説明

蒸気相殺菌を行うための方法および装置

【課題】殺菌サイクル中に水蒸気及び殺菌ガスの混合物の除去工程を不要とする。
【解決手段】殺菌ガスを流し密封チャンバ10を殺菌する装置であって、ガス流れ回路12と密封チャンバ10を通過させガスを循環させるために、閉回路とファン19,20と平行なブランチ17,18とを有し、一方のブランチは、ガス流れ回路12を通過し流れるキャリヤガスに添加される殺菌剤を不活性化するシステム22と、上記ガスの湿気を除去するシステム23とを含み、他方のブランチは、ガスを加熱するヒータ25と、ガスに殺菌剤の蒸気を供給する蒸発装置26とを有する。さらに、密封チャンバ10から出てくるガスの相対湿度を測定する温度および湿度センサ14と、密封チャンバ10内に所定量の凝集物が形成されたか否かを判定するために密封チャンバ10内の凝縮物を測定する凝縮測定システム16とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その1つの成分が水である2つの成分または複数の成分の蒸気を使用するチャンバ内部を殺菌するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬品業界、生物工学業界および食品業界並びに医療の世界内においては、その内容物を含めてチャンバの内部を殺菌するための用途は多数ある。多数の化合物が殺菌剤として使用されてきたが、その内のあるものは部分的に有効であり、ほかのものは重大な副作用を持つ。何故なら、これらのものは、毒性があったり、腐食性を持っていたり、または他の環境に対する悪影響を持っているからである。ホルムアルデヒドは、長い間、コストの安い非常に有効な殺菌剤として使用されてきたが、その安全性について疑惑を持たれていて、環境に対する長い残留性のために継続的に使用することができない。過酸化水素は、殺菌効果の高い、簡単でコストの易い化合物である。その主な利点は、全く無害な生成物である水と酸素に分解できることである。蒸気相の場合には、過酸化水素は、安全キャビネットからクリーン・ルームまでの広さの作業領域を処理するために使用することができる。すべての気相殺菌の場合には、汚染の深い部分は効果的に殺菌されず、気相殺菌の予備的殺菌として優れた清掃手順が必要である。
【0003】
過酸化水素による気相殺菌および汚染除去システムは、結露を防止するように設計されてきたので、還流システムおよび再循環システムを通る両方の蒸気の流れの濃度特に水の濃度が露点以下になるように構成されている。特許文献1から特許文献4が、このようなシステムを開示している。
【0004】
最近の研究は、室内、もっと小さなチャンバ、またはアイソレータの急速表面殺菌および汚染除去の場合には、過酸化水素のような気相汚染除去剤および水蒸気の混合物の凝縮が必要不可欠であることを証明している。現在では、過酸化水素によるガス状表面殺菌は、凝縮プロセスであると考えられているので、凝縮プロセスの利点を使用する目的で、それを最適化する方法をチェックするために、このプロセスを検討するのは十分理由のあることであると思われる。この知見は、過酸化水素ガスを使用する殺菌プロセスばかりでなく、その活性のために凝縮に依存する殺菌ガスの他の混合物にも適用することができる。
【0005】
特許文献1が開示している装置の場合には、空気/ガスの混合物は、殺菌対象の密封したチャンバを通して循環し、次に、ガス混合物を生成し、制御するために装置を通る。装置に戻るガスからは、すべての過酸化水素が除去され、もっと多くの水蒸気、および過酸化水素ガスが添加される前に乾燥が行われる。この清掃および乾燥プロセスは無駄である場合が多い。何故なら、循環ガスから除去される蒸気を置換しなければならないので、凝縮が密封チャンバ内で発生する場合があるからである。これらの蒸気を除去する唯一の理由は、過酸化水素ガスの濃度が分解のために減少している場合があるからである。
【0006】
蒸気の気相分解は、室温では発生しないこと、このような均質分解は、過酸化水素内で報告されているように、高温の時だけに発生することが、現在では分かっている(例えば、非特許文献1)。しかし、分解は、触媒的に表面で起こるが、その量は非常に少ないように見える。現在まで、どの観察者も、酸素濃度の測定できるほどの増大を観察していないし、測定した過酸化水素ガスの濃度は、空気の流れ内に蒸発する元の水溶液の飽和蒸気圧と非常によく一致する。それ故、すべての現象は、過酸化水素の蒸気相分解の量は非常に少ないことを示している。
