切り刃で、該ブラケット本体の当接部が当接することとなるALC面材中に旋回しつつ筒状溝を形成し、同時に該筒状溝に進入して、該ブラケット本体に掛かる鉛直方向の荷重をその広い内外面で該筒状溝の両側面に伝えるものである。前記切り刃は旋回しつつALC面材中に筒状溝を形成し得るものである限り、その形状構成を自由に決定することができる。
【0041】
また前記筒状補強部材は、基本的に、以上の構成を有し、かつ機能を備えたものであれば、その他の構成及び材質等に関して特定のそれに限定されない。例えば、該筒状補強部材は、前記ブラケット本体より長い金属筒状部材で構成し、その基部を該ブラケット本体の外周面に外張り状態に取り付けて、当接部側から突出延長させた構成とすることができる。この筒状補強部材は、ALC面材にその切り刃で旋回しつつ筒状溝を形成するものであり、予定の荷重を十分に受けることが可能である限り、その厚みは薄い方が好ましい。
【0042】
前記軸状結合手段は、前記取付部に配した胴縁又は胴縁との間に配した保持手段からこれを貫通させ、ブラケット本体の内部を通過させ、前記当接部の当接板の中央に開口した軸孔を通じて該当接板の当接するALC面材に到達させ、該ALC面材に連結することで、該ブラケット本体を該ALC面材に固定するための手段である。ボルト・ナットやアンカー部材等を採用することが可能である。
【0043】
アンカーの場合は、以上のようにして、ALC面材に到達した部分をその下孔に挿入して強圧する等により、該下孔内部に進入した部分を拡大させて結合する。ボルト・ナットを利用する場合は、ALC面材に到達したボルトの部分を該ALC面材に開口したボルト孔に貫通させ、該ALC面材の裏面側に貫通突出した部分にワッシャー部材を介してナットを螺合して固定することができる。
【0044】
従って本発明の荷重受支持ブラケットは次のように使用することができる。
【0045】
新築の建物で用いる場合は、初めに建物の躯体にALC面材を取り付け、好ましくは該ALC面材の前面に気密シートを貼る。本発明の荷重受支持ブラケットは、比較的脆弱なALC面材を用いた場合に特化し、これに損傷を与えることなく、外壁材等の荷重を受け得るようにしたことに特徴を有するものであるから、面材はALC製のそれに限る。なお、前記気密シート間の結合部には、その間を通じて空気が移動することを阻止するために、気密テープ等を貼り付けるのが適当である。次いで該気密シートの前面に断熱材を取り付ける。ここで、断熱材を躯体の外側に取り付けるのは外断熱構造の特徴である。
【0046】
次いで該断熱材の外面側から前記荷重受支持ブラケットのブラケット本体を前記ALC面材の前面まで埋め込む。該断熱材には該ブラケット本体の外径に相当する切欠穴を予め形成しておき、その中に埋め込む。このとき同時に該ブラケット本体の当接部の周囲から突出する筒状補強部材を該ALC面材に筒状溝を形成しつつその中に進入させる。該筒状補強部材はできるだけ薄く構成し、かつその先端に切り刃が形成してあるため、単に強く押すだけでもALC面材に筒状溝を形成しつつその中に進入することができる。勿論、該ブラケット本体を回転させれば、切り刃が良好に作用し、前記筒状溝をよりスムーズに形成することができることになる。
【0047】
以上のブラケット本体は、取付部として不陸調整可能な取付部本体等による構成を採用した場合は、これを取り外した状態で、前記当接部の当接板の裏面側に構成した2以上の回転補助用の係止孔を利用し、これらに回転型の電動工具の回転軸の先端に取り付けた該当する数の係止ピン等を挿入した上で、該電動工具を回転駆動させることにより、容易に回転動作させることができる。これによって前記筒状補強部材によるALC面材の筒状溝形成動作が一層容易かつ確実に行われうることになる。
【0048】
この後、ブラケット本体の外端側に、前記した手順で回転型の電動工具等を用いて取付部本体を回転挿入させれば、該ブラケット本体に取付部本体をスピーディに螺合取り付けすることができる。この後、該取付部本体を手動で回転させ、そのブラケット本体に対する螺合状態を調節することで、不陸の微調整を行うことができる。
【0049】
なお、以上のように、取付部本体を螺合するのに先立って該ブラケット本体中に断熱材片を充填しておくことにするのが好ましい。これは、前記したように、予め断熱材に該ブラケット本体を埋め込むために切欠穴を形成した際に生じた断熱材断片を利用するのが適当である。これにより該部位に於ける断熱材の欠損を小さく抑え、熱橋も小さくし、熱損失を小さく抑えて断熱性能の低下を防ぐことができることになる。
【0050】
また該ブラケット本体は、以上の状態で、前記のように、その当接部外周から突出している筒状補強部材が、それが形成した前記ALC面材中の筒状溝中に進入状態となっているため、該ALC面材に仮取り付け状態となっている。更に該ブラケット本体の周囲は該ALC面材の前面の断熱材に囲繞された状態となっているので、上記仮取り付け状態は一層安定したものとなっている。
