説明

荷重吸収構造

【課題】膨張前の荷重吸収部材の断面を小さくすると共に荷重吸収部材に入力される衝突荷重を効率良く吸収する。
【解決手段】荷重吸収構造10では、荷重吸収部材14に軸方向一側から衝突荷重が入力された瞬間に、インフレータ20からのガスの噴射圧によって厚板部18が軸方向一側へ押圧されて薄板部16が延び変形されることで、荷重吸収部材14が瞬時に軸方向一側へ膨張される。さらに、荷重吸収部材14に軸方向一側から衝突荷重が入力された際に、衝突荷重によって厚板部18が軸方向他側へ押圧されて薄板部16が潰れ変形されることで、荷重吸収部材14が軸方向他側へ潰れ変形されて、衝突荷重が吸収される。このため、膨張前の荷重吸収部材14の断面を小さくできると共に、荷重吸収部材14に入力される衝突荷重を効率良く吸収できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体に荷重吸収部材が設けられた荷重吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
荷重吸収構造としては、一対の金属シートによりエアバッグが構成されて、自動車の衝突時にインフレータからのガスによりエアバッグ(エアバッグの断面)が膨張されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この荷重吸収構造では、膨張されたエアバッグに荷重が入力された際に、エアバッグが潰れ変形されることで、エアバッグに入力される荷重が吸収される。
【0004】
しかしながら、この荷重吸収構造では、膨張されたエアバッグへの荷重の入力方向が一意的ではない。このため、エアバッグを荷重の入力方向に対応する複数方向へ膨張させる必要があり、膨張される前のエアバッグの断面が大きくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−500274公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、膨張される前の荷重吸収部材の断面を小さくできると共に荷重吸収部材に入力される荷重を効率良く吸収できる荷重吸収構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の荷重吸収構造は、軸方向一側である荷重入力側から荷重が入力される構造体と、前記構造体の荷重入力側端部に設けられ、荷重入力側へ膨張可能にされた荷重吸収部材と、前記荷重吸収部材に荷重入力側から荷重が入力される際に前記荷重吸収部材を荷重入力側へ膨張させる膨張手段と、を備えている。
【0008】
請求項2に記載の荷重吸収構造は、請求項1に記載の荷重吸収構造において、前記荷重吸収部材は、荷重入力側に設けられ、平板状にされた平板部と、前記平板部に比し薄肉にされ、折り畳まれた薄板部と、を有している。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の荷重吸収構造では、構造体に軸方向一側である荷重入力側から荷重が入力される。さらに、構造体の荷重入力側端部に荷重吸収部材が設けられており、荷重吸収部材は荷重入力側へ膨張可能にされている。
【0010】
ここで、荷重吸収部材に荷重入力側から荷重が入力される際に、膨張手段が荷重吸収部材を荷重入力側へ膨張させる。さらに、荷重吸収部材に荷重入力側から荷重が入力された際に、荷重吸収部材が入力された荷重により荷重入力側とは反対側へ潰れ変形されて、荷重吸収部材に入力される荷重が吸収される。
【0011】
このように、荷重吸収部材が、一旦荷重入力側へ膨張された後に、荷重入力側とは反対側へ潰れ変形される。このため、膨張される前の荷重吸収部材の断面を小さくできると共に、荷重吸収部材が潰れ変形されるストローク量を稼ぐことができて荷重吸収部材に入力される荷重を効率良く吸収できる。
【0012】
請求項2に記載の荷重吸収構造では、荷重吸収部材において、荷重入力側に設けられた平板部が平板状にされると共に、平板部に比し薄肉にされた薄板部が折り畳まれている。
【0013】
このため、荷重吸収部材に荷重入力側から荷重が入力される際に、平板部が変形を抑制されつつ薄板部が荷重入力側へ延ばされて(折り畳みを解消されて)、荷重吸収部材が荷重入力側へ膨張される。さらに、荷重吸収部材に荷重入力側から荷重が入力された際に、平板部が変形を抑制されつつ薄板部が荷重入力側とは反対側へ潰れ変形されることで、荷重吸収部材が荷重入力側とは反対側へ潰れ変形される。
【0014】
これにより、薄板部の肉厚及び形状により、荷重吸収部材の変形モード及び荷重吸収部材が吸収する荷重を適切にコントロールでき、荷重吸収部材の変形モード及び荷重吸収部材が吸収する荷重のコントロールを安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る荷重吸収構造を示す側方から見た断面図(図3の1−1線断面図)である。