【0007】
この殺菌プロセスは、過酸化水素蒸気の凝縮に依存しているので、最も重要なパラメータは、この凝縮を達成することができる速度である。密封エンクロージャ内で凝縮のために使用することができる過酸化水素蒸気の量は、チャンバに供給される蒸気濃度と、チャンバから出てゆく濃度により異なる。これら2つの量の違いは、凝縮のフィルムを形成するのに使用することができる過酸化水素の量である。
【0008】
チャンバに供給することができる蒸気の最大濃度は、チャンバに流入するガスの流れの温度により異なる。水性殺菌溶液の凝縮物は、ガスの流れ内に蒸発して、ガスの全水量になる。全システムを通して殺菌蒸気を送るために使用される、通常は、空気であるキャリヤガスは、乾燥システムを通過した後でも、決して完全な乾燥状態にならない。キャリヤガス内のこの追加の水分は、過酸化水素を少し希釈し、この追加の水分は、ガスが運ぶことができる過酸化水素の量を低減する。密封チャンバから出てゆく蒸気の濃度は、安定した状態になった後では、密封チャンバの出口のところの状態に対する飽和蒸気圧により決まる。それ故、僅かな量の分解だけが起こったと仮定した場合には、凝縮速度は、チャンバに供給されるガスの濃度、およびチャンバから出ていくガスの温度により異なる。
【0009】
通常、ガス状表面殺菌プロセスを考える場合に、重要な要因は2つある。第1の最も重要な要因は、確実にプロセスを成功させることであり、第2の要因は、できるだけ短時間の間に殺菌を行うことである。確実に殺菌を行うために最もよく使用される方法は、あるサイクルを開発し、生物学的インジケータにより性能を試験するという方法である。このサイクルの開発は、殺菌サイクルの各相の最適化を含む。これは複雑な問題である。何故なら、ガス濃度および流れの明白な考慮対象の他に、最適化プロセス中に考慮しなければならないパラメータが多数存在するからである。もっとハッキリしない考慮対象としては、相対湿度の初期値、すべての微生物の水分、凝縮速度、およびすべての微生物を殺菌するために、凝縮物が掛けることができる時間の長さ等がある。このサイクルの終わりに殺菌ガスを除去するために使用する方法も、全サイクル時間にハッキリした影響を持つ。
【0010】
次に、最適化されたサイクルは、流速、時間等のような同じ物理的パラメータにより固定されるが、例えば、サイクルの効果に影響を持つ外部温度のような、変化するかもしれない任意の外部要因は考慮に入れない。
【0011】
この固定方法の問題は、サイクル開発中に考慮に入れなかった外部の影響の中のあるものが変化すると、正しく開発した場合でも、うまくいかなくなる場合があることである。この問題を克服する最もよい方法は、同一のサイクルを実行するために、一組の所定の要因を使用するのではなく、実際に殺菌を行うこれらパラメータを測定し、サイクルを制御するためにこれらの測定値を使用することである。サイクルを制御するために上記測定値を使用する上記方法は、プロセスを取巻く状況の任意の変化に対抗するために、サイクルの詳細な点を変更しなければならなくなる。
【0012】
この手順は、また、信頼できるサイクル時間を確実に最短時間にするという利点を持つ。何故なら、上記プロセスは、効果がそれ以上に大きくならない点まで進行するからである。確実に効果をあげるために、サイクルに大きな安全のための余裕を与える必要はない。何故なら、効果のある点が、測定値から分かるからである。
【0013】
【特許文献1】欧州特許第0486623B1号
【特許文献2】英国特許第2217619B号
【特許文献3】国際公開第89/06140号パンフレット
【特許文献4】英国特許第2308066A号
【非特許文献1】WALTER C.SCHUMB、CHARLES N. SATTERFIELD、RALPH L.WENTWORTH、AMERICAN CHEMICAL協会、モノグラフ・シリーズ、カタログ・カード番号55−7807、8章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、センサを使用して殺菌サイクルを制御することであり、サイクルの重要な殺菌段階中に、水蒸気および殺菌ガスの混合物を除去するステップを必要としない再循環システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、密封可能なエンクロージャの殺菌方法を提供する。