説明

蒸気加減弁開度制御装置および蒸気タービン起動制御システム

【課題】 蒸気タービン起動後の弁切替時に蒸気タービンの実回転数の規定回転数を超えた上昇を防止する。
【解決手段】 蒸気タービンの回転数が規定回転数に達した後の弁切替時に蒸気加減弁の弁開度を全開から絞り方向に制御する制御装置であって、前記蒸気タービン実回転数を検出しこれを電気信号として出力する実回転数検出手段と、前記規定回転数よりも相対的に小さい目標回転数信号を発生させる目標回転数信号発生手段と、前記蒸気加減弁への弁開度減指令信号の入力を受けて前記実回転数信号と前記目標回転数信号との偏差を発生させてこれを偏差信号として出力する偏差発生手段と、前記出力された偏差信号が所定の条件を具備する場合に前記弁開度減指令信号を前記蒸気加減弁の開度制御を行う調速装置に対して出力するスイッチ手段とを備えてなる蒸気加減弁開度制御装置、および当該制御装置が組み込まれたタービン起動制御システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン起動後の弁切替時に蒸気タービンの実回転数が規定回転数を超えて上昇するのを防止し、蒸気加減弁の開度を制御するのに適した蒸気加減弁開度制御装置、および該蒸気加減弁開度制御装置が組み込まれた蒸気タービン起動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所などの蒸気タービンを有する発電プラントでは、蒸気発生器で発生した所定の圧力を有する蒸気は、主蒸気止め弁(以下、MSV弁ということがある。)とその後流に直列に配置された蒸気加減弁(以下、GOV弁ということがある。)とを備える主蒸気管を通してタービンに送気され、タービンおよび当該タービンの軸に直結された発電機を駆動して発電するように構成されている。
【0003】
図5は、火力発電所における一般的な蒸気タービン(以下、単にタービンという。)の起動制御システムの一例を示す図である。この図に示すタービンの起動制御システム2は、タービン25に通じる主蒸気管22に設けられたMSV弁23およびGOV弁24と、タービン起動制御装置10と、MSV弁23の駆動および開度制御を行う主蒸気止め弁制御装置12と、GOV弁24の駆動および開度制御を行う調速装置15と、当該調速装置15に付属する回転検出器27とから構成されている。なお、GOV弁24は、タービン25の周辺に複数台設置され、これらは順次開度制御されるように構成されているため、図4では、複数台のうちの1台のみを示している。
【0004】
タービン起動制御装置10は、不図示の自動昇速装置(DACA制御装置)および自動弁切替装置などを含んでいる。このタービン起動制御装置10からは、主蒸気止め弁制御装置12および調速装置15に対して弁開度制御指令信号11、13がそれぞれ出力される。ここで、弁開度制御指令信号11、13は、MSV弁23およびGOV弁24の開度を増方向または減方向に制御するための指令信号である。本明細書では、特に弁開度制御指令信号13について、GOV弁の開度を減方向に駆動させる指令信号を「弁開度減指令信号13」と呼ぶこととしている。なお、図5では、各弁の開度検出器および弁開度フィードバック信号を図示していないが、通常弁開度の計測に使用されるすべり抵抗器や差動トランスなどが設けられ、開度検出器からタービン起動制御装置10に弁開度フィードバック信号が出力されているものとする。
【0005】
調速装置15は、主ガバナおよび負荷制限器など(いずれも不図示)を備える機械油圧式ガバナであり、タービン起動時や負荷の急変時に前記弁開度制御指令信号13によってGOV弁24の開度を増減させるように制御するとともに、タービンの定常運転状態では負荷に応じてGOV弁24の開度を制御することによってタービン25への蒸気流入量を自動的に制御してタービン25の回転数を負荷の変動に係らず一定の範囲内に維持する装置である。
【0006】
タービン25を起動する場合、タービン25がターニング運転状態であり、GOV弁24全開、MSV弁23全閉などの所定の条件が具備され起動準備が完了したところで、タービン起動制御装置10からMSV弁23の制御装置12に対して弁開度制御指令信号11が出力される。この弁開度制御指令信号11の入力を受けて、主蒸気止め弁制御装置12はMSV弁23を開き、これによってタービン25への蒸気発生器(不図示)からの蒸気の送気が開始され、タービン25内では、当該蒸気が全周噴射され、各部材を加温していく。また、主蒸気止め弁制御装置12は、MSV弁23の開度を制御し、規定回転数に達するまでタービン25を一定の昇速率で回転駆動させる。
