説明

荷電粒子光学装置及びレンズ収差測定方法

【課題】ロンチグラム法の簡易性を備えながら、反射・二次電子走査像を利用するSEMにおいても適用可能な、また特別に撮影用の検出器を必要としない収差測定法、或いは収差測定に供する収差情報の取得方法を提供する。
【解決手段】走査像を得る為のビーム走査を、通常対物レンズ直上に置かれる走査コイルで行うのではなく、収差被測定レンズである収差補正器ならびに対物レンズ上方置かれた走査コイルによって行うことによって、収差被測定レンズの持つ収差を反映した歪走査を試料面上で行い、これによって発生する散乱電子線、透過電位線、もしくは反射・二次電子線から走査像を形成することで、従来のロンチグラムと等価な収差情報パターンを、走査型で得られる手段を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子光学装置及びレンズ収差測定方法に係り、特に、当該荷電粒子光学装置のレンズ収差測定方法において収差情報を取得する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡(SEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)は、電子レンズなどの電子光学的装置の組み合わせで、観察する試料面に極小の電子線スポット(以下、ビームプローブと記述する)を形成する。このビームプローブが照射する微小領域からの透過散乱電子、反射電子、二次電子、或いは派生するエックス線を測定することにより、当該微小領域の構造、組成等の情報を取得する。さらに、このビームプローブを電磁的な電子線偏向手段によって試料面上を二次元的に走査することで、二次元画像(所謂、電子顕微鏡像)を得ることができる電子顕微鏡装置である。
【0003】
特に、近年の電子顕微鏡装置においては、収差補正技術の進歩により、対物レンズの球面収差、色収差等の収差を補償する為の収差補正器を設けることで、より高精度に極小ビームプローブを試料面上に結像することができるようになった(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【0004】
即ち、電子顕微鏡の分解能が向上し、例えば近年市販される球面収差補正器付STEM装置においては、収差補正器による収差補正効果で一般的な原子のサイズより小さい0.1nm以下の分解能が、得られるようになってきた。逆にいえば、収差補正器を含め電子顕微鏡の収差状態をより精度よく評価する測定法の必要性が高まったともいえる。そこで、幾つかの高精度な収差測定法が、収差補正器の発達と並行して開発され、活用されるようになってきている。
【0005】
従来の収差測定法としては、収差図形法とプローブタブロー法などが知られている。また、別の収差測定法としては、ロンチグラムを用いた収差測定法(ロンチグラム法)がある。
【0006】
収差図形法とプローブタブロー法は、誤差を低減させるために測定を繰り返さなければならないことで、1セットの収差係数を得るまでに相当の時間と手間が必要となることがある。
【0007】
一方、ロンチグラムを用いる収差測定法では、原理的には1回の測定で得られた一つのロンチグラムから収差測定を行うことが可能である。例えば、このようなロンチグラムによる収差測定法の一例として、特許文献3ではアモルファス薄膜試料を用いたロンチグラムを得て、その局所領域で自己相関を取ることにより、ロンチグラム局所の歪テンソルを得る方法を説明している。
【0008】
また、ロンチグラムは投影像であり、前述の2手法が用いる走査像に比較して、一枚の測定像を取得するにも短い時間で撮像することが期待できる。
【0009】
従って、ロンチグラムを用いて高速な収差測定を行うことが可能であり、前述のように収差測定を多数回繰り返す必要のある収差補正器調整において同手法は非常に有望的であると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3207196号
【特許文献2】特許第4204902号
【特許文献3】特開2007−180013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来の収差測定法として収差図形法やプローブタブロー法では、収差係数を得る為、電子線入射点を変えながら多数の測定(走査顕微鏡像の取得)を繰り返す必要があり、手間と時間を要した。これは特に、複数回の収差測定を行いながら調整を進めてゆく収差補正器の調整手順を煩雑化し、調整に要する時間を伸ばすことで問題がある。
【0012】
一方、ロンチグラムを用いる測定法では、少数かつ高速撮影可能なロンチグラムから収差測定を行うことができ、収差測定自体の手間と時間は簡易化、短縮化できると期待される。しかしながら前述の通り、ロンチグラムという投影像を必要とする為、SEMではこれを利用することができない。またSTEMにおいてもロンチグラム取得用にカメラが必要となる。
【0013】
そこで、本発明はロンチグラム法の簡易性を備えながら、反射・二次電子走査像を利用するSEMにおいても適用可能な、また特別に撮影用の検出器を必要としない収差測定法、或いは収差測定に供する収差情報の取得方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の代表的な構成を示すと次の通りである。
【0015】