【0051】
この後、前記ブラケット本体は、その取付部に直接に配した胴縁又は胴縁との間に配した保持手段から貫通させたアンカー又は長ビス等の軸状結合手段によりALC面材に固定する。こうして取付部に直接配した胴縁又は取付部と胴縁との間に配した保持手段が該ブラケット本体に取付固定されると同時に、該ブラケット本体もALC面材への仮固定状態から確定した取付固定状態となる。なお胴縁が木製のそれであり、該ブラケット本体の取付部に鋭角の突起を突出形成してある場合には、該取付部に胴縁を当接させると、該突起が該胴縁に突き刺さり又は食い込んでその当接状態を固定できることになる。
【0052】
前記軸状結合手段として長ビスを用いる場合は、該ブラケット本体の取付部に当接させた胴縁の外側から又は保持手段の該当する部位から該長ビスを貫通させ、該ブラケット本体の中空部及びその当接板中央の軸孔を通じてALC面材側に突出させ、その突出部を該ALC面材に形成したボルト孔(軸孔)に貫通させ、該ALC面材の裏面側に貫通突出した部分にワッシャ部材を介してナットを螺合して固定することができる。該ALC面材の裏面側の該当する部分に凹部を形成しておき、該凹部に該ボルト孔が開口するようにしておけば、該長ビスの該凹部への突出端部にワッシャ部材を配した上でナットを螺合締め付けし、該凹部にALC補修材を充填することにより、該長ビスのALC面材裏面側への突出部を該凹部内に埋め込むことができる。こうして熱橋を生じにくくすることができる。
【0053】
なお、該長ビスは、ブラケット本体の中空部では、前記のように、この中に断熱材片を充填しておけば、その断熱材片中を貫通してALC面材に至ることとなる。
【0054】
該軸状結合手段としてアンカーを採用する場合は、該ALC面材の該当する部位に予め下孔を形成しておき、これに、胴縁又は保持手段の該当する部位及び断熱材片を貫通させたアンカーを挿入し、次いで、該アンカーをそのボルト部を強くねじ込む等により、その先端の外装部を拡大させ、該下孔にこれを固定することができる。
【0055】
その他、種々の軸状結合手段をその用法に従って用いることができる。
【0056】
この後、胴縁を保持手段を介してブラケット本体の取付部に取り付ける場合は、前記のように、取付部に固設した保持手段の外面側にビス等を用いて取り付ける。
【0057】
以上の保持手段として、前記取付部の取付面に固定する固定部材と、前記胴縁を固定保持する保持部材とで構成し、前記のように、保持部材を固定部材に水平方向スライド往復自在に取り付けたものを採用した場合は、前記胴縁は該保持部材にビス等で取り付ける。こうして胴縁は保持部材を介して固定部材に水平方向スライド往復自在に取り付けられることになる。
【0058】
この後は、前記胴縁の取り付け方の如何に関わらず、その外面側に種々の化粧材である外壁材を種々の結合手段を用いて固設する。
【0059】
こうして、本発明の荷重受支持ブラケットを使用して構築した外断熱壁構造は、ALC面材とブラケット本体及びブラケット本体と胴縁又は胴縁との間に介在する保持手段とは、それぞれ長ビスやアンカー等の軸状結合手段により相互に固定され、またブラケット本体の当接部外周から突出する筒状補強部材はALC面材中に形成された筒状溝中に挿入状態となり、該筒状補強部材の内外面が該筒状溝の対応する両側面と当接状態となって固定され、こうして該ブラケット本体が受ける外壁材等による曲げ荷重の一部は該筒状補強部材の広い内外面で分散してALC面材に伝えられることになる。更にブラケット本体の一端の筒内に張り出した当接板からなる当接部は、その中央部の軸孔を除く、直径がブラケット本体の外径であるドーナツ状の面でALC面材の前面に当接することになり、該ブラケットに掛かる曲げ荷重をそのドーナツ状の広い面で分散しながら該ALC面材に伝えることとなるものである。
【0060】
従って該ブラケット本体に加わる主として曲げ荷重は、ALC面材に広く分散して伝わり、局所的に加わることがないため、ALC面材のように比較的脆弱な面材で外壁材を支持させざるを得ないこのような場合であっても、該ALC面材に容易に損傷を生じさせることなく、外壁材の支持を行わせ得ることとなるものである。
【0061】
また、以上のように、外壁材による曲げ荷重を、ブラケット本体の当接部及び筒状補強部材によってALC面材に広く分散して掛けるようにしたため、前記軸状結合手段にはせん断方向の荷重或いは曲げ荷重は殆ど掛からず、軸方向の引張り又は圧縮荷重のみが掛かることとなったものである。そのため該軸状結合手段が挿入されているALC面材の結合用の孔の特に外端付近にせん断方向の荷重又は曲げ荷重が掛かった場合に生じる損傷の虞がなくなり、かつこのせん断方向の荷重又は曲げ荷重に比較して軸方向の引っ張り又は圧縮荷重は小さなものであるため、例えば、該軸状結合手段がALC面材に形成した下孔に結合したアンカー等であっても、該結合孔に損傷を生じさせる虞なく、該荷重を受けることができることになる。
