説明

荷重応答型ブレーキ液圧制御装置

【課題】 車両用の荷重応答型ブレーキ液圧制御装置において、当該装置の車載時の作業性を向上させること。
【解決手段】 当該装置は、ばね上部材91にボデー11にて固定される制御弁10、ボデー11に上下動可能に組付けた作動ピストン12に対向して配置され作動ピストン12に係合・離脱可能なレバー要素20、レバー要素の揺動部22bに上下方向にて回動可能に組付けらればね下部材93に上下方向にて回動可能に組付けられるリンク機構30を備えている。リンク機構30は、レバー要素の揺動部22bに上下方向にて回動可能に組付けられる第1リンク31、第1リンク31に上下方向にて回動可能に組付けらればね下部材93に上下方向にて回動可能に組付けられる第2リンク32、両リンク31,32の連結部における回動を規制・解除可能な連結ナット35を備えている。レバー要素20とボデー11は位置決め治具40にて連結・解除可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において採用されるブレーキ液圧制御装置、特に、車両の積載荷重に応じて後輪へのブレーキ液圧を減圧制御可能な荷重応答型ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の荷重応答型ブレーキ液圧制御装置は、例えば、下記特許文献1または2に示されていて、車両のばね上部材に組付けられる制御弁と、車両のばね上部材に一端部にて上下方向にて回動自在に組付けられ他端部にてリンク機構を介して車両のばね下部材に組付けられる棒ばねを備えており、棒ばねによって検出される車両の積載荷重が棒ばねから制御弁の作動ピストンに加わる構成となっている。なお、棒ばねは、基端部にて制御弁のボデーに上下方向にて揺動可能に組付けられていて、制御弁の作動ピストンに係合・離脱可能なレバー要素として機能するものである。
【特許文献1】特公平2−38419公報
【特許文献2】実開昭63−960公報
【0003】
上記した各公報に示されている荷重応答型ブレーキ液圧制御装置においては、当該装置が車両に組付けられる際に、制御弁の作動ピストンと棒ばね間に所定の隙間が設けられることを活用して、制御弁の作動ピストンと棒ばね間の隙間に、導電性のギャップバーを挿入し、このギャップバーと制御弁の作動ピストンとの間にギャップバーと作動ピストンとの接触で閉路される接触検出用電気信号回路を構成し、制御弁を車両のばね上部材に対して移動させ接触検出用電気信号回路の閉路と開路との境界位置で制御弁を車両のばね上部材に固定するようにしている。
【0004】
したがって、上記した各公報に示されている荷重応答型ブレーキ液圧制御装置においては、当該装置を車両に組付ける際に、接触検出用電気信号回路(導通設備)を準備する必要があり、しかも、制御弁を車両のばね上部材に上下方向に移動させて接触検出用電気信号回路の閉路と開路との境界位置で制御弁を車両のばね上部材に固定するといった接触検出用電気信号回路の検出結果を確認しながら制御弁を固定する煩雑な調整作業が必要であって、車両への搭載性が悪い。
【0005】
なお、導電性のギャップバーを用いる代わりに、車両のばね上部材に所定の荷重を与えて、制御弁の作動ピストンと棒ばね間の所定隙間に相当する量だけ車両のばね上部材とばね下部材間の距離が小さくなるようにした状態で、上記した調整作業を行うことも可能であるが、この場合には、接触検出用電気信号回路(導通設備)の外に、車両のばね上部材に所定の荷重を与えるための荷重付与設備を準備する必要がある。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するために、車両のばね上部材またはばね下部材にボデーにて固定される制御弁、この制御弁の前記ボデーに上下動可能に組付けた作動ピストンに対向して配置され基端部にて前記ボデーに上下方向にて揺動可能に組付けられて前記作動ピストンに係合・離脱可能なレバー要素、このレバー要素の揺動部に一端部にて上下方向にて回動可能に組付けられ他端部にて車両のばね下部材またはばね上部材に上下方向にて回動可能に組付けられるリンク機構を備えて、車両の積載荷重に応じて後輪へのブレーキ液圧を減圧制御可能な荷重応答型ブレーキ液圧制御装置において、前記リンク機構を、前記レバー要素の揺動部に一端部にて上下方向にて回動可能に組付けられる第1リンクと、この第1リンクの他端部に一端部にて上下方向にて回動可能に組付けられ他端部にて車両のばね下部材またはばね上部材に上下方向にて回動可能に組付けられる第2リンクと、これら両リンクの連結部における回動を規制・解除可能な連結具を備える構成とするとともに、前記レバー要素と前記ボデーを位置決め治具にて連結・解除可能としたことに特徴がある。
