説明

蒸気調理用トレー並びに蒸気調理鍋

【課題】汎用の鍋にセットして使用することができると共に、鍋蓋体を載置したまま簡単に持ち運ぶことができる蒸気調理用トレー並びにこの蒸気調理用トレーを備えた蒸気調理鍋を提供すること。
【解決手段】周壁部に蒸気噴出孔3を有するトレー体2の上部開口周縁部に、鍋体1の上部開口縁上に載置若しくは係止可能な鍔部4を設け、この鍔部4を鍋体1の上部開口縁上に載置することでトレー体2を鍋体1内に取り出し自在に収納配設し得るように構成し、この鍔部4に取手部5を突設し、この鍔部4の前記取手部5より内側位置に、鍋蓋体6の周縁部を位置決め状態に載置し得る鍋蓋載置用段差部7を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸し料理に用いる蒸気調理用トレー並びに蒸気調理鍋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は、この種の蒸気調理鍋として、特許第3069530号(特許文献1)と特許第3084260号(特許文献2)を保有している。
【0003】
この特許文献1を簡単に説明すると、上部開口周縁部の内周面に段差部を設けた鍋本体と、この鍋本体内の段差部に着脱自在に載置係止するリング体と、載置箇所を除いた位置では浮上状態となるように前記リング上に上部周縁部を載置係止して前記鍋本体内に収納配設するトレー体と、鍋本体の上部開口部を閉塞架設する鍋蓋体とから成り、前記リング体に対する前記トレー体の上部周縁部の載置係止構造を、リング体上面に所定間隔を置いて支承突起部を設けるか若しくは上部周縁部下面に所定間隔を置いて支承突起部を設け、この支承突起部を介してリング体上に上部周縁部を載置係止することにより上部周縁部がリング体上に面接係止することなく浮上状態で載置係止され、このトレー体の上部周縁部とリング体との間に鍋本体内と連通する浮上間隙が形成されるように構成し、トレー体の略全周からこの浮上間隙を通って鍋本体内の蒸気が鍋蓋体の下面側へと流出するように構成したものである。
【0004】
また、特許文献2を簡単に説明すると、上部開口周縁部の内周面に段差部を設け、この段差部より下方の内周面に係止部を設けた鍋本体と、この鍋本体内周面とに間隙を介するように前記係止部に上部周縁部を係止して前記鍋本体内に収納配設するトレー体と、前記段差部に着脱自在に載置係止して鍋本体の上部開口部を閉塞架設する鍋蓋体とから成り、前記鍋本体の係止部に対する前記トレー体の係止構造を、前記段差部より下方の鍋本体内周面に所定間隔をおいて内側へ突出する複数の係止突起部を設けて前記係止部を構成し、この複数の係止突起部上にトレー体の上部周縁部を載置係止することによりこの載置箇所を除いた上部周縁部位置ではトレー体の上部周縁部と鍋本体の内周面との間に鍋本体内と連通する前記間隙が形成されるように構成し、このトレー体の略全周からこの隙間を通って鍋本体内の蒸気が鍋蓋体の下面側へと流出してトレー体内へ流出するように構成し、前記段差部に所定間隔を置いて前記鍋蓋体の周縁が当接し得る支承突起部を設け、この支承突起部に鍋蓋体の周縁を載置すると鍋蓋体の周縁と前記段差部との間に鍋本体内と連通する浮上間隙が形成されて、載置係止箇所を除いた位置では鍋蓋体の周縁部が浮上状態となるように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3069530号公報
【特許文献2】特許第3084260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1は、トレー体を鍋本体内に収納配設するために別部品のリング体を用いる構成であるから部品点数が増えてコスト高となってしまう。
【0007】
また、上記特許文献2は、トレー体を鍋本体内に収納配設するために鍋本体の内周面に係止部(係止突起部)を設ける構成であるから、汎用の鍋は使用できず専用設計の鍋本体が必要で、やはりコスト高となってしまっていた。
【0008】
また、特許文献1と特許文献2は、いずれもトレー体の周壁内周面にフック部を設け、このフック部に専用の引っ掛け具を引っ掛けて持ち上げることで、鍋本体内からトレー体を取り出しできるように構成しているが、フック部がトレー体の収容能力の妨げとならないよう小型化されていることもあって、このフック部に引っ掛け具を引っ掛ける作業は容易ではなかった。