【0062】
なお前記ブラケット本体及び筒状補強部材は、それぞれ円筒状に構成したものであるため取付時の周方向に方向性が無く、いずれの方向でも同等であるため、作業性を高めることができる。更にまたこの円筒状のブラケット本体及び筒状補強部材は、地震時の縦方向又は横方向等の多方向の揺れに対して同等の強度を備えていることとなる。
【0063】
またALC面材を用いた建物の改築の場合は、該ALC面材の外側に配してある外壁材及び胴縁を取り除いた上で、気密シートを張り替え、次いで該気密シートの前面に断熱材を取り付ける。次いで該断熱材の外面側から、予め開口してある、又はこの時点で開口した切欠穴に、前記荷重受支持ブラケットのブラケット本体を、該ALC面材の前面まで埋め込む。殆ど同時に該ブラケット本体の当接部側外周から突出する筒状補強部材を該ALC面材に筒状溝を形成しつつその中に進入させる。これは先に述べたようにして行う。
【0064】
この後、前記ブラケット本体の取付部に直接に取り付ける胴縁又は胴縁との間に配する保持手段から、先に説明したように軸状結合手段を貫通させてALC面材に固定する。ここで説明中の建物の改築の場合は、新築の場合と異なり、予め駆体に貫通孔であるボルト孔を形成しておくことはできないので、前記したように、ボルト・ナットを用いて、該ブラケット本体及び胴縁又は保持手段を固定することはできない。その他の軸状結合手段については、新築の場合に関して先に説明したのと全く同様に用いることが可能であり、同様の結果を得ることができる。その取り付けの手順及びその後の外壁材の取り付け方等も先に説明したのと全く同様である。保持手段への胴縁の取り付け方及びその後の手順も同様である。
【0065】
なお、以上のような改築の場合であれ、先に述べた新築の場合であれ、以上の保持手段を、取付部の取付面に固定する固定部材と、胴縁を固定保持する保持部材であって、該固定部材にスライド往復自在に取り付ける保持部材とで構成した場合は、ロッキング構法で躯体に取り付けられた個々のALC面材の一定範囲の回転変位に制限を加えるようなことがない。そのため、個々のALC面材は、地震等により躯体に変形が生じた場合に、一定範囲で回転変位をすることにより、躯体の変形による影響を回避し、それ自体に損傷が生じるのを回避することができる。
【実施例1】
【0066】
この実施例1の荷重受支持ブラケットは、図1(a)〜(e)に示すように、ブラケット本体1と筒状補強部材2とで構成したものである。
【0067】
前記ブラケット本体1は、特に図1(a)〜(e)に示すように、それ自体を硬質のプラスチック材により肉厚の円筒状に構成し、その一端には後記ALC面材11の前面と当接する当接部1aを構成し、他端には、不陸調整機能を備えた取付部1bを構成する。
【0068】
前記当接部1aは、前記し、かつ図1(a)、(b)、(c)及び(e)に示すように、前記ブラケット本体1の一端(内端)に構成した構成要素であり、その筒内に向けて張り出したドーナツ状の当接板1a1を備えたものである。中央の開口部は軸孔1a2を構成する。また該当接板1a1の内面側には他端側に向けて開口する4個の回転補助用の係止孔1a3、1a3…を90度の角度間隔で形成してある。
【0069】
前記取付部1bは、図1(a)〜(d)に示すように、前記ブラケット本体1の他端(外端)側の内周に形成した雌ねじ部1b1と、該雌ねじ部1b1に進退自在に螺合する雄ねじ部1bsを外周に備えた筒状の取付部本体1b2とで構成したものである。該取付部本体1b2は、更にその外端に筒内に張り出した鍔体からなる取付面1bfを備え、かつ該取付面1bfはその中央に六角形の取付孔1bhを開口している。
【0070】
なお、該取付孔1bhは、図示しない電動工具の回転部先端に配した六角形の結合部と結合するための手段であり、相互を結合して電動工具を回転動作させることにより、該取付部本体1b2を回転動作させながらブラケット本体1に適当な深さまで螺合進入させる際に使用する。また該取付孔1bhは、後記胴縁8又は保持金具(保持手段)3の固定板(固定部材)3aを取付部1bに固定するために使用する長ビス(ボルト)4等の軸状結合手段を通過させる孔としても機能する。
【0071】
以上の取付部1bに於ける取付部本体1b2の取付面1bfは、長ビス4又はアンカー15等の種々の軸状結合手段を用いて、胴縁8を直接に取り付けることも、また保持金具3の固定板3aを取り付け、該保持金具3を介して胴縁8を取り付けることとすることも可能である。
【0072】
前記筒状補強部材2は、図1(a)〜(e)に示すように、前記ブラケット本体1の外径と一致する内径の金属筒状部材であり、その基部を該ブラケット本体1に外装固定し、その当接部1a側から突出させたものである。該筒状補強部材2には、その先端に、一周に渡る鋸刃状の切り刃2a、2a…が連設してあり、これらによって該ブラケット本体1の当接部1aが当接することとなるALC面材11に筒状溝11aを形成する。後述するように、該ブラケット本体1を回転させつつALC面材11側に進行させると、該筒状補強部材2も当然に回転状態となり、その回転動作により、先端の切り刃2a、2a…がその径に一致する溝を形成する。該筒状補強部材2は、該回転に伴い、その中に進入しながら該筒状溝11aを形成することとなるものである。