【図2】(A)及び(B)は、本発明の第1の実施の形態に係る荷重吸収構造への衝突荷重入力時を示す側方から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)であり、(A)は、荷重吸収構造への衝突荷重入力の瞬間を示し、(B)は、荷重吸収構造への衝突荷重入力後を示している。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る荷重吸収構造を示す上斜め側方から見た斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る荷重吸収構造を示す側方から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る荷重吸収構造を示す側方から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
図1には、本発明の第1の実施の形態に係る荷重吸収構造10(衝撃吸収構造)が側方から見た断面図(図3の1−1線断面図)にて示されており、図3には、荷重吸収構造10が上斜め側方から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、荷重吸収構造10の軸方向一側を矢印Aで示し、荷重吸収構造10の軸方向他側を矢印Bで示している。
【0017】
本実施の形態に係る荷重吸収構造10は、例えば、車両(自動車)の車体フレームを構成するサイドメンバにされており、サイドメンバは、車両の前部及び後部の右側部及び左側部において、車両前後方向へ延伸されている。車両の前部の右側部及び左側部における一対のサイドメンバの車両前側端及び車両の後部の右側部及び左側部における一対のサイドメンバの車両後側端には、それぞれ車体フレームを構成するバンパが結合されており、一対のバンパは、それぞれ車両の前端及び後端において、車幅方向へ延伸されている。
【0018】
図1及び図3に示す如く、荷重吸収構造10には、金属製(板金製)の構造体12が設けられており、構造体12は、円筒状(中空であればよく多角形(矩形等)の筒状であってもよい)にされている。構造体12の軸方向(長手方向)一側端には、固定部としての端板12Aが一体に設けられており、端板12Aは、環状板にされて、構造体12の軸方向一側縁を部分的に閉じている。構造体12の軸方向一側は、例えば車両外側へ向けられており、車両の衝突時には、構造体12に軸方向一側から衝突荷重(衝撃)が入力される。
【0019】
構造体12の軸方向一側には、金属製(鉄製、鋼製)の荷重吸収部材14が設けられており、荷重吸収部材14には、円筒状(構造体12が多角形筒状である場合には当該多角形筒状)の薄板部16が設けられている。薄板部16の軸方向他側端は、構造体12の軸方向一側端に嵌合された状態で結合されており、これにより、荷重吸収部材14が構造体12に結合されている。
【0020】
薄板部16は、構造体12より軸方向一側において、断面U字状の折曲部16Aが所定数形成されて、折り畳まれており、所定数の折曲部16Aは、それぞれ薄板部16全周の径方向内側に突出されて、薄板部16の径方向内側において薄板部16の軸方向に沿って並べられている。
【0021】
荷重吸収部材14の軸方向一側端には、平板部としての円形平板状(構造体12が多角形の筒状である場合には当該多角形の板状)の厚板部18が設けられており、厚板部18は、薄板部16に比し、厚肉にされて、剛性が高くされている。荷重吸収部材14は所謂TB(テーラードブランク)により形成されており、厚板部18の周部は、薄板部16の軸方向一側端に結合(溶接)されている。車両の衝突時には、荷重吸収部材14の厚板部18に軸方向一側から衝突荷重が直接入力される。
【0022】
構造体12の端板12A内には、膨張手段としての柱状のインフレータ20が設けられており、インフレータ20の長手方向中間における外周には、結合部としての環状板にされた結合枠20Aが固定されている。結合枠20Aは、構造体12の端板12Aに結合されており、これにより、インフレータ20が構造体12に固定されている。車両の衝突時には、荷重吸収部材14(厚板部18)に軸方向一側から衝突荷重が入力された瞬間(荷重吸収部材14への軸方向一側からの衝突荷重の入力が検出された瞬間)に、インフレータ20が作動されて、インフレータ20が高圧のガスを瞬時に軸方向一側のみへ向けて噴射する。なお、車両の衝突が検出された瞬間(荷重吸収部材14(厚板部18)に軸方向一側から衝突荷重が入力される直前)に、インフレータ20が作動される構成としてもよい。
【0023】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0024】