該方法は、まず、エンクロージャ内の相対湿度を約30〜40%に低減するステップと、前記エンクロージャにキャリヤガスを循環させるステップと、前記循環ガスの温度を周囲温度以上に上昇させるステップと、ガスを質的に飽和させるのに十分な1種類の殺菌蒸気または複数種類の殺菌蒸気を前記循環キャリヤガスに供給し、エンクロージャ内が冷却されると、前記エンクロージャにおける表面上に、前記殺菌蒸気の凝縮物が形成されるステップと、前記ガス/蒸気を前記エンクロージャ全体を通して分散することにより、前記エンクロージャの全表面上に確実に前記凝縮物を形成するステップと、前記エンクロージャの表面上に形成された凝縮物の量を測定し、前記エンクロージャ内に必要な量の凝縮物が形成されるまで前記ガス/蒸気を継続的に循環させるステップと、前記ガスへの殺菌蒸気の供給を停止する一方で、引き続き前記飽和ガス/蒸気を循環させて前記表面上に前記凝縮物を所定時間のあいだ維持するステップと、最後に、前記キャリヤガスから前記殺菌蒸気を抽出する一方で、前記キャリヤガスを引き続き前記エンクロージャを通過させて循環させ、前記凝縮物を前記エンクロージャから抽出するステップと、を含む。
【0016】
好適には、蒸気を廃棄することができる成分に分解することにより、キャリヤガスから殺菌蒸気を抽出することが好ましい。
【0017】
また、好適には、殺菌蒸気は、過酸化水素および水蒸気であることが好ましい。この場合、循環ガスと一緒に、チャンバから抽出した過酸化水素に対して、過酸化水素を水蒸気および酸素に分解するために触媒作用が行われる。水蒸気は、ガスがエンクロージャを通して再循環する前に、ガスから抽出される。
【0018】
エンクロージャ内の相対湿度を低減する最初のステップは、チャンバを通してキャリヤガスを循環し、チャンバの外部に、循環ガスから水蒸気を抽出することにより実行することができる。
【0019】
エンクロージャ内の相対湿度は、最初に約35%に低減させることができる。さらに、エンクロージャは、エンクロージャ内の表面を確実に乾燥させるために、エンクロージャの大きさおよびガスの流速により、ある時間の間上記の低減した相対湿度に保持することができる。
【0020】
本発明は、密封可能なエンクロージャの殺菌方法を提供する。該方法は、エンクロージャ、およびエンクロージャへの入り口およびエンクロージャからの出口を持つ流れ経路を通してキャリヤガスを循環するステップを含み、この場合、上記流れ経路は、平行な複数のブランチを持ち、およびその中の一方のブランチ内において、上記ガスの流れ内のすべての殺菌剤が廃棄するのに適したものになり、ガス内のすべての水蒸気が減少し、他方のブランチ内においては、キャリヤガスが加熱され、ガスに殺菌剤が添加される方法であって、該方法は、さらに、最初に、キャリヤガスを上記一方のブランチを通して循環させるステップと、エンクロージャ内のガスの水分を監視し、エンクロージャの上記表面が比較的乾燥した状態になるように、エンクロージャ内の相対湿度が、所定のレベルに低減した場合に、上記一方のブランチを通してのキャリヤガスの流れを停止するステップと、上記他方のブランチを通してキャリヤガスの流れをスタートさせ、殺菌剤の凝縮がエンクロージャ内で起こるまで上記他方のブランチを通過するガスに、1種類の殺菌蒸気または複数の種類の殺菌蒸気を添加するステップと、キャリヤガスへの殺菌剤の供給を停止するステップと、上記他のブランチを通る流れがそこで終わるエンクロージャを確実に殺菌するために、所定の時間の間、殺菌蒸気で実質的に飽和したキャリヤガスを継続的に循環させるステップと、キャリヤガスの相対湿度を低減するために、殺菌剤を廃棄するのに適した形にする目的で、ガス・エンクロージャから殺菌剤を抽出するために、上記一方のブランチを通るキャリヤガスの流れの向きを変えるステップとを含む。
【0021】
一方または他方のブランチを通して流れを供給するために、一方のブランチへの入り口を閉じた状態で、他方のブランチへの入り口を開けることもできるし、その逆を行うこともできる。例えば、弁手段により、一方のブランチに流れを供給し、他方のブランチに流れを供給しないようにすることもできるし、その逆を行うこともできる。
【0022】
別な方法としては、上記平行なブランチ内にポンプ手段を設置して、流れ経路内の平行なブランチの一方または他方に沿ってガスを流すこともできる。