本発明のレンズ収差測定方法は、電子線を集束させて試料上で二次元的に走査する手段を備えた荷電粒子光学装置におけるレンズ収差測定方法であって、荷電粒子光学装置は、電子線を放出する電子源と、試料を搭載する試料搭載手段と、電子源と前記試料搭載部との間に配置された電磁レンズ群と、電磁レンズ群内にあって収差の測定対象とする被測定レンズ群の電子光学的上流に設けられ電子線を走査偏向させるための電子線走査手段と、電子線走査手段の上流側に設けられ電子線を所定のビーム径に絞り込むビーム絞り手段と、試料に照射された電子線により該試料から誘起される電子信号を検出する検出手段と、電子源、電磁レンズ群、電子線走査手段および検出手段を制御する制御手段とを備え、電子線走査手段によって、被測定レンズ群の上流で電子源から放出された電子線ビームの走査を行うことで、電磁レンズによって形成されたビームプローブを試料面上に二次元的に走査し、検出手段によって、被測定レンズの収差に応じて試料面上に歪投影されるビームプローブによって誘起される二次電子、反射電子、透過電子、散乱電子等の信号のいずれか一つ、もしくは幾つかを検出し、制御手段によって、被測定レンズ上の走査に同期して得られた二次元像を基にして、被測定レンズの収差量を算出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の荷電粒子光学装置は、電子線を放出する電子源と、試料を搭載する試料搭載手段と、電子源と試料搭載部との間に配置された電磁レンズ群と、電磁レンズ群内にあって収差の測定対象とする被測定レンズ群の電子光学的上流に設けられ電子線を走査偏向させるための電子線走査手段と、電子源、電磁レンズ群および電子線走査手段を制御する制御手段とを備え、電子線走査手段によって、被測定レンズ群の上流で電子源から放出された電子線ビームの走査を行うことで、電磁レンズによって形成されたビームプローブを試料面上に二次元的に走査させ、被測定レンズの収差に応じて試料面上に歪投影されるビームプローブによって誘起される二次電子、反射電子、透過電子、散乱電子等の信号のいずれか一つ、もしくは幾つかを検出する検出手段と、被測定レンズ上の走査に同期して得られた二次元像を基にして、被測定レンズの収差量を測定する測定手段とを有することを特徴とする。
【0017】
すなわち、走査像を得る為のビーム走査を、通常対物レンズ直上に置かれる走査コイルで行うのではなく、収差被測定レンズである収差補正器ならびに対物レンズ上方に置かれた走査コイルによって行うことによって、収差被測定レンズの持つ収差を反映した歪走査を試料面上で行い、これによって発生する散乱電子線、透過電位線、もしくは反射・二次電子線から走査像を形成することで、従来のロンチグラムと等価な収差情報パターンを、走査型で得られる手段を特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロンチグラム法の簡易性を備えながら、反射・二次電子走査像を利用するSEMにおいても適用可能な、また特別に撮影用の検出器を必要としない収差測定法、或いは収差測定に供する収差情報の取得方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】球面収差補正器を搭載した走査型透過電子顕微鏡の構成を示す図である。
【図2】従来の収差測定法(収差図形法とプローブタブロー法)の一例を示す図である。
【図3】従来の収差図形法とプローブタブロー法の測定原理を示す図である。
【図4】従来の収差測定法(ロンチグラム法)の一例を示す図である。
【図5】従来のロンチグラムを用いた収差測定法の測定原理を示す図である。
【図6】本発明の走査型ロンチグラム法を走査型透過電子顕微鏡で実施する為の、走査型透過電子顕微鏡電子光学設定を示す図である。
【図7】本発明の走査型ロンチグラム法を走査型透過電子顕微鏡で実施する為の、別の走査型透過電子顕微鏡電子光学設定を示す図である。
【図8】本発明の走査型ロンチグラム法を走査型電子顕微鏡で実施する為の、別の走査型電子顕微鏡電子光学設定を示す図である。
【図9】本発明の走査型ロンチグラム法の原理を示す図である。
【図10】アモルファス及び形状を持った測定用試料から得られる、従来のロンチグラム像と本発明の走査ロンチグラム像の例を、比較して示す図である。
【図11】本発明の走査ロンチグラム法を用いた時の、収差測定並びに収差調整の作業例を示すフロー図である。
【図12】本発明の走査ロンチグラム法を適用するのに適し被収差測定レンズ上流に配置するスキャンコイルの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0021】
なお、本発明は走査型電子顕微鏡、集束イオンビーム装置、電子線描画装置など、収束した荷電粒子ビームプローブを用いる荷電粒子装置一般について適用できるが、以下の説明においては、言葉の冗長性を避け問題の明確化を図る目的で、走査型電子顕微鏡、走査型透過電子顕微鏡での適用を中心として記述する。
【0022】
図1に、従来の走査型透過電子顕微鏡(STEM)100を示す。このSTEM100は、球面収差補正器を含む透過走査電子顕微鏡鏡体1の内部に、電子源2、収束レンズ(群)3、収束レンズ絞り4、電子線偏向器5、対物レンズ9、試料11などを具備している。電子源2から発生した電子線は加速管で加速、収束レンズ(群)3で、ビームの収束平行を調整され、収束レンズ絞り4で適切な角度範囲の電子線を選択し、電子線偏向器5で位置及び傾斜を調整した後、対物レンズ9によって試料11面上に極小ビームプローブを形成するように絞られる。このビームプローブを走査コイル7で試料面上を走査することにより、発生する二次電子・反射電子をSEM用二次電子・反射電子検出器8で、或いはSTEM用暗視野検出器14、STEM用明視野検出器15で検出し、ビームプローブの試料面走査に応じて信号を配列することで、試料微小領域の二次元的な情報、すなわち各々の信号に応じた電子顕微鏡像を得ることができる。なお、結像レンズ12及び電子線偏向器13は、STEM検出器14、15で適当な検出条件を調整するために使用される。得られた各々の電子顕微鏡像は、電子顕微鏡制御システム19を介して制御端末17に表示される等して、走査者がこれを観察するようにできる。
【0023】
次に、従来および本発明の収差測定法もしくは収差情報取得方法を説明する前に、電子顕微鏡の収差について一般的事項を述べる。
レンズの収差は、当該レンズの不完全性によって現れ、理想的な(収差のない)レンズを透過したときの電子軌道の変位や位相の余剰変化によってあらわされる。例えば、対物レンズ9を出射した面での収差による位相のズレは電子線の理想波面からのズレ、すなわち波面収差χ(ω,ωc)として、以下のように表わされる。なお、(式1)中のωの上付き横棒を(式1a)に示すように、説明文中では、ωcと表記、ωの複素共役を指すものとする。(式1)以降の式においてもωの上付き横棒に関しては、同様な表記を用いるものとする。
【0024】
【数1】