【0009】
また、調理完了後にトレー体をそのまま食卓に出したいという要望も多いが、引っ掛け具を用いて行うトレー体の持ち運び作業は不安定であるから、キッチンのコンロから食卓までといった長めの距離を持ち運ぶには不向きであった。更に、トレー体の周壁内周面のフック部に引っ掛け具を用いる構造上、トレー体に鍋蓋体をかけたまま持ち運ぶことはできないし、特許文献1,特許文献2は、いずれもトレー体に鍋蓋体を安定的にかけられる構成でないから、鍋蓋体をかけて調理物を冷めにくい状態のままトレー体を食卓に配膳するような便利な使い方はできなかった。
【0010】
本発明は、このような従来の蒸気調理鍋の問題点を見い出し、これを解決しようとするもので、トレー体を汎用の鍋に対しても簡単にセットして使用することが可能であり、トレー体に鍋蓋体をかけることが可能であると共に、鍋蓋体をかけたままトレー体を直接持って簡単に持ち運ぶことも可能となる画期的な蒸気調理用トレー並びにこの蒸気調理用トレーを備えた蒸気調理鍋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
鍋体1内に収納配設して使用可能な上部開口型の蒸気調理用トレーにおいて、トレー体2の周壁部に蒸気噴出孔3を貫通形成し、このトレー体2の上部開口周縁部に、前記鍋体1の上部開口縁上に載置若しくは係止可能な鍔部4を設け、この鍔部4を鍋体1の上部開口縁上に載置若しくは係止することでトレー体2を鍋体1内に取り出し自在に収納配設し得るように構成し、この鍔部4に取手部5を突設し、この鍔部4の前記取手部5より内側位置に、鍋蓋体6の周縁部を位置決め状態に載置し得る鍋蓋載置用段差部7を設けて、この鍋蓋載置用段差部7に鍋蓋体6の周縁部を載置することで鍋蓋体6が位置決め状態でトレー体2の上部開口部を閉塞するように構成したことを特徴とする蒸気調理用トレーに係るものである。
【0013】
また、前記鍋蓋載置用段差部7に通水孔8を貫通形成したことを特徴とする請求項1記載の蒸気調理用トレーに係るものである。
【0014】
また、前記鍋蓋載置用段差部7に、内側部より外側部が低くなる傾斜面7Aを形成すると共に、この傾斜面7Aの外側位置に前記通水孔8を形成したことを特徴とする請求項2記載の蒸気調理用トレーに係るものである。
【0015】
また、前記取手部5は、前記鍔部4の対向二箇所に上方へ向けて突設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸気調理用トレーに係るものである。
【0016】
また、前記鍔部4は、前記トレー体2の上部開口周縁部より水平突設して、この鍔部4を前記鍋体1の上部開口縁上に載置し得るように構成し、この水平突設する鍔部4の内側位置に、この鍔部4より低くなる前記鍋蓋載置用段差部7を設け、この鍋蓋載置用段差部7の、前記鍔部4に連設する立ち上がり部7Bに前記鍋蓋体6の周縁部が当接することで鍋蓋体6が位置決めされる構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気調理用トレーに係るものである。
【0017】
また、前記鍋蓋載置用段差部7に、前記鍋蓋体6の周縁部を支承する支承用突起部9を設け、この支承用突起部9に鍋蓋体6の周縁部を載置支承することで鍋蓋体6の周縁部と鍋蓋載置用段差部7との間に浮上間隙10が形成されて、載置支承箇所を除いた位置では鍋蓋体6の周縁部が鍋蓋載置用段差部7から浮上状態となるように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の蒸気調理用トレーに係るものである。
【0018】