【0023】
本発明は、また、密封可能なエンクロージャの殺菌装置を提供する。該装置は、殺菌対象の上記エンクロージャを、エンクロージャと閉回路を形成するように接続することができるキャリヤガスを流すための回路と、エンクロージャを含む上記回路を通してキャリヤガスを循環させるための手段と、エンクロージャおよびその表面を乾燥させるために、循環ガスから水蒸気を除去するための手段と、循環ガスの温度を周囲温度以上に上昇させるための手段と、エンクロージャ内の温度が下がった場合に、エンクロージャ内の上記表面上に、凝縮物が形成するために、上記循環ガスに1種類の殺菌蒸気または複数の種類の殺菌蒸気を供給するための手段と、エンクロージャ内のすべての表面上に確実に凝縮物が形成されるように、エンクロージャ全体を通してガス/蒸気を分配するための手段と、エンクロージャの上記表面上に形成された凝縮物の量を測定し、必要なレベルの凝縮物が形成された場合に、キャリヤガスへの殺菌剤の蒸気の供給を停止するための手段とを備え、エンクロージャから凝縮物を抽出するために、キャリヤガスの循環が継続して行われる。
【0024】
本発明は、さらに、密封可能なエンクロージャの殺菌装置を提供する。該装置は、1種類のガスまたは複数の種類のガスを流すための回路を備え、該回路は、それと閉回路を形成するために、回路内に殺菌対象のエンクロージャを収容し、接続するための手段と、回路およびエンクロージャを通してガスを循環させるためのものであって、回路内に平行な複数のブランチを持つ手段とを備え、その場合、その内の一方のブランチが、上記回路を通して流れるキャリヤガスに添加される殺菌剤を不活性化する手段と、ガスから湿気を除去するための手段とを備え、他方のブランチが、ガスを加熱する手段と、ガスに1種類の殺菌蒸気または複数の種類の殺菌蒸気を供給するための手段とを含み、上記装置が、さらに、平行な複数のブランチの内のどれをガスが流れるのかを決定するための制御手段を備え、該制御手段が、相対湿度が所定のレベル以下に下がるまで開いている上記一方のブランチ通路に流れる流れを維持し、次に、そのブランチを通る流れを停止し、上記他方のブランチ内の流れをスタートさせるために、エンクロージャから出てくるガスの相対湿度を測定するための手段と、必要な量の凝縮物がエンクロージャ内で形成された場合に、上記他方のブランチ内の流れを停止し、上記一方のブランチ内の流れをスタートさせるために、エンクロージャ内の凝縮物を測定するための手段とを含む。
【0025】
過酸化水素の水溶液内においては、10%の過酸化水素の濃度で、非常に速い殺菌速度が達成され、20%溶液の場合には、殺菌速度がさらに早くなることが分かっている。ガス状表面殺菌は、マクロな凝縮プロセスであると考えるので、このプロセスは、P.スオートリングおよびB.リンドグレン、J.デアリーレス(1968)年35,423の、「異なる温度および濃度での過酸化水素のバチラス・サブチリスの胞子に対する殺菌効果」に記載されている研究に類似していると見なすことができる。この文献は、ガス状凝縮プロセスにより達成することができる予想結果の優れたガイドブックである。
【0026】
上記文献は、また、ガスの表面触媒作用により少量の分解が起こった場合でも、殺菌を行うことができることを示唆している。実際には、このような分解は、ガス濃度データが示すように非常に少量である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
添付の図面を参照しながら、本発明のいくつかの特定の実施形態について以下に説明する。
【0028】
上記装置は、密封可能なエンクロージャである密封チャンバ10と、密封チャンバ10の湿気除去、殺菌および通気のための二重回路を内蔵する、全体を参照番号11で示す内蔵装置を備える。キャリヤガス、すなわち、空気および1種類の殺菌ガスまたは複数の種類の殺菌ガスは、チャンバを装置に流体により接続している密封接続部を通して、密封チャンバから装置内に導入される。
【0029】
上記装置は、直列にガス・モニタ13、温度および湿度モニタ14および流れ測定デバイス15を含むガス流れ回路12を備える。ガス・モニタは、ガス濃度に比例する信号を発生する電気機械セルであるが、近赤外線分光光度計も使用することができる。適当な温度および湿度センサ14は、通常、単体の市販の道具として入手することができ、過酸化水素の蒸気に腐食されない上記任意のデバイスならこの用途に適している。最も適当で、コスト・パフォーマンスもいい流れ測定システム15は、通常は、オリフィス・プレートであり、流れの中の制限素子の両端の圧力差の測定に基づいている。