【0025】
【数2】

【0026】
【数3】

【0027】
なお、(式2)中、Reは式の実数部を取ることを表し、また上付きの横棒は複素共役を取ることを表す。ωは、試料面で電子線照射角度の複素表示({x,y}は対物レンズ出射面で座標、f0は対物レンズの焦点距離)
【0028】
【数4】

【0029】
であり、(式1)の第1行目は、一般的な収差係数An,mによってω,ωcのべき乗多項式に展開できることを意味し、第2行目は、慣例的な収差係数と表式で、収差の次数(n+m)と対称性(m-n)で分類し、五次まであらわしたものである。例えば、C1がデフォーカス、A1が二回対称非点収差、B2がコマ収差、A2が三回対称非点収差、C3が球面収差係数等である。収差測定は、元のχ(ω,ωc)を決める為、これら収差係数を測定する方法に他ならない。
【0030】
図2は、従来の収差測定法の内から二つの測定法と収差図形法およびプローブタブロー法を実施する為の、STEMでの電子光学設定の概要を示す。また、図3には図2中のAと表示する部分を拡大して、それぞれの測定法原理を示す。まず、(式1)の収差があると、図3に示すように試料面上で、ビームの変位δ(ω)
【0031】
【数5】

【0032】
また、ωにおける局所的なデフォーカスC1(ω)、非点収差A1(ω)≡A1r(ω)+iA1i(ω)
【0033】
【数6】

【0034】
【数7】

【0035】
【数8】

【0036】
を得る。(ただし、ω≡τ+iη、また収差係数の添字rとiは、各々係数の実部と虚部を表す。回転対称な収差、C1、C3、C5には虚部がないので特に付していない。)
これらがビームプローブのボケ、即ち分解能低下を表すことになるが、逆にこれらを測定することで、収差を計測することが可能である。これらを具体的に測定するためには、図2で示すように収差を測定すべき光学系(図では、収差補正器6ならびに結像に寄与する対物レンズの前磁場9aである。)に対し、偏向器5でビーム入射位置をシフトさせ、さらに走査コイル7を用いて走査顕微鏡像、もしくは走査型透過電子顕微鏡像を得ることで上記各量を測定する。なお、対物レンズは、前磁場9aおよび後磁場9bを備える。また、収差補正器6は、図1で示す収差補正器制御システム及び電源18を用いて制御される。
【0037】
ここで、δ(ω)は、像のシフトとして測定され、C1(ω)、A1(ω)はそれぞれ像のデフォーカス、非点として測定される。ただし、(式4)、(式5a、b)に示すように、測定すべき多数の収差係数(五次収差までで、係数の虚部実部を考慮すれば25個)を決めなれければならないので、これを満足する複数のω=ωi(i=1、2、3…)に対して各々の測定を行い、(式4)もしくは、(式5a、b)で連立方程式として、各収差係数を求めることになる。
【0038】
δ(ωi)については、ω≡ωi=rie2πiθiとして、ri、θiを振って像の変位量をプロットする図3に示す所謂「収差図形」32が得られるので、この実質このパターンを測定して、(式4)について連立方程式をつくり、各収差係数を導出する。
【0039】
なお、図3の左上に示す波面収差の図は、電子波面の位相ズレ量を等高線で表示している。また、図中のλは、電子線波長を示す。
【0040】
また、C1i)、A1i)においては入射角度ω≡ωiを振りながらオーバーフォーカス(Over-focus)及びアンダーフォーカス(Under-focus)(図3の11oおよび11u)での電子顕微鏡像を得る。これらにω≡0、インフォーカスでの電子顕微鏡像をレファレンスとして各々デコンボリューションをとることにより各ω≡ωiのオーバーとアンダーフォーカスでのプローブ形状を推定し、所謂「プローブタブロー」33a,bを作り、さらにこれからC1i)、A1i)を測定することで、(式5a、b)の連立方程式を形成、これを解いて各収差係数を求める方法が知られている。
【0041】