【0007】
本発明による荷重応答型ブレーキ液圧制御装置においては、位置決め治具を用いてレバー要素を制御弁のボデーを連結し、レバー要素を制御弁のボデーに対して設定位置(制御弁の作動ピストンとレバー要素間に所定の隙間が在る状態または特殊な状態として制御弁の作動ピストンとレバー要素との間の隙間がゼロの状態)にて仮固定するとともに、リンク機構の連結具を解除状態として第1リンクと第2リンクの連結部における回動規制を解いた初期状態にて、制御弁のボデーを車両のばね上部材(またはばね下部材)に固定するとともに、第2リンクの他端を車両のばね下部材(またはばね上部材)に組付け、その後に、リンク機構の連結具にて第1リンクと第2リンクの連結部における回動を規制し、最後に位置決め治具を取り外すことにより、車両への組付が完了する。
【0008】
ところで、本発明による荷重応答型ブレーキ液圧制御装置においては、当該装置の車両への組付に際して、接触検出用電気信号回路等の設備が不要であるばかりか、ボデーのばね上部材(またはばね下部材)への固定作業、第2リンクの他端のばね下部材(またはばね上部材)への組付作業、連結具による第1リンクと第2リンクの連結作業、位置決め治具の取外作業等の単純な各作業にて容易に車両へ組付けることが可能であるため、当該装置の車載時の作業性を向上させることが可能である。
【0009】
また、本発明による荷重応答型ブレーキ液圧制御装置においては、第1リンクと第2リンクが連結具によって連結されていない初期状態では、第1リンクが第2リンクに対して上下方向にて回動可能であるため、ボデーが固定される部位と第2リンクの他端部が組付けられる部位との高低差が異なる車種にも同一構成にて適用可能であり、構成部品の共通化を図ることが可能である。
【0010】
また、本発明の実施に際して、前記レバー要素を、前記ボデーに基端部にて上下方向に揺動可能に組付けられて前記作動ピストンに係合・離脱可能で前記位置決め治具にて前記ボデーに連結・解除可能なレバー本体と、このレバー本体の揺動部に一端部にて連結され他端部にて前記第1リンクの一端部に上下方向にて回動可能に組付けられる棒ばねを備える構成とすることも可能である。この場合には、レバー本体を棒ばねに比して高剛性の素材で形成することにより、レバー要素を棒ばねのみで構成する場合に比して、位置決め治具によるレバー要素のボデーに対する位置決め精度を高めることが可能であり、当該装置の特性バラツキを低減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を図面に基づいて説明する。図1は本発明による荷重応答型ブレーキ液圧制御装置の一実施形態を示していて、このブレーキ液圧制御装置は、トラック等の車両に組付けられて使用されるものであり、制御弁10とレバー要素20とリンク機構30を備えている。
【0012】
制御弁10は、積載荷重に応じて後輪へのブレーキ液圧を減圧制御するものであって、それ自体公知のものであり、車両のばね上部材91に複数のボルト92にて固定されるボデー11と、このボデー11に組付けた作動ピストン12を備えている。作動ピストン12は、ボデー11に上下動可能に組付けられていて、下端部をボデー11外に突出させている。
【0013】
レバー要素20は、制御弁10の作動ピストン12に対向して配置されていて、制御弁10のボデー11に支持ピン13を介して上下方向にて揺動可能に組付けられており、レバー本体21と棒ばね22を備えている。レバー本体21は、基端部21aにて支持ピン13を介してボデー11に上下方向にて揺動可能に組付けられていて、中間部21bに設けた突起21b1にて作動ピストン12に係合・離脱可能であり、仮想線にて示した位置決め治具40にてボデー11に連結・解除可能である。