【0030】
密封チャンバに、凝縮測定システム16が取り付けられている。専用のシステムは、容易に入手できないが、形成された凝縮物の質量を示すチャンバ内の表面の反射率の変化に依存するいくつかの方法が開発されている。測定装置を含む他の方法は、チャンバの外側に装着される。
【0031】
流れ測定システムの下流において、回路は、2つの平行なブランチ17,18に別れている。各ブランチは、1つのファン19,20を持ち、各ファンは、関連する逆止弁21を持つ。システムの周囲で、循環ガスを強制的に運動させるのに必要な圧力は、通常大きな圧力ではないので、このような用途の場合には、標準可変速度遠心ファンで十分である。逆止弁は、間違った方向に流れを逆流させないために必要なものである。この用途の場合には、簡単なフラップ・デバイスだけで十分である。第1の平行ブランチ17内においては、キャリヤガスから1種類の殺菌ガスまたは複数の種類の殺菌ガスを不活性化し、除去するためのシステムが22が位置していて、またガスの流れから湿気を除去するためのもう1つのシステム23も位置している。湿気除去システムの下流には、循環ガスの温度を上昇させるために、ヒータ24が位置している。殺菌ガス用の不活性化システムは、蒸気を無害な成分に分解する触媒床を備える。過酸化水素に対する適当な触媒としては、ガスを水蒸気と酸素に分解する不活性ペレット上のルテニウムがある。
【0032】
乾燥ドライヤは、湿気除去プロセスを実行することができるが、もっと適当な方法は、冷却システムによりガス温度を下げる方法である。温度が下がると、分解生成物と一緒に水蒸気が凝縮する。結果として得られる凝縮物および分解生成物は、ポンプで除去される。湿気を除去した後で、循環ガス温度を上昇させることが必要であり、電気ヒータ24または他の加熱手段が、その目的のために湿気除去装置の下流に設置される。
【0033】
第2の平行ブランチ内には、液体殺菌剤が加熱により蒸気に変化する蒸発装置26に入る前に、ガス温度を上昇させるためのヒータ25が設置されている。液体殺菌剤供給源27は、蒸発装置への液体の流れを制御する。
【0034】
ヒータ25は、他のヒータ24と類似の構造のものであってもよい。蒸発装置は、液体殺菌剤が、重力下で、液体の流れを加熱面に滴下することにより蒸発するフラッシュ蒸発装置である。殺菌剤供給源からの液体の流れは、流れ測定システムにより制御される可変速度ポンプにより、選択された速度で加熱面に送られる。密封チャンバ10に入るガス温度は、標準温度プローブにより28のところで測定される。チャンバ10へのガスの流入は、チャンバのすべての部分に高温、高速でガスを噴出する回転ノズル装置を含むガス分配システム29を通して行われる。さらに、圧力を上げたり、下げたりするために、回路内のガス圧を制御するためのシステムを設置する必要がある。
【0035】
図2の別の装置内の成分は、ファンおよび弁装置を除けば同じものであり、同じ参照番号がついている。図2の場合には、1種類のガスまたは複数の種類のガスが、ポンプ30の1つのファンにより、システムの周囲を駆動される。ファンまたはポンプからのガスまたはガス混合物は、ポートAを接続ポートCに接続することにより、第1の平行ブランチの方向、またはポートAをポートBに接続することにより、第2の平行ブランチの方向に流れを向ける三方弁31に送られる。上記弁は、通常、電気駆動三方ボール弁である。
【0036】
上記の装置によりエンクロージャを殺菌する方法は、エンクロージャ内の相対湿度を下げるステップと、次に、1種類の殺菌ガスまたは複数の種類の殺菌ガスの水蒸気を含むキャリヤガスを循環させるステップと、最後に、1種類の殺菌ガスまたは複数の種類の殺菌ガスを除去するステップとを含む。
【0037】
相対湿度を低減する第1の段階は、密封可能なチャンバのすべての内面を同じ乾燥状態にするために、必要不可欠なものである。第2の段階中、1種類の殺菌ガスまたは複数の種類の殺菌ガスは、密封チャンバ内にできるだけ多くの殺菌剤を導入するために、高温で密封チャンバに送られる。第3の段階で、最後の段階は、1種類の活性ガスまたは複数の種類の活性ガスを除去するために、密封チャンバ内にクリーンで乾燥しているガスを通過させることにより、1種類の殺菌ガスまたは複数の種類の殺菌ガスを除去する段階である。