【0007】
タービン25の回転数が規定回転数に達した後に、MSV弁23の開度制御による絞り調速(全周噴射)からGOV弁24の開度制御によるノズル締め切り調速(部分噴射)に切り替える弁切替が行われる。この弁切替においては、タービン起動制御装置10からGOV弁24の調速装置15に対して弁開度減指令信号13が出力され、当該指令信号13の入力を受けてGOV弁24は無負荷規定位置までその開度が絞り込まれる。その後、タービン起動制御装置10から主蒸気止め弁制御装置12に対してMSV弁を全開とするように弁開度制御指令信号11が発信され、当該指令信号11の入力を受けてMSV弁23の開度が全開となったところで、それ以降調速装置15によるGOV弁24の開度制御による部分噴射が開始される。通常、この段階でタービン発電機26は電力系統に併入され、送電が開始される。
【特許文献1】特開平5−288005号公報
【特許文献2】特開平8−266095号公報
【特許文献3】特開平5−195713号公報
【特許文献4】特開平5−195708号公報
【特許文献5】特開平6−81608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような従来の弁切替の制御では、弁開度減指令信号が停止される無負荷規定位置は調速装置の位置検出によって機械的に規定されるものであることから、タービンの規定回転数(通常、定格回転数)に相当するGOV弁の開度と実際の開度との間に微妙なずれが生じ、その結果蒸気タービンの実回転数が規定回転数を超えて上昇することがあった。例えば、2極の発電機に直結されたタービンの場合、規定回転数である定格回転数3600rpmに対して、実際の蒸気タービンの回転数は3630〜3640rpmに達し、回転数が30〜40rpmだけ上昇していた(図7参照)。このように流入する蒸気量が増加しタービン回転数が上昇することで、タービン内の蒸気流入部周辺などの一部の部材に過大な応力がかかる危険性があった。
【0009】
そこで、本発明は、タービン起動後の弁切換時に蒸気タービンの実回転数が規定回転数を超えて上昇しないように蒸気加減弁の弁開度を制御して蒸気タービンへの蒸気の流入量を抑えることができる蒸気加減弁開度制御装置、ならびに当該制御装置を組み込んだ蒸気タービン起動制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の蒸気加減弁開度制御装置は、蒸気タービンの回転数が規定回転数に達した後の弁切替時に蒸気加減弁の弁開度を全開から絞り方向に制御する制御装置であって、前記規定回転数よりも相対的に小さい目標回転数信号を発生させる目標回転数信号発生手段と、前記蒸気加減弁への弁開度減指令信号および蒸気タービンの実回転数信号の入力を受けて当該実回転数信号と前記目標回転数信号との偏差を発生させてこれを偏差信号として出力する偏差発生手段と、前記出力された偏差信号が所定の条件を具備する場合に前記弁開度減指令信号を前記蒸気加減弁の開度制御を行う調速装置に対して出力するスイッチ手段とを備えてなることを特徴とする。
【0011】
前記目標回転数信号発生手段は、これに直接前記規定回転数よりも相対的に小さい目標回転数を適宜設定することで、その設定値に相当する電気信号を目標回転数信号として発生させ、または当該目標回転数信号発生手段に入力されたタービンの実回転数(例えば規定回転数)信号を弁開度減指令信号が入力された時点で一定に保持しておき、この保持された実回転数から予め適宜設定された低減させるべき回転数を減算することで目標回転数信号として発生させる機能を備えたものなどとすることができる。
【0012】
前記減算器は、このように設定された目標回転数と実回転数との偏差を発生させ、これを偏差信号として出力する。この偏差信号が0となるまで前記弁開度減指令信号を直接前記調速装置に出力することも可能であるが、本発明においては、前記スイッチ手段を設け、これに含まれる条件設定判定手段で前記偏差信号を受け、当該手段に予め設定された所定の条件に対する偏差信号の具備不備を判定することによって当該手段から前記調速装置に前記弁開度減指令信号の出力または停止を行うように構成している。
【0013】
前記条件は、前記実回転数と前記目標回転数との差の範囲内で適宜設定可能な回転数以上とすることができる。すなわち、前記スイッチ手段は、前記減算器から出力される偏差信号が設定された条件を具備する間は弁開度減指令信号を前記調速装置に対して出力し、前記条件を満たさなくなったところで、弁開度減指令信号の出力を停止するようにする。
【0014】
前記調速装置には電気油圧式、デジタル電気油圧式、機械油圧式などが含まれるが、このうち、本発明の蒸気加減弁開度制御装置における調速装置は機械油圧式であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の蒸気タービン回転数制御装置は、蒸気タービン起動後の主蒸気止め弁から蒸気加減弁に開度制御を切り替える弁切替時における蒸気タービンの回転数を制御する回転数制御装置であって、前記蒸気加減弁の弁開度減指令信号および前記主蒸気止め弁の弁開度全開指令信号を発生する弁開度指令信号発生手段と、前記蒸気加減弁開度制御装置と、前記弁開度全開指令信号の入力を受けて前記主蒸気止め弁の弁開度を全開に制御する主蒸気止め弁の制御装置とを備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蒸気加減弁開度制御装置および当該装置を組み込んだ蒸気タービン回転数制御装置によれば、蒸気タービンの実回転数と目標回転数との偏差が規定回転数以下の所定の回転数値となるまでGOV弁の開度減信号をGOV弁制御装置に対して出力することが可能となるので、従来のように弁切換時に蒸気タービンの実回転数が規定回転数を超えて上昇することがなく、その結果蒸気タービン内の蒸気流入部周辺などの一部の部材の急加熱による過大な応力の発生などの弊害を未然に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図1および図2を参照して本発明の蒸気加減弁開度制御装置について説明するが、本発明はこれらの図に示す実施形態に限定されない。なお、これらの図に示す実施形態の蒸気加減弁開度制御装置の入出力信号および内部の信号は、いずれもアナログでもデジタルでもよいが、以下ではアナログ信号の場合について説明する。また、これらの各図では、同一または共通の各部については同一の符号を用い、以下では重複した説明は省略している。
【0018】
図1は、蒸気加減弁開度制御装置の一実施形態を示す構成図である。この図において、蒸気加減弁開度制御装置19は、目標回転数信号発生手段30、AND条件スイッチング回路35、減算器37、条件設定判定手段39およびAND条件スイッチング回路41を備えており、条件設定判定手段39とAND条件スイッチング回路41とは、スイッチ手段38を構成している。この蒸気加減弁開度制御装置19には、弁開度減指令信号18およびタービン実回転数信号17が入力される。弁開度減指令信号18は、当該制御装置19内の2つのAND条件スイッチング回路35、41にそれぞれ供給されている。
【0019】
目標回転数信号発生手段30は、これに直接目標回転数を設定することができ、当該設定値に対応する一定信号を出力するよう機能するものである。このような機能を備えた公知の機器または機器の組み合わせをこの手段として用いることができる。
【0020】
前記目標回転数としては、タービンの規定回転数よりも相対的に小さい値が適宜設定される。例えば、タービンに2極の発電機が直結されている場合、規定回転数(定格回転数)3600rpmよりも低い回転数として、約3550〜3590rpm程度を設定するのがよい。この目標回転数は、GOV弁の仕様、蒸気流量の変動、タービンの形式などによっては前記数値範囲を超えて設定することができる。
【0021】
また、スイッチ手段38に含まれる条件設定判定手段39は、AND条件スイッチング回路35から出力された偏差信号38の大きさが当該手段39に設定された条件を具備する間は入力信号(弁開度減指令信号)をそのまま出力し、条件不備となった場合に当該信号の出力を停止するように機能するものである。出力される弁開度減指令信号は、必要に応じて適宜増幅することができる。このような機能を備えた公知の機器または機器の組み合わせをこの手段として用いることができる。
【0022】
前記条件は、前記規定回転数と前記目標回転数との差の範囲内の所定の回転数以上と設定することができる。この所定の回転数としては、GOV弁24の開度を絞り方向に制御する間のタービン25の回転数の変動などを考慮して、前記差の範囲内で予め適宜設定でき、約5〜20rpmに設定するのが好ましい。
【0023】
本実施形態では、目標回転数信号発生手段30から出力された目標回転数信号は弁開度減指令信号18の入力を条件として、AND条件スイッチング回路35から減算器37に出力される。一方、タービン実回転数信号17は、減算器37に入力される。減算器37では、これら2つの信号間の偏差(タービン実回転数と目標回転数との差に相当)が求められ、これが偏差信号として条件設定判定手段39に出力される。条件設定判定手段39では、この偏差信号が前記条件を具備するか否かが判定され、具備する間、出力信号がAND条件スイッチング回路41に出力され、不備の場合には前記信号は出力されない。AND条件スイッチング回路41では、弁開度減指令信号18aおよび前記条件具備の場合の出力信号40の2つの信号の入力を条件として、弁開度減指令信号14が出力される。
【0024】
図2は、本発明の蒸気加減弁開度制御装置の実施形態の別の例を示す構成図である。この図に示す実施形態では、
(1)タービン実回転数信号17は、信号ホールド回路31、減算器32および低減回転数信号発生手段33から構成される目標回転数発生手段30に入力され、信号ホールド回路31にて一定に保持された状態で出力され、また低減回転数信号発生手段33からの出力信号が減算される点、および
(2)タービン実回転数信号17は、前記信号ホールド回路31に入力されるとともに、その前流において分岐され(分岐されたタービン実回転数信号に符号17aを付している)、減算器37に入力される点が、図1に示す実施形態と相違しており、それ以外については本質的に変わることころはない。
【0025】
タービン実回転数信号17が信号ホールド回路31に入力されると、当該信号は一定に保持された状態で減算器32に出力される。低減回転数信号発生手段33では、この一定に保持された実回転数信号に対して低減すべき回転数を適宜設定可能とされ、当該回転数に相当する一定信号が減算器32に出力される。この低減させるべき回転数は、通常、約10〜50rpm、好ましくは10〜30rpmの間で適宜設定される。この低減回転数信号発生手段33としては、前記のような機能を果たすものであれば、公知の機器または機器の組み合わせをこの手段として用いることができる。減算器32では、タービン実回転数信号17から低減回転数信号発生手段33からの出力信号が減算され、その結果が目標回転数信号34としてAND条件スイッチング回路35に出力される。
【0026】
AND条件スイッチング回路35では、これに目標回転数信号34とともに弁開度減指令信号18が入力されると、これらの2つの信号の入力を条件として弁開度減指令信号36がそのまま減算器37に出力される。一方、タービン実回転数信号17は、目標回転数信号発生手段30において分岐され、減算器37に入力される。減算器37では、タービン回転数信号17から目標回転数信号が減算され、その結果が偏差信号として条件設定判定手段39に出力される。条件設定判定手段39では、図1に示した実施形態と同様に、入力された偏差信号が予め設定された条件を具備するか否かが判定され、この条件を具備している間、AND条件スイッチング回路41に対して条件具備信号40を出力する。この条件具備信号40の入力を受けたAND条件スイッチング回路41では、当該信号40と弁開度減指令信号18aとがいずれも入力されたことを条件として、弁開度減指令信号18aをそのまま、または必要に応じて増幅して出力する(符号14)。
【0027】
このように、本発明の蒸気加減弁開度制御装置19は、タービンの実回転数について所望の偏差を発生させ、当該偏差がタービンの規定回転数よりも低い所定の条件を具備する間は、弁開度減指令信号14を出力し、前記条件を不備しなくなった場合に弁開度減指令信号の出力を停止するようにしている。このような構成の蒸気加減弁開度制御装置19を調速装置の前流に設けることで、弁切換時にタービン回転数がその規定回転数以上に上昇する現象を防止することができる。
【0028】
次に、図3を参照して、前記の蒸気加減弁開度制御装置19を組み込んだ本発明のタービン起動制御システムの実施形態について説明する。この図に示すタービン起動制御システム1は、説明を簡便にするために、蒸気加減弁開度制御装置19を組み込み、当該装置19にタービン制御装置10からの弁開度減指令信号18および回転数検出器27からのタービン実回転数信号17が入力されるようにした以外は、その基本構成は図5に示す制御システムと同様としている。この弁開度減指令信号18は、タービンの弁切替時にのみタービン制御装置10から発せられ、弁切替が完了し、タービン25が定常運転に移行した後は、タービン制御装置10内部でこの信号18の出力が停止され、調速装置に対して直接制御信号13が発せられるようになっている。なお、この図に示す蒸気加減弁開度制御装置19としては、図1または図2に示した本発明の実施形態などが好適に使用できるので、その構成などについての重複した説明は省略する。
【0029】
本発明の蒸気タービン起動制御システム1は、主蒸気管22に設置された主蒸気止め弁23は、これを駆動して弁開度を制御する制御装置12を備えている。また、主蒸気管22において主蒸気止め弁23の後流に直列に設置された蒸気加減弁24は、当該本発明の蒸気加減弁開度制御装置19および調速装置15を備えている。本発明の蒸気加減弁開度制御装置19および調速装置15には、蒸気タービン25の回転軸に設けられた回転数検出器27から実回転数信号が信号線16、17によってそれぞれ入力されるようになっている。MSV弁23の制御部12および蒸気加減弁開度制御装置19の上位には、タービン起動制御装置10が設置され、当該タービン起動制御装置10によって前記2つの弁の開度制御が行われる。なお、本発明の蒸気加減弁開度制御装置19は、タービン起動制御装置10内に内蔵されていてもよい。
【0030】
回転数検出器27としては、公知の装置、例えば、速度発電機やパルス式回転計などが好適に使用できる。また、機械油圧式ガバナに付属するガバナインペラーを用いることもできる。このガバナインペラーを回転数検出器として用いる場合、必要であれば、油圧を圧電変換器により電気信号に変換して、この電気信号をタービン実回転数信号とすることもできる。
【0031】
所定のタービン起動準備が完了した後、ターニング運転状態とされたタービン25に蒸気の送気が開始される。このタービン起動時には、タービン起動制御装置10から弁開度を全開にする弁開度制御指令信号18が調速装置15に対して出力され、この調速装置15によってGOV弁24の開度は全開とされる。その一方、MSV弁23に対しては、起動時全閉状態から所定の起動スケジュールに従い弁開度制御指令信号11が別途発せられ、徐々に主蒸気止め弁23の開度を増加していく。
【0032】
タービンが規定回転数(定格回転数)に達した後、弁開度制御を主蒸気止め弁23から蒸気加減弁24に切替える弁切替が行われる。この弁切替によって、タービン25内では蒸気は全周噴射から部分噴射に切り替えられる。弁切替時には、まずタービン起動制御装置10から本発明の蒸気加減弁開度制御装置19に対して弁開度減指令信号18が発せられる。
【0033】
本発明の蒸気加減弁開度制御装置19では、この弁開度減指令信号18の入力を受けてタービンの目標回転数と実回転数の偏差を発生させ、この偏差が予め設定した条件を具備する間は、この弁開度減指令信号14を調速装置15に対して出力する。調速装置15では、蒸気加減弁開度制御装置19から出力された弁開度減指令信号14の入力を受けてGOV弁24を絞る方向に駆動させ、その開度を絞っていく。蒸気加減弁開度制御装置19において前記回転数の条件を具備しなくなった場合には、弁開度減指令信号14の出力は停止される。
【0034】
タービン起動制御装置10から弁開度減指令信号13が出力され、タービン25の実回転数が下がり始めた後、所定のタイミングでタービン起動制御装置10はMSV弁23の制御部に対してMSV弁23を全開とする弁開度指令信号11を出力する。MSV弁23の制御装置12では、この弁開度指令信号11の入力を受けてMSV弁23の開度を全開とするようにMSV弁23を駆動させる。
【0035】
これらの弁開度の制御により、弁切替時にタービン25の実回転数は、前記回転数の条件設定によって規定回転数である定格回転数よりも僅かに低い回転数で駆動されることとなる。
【0036】