なお、図3において、符号32は、収差図形の一例を示す。入射ωでのイン・フォーカス(もしくは、適当なデフォーカス)で得られる顕微鏡像のω=0(軸上入射)時の顕微鏡像から変位量を、ωに対する変化として調べるのに利用できる。
【0042】
また、図3において、符号33a、bは、プローブタブローの一例を示す。軸上入射イン・フォーカスの顕微鏡像をリファレンスとして入射ωで適切なオーバー・フォーカス(+Δf)とアンダー・フォーカス(−Δf)でのビームプローブ形状を推定し、これから、ωについてのでフォーカス(C1r)と二回対称非点収差(A1r)を求めることができる。なお、図中の33aは、−Δfのビームプローブを、33bは、+Δfのビームプローブをそれぞれ示す。
【0043】
これらの手法の利点は、測定に用いる電子顕微鏡像を反射二次電子線(もしくは二次電子線)20b、或いは、透過電子線20c、散乱電子線20dのいずれからでも得られるので、これらの測定法はSEMでもSTEMでも適用可能である。
【0044】
一方、問題点は、上記の通り収差係数を得る(式4)、(式5a、b)を連立するに十分な数、或いはより実際的には誤差を低減させるためにそれ以上の測定を繰り返さなければならないことで、1セットの収差係数を得るまでに相当の時間と手間が必要となることである。例えば、CEOS社のSTEM収差補正器においてプローブタブロー法で3次までの12収差係数求める為には、18箇所の電子線入射点において適切なアンダー及びオーバーフォーカスでのSTEM像を得なければならない。この手間は特に、収差測定と調整を繰り返しながら収差補正を進めていく現在の収差補正器調整においては問題である。
【0045】
また、図4は、従来知られる別の収差測定法であるロンチグラムを用いた収差測定法を実施する為の、STEMでの電子光学設定の概要を示す。また、図5には図4中のBと表示する部分を拡大して、その測定法原理を示す。ロンチグラム法は、前記の収差図形法、プローブタブロー法等とは異なり、走査コイル7による走査型電子顕微鏡像を用いない。図4のように大角度に開いた入射電子線202aで試料11を照射し、この投影像であるロンチグラム21を得て測定に用いる。ロンチグラム21は結像レンズ12でシンチレータ等の面上に適切に投影されカメラ等の電子線検出器(EELS検出器、或いはイメージング検出器)16によって観察される。大角度のビームで試料11を照射する為、拡大図の図5のように試料11の適当な近傍でビームを、入射電子線202aを収束するようにすれば、例えば、試料11上に等間隔に示した点列が、それぞれ異なる入射角度の異なる収差を含んだ電子線で投影されることになり、収差を反映したズレ、歪を含んだ試料の投影像が得られる。すなわちこの歪投影像21がロンチグラムである。このロンチグラムの局所歪テンソルζ(x,y)は、(式2)波面収差χ(ω,ωc)を用いて、
【0046】
【数9】

【0047】
となることが知られている。ここで、χ(ω,ωc)は簡略のためχで略示した。またx,yは入射角ω=x+iyに対応するロンチグラム上の座標である。前述の測定法と同様に(式6)の連立方程式を立てることで収差係数を決めることができる。
【0048】
しかし、注目すべき点は、前述の方法が複数の測定点で電子顕微鏡像取得を繰り返さなければならなかったことに対して、ロンチグラム法では原理的には一枚のロンチグラムで複数箇所の歪を測定すれば、収差係数を決めるに満足する(式6)の連立方程式を作ることが可能であることである。
【0049】
例えば、このようなロンチグラムによる収差測定法の一例として、特許文献3ではアモルファス薄膜試料11を用いた透過ロンチグラム30を得て、その局所領域で自己相関を取ることにより、ロンチグラム局所の歪テンソルを得る方法を説明している。得られた透過ロンチグラム30の適切な領域を格子状に分割し各々で自己相関を計算すると、局所歪を反映した
【0050】
【数10】