【0038】
相対湿度を低減する第1の段階は、2つのステップに分けることができる。第1のステップは、相対湿度を予め選択した数値に低減するためのものであり、第2のステップは、密封チャンバが安定した状態になるように、相対湿度をその数値に維持するためのものである。
【0039】
同様に、1種類のガスまたは複数の種類のガスが、密封チャンバに送られる場合の第2の段階も2つのステップから成る。第1のステップは、濃度を高くし、表面上に必要なレベルの凝縮物を生成するためのものであり、第2の滞留ステップは、凝縮物が、微生物に、働きかけることができるようにするためのものである。凝縮物のレベルは、第2の段階の第1のステップ中に測定され、必要なレベルを達成した場合、1種類の殺菌ガスまたは複数の種類の殺菌ガスの供給は停止するが、関連する飽和蒸気を含むキャリヤガスは引き続き循環を続ける。循環飽和蒸気は、凝縮物の層の蒸発を防止し、液体フィルムは、微生物に働き掛けることができる。
【0040】
殺菌サイクルの第3、すなわち最後の段階中に、1種類の殺菌ガスまたは複数の種類の殺菌ガスと一緒にキャリヤガスが、活性ガスを無害にするために、システムを通って循環し、その結果、上記ガスを除去することができ、同時に、湿気除去装置内の水蒸気が除去される。次に、キャリヤガスは、密封チャンバに戻り、そこで、もっと多くの1種類の活性ガスまたは複数の種類の活性ガスを回収し、そのため、さらに、活性成分のレベルが低下する。このプロセスは、活性成分が許容レベルに低下するまで継続して行われる。
【0041】
1.相対湿度(RH)は、殺菌サイクルの始めのところで制御しなければならない。我々は、最適値を30〜40%の範囲に確立した。RHの初期値について考慮しなければならない点が2つある。第1の点は、可能な最短のサイクルを入手することであり(そうするためには、RHを約35%に低減しなければならない)、第2の点は、再現可能なサイクルを達成することである。再現性は、相対湿度の同じ最初の数値を使用することにより異なり、この始動数値は、当然局所的条件により35%より高くしなければならない。相対湿度に対して35%の初期値を達成するのは、何時でもできることではないので、同じ初期値を何時でも使用することが非常に重要なことである。相対湿度の数値が高いと、殺菌を行うために必要な時間が長くなる。何故なら、表面に形成される凝縮物が、存在する全部の水により希釈されるからである。
【0042】
2.凝縮物の量も重要である。多すぎると、殺菌後の表面層を除去する時間が長くなる。何故なら、表面を乾燥させるのに時間が掛かるからである。凝縮物の形成量が不十分な場合には、殺菌が行われない。この表面層の正確な測定は、このプロセスにとって必要不可欠なものである。
【0043】
3.上記のソートリング等の研究により、凝縮物を効果のあるものにするためには、ある長さの「浸漬」時間が必要であることは明らかである。この「浸漬」時間は、滞留時間として殺菌サイクルに組み込まれるが、確実に完全に殺菌を行うためには、この滞留時間内に、安全のための余裕を含ませる必要がある。この時間的な長さは、通常、安全のための余裕を含めて数分間程度である。
【0044】
4.チャンバ内に流入する高温ガスの分配も重要である。ガスがチャンバに入ると、ガスが急速に冷却し始め、凝縮物を形成し始める。ガスがチャンバに入る時に、完全に混合しないと、凝縮のムラがある場所ができる。このような事態が発生すると、チャンバ内の他の領域の凝縮物の量が少なくなり、すべての領域内を完全に殺菌するには、過剰な量のガスが必要になる。この過剰なガスは、不均等に分配され、チャンバを通常の使用状態に戻す必要がある場合には、サイクルの終わりに、除去するのにもっと長い時間が掛かる。
【0045】
5.チャンバから出てくるガスの濃度および温度の測定値から、システム内の蒸気圧が飽和状態になったことが分かる。これは重要なパラメータではないが、凝縮物の形成を示す。濃度が低すぎ、凝縮物が形成されない場合には、サイクルを中止しなければならないし、測定値によりそれを確認できる。
【0046】
それ故、プロセス・サイクルは、下記のステップを含む。
【0047】
1.チャンバを、通常は35%である相対湿度の初期値に設定する。すべての表面を確実に平衡状態にするためには、チャンバをこのレベルに数分間維持しなければならない。
【0048】