また、鍋体1と、この鍋体1内に収納配設するトレー体2と、前記鍋体1の上部開口部を閉塞する鍋蓋体6とから成る蒸気調理鍋において、前記トレー体2は、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の蒸気調理用トレーを採用したこと特徴とする蒸気調理鍋に係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上述のように構成したから、たとえ汎用の鍋体であってもトレー体を容易に収納配設することができ、また、本発明は、使用者が取手部を利用してトレー体を直接持つことができるので、トレー体の鍋体へのセットや取り出し作業や目的の場所への持ち運び移動も容易に行うことができ、その上、トレー体には取手部を邪魔にすることなく鍋蓋体を位置決め状態で載置できるので、鍋蓋体をかけて被調理物が冷めないようにしたままトレー体を持ち運んで食卓に配膳するような便利な使い方も可能となるなど、極めて実用性に優れた画期的な蒸気調理用トレー並びに蒸気調理鍋となる。
【0020】
また、請求項2記載の発明においては、加熱調理中に鍋蓋体の内面(下面)を伝って鍋蓋体の周縁部へと伝わる水滴がトレー体内に流れ込むことなく、鍋蓋載置用段差部の通水孔を介して鍋体内へと還元することになる一層実用性に優れた構成の蒸気調理用トレーとなる。
【0021】
また、請求項3記載の発明においては、鍋蓋体の周縁部から鍋蓋載置用段差部へと流れ落ちた水滴がトレー体の内側へと流れ込むことを確実に阻止できると共に、この水滴が確実に通水孔から鍋体内へと還元することになる一層実用性に優れた構成の蒸気調理用トレーとなる。
【0022】
また、請求項4記載の発明においては、使用者が取手部を両手で持って操作できるので、トレー体の鍋体への出し入れ操作や持ち運び操作を容易に行うことができる上、取手部を上方へ向けて突設したため、トレー体を鍋体にセットした際にこの取手部が鍋体に備えられた取手に干渉することがないなど、一層実用性に優れた構成の蒸気調理用トレーとなる。
【0023】
また、請求項5記載の発明においては、鍋体に対して容易にトレー体をセット可能であると共に、確実に鍋蓋体を位置決め状態に載置可能な鍋蓋載置用段差部を簡易構成により容易に設計実現可能となるなど、一層実用性に優れた構成の蒸気調理用トレーとなる。
【0024】
また、請求項6記載の発明においては、加熱時の吹きこぼれを生じにくい上、被調理物がべちゃべちゃにならず良好な蒸し上がりとなるなど、一層実用性に優れた構成の蒸気調理用トレーとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施例を示す斜視図である。
【図2】本実施例の分解斜視図である。
【図3】本実施例を示す縦断面図である。
【図4】本実施例の使用状態における蒸気流通作用並びに水滴還元作用を示す部分拡大縦断面図である。
【図5】本実施例の鍋蓋載置用段差部への鍋蓋体の載置構造を示す部分拡大縦断面図である。
【図6】本実施例のトレー体(蒸気調理用トレー)を、鍋蓋体をかけたまま鍋体から取り出した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0027】
例えば鍋体1内に所定量の水を入れ、被調理物を収容したトレー体2を鍋体1内に収納配設し、トレー体2の上部開口部に鍋蓋体6をセットして鍋体1を加熱すると、鍋体1内で蒸気が発生し、この蒸気がトレー体2周壁部の蒸気噴出孔3からトレー体2内へと噴出して被調理物が蒸気調理されることになる。
【0028】
また、本発明の蒸気調理用トレーは、トレー体2の上部開口周縁部に設けた鍔部4を、鍋体1の上部開口縁上に載置若しくは係止することで鍋体1内に取り出し自在に収納配設することができる。
【0029】
従って、本発明の蒸気調理用トレーによれば、前記特許文献1のように別部品(リング体)を用いたり、前記特許文献2のように鍋体1に特殊な加工を施したりする必要はなく、たとえ鍋体1が汎用タイプであっても、この鍋体1内に容易に収納配設して使用可能である。よって、汎用タイプの鍋体1を採用した低コストの蒸気調理鍋も簡易に設計実現可能となる。
【0030】
また、本発明の蒸気調理用トレーは、鍔部4の内側位置に設けた鍋蓋載置用段差部7に鍋蓋体6の周縁部を載置することができ、この鍋蓋載置用段差部7に周縁部を載置した鍋蓋体6は、この鍋蓋載置用段差部7の段差によりトレー体2に対し位置決め状態とされてトレー体2の上部開口部を閉塞することになる。尚、請求項1中の「鍋蓋体が位置決め状態」なる記載は、トレー体2に対して鍋蓋体6が完全に静止する位置決め状態だけでなく、多少の動きが許容されるような位置決め状態をも含む意味合いで用いている。