【0073】
前記保持金具3は、前記のように、これを介して前記取付部1bに胴縁8を取り付ける構成要素であり、特に該胴縁8を水平方向スライド往復自在に取り付けるところに特徴を有する。
【0074】
該保持金具3は、図2(a)〜(f)及び図4に示すように、前記取付部1bに於ける取付部本体1b2の取付面1bfに固定する固定板3aと、前記胴縁8を固定保持するスライド保持板(保持部材)3bとで構成する。
【0075】
前記固定板3aは、特に図2(a)〜(d)に示すように、正面及び背面から見てほぼ正方形の金属板材からなり、その両側部には正面側にほぼ直角に折り曲げた側板3a1、3a1を有し、かつ該両側板3a1、3a1の上下端には各々上下に開口するスライド用溝3am、3amを形成したものである。なお、該両側板3a1、3a1の各々のスライド用溝3am、3amは、後述するように、前記スライド保持板3bを水平方向にスライド自在に支持すべく、その上下のスライドレール部3br、3brをスライド自在に係合する手段である。また該固定板3aは、図2(a)〜(d)及び図4に示すように、その中央部に前記取付面1bfの取付孔1bhに嵌合すべく背面側に突出する位置決め突部3a2を備え、該位置決め突部3a2の中央に長ビス4等の軸状結合手段を貫通させる軸孔3ahを開口したものである。
【0076】
前記スライド保持板3bは、図2(e)、(f)及び図4に示すように、横長の長方形の金属板材からなり、その上下端から背面側に向かって延長した水平上板3b1及び水平下板3b2と前者の前端から垂下し、後者の前端から直立するスライドレール部3br、3brを備えたものである。また該水平上板3b1には、その両端付近に開口した孔が配してあり、これらにストッパ螺合用の端部雌ねじ3bs、3bsが形成してある。該スライド保持板3bは、その上下のスライドレール部3br、3brを、横方向から、各々前記固定板3aの両側板3a1、3a1の上下の各スライド用溝3am、3amに挿入することで、図4に示すように、該固定板3aに水平方向往復スライド自在に取り付けるものである。
【0077】
こうした上で、図4、図5及び図6に示すように、前記端部雌ねじ3bs、3bsにそれぞれストッパネジ7、7を螺合し、スライド保持板3bが水平方向にスライドした場合に、該ストッパネジ7、7の内、該当する側のそれが固定板3aの側部の該当する側板3a1に当接することで、左右へのスライド往復移動範囲の限界を形成する。
【0078】
以下この実施例1の荷重受支持ブラケットの用法を説明する。
【0079】
この実施例1の荷重受支持ブラケットは、図5及び図6に示すように、図示しない建物の躯体にALC面材11を取り付け、該ALC面材11の前面に図示しない気密シートを張り、更にその気密シートの前面に断熱材12を取り付けた上で、これらにセットする。なお断熱材12を躯体の外側に取り付けるのは外断熱構造の特徴である。なお、この実施例1の取付対象となっている建物のALC面材11、11…は、いわゆるロッキング構法によって建物躯体に取り付けられている。
【0080】
前記荷重受支持ブラケットの以上のようなセット操作は、そのブラケット本体1の当接部1aを前記ALC面材11の前面に当接させ、該当接部1aの外側から突出する筒状補強部材2を該ALC面材11に筒状溝11aを形成しつつその中に装入した状態とすることである。
【0081】
このような該荷重受支持ブラケットのセットは、ALC面材11の前面の断熱材12の内、該当する部位を予め円柱状に切り欠いてブラケット本体1を挿入可能にしておいた上で行う。
【0082】
まずブラケット本体1から取付部本体1b2を取り外し、上記の断熱材12の円柱状に切り欠いた部位に該ブラケット本体1を挿入する。次いで、該ブラケット本体1の当接板1a1の内面側に形成した4個の回転補助用の係止孔1a3、1a3…に電動工具の回転駆動軸の先端に分岐突出させた4本の係合軸を突刺係合させた上で、該電動工具で押圧しながらその回転駆動軸を回転駆動する。これによって該ブラケット本体1が回転し、その当接部1a側の外周から突出した筒状補強部材2は、その先端の切り刃2aでALC面材11の該当部位に筒状溝11aを形成しながらその中に進入する。この進入は、該ブラケット本体1の当接部1aに於ける当接板1a1の外面が該ALC面材11の前面に当接して停止する。
【0083】
こうして荷重受支持ブラケットは、前記筒状補強部材2が、それが形成したALC面材11中の筒状溝11a中に進入状態となるため、該ALC面材11に仮取り付け状態となる。またこのときブラケット本体1もその周囲が該ALC面材11の前面に配した断熱材12に囲繞された状態となっており、上記仮取り付け状態は安定したものとなる。