【0051】
楕円状の自己相関パターンが各々の箇所について得られるので、これらを元に(式6)の連立方程式を立てて、収差係数を導出することが可能である。ここで(u,v)、は分割した各格子の中心を原点とする各々格子の局所座標である。
【0052】
以上のように、ロンチグラムを用いる収差測定法では、原理的には一つのロンチグラムから収差測定を行うことが可能である。実際には、収差係数の絶対量を規格化する条件を得る為、或いは誤差低減の目的で複数のロンチグラムを利用した方が適切であるが、前述の収差図形、プローブタブロー法に比較すれば、十分に少ない測定数で収差係数を計算するに足る元データを得ることができる。また、ロンチグラムは投影像であり、前述の2手法が用いる走査像に比較して、一枚の測定像を取得するにも短い時間で撮像することが期待できる。従って、ロンチグラムを用いて高速な収差測定を行うことが可能であり、前述のように収差測定を多数回繰り返す必要のある収差補正器調整において同手法は非常に有望的であると言える。
【0053】
走査法による形成像でロンチグラムと同等の収差情報を含む像を得ることを考える。このような像は、例えば、図6に示す方法で取得が可能である。電子源2、収束レンズ3、収差補正器6、対物レンズ9a、9bを備え明視野、暗視野環状等の電子検出器を備える構成は、図1に示した標準的な収差補正STEMと同じである。やはり、同様に試料11を試料ホルダ10でSTEM観察の標準位置に設置する。ただし、収差を測定すべき光学要素は、試料11面上プローブ形成に寄与する収差補正器6ならびに対物レンズの前磁場9aであるので、走査像を得る為に通常の走査コイル7ではなく被測定レンズの上に置く走査ロンチグラム用走査コイル23を用いて二次元的にプローブを試料11面上で走査するようにする。走査ロンチグラム用走査コイル23は、ビーム走査の為に動的に高い応答性が必要となるので、できれば偏向コイルとは別に専用に設置することが望ましいが、プローブタブロー法等で用いた電子線偏向器5で十分な応答性が期待できるなら共用するものでも構わない。
【0054】
さらに、走査ロンチグラム用走査コイル23の上方に走査ロンチグラム用絞り装置4を備えて、走査前段において電子線を細く制限できるようにする。このような構成を用いて、被測定レンズ(収差補正器6と対物レンズ前磁場9a)上でビーム203aを走査するようにすると、これらレンズの収差を反映して歪変位を伴ったビームプローブで、試料面上を走査できることになる。このビームプローブから得られる散乱電子線203dは、下方の結像レンズ12と偏向器13で適宜調整され、STEM明視野検出器15もしくは暗視野環状検出器14で収得されることになり、走査ロンチグラム用走査コイル23における2次元走査と同期して走査像として表示されれば、収差による歪情報を含んだ走査像が得られることになる。
【0055】
同様のビーム走査は、電磁的な走査コイルを用いることなく、図7に示すように被測定レンズ情報の絞り装置24にピエゾ素子等で駆動する走査機能を持たせれば、この絞り装置24の走査と同期した走査像を得ることにより、図6の説明と同じ収差情報を反映した走査像を得ることができる。
【0056】
また、走査像を得る為、必ずしも透過像でなくてもよいので、図8に示す通り図6、図7の説明での走査プローブによって発生する反射・二次電子線をSEM検出器で収得し、やはり被測定レンズ上の二次元走査と同期した走査像を形成することで、収差情報を反映した走査像をSEMにおいても得ることができる。
【0057】
走査法によるロンチグラム同等画像(以下、簡易的に「走査ロンチグラム」と呼ぶ)の形成を、より詳細に図9で説明する。収差を測定すべき収差補正器6と対物レンズ前磁場9aの上方で、前述の方法で細く絞った電子線203aを走査すると、これは被測定レンズ群に対して入射点を変えることに相当するので、収差によって歪んだ走査で試料11面上のビームプローブが走査されることになる。例えば、一定速度で入射ビーム203aを走査しても、試料面上の走査プローブは収差を反映した速度変調(と形状歪)を持って試料面上を動くことになる。この様子はちょうど従来の透過ロンチグラム形成の図5と比較して、ロンチグラムを形成するための入射電子線202aを、細く分割して観察することに類似している。このプローブによって試料11から発生する反射・二次電子線をSEM検出器8、もしくは散乱電子線をSTEM暗視野或いは明視野検出器(各々14、15)で検出し、電子顕微鏡制御システム19を介し電子顕微鏡制御コンソール17に走査ロンチグラム31を表示することができる。電子顕微鏡制御コンソール17でPC、ワークステーション等の計算機を用いるなら、表示と同時に走査ロンチグラムの記録並びに解析が可能であり、収差係数導出まで同時にできることになる。
【0058】
走査ロンチグラム31と従来の透過ロンチグラム21の等価性は、以下のように示される。まず透過ロンチグラムの形成を考えると、収差を反映した試料11面上のビームプローブp(xs,ys)は、波面収差χ(ω,ωc)のフーリエ変換として、
【0059】
【数11】

【0060】
である。ここで、F[ ]はフーリエ変換を表し、またχ(ω,ωc)は前述に倣ってχと略記した。(xs,ys)は試料面上の座標である。このプローブによって照射される試料をs(xs,ys)とするならば、透過ロンチグラムΨT(ω’)21は、試料による重みづけをされたプローブp(xs,ys)の逆フーリエ変換F-1[ ]を用いて
【0061】
【数12】

【0062】
走査ロンチグラムΨS(ω’)31は、被測定レンズ群情報の走査ロンチグラム用絞り装置24によって細分化されたロンチグラムの重ね合わせと考えることができるので、絞りの透過関数t(ω’)とのコンボリューションで、
【0063】
【数13】