【0031】
また、鍔部4に突設した取手部5は、鍋蓋載置用段差部7がこの取手部5の内側に位置しているために、鍋蓋体6を載置しようとする際の邪魔にはならない。
【0032】
従って、本発明の蒸気調理用トレーは、トレー体2の上部開口部に鍋蓋体6を安定的に載置することができるので、鍋蓋体6を取り外すことなく載置したままでトレー体2を鍋体1から取り出すこともできる。
【0033】
また、本発明の蒸気調理用トレーは、使用者が取手部5を掴んで直接持つことができるので、鍋体1へのセットや取り出し作業を容易に行うことができるし、目的の場所へ持ち運ぶことも容易に行うことができる。
【0034】
従って、例えば、調理終了後に取手部5を利用してトレー体2をキッチンのコンロから食卓へと持ち運ぶようにする使い方も可能であるし、この際、トレー体2に鍋蓋体6をかけて被調理物が冷めないようにしたまま食卓に配膳することもできる。
【0035】
また、例えば、前記鍋蓋載置用段差部7に通水孔8を貫通形成すれば、加熱調理中に鍋蓋体6の内面(下面)に付着した水滴が鍋蓋体6の内面を伝って鍋蓋体6周縁方向へと流れた後下方へ落下するが、この鍋蓋体6の周縁部から落下した水滴は、トレー体2内へと流れ込むことなく、鍋蓋体6の周縁部が載置している鍋蓋載置用段差部7の通水孔8を通って鍋体1内へと還元される。
【0036】
また、例えば、前記鍋蓋載置用段差部7に、内側部より外側部が低くなる傾斜面7Aを形成すると共に、この傾斜面7Aの外側位置に前記通水孔8を形成すれば、鍋蓋体6の周縁部から鍋蓋載置用段差部7の傾斜面7Aへと落下した水滴が、トレー体2の内側へと流れ込むことなく、確実に下降傾斜側である傾斜面7Aの外側部方向へと流れて通水孔8から鍋体1内へと還元されることになる。
【0037】
また、例えば、前記取手部5は、前記鍔部4の対向二箇所に上方へ向けて突設すれば、使用者が対向二箇所の取手部4を両手で掴めるので、トレー体2の鍋体1への出し入れ操作や、持ち運び操作を容易に行うことができ、しかも、鍔部4から上方へ向けて突設する取手部4は、トレー体2を鍋体1にセットした際に鍋体1に備えられた取手11に干渉しない。
【0038】
また、例えば、前記鍔部4は、前記トレー体2の上部開口周縁部より水平突設して、この鍔部4を前記鍋体1の上部開口縁上に載置し得るように構成し、この水平突設する鍔部4の内側位置に、この鍔部4より低くなる前記鍋蓋載置用段差部7を設け、この鍋蓋載置用段差部7の、前記鍔部4に連設する立ち上がり部7Bに前記鍋蓋体6の周縁部が当接することで鍋蓋体6が位置決めされる構成とすれば、単に鍋体1の上方からトレー体2を下ろして鍋体1の上部開口縁上に鍔部4を載置するだけで極めて容易にトレー体2をセット可能であると共に、鍔部4の内側位置に鍔部4より低くなる鍋蓋載置用段差部7を設けるだけの簡易構造により、この鍋蓋載置用段差部7で確実に鍋蓋体6を位置決め状態に載置可能となる。
【0039】
また、例えば、前記鍋蓋載置用段差部7に、前記鍋蓋体6の周縁部を支承する支承用突起部9を設けて、この支承用突起部9に鍋蓋体6の周縁部を載置支承することで、鍋蓋体6の周縁部と鍋蓋載置用段差部7との間に浮上間隙10が形成されて、載置支承箇所を除いた位置では鍋蓋体6の周縁部が鍋蓋載置用段差部7から浮上状態となるように構成すれば、加熱調理中にトレー体2内に噴出した蒸気が浮上間隙10から適度に排出されることになる。従って、トレー体2内が適度な内圧に保持されて吹きこぼれを生じにくく、しかも、調理物への水分の過剰な付着も防止されるので、べちゃべちゃにならず良好な蒸し上がりとなる。
【実施例】
【0040】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0041】
本実施例は、鍋体1と、この鍋体1内に収納配設するトレー体2と、前記鍋体1の上部開口部を閉塞する鍋蓋体6とから成る蒸気調理鍋に係るものである。
【0042】
本実施例の鍋体1は、周壁の上部寄りの対向位置に取手11が突設されると共に、この周壁の前記取手11より上方位置の全周に鍋蓋体6載置用の段差部12が形成された一般的な鍋を採用している。