【0084】
この後、該ブラケット本体1の中空部内に断熱材片12aを充填する。これは、断熱材12に、前記のように、該ブラケット本体1を挿入するために円柱状切欠を形成した際に生じた円柱状のそれを利用することができる。この断熱材片12aを充填した後、前記のように、予め外してある取付部本体1b2を該ブラケット本体1の外端側に取り付ける。この取り付けは、該取付部本体1b2の外周に形成してある雄ねじ部1bsを該ブラケット本体1の外端側内周に形成してある雌ねじ部1b1に螺合することで行う。これも、取付部本体1b2の先端の取付面1bfの中央に開口してある六角形の取付孔1bhに、電動工具の回転駆動軸の先端に配した同様に六角形の係止部を係止させ、該電動工具を回転駆動することにより、極めてスピーディに所定の螺合状態まで螺合させることができる。
【0085】
該取付部本体1b2は、更にブラケット本体1との螺合状態を調整して、その外端の突出状態を適切にする不陸の調整をする必要がある。この不陸の調整は、微調整であり、手動で取付部本体1b2を若干回転させることで行うことができる。
【0086】
こうした上で、該取付部本体1b2の外面の取付面1bfに前記保持金具3を取り付ける。図5及び図6に示すように、前記固定板3aを、その中央の位置決め突部3a2を前記取付面1bfの取付孔1bhに挿入嵌合させた上で、その外側から該位置決め突部3a2に開口した軸孔3ahを通じて長ビス4を挿入し、これを用いて該ブラケット本体1をALC面材11に固定すると同時に、固定する。
【0087】
該長ビス4は、詳細には、図5及び図6に示すように、該位置決め突部3a2の軸孔3ahに外部から挿入し、ブラケット本体1の中空部に充填した断熱材片12a及び当接板1a1の中央の軸孔1a2を貫通させ、更に該軸孔1a2から突出した該長ビス4の先端側を該ALC面材11に形成した軸孔11bに挿入し、その先端を該ALC面材11の裏面側に形成した凹部11cに突出させ、ワッシャ部材5aを介してナット5bを螺合締め付けし、前記のように、該ブラケット本体1をALC面材11に固定すると同時に前記固定板3aを該ブラケット本体1の取付部本体1b2の取付面1bfに固定する。
【0088】
なお、前記ワッシャ部材5aは、長ビス4を介して伝わる外壁材14等の荷重を広く分散してALC面材11の凹部11cに開口する軸周りの狭い範囲に荷重が集中して損傷が生じ易くなるのを回避する趣旨で配したものである。
【0089】
該凹部11cは、図5及び図6に示すように、ALC補修材6を充填して該長ビス4、ワッシャ部材5a及びナット5bを埋設状態にする。これによって熱橋の発生を回避する趣旨である。
【0090】
更に前記固定板3aにスライド保持板3bを水平方向スライド往復自在に取り付ける。これは、該スライド保持板3bの上下のスライドレール部3br、3brを、横方向から、各々該固定板3aの両側板3a1、3a1の上下の各スライド用溝3am、3amに挿入することで行う。図4、図5及び図6には、該スライド保持板3bの上下のスライドレール部3br、3brが該固定板3aのスライド用溝3am、3amにスライド自在に係合した状態が示してある。なお、この後、該スライド保持板3bの水平上板3b1の両端付近に形成された端部雌ねじ3bs、3bsにそれぞれストッパ用ネジ7を螺合する。地震等の振動によってスライド保持板3bが相対的に水平方向にスライド移動する場合にそのスライド範囲をそれによって前記固定板3aから外れない範囲に限定する趣旨である。
【0091】
この後、図4、図5及び図6に示すように、前記保持金具3のスライド保持板3bの前面側中央に胴縁(縦胴縁)8を取り付ける。
なお、この胴縁8は、この実施例1では、図3に示すように、両側部に背面側に折り曲げた側板8a、8aを備え、中央部を該側板8a、8aの先端と同じ位置にまで背面側に膨らませた取付台座8bに構成してある長尺の金属部材である。取付台座8bとの相対的な位置関係で正面側に膨らんだ状態となっている両側の部位の外面が外壁材14の下地となる下地材13を取り付けるための取付面8c、8cとなる。
この胴縁8は、従って、図4、図5及び図6に示すように、取付台座8bの部分を前記スライド保持板3bの前面に縦向きで当接し、胴縁8側からタッピングネジ9をねじ込んで取り付ける。
【0092】
この後、該胴縁8の外面側に種々の化粧材である外壁材14を固設することができる。この実施例1では該胴縁8にタッピングネジ10、10…で板状の下地材13を固設し、これを建物の周囲の全面に配した上で、該下地材13に接着剤により外壁材14を固設したものである。
【0093】
こうして、この実施例1の荷重受支持ブラケットを使用して構築した外断熱壁構造は、その内、ALC面材11とブラケット本体1とは、前記のように、前記長ビス4で結合固定され、ブラケット本体1とALC面材11とは、前者の内端の当接板1a1の広い面で後者の該当する面に当接し、かつブラケット本体1の当接部1a側から突出する筒状補強部材2はALC面材11中の筒状溝11a中に挿入状態となり、該筒状補強部材2の広い面積を持つ内外周面が該筒状溝11aの対応する内外の側面と当接状態となっている。
【0094】
そのため、胴縁8及び保持金具3を介してブラケット本体1に掛かる外壁材14等による曲げ荷重は、以上の相互の面を介してALC面材11に掛かることになり、相互の面が以上のように非常に広い面積を持つ構成となっているため、その荷重はALC面材11の一部に集中せず、広い範囲に分散される。従ってALC面材11のように比較的脆弱な面材で外壁材14等を支持させざるを得ないこのような場合であっても、該ALC面材11に容易に損傷を生じさせることのないものとなる。
【0095】
また引っ張り又は圧縮荷重も、ブラケット本体1側ではその当接板1a1がALC面材11に接し、裏面側では前記ワッシャ部材5aがALC面材11に接しており、いずれも広い面積を持つものであるため、広く分散してALC面材11に伝わることになる。従って、これによってもALC面材11の該当する部位に損傷を生じる虞は殆どないものとなる。
【0096】
また以上の通りであるから、この実施例1の荷重受支持ブラケットによれば、外壁材14のずれ下がりのような問題が生じる余地もほとんどない。
【0097】
なお、この実施例1では、既に説明したように、保持金具3を介して胴縁8をブラケット本体1に取り付け、地震等の振動が建物に加わった場合に、該胴縁8及びこれが支持する外壁材14等を、これらがブラケット本体1を介して取り付けられているALC面材11、11…に対して、相対的に一定範囲で水平方向に往復スライド自在に変位可能に構成してある。そのためこのような地震等を振動を受けた際のそれらの個々のALC面材11、11…の動きを拘束することがない。この実施例1では、前記したように、ALC面材11、11…は、ロッキング構法によって建物躯体に取り付けられており、地震等の振動を受けて建物躯体に変形が生じた際には、ALC面材11、11…は、それぞれ一定の範囲で回転方向に変位することで、その損傷を脱がれ得るようになっているが、以上のように、前記保持金具3を介して外壁材14等をALC面材11、11…に取り付けることにより、そのようなロッキング構法による作用を妨げることがないようになっている。
【実施例2】
【0098】
実施例2の荷重受支持ブラケットは、実施例1のそれと軸状結合手段のみが異なり、他は全て同一である。従ってそれらの違いがある点についてのみ説明する。
【0099】
この実施例2では、図7及び図8に示すように、前記実施例1の長ビス4に代えてアンカー15を採用したものである。
前記取付部本体1b2の外面の取付面1bfに前記保持金具3の固定板3aをセットするところまで、即ち、該固定板3aの中央の位置決め突部3a2を該取付面1bfの取付孔1bhに挿入嵌合させるところまでは実施例1で説明したのと全く同様である。この後、この実施例2では、該位置決め突部3a2に開口した軸孔3ahを通じてアンカー15を挿入し、これを用いて該ブラケット本体1をALC面材11に固定すると同時に、該固定板3aをブラケット本体1の取付部本体1b2の取付面1bfに固定する。
【0100】
該アンカー15は、詳細には、図7及び図8に示すように、該位置決め突部3a2の軸孔3ahに外側から挿入し、ブラケット本体1の中空部に充填した断熱材片12a及び当接板1a1の中央の軸孔1a2を貫通させ、更に該軸孔1a2から突出した該アンカー15の先端を該ALC面材11に形成した下孔11dに挿入し、更に強圧する等により、該下孔11d内部に進入した部分を拡大させて該下孔11dに結合する。
【0101】
以上の他は実施例1と全く同一であり、こうして構成する実施例2の荷重受支持ブラケットを使用した外断熱壁構造の施工手順も実施例1のそれと同様である。
【実施例3】
【0102】
実施例3の荷重受支持ブラケットは、実施例1の保持金具3に代えて他のタイプの保持金具16を用い、胴縁8に代えて横胴縁17を用いたものである。他の点は、全て実施例1と同様である。従ってそれらの違いがある点についてのみ説明する。
【0103】
まず保持金具16について説明する。この保持金具16は、当然、実施例1の保持金具3と同様に、ただし、支持対象は胴縁8に代えて横胴縁17となるが、これを介して前記取付部1bに横胴縁17を取り付ける構成要素であり、特に該横胴縁17を水平方向スライド往復自在に取り付けるところに特徴を有する。
【0104】
該保持金具16は、図9(a)〜(e)及び図10に示すように、前記取付部1bに於ける取付部本体1b2の取付面1bfに固定する固定板16aと、前記横胴縁17を固定保持するスライド保持板(保持部材)16bとで構成する。
【0105】