【0064】
と表わされる。
【0065】
【数14】

【0066】
従って、絞り径が十分小さくt(ω’)がδ関数的であれば、
【0067】
【数15】

【0068】
であり、走査ロンチグラム31は透過ロンチグラム21とほぼ等価であると見なすことができる。即ち、収差測定の為に透過ロンチグラムで用いた解析手法が、ほぼそのまま走査ロンチグラム31の解析にも適用できることになる。
【0069】
このような前提で、透過ロンチグラム(従来法)30と、本発明の走査ロンチグラム31との比較を図10に示す。例えば、アモルファス薄膜110を試料をとする場合得られる透過ロンチグラムと走査ロンチグラムは良く似た歪パターンを示している。従って透過ロンチグラムと同様の局所歪解析を、例えば、特許文献3記述と同じ解析法によって行い、収差係数を導出することが可能である。また、SEMのように形状の明確な試料を用いる場合も、類したロンチグラムの歪解析を行うことで収差係数の導出ができると考えられるが、また特徴的な形状点を持つ試料であれば、通常のSEM像を基準として特徴点の変位量を評価することで走査ロンチグラムの歪を評価し、これを用いて収差係数を導出することも可能である。
【0070】
さらに、このような図9の走査ロンチグラム法は、従来の図5の透過ロンチグラム法に比較して、収差測定時試料の微小領域に一挙に大量の電子線を収束させないという特長も備える。従来の透過ロンチグラム法であれば、図5で示した通り多量の電子線を試料面近傍に収束させなければならないが、これは試料汚染の加速、また電子線の与える熱による試料薄膜の局所変形を引き起こし、測定誤差を生じる可能性がある。
【0071】
一方、本発明の走査ロンチグラム法によれば、電子線は既に収束レンズ絞り4によって必要最小量に低減され、試料面上を走査することになるので、上記のような試料汚染の加速、また熱による試料薄膜の局所変形を引き起こしにくい。従って本発明の走査ロンチグラム法によれば、従来の透過ロンチグラム法よりも安定したロンチグラムパターン31を得て、より正確な収差測定を行えることが期待される。
【0072】
この走査ロンチグラム法を用いるときの、収差測定並びに収差補正器調整の作業フロー例500を図11に示す。まず、電子顕微鏡の初期設定501を行い目的の収差補正条件に近い状態を得る。これは、既に粗調整を終えた装置であれば日常的には、電子顕微鏡内レンズ、偏向器、収差補正器に準備された適当なプリセット値を、記憶装置等から読み出し状態を再現できることが期待できる。次に精密調整を、走査ロンチグラム法による収差測定を用いて行う為、ロンチグラム測定条件502を設定する。
【0073】
ロンチグラムを得る為には、図6〜図9で説明した通り、通常の走査顕微鏡像を得る為の走査コイルによるスキャン停止5021し、ロンチグラム観察条件で適切なコントラスト、明るさが得られるように収束レンズで照射条件を調整5022し、適切な倍率で投影像が得られるように結像レンズを調整5023する。このとき各々は、従来のロンチグラムを適切に観察すると同じ条件を設定すればよい。
【0074】
さらに、測定に適当な試料部位を電子顕微鏡に通常備えられる試料微動装置等で計測試料選択5024し、デフォーカス、投影倍率等の測定条件を調整5025する。測定条件は、後段のロンチグラムからの収差解析方法によって異なり、各々の方法に応じて適当な条件が決められる。ここで、収束レンズ絞り4を選択して挿入し走査ロンチグラムを得られるよう電子線の照射角を制限5026する。例えば、200kV収差補正STEMの場合、試料面上の収束角が5〜10mradになる絞りを用いるのが適当である。
【0075】
次に上記設定を用いて、走査ロンチグラムの取得503を行う。通常の走査コイル7は停止したまま、収差補正器と対物レンズなど被収差測定レンズ上流の走査ロンチグラム用スキャンコイル23を用いて二次元ラスタスキャン5031を行う。透過散乱電子、反射電子、二次電子の強度を検出器を通し測定5032しラスタスキャンに同期した二次元強度分布に変換5033する。こうして得られる強度分布(画像)が走査ロンチグラムで、必要に応じてモニタ等に表示5034する。
【0076】
さらに前述の通り従来の透過型ロンチグラムからの解析法に準じた収差解析法を用いて、収差測定、すなわち収差係数の算出504を行う。この為には、走査ロンチグラムの各部で像シフト、デフォーカス、非点収差量やそれに関係づけられる走査ロンチグラムの局所収差情報を抽出5041し、前述のような従来の透過ロンチグラム法解析に用いられたと同様の解析方法で、(軸上)収差係数を導出5042する。この結果を収差調整プログラムに補正対象とする収差係数の出力5043をするとともに、必要に応じて収差係数や波面収差パターンの形で収差係数/情報のモニタ表示5044する。
【0077】
以上で測定された収差係数を元に、収差補正状態の判断505を行い、残余収差が所望値より大きい場合は当該の収差を低減するように、収差補正器や対物レンズ等電子顕微鏡内のレンズや偏向器等電子光学装置の残余収差補償調整507を行う。この調整が十分であるかは、再度、走査ロンチグラムを取得503、収差係数を算出504し、低減しようとした収差が十分小さくなっているか、或いは派生的に別の収差が増大していないか、収差状態を505で判定する。通常はこのような測定と調整ループを複数回繰り返すことによって、調整対象とする全収差係数が所望値以下に低減され収差調整が完了、収差測定設定から顕微鏡像観察光学設定506に切替して、電子顕微鏡像の観察に移行できる。