【0043】
また、本実施例の鍋蓋体6は、鍋体1の段差部12に周縁部を載置し得る外径寸法を有すると共に、上面の中心部に摘子部13を備えた透明ガラス蓋を採用している。
【0044】
本実施例の要部であるトレー体2(蒸気調理用トレー)は、上部開口型であって、前記鍋体1より径小且つ浅底の容体に構成し、このトレー体2の周壁部の上部寄りに、この周壁部の周方向に間隔を置いて複数の蒸気噴出孔3を貫通形成している。
【0045】
また、このトレー体2の上部開口周縁部には、前記鍋体1の上部開口縁上に載置若しくは係止可能な鍔部4を設け、この鍔部4を鍋体1の上部開口縁上に載置若しくは係止することでトレー体2を鍋体1内に取り出し自在に収納配設し得るように構成している。
【0046】
具体的には、前記トレー体2の上部開口周縁部の全周より水平外側方向へ向けて円周状に平板状の前記鍔部4を一体的に突設すると共に、この鍔部4の外径寸法を前記鍋体1の上部開口部の径寸法より大きい径寸法に設定して、この鍔部4の下面を鍋体1の上部開口縁の全周上に載置し得るように構成している。即ち、本実施例は、トレー体2を鍋体1に対し上方から下ろして鍔部4を鍋体1の上部開口縁の全周上に載置するだけの操作により、このトレー体2を鍋体1に対し安定的にセットできる構成としている。
【0047】
尚、図示していないが、鍔部4に、鍋体1上部開口縁への適宜な係止構造を設けて、鍔部4が鍋体1上部開口縁上に係止する構成としても良い。
【0048】
また、本実施例では、鍔部4の突出先端部をカールさせてR形状の先端縁に形成し、これにより使用者が鍔部4に手を触れても傷つけにくい構成としている。
【0049】
また、本実施例では、トレー体2の上部開口部を挟んだ鍔部4の対向二箇所に取手部5を突設している。
【0050】
更に具体的には、鍔部4の対向二箇所の上面に逆U字状をなす取手部5を立設状態に付設している。尚、この取手部5は、熱伝導性の低い素材製(例えば合成樹脂製)とした方が、加熱調理直後でも掴み易いため望ましい。
【0051】
また、この対向二箇所の取手部5は、夫々を上側に行くほど外向きに傾斜する(上側部ほど取手部5の対向間隔が広くなる)形状に形成して、後述する鍋蓋載置用段差部7に前記鍋蓋体6を載置する際に、この対向二箇所の取手部5が邪魔になりにくい構成としている。
【0052】
また、本実施例では、この鍔部4の前記取手部5より内側位置に、鍋蓋体6の周縁部を位置決め状態に載置し得る鍋蓋載置用段差部7を設けて、この鍋蓋載置用段差部7に鍋蓋体6の周縁部を載置することで鍋蓋体6が位置決め状態でトレー体2の上部開口部を閉塞するように構成している。
【0053】
具体的には、トレー体2の上部開口周縁部から鍔部4の中ほど位置にかけてを、この中ほど位置より外側部より一段低くなる形状に形成してこの一段低くなった段差部分を前記鍋蓋載置用段差部7としている。更に詳しくは、トレー体2の上部開口周縁部から鍔部4の中ほど位置にかけての上面を下方へ向けて凹状にプレス成形して、この凹状部を前記鍋蓋載置用段差部7としている。また、この鍋蓋載置用段差部7の最も外側位置には、鉛直方向に立ち上がる立ち上がり部7Bが形成されてこの立ち上がり部7Bの上端部が前記鍔部4に連設する構成としている。即ち、鍋蓋載置用段差部7は鍔部4と一体的に設け、前記鍔部4に連設する外側部に立ち上がり部7Bが形成された構成としている。
【0054】
また、この鍋蓋載置用段差部7は、トレー体2の上部開口周縁部の全周に沿設するようにして設けている。即ち、鍋蓋載置用段差部7は、鍔部4と同心円状の円周形状に形成して、その外周縁部に円周状の前記立ち上がり部7Bが存するように構成している。また、この円周状の立ち上がり部7Bの外側面が、鍋体1の段差部12より上側の周壁内面に沿設することで、トレー体2が鍋体1に対してガタつきにくい状態でセットされる構成としている。
【0055】