2.1種類の殺菌ガスまたは複数の種類の殺菌ガスおよび水蒸気を高温でチャンバ内に導入し、凝縮物の平らな層が形成されるように分配する。凝縮物の量を測定し、十分な量になった場合には、水蒸気ゼネレータをオフにする。
【0049】
3.殺菌を行うために、十分長い時間の間、1種類の凝縮ガスまたは複数の種類の凝縮ガスおよび水を表面上に維持する。
【0050】
4.滞留時間の終わりに、チャンバに、表面の凝縮物を蒸発させ、それによりチャンバから消失するクリーンで乾燥した空気を導入する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】液体殺菌剤の水蒸気を運ぶガスによるチャンバの内部およびその内容物を殺菌するためのチャンバに接続している密封チャンバと、2つのポンプまたはファンを持つ殺菌回路の略図である。
【図2】液体殺菌剤の水蒸気を運ぶガスによるチャンバの内部およびその内容物を殺菌するためのチャンバに接続している密封チャンバと、1つのポンプまたはファンを持つ回路のもう1つの形態の略図である。
【符号の説明】
【0052】
10 密封チャンバ、12 ガス流れ回路、13 ガス・モニタ、14 温度および湿度センサ、15 流れ測定システム、16 凝縮測定システム、17,18 ブランチ、19,20 ファン、21 逆止弁、22,23 システム、24,25 ヒータ、26 蒸発装置、27 液体殺菌剤供給源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封可能なエンクロージャの殺菌方法であって、前記エンクロージャと、前記エンクロージャへの入り口及び前記エンクロージャからの出口を有する流れ経路とを通してキャリヤガスを循環させるステップを含み、
前記方法は、前記流れ経路に沿って前記エンクロージャを通過する前記キャリヤガスの流れを開始するステップと、殺菌剤の凝縮が前記エンクロージャ内で起こるまで、前記流れ経路を通過する前記ガスに殺菌剤の蒸気または蒸気を添加するステップと、前記エンクロージャ内の前記ガスの水分を監視するステップと、前記キャリヤガスへの殺菌剤の蒸気または蒸気の供給を停止するステップと、前記キャリヤガスを引き続き所定時間のあいだ循環させて前記エンクロージャを確実に殺菌するステップと、循環させている前記キャリヤガスから前記殺菌剤を抽出するステップと、前記殺菌剤を廃棄に適したものにするステップと、前記キャリヤガスの相対湿度を低減するステップと、を含む、
回路は、前記キャリヤガスを循環させるために交替可能な複数の流れ経路を提供する一対の平行なブランチを有し、複数の流れ経路の一方において、前記殺菌剤の蒸気が循環キャリヤガスから抽出され、かつ循環キャリヤガスの相対湿度が低減され、複数の流れ経路の他方において、殺菌剤の蒸気がキュアやガスに添加される、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記蒸気を廃棄可能な成分に分解することにより、前記殺菌蒸気を前記キャリヤガスから抽出する、方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法において、前記殺菌蒸気が、過酸化水素および水蒸気である、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記循環ガスを有するチャンバから抽出した前記過酸化水素に対して触媒作用を行い、該過酸化水素を水蒸気と酸素とに分解し、前記水蒸気が、前記ガスが前記エンクロージャを再循環する前に、前記ガスから抽出される、方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法において、前記エンクロージャ内の前記相対湿度を低減する前記最初のステップが、前記チャンバを通して前記キャリヤガスを循環させ、前記循環ガスから水蒸気を前記チャンバの外部に抽出することにより実行される、方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法において、前記エンクロージャ内の相対湿度を約35%に低減する方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法において、前記エンクロージャの大きさおよびガスの流速にしたがって、前記エンクロージャを一定時間のあいだ、前記低減した相対湿度に保持することにより、前記エンクロージャ内の前記表面を確実に乾燥させる、方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法において、前記凝縮物を前記エンクロージャ内の前記表面上に所定時間のあいだ維持し、前記表面を確実に殺菌する、方法。