【0078】
図12には、走査ロンチグラム取得に用いるスキャンコイル23の例を示す。収差補正電子顕微鏡でこれを用いる場合、電子線20の正確な二次元的ラスタスキャン235を行う為に偏向器中心軸付近x、y両方向に均一な偏向場が得られること、また補正器上面に垂直に入射できるよう上下2段のコイルで余剰な角度変化を伴わない正確な電子線シフトスキャンができることが必要である。200kV STEMの例で考えれば、偏向コイル軸を中心に凡そ500x500μmの範囲で均一な偏向場が得られ、電子線シフトは5x10−6rad以下の平行度を保って行われることが望ましい。前者の為、図12に励磁するコイル231、232は、x、yで所謂「コサイン巻」231x、231y及び232x、232yを採用して広範囲に均一な偏向場を作れるようにし、また上下2段で対称なコイル231、232を用いることで電子線シフトに高い平行度を得られるように工夫している。(尚、図23の側面図では、図の複雑化を避ける為コイル巻き線は、x方向巻き線は省略しy方向231y、232yのみ図示している。実際には、上面図に示す通り231y、232yと直交する向きにx方向のコイル231x、232x(非図示)が巻かれている。)
以上の説明のような装置、手段を用いて、被測定レンズより上方で電子線を走査することにより、プローブタブロー法のように入射点を変えて多数回の煩雑な測定を繰り返すことなく、従来の透過型ロンチグラムと等価な走査ロンチグラムを得ることができ、透過ロンチグラムと同じ解析手段によって収差測定を行うことができる。さらに従来のロンチグラム法と異なり、図6、図8において上述説明の通り、試料の透過散乱電子線を利用できないSEMにおいても本手法は適用可能であり、またSTEMにおいても既存の明視野、暗視野、二次電子検出器等を用いることができるので、従来の透過ロンチグラム観察に必要だったイメージングカメラが本発明の手法では必ずしも必要とされないことが、本発明である「走査ロンチグラム法」を用いた収差測定法の特長である。
【符号の説明】
【0079】
1…球面収差補正器を含む走査型透過電子顕微鏡鏡体、
2…電子源、
3…収束レンズ(群)、
4…収束レンズ絞り、
5…電子線偏向器、
6…収差補正器、
7…走査コイル(電子線偏向器)、
8…SEM用二次電子・反射電子検出器、
9…対物レンズ、
9a…対物レンズ前磁場、
9b…対物レンズ後磁場、
10…試料ホルダ、
11…観察/被測定試料、
11o…観察/被測定試料(オーバーフォーカス位置)、
11u…観察/被測定試料(アンダーフォーカス位置)、
100…走査型透過電子顕微鏡(STEM)、
110…アモルファス薄膜(被測定試料)、
12…結像レンズ(群)、
13…電子線偏向器、
14…STEM暗視野検出器(大角度散乱電子環状検出器)、
15…STEM明視野検出器(小角度散乱電子検出器)、
16…電子線検出器(EELS検出器、或いはイメージング検出器)、
17…電子顕微鏡制御コンソール、
18…収差補正制御システム及び電源、
19…電子顕微鏡制御システム及び電源、
202a…入射電子線、
20…電子線、
20b…反射電子線(もしくは、二次電子線)
20c…透過電子線、
20d…散乱電子線、
200a…収差がない時の入射電子線の軌道、
201x…収差がある場合の入射電子線x軌道、
202y…収差がある場合の入射電子線y軌道、
203a…走査ロンチグラムを得る為の入射電子線、
203b…走査ロンチグラムを得る為の反射・二次電子線、
203d…走査ロンチグラムを得る為の透過散乱電子線、
21…歪投影像、
23…走査ロンチグラム用走査コイル(電子線偏向器)、
231…走査ロンチグラム用走査コイルの上段偏向コイル組、
231x…上段コイルで、x方向に偏向磁場を与えるコイル巻き線、
231y…上段コイルで、y方向に偏向磁場を与えるコイル巻き線、
232…走査ロンチグラム用走査コイルの下段偏向コイル組、
231x…下段コイルで、x方向に偏向磁場を与えるコイル巻き線(非図示)、
231y…下段コイルで、y方向に偏向磁場を与えるコイル巻き線、
233x…上下段コイルで、x方向偏向磁場コイルを駆動する電流源、
233y…上下段コイルで、y方向偏向磁場コイルを駆動する電流源、
235…ラスタ・スキャン、
24…走査ロンチグラム用絞り装置、
30…透過ロンチグラム、
31…走査ロンチグラム、
500…走査ロンチグラムを用いた収差測定/調整フロー、
501…初期設定(初期調整もしくは、プリセット条件設定)、
502…収差測定光学条件設定、
5021…走査コイルによるスキャン停止、
5022…照射条件選択、
5023…結像条件選択、
5024…計測試料選択、
5025…測定条件調整、
5026…測定照射角設定、
503…走査ロンチグラム取得、
5031…走査ロンチグラム用スキャンコイルによる二次元ラスタスキャン、
5032…透過/散乱電子強度の検出、
5033…走査ロンチグラムの形成(ラスタスキャンに同期した信号強度二次元配列化)、
5034…走査ロンチグラムのモニタ表示、
504…収差係数の算出、
5041…走査ロンチグラムの局所収差情報抽出、
5042…軸上収差係数の導出、
5043…補正対象とする収差係数の出力、
5044…収差係数/情報のモニタ表示、
505…収差補正状態の判断、
506…顕微鏡像観察光学設定への切り替え、