また、この鍋蓋載置用段差部7の外径寸法(円周状に存する前記立ち上がり部7Bの径寸法)を、前記鍋蓋体6の外径寸法よりやや大きい径寸法に設定して、この鍋蓋載置用段差部7に鍋蓋体6の周縁部全周を載置してトレー体2の上部開口部を鍋蓋体6で閉塞し得るように構成している。そして、この際、鍋蓋体6の全周縁部と円周状の立ち上がり部7Bとには少し隙間が生じているが、鍋蓋体6が横移動しようとしても、鍋蓋体6の全周囲を囲繞するように配置している立ち上がり部7Bに鍋蓋体6の周縁部が当接することで、鍋蓋体6の横移動が阻止されて位置決めされる構成としている。即ち、鍋蓋載置用段差部7に載置した鍋蓋体6は、その周縁部の全周に対して位置決め作用が発揮されてトレー体2の上部開口部を安定的に閉塞することになる構成としている。
【0056】
また、この鍋蓋載置用段差部7の前記立ち上がり部7Bより内側(トレー体2の上部開口部側)の部位は、その内側部から外側部に向かって下降傾斜する(内側部より外側部が低くなる)傾斜面7Aに形成し、この傾斜面7Aの最も傾斜下方側の端部を前記立ち上がり部7Bの下端に連設している。
【0057】
また、この傾斜面7Aの傾斜下方側である外側位置に通水孔8を貫通形成すると共に、この通水孔8は、鍋蓋載置用段差部7の周方向に小間隔を置いて多数並設状態に形成している。
【0058】
従って、加熱調理中には鍋蓋体6の内面(下面)に水滴が付着し、この水滴が鍋蓋体6内面を伝って鍋蓋体6周縁部方向へと流れて落下することになるが、この水滴は傾斜面7Aに落下するのでその傾斜上方側へと流れることはなく(トレー体2内へと流れ込むことなく)傾斜下方側(外側)へと流れて多数の通水孔8を通り鍋体1内へと還元される構成としている。
【0059】
また、本実施例では、前記鍋蓋載置用段差部7に、前記鍋蓋体6の周縁部を支承する支承用突起部9を設けて、この支承用突起部9に鍋蓋体6の周縁部を載置支承することで、鍋蓋体6の周縁部と鍋蓋載置用段差部7との間に浮上間隙10が形成されて、載置支承箇所を除いた位置では鍋蓋体6の周縁部が鍋蓋載置用段差部7から浮上状態となるように構成している。
【0060】
具体的には、前記鍋蓋載置用段差部7の前記傾斜面7Aに支承突起部9を設けている。更に具体的には、この鍋蓋載置用段差部7(傾斜面7A)の周方向に間隔を置いた数箇所(図面では三箇所)に支承突起部9を設けて、この数箇所の支承突起部9で鍋蓋体6を安定的に支承し得るように構成している。
【0061】
また、この支承突起部9は、図5に示すように前記立ち上がり部7Bより高さのない突起に形成して、この支承突起部9に鍋蓋体6を載置してもこの鍋蓋体6の周縁部が立ち上がり部7Bに当接することによる位置決め作用が発揮される構成としている。
【0062】
更に詳しくは、傾斜面7Aの下側の数箇所を上方へ向けて凹状にプレス成形することで傾斜面7Aの数箇所を上方へ突出させて、この各突出部を支承突起部9としている。即ち、この支承突起部9は鍋蓋載置用段差部7と一体的に設けている。
【0063】
次に、本実施例の使用方法を説明する。
【0064】
例えば、鍋体1内に所定量の水を入れ、被調理物を収容したトレー体2をその鍔部4を鍋体1の上部開口縁上に載置することで鍋体1内に収納配設すると共に、鍋蓋体6の周縁部を鍋蓋載置用段差部7に載置してトレー体2の上部開口部を鍋蓋体6で閉塞する。
【0065】
そして、鍋体1を加熱すると鍋体1内で蒸気が発生し、この蒸気が図4中の矢印Y1のように蒸気噴出孔3を通ってトレー体2内へと噴出すると共に、図4中の矢印Y2のように通水孔8を通って鍋蓋体6の下面へと噴出してトレー体2内へ流出することになる。即ち、本実施例の通水孔8は、蒸気噴出孔としての機能も兼ね備える構成である。
【0066】
従って、数箇所の蒸気噴出孔3と多数の通水孔8とを介してトレー体5の略全周から蒸気が噴出して被調理物がムラ無く蒸気調理されることになる。
【0067】
また、加熱調理中にトレー体2内に噴出した蒸気は、鍋蓋体6の浮上間隙10から適度に排出されることになる。
【0068】
従って、トレー体2内が適度な内圧に保持されて吹きこぼれを生じにくく、しかも、被調理物への水分の過剰な付着も防止されるので、べちゃべちゃにならず良好な蒸し上がりの被調理物が得られる。
【0069】
また、加熱調理中は、鍋蓋体6の下面に水滴が付着し、この水滴が鍋蓋体6の内面(下面)を伝わり周縁部の方向へと流れてから下方へ落下するが、この際、傾斜面7Aに対して鍋蓋体6の周縁部が浮上状態となっているため、水滴が鍋本体6の周縁部に到達するまでに何かに接して落下しづらく、よって鍋蓋体6の周縁部まで伝わってから下方の傾斜面7Aへと落下し易くなる。