【請求項9】
密封可能なエンクロージャの殺菌装置であって、キャリヤガスを流すための回路を備え、前記回路が、殺菌対象のエンクロージャを受けて接続するための手段を有し、前記エンクロージャとともに閉回路を形成し、さらに、前記回路およびエンクロージャを通過してガスを循環させる手段と、前記エンクロージャと前記エンクロージャの表面を乾燥させるための循環するキャリヤガスから水蒸気を除去する手段と、循環キャリヤガスの温度を周囲温度以上に上昇させる手段と、循環キャリヤガスに殺菌剤の蒸気または蒸気を供給し、前記エンクロージャ内を冷却した際に前記エンクロージャの表面に凝縮物を生成させる手段と、前記ガス/蒸気を前記エンクロージャ全体を通して分散することにより、前記エンクロージャの全表面上に確実に前記凝縮物を形成する手段と、前記エンクロージャの表面上に形成された凝縮物の量を測定し、前記凝縮物を前記エンクロージャから抽出するために前記キャリヤガスを引き続き前記エンクロージャを通過させて循環させ、前記エンクロージャ内に必要な量の凝縮物が形成されると、前記キャリヤガスへの殺菌剤の蒸気の供給を停止する手段と、前記循環キャリヤガスから殺菌剤の蒸気を抽出する手段と、を有し、かつ前記回路は、前記キャリヤガスを循環させるために交替可能な複数の流れ経路を提供する平行な複数のブランチを備え、複数の流れ経路の一方において、前記殺菌剤の蒸気が循環キャリヤガスから抽出され、かつ循環されるキャリヤガスの相対湿度が低減され、複数の流れ経路の他方において、殺菌剤の蒸気がキュアやガスに添加され、さらに複数の流れの経路のいずれにガスを通過させ処理するかを決定する制御手段と、を有する、装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、前記循環キャリヤガスから殺菌剤の蒸気を抽出する手段が、前記エンクロージャから抽出した前記殺菌剤を廃棄可能な成分に分解する手段を備える、装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、前記殺菌剤が過酸化水素の蒸気および水蒸気であり、前記殺菌剤を分解する手段が、過酸化水素に作用して、該過酸化水素を水蒸気と酸素とに分解する触媒手段を備える、装置。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の装置において、前記循環キャリヤガスの相対湿度を低減する手段が、前記ガスを冷却することで、凝縮により、前記ガスから湿気を抽出するための冷却手段と、前記凝縮処理後に、前記ガスを周囲温度以上に加熱する手段とを備える、装置。
【請求項13】
請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の装置において、前記回路において、前記エンクロージャと前記回路の前記平行ブランチとの間にファンが設けられ、前記回路を循環してガスを流し、さらに、選択的に動作可能な前記第1のブランチおよび第2のブランチの入り口に弁手段が設けられ、該ブランチの一方または他方を通過する流れを可能にすることを特徴とする、装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置において、前記回路の選択的に動作可能な両ブランチにファンが設けられ、前記ブランチの一方または他方を通過するガスの流れを発生させる、装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−271981(P2006−271981A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128089(P2006−128089)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【分割の表示】特願2001−524646(P2001−524646)の分割
【原出願日】平成12年9月20日(2000.9.20)
【出願人】(501468208)バイオケル ユーケイ リミテッド (10)
【Fターム(参考)】