507…残余収差補償調整。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を集束させて試料上で二次元的に走査する手段を備えた荷電粒子光学装置におけるレンズ収差測定方法であって、
前記荷電粒子光学装置は、
電子線を放出する電子源と、
試料を搭載する試料搭載手段と、
前記電子源と前記試料搭載部との間に配置された電磁レンズ群と、
前記電磁レンズ群内にあって収差の測定対象とする被測定レンズ群の電子光学的上流に設けられ前記電子線を走査偏向させるための電子線走査手段と、
前記電子線走査手段の上流側に設けられ前記電子線を所定のビーム径に絞り込むビーム絞り手段と、
前記試料に照射された電子線により該試料から誘起される電子信号を検出する検出手段と、
前記電子源、前記電磁レンズ群、前記電子線走査手段および前記検出手段を制御する制御手段と、を備え、
前記電子線走査手段によって、前記被測定レンズ群の上流で前記電子源から放出された電子線ビームの走査を行うことで、前記電磁レンズによって形成されたビームプローブを前記試料面上に二次元的に走査し、
前記検出手段によって、前記被測定レンズの収差に応じて前記試料面上に歪投影されるビームプローブによって誘起される二次電子、反射電子、透過電子、散乱電子等の信号のいずれか一つ、もしくは幾つかを検出し、
前記制御手段によって、前記被測定レンズ上の走査に同期して得られた二次元像を基にして、前記被測定レンズの収差量を算出することを特徴とするレンズ収差測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ収差測定方法において、
前記荷電粒子光学装置が、走査型透過電子顕微鏡装置であることを特徴とするレンズ収差測定方法。
【請求項3】
請求項1に記載のレンズ収差測定方法において、
前記荷電粒子光学装置が、走査型電子顕微鏡装置であることを特徴とするレンズ収差測定方法。
【請求項4】
請求項1に記載のレンズ収差測定方法において、
前記制御手段は、以下のa)〜f)のステップによりレンズ収差測定に必要な光学条件を設定することを特徴とするレンズ収差測定方法。
a)前記電磁レンズ群および前記電子線走査手段を制御するための初期条件を設定し、
b)ロンチグラム取得に必要な収差測定光学条件の設定を行い、
c)該収差測定光学条件に基づいて、電子線を走査しがら前記試料に照射して走査ロンチグラムを取得し、
d)該取得した走査ロンチグラムに基づいて収差係数を算出し、
e)該算出した収差係数が目標値以内にあるか判定し、
f)目標値内にある場合に、レンズ収差測定に必要な光学条件を設定する。
【請求項5】
電子線を放出する電子源と、
試料を搭載する試料搭載手段と、
前記電子源と前記試料搭載部との間に配置された電磁レンズ群と、
前記電磁レンズ群内にあって収差の測定対象とする被測定レンズ群の電子光学的上流に設けられ前記電子線を走査偏向させるための電子線走査手段と、
前記電子源、前記電磁レンズ群および電子線走査手段を制御する制御手段と、を備え、
前記電子線走査手段によって、前記被測定レンズ群の上流で前記電子源から放出された電子線ビームの走査を行うことで、前記電磁レンズによって形成されたビームプローブを前記試料面上に二次元的に走査させ、
前記被測定レンズの収差に応じて前記試料面上に歪投影されるビームプローブによって誘起される二次電子、反射電子、透過電子、散乱電子等の信号のいずれか一つ、もしくは幾つかを検出する検出手段と、
前記被測定レンズ上の走査に同期して得られた二次元像を基にして、前記被測定レンズの収差量を測定する測定手段と
を有することを特徴とする荷電粒子光学装置。
【請求項6】
請求項5に記載の荷電粒子光学装置において、
前記被測定レンズは、前記試料の上流側に配置され前記電子線ビームを前記試料表面に収束させる対物レンズ前磁場と、前記対物レンズ前磁場と前記電子線走査手段との間に配置された収差補正器とを含むことを特徴とする荷電粒子光学装置。
【請求項7】
請求項5に記載の荷電粒子光学装置において、
前記荷電粒子光学装置が、走査型透過電子顕微鏡装置であって、
前記電子線走査手段の上流に前記電子線走査手段により走査するビームの形状を所定のビーム径に絞るためのビーム絞り手段を、さらに有することを特徴とする荷電粒子光学装置。
【請求項8】
請求項5に記載の荷電粒子光学装置において、
前記荷電粒子光学装置が、走査型電子顕微鏡装置であって、
前記電子線走査手段の上流に前記電子線走査手段により走査するビームの形状を所定のビーム径に絞るためのビーム絞り手段を、さらに有することを特徴とする荷電粒子光学装置。
【請求項9】
請求項5に記載の荷電粒子光学装置において、
前記電子線走査手段の上流に前記電子線走査手段により走査するビームの形状を所定のビーム径に絞るためのビーム絞り手段を有し、
前記電子線走査手段による前記電子線ビームの走査を行わずに、前記ビーム絞り手段を振幅移動させることにより、所定のビーム径を有する電子線ビームを機械的に走査することを特徴とする荷電粒子光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−104426(P2012−104426A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253477(P2010−253477)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】