【0014】
棒ばね22は、レバー本体21の揺動部21cに一端部22aにて一体的に連結されていて、図1および図2にて示したように、レバー要素20の揺動部である円形に湾曲形成された他端部22bにてリンク機構30における第1リンク31の一端部31aにローラ33とピン34を介して上下方向にて回動可能に組付けられている。
【0015】
リンク機構30は、図1および図3にて示したように、上述した第1リンク31と、この第1リンク31の他端部31bに一端部32aにて上下方向にて回動可能に組付けられ他端部32bにて車両のばね下部材93にクリップ36を介して上下方向にて回動可能に組付けられた第2リンク32と、これら両リンク31,32の連結部における回動を規制・解除可能な連結ナット35を備えている。
【0016】
連結ナット35は、第2リンク32の一端部32aに一体的に設けた六角フランジ部32a1との間にて、第1リンク31の他端部31bを固定(挟持)・解除可能であり、第2リンク32の一端部32aに設けた雄ねじ部32a2に螺着されている。このため、連結ナット35が所定のトルクで締め付けられると、第1リンク31が第2リンク32に対して回動不能となり、また、連結ナット35が緩められると、第1リンク31が第2リンク32に対して回動可能となる。
【0017】
クリップ36は、図1、図3および図4にて示したように、樹脂によってL字状に形成されていて、突片状のばね下部材93に組付けられるコ字状取付部36aを有するとともに、第2リンク32の中間部32cが弾撥的に嵌合固定される保持部36bを有している。このクリップ36は、第2リンク32の他端部32bがばね下部材93に嵌合固定される際に、前もってコ字状取付部36aにてばね下部材93に組付けられていて、第2リンク32の他端部32bがコ字状取付部36aとばね下部材93を貫通するように嵌合されることにより、第2リンク32の中間部32cが保持部36bに嵌合固定される。
【0018】
上記のように構成したこの実施形態のブレーキ液圧制御装置においては、位置決め治具40を用いてレバー要素20を制御弁10のボデー11を連結し、レバー要素20を制御弁10のボデー11に対して図1に示した設定位置(制御弁10の作動ピストン12とレバー要素20間に所定の隙間が在る状態)にて仮固定するとともに、リンク機構30の連結ナット35を緩めて解除状態とし、第1リンク31と第2リンク32の連結部における回動規制を解いた初期状態にて、制御弁10のボデー11を車両のばね上部材91にボルト92を用いて固定するとともに、第2リンク32の他端部32bをクリップ36を用いてばね下部材93に組付け、その後に、リンク機構30の連結ナット35を所定のトルクで締め付けて、第1リンク31と第2リンク32の連結部における回動を規制し、最後に位置決め治具40を取り外すことにより、車両への組付が完了する。
【0019】
ところで、この実施形態のブレーキ液圧制御装置においては、当該装置の車両への組付に際して、接触検出用電気信号回路等の設備が不要であるばかりか、ボデー11のばね上部材91への固定作業、第2リンク32の他端部32bのばね下部材93への組付作業、連結ナット35による第1リンク31と第2リンク32の連結作業、位置決め治具40の取外作業等の単純な各作業にて容易に車両へ組付けることが可能であるため、当該装置の車載時の作業性を向上させることが可能である。
【0020】
また、この実施形態のブレーキ液圧制御装置においては、第1リンク31と第2リンク32が連結ナット35によって連結されていない初期状態では、第1リンク31が第2リンク32に対して上下方向にて回動可能であるため、ボデー11が固定される部位と第2リンク32の他端部32bが組付けられる部位との高低差が異なる車種にも同一構成にて適用可能であり、構成部品の共通化を図ることが可能である。
【0021】