前記固定板16aは、特に図9(a)に示すように、正面から見て横長の長方形の金属板材からなり、その上下端には正面側にほぼ直角に折り曲げた水平上板16a1及び水平下板16a2を有し、その内、水平上板16a1の前端には直立したスライドレール部16arを、水平下板16a2の前端には垂下するスライドレール部16arを、それぞれ形成したものである。
【0106】
また、該水平上板16a1及び水平下板16a2の各々のスライドレール部16ar、16arは、後述するように、前記スライド保持板16bを水平方向にスライド自在に支持すべく、その上下のスライド用溝16bm、16bmをスライド自在に係合する手段である。また該固定板16aは、図9(a)、(b)及び図10に示すように、その中央部に前記取付面1bfの取付孔1bhに嵌合する位置決め突部16a3を備え、該位置決め突部16a3の中央にアンカー等の軸状結合手段を貫通させる軸孔16ahを開口したものである。
【0107】
なお、以上の固定板16aの水平上板16a1の両端付近には、それぞれ端部雌ねじ16as、16asを形成しておくものとする。
【0108】
前記スライド保持板16bは、図9(c)〜(e)及び図10に示すように、縦長の長方形の金属板材からなり、その両側部から背面側に直角に折り曲げて形成した側板16b1、16b1を備え、該両側板16b1、16b1には、中央に前記固定板16aの水平上板16a1と水平下板16a2の間隔を僅かに越える上下幅の方形切欠部16bkを形成してある。また該方形切欠部16bkには、これを形成する上辺部16bk1に、その最奥部から上方に延びるスライド用溝16bmを形成し、下辺部16bk2に、その最奥部から下方に延びるスライド用溝16bmを形成してあるものである。
【0109】
該スライド保持板16bは、その上下のスライド用溝16bm、16bmに、横方向から、各々前記固定板16aの水平上板16a1及び水平下板16a2の各々のスライドレール部16ar、16arを挿入させ、図10に示すように、該固定板16aに水平方向往復スライド自在に取り付けるものである。この状態で、同図に示すように、該スライド保持板16bの上辺部16bk1が固定板16aの水平上板16a1上にスライド自在な載置状態となる。スライド用溝16bm、16bmとスライドレール部16ar、16arとは、主として相互をスライド自在に結合し、分離しないようにする役割及びスライド方向を案内する役割を果たす。
【0110】
こうした上で、図9(a)、(b)及び図10に示すように、水平上板16a1の両端付近に形成した端部雌ねじ16as、16asにそれぞれストッパ用ネジ7、7を螺合し、スライド保持板16bが水平方向にスライドした場合に、該ストッパ用ネジ7、7の内、該当する側のそれがスライド保持板16bの側部の該当する側板16b1に当接することで、左右へのスライド往復移動範囲の限界を形成する。
【0111】
なお、この保持金具16の固定板16aは、図11に示すように、実施例1の固定板3aと同様に、前記取付部本体1b2の取付面1bfにセットして、長ビス4で取り付けるものであり、前記横胴縁17は、横向きではあるが、実施例1の胴縁8とそれだけしか異ならないため、実施例1の胴縁8と同様にして、その外面側に種々の化粧材である外壁材14を固設することができる。即ち、該横胴縁17にタッピングネジ10、10…で板状の下地材13を固設し、これを建物の周囲の全面に配した上で、該下地材13に接着剤により外壁材14を固設することができる。
【0112】
従って実施例1と全く同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】(a)は実施例1の荷重受支持ブラケットの側面図、(b)はその断面図、(c)は取付部本体を不陸調整のために若干外部に突出させた状態の断面図、(d)は正面図、(e)は背面図。
【図2】(a)は実施例1の保持金具の固定板の正面図、(b)はその背面図、(c)は側面図、(d)は(a)のA−A線断面図、(e)は実施例1の保持金具のスライド保持板の背面図、(f)はその側面図。
【図3】(a)は胴縁の平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【図4】保持金具に胴縁を取り付けた状態を示す側面図。
【図5】実施例1の荷重受支持ブラケットを建物の駆体に固定したALC面材等に取り付けて外壁材を支持する状態を示す概略横断面説明図。
【図6】実施例1の荷重受支持ブラケットを建物の駆体に固定したALC面材等に取り付けて外壁材を支持する状態を示す概略縦断面説明図。
【図7】実施例2の荷重受支持ブラケットを建物の駆体に固定したALC面材等に取り付けて外壁材を支持する状態を示す概略横断面説明図。
【図8】実施例2の荷重受支持ブラケットを建物の駆体に固定したALC面材等に取り付けて外壁材を支持する状態を示す概略縦断面説明図。
【図9】(a)は実施例3の保持金具の固定板の正面図、(b)はその側面図、(c)は実施例3の保持金具のスライド保持板の平面図、(d)は背面図、(e)は側面図。
【図10】固定板とスライド保持板を結合した実施例3の保持金具の側面図。