以上の構成の荷重吸収構造10では、図2(A)に示す如く、車両の衝突時において、荷重吸収部材14(厚板部18)に軸方向一側から衝突荷重が入力された瞬間に、インフレータ20が作動されて、インフレータ20が高圧のガスを瞬時に軸方向一側のみへ向けて噴射する。このため、ガスの噴射圧(衝撃)によって、厚板部18が変形を防止されつつ軸方向一側へ押圧されて、薄板部16が軸方向一側へ延び変形される(折り畳みを解消される)ことで、荷重吸収部材14が瞬時に軸方向一側へ膨張される。
【0025】
さらに、図2(B)に示す如く、荷重吸収部材14(厚板部18)に軸方向一側から衝突荷重が入力された際に、衝突荷重によって、厚板部18が変形を防止されつつ軸方向他側へ押圧されて、薄板部16が軸方向他側へ潰れ変形される。これにより、荷重吸収部材14が軸方向他側へ潰れ変形されて、荷重吸収部材14に入力される衝突荷重が吸収される。
【0026】
このように、荷重吸収部材14が、一旦荷重入力側(軸方向一側)へ膨張された後に、荷重入力側とは反対側(軸方向他側)へ潰れ変形される。このため、膨張される前の荷重吸収部材14の断面を小さくできると共に、荷重吸収部材14が潰れ変形されるストローク量を稼ぐことができて荷重吸収部材14に入力される衝突荷重を効率良く吸収できる。これにより、荷重吸収部材14の軽量化及び低コスト化を実現できる。
【0027】
さらに、上述の如く、荷重吸収部材14が膨張される際及び荷重吸収部材14が潰れ変形される際には、厚板部18が変形を防止される一方、薄板部16が変形される。このため、薄板部16の肉厚及び形状により、荷重吸収部材14の変形モード及び荷重吸収部材14が吸収(発生)する荷重を適切にコントロールでき、荷重吸収部材14の変形モード及び荷重吸収部材14が吸収する荷重のコントロールを安定化させることができる。これにより、荷重吸収部材14を効率的に設計することで、荷重吸収部材14の軽量化及び低コスト化を一層実現できる。
【0028】
[第2の実施の形態]
図4には、本発明の第2の実施の形態に係る荷重吸収構造30(衝撃吸収構造)が側方から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)にて示されている。
【0029】
本実施の形態に係る荷重吸収構造30は、第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0030】
本実施の形態に係る荷重吸収構造30では、荷重吸収部材14の薄板部16において、所定数の折曲部16Aが、薄板部16の径方向外側に配置されており、所定数の折曲部16Aは、それぞれ薄板部16全周の軸方向他側に突出されて、薄板部16の径方向に沿って並べられている。所定数の折曲部16Aは、薄板部16の径方向内側の端において構造体12に連結されると共に、薄板部16の径方向外側の端において厚板部18の周部に連結されている。
【0031】
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0032】
[第3の実施の形態]
図5には、本発明の第3の実施の形態に係る荷重吸収構造50(衝撃吸収構造)が側方から見た断面図(図3の1−1線位置断面図)にて示されている。
【0033】
本実施の形態に係る荷重吸収構造50は、第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0034】
本実施の形態に係る荷重吸収構造50では、荷重吸収部材14の薄板部16において、所定数の折曲部16Aが、それぞれ薄板部16全周の径方向外側に突出されて、薄板部16の径方向外側において薄板部16の軸方向に沿って並べられている。
【0035】
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 荷重吸収構造
12 構造体
14 荷重吸収部材
16 薄板部
18 厚板部(平板部)
20 インフレータ(膨張手段)
30 荷重吸収構造
50 荷重吸収構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向一側である荷重入力側から荷重が入力される構造体と、
前記構造体の荷重入力側端部に設けられ、荷重入力側へ膨張可能にされた荷重吸収部材と、
前記荷重吸収部材に荷重入力側から荷重が入力される際に前記荷重吸収部材を荷重入力側へ膨張させる膨張手段と、
を備えた荷重吸収構造。
【請求項2】
前記荷重吸収部材は、
荷重入力側に設けられ、平板状にされた平板部と、
前記平板部に比し薄肉にされ、折り畳まれた薄板部と、
を有する請求項1記載の荷重吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−241240(P2010−241240A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91409(P2009−91409)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【Fターム(参考)】