また、この実施形態のブレーキ液圧制御装置においては、レバー要素20が、ボデー11に基端部21aにて上下方向に揺動可能に組付けられて作動ピストン12に係合・離脱可能で位置決め治具40にてボデー11に連結・解除可能なレバー本体21と、このレバー本体21の揺動部21cに一端部22aにて一体的に連結され他端部22bにて第1リンク31の一端部31aに上下方向にて回動可能に組付けられる棒ばね22を備える構成とされている。このため、レバー本体21を棒ばね22に比して高剛性の素材(例えば、鋼材)で形成することにより、レバー要素20を棒ばねのみで構成する場合に比して、位置決め治具40によるレバー要素20のボデー11に対する位置決め精度を高めることが可能であり、当該装置の特性バラツキを低減することが可能である。
【0022】
上記した実施形態においては、当該装置における制御弁10のボデー11を車両のばね上部材91に固定するとともに、第2リンク32の他端部32bを車両のばね下部材93に組付けるようにして実施したが、当該装置を上下逆として、当該装置における制御弁のボデーを車両のばね下部材に固定するとともに、第2リンクの他端部を車両のばね上部材に組付けるようにして実施することも可能である。
【0023】
また、上記した実施形態においては、棒ばね22の断面形状(長手方向に対して直角な断面形状)が円形である場合について説明したが、これに限定されるものではなくて、例えば、正方形、長方形、U字形、コ字形、楕円形であってもよい。なお、長方形である場合には、曲げ方向に扁平な板ばねであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による荷重応答型ブレーキ液圧制御装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示した棒ばねと第1リンクの関係を示す側面図である。
【図3】図1に示した第1リンク、第2リンク、クリップ、ばね下部材等の関係を示す側面図である。
【図4】図3に示したクリップとばね下部材の関係を示す底面図である。
【符号の説明】
【0025】
10…制御弁、11…ボデー、12…作動ピストン、20…レバー要素、21…レバー本体、21a…基端部、21b…中間部、21c…揺動部、22…棒ばね、22a…一端部、22b…他端部(レバー要素の揺動部)、30…リンク機構、31…第1リンク、31a…一端部、31b…他端部、32…第2リンク、32a…一端部、32b…他端部、35…連結ナット(連結具)、40…位置決め治具、91…ばね上部材、93…ばね下部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のばね上部材またはばね下部材にボデーにて固定される制御弁、この制御弁の前記ボデーに上下動可能に組付けた作動ピストンに対向して配置され基端部にて前記ボデーに上下方向にて揺動可能に組付けられて前記作動ピストンに係合・離脱可能なレバー要素、このレバー要素の揺動部に一端部にて上下方向にて回動可能に組付けられ他端部にて車両のばね下部材またはばね上部材に上下方向にて回動可能に組付けられるリンク機構を備えて、車両の積載荷重に応じて後輪へのブレーキ液圧を減圧制御可能な荷重応答型ブレーキ液圧制御装置において、前記リンク機構を、前記レバー要素の揺動部に一端部にて上下方向にて回動可能に組付けられる第1リンクと、この第1リンクの他端部に一端部にて上下方向にて回動可能に組付けられ他端部にて車両のばね下部材またはばね上部材に上下方向にて回動可能に組付けられる第2リンクと、これら両リンクの連結部における回動を規制・解除可能な連結具を備える構成とするとともに、前記レバー要素と前記ボデーを位置決め治具にて連結・解除可能としたことを特徴とする荷重応答型ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載した荷重応答型ブレーキ液圧制御装置において、前記レバー要素を、前記ボデーに基端部にて上下方向に揺動可能に組付けられて前記作動ピストンに係合・離脱可能で前記位置決め治具にて前記ボデーに連結・解除可能なレバー本体と、このレバー本体の揺動部に一端部にて連結され他端部にて前記第1リンクの一端部に上下方向にて回動可能に組付けられる棒ばねを備える構成としたことを特徴とする荷重応答型ブレーキ液圧制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate