説明

蒸気回収装置および炊飯器

【課題】簡素な装置構成でありながら、震動や騒音が発生するという問題を解消することができる蒸気回収装置を提供する。
【解決手段】蒸気回収装置1は、水タンク60と、水タンク60に蓄えられた水Wの中に挿入され、下端に浸漬管下端開口部71を具備する浸漬管70と、浸漬管70の内部で下端から所定の距離だけ上の位置に設置され、複数の通気孔72が形成された逆流防止板73と、浸漬管70の天面74に設置されたガス管80と、を有している。浸漬管70は、浸漬管上筒状部70cと、スカート状拡がり部70bと、スカート状拡がり部70bの下端に連続したスカート筒状部70aと、に区分される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気回収装置および炊飯器、特に、蒸気を凝縮させて回収する蒸気回収装置および該蒸気回収装置を装備する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、炊飯中に発生する蒸気を炊飯器の周囲に放出させないようにするために、蒸気を凝縮(結露または復水に同じ)させる熱交換手段を有する炊飯器、たとえば、水タンクの底に設けた穴から蒸気を水中に流入させる蒸気回収装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、熱交換装置の水タンクの中に侵入する蒸気排出路の蒸気排出孔を、熱交換装置の水タンクの底面近くに配置して水中に蒸気を排出する蒸気回収装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、蓄熱材が封入されている容器を貫通する蒸気パイプを設け、蒸気パイプを通過する蒸気の温熱を蓄熱材に伝達して、蒸気を凝縮(結露)させる加熱調理機器が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−106532号公報(第2―4頁、図1)
【特許文献2】特開平03−231613号公報(第2頁、図1)
【特許文献3】特開平03−182212号公報(第2―3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜特許文献3に開示された発明には、以下のような問題があった。
(i)特許文献1および特許文献2に開示された発明は、蒸気を水中に注入して凝縮させるものであるため、蒸気を水中に注入する際、水中に気泡(正確には、泡状の蒸気の塊)が一旦形成され、その後、気泡が水面に上がる間に周囲の水によって気泡内の蒸気が凝縮され蒸気を回収する構成となっている。よって、蒸気を回収する際に、気泡の発生や消滅の際に発生する振動や音(いわゆる「ぽこぽこ音」)が発生するという問題がある。
(ii)特許文献1に開示された発明は、炊飯前に、水タンクの底に設けた穴から水が水タンクの外に流出しないようにする逆止弁を設けたり、水タンクの底に蒸気を導く通路を水タンクと一体的に形成したりする必要があり、装置の構成が複雑になるという問題があった。このため、製造コストが上昇すると共に、使用後の洗浄が面倒になっていた(屈曲した奥部に洗い残しが生ずる)。
【0005】
(iii)また、特許文献2に開示された発明は、蒸気を水中に強制的に吐出するための送風機を設けるため、部品点数が増すという問題があった。
(iv)また、水と蒸気を含んだガスとの温度差が大きいとき、蒸気排出路の温度が下がって減圧した際、蒸気排出路に水が逆流するのみならず、かかる逆流時に水が蒸気排出路内に衝突し比較的周波数の高い音(いわゆる「水撃音」)が発生するという問題がある。
【0006】
(v)さらに、特許文献3に開示された発明は、前記「震動や騒音が発生するという問題」や前記「水が逆流するという問題」は解消されるものの、装置の構成が複雑になるという問題があった。このため、製造コストが上昇すると共に、使用後の洗浄が困難になっていた(特に、蒸気パイプを容器から分離して、蒸気パイプの内面を洗うことができない)。
【0007】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、簡素な装置構成でありながら、蒸気回収時に発生する騒音を抑制することができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蒸気回収装置は、蒸気を復水させるための冷却水を収容する水タンクと前記水タンク内の冷却水に少なくとも先端開口が水没するように配置される浸漬管と、前記浸漬管と連通し、蒸気を含む気体を前記浸漬管に誘導するガス管とを有し、前記浸漬管内に、前記蒸気を含む気体の通過量を絞る逆流防止板を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る蒸気回収装置は、浸漬管内に逆流防止板を設けることにより逆流防止板より蒸気発生側の圧力を高めて、水タンク内の水が逆流防止板を通過して逆流することを防止し、いわゆる水撃音の発生を抑えることができるものであります。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係る蒸気回収装置の構成を模式的に示す断面図。
【図2】本発明の実施形態1に係る蒸気回収装置の構成を模式的に示す断面図。
【図3】図1に示す蒸気回収装置の実施例を模式的に示す側面図。
【図4】図1に示す蒸気回収装置の作用効果を調査した結果を示す相関図。
【図5】図1に示す蒸気回収装置の作用効果を説明するための断面図。
【図6】本発明の実施形態2に係る炊飯器を説明する模式的に示す正面図。
【図7】本発明の実施形態2に係る炊飯器を説明する模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態1:蒸気回収装置]
図1〜図5は本発明の実施形態1に係る蒸気回収装置を説明するものであって、図1および図2は構成を模式的に示す側面視の断面図、図3は実施例を模式的に示す側面図、図4は作用効果を調査した結果を示す相関図、図5は作用効果を説明するために模式的に示した側面視の断面図である。なお、各図において同じ部分にはこれと同じ符号を付している。
【0012】
図1において、蒸気回収装置1は、水Wを蓄える水タンク60と、水タンク60に蓄えられた水Wの中に挿入され、下端に浸漬管下端開口部(開口部に同じ)71を具備する浸漬管70と、浸漬管70の内部で下端開口部71から所定の距離だけ上の位置に設置され、複数の通気孔72が形成された逆流防止板73と、浸漬管70の天面74に設置され、蒸気を含む気体(図中の矢印)を誘導するガス管80と、を有する。
すなわち、浸漬管70は逆流防止板73よりも上部を形成する浸漬管上筒状部70cと、浸漬管上筒状部70cの下端に連続して下方になるほど水平管内断面の面積が大きくなるスカート状拡がり部70bと、スカート状拡がり部70bの下端に連続して筒状(上下方向で水平管内断面の面積が一定)のスカート筒状部70aと、を有している。すなわち、スカート筒状部70aの下端が浸漬管下端開口部71に相当している。
【0013】
したがって、蒸気回収装置1で蒸気を回収する場合、水タンク60に蓄えられた水Wの水面にかかっている大気圧に対し、浸漬管上筒状部70cに供給された蒸気を含むガス(全量が蒸気であるものを含む)は大気圧より高圧になっているので浸漬管70内の水面W1を浸漬管下端開口部71側に押し下げると共に、蒸気を含むガスは逆流防止板73に形成された通気孔72を経由して、スカート状拡がり部70bおよびスカート筒状部70aに吹き出し、水面W1との熱交換により凝縮され水タンク60内に回収される。
このとき、逆流防止板73には複数の通気孔72が形成されることで、浸漬管上筒状部70cの圧力がスカート状広がり部70bの圧力よりも高くなり蒸気を含むガス成分が下流方向へ吹き出しているので、水Wと蒸気を含んだガスとの温度差が大きくスカート状拡がり部70bおよびスカート筒状部70a内が急激に減圧した場合でも、水Wは逆流防止板73の通気孔72からの吹き出しによって押さえつけられ逆流防止板73に衝突することがなく、また逆流防止板73より上流が高圧に保たれているので水Wが通過孔72を通過して浸漬管上筒状部70c内に噴き上げることがない。すなわち、いわゆる水撃音の発生が抑えられる(これについては別途詳細に説明する)。
【0014】
また、逆流防止板73は浸漬管下端開口部71から所定の距離だけ上の位置に設置されているから、スカート状拡がり部70bおよびスカート筒状部70aに大きな空間(所定の体積空間)が確保されるため、この空間によって蒸気が凝縮する。つまり、浸漬管70の管内断面の面積(つまりは水面W1の水面面積)と水タンク60に蓄えられた水Wの水面と浸漬管下端開口部71との距離によって蒸気回収時の浸漬管70内の水面W1の位置が決まるので、蒸気回収時の浸漬管70内の水面W1に対して上流側に逆流防止板73を設ければ水撃音を抑制することができ、水面W1より下流側に浸漬管下端開口部71がくるように構成すれば、蒸気が浸漬管下端開口部71から溢れることがなく、いわゆるポコポコ音の発生が抑えられる(これについては別途詳細に説明する)。
【0015】
また、水タンク60内の水Wは蒸気を回収していくと増加していくので、逆流防止板73は蒸気回収時の浸漬管70内の水面W1が最も高くなる水タンク60満水時(水Wの水位上限値)の水面W1の位置より上流側に設置することで、水タンク60が満水になるまで水撃音の発生を抑制することが出来る。また、蒸気回収時の浸漬管70内の水面W1の位置は、供給される蒸気を含むガスの圧力によって変わるので、その圧力条件に併せて浸漬管70の管内断面の面積(つまりは水面W1の水面面積)や水タンク60に蓄えられた水Wの水面と浸漬管下端開口部71との距離を決定したり、ガスの圧力が高くなると浸漬管70内の水面W1面積が小さくなる構造を設けることによって、供給される蒸気を含むガスがどのような物であっても、水撃音やポコポコ音の発生を抑制しつつ蒸気を回収することができる。
【0016】
また、例えば蒸気と共にゴミなどの不純物が混ざって流入する状況の場合、通気孔72が一つだと不純物によって通気孔72が詰まってしまい、蒸気が水Wまで到達できなくなり蒸気回収できなくなる可能性があるが、逆流防止板73に複数の通気孔72を形成することによって、不純物によって一つの通気孔72が詰まったとしても、他の通気孔72は開口したままなのでその機能性を損なうこと無く、継続して蒸気回収に伴う音の発生を抑制することが出来る。
【0017】
次に、上記に記載されている浸漬管70の変形例について説明する。
図2の(a)において、蒸気回収装置2は、蒸気回収装置1におけるスカート筒状部70aを撤去して、スカート状拡がり部70bの浸漬管下端開口部71を形成するものである。
図2の(b)において、蒸気回収装置3は、蒸気回収装置1におけるスカート筒状部70a、スカート状拡がり部70bおよび浸漬管上筒状部70cの全部を滑らかに拡径する、ラッパ状部(朝顔状に同じ)70dに、したものである。
図2の(c)において、蒸気回収装置4は、蒸気回収装置1におけるスカート状拡がり部70bを撤去して、スカート筒状部70aの浸漬管下端開口部71を形成するものである。
【0018】
なお、図1、図2の浸漬管70では、浸漬管70の一部管内断面の面積が大きくなるよう形成されたものであるが、浸漬管70の管内断面の面積を一様に所定の水面面積以上に構成しても良い。ただし、図1、図2に記載の浸漬管70のように一部管内断面の面積が大きくなるよう形成した方が浸漬管70の体積が小さくなり、これにより同じ水タンク60の容積でもより多くの水Wを蓄えることが可能となる。したがって、同じ水タンク60の容積でもより多くの蒸気を回収することが出来たり、蒸気回収可能な量を減らさずに水タンク60をコンパクトに構成することが出来るという効果が得られる。
【0019】
また、図1、図2の浸漬管70のように、浸漬管下端開口部71がもっとも管内断面の面積が大きくなるように構成することにより、浸漬管70内部の洗浄が容易になるという効果が得られる。
また、図2(a)、図2(b)のように浸漬管70の管内断面の面積が上流から下流に徐所に大きくなるように形成することにより、浸漬管70をコンパクトに形成することが出来るという効果が得られる。
また、本発明は蒸気回収装置1〜3の平面視の形状を限定するものではなく、例えば、略矩形状の水タンク60に略円形の浸漬管70を挿入してもよい。
【0020】
また、逆流防止板73は、スカート状拡がり部70bと浸漬管上筒状部70cとの境界に配置されるものに限定するものではなく、蒸気回収のときに浸漬管70内の水面W1が逆流防止板73と浸漬管下端開口部71の間になるように構成すれば浸漬管70のどの位置に配置されてもよい。さらに、ガス管80は浸漬管70の天面(浸漬管上筒状部70cの天面に同じ)24に設置されるものに限定するものではなく、浸漬管上筒状部70cの側面で逆流防止板73よりも天面74寄りに設置されてもよい。
さらに、前記作用効果(浸漬管上筒状部70cの圧力を高め、水Wの逆流を防止することができる)を奏するもの、例えば、メッシュやハニカム構造体等であれば、通気孔72が形成された逆流防止板73に替えて、設置することができる。また、別途逆流防止板73を設けるのではなく、浸漬管70の一部を絞って管内断面の面積を小さくすることで逆流防止板73と同様の効果を得るものでも良い。
【0021】
(実施例)
図3は、蒸気回収装置2の実施例を模式的に示す側面図である。図3において、スカート状拡がり部70bは円錐形であって、その下端である浸漬管下端開口部71の直径は40〜50mm(1260〜1960mm2)、スカート状拡がり部70bの高さは20〜30mm、スカート状拡がり部70bと浸漬管上筒状部70cとの境界に配置された逆流防止板73は直径18〜20mmで、直径2〜3mmの通気孔72が6〜9個形成されている。そして、浸漬管上筒状部70cの内径は18〜20mmである。
なお、水面W1が位置するスカート筒状部71aの開口面積が小さい(水面面積が小さい)場合、スカート状拡がり部70bに噴き出された蒸気と水面W1との接触面積が不足することになる。そうすると、蒸気の発生速度に対して蒸気の凝縮速度が間に合わず、かかる蒸気および空気の一部は、気泡(凝縮しないまま)として水Wに侵入し、前記ポコポコ音の原因になる。
一方、逆流防止板73が無かったり通気孔72の内径が適切でない場合には、浸漬管上筒状部70cにおける圧力上昇が期待されない。そうすると、浸漬管上筒状部70cにおいて急激な蒸気の凝縮が発生した場合、水Wが逆流防止板73に衝突したり通気孔72を通過して浸漬管上筒状部70cに浸入して、前記水撃音の原因になる。
【0022】
図4は、蒸気回収装置2の作用効果を調査した結果であって、図4の(a)は、浸漬管下端開口部71の面積と騒音との関係を示す相関図、図4の(b)は、浸漬管下端開口部71と逆流防止板73との距離と騒音との関係を示す相関図である。
図4の(a)および(b)において、騒音を許容範囲Lc[dB]以下にするには、スカート部水面面積が1800mm2以上で、スカート高さを20mm以上にすればよいことが示されている。なお、図4は通気孔72の内径が2mmの場合であるが、通気孔72の内径が3mmの場合も略同様である。
【0023】
図5は、蒸気回収装置2の浸漬管70の作用効果を説明するために模式的に示した側面視の断面図である。なお、ここでは、図1の浸漬管の形状にて説明する。
図5の(a)において、通気孔72の数量が少な過ぎる、あるいは通気孔72の内径が小さ過ぎると、通気孔72を通過して噴出する蒸気の勢いが強くなり、蒸気噴流(矢印)が水面W1に突入することになり「突入音」が発生する。
図5の(b)において、スカート筒状部70aの高さが低過ぎると、通気孔72を通過して噴出する蒸気(矢印)が水面W1に突入することになり「突入音」が発生する。
図5の(c)において、通気孔72の数量および内径、スカート筒状部70aの高さ、およびスカート筒状部70a内の水面W1の水面面積が、適切に設定されると、噴出蒸気(矢印)と水面W1との突入時の音(突入音)が全く出なくなる。
【0024】
つまり、浸漬管70内の水面W1の面積と、水面W1と逆流防止板73までの距離と、逆流防止板73に形成された通気孔72の開口面積及び数を調節して、逆流防止板73の通気孔72から噴出した蒸気が直接浸漬管70内の水面W1に突入しないように調節することにより、蒸気が水Wの中に突入することで発生する「突入音」を防止することができる。また、例えば蒸気の発生量を抑制できるものであれば、蒸気の発生を調整(多くは蒸気の発生を減少)することで、「突入音」を防止しても良い。
【0025】
[実施の形態2:炊飯器]
(炊飯器)
図6および図7は本発明の実施形態2に係る炊飯器を説明するものであって、図6は正面図、図7の(a)は模式的に示す側面視の断面図、図7の(b)は模式的に示す平面視の断面図である。
図6および図7において、炊飯器100は、上部が開口した本体20と、本体20に設置され、被炊飯物Rを収納する内釜30と、本体20に回動自在に軸支され、内釜30の上部開口部を開閉自在に覆う蓋体10と、被炊飯物Rを加熱する加熱手段21と、加熱手段21を制御する図示しない制御手段と、を有している。
さらに、被炊飯物Rが加熱された際(正確には被炊飯物Rと共に水Xも加熱された際)、内釜30から排出される空気Aを誘導すると共に被炊飯物Rおよび水Xから生じる蒸気Vを誘導するガス管40と、ガス管40によって誘導された空気Aおよび蒸気Vが注入される蒸気回収装置1(実施の形態1参照)と、を有している。
【0026】
(ガス管)
ガス管40は、蓋体10に着脱自在に設けられており、蓋体10を閉じることによって水タンク60の水タンク蓋62と一体に構成された蒸気回収装置1の浸漬管70と連通する構成となっている。なお、実施の形態2では水タンク蓋62と浸漬管70は一体に構成されているが、これに限らずガス管40と浸漬管70が連通すればよく、例えば、水タンク蓋62と浸漬管70を別体で構成し、水タンク蓋62に開口した穴を介してガス管40と浸漬管70が連通しても良い。ガス管40と浸漬管70との接続部にはシール手段41(例えば、Oリング)が設けられ、蒸気Vの漏洩を防止している。これにより、ガス管40が汚れても容易に洗浄することが可能になると共に、ガス管40を設置した状態で内鍋30へのアクセスが出来るようになり、使用者の利便性を大きく向上することができる。
なお、ガス管40の形状等は、図示するものに限定するものではなく、「お粘取り手段」やガス放出弁等は、適宜設置されてもよい。
【0027】
(水タンク)
図7において、水タンク60は、上方が開口した函状の水タンク本体61と、水タンク本体61の開口部を覆う水タンク蓋(水タンク天板に相当する)62と、水タンク蓋と一体に構成された浸漬管70と、水タンク本体61の水タンク前面63に形成された水タンク手掛かり64と、を有する。そして、水タンク60が本体20の開口部22に設置された際、本体前面21と水タンク前面63とは略同一面を形成するから意匠性が担保されている。なお、水タンク手掛かり64の形状は、図示するものに限定するものではない。また、浸漬管70は水タンク60から取り外し可能に構成されているので、容易に洗浄することができる。さらに、蒸気回収装置となる水タンク60自体を本体20から取出すことができるので、水タンク60に溜める冷却水の交換が容易であるとか、水タンク60自体の清掃が容易になるという効果が得られる。
【0028】
また、水タンク60は、透過性を有する材料(たとえば、ABS,PPなどの樹脂系材料)によって形成され、水タンク60内に貯まった水量を一目で把握できる構成になっている。また、浸漬管70は、良熱伝導性材料(たとえば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属)によって形成され、浸漬管70と水タンク60内の水Wとの熱交換速度を速め、蒸気Vの凝縮を促進する。これにより、蒸気Vと水面W1の接触面積を小さくしても十分な凝縮速度を得ることが出来るので浸漬管70をコンパクトにすることができ、したがって水タンク60に貯めることができる水Wの水量を維持しながらコンパクトにすることができる。
【0029】
(蒸気処理)
炊飯が始まると、ガス管40によって誘導された内釜30内の空気Aや発生した蒸気Vは、蒸気回収装置1に注入される。そして、注入された蒸気Vは、水タンク60内の水Wによって冷却されて凝縮(復水)する。
このとき、スカート状拡がり部70bによって蒸気Vと水面W1との接触面積を大きくして浸漬管70内に水面W1を維持しながら蒸気Vを凝縮する構成とすることにより前記ポコポコ音の発生を防止し、また、逆流防止板73を設けることによって、急激な凝縮が発生しても水Wが逆流防止板73に衝突したり、逆流防止板73を通過して浸漬管上筒状部70cに浸入しないから前記水撃音の発生を防止し、さらに、逆流防止板73を水面W1より上流の適切な位置に設けることによって蒸気噴流が水面に突入することに起因する突入音の発生も防止することができる。
【0030】
したがって、炊飯器100は従来の蒸気回収技術を用いた炊飯器より炊飯時の蒸気回収に伴って発生する騒音を小さくすることができる。