【図11】実施例3の荷重受支持ブラケットを建物の駆体に固定したALC面材等に取り付けて外壁材を支持する状態を示す概略縦断面説明図。
【符号の説明】
【0114】
1 ブラケット本体
1a 当接部
1a1 当接板
1a2 当接板の軸孔
1a3 回転補助用の係止孔
1b 取付部
1b1 ブラケット本体内周の雌ねじ部
1b2 取付部本体
1bf 取付面
1bh 取付孔
1bs 取付部本体外周の雄ねじ部
2 筒状補強部材
2a 切り刃
3 保持金具(保持手段)
3a 固定板(固定部材)
3a1 固定板の側板
3a2 位置決め突部
3ah 位置決め突部の軸孔
3am スライド用溝
3b スライド保持板(保持部材)
3b1 スライド保持板の水平上板
3b2 スライド保持板の水平下板
3br スライドレール部
3bs 端部雌ねじ
4 長ビス(ボルト)
5a ワッシャ部材
5b ナット
6 ALC補修材
7 ストッパ用ネジ
8 胴縁
8a 胴縁の側板
8b 取付台座
8c 胴縁の取付面
9、10 タッピングネジ
11 ALC面材
11a 筒状溝
11b ALC面材の軸孔
11c ALC面材の凹部
11d 下孔
12 断熱材
12a 断熱材片
13 下地材
14 外壁材
15 アンカー
16 保持金具(固定部材)
16a 固定板
16a1 水平上板
16a2 水平下板
16a3 位置決め突部
16ah 固定板の軸孔
16ar スライドレール部
16as 固定板の水平上板の端部雌ねじ
16b スライド保持板(保持部材)
16b1 スライド保持板の側板
16bk 方形切欠部
16bk1 上辺部
16bk2 下辺部
16bm スライド用溝
17 横胴縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体に固設したALC面材と外壁材を固設する胴縁との間に介在し、該ALC面材の前面に配した断熱材中にスポット的に埋め込んで使用する荷重受支持ブラケットであって、
一端を、その内側に中央の軸孔を残す状態に延長した、前記ALC面材に接する当接板を備えた当接部に、他端を、前記胴縁を直接に又は保持手段を介して間接に取り付ける取付部に、それぞれ構成した筒状のブラケット本体と、
該ブラケット本体の当接部側の外周から突き出し延長し、その先端に切り刃を備えた筒状補強部材であって、該切り刃で前記ALC面材中に筒状溝を形成しながら該筒状溝中に進入する筒状補強部材と、
前記取付部に配した胴縁又は胴縁との間に配した保持手段から貫通させ、前記ブラケット本体の内部を通過させ、前記当接部の当接板の中央に開口した軸孔を通じてALC面材に到達させ、該ALC面材に連結することで、該ブラケット本体を該ALC面材に固定するための軸状結合手段と、
で構成した荷重受支持ブラケット。
【請求項2】
前記取付部を、前記ブラケット本体の他端部内周に形成した雌ねじ部と、該雌ねじ部に進退自在に螺合する雄ねじ部を外周に備え、外端に中央に取付孔を開口した取付面を備えた筒状の取付部本体とで構成した請求項1の荷重受支持ブラケット。
【請求項3】
前記軸状結合手段として、前記取付部に配した胴縁又は保持手段をその外部から貫通し、前記ブラケット本体の内部を通過し、当接部の当接面に開口した軸孔を通じて突出すると共に、前記当接部で当接している取付対象のALC面材を貫通し、該ALC面材の裏面側に形成した凹部に突出した端部にワッシャー部材を嵌挿させた上でナットを螺合して、該ALC面材に固定できるようにしたボルトを採用した請求項1又は2の荷重受支持ブラケット。
【請求項4】
前記保持手段を、前記取付部の取付面に固定する固定部材と、前記胴縁を固定保持する保持部材とで構成し、
前記固定部材を、中央部に前記取付面の取付孔に嵌合する位置決め突部を備え、該位置決め突部の中央に軸状結合手段を貫通させる軸孔を開口し、更に前記保持部材を水平方向にスライド自在に支持する上下の案内レール又は上下の案内溝を備えたものに構成し、
他方、前記保持部材を、前記胴縁を固定保持する保持面と、前記固定部材の上下の案内レールにスライド自在に係合して水平方向移動自在に支持される上下の係合溝又は前記固定部材の上下の案内溝にスライド自在に係合して水平方向移動自在に支持される上下の係合レール部とを備えたものに構成した請求項1、2又は3の荷重受支持ブラケット。
【請求項5】
前記取付孔を3角形以上の多角形開口部に構成した請求項2の荷重受支持ブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−291549(P2008−291549A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139185(P2007−139185)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(500332984)株式会社ヒロコーポレーション (15)
【Fターム(参考)】