【0070】
また、水滴の落下位置が傾斜面7Aであるから、水滴がトレー体2内に流れることはなく、図4中の矢印Y3のように通水孔8から鍋体1内へと還元し易くなる。
【0071】
また、例えば、調理終了後に取手部5を掴んでトレー体2をキッチンのコンロから食卓へと持ち運ぶことが可能であるし、この際、図6に示すようにトレー体2に鍋蓋体6をかけて被調理物が冷めないようにしたまま食卓に配膳することもできる。
【0072】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0073】
1 鍋体
2 トレー体
3 蒸気噴出孔
4 鍔部
5 取手部
6 鍋蓋体
7 鍋蓋載置用段差部
7A 傾斜面
7B 立ち上がり部
8 通水孔
9 支承用突起部
10 浮上間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋体内に収納配設して使用可能な上部開口型の蒸気調理用トレーにおいて、トレー体の周壁部に蒸気噴出孔を貫通形成し、このトレー体の上部開口周縁部に、前記鍋体の上部開口縁上に載置若しくは係止可能な鍔部を設け、この鍔部を鍋体の上部開口縁上に載置若しくは係止することでトレー体を鍋体内に取り出し自在に収納配設し得るように構成し、この鍔部に取手部を突設し、この鍔部の前記取手部より内側位置に、鍋蓋体の周縁部を位置決め状態に載置し得る鍋蓋載置用段差部を設けて、この鍋蓋載置用段差部に鍋蓋体の周縁部を載置することで鍋蓋体が位置決め状態でトレー体の上部開口部を閉塞するように構成したことを特徴とする蒸気調理用トレー。
【請求項2】
前記鍋蓋載置用段差部に通水孔を貫通形成したことを特徴とする請求項1記載の蒸気調理用トレー。
【請求項3】
前記鍋蓋載置用段差部に、内側部より外側部が低くなる傾斜面を形成すると共に、この傾斜面の外側位置に前記通水孔を形成したことを特徴とする請求項2記載の蒸気調理用トレー。
【請求項4】
前記取手部は、前記鍔部の対向二箇所に上方へ向けて突設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸気調理用トレー。
【請求項5】
前記鍔部は、前記トレー体の上部開口周縁部より水平突設して、この鍔部を前記鍋体の上部開口縁上に載置し得るように構成し、この水平突設する鍔部の内側位置に、この鍔部より低くなる前記鍋蓋載置用段差部を設け、この鍋蓋載置用段差部の、前記鍔部に連設する立ち上がり部に前記鍋蓋体の周縁部が当接することで鍋蓋体が位置決めされる構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気調理用トレー。
【請求項6】
前記鍋蓋載置用段差部に、前記鍋蓋体の周縁部を支承する支承用突起部を設け、この支承用突起部に鍋蓋体の周縁部を載置支承することで鍋蓋体の周縁部と鍋蓋載置用段差部との間に浮上間隙が形成されて、載置支承箇所を除いた位置では鍋蓋体の周縁部が鍋蓋載置用段差部から浮上状態となるように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の蒸気調理用トレー。
【請求項7】
鍋体と、この鍋体内に収納配設するトレー体と、前記鍋体の上部開口部を閉塞する鍋蓋体とから成る蒸気調理鍋において、前記トレー体は、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の蒸気調理用トレーを採用したこと特徴とする蒸気調理鍋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−136026(P2011−136026A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297827(P2009−297827)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(596089687)株式会社フジノス (4)
【Fターム(参考)】