以上説明したように、本発明の蒸気加減弁開度制御装置、およびこれを組み込んだ本発明のタービン起動制御システムによれば、従来の調速装置のようにGOV弁の開度をその無負荷規定位置まで機械的に絞る方式と比べてタービンの規定回転数を超える回転数上昇といった問題が生じず、その結果、タービン内部の一部の部材の局所的な加熱による過大な応力の発生といった弊害が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の蒸気加減弁開度制御装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明の蒸気加減弁開度制御装置の別の実施形態を示す構成図である。
【図3】本発明のタービン起動制御システムの一実施形態を示す図である。
【図4】本発明のタービン起動制御システムを稼動した場合の弁切替時におけるMSV弁およびGOV弁の開度およびタービン回転数の関係を示す図である。
【図5】従来のタービン起動制御システムの一例を示す図である。
【図6】従来の弁切替時におけるMSV弁およびGOV弁の開度およびタービン回転数の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 本発明のタービン起動制御システム
2 従来のタービン起動制御システム
10 タービン起動制御装置
11 主蒸気止め弁開度制御指令信号
12 主蒸気止め弁開度制御装置
13 ガバナランバック信号
14 弁開度減指令信号
15 調速装置(ガバナ)
18、18a 弁開度制御指令信号
19 蒸気加減弁開度制御装置
22 主蒸気管
23 主蒸気止め弁
24 蒸気加減弁
25 蒸気タービン
26 発電機
27 回転数検出器
30 目標回転数信号発生手段
31 ホールド回路
32 減算器
33 定数発生手段
34 目標回転数信号
35 AND条件スイッチング回路
36 目標回転数信号
37 減算器
38 偏差信号
39 条件設定判定回路
41 AND条件スイッチング回路
42 スイッチ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンの回転数が規定回転数に達した後の弁切替時に蒸気加減弁の弁開度を全開から絞り方向に制御する制御装置であって、前記規定回転数よりも相対的に小さい目標回転数信号を発生させる目標回転数信号発生手段と、前記蒸気加減弁への弁開度減指令信号および蒸気タービンの実回転数信号の入力を受けて当該実回転数信号と前記目標回転数信号との偏差を発生させてこれを偏差信号として出力する偏差発生手段と、前記出力された偏差信号が所定の条件を具備する場合に前記弁開度減指令信号を前記蒸気加減弁の開度制御を行う調速装置に対して出力するスイッチ手段とを備えてなることを特徴とする蒸気加減弁開度制御装置。
【請求項2】
前記目標回転数信号発生手段は、これに前記実回転数信号および前記弁開度減指令信号が入力され、前記弁開度減指令信号が入力された時点での前記実回転数信号を一定に保持しておき、この保持された実回転数信号から予め適宜設定された低減回転数信号を減算して目標回転数信号として出力するものである請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記条件は、前記規定回転数と前記目標回転数との差の範囲内で適宜設定可能な回転数以上とされる請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記調速装置は、機械油圧式ガバナである請求項1〜3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
蒸気タービン起動後の主蒸気止め弁から蒸気加減弁に開度制御を切り替える弁切替時における蒸気タービンの回転数を制御する起動制御システムであって、前記蒸気加減弁の弁開度減指令信号および前記主蒸気止め弁の弁開度全開指令信号を発生する弁開度指令信号発生手段と、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気加減弁開度制御装置と、前記弁開度全開指令信号の入力を受けて前記主蒸気止め弁の弁開度を全開に制御する主蒸気止め弁の制御装置とを備えてなることを特徴とする蒸気タービン起動制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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