なお、蒸気回収装置1に替えて、蒸気回収装置2または3を設置してもよい。また、水タンク60の配置位置や設置方法はこれに限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上より、本発明の蒸気回収装置は、静かに蒸気を水中に回収することができるから、家庭用または業務用の各種蒸気回収装置(復水装置)として、炊飯器および各種調理器は勿論、炊飯や調理以外を目的とする各種装置おける蒸気回収装置(復水装置)として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1:蒸気回収装置(実施の形態1)、2:蒸気回収装置(実施の形態1)、3:蒸気回収装置(実施の形態1)、10:蓋体、20:本体、21:加熱手段、22:開口部、30:内釜、40:ガス管、41:シール手段、60:水タンク、61:水タンク本体、63:水タンク前面、70:浸漬管、70a:スカート筒状部、70b:スカート状拡がり部、70c:浸漬管上筒状部、71:浸漬管下端開口部、72:通気孔、73:逆流防止板、74:天面、100:炊飯器(実施の形態2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を復水させるための冷却水を収容する水タンクと、
前記水タンク内の冷却水に少なくとも先端開口が水没するように配置される浸漬管と、 前記浸漬管と連通し、蒸気を含む気体を前記浸漬管に誘導するガス管とを有し、
前記浸漬管内に、前記蒸気を含む気体の通過量を絞る逆流防止板を備えたことを特徴とする蒸気回収装置。
【請求項2】
前記逆流防止板は、前記蒸気を含む気体が浸漬管内に誘導されるとき、前記浸漬管内の水面が前記逆流防止板と前記浸漬管の先端開口との間に位置するように形成したことを特徴とした請求項1記載の蒸気回収装置。
【請求項3】
前記逆流防止板は、前記冷却水が前記水タンク内に貯留可能な上限値まで貯留した状態で且つ前記蒸気を含む気体が前記浸漬管内に誘導されるときの該浸漬管内の水面位置より、上流側に設置されることを特徴とする請求項1または2記載の蒸気回収装置。
【請求項4】
前記浸漬管は、前記蒸気を含む気体が浸漬管内に誘導されるときに、前記浸漬管内にある水面が所定の水面面積を確保するよう、前記浸漬管の管内断面積を一部拡大する形状にしたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の蒸気回収装置。
【請求項5】
前記浸漬管は、その管内断面積が、前記逆流防止板の上流側より下流側を大きくすることを特徴とする請求項4記載の蒸気回収装置。
【請求項6】
前記浸漬管は、前記浸漬管の先端開口部の管内断面積が一番大きいことを特徴とする請求項4記載の蒸気回収装置。
【請求項7】
前記浸漬管の管内断面積は、前記浸漬管の先端開口部に向かって徐々に大きくなるように形成することを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載の蒸気回収装置。
【請求項8】
前記逆流防止板に通気孔を複数穿設し、該通気孔の開口面積および数により、前記蒸気を含む気体の通過量を適正通過量に調整することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の蒸気回収装置。
【請求項9】
前記通気孔から噴出した蒸気が直接前記浸漬管内の水面に突入しないよう、前記浸漬管内の水面面積と、該水面と前記逆流防止板までの距離と、前記通気孔の開口面積および数を調整することを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の蒸気回収装置。
【請求項10】
被炊飯物を収納する内釜と、
被炊飯物を加熱する加熱手段と、
前記内釜が載置され前記加熱手段を装備する本体と、
該本体に設置され、前記内釜の上部開口部を開閉自在に覆う蓋体と、
前記本体内に設置された請求項1乃至9の何れかに記載の蒸気回収装置と、
を有し、
前記ガス管は、前記被炊飯物が加熱された際、前記内釜から排出される空気および前記被炊飯物から生じる蒸気を誘導することを特徴とする炊飯器。
【請求項11】
前記ガス管は、前記蓋体内に配置され、前記浸漬管と着脱自在に接続されることを特徴とする請求項10記載の炊飯器。
【請求項12】
前記浸漬管は前記水タンクから着脱自在に形成されることを特徴とする請求項10または11記載の炊飯器。
【請求項13】
前記蒸気回収装置は前記本体に着脱自在に設置されることを特徴とする請求項10乃至12の何れかに記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−69285(P2010−69285A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7702(P2009−7702)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】